(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御対象となる機器にオイルを供給するコントロールバルブ装置であって、 内部に油路を有するバルブボディと、 前記バルブボディ内に設けられ、複数の前記油路に繋がるスプール穴と、 前記スプール穴内に配置され、前記スプール穴の手前側から奥側へ軸方向に延びるスプールと、 前記スプールの軸方向の位置を検出するストロークセンサと、を有し、 前記スプールは金属製であり、 前記ストロークセンサは、 前記スプールと略同軸に配置されたコイルと、 前記コイルと電気的に接続されるセンサ回路と、を有し、 前記スプールの手前側の端部の移動範囲の少なくとも一部分が、前記コイルの内側に位置し、 前記スプール穴に挿入される樹脂製のセンサ筒部を有し、 前記コイルは、前記センサ筒部内に埋め込まれ、 前記センサ回路を内部に保持する樹脂製の蓋部をさらに有し、 前記蓋部によって、前記スプール穴が封止される、コントロールバルブ装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
なお、本願では、スプールの中心軸に沿う方向を「軸方向」と称する。また、軸方向に沿って、スプール穴の開口側を「手前側」とし、その反対側を「奥側」として、各部の形状や位置関係を説明する。本願の各図には、「手前側」および「奥側」が、矢印で示されている。
【0011】
<1.一実施形態に係るコントロールバルブ装置>
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係るコントロールバルブ装置1の部分縦断面図である。このコントロールバルブ装置1は、自動車などの輸送機器に搭載され、輸送機機内の無段変速機にオイル(オートマチック・トランスミッション・フルード、ATF)を供給することにより、無段変速機の駆動を制御する装置である。
図1および
図2に示すように、本実施形態のコントロールバルブ装置1は、バルブボディ10、スプール20、およびストロークセンサ30を有する。
【0012】
バルブボディ10は、内部に油路11を有する金属製の筐体である。バルブボディ10は、複数(例えば2〜3枚)の略板状の部材を、上下に多段に積層することにより構成される。複数の部材は、上下方向にねじ止めされることによって、互いに固定される。バルブボディ10を構成する個々の部材は、例えば、アルミニウム等の金属のダイカストにより形成される。なお、
図1および
図2では、バルブボディ10内の1つの金属部材の一部分が示されている。
【0013】
バルブボディ10の内部には、オイルの流路となる複数の油路11が設けられている。複数の油路11は、バルブボディ10の内部において、複雑に入り組んでいる。また、バルブボディ10内には、複数の油路11に繋がるスプール穴12が設けられている。スプール穴12は、バルブボディ10を構成する部材の側面から、部材の内部へ向けて、水平方向に延びている。
【0014】
本実施形態では、スプール穴12に、信号油路61、入力油路62、出力油路63、および排出油路64の4つの油路11が、繋がっている。信号油路61は、スプール穴12の最も奥側の端部に接続される。信号油路61は、後述するスプール20に対して、軸方向手前側への圧力である信号圧を供給するための油路である。信号油路61は、バルブボディ10内の他の箇所に設けられたソレノイドバルブ13を介して、バルブボディ10の外部に設置されたオイルポンプ2と繋がっている。
【0015】
入力油路62は、信号油路61よりもスプール穴12の手前側の位置に、接続される。出力油路63は、入力油路62よりもスプール穴12の手前側の位置に、接続される。また、排出油路64は、出力油路63よりもスプール穴12の手前側の位置に、接続される。
【0016】
スプール20は、スプール穴12内に配置された円柱状の部材である。スプール20は、スプール穴12の手前側から奥側へ、軸方向に延びる。スプール20は、スプール穴12の内径と略同等の外径を有する大径部21と、大径部21よりも小さい外径を有する小径部22とを有する。スプール20の材料には、例えば、オイルと透磁率の異なるアルミニウム等の金属が用いられる。
【0017】
図1および
図2に示すように、スプール20と後述するセンサ保護部材34との間には、コイルばね40が介挿されている。コイルばね40は、自然長よりも軸方向に圧縮された状態で、スプール穴12内に配置される。このため、スプール20は、コイルばね40から常に軸方向奥側へ向かう反発力を受ける。また、スプール20の位置が軸方向手前側に移動するほど、コイルばね40は圧縮されるため、コイルばね40からスプール20が受ける反発力は、より大きくなる。
【0018】
ソレノイドバルブ13が開放されて、信号油路61へオイルが供給されると、スプール20に対して、軸方向手前側へ向かう信号圧がかかる。ソレノイドバルブ13は、輸送機器内のシフトレバーの操作状態や、輸送機器の速度、エンジンの回転数などの諸条件に応じて、コントロールユニット3から供給される駆動電流に基づいて、開度が調節される。これにより、スプール20にかかる信号圧が変化する。スプール20は、オイルの信号圧と、コイルばね40の反発力とが等しくなる位置に、位置決めされる。
【0019】
スプール20の軸方向の位置が変化すると、入力油路62、出力油路63、および排出油路64の相互の接続状態が変化する。例えば、
図1の状態では、排出油路64が、他の2つの油路62,63から孤立する。そして、入力油路62と出力油路63とが、スプール20の大径部21に設けられた切り欠き23と、小径部22の周囲の空間とを介して、互いに連通する。したがって、
図1の状態では、入力油路62から導入されるオイルが、出力油路63へ流れ込み、制御対象となる無段変速機へ供給される。
【0020】
図2の状態では、入力油路62が、他の2つの油路63,64から孤立する。そして、出力油路63と排出油路64とが、スプール20の大径部21に設けられた切り欠き23と、小径部22の周囲の空間とを介して、互いに連通する。したがって、
図2の状態では、無段変速機から出力油路63へ返還されたオイルが、排出油路64へ流れ込み、排出油路64から外部へ排出される。
【0021】
ストロークセンサ30は、スプール20の軸方向の位置を検出する非接触式のセンサである。上述の通り、スプール20は、オイルの信号圧とコイルばね40の反発力とによって、位置決めされる。ただし、同一の信号圧をかけた場合であっても、コイルばね40のばね係数の個体差等によって、スプール20の位置に微妙な差が生じる。また、スプール20の位置が微妙に変化すると、出力されるオイルの流量も変化する。このため、このコントロールバルブ装置1では、ストロークセンサ30を用いて、スプール20の軸方向の位置を実測制御する。
【0022】
図1および
図2に示すように、本実施形態のストロークセンサ30は、コイル31、センサ回路32、樹脂部材33、およびセンサ保護部材34を有する。
【0023】
コイル31は、螺旋状に巻かれた導線により形成される。コイル31は、スプール20と略同軸に配置される。スプール20の軸方向手前側の端部は、コイル31の内側に配置される。スプール20が軸方向に移動すると、スプール20のうちコイル31の内側に配置される部分の軸方向の長さが変化する。そうすると、コイル31のインダクタンスが変化する。すなわち、コイル31のインダクタンスは、スプール20の軸方向の位置を反映したパラメータとなる。
【0024】
センサ回路32は、スプール20の軸方向の位置を示す検出信号を生成するための電気回路である。センサ回路32は、コイル31と電気的に接続される。センサ回路32は、コイル31のインダクタンスを測定し、測定されたインダクタンスから、スプール20の軸方向の位置を算出する。そして、スプール20の軸方向の位置を示す検出信号を、コネクタ35を介して外部のコントロールユニット3へ出力する。コントロールユニット3は、受信した検出信号に基づいて、ソレノイドバルブ13の開度を調節する。これにより、スプール20の軸方向の位置が、フィードバック制御される。
【0025】
このように、本実施形態のストロークセンサ30は、金属製のスプール20の移動によって、コイル31のインダクタンスが変化することを利用して、スプール20の軸方向の位置を検出する。すなわち、ストロークセンサ30のコイル31が、スプール20自体の移動を直接検出する。このため、本実施形態の構造では、ストロークセンサ30に別途センサプレートおよびセンサロッド等の部品を設ける必要がない。したがって、コントロールバルブ装置1の部品点数を低減できるとともに、スプール弁およびストロークセンサ30を、全体として小型化できる。
【0026】
本実施形態のスプール20は、手前側の端部から軸方向奥側へ延びる略円筒状のスプール筒部24を有する。スプール筒部24の外径は、センサ筒部331の内径および大径部21の外径と、略同一となっている。コイルばね40の奥側の一部分は、スプール筒部24内に収容される。したがって、スプール筒部24は、コイルばね40よりも外側、すなわち、コイルばね40よりもコイル31に近い位置に、配置される。このため、スプール20の外側にコイルばね40を配置する場合よりも、コイル31とスプール20の外周面との距離が接近する。その結果、コイル31が、スプール20の軸方向の位置を、より精度よく検出できる。
【0027】
コイル31およびセンサ回路32は、一繋がりの樹脂部材33によって、保持される。樹脂部材33は、耐熱性を有する固形の樹脂により形成される。樹脂部材33の材料には、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が用いられる。樹脂部材33の耐熱限界温度は、スプール穴12内に充填されるオイルの温度よりも十分に高いことが好ましい。具体的には、樹脂部材33の耐熱限界温度を、例えば、200℃以上とすればよい。
【0028】
樹脂部材33は、コイル31およびセンサ回路32をインサート部品とする樹脂モールドにより成型される。具体的には、まず、予め成型された樹脂製のボビンの周りに、導線を巻き付けて、コイル31を形成する。そして、当該ボビン、コイル31、およびセンサ回路32を、金型の内部に配置した状態で、金型内の空間に溶融樹脂を流し込む。その後、流し込まれた溶融樹脂を固化させることにより、樹脂部材33を得る。
【0029】
本実施形態の樹脂部材33は、コイル31を保持する円筒状のセンサ筒部331と、センサ回路32を保持する略円板状の蓋部332とを有する。
【0030】
センサ筒部331は、蓋部332の奥側の面から、軸方向奥側へ向けて略円筒状に延びている。センサ筒部331は、バルブボディ10のスプール穴12に挿入される。コイル31は、センサ筒部331の樹脂の内部に、埋め込まれている。したがって、スプール穴12内のオイルが、コイル31に直接接触することはない。また、コイル31がセンサ筒部331の外周面に巻かれる場合よりも、コイル31とスプール20との距離が近づく。これにより、コイル31によるスプール20の検出精度が向上する。
【0031】
蓋部332は、スプール穴12の手前側の開口に取り付けられる。これにより、スプール穴12が封止される。センサ回路32は、蓋部332の樹脂の内部に、埋め込まれている。したがって、スプール穴12内のオイルが、センサ回路32に直接接触することはない。また、蓋部332内にセンサ回路32を配置することで、蓋部332とは別にセンサ回路32を配置するためのスペースを確保する必要がなくなる。その結果、コントロールバルブ装置1をより小型化できる。
【0032】
センサ保護部材34は、センサ筒部331の内側かつ蓋部332の奥側に、配置される。センサ保護部材34の材料には、例えば、アルミニウム等の金属が用いられる。
図3は、樹脂部材33、センサ保護部材34、およびコイルばね40の横断面図である。
図3に示すように、センサ保護部材34は、板状部341と、一対の脚部342とを有する。板状部341は、中心軸9に対して垂直に広がる。一対の脚部342は、それぞれ、板状部341から軸方向手前側へ向けて延びる。
【0033】
センサ保護部材34は、樹脂部材33の成型時にインサート部品として一体化されてもよく、成型後の樹脂部材33に取り付けられてもよい。コイルばね40の手前側の端部は、板状部341の奥側の面に、接触する。すなわち、本実施形態では、板状部341の奥側の面が、ばね受け面343となっている。コイル31とばね受け面343との位置関係は、常に一定となる。
【0034】
センサ保護部材34は、蓋部332とスプール20との間に介在する。したがって、スプール20を軸方向手前側へ最大限に移動させると、スプール筒部24の手前側の端部が、センサ保護部材34に接触して停止する。これにより、スプール筒部24の手前側の端部が、蓋部332に直接衝突することが防止される。その結果、スプール20の衝撃によるセンサ回路32の損傷を抑制できる。特に、本実施形態では、センサ保護部材34が金属製であるため、樹脂製の場合と比べて、センサ保護部材34が高硬度かつ低弾性となる。このため、スプール20の手前側の停止位置を、精度よく位置決めできる。
【0035】
リテーナ部材50は、バルブボディ10に対する樹脂部材33の相対移動を制限するための部材である。リテーナ部材50は、バルブボディ10および樹脂部材33の双方に対して、下から上へ挿入される。リテーナ部材50は、例えば、アルミニウム等の金属により、形成される。
図4は、ストロークセンサ30付近におけるコントロールバルブ装置1の部分分解断面図である。
図4に示すように、バルブボディ10には、スプール穴12の上側および下側に、上下に貫通する一対の貫通孔71が設けられている。また、樹脂部材33のセンサ筒部331にも、上下に貫通する一対の貫通孔72が設けられている。
【0036】
コントロールバルブ装置1を組み立てるときには、まず、バルブボディ10のスプール穴12に、スプール20と、コイルばね40とを、この順に挿入する。次に、スプール穴12に、樹脂部材33のセンサ筒部331を挿入する。そして、バルブボディ10の一対の貫通孔71と、樹脂部材33の一対の貫通孔72とが、上下に重なるまで、樹脂部材33を押し込みながら、これらの貫通孔71,72に、リテーナ部材50挿入する。これにより、スプール穴12から樹脂部材33が手前側に抜けることが防止される。
【0037】
なお、リテーナ部材50の下端部は、軸方向に屈曲している。リテーナ部材50を貫通孔71に挿入した後、リテーナ部材50の下方には、バルブボディ10の他の部材または蓋体が配置される。これにより、リテーナ部材50が下方へ脱落することが、防止される。
【0038】
図3に示すように、リテーナ部材50は、センサ保護部材34の板状部341と、樹脂部材33の蓋部332との間に配置される。また、センサ保護部材34は、コイルばね40から常に軸方向手前側への反発力を受ける。これにより、板状部341の手前側の面は、リテーナ部材50の奥側の面に接触する。また、リテーナ部材50の手前側の面は、バルブボディ10の一対の貫通孔71の縁に接触する。これにより、バルブボディ10、リテーナ部材50、およびストロークセンサ30の相互の軸方向の位置関係が、常に固定される。すなわち、このコントロールバルブ装置1では、コイルばね40の反発力によって、ストロークセンサ30の軸方向のがたつきが抑制されている。その結果、ストロークセンサ30による検出精度がより向上する。
【0039】
<2.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0040】
図5は、一変形例に係るコントロールバルブ装置1Aの部分縦断面図である。
図5の例では、リテーナ部材50Aの上端部が、スプール穴12A内に位置する。すなわち、
図5の例では、リテーナ部材50Aが、バルブボディ10Aを構成する部材を、貫通していない。このような構造であっても、バルブボディ10A、リテーナ部材50A、および樹脂部材33Aが、相互に軸方向に接触していれば、スプール穴12Aからの樹脂部材33Aの抜けを防止し、ストロークセンサ30Aの軸方向のがたつきを抑制できる。このように、リテーナ部材は、バルブボディおよび樹脂部材を、必ずしも貫通していなくてもよい。
【0041】
また、リテーナ部材は、必ずしも上下方向に挿入されるものでなくてもよい。例えば、リテーナ部材は、上下方向に対して斜めに挿入されるものであってもよい。つまり、リテーナ部材は、バルブボディおよび樹脂部材の双方に、軸方向に対して略垂直に挿入されるものであればよい。
【0042】
図6は、他の変形例に係るコントロールバルブ装置1Bの部分縦断面図である。
図6の例では、スプール20Bの手前側の端部付近に、スプール穴12Bの内径よりも小さい外径を有する小径部22Bが設けられている。そして、コイルばね40Bの内側に、小径部22Bが挿入されている。したがって、中心軸9Bに対して小径部22Bよりも外側に、コイルばね40Bが配置されている。このような構造にすれば、コイルばね40Bの径を大きくすることができる。したがって、コイルばね40Bの座屈を抑制して、スプール20Bをより正確に位置決めできる。
【0043】
図7は、他の変形例に係るコントロールバルブ装置1Cの部分縦断面図である。
図7の例では、ストロークセンサ30Cのセンサ保護部材34Cに、凸部344Cが設けられている。凸部344Cは、センサ保護部材34Cのばね受け面343Cから、軸方向奥側へ向けて突出する。そして、コイルばね40Cの内側に、凸部344Cが挿入される。このようにすれば、凸部344Cによって、コイルばね40Cの座屈を抑制できる。したがって、スプール20Cをより正確に位置決めできる。また、
図6の構造よりも、スプール20Cの外周面とコイル31Cとの距離が近づくため、ストロークセンサ30Cの検出感度を向上させることができる。
【0044】
また、上記の実施形態では、輸送機器の無段変速機を制御対象としていたが、本発明のコントロールバルブ装置は、無段変速機以外の自動変速機を、制御対象とするものであってもよい。また、本発明のコントロールバルブ装置は、オイルにより制御される自動変速機以外の機器を、制御対象とするものであってもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、スプール20が水平方向に移動していたが、コントロールバルブ装置の使用時の姿勢において、スプール20の移動方向は、必ずしも水平方向でなくてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態では、スプール20の手前側の端部が、常にコイルの内側に位置していた。しかしながら、スプールの手前側の端部は、コイルの奥側の端部よりも奥側の位置まで、移動してもよい。すなわち、スプールの手前側の端部の移動範囲の少なくとも一部分が、コイルの内側に位置していればよい。
【0047】
また、コントロールバルブ装置の本発明の構成要件以外の部分については、特に限定されない。また、バルブボディ、スプール、ストロークセンサ等の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。
【0048】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。