特許第6407536号(P6407536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407536
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】粘着シート及び被着体積層物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20181004BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20181004BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20181004BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20181004BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/10
   C09J7/40
   C09J201/00
   C09J11/00
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-38492(P2014-38492)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160935(P2015-160935A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤嵜 順一
(72)【発明者】
【氏名】坂井 美和子
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−238789(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111810(WO,A1)
【文献】 特開2005−330406(JP,A)
【文献】 特開2005−097386(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00527505(EP,A1)
【文献】 特開2001−131507(JP,A)
【文献】 特開2006−257372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化する粘着層を第1セパレータと第2セパレータの間に配置した粘着シートにおいて、
前記粘着層は、少なくとも粘着剤と微粒子と重量平均分子量が800以上の粘着付与樹脂を含有し、該粘着付与樹脂の配合量が100質量部の前記粘着剤に対し15〜40質量部である粘着剤組成物により形成されており、かつ
第1セパレータを条件1で剥離し、第2セパレータ上に粘着層を露出させた第1粘着シートを得たときの、第1セパレータの剥離力をaとし、
第1粘着シートをその粘着層を対向させて第1被着体としてのPETフィルムからなるバリアフィルムに重ね、第1積層体を得た後、第1積層体から第1粘着シートを条件2で剥離したときの、第1粘着シートの剥離力をa1(a1の測定条件は条件2と同じ。)とし、
第1積層体に条件3で加温しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体を得た後、25℃の環境下で第2積層体から第1粘着シートを剥離したときの、第1粘着シートの剥離力をa2とし、
25℃の環境下で第2積層体から第2セパレータを剥離し、第1被着体上に粘着層を露出させた第2’粘着シートを得たときの、第2セパレータの剥離力をbとし、
第2’粘着シートをその粘着層を対向させて第2被着体としてのキャリアガラスに重ねて第3’積層体を得た後、25℃の環境下で第3’積層体から第2’粘着シートを剥離したときの、第2’粘着シートの剥離力をb1(b1の測定条件は、剥離環境は25℃、剥離方向は第2’粘着シートの一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向、剥離速度は300mm/分。)としたとき、
前記粘着層の剥離力が、下記関係Aを満足しており、かつ、
第1セパレータを粘着シートから引き離し、第2セパレータ上に露出させた粘着層をPETフィルムに2kgのローラーを用いて貼り合わせ、その後30秒以内に引き離したとき、粘着層から第2セパレータが引き離されず、かつPETフィルム上に粘着残りを生じさせない状態で、第2セパレータおよび粘着層が一体となってPETフィルムから引き離されるリワーク性と、
第1セパレータを粘着シートから引き離し、第2セパレータ上に露出させた粘着層をPETフィルムに60℃に加熱された2kgのローラーを用い30秒かけて貼り合わせ、室温(23℃)に戻し、その後引き離したとき、PETフィルムから粘着層が引き離されない状態で、第2セパレータのみが引き離される加温処理後の密着性と、を有することを特徴とする粘着シート。
条件1:剥離環境は25℃、剥離方向は第1セパレータの一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向、剥離速度は300mm/分、剥離幅は25mm。
条件2:剥離環境は25℃、剥離方向は第1粘着シートの一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向、剥離速度は300mm/分、第1積層体を得てから剥離開始までの時間が1分間以内。
条件3:加える温度は40℃以上180℃以下、加える圧力は0.2〜1.5MPa、時間は1〜60秒。
関係A:a<a1≦b<a2≦b1。
【請求項2】
前記微粒子は、熱発泡温度が50℃以上100℃以下の熱発泡剤である請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
第3’積層体に、条件4による加熱処理を施して第3”積層体を得た際の、この第3”積層体の第2’粘着シートと第2被着体との接合力をb2とし、
第3”積層体の第2被着体上に粘着層を露出させた第3粘着シートと第1被着体との接合力をa3としたとき、
前記粘着層の剥離力及び加熱後の接合力が、さらに下記関係A1を満足していることを特徴とする請求項2記載の粘着シート。
条件4:加熱温度は条件3の加温処理の温度より10℃以上高い温度、加熱時間は15分以上。
関係A1:a3=b2<a。
【請求項4】
熱発泡剤として、マイクロカプセル化された熱膨張性微小球を用い、該熱膨張性微小球の粒度分布の標準偏差が5.0μm以下である請求項2又は3に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の粘着シートを用いた被着体積層物の製造方法において、
前記粘着シートから第1セパレータを引き離し、第2セパレータ上に粘着層を露出させた第1粘着シートを得た後、該第1粘着シートをその粘着層を対向させて第1被着体に重ね、第1積層体を得る第1工程と、
第1積層体から第1粘着シートを引き離し、第1被着体との重ね位置を変更した後、再び第1粘着シートを第1被着体に重ね、第1’積層体を得る工程と、
第1’積層体に、40℃以上180℃以下(ただし、粘着層が熱発泡剤を含む場合、該熱発泡剤の熱発泡温度よりも10℃以上低い温度とする)に加熱しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体を得る第2工程と、
第2積層体から第2セパレータを引き離し、第1被着体上に粘着層を露出させた第2粘着シートを得た後、該第2粘着シートをその粘着層を対向させて第2被着体に重ね、第3積層体による被着体積層物を得る第3工程とを、有する被着体積層物の製造方法。
【請求項6】
請求項2から4記載の粘着シートを用いた請求項5記載の方法により製造された第3積層体による被着体積層物に、請求項5による第2工程で施した加温処理の温度より10℃以上高い温度(ただし、熱発泡剤の熱発泡温度以上である場合に限る)で加熱処理を施し、第1被着体、粘着層及び第2被着体のそれぞれを分離させることを特徴とする被着体積層物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化する粘着層を第1セパレータと第2セパレータの間に配置した粘着シートと、その粘着シートを用いた被着体積層物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
物(第1被着体)と物(第2被着体)を適度な粘着力で貼合させることができるとともに、使用目的を終え不要となった後には簡単に剥離することのできる両面粘着層として、基材の表裏両面に粘着層を備えた「基材を有するもの」(特許文献1)や、全体が粘着層のみで構成される基材を有さない「基材レスのもの」(特許文献2)が知られている。またこの種の粘着層として、熱発泡剤として熱膨張性微小球を含有する粘着剤組成物により形成したものが知られている(特許文献3)。こうした両面粘着層はいずれの形態でも、第1セパレータと第2セパレータの間に配置された粘着シートの形で提供されることが多く、使用に際し両セパレータから引き離された後、物と物の貼合に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2006−342223号公報
【特許文献3】特開2006−257372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の、第1セパレータ/両面粘着層/第2セパレータの構造の粘着シートは、通常、第1セパレータを剥離して粘着層を露出させ、被着体に貼着した後、位置修正等を行うため、一旦、被着体から剥離した後、再度、貼着させることができる性能(リワーク性)の要望が高まっている。
しかし、上記構造の粘着シートは、第1セパレータを剥離して被着体に貼着した後、第2セパレータを剥離して使用するため、被着体に貼着した後に第2セパレータを剥離させることなく、粘着層及び第2セパレータからなる部分を被着体から剥離することは容易ではない。他方、リワーク性を良好にするため粘着力を低く設計した粘着剤を粘着層に使用すると、被着体に貼り合わせたときの接着性が不十分になるという問題を生じる。また、被着体に貼着した後、第2セパレータを剥離する際に、粘着層及び第2セパレータからなる部分全体が剥離しやすくなり、第2セパレータのみを剥離することが難しくなるという問題も生じた。
【0005】
なお、特許文献3で開示されるタイプの粘着シートは、加熱した場合に被着体と粘着層との界面に凹凸を発生させることにより被着体との接触面積を小さくし、これにより粘着力を低下させるものであり、他のタイプの粘着シートに比べて、被着体を容易に剥離させ易い。しかしながら、加熱して被着体と粘着層との界面に凹凸を発生させ、被着体との接触面積を小さくして被着体を剥離する際に、粘着層表層の凹凸高さおよび密度合いを均一にコントロールすることは難しい。このため、凸部が少なく凹部が多く存在する部分あるいは、凸部の高さが不均一である部分において、接触面積の低下が不足し、部分的な付着を引き起こすこともある。したがって、被着面全体における均一な剥離を妨げることなく、また糊残りによる汚染を発生させることなく、作業効率や加工精度の低下を抑制したいとの要望もある。
【0006】
本発明の目的は、リワーク性が良好で、かつリワーク後の接着性も優れた粘着シートと、この粘着シートを用いた被着体積層物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化する粘着層を第1セパレータと第2セパレータの間に配置した粘着シートにおいて、その粘着層を、粘着剤と微粒子を含有する粘着剤組成物により形成し、かつ剥離力が所定の関係を満足するよう構成することにより、リワーク性が良好で、リワーク後の接着性にも優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、微粒子として、熱発泡剤を使用することにより、上記性能に加え、被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体と第2被着体の接合が不要になった場合でも、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく、均一に剥離可能であることも見出した。
【0008】
すなわち本発明によれば、以下に示す構成の粘着シートと、該粘着シートを用いた以下に示す被着体積層物の製造方法が提供される。さらに以下に示す被着体積層物の処理方法も提供される。
【0009】
本発明の粘着シートは、被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化する粘着層を第1セパレータと第2セパレータの間に配置したものであり、該粘着層が少なくとも粘着剤と微粒子を含有する粘着剤組成物により形成されており、かつ第1セパレータを条件1で剥離し、第2セパレータ上に粘着層を露出させた第1粘着シートを得たときの、第1セパレータの剥離力をaとし、
第1粘着シートをその粘着層を対向させて第1被着体に重ね、第1積層体を得た後、第1積層体から第1粘着シートを条件2で剥離したときの、第1粘着シートの剥離力をa1とし、
第1積層体に条件3で加温しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体を得た後、25℃の環境下で第2積層体から第1粘着シートを剥離したときの、第1粘着シートの剥離力をa2とし、
25℃の環境下で第2積層体から第2セパレータを剥離し、第1被着体上に粘着層を露出させた第2’粘着シートを得たときの、第2セパレータの剥離力をbとし、
第2’粘着シートをその粘着層を対向させて第2被着体に重ねて第3’積層体を得た後、25℃の環境下で第3’積層体から第2’粘着シートを剥離したときの、第2’粘着シートの剥離力をb1としたとき、
前記粘着層の剥離力が、関係A(すなわちa<a1≦b<a2≦b1)を満足していることを特徴とする。
【0010】
条件1:剥離環境は25℃、剥離方向は第1セパレータの一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向、剥離速度は300mm/分、剥離幅は25mm。
条件2:剥離環境は25℃、第1積層体を得てから剥離開始までの時間が1分間以内。
条件3:加える温度は40℃以上180℃以下、加える圧力は0.2〜1.5MPa、時間は1〜60秒。
【0011】
本発明の粘着シートにおいて、粘着層を構成する粘着剤組成物に含有させる微粒子として、熱発泡剤を用いることができる。
【0012】
微粒子に熱発泡剤を使用した場合における本発明の粘着シート(特定粘着シートとも言うことがある。)において、上記粘着層の剥離力a、a1、a2、b及びb1に加え、第3’積層体に、条件4による加熱処理を施して第3”積層体を得た際の、この第3”積層体の第2’粘着シートと第2被着体との接合力をb2とし、
第3”積層体の第2被着体上に粘着層を露出させた第3粘着シートと第1被着体との接合力をa3としたとき、
前記粘着層の剥離力及び加熱後の接合力が、さらに関係A1(すなわちa3≒b2<a))を満足することが好ましい。
【0013】
条件4:加熱温度は条件3の加温処理の温度より10℃以上高い温度、加熱時間は15分以上。
【0014】
本発明の被着体積層物の製造方法は、上記構成の粘着シートから第1セパレータを引き離し、第2セパレータ上に粘着層を露出させた第1粘着シートを得た後、該第1粘着シートをその粘着層を対向させて第1被着体に重ね、第1積層体を得る第1工程と、
第1積層体から第1粘着シートを引き離し、第1被着体との重ね位置を変更した後、再び第1粘着シートを第1被着体に重ね、第1’積層体を得る工程と、
第1’積層体に、40℃以上180℃以下に加熱しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体を得る第2工程と、
第2積層体から第2セパレータを引き離し、第1被着体上に粘着層を露出させた第2粘着シートを得た後、該第2粘着シートをその粘着層を対向させて第2被着体に重ね、第3積層体による被着体積層物を得る第3工程とを、有する。
【0015】
本発明の被着体積層物の処理方法は、微粒子に熱発泡剤を使用した本発明の特定粘着シートを用いた上記方法により製造された第3積層体による被着体積層物に、上記方法による第2工程で施した加温処理の温度より10℃以上高い温度で加熱処理を施すことを特徴とする。このような加熱処理を施すことで、上記方法により製造された被着体積層物は、第1被着体、粘着層及び第2被着体のそれぞれを綺麗に分離される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着シートは、粘着層を第1セパレータと第2セパレータの間に配置した態様において、粘着層が上記粘着剤組成物により形成されており、かつその剥離力が所定の関係(関係A:a<a1≦b<a2≦b1)を満足するので、リワーク性が良好で、リワーク後の接着性(加温処理後における被着体との密着性)にも優れており、加工性、生産性等が向上することが期待される。
【0017】
本発明の粘着シートは、粘着層を形成する粘着剤組成物に含有させる微粒子として熱発泡剤を使用することにより、上述した、リワーク性が良好で、かつリワーク後の接着性も優れたものにできるほか、被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体と第2被着体の接合が不要になった場合に、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく、該被着体から均一に剥離可能なものとすることができる。
【0018】
本発明の製造方法によると、リワーク性が良好な本発明の粘着シートを用いるので、何度でも被着体への貼り直しができ、また正しい位置決め後の積層体に対しては所定の加温処理を施すことで被着体に対し良好な接着保持力(被着体との密着性)を発現させることが可能である。したがって、被着体が脱落することのない被着体積層物を効率的に製造することができる。
【0019】
本発明の処理方法によると、本発明の製造方法により得られた被着体積層物が使用目的を終え、被着体との接合が不要になった場合に、所定の加熱処理を施すことにより、粘着層とのタックが適切に低下する。これにより、粘着層に起因する糊残り等による汚染等を生じさせることなく、粘着層から被着体を均一に剥離することができる。糊残り等による汚染等を生じず均一に剥離された被着体は、次の利用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の粘着シートの一例を示す断面図である。
図2図2は本発明方法の一例に係る第1工程で準備される第1粘着シートの断面図である。
図3図3は第1工程で準備される第1積層体の断面図である。
図4図4は第2工程で準備される第2積層体の断面図である。
図5図5は第3工程で準備される第2粘着シートの断面図である。
図5A図5Aは剥離力確認のために準備される第2’粘着シートの断面図である。
図6図6は第3工程で得られる第3積層体による被着体積層物の断面図である。
図6A図6Aは剥離力確認のために準備される第3’積層体の断面図である。
図7図7図6の第3積層体に第4工程で施す加熱処理の様子を示す断面図である。
図7A図7Aは接合力確認のために準備される第3”積層体の断面図である。
図8図8は第4工程で得られる第1被着体、粘着層及び第2被着体の分離の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粘着シートについて説明する。本発明の一例に係る粘着シート1は、図1に示すように、粘着層3を第1セパレータ5と第2セパレータ7の間に配置することで構成される。
【0022】
第1セパレータ5及び第2セパレータ7としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンラミネート紙や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等のプラスチックフィルムや、前記プラスチックフィルムの一方の面に離型処理を施したもの等を用いることができる。ただし、第1セパレータ5の方が、第2セパレータ7よりも粘着層3から剥がす際の剥離力が軽くなるものでなくてはならない。
【0023】
第1セパレータ5及び第2セパレータ7の厚みは、特に限定されないが、一般には、10μm〜250μm、好ましくは25μm〜125μmであり、第1セパレータ5の方が第2セパレータ7よりも剥離力を軽くするという観点から、第1セパレータ5の厚みを第2セパレータ7の厚みよりも薄くした方が好ましい。
【0024】
粘着層3は、被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化すればよく、したがって、粘着層のみで形成される「基材less」(基材レス)の態様でもよいし、あるいは、粘着層が基材の表裏両面に形成される「基材ed」(基材ド)の態様でもよい。被着体としては、後述の第1被着体や第2被着体等が挙げられる。基材ドの場合に用いられる基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッソ樹脂、ナイロン、アクリル、シクロオレフィン、ノルボルネン化合物等が挙げられ、厚みが5μm〜175μm程度のものが使用される。
以下では、粘着層3が基材レスの態様である場合を例示して説明する。
【0025】
本例の粘着層3は、必須成分として微粒子と粘着剤を含有する粘着剤組成物により形成される。
【0026】
微粒子としては、無機顔料(例えば、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シリカ、炭酸カルシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等)、有機顔料(例えば、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂、メラミン樹脂等)等が挙げられ、これらを単独または複数組み合わせて使用できる。また、微粒子として後述する熱発泡剤を用いることもできる。
【0027】
微粒子の大きさは、粘着層のシート1の用途により適宜選択すればよく、粘着層の厚みによって異なってくるため一概にいえないが、通常は質量平均粒径で5〜20μmであることが好ましい。使用する微粒子の大きさが、小さすぎたり大きすぎる場合、粘着層3の表面粗さの制御が難しくなることもあり、その結果、粘着性や剥離性が安定せず、被着体積層物の製造工程に不都合を生ずることもありうる。微粒子の大きさが、粘着層の厚みに対して小さすぎる場合は、粘着層3に凸部が十分に形成されず、加温処理前被着体との剥離性(リワーク性)が不十分となる場合があるため好ましくない。また粘着層の厚みに対して大きすぎる場合は、粘着層3表面に必要以上に大きな凹凸が形成されてしまう可能性があるため、加温処理後の被着体との密着性が低下する場合があるため好ましくない。
【0028】
微粒子の配合割合は、リワーク性が得られるよう粘着層3表面の凹凸を形成できるよう適宜選選択すればよく、通常、後述する粘着剤:100質量部に対して5〜50質量部の範囲である。実験では微粒子の配合割合が5質量部未満であると、粘着層3表層の凸部が少なくなりリワーク性が得にくくなる傾向にあり、また、50質量部を超えると必要以上に粘着層3表面に凹凸が形成されてしまう可能性があるため、その場合加温処理後の被着体との密着性が低下する傾向にあるので好ましくない。加温処理前の被着体との剥離性(リワーク性)と加温処理後の被着体との密着性の観点から好ましい配合割合は8〜40質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
【0029】
微粒子として熱発泡剤を使用することもできる。熱発泡剤を使用すると、被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体12(後述)と第2被着体14(後述)の接合が不要になった場合でも、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生ずることなく、均一に剥離可能であることの効果が、本例の効果(リワーク性。後述)に追加される。
【0030】
熱発泡剤としては、特に制限されず、例えば公知の熱発泡剤(熱分解型のもの、膨張黒鉛、マイクロカプセル化されたもの、など)を適宜選択して用いることができるが、なかでもマイクロカプセル化されたもの(以下「熱膨張性微小球」と称する。)を好適に用いることができる。
熱膨張性微小球としては、弾性を有する外殻の内部に発泡剤が封入された構造を有し、全体として熱膨張性(加熱により全体が膨らむ性質)を示す微小球を好適例として挙げることができる。弾性を有する外殻としては、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質等、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等で形成されたものを好適例として挙げることができる。発泡剤としては、加熱により容易にガス化して膨張する物質、例えばイソブタン、プロパン、ペンタン等の炭化水素を主として挙げることができる。熱膨張性微小球の市販品としては、例えば、商品名「マツモトマイクロスフェアー」シリーズ(松本油脂製薬社製)、アドバンセルEMシリーズ(積水化学工業社製)、エクスパンセル(日本フェライト社製)等を挙げることができる。
【0031】
熱膨張性微小球の大きさは、粘着層の厚みを考慮しつつ上述した微粒子の大きさの範囲内で、適宜選択すればよく、具体的には、質量平均粒径で10〜20μmであることが好ましい。なお、使用する熱膨張性微小球の大きさが、粘着層の厚みに対して小さすぎる場合は、加熱処理後の粘着層3に凸部が十分に形成されず、剥離する際に被着体から剥離しにくいものとなったり糊残りしやすくなる傾向があるため好ましくない。また粘着層の厚みに対して大きすぎる場合は、加熱処理前から粘着層3表面に凹凸が形成されてしまう可能性があるため、加熱処理前の被着体との密着性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0032】
熱膨張性微小球は、その粒度分布を調整してから使用することができる。粒度分布の調整は、使用する熱膨張性微小球に含まれる比較的大きな粒径のものを、遠心力型風力分級機、乾式分級機、篩過機等で分級して除去すればよい。平均粒径に比して大きな粒径粒子を除去し、粒度分布をシャープにすることにより、加熱処理後の表面形状を均一にすることができる。具体的には、熱膨張性微小球の粒度分布の標準偏差が5.0μm以下にすることが望ましく、好ましくは4.5μm以下、更には4.0μm以下にすることが好ましい。標準偏差が5.0μmよりも大きくなると、加熱処理後の粘着層3表層の高低差が大きくなり、また、それに伴い凹凸の密度合いが不均一な表面形状を形成することになる。その結果、均一な剥離を得ることができにくくなる。
【0033】
熱膨張性微小球の発泡倍率は、3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることが更に好ましい。その一方で15倍以下であることが好ましく、12倍以下であることが更に好ましい。使用可能な熱膨張性微小球の発泡倍率が、好ましくは3倍以上15倍以下の範囲にあると、加熱処理することによって粘着層3の粘着力を効率よく低下させることができる。なお、熱膨張性微小球の外殻は、該熱膨張性微小球が前記所定の発泡倍率となるまで膨張した場合であっても破裂しない、適度な強度を有するものであることが好ましい。
【0034】
その他の熱発泡剤としては、熱分解型発泡剤や膨張黒鉛などが挙げられる。熱分解型発泡剤は、無機系と有機系に分類される。
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、水、塩フッ化アルカン(例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなど)、アゾ系化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレートなど)、ヒドラジン系化合物(例えば、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)など)、セミカルバジド系化合物(例えば、ρ−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)など)、トリアゾール系化合物(例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなど)、N−ニトロソ系化合物(例えば、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミドなど)、などが挙げられる。
これらの熱発泡剤は、単独又は複数を混合して用いることができる。
【0035】
熱発泡剤を使用する場合の、その配合割合は、上述した微粒子の配合割合の範囲内で、加熱処理後の粘着層3表面の凹凸を十分に形成できるよう適宜選選択すればよく、通常、後述する粘着剤:100質量部に対して10〜50質量部の範囲である。実験では熱発泡剤の配合割合が10質量部未満であると、加熱処理後の粘着層表層の凸部が少なくなり剥離し難くなる傾向にあり、また、50質量部を超えると必要以上に加熱処理前から粘着層3表面に凹凸が形成されてしまう可能性があるため、その場合、加熱処理前の被着体との密着性が低下する傾向にあるので好ましくない。加熱処理前の被着体との密着性及び加熱処理後の被着体との剥離性の観点から好ましい配合割合は13〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部である。
【0036】
熱発泡剤の熱発泡温度は、粘着シート1の使用温度を考慮して好適なものを適宜選択すればよく、好ましくは後述する加温処理温度よりも10℃以上高い温度のものを使用することが望ましい。
熱発泡温度は、熱発泡剤として、熱膨張性微小球を用いる場合は熱膨張温度に相当し、熱分解型発泡剤を用いる場合は熱分解温度に相当する。ここで、「熱膨張温度」とは発泡開始温度と同義であり、本例ではTMA測定における熱膨張開始温度のことをいい、体積が最大限に膨張する最大膨張温度の意味ではない。
【0037】
粘着剤としては、従来から微粒子を含有させた粘着層を形成する際に用いられている粘着剤の中から適宜選択すればよい。ただし、粘着層3表面に形成される凹凸形状や初期粘着力、再剥離性の面からアクリル系粘着剤を用いるのが好ましい。アクリル系粘着剤の組成に特に制限はない。
【0038】
アクリル系粘着剤の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることが更に好ましく、20万〜100万であることが特に好ましい。アクリル系粘着剤の重量平均分子量が上記範囲内とすることにより、加温処理後の被着体との密着性を良好なものとし、かつ加熱処理をした際には被着体に糊残りすることなく剥離しやすくすることができる。
【0039】
アクリル系粘着剤は、架橋剤と反応し得るものであるものが好ましい。このアクリル系粘着剤には、アクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との共重合体が包含される。アクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸アルキルエステルの「アルキルエステル」としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、ペンタデシルエステル、オクタデシルエステル、ノナデシルエステル、エイコシルエステル等を挙げることができる。架橋剤と反応し得る官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基を挙げることができる。
【0040】
架橋剤と反応し得る官能基がカルボキシル基である単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等を挙げることができる。また、官能基がヒドロキシル基である単量体としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、アクリル酸ヒドロキシオクチル、メタクリル酸ヒドロキシオクチル、アクリル酸ヒドロキシデシル、メタクリル酸ヒドロキシデシル、アクリル酸ヒドロキシラウリル、メタクリル酸ヒドロキシラウリル等を挙げることができる。
【0041】
架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、92:8〜98:2の範囲であることが好ましい。この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が少ないと、熱発泡剤が発泡した場合に、被着体と粘着層3との剥離性が損なわれる傾向にある。一方、この範囲よりも、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体の配合比が多いと、被着体と粘着層3との粘着力が乏しくなる傾向にある。被着体と粘着層との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体との比は、質量比で、95:5〜93:7であることが更に好ましい。
【0042】
なお、所望により、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び架橋剤と反応し得る官能基を有する単量体以外のその他の単量体を併用することもできる。その他の単量体としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、ポリエチレングリコールアクリレート、N−ビニルピロリドン、テトラフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
【0043】
アクリル系粘着剤は、単量体成分をラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法は従来公知であり、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法等を挙げることができる。また、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−50〜−20℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−20℃超であると、被着体と粘着層3との粘着力が低下する傾向にある。一方、ガラス転移温度が−50℃未満であると、加熱処理後の剥離時に糊残りを生じ易くなり、剥離性が良好になり難くなる傾向にある。被着体と粘着層3との粘着性及び剥離性を向上させるという観点からは、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、−40℃〜−25℃であることが更に好ましい。
【0044】
次に、架橋剤について説明する。架橋剤は、用いるアクリル系粘着剤に合せて適宜選択すればよく、特に制約はない。架橋剤の具体例としては、イソシアネート系架橋剤、金属キレート架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができる。これらのなかでも、熱発泡剤が発泡する温度への加熱後における、被着体からの剥離性を向上させ、被着体への糊残りを防止するといった観点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートダイマー、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオホスファイト、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等があげられる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0045】
常温における被着体との粘着性、及び熱発泡剤の発泡後における被着体からの剥離性の面で、多官能のエポキシ系架橋剤が好ましく、4官能のエポキシ系架橋剤が更に好ましい。具体的には、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを挙げることができる。但し、これらのエポキシ系架橋剤は、架橋反応速度が遅くなる傾向にあるため、架橋反応が不十分である場合には、架橋反応を促進するために、(a)アミン等の触媒を添加する、(b)粘着剤の構成成分としてアミン系官能基を持つ単量体を用いる、(c)架橋剤にアジリジン系架橋剤を併用する、ことが望ましい。特に、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等の架橋剤に、触媒効果を有する3級アミンを添加することが好ましい。
【0046】
架橋剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋剤の配合割合は、微粒子(好ましくは熱発泡剤)、及びアクリル系粘着剤とともに、粘着層3の加熱前の剥離力が所定の関係(後述)を満足するように適宜選択すればよく、特に制限はない。
【0047】
本例では、微粒子と粘着剤を含有する粘着剤組成物中に、粘着付与樹脂を含有させることもできる。
粘着付与樹脂としては、例えば、キシレン系樹脂;α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系、テルペンフェノール系等のテルペン系樹脂;ガム系、ウッド系、トール油系等の天然系ロジン;これらの天然系ロジンに水素化、不均化、重合、マレイン化、エステル化等の処理をしたロジン系誘導体等のロジン系樹脂;石油樹脂;クマロン−インデン樹脂等を挙げることができる。なかでも、重量平均分子量が800以上であるものを用いることが好ましい。より好ましくは1000以上のものを用いることが望ましい。
【0048】
重量平均分子量が800以上の粘着付与樹脂を用いると、粘着層の初期剥離力を容易に調整することができ、加温処理後における被着体との密着性をさらに向上させることが可能となる。また熱発泡剤を用いた場合、加熱処理後の被着体への汚染、糊残りがさらに少なくさせることが可能となる。また、粘着層3の加熱前の剥離力を所定の関係(後述)に調整し易い。
また粘着付与樹脂としてキシレン系樹脂または、テルペンフェノール系の粘着付与樹脂を用いると、熱発泡剤を用いた場合、加熱処理後は被着体への汚染、糊残りが少ないばかりか、被着体から更に容易に剥離可能となる。
【0049】
粘着付与樹脂は、その軟化点が120℃以上であるものが好ましい。これらのなかでも、軟化点が120〜170℃の範囲内であるものが更に好ましく、150〜170℃の範囲であるものが特に好ましい。軟化点が上記の範囲内である粘着付与樹脂を用いると、粘着層の初期剥離力をさらに容易に調整することができ、加温処理後における被着体との密着性をさらに向上させることが可能となる。また熱発泡剤を用いた場合、加熱処理後の被着体への汚染、糊残りをさらに少なくさせることが可能となる。
【0050】
粘着付与樹脂を配合する場合、その割合は、特に制限はないが、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10〜100質量部とすることが好ましく、さらには15〜40質量部とすることが好ましい。粘着付与樹脂の配合割合が、アクリル系粘着剤100質量部に対して、10質量部以上とすることにより、初期の被着体との剥離性(リワーク性)を向上させ、加温処理後における被着体との密着性をさらに向上させることができる。但し、100質量部を超えると、タックが小さくなり加温処理後における被着体との密着性が低下する場合があり、また、熱発泡剤を用いた場合、加熱処理後は被着体への汚染、糊残りが生じる場合がある。
【0051】
粘着層3を形成する粘着剤組成物には、本発明の粘着剤組成物としての機能を損なわない範囲であれば、反応促進剤、界面活性剤、顔料、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤等の種々の添加剤を含ませることができる。
【0052】
粘着層3を形成する粘着剤組成物は、上述した必須成分としての、微粒子(好ましくは熱発泡剤)、粘着剤、さらには必要に応じて、粘着付与樹脂、架橋剤、溶媒、並びに添加剤を任意の順序で添加し、溶解又は分散させることにより得ることができる。
【0053】
図1に示す本例の粘着シート1は、上述した粘着剤組成物を第1セパレータ5と第2セパレータ7の間に塗布し、必要に応じて乾燥させることにより得ることができる。
粘着層3の厚みとしては、粘着層のシート1の用途及び選択する微粒子の大きさにより異なってくる。例えば、微粒子として、質量平均粒径が5μm〜20μmのものを使用する場合、粘着層3の厚みを、下限として5μm以上、さらには8μm以上とすることが好ましく、上限として55μm以下、さらには45μm以下、さらには35μm以下とすることが好ましい。粘着層3の厚みを5μm以上とすることにより、加温処理後における被着体との密着性を十分なものにしやすい。粘着層3の厚みを55μm以下とすることにより、初期の被着体との剥離性(リワーク性)を十分なものにしやすい。
また、例えば、微粒子として質量平均粒径が10μm〜20μmの熱発泡剤を使用する場合、粘着層3の厚みを、下限として20μm以上、さらには25μm以上とすることが好ましく、上限として55μm以下、さらには45μm以下、さらには35μm以下とすることが好ましい。粘着層3の厚みを20μm以上とすることにより、加温処理後における被着体との密着性十分なものにしやすい。粘着層3の厚みを55μm以下とすることにより、加熱処理後の剥離時に凝集破壊が起こりにくくなり、より良好な剥離性を得やすい。
【0054】
本例の粘着層3は、粘着剤と微粒子を含有する粘着剤組成物により形成され、かつその剥離力を下記のように剥離力a、a1、a2、b及びb1としたとき、それぞれの剥離力の値が下記の関係Aを満足している。粘着層3の剥離力が所定の関係を満足するように構成することで、リワーク性が良好で、かつリワーク後の接着性(加温処理後における被着体との密着性)にも優れたものとすることができる。
【0055】
剥離力aは、第1セパレータ5を条件1で剥離し、第2セパレータ7上に粘着層3を露出させた第1粘着シート10を得たときの、第1セパレータ5の剥離力である(図2参照)。
剥離力a1は、第1粘着シート10をその粘着層3を対向させて第1被着体12に重ね、第1積層体20を得た後、第1積層体20から第1粘着シート10を条件2で剥離したときの、第1粘着シート10の剥離力である(図3参照)。
剥離力a2は、第1積層体20に条件3で加温しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体22を得た後、25℃の環境下で第2積層体22から第1粘着シート10を剥離したときの、第1粘着シート10の剥離力である(図4参照)。
【0056】
剥離力bは、25℃の環境下で第2積層体22から第2セパレータ7を剥離し、第1被着体12上に粘着層3を露出させた第2’粘着シート11aを得たときの、第2セパレータ7の剥離力である(図5A参照)。
剥離力b1は、第2’粘着シート11aをその粘着層3を対向させて第2被着体14に重ねて第3’積層体26aを得た後、25℃の環境下で第3’積層体26aから第2’粘着シート11aを剥離したときの、第2’粘着シート11aの剥離力である(図6A参照)。
【0057】
条件1は、剥離環境が25℃であり、剥離方向が第1セパレータ5の一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向であり、剥離速度が300mm/分であり、剥離幅が25mmであること、となる条件である。
条件2は、剥離環境が25℃であり、第1積層体20を得てから剥離開始までの時間が1分間以内であることとなる条件である。
条件3は、加える温度が40℃以上180℃以下、加える圧力が0.2〜1.5MPa、時間が1〜60秒であることとなる条件である。
【0058】
本発明では、上述したそれぞれ剥離力の値は特に限定されない。本例では、a、a1及びbの各値が、好ましくは0.01〜0.45(N/25mm)である。a2及びb1の各値が、好ましくは0.1〜1.50(N/25mm)、より好ましくは0.25〜1.50(N/25mm)である。
関係Aは、a<a1≦b<a2≦b1である。すなわち、aはa1より小さく、a1はb以下であり、bはa2より小さく、a2はb1以下となる関係である。
【0059】
粘着剤組成物に含有させる微粒子として熱発泡剤を用いた場合における粘着シート1の形態において、上述した粘着層3の剥離力a、a1、a2、b及びb1とともに、粘着層3の加熱後の接合力を下記のように接合力a3及びb2としたとき、それぞれの剥離力及び接合力の値が下記の所定範囲であって、かつ下記の関係A1を満足することが好ましい。なお、ここでの剥離力a、a1、a2、b及びb1の意味(条件1〜3も含む)と範囲は、上記のとおりである。
このように、粘着層3の剥離力に加え、粘着層3の加熱後の接合力も所定の関係を満足することで、リワーク性が良好で、リワーク後の接着性にも優れ、加温処理後における被着体との密着性も優れたものにできることに加え、被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体12と第2被着体14の接合が不要になった場合に、被着体に糊残り等による汚染や被着面全体における部分的な付着を生じさせることがなく、該被着体から均一な剥離を実現することができる。
【0060】
接合力b2は、第3’積層体26aに、条件4による加熱処理を施して第3”積層体26bを得た際の、この第3”積層体26bの第2’粘着シート11aと第2被着体14との接合力である(図7A参照)。
接合力a3は、第3”積層体26bの第2被着体14上に粘着層3を露出させた第3粘着シート11bと第1被着体12との接合力である(図7A参照)。
【0061】
条件4は、加熱温度は条件3の加温処理の温度より10℃以上高い温度、加熱時間は15分以上であることとなる条件である。
【0062】
関係A1は、a3≒b2<aである。すなわちa3とb2は略等しく、b2は上記関係Aの最小値aより小さくなる関係である。
【0063】
本例の粘着シート1は、被着体との接触面の粘着力が加熱の前後で変化する粘着層3を有するので、何度でも被着体に貼り直しができると共に、位置決め後は加温処理を施すことにより被着体に対し良好な接着保持力(被着体との密着性)を有する接着シートとして使用することができる。さらに、微粒子として熱発泡剤を用いた場合には、使用目的を終え不要となった際には簡単に剥離することのできる再剥離性粘着シートとして使用することができる。
【0064】
具体的には、例えば、封筒や精密機械収納用ケース等のシール部分、壁紙、ラベル、車のバンパーや電線等の取り付け、フレキシブルプリント基板(FPC)製造工程における裏打用シートやメッキ工程でのマスク材、並びに半導体ウェハの切断工程、及び積層セラミックコンデンサーや、タブレットPC・TV等のディスプレイパネル基板の小片化加工工程における仮止めシート等として、電気・電子業界において広く用いることができる。
【0065】
次に、本発明の被着体積層物の製造方法と処理方法について説明する。
【0066】
(1)まず、図2に示すように、粘着シート1から第1セパレータ5を引き離し、第2セパレータ7上に粘着層3を露出させた第1粘着シート10を準備する。その後、図3に示すように、第1粘着シート10をその粘着層3を対向させて第1被着体12に重ね、第1積層体20を準備する(第1工程)。
第1被着体12としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
【0067】
本例では、第1積層体20の準備に、何度でも被着体への貼り直しが可能な粘着シート1を使用するので、第1被着体12に対する第1粘着シート10の重ね位置が適切でなかった場合に、第1積層体20から第1粘着シート10を引き離す。次に、第1被着体12との重ね位置を変更した後、再び第1粘着シート10を第1被着体12に重ね、第1’積層体を得る。この得られた第1’積層体を第1積層体20として第2積層体22の処理に使用する。重ね位置の変更可能回数は、例えば10回以上である。
【0068】
被着体積層物の製造に用いる本例の粘着シート1は、粘着層3が上記粘着剤組成物により形成され、かつその剥離力が所定の関係(関係A:a<a1≦b<a2≦b1)を満足し、その結果、リワーク性が良好で、かつリワーク後の接着性にも優れているためである。
【0069】
(2)次に、図4に示すように、第1積層体20に加温処理を施して第2積層体22を準備する(第2工程)。加温処理は、加熱しながら第1積層体20の一方の面を押圧する処理である。加温温度(T1)は40℃以上、好ましくは50℃以上であって、180℃以下、好ましくは100℃以下とする。微粒子として熱膨張性微小球を用いた場合には、加熱温度(T1)は熱膨張温度よりも10℃以上低い温度とすることが好ましい。この加温処理により、粘着層3の第2セパレータ7側粘着力よりも高い、第1被着体12に対する良好な接着保持力(第1被着体12との密着性)が発現する。
【0070】
(3)本例では次に、図5に示すように、第2積層体22から第2セパレータ7を引き離し、第1被着体12上に粘着層3を露出させた第2粘着シート11を準備する。その後、図6に示すように、第2粘着シート11をその粘着層3を対向させて第2被着体14に重ね、第3積層体26による被着体積層物を得る(第3工程)。そして、得られた被着体積層物を所望目的(例えば、断裁加工、打抜き加工、印刷加工、蒸着加工等)で使用する。第2被着体14としては、例えば、キャリアガラス、ステンレス板、エポキシシートなどが挙げられる。
【0071】
上記方法によると、本例の粘着シート1を用いるため、何度でも第1被着体12への貼り直しができ、また正しい位置決め後の積層体(本例では第1’積層体)に対しては所定の加温処理を施すことで第1被着体12に対し良好な接着保持力(被着体との密着性)を発現させることが可能である。したがって、被着体が脱落することのない被着体積層物を効率的に製造することができる。
【0072】
本例では、特定の粘着シート1(粘着層3に含有させる微粒子として熱発泡剤を用いたもの)を使用して製造した第3積層体26による被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体12と第2被着体14の接合が不要になると、図7に示すように、第3積層体26に加熱処理を施せばよい(第4工程)。加熱処理での加熱温度(T2)は、第1積層体20に施した加温処理の温度(T1)より10℃以上高い温度である。このような加熱処理によって、図8に示すように、粘着層3の表裏両面のタックを低下させ、これによって、粘着層3に起因する糊残り等による汚染等を第1被着体12及び第2被着体14の双方に生じさせることなく、粘着層3から第1被着体12及び第2被着体14が均一に剥離される。
【0073】
特定の粘着シート1(粘着層3に含有させる微粒子として熱発泡剤を用いたもの)を用いて製造した被着体積層物が使用目的を終え、第1被着体12と第2被着体14の接合が不要になった場合に、所定の加熱処理を施すことにより、粘着層3の表裏両面のタックが適切に低下する。これにより、粘着層3に起因する糊残り等による汚染等を生じさせることなく、粘着層3から第1被着体12及び第2被着体14を均一に剥離することができる。粘着層3から糊残り等することなく均一に剥離された第1被着体12及び第2被着体14は、次の利用に供することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実験例(実施例および比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、「部」「%」は特記しない限り質量基準である。
【0075】
1.粘着剤組成物および粘着シートの作製
[実験例1〜13]
第2セパレータ7として、表面に非シリコーン離型処理が施された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを使用し、その離型処理面に、下記構成成分を表1記載の固形分比で均一に混合し溶解させて調製した粘着層形成塗工液a〜mをそれぞれベーカー式アプリケーターにて塗布した。各塗工液の粘着剤等の固形分比(質量換算)を表1に示す。各塗工液中の全固形分はいずれも40%に調製した。その後、80℃にて十分乾燥することによって粘着層を形成した後、この粘着層の表面に、その一方の表面がシリコーン離型処理された厚み25μmのPETシート(第1セパレータ5)の離型処理面を配設することにより、各例の粘着剤組成物及び粘着シートを作製した。
【0076】
《粘着層形成塗工液a〜mの構成成分》
・粘着剤、微粒子、粘着付与樹脂及び架橋剤: 表1記載の種類と固形分比
・溶媒(トルエン): 226質量部
【0077】
【表1】
【0078】
なお、表1中、粘着剤の「X1」は、ポリアクリル酸エステル樹脂(2−エチルヘキシルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(EHA/HEMA=96.5/3.5)、分子量:52万、ガラス転移温度:−65℃、OH価:4.8、固形分33%)、「X2」は、ポリアクリル酸エステル樹脂(2−エチルヘキシルアクリレート−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(EHA/HEMA=70/30)、分子量:39万、ガラス転移温度:−42℃、OH価:6、固形分42%)である。「X3」は、ポリアクリル酸エステル樹脂(アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体(AA/BA=20/80)、分子量:46万、ガラス転移温度:−31℃、酸価:46、固形分34%)、「X4」は、ポリアクリル酸エステル樹脂(アクリル酸エチル−メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(アクリル酸エチル/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/ヒドロキシエチルメタクリレート=58/38/2/2)、分子量:40万、ガラス転移温度:18℃、OH価:8.6、固形分35%)である。
【0079】
粘着付与樹脂の「Y1」は、キシレン系粘着付与樹脂(ニカノールHP150、軟化点170℃、分子量1400、フドー社製)、「Y2」は、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(YSポリスターT160、軟化点160℃、分子量1100、ヤスハラケミカル社製)、「Y3」は、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(YSポリスターG150、軟化点150℃、分子量700、ヤスハラケミカル社製)、「Y4」は、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(YSポリスターK125、軟化点125℃、分子量600、ヤスハラケミカル社製)である。
【0080】
微粒子の「Z1」は、質量平均粒径が13μm、シリカ(サイリシア470、富士シリシア化学社製)、「Z2」は、質量平均粒径が13μm、熱膨張温度(熱発泡温度と同義。以下同じ)が80℃、発泡倍率が1.5〜5倍の熱膨張性微小球(マツモトマイクロスフェアー、F−36D、松本油脂製薬社製)、「Z3」は、質量平均粒径が12μm、熱膨張温度が100℃、発泡倍率が1.5〜5倍の熱膨張性微小球(マツモトマイクロスフェアー、F−48D、松本油脂製薬社製)である。
【0081】
架橋剤の「エポキシ系」は、テトラッドX、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(エポキシ当量100、三菱ガス化学社製)であり、「イソシアネート系」は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー体であり、NCO含有率が8%の(3OCN(CH26NCO(D−170N、武田薬品工業社製)である。
【0082】
2.評価
各例の粘着剤組成物及び粘着シートについては、粘着層の厚さ、粘着層の剥離力及び接合力、リワーク性(初期の剥離性)、加温密着性(加温処理後の密着性)、並びに加熱剥離性(加熱処理後の剥離性)の5項目について以下の方法により測定または評価した。結果を表2に示す。
【0083】
(2−1)[粘着層の厚さ]
マイクロメーターを使用して、2枚のPETシートを含めた厚みを測定し、測定値から2枚のPETシートの厚みを減ずることにより算出した。
【0084】
(2−2)[剥離力(N/25mm)及び接合力]
剥離力aは、第1セパレータ5を条件1で剥離し、第2セパレータ7上に粘着層3を露出させた第1粘着シート10を得たときの、第1セパレータ5の剥離力であり(図2参照)、この剥離力aを測定した。
剥離力a1は、第1粘着シート10をその粘着層3を対向させて第1被着体(ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるバリアフィルム)12に重ね、第1積層体20を得た後、第1積層体20から第1粘着シート10を条件2で剥離したときの、第1粘着シート10の剥離力であり(図3参照)、この剥離力a1を測定した。
剥離力a2は、第1積層体20に条件3で加温しながら一方の面を押圧する加温処理を施して第2積層体22を得た後、25℃の環境下で第2積層体22から第1粘着シート10を剥離したときの、第1粘着シート10の剥離力であり(図4参照)、この剥離力a2を測定した。
【0085】
剥離力bは、25℃の環境下で第2積層体22から第2セパレータ7を剥離し、第1被着体12上に粘着層3を露出させた第2’粘着シート11aを得たときの、第2セパレータ7の剥離力であり(図5A参照)、この剥離力bを測定した。
剥離力b1は、第2’粘着シート11aをその粘着層3を対向させて第2被着体(キャリアガラス)14に重ねて第3’積層体26aを得た後、25℃の環境下で第3’積層体26aから第2’粘着シート11aを剥離したときの、第2’粘着シート11aの剥離力であり(図6A参照)、この剥離力b1を測定した。
接合力b2は、第3’積層体26aに、条件4による加熱処理を施して第3”積層体26bを得た際の、この第3”積層体26bの第2’粘着シート11aと第2被着体14との接合力であり(図7A参照)、この接合力b2を測定した。
接合力a3は、第3”積層体26bの第2被着体14上に粘着層3を露出させた第3粘着シート11bと第1被着体12との接合力であり(図7A参照)、この接合力a3を測定した。
そして、a、a1、a2、a3、b、b1及びb2の数値の大小を比較し、関係A(a<a1≦b<a2≦b1)と関係A1(a3≒b2<a)を満足している否かを評価した。満足していたものを良好として「○」、満足していなかったものを不良として「×」とした。
【0086】
なお、条件1〜4は以下のとおりとした。条件1は、剥離環境が25℃であり、剥離方向が第1セパレータ5の一端をその一端が向く方向と反対の方向となる180度の方向であり、剥離速度が300mm/分であり、剥離幅が25mmであること、となる条件である。条件2は、剥離環境が25℃であり、第1積層体20を得てから剥離開始までの時間が1分間以内であることとなる条件である。条件3は、加える温度が60℃、加える圧力が0.3MPa、時間が30秒である。条件4は、加熱温度が実験例7は80℃、実験例8は100℃、条件3の加温処理の温度より10℃以上高い温度、加熱時間は30分である。
【0087】
(2−3)[リワーク性]
5cm×5cmサイズの実験例で得られた粘着シートを準備し、その第1セパレータ5を剥離して露出させた粘着層を、被着体として準備したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、10cm×10cm、ルミラーT60、東レ社製)の表面に2kgのローラーで貼り合せ、30秒以内に剥がしたとき、第2セパレータ7ごと粘着層がきれいに剥がれたものを「○」、第2セパレータ7が剥離し粘着層がフィルムに残ったものを「×」とした。
【0088】
(2−4)[加温処理後の密着性]
リワーク後の接着性を評価するため、加温処理後における被着体との密着性について評価した。
上記リワーク性の評価で用いた粘着シートを、もう一度該被着体の表面に、60℃に熱した2kgのローラーを用いて30秒かけて貼り合せた後、室温にもどるまで静置した。評価は、被着体に該粘着シートの粘着層が密着し、第2セパレータ7のみが簡単に剥がれたものを「○」、第2セパレータ7のみどうにか剥がせたものを「△」、第2セパレータ7のみ剥がすことができず、被着体から該粘着シートの粘着層ごと剥がれてしまったものを「×」とした。
【0089】
(2−5)[加熱処理後の剥離性]
2cmm×10cmの実験例11、12で得られた粘着シートを準備し、その第1セパレータ5を剥離して露出させた粘着層を、第1被着体として準備したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み100μm、3cm×15cm:ルミラーT60、東レ社製)の表面に貼付した。次いで、その第2セパレータを剥離して露出させた粘着層を、第2被着体として準備したガラス板(厚み1.5mm、3cm×15cm)の表面に貼付した後、80〜100℃のオーブンで30分間加熱した。放冷後、室温(23℃)にて、粘着シートの粘着層が第1被着体及び第2被着体から剥離しているか否かを目視により評価した。評価は、剥離していた場合を「○」、剥離していなかった場合を「×」とした。
【0090】
【表2】
【0091】
表2に示すように、実験例1〜8、11〜13の粘着シートは、粘着層中に微粒子を含有させ、かつ粘着層の剥離力がa<a1≦b<a2≦b1の関係を満足していた。すなわち粘着層の剥離力が関係A:a<a1≦b<a2≦b1を満足していた。その結果、リワーク性に優れ、かつリワーク後の接着性(加温処理後の被着体との密着性)も優れたものとなった。
【0092】
なかでも、実験例11、12の粘着シートは、粘着層中に含有させる微粒子として熱膨張性微小球を使用したため、粘着層の剥離力がa<a1≦b<a2≦b1の関係を満足することに加え、粘着層の加熱後の接合力がa3=b2であり、かつa3=b2<aの関係をも満足していた。すなわち粘着層の剥離力が関係A:a<a1≦b<a2≦b1を満足し、かつ粘着層の加熱後の接合力が関係A1:a3≒b2<aを満足していた。その結果、リワーク性に優れ、かつリワーク後の接着性(加温処理後の被着体との密着性)も優れることに加え、加熱剥離性にも優れたものとなった。
【0093】
一方、実験例9、10の粘着シートは、粘着層中に微粒子を含有させたが、粘着層の剥離力が関係Aを満たすものではなかったため、実験例1〜8、11〜13の粘着シートと比べてリワーク性が劣るものとなった。
【符号の説明】
【0094】
1…粘着シート、
3…粘着層、
5…第1セパレータ、
7…第2セパレータ、
10…第1粘着シート(7、3)、
11…第2粘着シート(12、3)、
11a…第2’粘着シート(12、3)、
11b…第3粘着シート(14、3)
12…第1被着体、
14…第2被着体、
20…第1積層体(10、12)、
22…第2積層体(20)、
26…第3積層体(12、3、14)、
26a…第3’積層体(11a、14)、
26b…第3”積層体。
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図6
図6A
図7
図7A
図8