(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407608
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/04 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/04 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-157234(P2014-157234)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33631(P2016-33631A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】山岸 茂
(72)【発明者】
【氏名】白 龍吉
(72)【発明者】
【氏名】植村 雅俊
【審査官】
草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−047342(JP,A)
【文献】
特開2008−139601(JP,A)
【文献】
特開昭60−260928(JP,A)
【文献】
特開2010−112976(JP,A)
【文献】
特開昭61−149913(JP,A)
【文献】
特開2011−064870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置において、
光軸方向に延在する直線状の溝が形成される円筒部を有し、該円筒部のフランジ部に駆動コイル部を有するベースと、
前記円筒部の外周に配置されると共に、螺旋状の溝が形成され、前記駆動コイル部に対面するマグネットを有するカム環と、
前記円筒部の内周に配置されると共に、前記直線状の溝及び前記螺旋状の溝に係合するフォロワピンを有し、前記レンズを内嵌したレンズ枠と、を備え、
前記駆動コイル部は、前記フランジ部に埋め込まれている、
ことを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記駆動コイル部は周方向に並置された複数の駆動コイルを有し、両端の前記駆動コイルの中心間距離と、前記光軸方向に着磁された少なくとも1つの前記マグネットの長さとが同じであることを特徴とする請求項1記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記駆動コイル部は、周方向に互いに密接して等間隔に並置された複数の駆動コイルを含む第1駆動コイル群と、前記第1駆動コイル群とは周方向において異なる位置に互いに密接して等間隔に並置された複数の駆動コイルを含む第2駆動コイル群と、を有し、
前記第1駆動コイル群と前記第2駆動コイル群とは、前記駆動コイル1個分周方向に離れて配置されており、
前記マグネットは、前記光軸方向に着磁されるとともに着磁方向が異なるよう周方向に組み合わされた2つの磁石からなり、
前記第1駆動コイル群の両端の前記駆動コイルの中心間距離と、前記マグネットの周方向の長さが同じである
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたレンズ駆動装置と、撮像素子とを備えたカメラ。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたレンズ駆動装置と、撮像素子とを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2009−288648号公報がある。この公報に記載されているレンズ駆動装置は、円筒部を有するベース、円筒部に対して光軸方向に往復動自在に支持され外周にフォロワピンを有するレンズ枠、円筒部に対して光軸回りに回動自在に支持されフォロワピンに対して光軸方向にカム作用を及ぼすカム溝を有するカム筒、レンズ枠とベースの間に配置された付勢バネを備え、円筒部は、カム筒を光軸方向の一方側から外嵌させて回動自在に支持する外周面、レンズ保持枠を光軸方向の他方側から内嵌させて往復動自在に支持する内周面、フォロワピンを光軸方向にガイドするガイドスリットを有し、カム筒は、円筒部に外嵌された状態で、ガイドスリットに通されたフォロワピンをカム溝に導く導入溝を有する。
【0003】
このレンズ駆動装置は、円筒部を有するベースに駆動モータが設けられ、この駆動モータの回転軸に固定されたウォームギアとウォームギアに噛合する2段歯車とでギア機構が形成される。カム筒には歯列が形成され、この歯列にギア機構の2段歯車が噛合する。そして、駆動モータを駆動させることで、カム筒を回転させてレンズ保持枠を光軸方向に移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−288648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のレンズ駆動装置には、次のような課題が存在している。即ち、ウォームギアとギア機構と歯列とが噛合している為、これら各部のギアからギア音等の機械的騒音が発生し易いという問題が起こる。各部のギアから発生する音は、特に動画撮影等の音声録音において騒音の要因の1つとなる。
【0006】
そこで本発明は、レンズ駆動装置において、機械的な連結部を削減し、レンズ枠の駆動時における機械的騒音の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、レンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置において、光軸方向に延在する直線状の溝が形成される円筒部を有し、円筒部のフランジ部に駆動コイル部を有するベースと、円筒部の外周に配置されると共に、螺旋状の溝が形成され、駆動コイル部に対面するマグネットを有するカム環と、円筒部の内周に配置されると共に、直線状の溝及び螺旋状の溝に係合するフォロワピンを有し、レンズを内嵌したレンズ枠と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、レンズ枠を駆動する際の機械的騒音の低減化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図3】駆動コイル部とマグネットとの関係を示す説明図であり、
図2におけるA−A断面図である。
【
図4】駆動コイル部とマグネットとの関係を示す説明図であり、
図2におけるA−A断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【
図6】駆動コイル部とマグネットとの関係を示す説明図である。
【
図7】駆動コイル部とマグネットとの関係を示す説明図である。
【
図8】駆動コイル部とマグネットとの関係を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置を備えた電子機器を示した説明図((a)がカメラ、(b)が携帯情報端末)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るレンズ駆動装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1〜4に示すように、レンズ駆動装置Aは、円筒部1aを有し、この円筒部1aのフランジ部1bに駆動コイル部5を組み込んだベース1と、このベース1の円筒部1aの外周に配置されると共に、駆動コイル部5に対面するマグネット4を組み込んだカム環3と、ベース1の円筒部1aの内周に配置されると共に、レンズLを内嵌したレンズ枠2で構成されている。
【0012】
カム環3には3つの螺旋状の溝3aが形成され、ベース1の円筒部1aには光軸O方向に延在する3つの直線状の溝1cが形成されている。また、レンズ枠2の外周には、3つのフォロワピン6が形成されている。そして、レンズ枠2がベース1の円筒部1aに内嵌した状態で、それぞれのフォロワピン6がベース1の溝1cに挿入され、フォロワピン6とベース1の溝1cが係合する。さらに、ベース1の円筒部1aがカム環3に内嵌した状態で、それぞれのフォロワピン6がカム環3の溝3aに挿入され、フォロワピン6とカム環の溝3aが係合する。
【0013】
カム環3を回転させると、螺旋状の溝3aがレンズ枠2のフォロワピン6に対して光軸O方向にカム作用を及ぼす。これによって、フォロワピン6は溝3aに沿って光軸O方向に移動する。このとき、レンズ枠2は、直線状の溝1cによりベース1に対して光軸O方向に往復動自在に支持されるので、カム環3の回転の作用を受けずに、回転せずに光軸O方向の移動が可能になる。これにより、レンズLの光軸O方向への移動動作を行う。
【0014】
ベース1のフランジ部1bには、円形状で且つ空芯状に巻き回された駆動コイル部5が設けられている。駆動コイル部5は、周方向に互いに密接して等間隔に並置される3個の駆動コイル5a,5b,5cを有する。カム環3に設けられるマグネット4は、光軸O方向にN極とS極が着磁されると共に同形状であるマグネット4aとマグネット4bを有する。そして、マグネット4aとマグネット4bは、着磁方向が異なるように周方向に組み合わされている。
【0015】
マグネット4と駆動コイル部5との関係について詳述する。マグネット4aにおける光軸Oに直交する面の中央が、駆動コイル5aの中心と一致するとき、マグネット4aの周方向の端面が、駆動コイル5aに隣接する駆動コイル5bの中心と一致するように設けられる。すなわち、駆動コイル5a,5bの周方向の中心間距離とマグネット4aの周方向の長さの半分とが同じである。言い換えれば、3個の駆動コイル5のうち、両端の駆動コイル5a,5cの周方向の中心間距離と、マグネット4a及びマグネット4bの周方向の長さとが同じである。本実施形態では、駆動コイル5a,5cのそれぞれの中心と光軸Oとを結ぶ線のなす角度を22.5度としている。また、マグネット4aは、駆動コイル部5に対面する側をS極とし、マグネット4bは、駆動コイル部5に対面する側をN極としている。
【0016】
図3、
図4に示すように、駆動コイル部5に通電を行うことによって磁界を発生させ、マグネット4との吸引・反発力により、カム環3を回転させる。尚、
図3がカム環3の初期位置、
図4がカム環3の最大移動位置である。
【0017】
カム環3が
図3に示す初期位置にあるとき、駆動コイル5bのマグネット4a側にN極を発生させるように通電する。すると、カム環3は、マグネット4aの中央が駆動コイル5bの中心に位置するまで回転移動する。次に、駆動コイル5cのマグネット4a側にN極を発生させるように通電する。すると、カム環3は、マグネット4aの中央が駆動コイル5cの中心に一致するまで回転移動する。このとき、マグネット4bの中央は、駆動コイル5aの中心と一致している。したがって、次に駆動コイル5bのマグネット4a側にN極を発生させるように通電すれば、さらにカム環3が回転移動を行う。このように、駆動コイル5b,5cに順に通電を行うことで、カム環3を
図4に示す位置、すなわち、マグネット4bの中央と駆動コイル5cの中央が一致する位置まで回転移動できる。本実施形態では、カム環3は、45度回転している。
【0018】
駆動コイル部5への通電の切り替えは、図示しないホール素子を用いてマグネット4の磁界を検出し、所定のタイミングで行う。カム環3を逆方向へ回転移動させるときは、前述と逆のパターンで駆動コイル5b,5aに通電を行えばよい。
【0019】
次に、他の実施形態について説明する。レンズ枠の移動範囲を拡大したい場合には駆動コイル部を増設しても良い。尚、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
図5〜
図8に示すように、レンズ駆動装置Bは、ベース1のフランジ部1bに駆動コイル部(第1の駆動コイル部)5と第2の駆動コイル部15が設けられている。第2の駆動コイル部15は、第1の駆動コイル部5と同じ形状および配置であって、互いに密接して等間隔に並置される3個の駆動コイル15a,15b,15cを有する。第1の駆動コイル部5と第2の駆動コイル部15との間隔は、駆動コイル1個分だけ離れている。したがって、第2の駆動コイル15aの中心とマグネット4の一端面が一致するとき、第1の駆動コイル5cの中心とマグネット4aの他端面が一致する。すなわち、駆動コイル5cと駆動コイル15aのそれぞれの中心と光軸Oとを結ぶ線のなす角度は22.5度である。
【0021】
第1の駆動コイル部5と第2の駆動コイル部15に順に通電を行うことによって磁界を発生させ、マグネット4との吸引・反発力により、カム環3を回転させる。尚、
図6がカム環3の初期位置、
図8がカム環3の最大移動位置である。
【0022】
このようにマグネット部15を設けることにより、カム環3の回転角度を大きくすることができる。具体的には、カム環3は90度回転する。したがって、レンズ枠2を光軸O方向に大きく移動させることができる。
【0023】
以上のように、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置A,Bは、マグネット4と駆動コイル部5との吸引・反発力によりカム環3の回転を行うことでレンズ枠2を光軸O方向に移動させる。これにより、機械的な連結部を可能な限り排し、レンズ駆動装置A,Bから発生する機械的騒音を低減できる。
【0024】
図9に示すように、本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置A,Bは、図示しない撮像素子が取り付けられて撮像ユニット50として構成され、電子機器に搭載される。本発明の実施形態に係るレンズ駆動装置A,Bを有する撮像ユニット50は、
図9(a)に示したカメラ100に搭載することで、静音化が可能になり、動画撮影時に特に有効である。また、
図9(b)に示した携帯情報端末(携帯電話、スマートフォンなどを含む)200に搭載することで、静音化が可能になり、動画撮影時に特に有効である。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1:ベース
1a:円筒部
1b:フランジ部
1c:直線状の溝
2:レンズ枠
3:カム環
3a:螺旋状の溝
4:マグネット
5,15:駆動コイル部
6:フォロワピン
A,B:レンズ駆動装置
L:レンズ
O:光軸