特許第6407517号(P6407517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407517飲料及び原料液、並びにこれらの製造方法
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  • 特許6407517-飲料及び原料液、並びにこれらの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407517
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】飲料及び原料液、並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 7/00 20060101AFI20181004BHJP
   C12C 11/00 20060101ALI20181004BHJP
   C12G 3/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C12C7/00
   C12C9/00
   C12C9/02
   C12C11/04
   C12G3/00
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-234653(P2013-234653)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-92864(P2015-92864A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年11月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】野村 真弘
(72)【発明者】
【氏名】木野 博康
(72)【発明者】
【氏名】野口 博志
(72)【発明者】
【氏名】桜井 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】鐘ヶ江 倫世
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−077730(JP,A)
【文献】 特開2010−178628(JP,A)
【文献】 特開平07−194351(JP,A)
【文献】 特開昭56−148281(JP,A)
【文献】 特開平10−191954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 7/00
C12C 11/00
C12G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麦芽を使用しない、原料液を使用する飲料の製造方法であって、
ホップとタンパク原料とを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、
前記第一の原料液と、第二の原料を使用し煮沸することなく用意された液糖、酸味料、甘味料、苦味料及び香料からなる群より選択される1種以上の液状の原料である第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、
前記第三の原料液を煮沸することなく使用して前記飲料を製造すること
を含む
ことを特徴とする飲料の製造方法(ただし、第二の原料液はサンザシ果実成分を含まない。)
【請求項2】
原料液を使用する飲料の製造方法であって、
ホップとタンパク原料とを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、
前記第一の原料液と、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1種以上及び/又は前記群より選択される1種以上を発芽させたものを含む第二の原料を使用し煮沸することなく用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、
前記第三の原料液を煮沸することなく使用して前記飲料を製造すること
を含む
ことを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項3】
麦芽を使用しない、原料液を使用する飲料の製造方法であって、
ホップを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、
前記第一の原料液と、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1種以上及び/又は前記群より選択される1種以上を発芽させたものを含む第二の原料を使用し煮沸することなく用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、
前記第三の原料液を煮沸することなく使用して前記飲料を製造すること
を含む
ことを特徴とする飲料の製造方法。
【請求項4】
前記第三の原料液の発酵を行うこと、
前記発酵後の前記第三の原料液を煮沸することなく使用して前記飲料を製造することを含む
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の飲料の製造方法。
【請求項5】
前記第二の原料は、ホップを実質的に含まない
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の飲料の製造方法。
【請求項6】
前記第一の原料は、前記ホップとタンパク原料とを含む
ことを特徴とする請求記載の飲料の製造方法。
【請求項7】
麦芽を使用しない、原料液を使用する飲料の製造方法である
ことを特徴とする請求記載の飲料の製造方法。
【請求項8】
前記第一の原料は、ホップ以外の原料を含む
ことを特徴とする請求項に記載の飲料の製造方法。
【請求項9】
前記第二の原料は、液状の原料を含む
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料及び原料液、並びにこれらの製造方法に関し、特に、原料液を使用する飲料の製造方法及び当該原料液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホップを使用する飲料の製造(例えばビールの製造)においては、ホップの苦味成分を抽出するために、ホップを含む原料液(例えば麦汁)を煮沸する必要がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−147780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、原料液を煮沸するためには、多大なエネルギーが必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された、飲料及びその飲料の製造方法、並びに飲料の原料液及びその原料液の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る原料液の製造方法は、飲料の製造に使用する原料液の製造方法であって、ホップを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、前記第一の原料液と、第二の原料を使用し前記所定の時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製することを含むことを特徴とする。本発明によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された原料液の製造方法を提供することができる。
【0007】
また、前記原料液の製造方法において、前記第二の原料液は、前記第二の原料を使用し前記所定の時間の75%未満の煮沸時間で用意されたこととしてもよい。
【0008】
また、前記原料液の製造方法において、前記第二の原料液は、前記第二の原料を使用し煮沸することなく用意されたこととしてもよい。
【0009】
また、前記原料液の製造方法において、前記第二の原料は、ホップを実質的に含まないこととしてもよい。
【0010】
また、前記原料液の製造方法において、前記第一の原料は、前記ホップとタンパク原料とを含むこととしてもよい。本発明によれば、原料液に濁りが生じる可能性を効果的に抑制しつつ、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された原料液の製造方法を提供することができる。
【0011】
また、前記原料液の製造方法は、麦芽を使用しない、飲料の製造に使用する原料液の製造方法であることとしてもよい。
【0012】
また、前記原料液の製造方法は、前記飲料の製造における発酵に使用する原料液の製造方法であることとしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る原料液は、上記いずれかの方法で製造されたことを特徴とする。本発明によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された飲料の原料液を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料の製造方法は、原料液を使用する飲料の製造方法であって、ホップを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、前記第一の原料液と、第二の原料を使用し前記所定の時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、前記第三の原料液を使用して前記飲料を製造することを含むことを特徴とする。本発明によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された飲料の製造方法を提供することができる。
【0015】
また、前記第二の原料液は、前記第二の原料を使用し前記所定の時間の75%未満の煮沸時間で用意されたこととしてもよい。
【0016】
また、前記飲料の製造方法において、前記第二の原料液は、前記第二の原料を使用し煮沸することなく用意されたこととしてもよい。
【0017】
また、前記飲料の製造方法において、前記第二の原料は、ホップを実質的に含まないこととしてもよい。
【0018】
また、前記飲料の製造方法において、前記第三の原料液の発酵を行うこと、前記発酵後の前記第三の原料液を使用して前記飲料を製造することを含むこととしてもよい。
【0019】
また、前記飲料の製造方法において、前記第一の原料は、前記ホップとタンパク原料とを含むこととしてもよい。本発明によれば、飲料に濁りが生じる可能性を効果的に抑制しつつ、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された飲料の製造方法を提供することができる。
【0020】
また、前記飲料の製造方法は、麦芽を使用しない、原料液を使用する飲料の製造方法であることとしてもよい。
【0021】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る飲料は、前記いずれかの方法で製造されたことを特徴とする。本発明によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された飲料を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された、飲料及びその製造方法、並びに飲料の原料液及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る飲料及び原料液の製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0025】
本実施形態に係る原料液の製造方法は、飲料の製造に使用する原料液の製造方法であって、ホップを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、前記第一の原料液と、第二の原料を使用し前記所定の時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、を含む。
【0026】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、原料液を使用する飲料の製造方法であって、ホップを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製すること、前記第一の原料液と、第二の原料を使用し前記所定の時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製すること、前記第三の原料液を使用して前記飲料を製造すること、を含む。
【0027】
本実施形態に係る原料液は、飲料の製造に使用する原料液である。原料液は、例えば、原料と水とを使用して調製される溶液である。具体的には、例えば、原料と水とを混合して調製される溶液である。
【0028】
本実施形態に係る飲料は、原料液を使用して製造される飲料であれば特に限られないが、例えば、アルコール飲料であることとしてもよい。アルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であることとしてもよい。
【0029】
また、本実施形態に係る飲料は、ノンアルコール飲料であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であることとしてもよく、0.05体積%未満であることとしてもよく、0.005体積%未満であることとしてもよい。
【0030】
また、本実施形態に係る飲料は、発泡性飲料であることとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0031】
また、本実施形態に係る飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。また、本実施形態に係る飲料は、発泡性ノンアルコール飲料としてもよい。発泡性アルコール飲料は上述の泡特性を有するアルコール飲料であり、発泡性ノンアルコール飲料は上述の泡特性を有するノンアルコール飲料である。
【0032】
本実施形態に係る第一の原料は、ホップを含む。ホップの形態は、特に限られず、保存や輸送等の目的に応じて適切に加工された任意の形態のものを使用することができる。すなわち、例えば、ホップをエタノールまたは炭酸ガスで抽出して得られるホップエキス、乾燥させたホップの球果を圧縮して得られるプレスホップ、乾燥させたホップの球果を粉砕して得られるホップパウダー、当該ホップパウダーをペレット状に圧縮成形して得られるホップペレットを使用することができる。すなわち、ホップは、ホップエキス、プレスホップ、ホップパウダー及びホップペレットからなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0033】
また、本製造方法において、第一の原料は、ホップを含んでいれば特に限られない。すなわち、例えば、第一の原料は、ホップからなることとしてもよく、又は、ホップとホップ以外の原料とを含むこととしてもよい。
【0034】
第一の原料が、ホップとホップ以外の原料とを含む場合、第一の原料は、タンパク原料を含むこととしてもよい。すなわち、本製造方法に係る第一の原料は、ホップとタンパク原料とを含むこととしてもよい。タンパク原料は、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される一種以上であることとしてもよい。
【0035】
第一の原料がホップとタンパク原料とを含む場合、タンパク原料は、例えば、植物原料由来のタンパク原料を使用することとしてもよい。すなわち、タンパク原料は、植物原料由来の、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される1つ以上を使用することとしてもよい。植物原料は、例えば、穀類、豆類、いも類からなる群より選択される1種以上及び/又は当該群より選択される1種以上を発芽させたものを含むこととしてもよい。穀類は、例えば、麦類、米類、とうもろこし及びこうりゃんからなる群より選択される1種以上である。麦類は、例えば、大麦及び/又は小麦である。また、豆類は、大豆及び/又はエンドウである。いも類は、例えば、馬鈴薯及び/又はさつまいもである。
【0036】
第一の原料がホップとタンパク原料とを含む場合、タンパク原料は、具体的には、例えば、分子量が1kDa以上であることとしてもよく、また、分子量が5kDa以上であることとしてもよい。より具体的には、タンパク原料は、例えば、分子量が1kDa以上の、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される1種以上であることとしてもよく、また、分子量が5kDa以上の、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0037】
より具体的に、例えば、タンパク原料は、分子量が1kDa以上300kDa以下であることとしてもよく、また、分子量が5kDa以上300kDa以下であることとしてもよい。また、タンパク原料は、例えば、分子量が1kDa以上300kDa以下の、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される1種以上であることとしてもよく、分子量が5kDa以上300kDa以下の、タンパク質、ペプチド、タンパク質の分解物及びペプチドの分解物からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0038】
本製造方法に係る第二の原料は、ホップを実質的に含まないこととしてもよい。すなわち、第二の原料は、後述するように第二の原料液が所定の時間より短い煮沸時間で用意される場合に、得られる原料液及び飲料に影響がない範囲でホップを含む原料であることとしてもよい。例えば、第一の原料に含まれるホップの重量と第二の原料に含まれるホップの重量の総和に対する当該第二の原料に含まれるホップの重量の割合が、5重量%以下であることとしてもよく、3重量%以下であることとしてもよい。また、例えば、第二の原料液の重量に対する第二の原料に含まれるホップの重量の割合(第二の原料液におけるホップの使用比率)(重量%)の、第一の原料液の重量に対する第一の原料に含まれるホップの重量の割合(第一の原料液におけるホップの使用比率)(重量%)に対する割合が、5%以下であることとしてもよく、3%以下であることとしてもよい。すなわち、例えば、第一の原料に含まれるホップの重量と第二の原料に含まれるホップの重量の総和に対する当該第二の原料に含まれるホップの重量の割合が、5重量%以下又は3重量%以下、且つ第二の原料液におけるホップの使用比率(重量%)の、第一の原料液におけるホップの使用比率(重量%)に対する割合が5%以下であることとしてもよい。また、例えば、第一の原料に含まれるホップの重量と第二の原料に含まれるホップの重量の総和に対する当該第二の原料に含まれるホップの重量の割合が、5重量%以下又は3重量%以下、且つ第二の原料液におけるホップの使用比率(重量%)の、第一の原料液におけるホップの使用比率(重量%)に対する割合が3%以下であることとしてもよい。ここで、例えば、第一の原料に含まれるホップの重量と第二の原料に含まれるホップの重量の総和に対する当該第二の原料に含まれるホップの重量の割合が0重量%であることとしてもよい。また、例えば、第二の原料液におけるホップの使用比率(重量%)の、第一の原料液におけるホップの使用比率(重量%)に対する割合が0%であることとしてもよい。すなわち、これらの場合、第二の原料は、ホップを含まない。
【0039】
また、第二の原料はホップ以外の原料を含むこととしてもよい。ホップ以外の原料は、飲料の製造に使用できるものであれば特に限られないが、例えば、ホップ以外の植物原料を含むこととしてもよい。すなわち、本製造方法において、例えば、ホップ以外の植物原料を含み且つホップを実質的に含まない第二の原料を使用することとしてもよい。
【0040】
植物原料は、例えば、穀類、豆類、いも類からなる群より選択される1種以上及び/又は当該群より選択される1種以上を発芽させたものを含むこととしてもよい。穀類は、例えば、麦類、米類、とうもろこし及びこうりゃんからなる群より選択される1種以上である。麦類は、例えば、大麦及び/又は小麦である。また、豆類は、大豆及び/又はエンドウである。いも類は、例えば、馬鈴薯及び/又はさつまいもである。
【0041】
また、第二の原料は、ホップを実質的に含まず糖類を含むこととしてもよい。糖類は、例えば、多糖類、オリゴ糖類、及び単糖類からなる群から選択される1種以上としてもよい。また、糖類は、穀物及び/又はいも類に由来する糖類を使用することとしてもよい。この場合、穀物は、例えば、とうもろこしとしてもよい。また、いも類は、例えば、馬鈴薯及び/又はさつまいもとしてもよい。糖類の形態は特に限られないが、例えば、液糖であってもよい。すなわち、第二の原料は、ホップを含まず液糖を含むこととしてもよい。液糖は、予め除菌されている場合、除菌作業が不要であるため、工程削減の観点から好ましい。また、液糖は、液状であるため取扱いが容易であるため、作業性の観点から好ましい。第二の原料における液糖濃度は特に限られないが、例えば、後述する第三の原料液における液糖の濃度が10重量%以上となる液糖濃度であることとしてもよい。
【0042】
なお、第一の原料が、ホップとホップ以外の原料を含む場合、第一の原料は、ホップ以外の原料として、上述の第二の原料に使用されるものを含むこととしてもよい。
【0043】
第一の原料液は、ホップを含む第一の原料を使用して所定の時間煮沸を行い調製される。第一の原料液は、例えば、ホップを含む第一の原料と水とを使用し所定の時間煮沸を行い調製されることとしてもよい。具体的に、例えば、第一の原料液は、ホップを含む第一の原料と水とを混合し所定の時間煮沸を行い調製されることとしてもよい。
【0044】
第一の原料液が、第一の原料と水とを混合して所定の時間煮沸を行い調製される場合、例えば、第一の原料の全部と水とを混合し、次いで、得られた混合液を所定の時間煮沸することとしてもよい。また、第一の原料の一部と水とを混合して得られた混合液を所定の時間煮沸している途中及び/又は煮沸した後に、第一の原料の一部を当該混合液に添加することにより、第一の原料液を調製することとしてもよい。また、煮沸している水に第一の原料を添加することにより第一の原料液を調製することとしてもよい。
【0045】
また、煮沸を行う時間は、特に限られず、本実施形態に係る飲料及び原料液に要求される香味、苦味、その他の品質(例えば、衛生上の条件)を満足するように、適宜設定することができる。具体的には、例えば、本製造方法においては、ホップを含む第一の原料を使用して、10分以上煮沸を行い第一の原料液を調製することとしてもよく、15分以上煮沸を行い第一の原料液を調製することとしてもよい。また、ホップを含む第一の原料を使用して、120分以下煮沸を行い第一の原料液を調製することとしてもよい。具体的に、煮沸を行う時間は、例えば、10分以上120分以下であってもよく、15分以上120分以下であってもよい。
【0046】
本製造方法に係る第二の原料液は、第二の原料を使用し上記所定の時間より短い煮沸時間で用意される。すなわち、第二の原料液は、例えば、第二の原料を使用し当該所定の時間より短い時間煮沸を行い調製されることとしてもよい。第二の原料液の煮沸時間は、所定の時間より短ければ特に限られないが、例えば、当該所定の時間の75%未満としてもよく、50%以下としてもよい。また、具体的に、第二の原料液を煮沸する時間は、例えば、上記所定の時間より短い且つ20分以下としてもよく、上記の所定の時間より短い且つ10分以下としてもよい。
【0047】
また、第二の原料を使用し上記所定の時間より短い時間の煮沸時間で用意される第二の原料液は、第二の原料を使用し煮沸することなく用意されることとしてもよい。すなわち、第二の原料液は、例えば、第二の原料を使用し煮沸することなく調製されることとしてもよい。具体的に、例えば、第二の原料液は、第二の原料と水とを使用し煮沸することなく調製されることとしてもよい。より具体的に、第二の原料液は、例えば、第二の原料と水とを混合し煮沸することなく調製されることとしてもよい。また、第二の原料液は、例えば、第二の原料と水とを煮沸することなく混合し調製されることとしてもよい。
【0048】
第二の原料は、液状の原料を含むこととしてもよい。この場合、第二の原料は、例えば、ホップを含まない当該液状の原料を含むこととしてもよい。また、第二の原料液は、例えば、液状の原料を含む第二の原料を使用し上記所定の時間より短い煮沸時間で用意されることとしてもよく、当該液状の原料を含む第二の原料を使用し煮沸することなく用意されることとしてもよい。ここで、上述の第二の原料液は、当該液状の原料そのものであることとしてもよい。また、上述の液状の原料は、液糖、酸味料、甘味料、苦味料及び香料からなる群より選択される一種以上であることとしてもよい。
【0049】
本製造方法に係る第三の原料液は、ホップを含む第一の原料を使用して所定の時間煮沸を行い調製された第一の原料液と、第二の原料を使用し当該所定の時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液と、を混合して調製される。すなわち、例えば、第三の原料液は、第一の原料液と、第二の原料液と、を当該第二の原料液を煮沸することなく混合して調製される。
【0050】
第一の原料液と第二の原料液とを混合するタイミングは特に限られないが、例えば、後述するように、微生物により第三の原料液の発酵を行う場合、当該微生物を添加してから24時間以内に、上述の通り調製された第一の原料液と、上述の通り調製された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製することとしてもよい。また、微生物を添加してから24時間未満に、上述の通り調製された第一の原料液と、上述の通り調製された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製することとしてもよく、また、微生物を添加してから12時間以内に、上述の通り調製された第一の原料液と、上述の通り調製された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製することとしてもよい。
【0051】
後述するように、微生物を添加して第三の原料液の発酵を行う場合、第一の原料液、第二の原料液及び第三の原料液からなる群から選択される1つ以上に微生物を添加し、当該添加から24時間以内に、上述の通り調製された第一の原料液と、上述の通り調製された第二の原料液と、を混合して第三の原料液を調製することとしてもよい。この場合、当該添加から当該第三の原料が調製されるまでの時間は、例えば、24時間未満としてもよく、12時間以内としてもよい。
【0052】
本実施形態に係る原料液の製造方法においては、上述の方法で、飲料の製造に使用する原料を製造する。すなわち、具体的には、本実施形態に係る原料液の製造方法においては、第三の原料液を使用して、飲料の製造に使用する原料液を製造する。より具体的には、例えば、第三の原料液を原料液として得てもよい。また、例えば、第三の原料液と他の原料とを混合し飲料の製造に使用する原料液を製造することとしてもよい。他の原料は、例えば、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、アルコール(エタノール)及び甘味料からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。また、例えば、第三の原料液を煮沸することなく使用して、飲料の製造に使用する原料液を製造することとしてもよい。
【0053】
本実施形態に係る原料液の製造方法によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された、飲料の製造に使用する原料液の製造方法を提供することができる。
【0054】
本実施形態に係る飲料の製造方法は、第三の原料液を使用して飲料を製造することを含む。この場合、例えば、第三の原料液を煮沸することなく使用して飲料を製造することとしてもよい。
【0055】
また、本実施形態に係る飲料の製造方法は、例えば、第三の原料液と他の原料とを混合し飲料を製造することとしてもよい。他の原料は、例えば、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、アルコール(エタノール)及び甘味料からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0056】
また、本実施形態に係る飲料の製造方法は、例えば、第三の原料液の発酵を行うことを含むこととしてもよい。この場合、例えば、発酵後の第三の原料液を使用して飲料を製造することを含むこととしてもよい。具体的には、例えば、発酵後の第三の原料液を煮沸することなく使用して飲料を製造することとしてもよい。
【0057】
第三の原料液の発酵を行う場合、発酵は、微生物による発酵であれば特に限られない。発酵に使用される微生物は、発酵に使用されるものであれば特に限られないが、例えば、酵母又は乳酸菌であることとしてもよく、酵母であることが好ましい。酵母は、アルコールを産生する酵母(アルコール産生酵母)であることとしてもよく、アルコールを産生しない酵母であることとしてもよい。アルコール産生酵母は、アルコール発酵に好ましく使用され、例えば、ビール酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0058】
第三の原料液の発酵を行う場合、本製造方法は、例えば、微生物を添加して第三の原料液の発酵を行うこととしてもよい。微生物を添加する対象は、第三の原料液を発酵させることができれば、特に限られないが、例えば、第一の原料液、第二の原料液及び第三の原料液からなる群から選択される1つ以上に微生物を添加することとしてもよい。
【0059】
本実施形態に係る飲料の製造方法によれば、製造に用いられるエネルギーが効果的に低減された飲料の製造方法を提供することができる。なお、本製造方法は、従来の製造方法と比較しても、製造される飲料の香味に影響がないことが確認できている。
【0060】
本製造方法が、タンパク原料を使用する飲料又は原料液の製造方法の場合、第一の原料は、ホップとタンパク原料とを含むことが好ましい。ここで、タンパク原料を使用する場合、タンパク原料を使用しない場合に比べ、飲料又は原料液に濁りが生じる可能性が高くなる。この点、ホップとタンパク原料とを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い第一の原料液を調製することにより、飲料又は原料液に濁りが生じる可能性を効果的に抑制することができる。具体的に、例えば、ホップとタンパク原料とを含む第一の原料を使用して、所定の時間煮沸を行い当該タンパク原料の一部を沈殿させて第一の原料液を調製することにより、飲料又は原料液に濁りが生じる可能性を効果的に抑制することができる。なお、タンパク原料を使用する場合、第一の原料が当該タンパク原料を含むことが好ましいのは上述の通りであるが、第二の原料が当該タンパク原料を含んでいてもよい。
【0061】
本実施形態に係る製造方法について図1を用いて具体的に説明する。本実施形態に係る製造方法は、ホップを含む第一の原料を使用して、第一の容器T1で所定の時間煮沸を行い第一の原料液L1を調製すること、第一の原料液L1と、第二の原料を使用し第二の容器T2で当該所定時間より短い煮沸時間で用意された第二の原料液L2と、を当該第二の原料液L2を煮沸することなく、それぞれ第一の容器T1及び第二の容器T2から第三の容器T3に移送し混合して第三の原料液L3を第三の容器T3で調製することを含む。
【0062】
本実施形態に係る原料液の製造方法において、第三の原料液L3を使用して飲料に使用する原料液を製造することとしてもよい。また、本実施形態に係る飲料の製造方法において、第三の原料液L3を使用して飲料を製造することとしてもよい。
【0063】
第一の容器T1は、煮沸を行うことができる容器(例えば煮沸釜)である。また、第二の容器T2は、例えば、タンクでもよく、煮沸釜でもよい。
【0064】
微生物により第三の原料液L3の発酵を行う場合、例えば、微生物を第一の原料液L1に添加すること(図1のA1)としてもよく、第二の原料液L2に添加すること(図1のA2)としてもよく、また、第三の容器T3に添加することとしてもよい。すなわち、本製造方法は、例えば、第一の原料液L1を第一の容器T1から第三の容器T3に移送する間(例えば、第一の容器T1と第三の容器T3との間にある配管又は容器)において第一の原料液L1に微生物を添加すること、第二の原料液L2を第二の容器T2から第三の容器T3に移送する間(例えば、第二の容器T2と第三の容器T3の間にある配管又は容器)において第二の原料液L2に微生物を添加すること、及び第三の容器T3に微生物を添加すること(図1のA3)、からなる群より選択される1以上を含むこととしてもよい。
【0065】
第三の容器T3に微生物を添加する場合、例えば、第三の容器T3に移送された第一の原料液L1及び/又は第二の原料液L2に微生物を添加することとしてもよく、第三の容器T3で調製された第三の原料液L3に微生物を添加することとしてもよい。
【0066】
微生物により第三の原料液L3の発酵を行う場合、例えば、第三の容器T3において微生物により第三の原料液L3の発酵を行うこととしてもよい。この場合、第三の容器T3は、例えば、発酵タンクである。
【0067】
なお、第一の容器T1、第二の容器T2及び第三の容器T3は、それぞれ1以上であってよい。すなわち、図1では第一の容器T1、第二の容器T2及び第三の容器T3は、それぞれ1つしか図示されていないが、これらはそれぞれ複数であることとしてもよい。また、第一の容器T1と第二の容器T2は、同じ容器を使用してもよい。すなわち、例えば、第一の原料液L1を、第一の容器T1で調製し第三の容器T3に移送した後、次いで、第二の原料液L2を第一の容器T1で調製してもよい。
【符号の説明】
【0068】
L1 第一の原料液、L2 第二の原料液、L3 第三の原料液、T1 第一の容器、T2 第二の容器、T3 第三の容器、A1〜A3 微生物の添加。
図1