【文献】
I. M. Roushdi et al.,Journal of Medicinal Chemistry,1976年,Vol.19, No.11,p.1333-1336
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のエポキシ樹脂は柔軟な硬化物となるが、十分な強度を得ることができない。
【0008】
また、非特許文献1及び非特許文献2に記載されたエポキシ樹脂は融点が高いため、該エポキシ樹脂を工業的に広く使用される硬化剤と混合する段階で硬化反応が進行してしまい、均一な硬化物を得ることができないという課題がある。また、液状の硬化性樹脂組成物を調製することを目的とする場合でも、エポキシ樹脂の結晶性が強いために液状とはならなかったり、配合直後には液状であっても、該樹脂組成物を保存している間にエポキシ樹脂の結晶化によって樹脂組成物が固形になってしまう。
【0009】
本発明は上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、十分な硬化性及び耐熱性を確保した上で、優れた強靱性及び接着性を発揮できるエポキシ樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造の化合物ないしエポキシ樹脂が上述した従来技術の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上記目的を達成する本発明の要旨は次のとおりである。
[1]
下記一般式(1)で表される化合物を含む、エポキシ樹脂。
【化1】
(式(1)中、MSは置換又は無置換の2つ以下のフェニレン基から構成されるメソゲン構造を表し、SP1及びSP2はそれぞれ独立に下記一般式(2)で示される構造を表し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(4)で示される1価の有機基を表す。)
【化2】
(式(2)中R
1は、下記一般式(3)で示される構造を含む炭素数2から10の炭化水素基を表す。)
【化3】
(式(3)中R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数3以下の炭化水素基であり、R
2及びR
3のいずれかは水素原子以外の構造を示す。)
【化4】
(式(4)中、R
4は水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を表す。)
[2]
前記式(1)中におけるMSが下記一般式(5)又は(6)で示されるいずれかの構造である、[1]に記載のエポキシ樹脂。
【化5】
(式(5)中、R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す。)
【化6】
(式(6)中、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を表し、p及びqはそれぞれ独立に4以下の整数を表す。)
[3]
前記式(1)中におけるMSが下記式(9)で示される構造である、[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂。
【化7】
[4]
前記式(1)中におけるSP1及びSP2がそれぞれ独立に下記式(11)又は式(12)で示される構造である、[1]〜[3]のいずれか記載のエポキシ樹脂。
【化8】
【化9】
[5]
エポキシ化率が80%以上である、[1]〜[4]のいずれか記載のエポキシ樹脂。
[6]
[1]〜[5]のいずれか記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する、エポキシ樹脂組成物。
[7]
無機フィラーをさらに含有する、[6]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]
室温で液状である、[6]又は[7]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[9]
[1]〜[5]のいずれか記載のエポキシ樹脂を含有し、かつ、固形又は液状である、半導体封止材。
[10]
[1]〜[5]のいずれか記載のエポキシ樹脂を含有する、熱伝導材料。
[11]
[1]〜[5]のいずれか記載のエポキシ樹脂を含有する、フィルム状接着剤。
[12]
[6]〜[8]のいずれか記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる、エポキシ樹脂硬化物。
[13]
下記一般式(1)で表される、化合物。
【化10】
(式(1)中、MSは2つ以下の置換又は無置換のフェニレン基から構成されるメソゲン構造を表し、SP1及びSP2はそれぞれ独立に下記一般式(2)で示される構造を表し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(4)で示される1価の有機基を表す。)
【化11】
(式(2)中R
1は、下記一般式(3)で示される構造を含む炭素数2から10の炭化水素基を表す。)
【化12】
(式(3)中R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数3以下の炭化水素基であり、R
2及びR
3のいずれかは水素原子以外の構造を示す。)
【化13】
(式(4)中、R
4は水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明により、十分な硬化性及び耐熱性を確保した上で、優れた強靱性及び接着性を発揮するエポキシ樹脂を提供することができ、さらに、安定な液状のエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
≪一般式(1)で表される化合物及びこれを含むエポキシ樹脂≫
本実施形態の化合物は、下記一般式(1)で表される。また、本実施形態のエポキシ樹脂は、本実施形態の化合物を含む。本明細書において、下記一般式(1)におけるGがいずれも水素原子である場合は、当該化合物を特に「アルコール性化合物」ともいう。
【0016】
【化14】
(式(1)中、MSは置換又は無置換の2つ以下のフェニレン基から構成されるメソゲン構造を表し、SP1及びSP2はそれぞれ独立に下記一般式(2)で示される構造を表し、Gはそれぞれ独立に水素原子又は下記一般式(4)で示される1価の有機基を表す。)
【0017】
【化15】
(式(2)中R
1は、下記一般式(3)で示される構造を含む炭素数2から10の炭化水素基を表す。)
【0018】
【化16】
(式(3)中R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数3以下の炭化水素基であり、R
2及びR
3のいずれかは水素原子以外の構造を示す。)
【0019】
【化17】
(式(4)中、R
4は水素原子又は炭素数1以上3以下の炭化水素基を表す。)
【0020】
本実施形態の化合物ないしエポキシ樹脂は、上記のように構成されているため、強靱性及び接着性に優れたエポキシ樹脂を提供することができ、さらに、安定な液状のエポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0021】
<メソゲン構造>
本実施形態において、MSは置換又は無置換の2つ以下のフェニレン基から構成されるメソゲン構造を表す。メソゲン構造とは、分子構造が液晶性を示すのに必要な剛直構造であり、メソゲン構造の具体的構造としては、特に限定されないが、例えば、日本接着学会誌、第40巻、第1号(2004年)の第14頁から第15頁に記載されている構造が挙げられる。以下、単に「メソゲン」ともいう。
【0022】
メソゲン構造は剛直な構造を有するため、メソゲン構造を含有するエポキシ樹脂を硬化した場合、強靱なネットワーク構造となる傾向にある。
【0023】
<メソゲン構造の特定>
しかしながら、メソゲン構造が比較的平面構造をとるがゆえに通常のメソゲン構造を含有するエポキシ樹脂の融点は一般的に高い。エポキシ樹脂は、融点が高い場合、硬化剤と均一に混合するために、通常予め高温で溶融した状態に置かれる。しかしながら、予め高温で溶融しておいた該エポキシ樹脂は、高温であるがゆえに硬化剤を添加したと同時に反応が開始してしまい、結果として均一な硬化物が得られないことがしばしば生じるため、工業的に問題がある。
【0024】
また、従来、均一な樹脂組成物を調製するためにエポキシ樹脂と硬化剤とを有機溶媒に溶解して均一にする手法がしばしばとられる。しかしながら、メソゲン構造を含有するエポキシ樹脂は、通常有機溶媒への溶解性が低い傾向にあり、前記手法をとっても均一な樹脂組成物を調製することは困難である。
【0025】
そこで、上記問題を解決するために、本実施形態のエポキシ樹脂に含有させるメソゲン構造としては、「含有するフェニレン基の個数を2つ以下であること」とする。
【0026】
すなわち、含有するフェニレンの個数は2個以下と特定することにより、メソゲン含有エポキシ樹脂の本来の特性を損なうことなくその融点を下げ、有機溶媒への溶解性を高めることができる。
【0027】
そのようなMSとしては、以下に限定されないが、下記一般式(5)〜(8)で示される構造が例示され、MSがこのような構造であると、他のメソゲン構造に比較してエポキシ樹脂の融点が低く、有機溶解性の高いものとなり、さらには硬化物とした際の強靱性に優れたものとなる傾向にある。
【0028】
【化18】
(式(5)中、R
5及びR
6はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す。)
【0029】
【化19】
(式(6)中、R
7及びR
8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を表し、p及びqはそれぞれ独立に4以下の整数を表す。)
【化20】
(式(7)中、R
9及びR
10はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す。)
【0030】
【化21】
(式(8)中、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示す。)
【0031】
前記式(1)中におけるMSとしては、化学的に安定でかつ容易に合成できる点で、上記一般式(5)及び(6)で示される構造がより好ましく、下記式(9)、(10)で示される構造が工業的に容易に合成できる点でさらに好ましく、中でも下記式(9)で示されるものが融点が低い傾向にあるためよりさらに好ましい。
【0034】
<SP1、SP2>
本実施形態のエポキシ樹脂は、上記式(1)で示されるとおり、MS(メソゲン構造)にSP1及びSP2(上記一般式(2)で示される2価の有機基)が結合する構造を有する。
【0035】
<R
1炭素数>
R
1は炭素数2から10の炭化水素基である。炭素数が大きいほどエポキシ樹脂の融点が低い傾向にあるが、炭素数が10よりも大きいとメソゲンの濃度が低くなり、メソゲン骨格の強靭性が十分に発揮されない。そのような観点から好ましい炭素数は2から5、より好ましくは炭素数3である。
【0036】
<分岐構造(式(3)、R
2,R
3)>
式(3)に示される分岐した構造がメソゲンの両端に結合されることによりエポキシ樹脂の融点を下げ、有機溶解性を高めることができる。また、式(3)に示される分岐した構造がメソゲンの両端に結合されることにより硬化物の靱性と接着強度を高めることができる。メソゲンを含有するエポキシ樹脂が硬化剤と反応して形成されるネットワーク中で、メソゲンが極度に配向するとネットワークを形成する分子鎖の運動性が著しく抑制される。その結果、硬化中及び硬化後の冷却過程において生じる分子鎖の緩和現象が発現されにくくなり、その結果内部応力の高い硬化物となる。したがって式(3)に示される分岐した構造がメソゲンの両端に結合されることにより硬化物の内部応力は低減され、メソゲン基含有エポキシ樹脂の高い強靭性に基づいて機能される高い接着性を効果的に発現させることができる。
【0037】
R
1が式(3)の構造を1つでも含有することにより、十分な接着強度の改善効果が発現され、その含有数が大きいほどエポキシ樹脂の融点が低下する傾向にあり、含有数が少ないほど耐熱性が高い傾向にある。そのような観点からR
1中の式(3)の好ましい数は1個から3個であり、より好ましくは1個である。
【0038】
また、R
2,R
3の水素原子以外の有機基は炭素数3以下の炭化水素基であり、少ないほど耐熱性が高い傾向にあるという観点からR
2,R
3の好ましい炭素数は1である。
【0039】
このような観点から、最も好ましい一般式(2)の構造として下記式(11)、式(12)が例示される。
【0042】
<エポキシ基>
上記一般式(1)中のGは、それぞれ独立に水素原子又は上記一般式(4)で示される1価の有機基を表す。
【0043】
R
1は上述のとおり炭化水素基であり、該炭化水素基の炭素数が大きいほど該エポキシ樹脂を硬化して得られる硬化物の耐水性が向上するが、該エポキシ樹脂の融点が比較的上昇する傾向にある。そのような観点から式(4)中のR
4は水素原子又は炭素数が1の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0044】
<融点>
本実施形態のエポキシ樹脂は、その融点によっては限定されないが、その融点が低いほど硬化剤と加熱混合する際に低温で混合することが可能となり、その混合中の反応を抑制できるため均一な硬化物が得られる傾向にある。このような観点から、本実施形態のエポキシ樹脂の融点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下、よりさらに好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下、さらに特に好ましくは40℃以下である。また、本実施形態のエポキシ樹脂の融点の下限は、特に限定されないが、例えば−100℃以上である。本実施形態のエポキシ樹脂は、室温で液状であることが好ましい。本実施形態のエポキシ樹脂の融点は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0045】
<合成方法>
以下、本実施形態のエポキシ樹脂の合成方法は、特に限定されないが、例えば、以下のような合成方法が挙げられる。
【0046】
本実施形態のエポキシ樹脂は、例えば、下記一般式(13)で示される化合物のアルコール性水酸基をエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンとアルカリ条件下で作用させることなどにより重縮合させて合成することができる。
【0047】
【化26】
(式(13)中、MS、SP1及びSP2は上記式(1)中のMS、SP1及びSP2と同義である。なお、式(13)で示される化合物において、アルコール性水酸基とは、末端のH(水素原子)とSP1中のO(酸素原子)とが結合した部分の−OH(水酸基)、及びもう一方の末端のH(水素原子)とSP2中のO(酸素原子)とが結合した部分の−OH(水酸基)を意味する。)
【0048】
下記一般式(13)で示される化合物の製造法は特に限定されないが、下記一般式(XX):
HO−MS−OH ・・・(XX)
(式(XX)中、MSは一般式(1)のMSと同義である。)
で表される化合物と一般式(XXX):
X−R
1−OH ・・・(XXX)
(式(XXX)中、R
1は一般式(2)のR1と同義である。)
で表される化合物とをアルカリ存在下で反応させることによって得ることができる。あるいは、上記一般式(XX)で表される化合物と無触媒下またはアルカリなどの触媒存在下でプロピレンカーボネートと反応させることによっても合成することができる。
【0049】
また、本実施形態のエポキシ樹脂は、上記一般式(13)で示される化合物のアルコール性水酸基と二重結合を有するアルケニルブロマイド、たとえばアリルブロマイドとアルカリ条件下で反応させた後、メタクロロ過安息香酸などによって二重結合を酸化させることによっても合成することができる。
【0050】
本実施形態のエポキシ樹脂は、上記のいずれかの方法などにより合成することができるが、逐次重合体として得られることがあり、その場合、通常分子量分布を有する。
【0051】
本実施形態のエポキシ樹脂は、工業的に使用する場合、分子量分布を有する形態であってもよい。また、本実施形態のエポキシ樹脂は、溶媒等を用いて結晶化によって精製し、単量体とすることもできる。
【0052】
本実施形態のエポキシ樹脂は、数平均分子量が小さいほど溶融粘度が低く作業性が良い傾向にある。そのような観点から、本実施形態のエポキシ樹脂の数平均分子量は、5000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。本実施形態のエポキシ樹脂の数平均分子量の下限は、特に限定されないが、例えば、200以上である。本実施形態のエポキシ樹脂の数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0053】
<塩素含有量>
本実施形態のエポキシ樹脂は、塩素含有量が低いほどエポキシ基の反応性が高い傾向にあり本実施形態の効果がより顕著に発現できる傾向にあるので好ましい。このような観点から本実施形態のエポキシ樹脂における塩素含有量は低いほど好ましく、5000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。本実施形態のエポキシ樹脂における塩素含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0054】
<エポキシ化率>
本実施形態のエポキシ樹脂は、そのエポキシ基含有率(エポキシ化率)が高いほど本実施形態の効果が十分に発揮される傾向にある。本実施形態のエポキシ樹脂におけるエポキシ化率は、該エポキシ樹脂の、化学構造式から算出される理論エポキシ価に対する百分率で定義される。エポキシ価は該エポキシ樹脂の100gあたりのエポキシ基の含有率であり、実施例に記載される測定方法で測定される。本実施形態のエポキシ樹脂は、そのエポキシ化率が100%に近いほどエポキシ樹脂構造の配向度が高まり易い傾向がある。このような観点から、本実施形態のエポキシ樹脂におけるエポキシ化率は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。
【0055】
≪エポキシ樹脂組成物≫
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含有していてもよい。
【0056】
<硬化剤、硬化促進剤>
上述のエポキシ樹脂は、以下に限定されないが、通常、エポキシ樹脂用硬化剤、硬化促進剤等と配合することにより硬化することができる。
【0057】
本実施形態に用いる硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、触媒系硬化剤、光触媒系硬化剤等が挙げられる。
【0058】
a)アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、アミン化合物であることが好ましい。アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンは反応性が高く低温で硬化でき配向性の高い硬化物が得られる点でより好ましい。
【0059】
脂肪族アミンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1、2−シクロヘキサンジアミン、1、3−シクロヘキサンジアミン、1、4−シクロヘキサンジアミン、トリエチレンテトラミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等が挙げられる。脂肪族アミンとしては、ジアミノプロパン、1、4−シクロヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−キシリレンジアミンが上述のエポキシ樹脂との相溶性が高いため均一な硬化物を与えるので好ましい。中でもジアミノプロパン及び1、4−シクロヘキサンジアミンが、配向強度が高く、その結果、機械的強度と熱伝導率との高い硬化物が得られる傾向にあるので好ましい。
【0060】
芳香族アミンとしては、特に限定されないが、例えば、o−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエステル、モノアリルジアミノジフェニルメタン、ジアリルジアミノジフェニルメタン、スルファニルアミド等が挙げられる。それらの中で4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、p−キシリレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンが上述のエポキシ樹脂との相溶性が高いため、均一な硬化物が得られる傾向にあるため好ましく、中でも4,4’−ジアミノジフェニルエタンはより高い靱性と接着性、並びに耐熱性の高い硬化物が得られる傾向があるのでより好ましい。
【0061】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、これらアミン系硬化剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して窒素原子に結合した活性水素の比率が0.7〜1.5モルであることが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2モルである。
【0062】
b)フェノール系硬化剤
フェノール系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、カテコールノボラック、ピロガロール及びピロガロール誘導体等が挙げられる。
【0063】
これらの中で、隣接水酸基を有するカテコールノボラック、ピロガロール、ピロガロール誘導体はより耐熱性の高い硬化物を与える傾向にあるため好ましい。
【0064】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、上記フェノール系硬化剤の含有量は、耐熱性をより良好なものとする観点から、エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対してフェノール性水酸基が0.8〜1.3モルであることが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2モル、さらに好ましくは1.0〜1.1モルである。
【0065】
c)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0066】
酸無水物系硬化剤としては、安定した液状組成物となり、硬化物の耐熱性が高い硬化物が得られる観点からメチルテトラヒドロ無水フタル酸が特に好ましい。
【0067】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、酸無水物系硬化剤の含有量は、耐熱性が高く吸水率が低くなるという観点から、エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対して酸無水物が0.7〜1.2モルであることが好ましく、より好ましくは0.75〜1.1モル、さらに好ましくは0.8〜1.0モルである。
【0068】
d)触媒系硬化剤
触媒系硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、三フッ化ほう素、三フッ化ほう素−アミン錯体、芳香族スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等のカチオン系硬化触媒、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系触媒、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、キヌクリジン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノピリジン等の三級アミン化合物が挙げられる。
【0069】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、これらの触媒系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.0001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。
【0070】
e)硬化促進剤
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述のアミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等の硬化剤に加えて、硬化促進剤をさらに含有することができる。そのような硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、触媒系硬化剤として上記に例示した化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリエチルホスフィン等のホスフィン類、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩が挙げられる。
【0071】
また、本実施形態のエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤の含有量はエポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜6質量部であることがより好ましい。
【0072】
<充填剤等>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、無機フィラー、微細シリカ粉末等のチクソ性付与剤、消泡剤、リン化合物あるいはハロゲン化合物等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック、酸化鉄等の着色剤、変性ニトリルゴム、変性ポリブタジエン等のエラストマー、離型剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、消泡剤等を含有させることができ、また、必要に応じてガラス繊維、ガラス布、炭素繊維等を含有させることができる。
【0073】
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、球状あるいは破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、アスベスト、酸化マグネシウム、珪藻土、グラファイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0074】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなど熱伝導率の高い無機フィラーを含有すると従来に比較して一層熱伝導率の高いエポキシ樹脂硬化物が得られる傾向にある。
【0075】
<その他のエポキシ樹脂>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物には、目的を損なわない範囲において、必要に応じて上述のエポキシ樹脂以外の他のエポキシ樹脂又はエポキシ化合物を含有することができる。
【0076】
このような他のエポキシ樹脂又はエポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類;トリス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類;テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、又は2価又は3価以上のフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物;アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド等の環式脂肪族エポキシ樹脂;グリセリンのポリグリシジル化合物、トリメチロールプロパンのポリグリシジル化合物等の脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0077】
さらには、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエ−テル、p−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、o−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、m−tert−ブチルフェノールグリシジルエーテル、o−ブロモフェニルグリシジルエーテル等のモノグリシジル化合物が挙げられる。
【0078】
特に、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、分子中にメソゲン構造を有するエポキシ樹脂を含有すると本実施形態の効果が一層効果的に発現される傾向にある。このようなエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ジャーナルオブマテリアルサイエンス(1997年、第32巻、4039頁)に例示されたようなツインメソゲン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0079】
<エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、例えば、常法に従い上述した各成分を充分混合、混練した後、減圧脱泡して製造することができる。
【0080】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物の融点は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0081】
≪エポキシ樹脂硬化物≫
本実施形態のエポキシ樹脂硬化物は、上述のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる。
【0082】
≪用途≫
本実施形態のアルコール性化合物又はエポキシ樹脂は、以下に限定されないが、例えば、硬化剤の選択等によって固形又は液状の硬化性樹脂組成物を与え、半導体封止材、熱伝導材料、構造接着剤、各種フィルム(例えばフィルム状接着剤)などとして使用することができる。このように、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、液状であることが好ましい。特に液状のエポキシ樹脂組成物として使用する用途においては液状を長期間安定に保つことができる。
【実施例】
【0083】
以下の実施例により本実施形態をさらに詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。実施例及び比較例中の「部」又は「%」は特記しない限り質量基準である。
【0084】
また、各実施例及び比較例における各種物性の評価は次の方法で実施した。
【0085】
1)エポキシ価
エポキシ樹脂(試料)をベンジルアルコール及び1−プロパノールに溶解させて溶液を得た。この溶液にヨウ化カリウム水溶液及びブロモフェノールブルー指示薬を添加した後、この溶液について1規定塩酸にて滴定を実施した。この溶液中の反応系内が青色から黄色になった点を当量点とした。この当量点より、エポキシ樹脂のエポキシ価を以下の式に従って算出した。
【0086】
エポキシ価(当量/100g)=(V×N×F)/(10×W)
W;試料の重量(g)
V;当量点までの滴定量(mL)
N;滴定に使用した塩酸の規定度(N)
F;滴定に使用した塩酸のファクター
【0087】
2)塩素含有量
試料0.1ないし3gを25mLのエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解させて溶液を得た。この溶液に1規定KOH−プロピレングリコール溶液20mLを加えて、この溶液を20分間煮沸した。その後、この溶液に酢酸100mLを加え、この溶液について硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定を行った。この電位差滴定により検出された変曲点から滴定対象化合物のモル数を求め、滴定対象化合物の全量が塩素であるとして、滴定対象化合物のモル数に基づき試料中の塩素含有量を算出した。
【0088】
3)エポキシ樹脂の融点
エポキシ樹脂の融点は示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製7020)を使用して昇温速度5℃/分の条件で測定した。この測定において、吸熱ピークのピーク温度を融点とし、複数の吸熱ピークが存在するときは最も高い温度領域の吸熱ピーク温度を融点とした。
【0089】
4)数平均分子量
数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。測定には、島津製作所社製LC−10ADを用い、検出器には示差屈折率計を用いた。測定試料はテトラヒドロフランを溶媒として0.5wt/vol%の濃度に調整したものを用いた。
【0090】
カラムとして、昭和電工社製、Shodex LF−804を2本直列につないだものを用い、移動相としてテトラヒドロフランを用いた。測定試料を40℃で1mL/分の流速で測定装置に導入し分析した。
【0091】
数平均分子量1160、2810、6020、16000のポリスチレンを標準物質として用いて検量線を作成し、ポリスチレン換算で数平均分子量を求めた。
【0092】
5)引張特性試験
引張特性試験はJIS−K−7161−1994及びJIS−K−7162−1994に従い以下の条件で行った。
【0093】
試験装置:インストロン型引張試験機(AGS−J、島津製作所社製)
クロスヘッドスピード:2mm/min、最大荷重:100kgf
試験片:5B形,全長:30mm、幅:4mm、厚み:2mm
平行部の長さ:12mm、平行部の幅:2mm、丸みの半径:12mm
つかみ具間距離:24mm、標線間距離:10mm
【0094】
破壊エネルギーは、上記引張特性試験で得られた応力−歪み曲線の下降面積から求めた。
【0095】
σ=F×9.8/A
(σ:引張応力(MPa)、F:荷重(kgf)、9.8:重力加速度(m/s
2)、A:断面積(mm
2))
【0096】
ε=(δL/L0)×100
(ε:歪み(%)、δL:破断時の伸び(mm)、L0:標線間距離(mm)=10)
【0097】
6)せん断接着強度
JIS K6850に従って以下の条件で測定した。
【0098】
試験装置:インストロン型引張試験機(AG−20/50KINIS MO、島津製作所社製)
被着体:軟鋼板、サイズ(25mmX100mmX3.2mm)
接着面積:12.5mmX25.0mm
クロスヘッドスピード:50mm/min、最大荷重:1t
【0099】
破壊エネルギーはStress−Strain図の下面積から求めた。
【0100】
7)吸水率
下記試験片を沸騰水中に5時間浸漬した前後の質量増加分で評価した。
試験片:10mmX10mmX0.5mm
【0101】
8)ガラス転移温度(Tg)
硬化物のガラス転移温度は動的粘弾性測定にて下記の条件で測定した。測定は、非共振強制振動型粘弾性測定解析装置(Rheogel−E4000、UBM社製)を用い、引張りモードで行った。この測定においてtanδのピーク温度を硬化物のガラス転移温度(Tg)とした。
【0102】
〔測定条件〕
サンプルサイズ:30mm×4.0mm×0.4mm
波形:正弦波
周波数:10Hz
変位振幅:5μm
測定温度:−150〜250℃
昇温速度:2℃/min
【0103】
9)NMR測定
NMR測定はJEOL社のJNM−EX400を用いて行った。
【0104】
(合成実施例1)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器に4,4´−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン11.3部と炭酸プロピレン11部とを加え、得られた混合物を120℃まで加熱した。前記ガラス製反応器に50質量%炭酸カリウム水溶液0.3部を加えた後、得られた混合物を170℃まで加熱し、さらに2時間反応させた。反応終了後、得られた樹脂を払い出し、ジメチルホルムアミド15部とメタノール85部混合溶媒から結晶化させ、化合物A(下記式(14)で表される化合物)10.3部(収率60%)を得た。
【0105】
【化27】
【0106】
得られた化合物Aは、融点が143℃であった。得られた化合物Aの
1H−NMRチャートを
図1に示す。
【0107】
NMR分析結果(溶媒:DMSOd6)は次のとおりであった。
7.5ppm(2H), 7.3ppm(2H), 7.0ppm(4H), 6.9ppm(1H), 4.9ppm(2H), 3.8−4.0ppm(6H), 2.2ppm(3H), 1.2ppm(6H)
【0108】
(合成実施例2)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器に化合物A4部、エピクロルヒドリン13部及びジメチルスルホキシド9部を加え、得られた混合物を50℃で加熱撹拌した。前記ガラス製反応器に50質量%水酸化ナトリウム水溶液4.7部を1時間かけて加え、得られた混合物を1時間撹拌して反応を行った。その後、前記ガラス製反応器にトルエン40部を加え、10部の水で6回洗浄後過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンを留去し、5.2部のグリシジル化物b(エポキシ価0.308[当量/100g]、エポキシ化率70%)を得た。
【0109】
次いで、化合物Aの代わりにグリシジル化物b4部を用いて、上記と同じ操作を行うことにより、4.8部のグリシジル化物B(収率90%)(下記式(15)で表される化合物)を得た。
【0110】
【化28】
【0111】
得られたグリシジル化物Bは、エポキシ価が0.420[当量/100g]であり、エポキシ化率は95%であった。また、得られた化合物Bの数平均分子量は470であり、塩素含有量は420ppmであった。なお、化合物Bは室温で液状であった。室温下に3か月置いた後に化合物Bの一部は結晶化し、当該結晶を分離して融点を測定したところ、24℃であった。得られたグリシジル化物Bの
1H−NMRチャートを
図2に示す。
【0112】
NMR分析結果(溶媒:CDCl
3)は次のとおりであった。
7.5ppm(2H), 7.3ppm(2H), 6.9ppm(4H), 6.8ppm(1H), 3.5−4.3ppm(10H), 3.2ppm(2H), 2.8ppm(2H), 2.6ppm(2H), 2.2ppm(3H), 1.3ppm(6H)
【0113】
(合成
参考例3)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器にDMF19部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル9.3部及び炭酸プロピレ
ン15.3部を加え100℃まで加熱し、50質量%炭酸カリウム水溶液2.7部を加えた後、140℃で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し反応系内の固形分を濾別し、50部の水と100部のメタノールで洗浄した後に120℃で2時間減圧下乾燥させ、化合物C(下記式(16)で表される化合物)3.5部(収率23%)を得た。
【0114】
【化29】
【0115】
得られた化合物Cは、融点が189℃であった。得られた化合物Cの
1H−NMRチャートを
図3に示す。
【0116】
NMR分析結果(溶媒:DMSOd6)は次のとおりであった。
7.5ppm(4H), 7.0ppm(4H), 4.9ppm(2H), 3.8−4.0ppm(6H), 1.1ppm(6H)
【0117】
(合成
参考例4)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器に化合物C3.0部、エピクロルヒドリン11部及びジメチルスルホキシド7.8部を加え、得られた混合物を50℃で加熱撹拌した。前記ガラス製反応器に50質量%水酸化ナトリウム水溶液4.0部を1時間かけて加え、得られた混合物を1時間撹拌して反応を行った。その後、前記ガラス製反応器にトルエン25部を加え10部の水で6回洗浄後過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンを留去し、4.2部のグリシジル化物d(エポキシ価0.377当量/100g、エポキシ化率78%)を得た。
【0118】
次いで、化合物Cの代わりにグリシジル化物d4.2部を用いて、上記と同じ操作を行うことにより、4.0部のグリシジル化物D(収率96%、エポキシ価0.454当量/100g、エポキシ化率94%)(下記式(17)で表される化合物)を得た。
【0119】
【化30】
【0120】
得られた化合物Dの数平均分子量は420であり、塩素含有量は480ppmであった。得られたグリシジル化物Dの
1H−NMRチャートを
図4に示す。
【0121】
NMR分析結果(溶媒:CDCl
3)は次のとおりであった。
7.5ppm(4H), 7.0ppm(4H), 4.2ppm(0.3H), 3.9−4.1ppm(7.5H), 3.6ppm(1.8H), 3.1ppm(1.7H), 2.8ppm(1.7H), 2.6ppm(1.7H), 1.2ppm(6H)
【0122】
次に、グリシジル化物Dをメチルイソブチルケトンから結晶化させ、グリシジル化物DFを得た。グリシジル化物DFの融点は81℃、エポキシ価は0.473当量/100g(エポキシ化率98%)であった。
【0123】
(合成比較例1)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器に4,4´−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベン70.7部と炭酸エチレン59部とを加え、得られた混合物を120℃まで加熱した。前記ガラス製反応器に50質量%炭酸カリウム水溶液2部を加えた後、得られた混合物を170℃まで加熱し、さらに1時間反応させた。反応終了後、得られた樹脂を払い出し、メチルエチルケトンを用いて結晶化させ、化合物E(下記式(18)で表される化合物)64部(収率65%)を得た。得られた化合物Eは、融点が163℃であった。
【0124】
【化31】
【0125】
(合成比較例2)
テフロン(登録商標)製攪拌羽、ガラスコンデンサー、温度計を装着したガラス製反応器に化合物E50部、エピクロルヒドリン178部及びジメチルスルホキシド124部を加え、得られた混合物を50℃で加熱撹拌した。前記ガラス製反応器に50質量%水酸化ナトリウム水溶液128部を1時間かけて加え、得られた混合物を1時間撹拌して反応を行った。その後、前記ガラス製反応器にトルエン250部を加えて反応生成物を得た。得られた反応生成物を250部の水で6回洗浄し、過剰のエピクロルヒドリン及びトルエンを留去した。得られた残留物を、メチルイソブチルケトンを用いて結晶化させ、70%の収率でグリシジル化物F(下記式(19)で表される化合物)を得た。
【0126】
【化32】
【0127】
(応用実施例1)
グリシジル化物Bのエポキシ基に対して活性アミンが化学当量となるようにジアミノジフェニルエタンを配合し、120℃で1時間加熱し、さらに150℃で2時間加熱することにより硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物の評価結果を表1に示した。
【0128】
(応用実施例2、3)
グリシジル化物Bの代わりにグリシジル化物b、Dを用いた以外は応用実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1に示す。
【0129】
(応用比較例1)
グリシジル化物Bの代わりにグリシジル化物Eを用い、下記の条件で硬化した以外は応用実施例1と同様にして評価した結果を表1に示す。
硬化条件:170℃で1.5時間加熱した。
【0130】
(応用実施例4)
グリシジル化物Bのエポキシ基に対して当量のメチルテトラヒドロ無水フタル酸、及びグリシジル化物B100部に対して1部の2−エチル−4−メチルイミダゾールを配合して、液状の組成物Pを調製した。組成物Pは室温で1週間後も液状であり、半導体の液状封止材として有用であることが判った。
【0131】
また組成物Pを120℃1時間、さらに150℃2時間、その後180℃2時間硬化させたところ、Tg80℃、吸水率0.3%であった。
【0132】
(応用比較例2)
グリシジル化物Bの代わりにグリシジル化物Eを用いた以外は応用実施例4と同様にして液状の組成物Qを調製した。組成物Pは室温で2日後に固形となり、半導体の液状封止材として使用できないことが判った。
【0133】
応用実施例1〜3及び応用比較例1で行った評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】