特許第6407597号(P6407597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407597
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】積層体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20181004BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20181004BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B32B7/02 101
   B32B5/18
   B32B27/00 J
   B32B27/30 B
   B32B27/32 103
【請求項の数】6
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-147537(P2014-147537)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-22639(P2016-22639A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−300580(JP,A)
【文献】 特開2012−082389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40未満の成形体層(I)と、重合体組成物から形成された、ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40〜99のシート層(II)とを有する積層体であり、
シート層(II)を構成する重合体組成物が、動的粘弾性測定による損失正接tanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満である重合体(A)10〜40質量部と、損失正接tanδのピーク値温度が0℃未満である重合体(B)60〜90質量部とを含み(重合体(A)と重合体(B)との合計量を100質量部とする)、
成形体層(I)が、発泡体である
ことを特徴とする積層体
【請求項2】
重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i):60〜90モル%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii):10〜40モル%〔ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする〕とを有する4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)であることを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項3】
前記発泡体が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム、ポリウレタンおよびアクリル系共重合体から選ばれる少なくとも1種からなる発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40未満の成形体層(I)と、重合体組成物から形成された、ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40〜99のシート層(II)とを有する積層体であり、
シート層(II)を構成する重合体組成物が、動的粘弾性測定による損失正接tanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満である重合体(A)10〜90質量部と、損失正接tanδのピーク値温度が0℃未満である重合体(B)10〜90質量部とを含み(重合体(A)と重合体(B)との合計量を100質量部とする)、
重合体(A)が、スチレン系エラストマー(A−2)である
ことを特徴とする積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体を含んでなる衝撃吸収材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体を含んでなるクッション材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収性およびクッション性等に優れた積層体およびその用途に係る。
【背景技術】
【0002】
衝撃吸収材は、介護などに用いられる衝撃吸収部材を備えた衣類や、スポーツ用保護具などとして人体を衝撃から保護したり、あるいはパレット等の運搬用具に適用して運搬品を衝撃から保護したりと、幅広い分野で利用されている。
【0003】
衝撃吸収材としては、従来、様々な材料が用いられており、各種発泡体、熱可塑性エラストマー等などが用いられていた。一方で近年、特に電気電子材料の小型化により省スペースで衝撃吸収性を向上させるために、非発泡の衝撃吸収フィルムや、発泡体に動的粘弾性測定による損失正接tanδピークが高く衝撃吸収性に優れる材料を使うことが増えてきた。
【0004】
特許文献1、2では−20℃から40℃の室温に近い温度範囲に動的粘弾性測定で得られたtanδピークを有する共重合体を用いた発泡体組成物および積層体が開示されている。しかしながら、これらは従来の衝撃吸収材よりも薄くできる特徴を有しているが、室温にtanδピークを有していることから変形に弱く、高荷重下で圧縮する用途では、発泡体が潰れてしまって衝撃吸収性能を発揮できなくなる。
【0005】
一方で、特許文献3、4には、衝撃吸収材料として、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物が提案されているが、発泡体等で形成される衝撃吸収層との積層化については記載されておらず、衝撃吸収材やクッション材などに用いるには、未だ改良すべき点がある。
【0006】
一方で、発泡体をはじめとした柔軟成分で構成される層と、非発泡の基材層からなる積層体とする試みは、衝撃吸収材、表皮材、クッション材などをはじめとして様々な用途で用いられている。
【0007】
特許文献5では、アクリル系共重合体の発泡体からなる衣類装着用衝撃吸収パット、発泡体とシートとの積層体からなることを特徴とする衣類装着用衝撃吸収用パッド、および衝撃吸収用パットを含む衣類、下着について開示されている。特許文献6ではエチレン系樹脂の発泡層と熱可塑性の積層体とすることで、発泡層の発泡倍率を上げても加工性に優れるクッション材が開示されている。
【0008】
しかしながら、いずれにおいても、非発泡のシートには形状追従性、応力緩和性等の特性を有していないため、衝撃吸収性、クッション性は発泡層で支持する必要があるが、発泡層が潰れるほどの高荷重がかかった場合での使用は困難と推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−345833号公報
【特許文献2】国際公報第2013/191222号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2011/055803号パンフレット
【特許文献4】特開2012−082389号公報
【特許文献5】特開平9−268409号公報
【特許文献6】特開2009−101677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ショアーA硬度が低い成形体層と、応力緩和性、形状追従性に優れる重合体組成物を含むシート層とからなる、衝撃吸収性およびクッション性に優れ、高荷重がかかる条件下でも応力緩和機能を発揮する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために誠意検討した結果、以下の構成を有する積層体により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、例えば以下の[1]〜[6]に関する。
【0012】
[1]ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40未満の成形体層(I)と、重合体組成物から形成された、ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40〜99のシート層(II)とを有する積層体。
【0013】
[2]シート層(II)を構成する重合体組成物が、動的粘弾性測定による損失正接tanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満である重合体(A)10〜90質量部と、損失正接tanδのピーク値温度が0℃未満である重合体(B)10〜90質量部とを含む(重合体(A)と重合体(B)との合計量を100質量部とする)ことを特徴とする前記[1]に記載の積層体。
【0014】
[3]重合体(A)が、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i):60〜90モル%と、4−メチル−1−ペンテンを除く炭素原子数2〜20のα−オレフィンから導かれる構成単位(ii):10〜40モル%〔ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする〕とを有する4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の積層体。
【0015】
[4]成形体層(I)が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム、ポリウレタンおよびアクリル系共重合体から選ばれる少なくとも1種からなる発泡体であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の積層体。
【0016】
[5]前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体を含んでなる衝撃吸収材。
[6]前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の積層体を含んでなるクッション材。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層体は、衝撃吸収性およびクッション性と応力緩和性、形状追従性、柔軟性に優るので、高荷重下でも応力緩和機能を発揮し、さらに触感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層体は、ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40未満の成形体層(I)と、重合体組成物から形成された、ショアーA硬度計で測定した押針接触開始直後の表面硬度が40〜99のシート層(II)とを有する。
【0019】
シート層(II)を構成する重合体組成物は、動的粘弾性測定による損失正接tanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満である重合体(A)と、動的粘弾性測定による損失正接tanδのピーク値温度が0℃未満である重合体(B)とを含むことが好ましい。
以下、本発明の積層体を構成する成形体層(I)およびシート層(II)について、さらに詳細に説明する。
【0020】
<成形体層(I)>
成形体層(I)は、押針接触開始直後におけるショアーA硬度(JIS K6253に準拠)の値が、40未満、好ましくは35未満、さらに好ましくは20未満の範囲にある。
【0021】
成形体層(I)は、上記条件を満たしていれば、特に限定されないが、好ましくは熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる、発泡体、架橋体、オイル又は水等の溶媒を含んだゲル状構造体などが挙げられ、さらに好ましくは熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる発泡体が挙げられる。
【0022】
〈発泡体〉
成形体層(I)として好適に用いられる発泡体は従来公知のものを用いることができるが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム、ポリウレタン、アクリル系共重合体などからなる発泡体が挙げられ、さらに好ましくはオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ゴム、ポリウレタンなどからなる発泡体が挙げられる。
【0023】
オレフィン系樹脂としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体等が挙げられる。より具体的には、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0024】
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)等が挙げられる。
【0025】
アクリル系共重合体は、アクリルモノマー由来の構成単位を含む共重合体であり、例えば、アクリル酸エステルモノマーと他のモノマーとからなる共重合体等を例示できる。アクリル酸エステルモノマーには、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル等のアクリル酸の炭素数1〜10のアルキルまたはヒドロキシアルキルのごときアクリルモノマーが包含される。他のモノマーには、得られる共重合体の柔軟性や耐候性等を向上させるためのアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、エチレン、スチレン、アクロレイン、2−クロロエチルアクリレート、ブタジエン、N−ビニルピロリドン、アクリレート等のモノマーが包含される。アクリル酸エステルモノマーと、他のモノマーとの共重合の比率は適宜選択できるが、通常、アクリル酸エステルモノマー:他のモノマーのモル比が1:90〜90:1程度が、選られる発泡体の性能から好ましい。共重合は自体公知の方法で行うことができる。
【0026】
ゴムとしては、ゴム弾性を示すポリマーであれば特に限定されず、例えば、天然ゴムや、各種合成ゴム(イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム)などを使用できる。特に、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーは、成形作業や気泡構造の制御等が容易であるため、本発明において特に好適に用いられる。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系エラストマー;スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリウレタン系エラストマーなどが挙げられる。これらのポリマーは単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
オレフィン系エラストマーの例として、オレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーも使用することができる。例えば硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられ、具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等を例示することができる。具体例としては、JSR株式会社から商品名DYNARON(ダイナロン)(登録商標)、三井化学株式会社から商品名タフマー(登録商標)、ノティオ(登録商標)、ダウケミカル株式会社から商品名ENGAGETM、VERSIFYTM、エクソンモービルケミカル株式会社から商品名VistamaxxTMとして市販されているものが挙げられる。
【0028】
本発明においては、発泡体の見掛け密度を、通常0.01〜0.8、好ましくは0.1〜0.5程度とすることができる。前記密度が前記範囲を下回ると、発泡体としての強度、衝撃吸収性が悪くなることがあり、また、前記範囲を上回ると、重くなりすぎることがある。
【0029】
発泡体等の成形体層(I)の厚みは、通常1〜500mm、好ましくは5〜250mm程度とすることができる。
発泡体は、熱可塑性樹脂又はアイオノマーに無機系又は有機系の化学発泡剤を所定量添加して成形すること等によっても作製することができる。本発明で用いることのできる代表的な無機系発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム(重曹)、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等を挙げる事ができ、有機系発泡剤としては、N,N'−ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビス・イソブチロニトリル、ベンゼン・スルホニル・ヒドラジド、4,4'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエン・スルホニル・ヒドラジド、p−トルエン・スルホニル・セミカルバジド、バリウム・アゾジカルボキシレート等を挙げることができる。
【0030】
更に、水(水蒸気)を利用した所謂水発泡も採用でき、用いる発泡剤として水、結晶水含有無機物、吸湿性樹脂(カリウムアイオノマー等)等を挙げることができる。
このような発泡剤は、例えばポリエチレンやポリプロピレン樹脂等の少量に均一に混合させ、必要に応じて発泡助剤等の添加剤を配合してマスターバッチとしたものが市販品(例えば、ポリスレンEE)として販売されており、これを使用すると便利である。
【0031】
熱可塑性樹脂又はアイオノマー等の被発泡素材に対する上記発泡剤の配合割合は、使用される発泡剤や被発泡素材の種類、形成されるべき発泡層厚さ、その発泡倍率等により夫々異なり、それらを勘案して適宜定められる。
発泡に際し、分解温度の調整や消臭等の目的で、脂肪酸金属塩、金属酸化物、尿素などの発泡助剤を併用することが望ましい。
【0032】
<シート層(II)>
シート層(II)は、重合体組成物から形成された層である。シート層(II)は、好ましくは、各々後述する特徴を有する重合体(A)と重合体(B)とを特定の割合で含有する重合体組成物をシート化して得られる層である。
【0033】
シート層(II)は、押針接触開始直後におけるショアーA硬度(JIS K6253に準拠)の値が、40〜99、好ましくは40〜95、より好ましくは40〜90、さらに好ましくは45〜85の範囲にある。プレスシートの作製方法は実施例に示すとおりである。ショアーA硬度が上記範囲内にあることで、積層体としたときに衝撃吸収効果を向上させることができる。
【0034】
シート層(II)は、下記式で定義されるショアーA硬度の値の変化またはショアーD硬度の値の変化ΔHSが、好ましくは5〜60、より好ましくは10〜50、さらに好ましくは10〜45の範囲にある。
【0035】
ΔHS=(押針接触開始直後のショアーAまたはD硬度値 − 押針接触開始から15秒後のショアーAまたはD硬度値)
ΔHSにおいて、原則としてショアーA硬度計を用いて行うが、ショアーA硬度の測定が困難な測定試料に対しては、代わりにショアーD硬度計を用いて行う。
【0036】
ΔHSは、例えば4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)等の重合体(A)を構成しうるコモノマー種およびコモノマー組成によって任意に変えることができる。ΔHSが上記範囲内であると、シート層(II)は凹凸追従性に優れる。
【0037】
シート層(II)は、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した時の損失正接tanδのピーク値温度が、好ましくは0℃以上35℃未満、より好ましくは0℃以上30℃未満、さらに好ましくは10℃以上30℃未満である。粘弾性の測定方法は実施例に示すとおりである。
シート層(II)の厚みは、通常0.1〜200mm、好ましくは0.5〜50mm、より好ましくは1〜10mm程度とすることができる。
【0038】
〈重合体(A)〉
重合体(A)としては、熱可塑性樹脂およびエラストマー、ゴム等であり、ショアーA硬度が上記範囲にある層を形成できる重合体であれば特に限定されない。ただし、重合体(A)は、下記要件(i)を満たし、好ましくは下記要件(ii)をさらに満たす。
【0039】
要件(i):重合体(A)は、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した時の損失正接tanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満、好ましくは0℃以上40℃以下、さらに好ましくは10℃以上40℃以下、特に好ましくは15℃以上40℃未満である。プレスシートの作製方法、粘弾性の測定方法は実施例に示すとおりである。
【0040】
要件(ii):重合体(A)は、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した時の損失正接tanδのピーク値が、好ましくは1.0以上5.0未満、より好ましくは1.0以上3.5以下、さらに好ましくは1.1以上3.5以下、特に好ましくは2.0以上3.5未満である。プレスシートの作製方法、粘弾性の測定方法は実施例に示すとおりである。
【0041】
上記要件を満たす重合体(A)は、例えば、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)、スチレン系エラストマー(A−2)が好適に使用される。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)が、tanδのピーク値温度、ピーク値の高さから好ましい。
【0042】
<4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)>
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、以下の要件(a)、(b)、(c)および(d)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
【0043】
要件(a);
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、α−オレフィン(ただし、4−メチル−1−ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)を60〜90モル%と、当該構成単位(ii)を40〜10モル%とからなる。
【0044】
すなわち、構成単位(i)の割合の下限値は、60モル%であるが、65モル%であることが好ましく、68モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(i)の割合の上限値は、90モル%であるが、86モル%であることがより好ましい。このように、本発明では4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)における前記構成単位(i)の割合が前記下限値以上であることで、室温付近にtanδのピーク値温度を持つことで、形状追従性、応力緩和性が優れ、また、前記構成単位(i)の割合が前記上限値以下にあることで適度な柔軟性を持つ。
【0045】
また、前記構成単位(ii)の割合は40〜10モル%であるが、35〜10モル%が好ましく、32〜14モル%がより好ましい。すなわち、構成単位(ii)の割合の上限値は、40モル%であるが、35モル%であることが好ましく、32モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、10モル%であるが、14モル%であることがより好ましい。
【0046】
前記構成単位(ii)を導くα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素原子数2〜20、好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは炭素原子数2〜10の直鎖状のα−オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数5〜20、好ましくは炭素原子数5〜15の分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0047】
ここで、本発明の一態様において4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、構成単位(i)と構成単位(ii)とのみからなるものである。
ただし、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、本発明の目的を損なわない程度の少量(たとえば、10モル%以下)であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)のほかに、構成単位(iii)として、4−メチル−1−ペンテンおよび構成単位(ii)を導くα−オレフィンのいずれでもない他のモノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。このような他の好ましい具体例としては、前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)が4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体の場合であれば、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0048】
要件(b);
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、通常0.1〜5.0dL/gの範囲にある。前記極限粘度[η]は、好ましくは0.5〜4.0dL/g、より好ましくは0.5〜3.5dL/gである。
【0049】
後述するように重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得て極限粘度[η]を調整することが出来る。
前記極限粘度[η]が0.1dL/gよりも過小、または5.0dL/gよりも過大であると、重合体組成物をシートに加工する際の、成形加工性が損なわれる場合がある。
【0050】
要件(c);
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)は、通常1.0〜3.5の範囲にある。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。前記Mw/Mnは、好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.8である。前記Mw/Mnが3.5よりも過大であると、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響が懸念されて、成形性が悪くなる。
【0051】
ここで、本発明においては、後述する触媒を用いれば、上記要件(b)で示される極限粘度[η]の範囲内において、上記要件(c)を満たす前記共重合体(A−1)を得ることができる。なお、前記Mw/Mnおよび以下のMwの値は、後述する実施例において採用された方法で測定した場合の値である。
【0052】
また、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500〜10,000,000、より好ましくは1,000〜5,000,000、さらに好ましくは1,000〜2,500,000である。
【0053】
要件(d);
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の密度(ASTM D 1505にて測定)は、通常870〜830kg/m3、好ましくは865〜830kg/m3、さらに好ましくは855〜830kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0054】
密度は4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)のコモノマー組成比によって適宜変えることができ、密度が上記範囲内にある前記共重合体(A−1)は、軽量なシートを製造する上で有利である。
【0055】
<4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造方法>
次に、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造方法について説明する。
【0056】
4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造方法は、上述した要件(a)、(b)、(c)および(d)を満たす4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を得ることができるものである限り、特に限定されない。ただ、本発明の一般的な態様において、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」とを適当な重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。
【0057】
ここで、本発明で用いることのできる重合触媒として、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3-193796号公報あるいは特開平02-41303号公報中に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられ、さらに好ましくは、下記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒が好適に用いられる。
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
[上記式(1)、(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR4までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、
Yは炭素またはケイ素であり、
Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子、および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、
jは1〜4の整数である。]
【0060】
上記一般式(1)または(2)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0061】
炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基の水素の一部または全部が水酸基、アミノ基、ハロゲン基、フッ素含有炭化水素基などの官能基で置換されていても良い。炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、クロロフェニル、クロロビフェニル、クロロナフチル等が挙げられる。
【0062】
ケイ素含有炭化水素基は、好ましくはケイ素数1〜4かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。
【0063】
フルオレン環上のR5からR12までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。
【0064】
また、フルオレン環上のR5からR12の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5=R12、R6=R11、R7=R10、かつR8=R9であることが好ましく、フルオレン環が無置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレンまたは2,3,6,7−四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、7位はそれぞれR7、R10、R6、R11に対応する。
【0065】
上記一般式(1)のR13およびR14は、水素および炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0066】
Yは炭素またはケイ素である。一般式(1)の場合は、R13およびR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としては、メチレン、ジメチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、フルオロメチルフェニルメチレン、クロロメチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジクロロフェニルメチレン、ジフルオロフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジビフェニルメチレン、ジp−メチルフェニルメチレン、メチル−p−メチルフェニルメチレン、エチル−p−メチルフェニルメチレン、ジナフチルメチレンまたはジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチル−tert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、フルオロメチルフェニルシリレン、クロロメチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジp−メチルフェニルシリレン、メチル−p−メチルフェニルシリレン、エチル−p−メチルフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン等を挙げることができる。
【0067】
一般式(2)の場合は、Yは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基Aと結合し、シクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等を構成する。好ましい具体例としては、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレン等を挙げることができる。
【0068】
一般式(1)および(2)のMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、Mとしてはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
Qはハロゲン、炭素原子数1〜20の炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組み合わせで選ばれる。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、およびメシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、およびテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Qは同一でも異なった組み合わせでもよいが、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0069】
また、上記一般式(1)および(2)において、jは、好ましくは2である。
本発明で用いうるオレフィン重合触媒を構成するメタロセン化合物として、上記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物が特に好適に挙げられるが、これに限られるものではない。例えば、本発明で用いうるメタロセン化合物のほかの好適な例として、下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物も挙げることができる。
【0070】
【化3】
[式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、Qは同一または異なる組合せで選んでもよい。]
【0071】
一般式[I]において、R1およびR3が水素原子であることが好ましく;R2が炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、シクロペンタジエニル環に結合する炭素が3級炭素である置換基であることが好ましく;R5およびR7が互いに結合して環を形成していることが好ましく;R9、R12、R13およびR16が水素原子であることが好ましく;R10、R11、R14およびR15が炭化水素基であるか、またはR10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0072】
〈R1からR16
上記一般式[I]において、R1からR16(ただし、R4を除く。)となりうる炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10である。
【0073】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0074】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0075】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0076】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0077】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0078】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基などの酸素原子含有炭化水素基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基などの硫黄原子含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0079】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式−SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
【0080】
4を除くR1からR16までの置換基のうち、隣接した2つの置換基(例:R1とR2、R2とR3、R5とR7、R6とR8、R7とR8、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R13とR14、R14とR15、R15とR16)が互いに結合して環を形成していてもよく、R6およびR7が互いに結合して環を形成していてもよく、R1およびR8が互いに結合して環を形成していてもよく、R3およびR5が互いに結合して環を形成していてもよい。前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0081】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0082】
1およびR3は、立体規則性の観点から、水素原子であることが好ましい。
5、R6およびR7から選ばれる少なくとも1つは、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましく、R5が炭化水素基であることがより好ましく、R5が直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがさらに好ましく、R5が炭素数2以上のアルキル基であることがとりわけ好ましい。また、合成上の観点からは、R6およびR7は水素原子であることも好ましい。また、R5およびR7が互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。
【0083】
8は、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
2は、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、アリール基ではないことがさらに好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがとりわけ好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
【0084】
2としては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基が例示でき、より好ましくはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert−ブチル基、1−アダマンチル基である。
【0085】
一般式[I]において、フルオレン環部分は公知のフルオレン誘導体から得られる構造であれば特に制限されないが、R9、R12、R13およびR16は、立体規則性、分子量の観点から、好ましくは水素原子である。
【0086】
10、R11、R14およびR15は、好ましくは水素原子、炭化水素基、酸素原子含有炭化水素基または窒素原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0087】
10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
【0088】
〈M、Q、j〉
一般式[I]において、Mは、第4族遷移金属であり、好ましくはTi、ZrまたはHfであり、より好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはZrである。
【0089】
一般式[I]において、Qとなりうるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
Qとなりうる炭化水素基としては、R1からR16(ただし、R4を除く。)における炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましくは直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等のアルキル基である。
【0090】
Qにおけるアニオン配位子としては、例えば、メトキシ、tert−ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基;ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、メチルアニリド、ジフェニルアミド等のアミド基が挙げられる。
【0091】
Qにおける孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテルが挙げられる。
【0092】
Qは、少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
また、上記一般式[I]において、jは、好ましくは2である。
なお、上記化合物[I]の命名に用いた位置番号を、[1-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(5-tert-ブチル-1-メチル-3-iso-プロピル-1,2,3,4-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド、および[8-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(2-tert-ブチル-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)]ジルコニウムジクロライドを例にとり、鏡像異性体の一つについてそれぞれ式[I−1]、式[I−2]に示す。
【0093】
【化4】
上記メタロセン化合物の具体例として、国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第2006/025540号パンフレットまたは国際公開第2014/050817号中に例示される化合物が好適に挙げられるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0094】
前記4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造にメタロセン化合物を用いる場合、触媒成分は、
(a)メタロセン化合物(たとえば、上記一般式(1),(2)または[I]で表されるメタロセン化合物)と、
(b)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b−3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
さらに必要に応じて、
(c)微粒子状担体と
から構成される。製造方法としては、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載の方法を採用することが出来る。
【0095】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)(以下「成分(b−1)」ともいう。)、メタロセン化合物(a)(以下「成分(a)」ともいう。)と反応してイオン対を形成する化合物(以下「成分(b−2)」ともいう。)、有機アルミニウム化合物(b−3)(以下「成分(b−3)」ともいう。)、および微粒子状担体(c)の具体例としては、これらの化合物または担体としてオレフィン重合の分野において従来公知のもの、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載された具体例が挙げられる。
【0096】
ここで、本発明の好適な態様において、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)は、4−メチル−1−ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」とを上記重合触媒存在下で重合することにより得ることができるところ、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)の製造において、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれによっても実施できる。
【0097】
液相重合法においては、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。このような不活性炭化水素の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;およびエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などを挙げることができる。
【0098】
また、4−メチル−1−ペンテンおよび上記「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」自身を溶媒とする塊状重合を実施することもできる。
また、4−メチル−1−ペンテンの単独重合と4−メチル−1−ペンテンと上記「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」との共重合を段階的に行うことにより、組成分布が制御された4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(A−1)を得ることも可能である。
【0099】
重合を行うに際して、成分(a)は、反応容積1リットル当り、周期律表第4族金属原子換算で通常10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モルとなるような量で用いられる。成分(b−1)は、成分(b−1)と、成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−1)/M]が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(b−2)は、成分(b−2)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。成分(b−3)は、成分(b−3)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0100】
重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜100℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0101】
重合に際して生成ポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよく、その量は4−メチル−1−ペンテンおよび上記「構成単位(ii)を導くα−オレフィン」の合計1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0102】
<スチレン系エラストマー(A−2)>
スチレン系エラストマー(TPS)(A−2)は、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるイソプレン、ブタジエンなどの共役ジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBC)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などを例示することができる。スチレン系エラストマーは、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いられる。
【0103】
スチレン系エラストマー(TPS)(A−2)のtanδのピーク値温度が0℃以上45℃未満を満たすためには、軟質部となる共役ジエン系モノマーブロックに特長がみられる。
【0104】
共役ジエンがイソプレンである場合、中間ブロックがビニル−ポリイソプレンであることが好ましく、また中間ブロックを構成する共役ジエン由来の構成要素は水素添加されていてもされていなくてもよい。そのようなスチレン・イソプレン・スチレン共重合体としては、例えば株式会社クラレ製 商品名「ハイブラー(登録商標)5127(スチレン含有量20wt%、tanδピーク値=1.1、ピーク値温度=19℃)」を挙げることができる。
【0105】
また、共役ジエンがブタジエンである場合、スチレン・ブタジエン共重合体のブタジエン由来の構成要素は水素添加されていてもよく、軟質部にスチレン部分が共重合されていてもよい。このようなスチレン・ブタジエン・スチレン共重合体としては、例えば旭化成ケミカルズ株式会社製「S.O.E.(登録商標) L609(スチレン含量=67wt%、tanδピーク値=1.3、ピーク値温度=19℃)」、「S.O.E.(登録商標) L606(スチレン含量=51wt%、tanδピーク値=1.7、ピーク値温度=8℃)」、「S.O.E.(登録商標) L605(スチレン含量=67wt%、tanδピーク値=1.5、ピーク値温度=17℃)」などを挙げることができる。
【0106】
<スチレン系エラストマー(A−2)の製造方法>
スチレン系エラストマー(TPS)(A−2)がブロック共重合体である場合、そのようなブロック共重合体は、例えば、スチレンと、イソプレン及び/又はブタジエンなどの共役ジエンとを、アルキルリチウム化合物を開始剤とするアニオン重合により製造することができる。
【0107】
アルキルリチウム化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、ブチルリチウムなどの炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルリチウム、ナフタレンジリチウム、ジチオヘキシルベンジルリチウムなどを挙げることができる。
【0108】
重合方法としては、(1)アルキルリチウム化合物を開始剤としてスチレンに続いてイソプレン、必要に応じてブタジエン又はイソプレン−ブタジエンを逐次重合し、次いでスチレンを逐次重合する方法、(2)スチレンに続いてイソプレン、必要に応じて更にブタジエン又はイソプレン−ブタジエンを重合し、これをカップリング剤によりカップリングする方法などが挙げられる。カップリング剤としては、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジブロモベンゼンなどが挙げられる。
【0109】
重合の際には、反応を適切に制御するために溶媒を使用することが好ましい。この溶媒としては重合開始剤に対して不活性な有機溶媒、例えばヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びベンゼン等の炭素数が6〜12の脂肪族高水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素を用いることが好ましい。
【0110】
重合温度は−70〜80℃の温度範囲で、0.5〜50時間行うことが好ましい。
ブロック共重合体のtanδのピーク値やピーク値温度は、イソプレン、ブタジエンの3,4結合、又は1,2結合の数を調整する方法等により調整することが可能であり、共触媒としてルイス塩基を用いることにより比較的容易に調整することができる。ルイス塩基としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N‘N−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリンなどのアミン化合物などが挙げられる。これらのルイス塩基は、重合開始剤のリチウムのモル数に対して0.1〜1000倍用いることが好ましい。また、ピーク値温度やピーク値は水素添加の有無や水素転化率を調整することによっても調整可能である。
【0111】
〈重合体(B)〉
シート層(II)を構成する重合体組成物に含まれる重合体(B)は、重合体(A)以外の熱可塑性樹脂およびエラストマー、ゴム等であり、下記要件(iii)を満たす。
【0112】
要件(iii):重合体(B)は、10rad/sの周波数で−70〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した時の損失正接tanδのピーク値温度が0℃未満、好ましくは−5℃未満、さらに好ましくは−10℃未満、特に好ましくは−30℃未満である。下限値は特に限定されないが、例えば−60℃である。プレスシートの作製方法、粘弾性の測定方法は実施例に示すとおりである。
【0113】
重合体組成物は、重合体(A)に加えて、このような重合体(B)を含有する。重合体(A)と重合体(B)との合計量を100質量部とすると、柔軟性、応力緩和性、形状追従性の観点から、前記組成物中の重合体(A)含量の上限値は、通常90質量部、好ましくは75質量部、さらに好ましくは60質量部、特に好ましくは50質量部であり、下限値は、通常10質量部、好ましくは15質量部、さらに好ましくは25質量部、特に好ましくは30質量部である。
【0114】
言い換えると、重合体(B)含量の下限値は、通常10質量部、好ましくは25質量部、さらに好ましくは40質量部、特に好ましくは50質量部であり、上限値は、通常90質量部、好ましくは85質量部、さらに好ましくは75質量部、特に好ましくは70質量部である。
【0115】
重合体(B)は、好ましくは、オレフィン系樹脂(B−1)、オレフィン系エラストマー(B−2)、スチレン系エラストマー(B−3)、および熱可塑性エラストマー組成物(B−4)から選ばれる少なくとも1種類である。
【0116】
《オレフィン系樹脂(B−1)》
オレフィン系樹脂(B−1)の具体例として、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするエチレン系共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素数4〜20のα−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体、スチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の各種ビニル化合物をコモノマーとするプロピレン系共重合体等が挙げられる。より具体的には、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ3−メチル−1−ブテン、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン等が挙げられる。
【0117】
《オレフィン系エラストマー(B−2)》
オレフィン系エラストマー(B−2)の具体例として、オレフィン系ブロック共重合体からなるエラストマーを使用することができる。例えば硬質部となるポリプロピレン等の結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体が挙げられ、具体的には、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等を例示することができる。具体例としては、JSR株式会社から商品名DYNARON(ダイナロン)(登録商標)、三井化学株式会社から商品名タフマー(登録商標)、ノティオ(登録商標)、ダウケミカル株式会社から商品名ENGAGETM、VERSIFYTM、エクソンモービルケミカル株式会社から商品名VistamaxxTMとして市販されているものが挙げられる。
【0118】
《スチレン系エラストマー(B−3)》
スチレン系エラストマー(B−3)としては、硬質部(結晶部)となるポリスチレンブロックと、軟質部となるジエン系モノマーブロックとのブロック共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(HSBR)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレン共重合体(SIB)などを例示することができる。スチレン系エラストマーは、1種単独で、または2種類以上を組み合せて用いられる。
【0119】
水添スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の具体例としては、JSR株式会社から商品名:ダイナロン(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)を水素添加してなるものである。SISの具体例としては、JSR株式会社から商品名:JSR SIS(登録商標)として、株式会社クラレから商品名:ハイブラー(登録商標)、またはシェル株式会社から商品名:クレイトンD(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
【0120】
また、SEPSの具体例としては、株式会社クラレから商品名:セプトン(登録商標)、またはシェル株式会社から商品名:クレイトン(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
【0121】
また、SEBSの具体例としては、旭化成株式会社から商品名:タフテック(登録商標)、またはシェル株式会社から商品名:クレイトン(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
また、SIB、SIBSの具体例としては、株式会社カネカから商品名:シブスター(登録商標)として市販されているものなどが挙げられる。
【0122】
《熱可塑性エラストマー組成物(B−4)》
熱可塑性エラストマー組成物(B−4)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物を動的架橋して得られる組成物である。
【0123】
(エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I])
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、通常、(a)エチレンから導かれる単位と、(b)α−オレフィンから導かれる単位とを、50/50〜95/5、好ましくは60/40〜80/20、さらに好ましくは65/35〜75/25[(a)/(b)]のモル比の範囲で有する。
【0124】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体[I]を構成するα−オレフィンは、通常、炭素原子数3〜20のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。中でも、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、とりわけプロピレンが好ましい。これらα−オレフィンは、単独で、または2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0125】
エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体[I]を構成する非共役ポリエンとしては、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−ノナジエン、4−エチリデン−1,7−ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、5−イソブテニル−2−ノルボルネン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状非共役ジエン;
2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ナノジエン等のトリエンなどが挙げられ、これら非共役ジエンは単独でも、2種類以上でも使用することができる。これら非共役ジエンの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましい。
【0126】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、通常、非共役ポリエン成分量の一指標であるヨウ素価が1〜50、好ましくは5〜40、さらに好ましくは10〜30の範囲にある。また、非共役ジエン量の全成分量は、通常、[I]成分中の2〜20質量%の範囲にある。
【0127】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、通常、135℃、デカリン溶媒中で測定される極限粘度[η]が1〜10dl/g、好ましくは1.5〜8dl/gの範囲にある。
【0128】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、その製造の際に軟化剤好ましくは鉱物油系軟化剤を配合した、いわゆる油展ゴムであってもよい。鉱物油系軟化剤としては、従来公知の鉱物油系軟化剤たとえばパラフィン系プロセスオイルなどが挙げられる。
【0129】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]のムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、通常、10〜250、好ましくは30〜150の範囲にある。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、単独で、あるいは二種以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いてもよい。
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、従来公知の方法により製造することができる。
【0130】
(ポリオレフィン樹脂[II])
ポリオレフィン樹脂[II]は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体、あるいは二種以上のα−オレフィンで、通常、主たるα−オレフィンの含有量が90モル%以上の共重合体であり、融点(Tm)が70〜200℃、好ましくは80〜170℃の範囲にある。
【0131】
ポリオレフィン樹脂[II]は、通常、実質的に主鎖に不飽和結合を有していない。
ポリオレフィン樹脂[II]は、単独で、あるいは二種以上のオレフィン系重合体を用いてもよい。
これらポリオレフィン樹脂[II]の中でも、プロピレン系重合体(II−1)、エチレン系重合体(II−2)が好ましい。
【0132】
プロピレン系重合体(II−1)
プロピレン系重合体(II−1)は、プロピレンの単独重合体、あるいは、プロピレンと通常、10モル%以下の炭素数2〜10のα−オレフィン、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体、あるいは、プロピレンの単独重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体とのブロック共重合体であり、通常、融点が120〜170℃、好ましくは145〜165℃の範囲にある。
【0133】
プロピレン系重合体(II−1)は、通常、ポリプロピレン樹脂として、製造・販売されている。
プロピレン系重合体(II−1)は、立体構造としては、アイソタクチック構造が好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、あるいは、一部アタクチック構造を含むものも用いることができる。
【0134】
プロピレン系重合体(II−1)は、通常、メルトフローレート(MFR:JIS K6758に従い、温度230℃、荷重21.18Nで測定)が0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にある。
プロピレン系重合体(II−1)は、種々公知の重合方法によって重合される。
【0135】
エチレン系重合体(II−2)
エチレン系重合体(II−2)は、エチレンの単独重合体、あるいは、エチレンと10モル%以下の炭素数2〜10のα−オレフィン、例えば、プロピレン、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体であり、通常、融点が80〜150℃、好ましくは90〜130℃の範囲にある。
【0136】
エチレン系重合体(II−2)は、通常、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどとして、製造・販売されている。
エチレン系重合体(II−2)は、通常、メルトフローレート(MFR:JIS K6758に従い、温度190℃、荷重21.18Nで測定)が0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜50g/10分の範囲にある。
【0137】
(架橋剤)
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物を動的架橋する際に用いられる架橋剤としては、たとえば有機過酸化物、イオウ、イオウ化合物、フェノール樹脂等のフェノール系加硫剤などが挙げられるが、中でも有機過酸化物が好ましく用いられる。
【0138】
有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0139】
中でも、臭気性、スコーチ安定性の点で2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert- ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンおよびn-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレートが好ましく、中でも1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0140】
これら有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]の合計量100質量部に対して、通常、0.01〜15質量部、好ましくは0.03〜12質量部の割合で用いられる。有機過酸化物を上記割合で用いると、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]が少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマー組成物(B−4)が得られ、耐熱性、引張特性およびゴム弾性が十分な成形体が得られる。
【0141】
(架橋助剤)
前記有機過酸化物による架橋処理に際し、硫黄、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム、N-メチル-N,4- ジニトロソアニリン、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン-N,N'-m-フェニレンジマレイミド等の架橋助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エレチングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラートまたはビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーからなる架橋助剤を添加してもよい。このような架橋助剤を添加することにより、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。特に、本発明においてはジビニルベンゼンを用いると、取扱い易さ、前記被処理物の主成分たるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]、およびポリオレフィン樹脂[II]との相溶性が良好であり、かつ前記有機過酸化物の可溶化作用を有し、有機過酸化物の分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均質で、流動性と物性のバランスのとれた熱可塑性エラストマー組成物(B−4)が得られるため最も好ましい。
【0142】
架橋助剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]およびポリオレフィン樹脂[II]の合計量100質量部に対して、通常、0.01〜15質量部、好ましくは0.03〜12質量部の割合で用いられる。
【0143】
(軟化剤)
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物には、動的架橋時に流動性や硬度の調整剤として軟化剤を添加してもよい。
【0144】
軟化剤は、予めエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]、ポリオレフィン樹脂[II]、あるいはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]の混合時に、あるいは、混合物(前駆体)を動的架橋時に注入する方法により加ええる。その際、上記方法を単独で、あるいは上記方法を併用して添加してもよい。
【0145】
軟化剤としては、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ、(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。中でも、石油系軟化剤、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0146】
軟化剤を加える場合は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部に対して、通常10〜200質量部、好ましくは15〜150質量部、更に好ましくは20〜80質量部の範囲で配合される。軟化剤を上記のような割合で用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物(B−4)は成形時の流動性に優れ、得られる成形体の機械的物性を低下させることはない。本発明において、軟化剤の使用量が200質量部を超えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物(B−4)の耐熱性、耐熱老化性は低下する傾向にある。
【0147】
(その他添加剤)
熱可塑性エラストマー組成物(B−4)、あるいは前記組成物の動的架橋前の混合物には、必要に応じて、スリップ剤、核剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤、発泡剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0148】
上記核剤としては、非融解型および融解型の結晶化核剤が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。非融解型の結晶化核剤としては、タルク、マイカ、シリカ、アルミニウムなどの無機物、臭素化ビフェニルエーテル、アルミニウムヒドロキシジ−p−tert−ブチルベンゾエート(TBBA)、有機リン酸塩、ロジン系結晶化核剤、置換トリエチレングリコールテレフタレートおよびTerylene&Nylon繊維などが挙げられ、特にヒドロキシ−ジ−p−tert−ブチル安息香酸アルミニウム、メチレンビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ロジン系結晶化核剤が望ましい。融解型の結晶化核剤としては、ジベンジリデンソルビトール(DBS)、置換DBS、低級アルキルジベンジリデンソルビトール(PDTS)、などのソルビトール系の化合物が挙げられる。
【0149】
上記スリップ剤としては、たとえば脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックス、パラフィン系オイルなどが挙げられる。
上記充填剤としては、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
【0150】
(熱可塑性エラストマー組成物(B−4)の製造方法)
熱可塑性エラストマー組成物(B−4)は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを含む混合物、好ましくはエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]とポリオレフィン樹脂[II]とを[I]/[II](質量比)が90/10〜5/95、より好ましくは70/30〜10/90の範囲で含む混合物、あるいは、必要に応じて前記軟化剤など所定量含む混合物(前駆体)を動的架橋することにより得られる。動的架橋を行う際には、前記架橋剤の存在下、あるいは前記架橋剤と前記架橋助剤の存在下に、動的に熱処理するのがよい。
【0151】
ここに、「動的に熱処理する」とは、溶融状態で混練することをいう。
本発明における動的な熱処理は、非開放型の装置中で行なうことが好ましく、また窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。熱処理の温度は、ポリオレフィン樹脂[II]の融点から300℃の範囲であり、通常150〜270℃、好ましくは170℃〜250℃である。混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、加えられる剪断力は、剪断速度で10〜50,000sec-1、好ましくは100〜10,000sec-1の範囲である。
【0152】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(たとえばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用いることができるが、非開放型の装置が好ましい。
【0153】
本発明によれば、上述した動的な熱処理によって、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマー組成物(B−4)が得られる。
【0154】
《その他の熱可塑性樹脂(B−5)》
さらに、その他の熱可塑性樹脂(B−5)として、
脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)等のポリアミド樹脂、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー等、前記ビニル芳香族系樹脂の例として、具体的には、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のポリエステル樹脂、
熱可塑性ポリウレタン;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;フッ素系樹脂ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイドポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン等も挙げられる。
【0155】
〈その他の成分〉
シート層(II)を形成する重合体組成物は、重合体(A)と重合体(B)とのみからなるものであってもよいが、重合体(A)および重合体(B)のほかに、必要に応じて、その他の成分として適当な添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0156】
添加剤としては、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、軟化剤等の添加剤が挙げられる。
【0157】
前記軟化剤としては、従来公知の軟化剤を用いることができる。その例としては、具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルトおよびワセリンなどの石油系物質;コールタールおよびコールタールピッチなどのコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油および椰子油などの脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウおよびラノリンなどのロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−水酸化ステアリン酸、モンタン酸、オレイン酸およびエルカ酸などの脂肪酸またはその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂およびアタクチックポリプロピレンなどの合成高分子;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートおよびジオクチルセバケートなどのエステル系可塑剤;その他マイクロクリスタリンワックス、および液状ポリブタジエンまたはその変性物もしくは水添物;液状チオコールなどが挙げられる。
【0158】
前記充填剤の例としては、マイカ、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、グラファイト、ステンレス、アルミニウムなどの粉末充填剤;ガラス繊維や金属繊維などの繊維状充填剤などを挙げることができる。また、親水性の層状粘土鉱物、および/または、特定形状(層状を除く)の親水性無機化合物も挙げられる。
【0159】
親水性の層状粘土鉱物としては、例えば、2次元に広がる層が複数積層されたフィロ珪酸塩鉱物が挙げられ、例えば、スメクタイトが挙げられる。スメクタイトは、モンモリロン石群鉱物であって、例えば、モンモリロン石(モンモリロンナイト)、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミニアンバイデライト、ノントロン石、アルミニアンノントロナイト、サポー石(サポナイト)、アルミニアンサポー石、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、ベントナイトなどが挙げられる。
【0160】
また、親水性の層状粘土鉱物としては、例えば、バーミキュル石(バーミキュライト)、ハロイサイト、膨潤性マイカ、黒鉛なども挙げられる。
これら親水性の層状粘土鉱物は、1種単独で使用または2種以上を併用することができる。このような親水性の層状粘土鉱物は、一般の市販品を用いることができ、例えば、より具体的には、天然品として、例えば、クニピアシリーズ(モンモリロナイト、クニミネ工業社製)、ベンゲルシリーズ(ベントナイト、ホージュン社製)、ソマシフMEシリーズ(膨潤性マイカ、コープケミカル社製)などが挙げられ、合成品として、例えば、スメクトン(サポナイト、クニミネ工業社製)、ルーセンタイトSWNシリーズ(ヘクトライト、コープケミカル社製)、ラポナイト(ヘクトライト、ロックウッドホールディングス社製)が挙げられる。一般に、合成品は天然品よりも最大長さが小さいため小さい油滴を得ることができる観点から、合成品が好ましい。
【0161】
前記難燃剤の例としては、アンチモン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛、グァニジン系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等の無機化合物、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2−シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステル及びその他のリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤及びそれらの混合物を例示することができる。
【0162】
これら軟化剤、充填剤、難燃化剤等、粘着付与剤以外の添加剤の使用量の合計は、重合体(A)と重合体(B)との合計を100質量部として、0.001〜50質量部である。
【0163】
<重合体組成物、シート層(II)の製造方法>
シート層(II)を形成する重合体組成物は、重合体(A)、重合体(B)、および、必要により、上記〈その他の成分〉の項で挙げられた各種添加物を、上記のような範囲で配合し、種々公知の方法、たとえば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。
【0164】
得られた重合体組成物は、種々公知の成形方法、具体的には、例えば、押出成形、プレス成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形等の各種の成形方法により、シート層(II)とすることができる。
【0165】
<積層体>
本発明では、上述の低硬度な成形体層(I)と形状追従性、応力緩和性に優れたシート層(II)とを積層することで、成形体層の構造・形状の持つ衝撃吸収性、クッション性を保持させながらも、低硬度なスポンジなど発泡体単独では衝撃を逃がしきれないような高荷重での使用にも耐えられる積層体を提供することができる。また、元来シート層(II)が保有している特性である形状追従性と応力緩和性により、触感や長時間被着体に接した時の追従性、耐スリップ性を付与した積層体を提供することができる。
【0166】
積層方法は従来公知の方法を利用することができ、通常、接着剤を介して行うが、成形体層(I)がポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂の発泡体である場合には、接着剤を使用せず、熱融着による積層も可能である。
【0167】
本発明に係る積層体は特にその使用用途を限定されるものではないが、例えば、自動車用部品、土木・建材用品、電気・電子部品、産業材用品、スポーツ・健康用品、衛生用品、人造皮革など種々公知の用途に好適であり、特に表皮材、衝撃吸収材、クッション材としての用途に好適である。
【0168】
本発明の積層体の使用し得る衝撃吸収部材としては、例えば、健康用品(例:転倒防止フィルム・マット・シート、)、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、)、スポーツ用防具、ラケット、ボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、履物用衝撃吸収材などが挙げられる。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及しない限り「部」は質量部を意味する。
【0170】
[測定条件等]
実施例における物性の測定条件等は、以下のとおりである。
〔組成〕
ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量およびα−オレフィン含量は、13C−NMRにより以下の装置および条件により測定した。日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0171】
〔密度〕
ポリマーの密度は、ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD−300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出した。
【0172】
〔融点(Tm)〕
ポリマーの融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC220C装置で示差走査熱量計(DSC)により測定した。試料7〜12mgをアルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/分で200℃まで加熱した。その試料を、完全融解させるために200℃で5分間保持し、次いで10℃/分で−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、その試料を10℃/分で200℃まで再度加熱した。この再度の(2度目の)加熱でのピーク値温度を、融点(Tm)として採用した。
【0173】
〔極限粘度〕
ポリマーの極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
〔分子量(Mw、Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
重合体(A)の分子量は、液体クロマトグラフ:Waters製ALC/GPC 150−C plus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、カラムとして東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続し、移動相媒体としてo−ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定した。
【0174】
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、Mw/Mn値およびMz/Mw値を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
【0175】
〔MFR〕
ポリマーのMFRは、JIS K−6721に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定した。
【0176】
〔各種測定用プレスシートの作製法〕
実施例および比較例の物性測定用に使用したプレスシート(シート層)は、190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形した。1〜3mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度とし、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを各種物性評価試料に供した。
【0177】
〔ショアー硬度測定〕
ショアー硬度(JIS K6253に準拠)の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、ショアーA硬度計の押針接触開始直後と押針接触開始から15秒後の目盛りを読み取った。
【0178】
さらに下式で定義されるショアー硬度の値の変化ΔHSを求めた。
ΔHS=(押針接触開始直後のショアー硬度値 − 押針接触開始から15秒後のショアー硬度値)
ここで、ショアー硬度の測定は、原則としてショアーA硬度計を用いて行ったが、ショアーA硬度の測定が困難な測定試料に対しては、代わりにショアーD硬度計を用いて行った。ここで、同じ種類の硬度計を用いたときには、ΔHSが大きいほど凹凸追従性が高いといえる。
【0179】
〔動的粘弾性〕
動的粘弾性の測定では、厚さ3mmのプレスシートを測定試料として用い、さらに動的粘弾性測定に必要な45mm×10mm×3mmの短冊片を切り出した。ANTONPaar社製MCR301を用いて、10rad/sの周波数で−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0〜30℃の範囲でガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)がピーク値(最大値)となる際の温度(以下「ピーク値温度」ともいう。)、およびその際の損失正接(tanδ)の値を測定した。
【0180】
なお、重合体(A)および重合体(B)各々の動的粘弾性の測定でも、各々の重合体からなる厚さ3mmのプレスシートを上記と同様の方法で作成し、このプレスシートを測定試料として用いた。重合体(A)の場合は、−40〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、0〜45℃の範囲でピーク値温度およびtanδの値を測定した。重合体(B)の場合は、−70〜150℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定し、−60〜0℃の範囲でピーク値温度およびtanδの値を測定した。
【0181】
〔積層体の作製法〕
実施例および比較例の物性測定用に使用した積層体は、220℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、〔各種測定用プレスシートの作製法〕と同様の手法で120×120×3mm厚のシート作製したサンプルを、EVA発泡体(三井デュポンポリケミカル株式会社製のエバフレックスを用いて、厚み12mmtの発泡体を作製)およびポリウレタン発泡体(イノアックコーポレーションの商品名PORON、品番L−24 厚み12mmt)の発泡体と接着剤で接着した。
【0182】
〔反発弾性率〕
JIS K6400に準拠して、この積層体の上に460mmの高さから16.310gの剛体球を落下させた際の跳ね返り高さL(mm)を測定し、下記式により定義される反発弾性率を求めた。
反発弾性率(%)=L(mm)/460×100
【0183】
〔圧縮応力緩和率〕
圧縮試験機(AG−100kNX、島津製作所製)を用いて、温度23℃の条件で、試験片に1.0トンの圧縮量がかかるまで1mm/minで圧縮させた。所定の圧縮量がかかった状態で60秒保持させ、その間の応力の変化についても計測した。そして、上記初期応力と伸長から60秒後の応力との差から応力緩和率(単位:%)を算出し、応力緩和性の評価の指標とした。
【0184】
〔触感(官能評価)〕
被験者として20〜50歳台までの男女計5名を集めた。被験者を1名ずつ、23℃、50%RHに調湿した環境試験室に入室してもらい、しばらく安静にしてもらった後、実施例または比較例のシートを指で撫でてもらった。そのときの触感について、聞き取り調査を行い、以下の5段階で評価した。
なお触感は、しっとり感があり、かつさらさら感のあるものを優れているとした。従って、しっとり感あるいはさらさら感の不足の度合いで判定した。
5:触感が優れている。
4:触感がやや優れている。
3:普通。
2:触感がやや劣る。
1:触感が劣る。
【0185】
〔TPO1:合成例1〕
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
【0186】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.13MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0187】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは36.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は72.5mol%、プロピレン含量は27.5mol%であった。物性測定結果を表1に示す。
【0188】
〔TPO2:合成例2〕
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4−メチル−1−ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
【0189】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0190】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは44.0gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は84.1mol%、プロピレン含量は15.9mol%であった。物性測定結果を表1に示す。
【0191】
〔TPS1〕
TPS1は、株式会社クラレ製、商品名 ハイブラー5127(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)である。物性測定結果を表1に示す。
【0192】
【表1】
【0193】
〔実施例1〕
TPO1:25部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NHS:75部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0194】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0195】
〔実施例2〕
TPO1:30部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0196】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0197】
〔実施例3〕
TPO1:30部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0198】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとポリウレタン発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0199】
〔実施例4〕
TPO2:40部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NHS:60部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0200】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0201】
〔実施例5〕
TPS1:25部と、三井化学株式会社製ミラストマー8030NHS:75部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0202】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0203】
〔比較例1〕
三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:100部をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0204】
また、上述した作成方法で重合体組成物の3mm厚のプレスシートとEVA発泡体(12mm厚シート)とを接着して積層体を形成し、当該積層体としての物性を測定した。各種物性を表2に示す。
【0205】
〔比較例2〕
TPO1:30部と、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と、旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とを混合して、重合体組成物を得た。この組成物をプレス成形してシート層を形成し、当該シート層の物性を測定した。
【0206】
〔比較例3〕
EVA発泡体(12mm厚シート)のみの物性を表2に示す。
なお、三井化学株式会社製ミラストマー5030NHSはtanδピーク値温度−40℃、ピーク値0.5であり、ミラストマー5030NSはtanδピーク値温度−41℃、ピーク値0.55であり、ミラストマー8030NHSはtanδピーク値温度−40℃、ピーク値0.25であり、三井化学株式会社製ミラストマー5030NS:45部と旭化成ケミカルズ株式会社製タフテックH1221:25部とのブレンドはtanδピーク値温度−28℃、ピーク値0.7である。
【0207】
表2に示すように重合体(A)および重合体(B)を含む重合体組成物シートを含む積層体は反発弾性率と、圧縮応力緩和性に優れ、また触った触感も良好な結果が得られていることがわかる。
【0208】
【表2】