(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407612
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20181004BHJP
F01D 17/08 20060101ALI20181004BHJP
F01K 27/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
F01K25/10 W
F01D17/08 A
F01K27/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-159081(P2014-159081)
(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-35254(P2016-35254A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】飯田 義男
(72)【発明者】
【氏名】荒川 正裕
(72)【発明者】
【氏名】山岸 正俊
(72)【発明者】
【氏名】大熊 恭輔
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−217800(JP,A)
【文献】
特開平08−121699(JP,A)
【文献】
特開2010−261416(JP,A)
【文献】
特開2011−208617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01K 27/00
F01D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガバナを備えたガスパイプラインの減圧エネルギーを回収する減圧エネルギー回収装置において、
膨張タービンと、ガバナ上流の一次側パイプラインと前記膨張タービンの入口を繋ぐ第1ガスラインと、前記膨張タービンの出口とガバナ下流の二次側パイプラインを繋ぐ第2ガスラインと、前記第2ガスラインに設けられ前記膨張タービンによるエネルギー回収によって温度低下したガスの冷熱を回収する冷熱回収用熱交換部とを備え、
前記第2ガスラインにおける前記冷熱回収用熱交換部の下流側に、前記冷熱回収用熱交換部の下流側のガス温度を検出するガス温度検出手段を設けると共に、当該ガス温度検出手段が検出したガス温度によって前記膨張タービンの背圧を調整する背圧調整弁を設け、
前記背圧調整弁による背圧調整によって前記第2ガスラインのガス温度を設定温度以上にすることを特徴とするガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記第1ガスラインにおいて前記膨張タービンに流入するガスを予加熱する予加熱用熱交換部を設け、
前記予加熱用熱交換部の熱源によって前記冷熱回収用熱交換部の循環水を加熱することを特徴とする請求項1に記載されたガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記予加熱用熱交換部の循環水と前記冷熱回収用熱交換部の循環水との間で熱交換する循環水間熱交換部を設けたことを特徴とする請求項2記載のガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガバナを備えたガスパイプラインの減圧エネルギーを膨張タービンによって回収する減圧エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインによるガス供給系統では、高圧ガスをパイプラインに設けたガバナ(整圧装置)によって多段階の中圧ガスに減圧し、最下流では低圧ガスに減圧して需要先に供給するのが一般的である。パイプラインに設けたガバナは、その上流側(一次側)パイプラインの圧力(一次圧)を下流側(二次側)パイプラインの圧力(二次圧)に減圧するものであるが、ガバナによる一次圧から二次圧への減圧は圧力エネルギーの損失になっている。
【0003】
これに対して、ガバナにおける一次圧を膨張タービンによって減圧し、減圧時に損失するエネルギーを発電や冷熱利用として回収する装置が知られている(下記特許文献1参照)。この従来技術は、一次圧を二次圧に減圧するために膨張タービンとガバナを並列して設け、膨張タービンは一次側パイプラインからのガスが膨張する際に回転駆動され、減圧損失エネルギーを動力として回収して発電などを行い、膨張タービンの運転中に膨張タービンの流量限界を超えるとガバナを開いて過剰分を二次側パイプラインに流すようにしている。
【0004】
またこの従来技術は、膨張タービンの上流側と下流側に、熱交換によってガスを加熱する前加熱手段と後加熱手段を設けており、膨張タービンによるエネルギー回収で温度が低下するガスの温度を前加熱手段で予め上昇させておくことで膨張タービンからのエネルギー回収を高効率で行い、後加熱手段を用いて膨張タービンによって低温になったガスから冷熱を回収して冷房などに有効利用している。ここでの前加熱手段には、例えばコージェネレーションシステムからの排熱や工場排熱など比較的低温の熱源の排熱利用によって加温された温水が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−217800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガバナにおける一次側パイプラインのガス圧を膨張タービンで減圧して二次側パイプラインに戻す際には、二次側パイプラインに戻すガスの温度を0℃以上にすることが必須の要件として求められている。また、膨張タービンによってエネルギー回収を行う場合にもガバナの二次圧がエネルギー回収の影響を受けること無く、安定したガス供給を継続できることが求められる。
【0007】
この際、膨張タービンのエネルギー回収で温度低下したガスを十分な冷熱需要で加熱することができれば、ガス温度を0℃以上にして二次側パイプラインに戻すという要求に対応することができる。しかしながら、冷熱需要が低い場合には、膨張タービンの出口側ガス温度を十分に加熱できず、このような要求に対応できなくなる問題が生じる。
【0008】
これに対しては、従来技術のように、膨張タービンの上流側に前加熱手段を設けて、膨張タービンに入るガスを予め加熱することが考えられる。しかしながら、このような前加熱手段にコージェネレーションシステムからの排熱や工場排熱などを利用する場合には安定した熱供給を受けられない問題があり、またこの前加熱手段に燃焼ボイラなどを用いる場合にはエネルギーを回収する膨張タービンの稼働で逆にエネルギーを消費することになり、省エネ効果が低減するだけで無くCO
2発生の抑制効果も低減することになる。また、二次側パイプラインに戻すガスの温度調整を膨張タービンの上流側にある前加熱手段に頼ることになり、膨張タービンの負荷変動時に対して応答性の良い温度調整を行いにくい問題がある。
【0009】
また、一次圧を膨張タービンで減圧してガバナの二次側パイプラインに戻す場合に、一次側パイプラインのガス流量が急激に変化したり一次圧が上昇したりすると、膨張タービン単体では応答性のよい圧力調整ができない。このため、二次側パイプラインへの送出圧力を規定の圧力に素早く制御することができない問題が生じる。
【0010】
また、膨張タービンのエネルギー回収で温度低下したガスの冷熱を後加熱手段で回収して有効利用する場合、冷熱需要が少ないと、後加熱手段で温度低下したガスを十分に加熱することができず、後加熱手段の冷熱回収循環水を凍結させてしまう問題が生じる。前加熱手段によるガスの加熱を必要最小限に抑えて、後加熱手段における冷熱回収循環水の凍結を避けながら、膨張タービンによるエネルギー回収を行うことが求められる。
【0011】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ガスパイプラインにおけるガバナの減圧エネルギーを膨張タービンによって回収する装置において、ガバナの二次圧がエネルギー回収の影響を受けること無く、安定したガス供給の継続を可能にすること、膨張タービンで減圧して二次側パイプラインに戻すガスの温度を確実に0℃以上にすること、二次側パイプラインに戻すガスの温度と圧力を規定の値に制御すること、膨張タービンのエネルギー回収で温度低下したガスの冷熱を回収して有効利用する際に、膨張タービンに入るガスの加熱を必要最小限に抑えて、冷熱回収循環水の凍結を避けながら膨張タービンを十分に稼働させることができること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明によるガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置は、以下の構成を具備するものである。
【0013】
ガバナを備えたガスパイプラインの減圧エネルギーを回収する減圧エネルギー回収装置において、膨張タービンと、ガバナ上流の一次側パイプラインと前記膨張タービンの入口を繋ぐ第1ガスラインと、前記膨張タービンの出口とガバナ下流の二次側パイプラインを繋ぐ第2ガスラインと、前記第2ガスラインに設けられ前記膨張タービンによるエネルギー回収によって温度低下したガスの冷熱を回収する冷熱回収用熱交換部とを備え、前記第2ガスラインにおける前記冷熱回収用熱交換部の下流側に、
前記冷熱回収用熱交換部の下流側のガス温度を検出するガス温度検出手段を設けると共に、当該ガス温度検出手段が検出したガス温度によって前記膨張タービンの背圧を調整する背圧調整弁を設け、前記背圧調整弁による背圧調整によって前記第2ガスラインのガス温度を設定温度以上にすることを特徴とするガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置。
【発明の効果】
【0014】
第2ガスラインにおける冷熱回収用熱交換部の下流側に、ガス温度と膨張タービンの背圧の一方又は両方を検出して絞りを調整する背圧調整弁を設け、ガス温度又は背圧が低下した場合に背圧を上昇させるように背圧調整弁を制御したので、冷熱需要が低い場合にも背圧調整弁の調整によって二次側パイプラインに戻すガスの温度を確実に0℃以上にすることができる。また、膨張タービンの背圧の変動を背圧調整弁の制御で吸収することができるので、二次側パイプラインに戻すガス圧を安定化することができ、エネルギー回収の影響を受けること無く、安定したガス供給を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の一構成例を示した説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の他の構成例を示した説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の他の構成例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の一構成例を示した説明図である。本発明の実施形態に係る減圧エネルギー回収装置1は、ガス供給系統を構成するガスパイプラインに併設され、ガバナGの減圧エネルギーを動力や発電などとして回収するものである。
【0017】
減圧エネルギー回収装置1は、膨張タービン10と、ガバナG上流の一次側パイプラインP1と膨張タービン10の入口を繋ぐ第1ガスライン11と、膨張タービン10の出口とガバナG下流の二次側パイプラインP2を繋ぐ第2ガスライン12と、第2ガスライン12に設けられ膨張タービン10によるエネルギー回収によって温度低下したガスの冷熱を回収する冷熱回収用熱交換部13を備えている。
【0018】
膨張タービン10は、一次側パイプラインP1からのガスが膨張して減圧する際に回転駆動され、減圧エネルギーを動力として回収し発電などを行うものである。膨張タービン10によって回収されるエネルギーは、その入口と出口の圧力差で規定され、膨張タービン10の入口を一次側パイプラインP1に直結して出口を二次側パイプラインP2に直結している場合には、一次圧と二次圧の圧力差で規定されるエネルギーが膨張タービン10によって回収される。
【0019】
第1ガスライン11と第2ガスライン12は、一次側パイプラインP1又は二次側パイプラインP2の口径以下の任意口径のガス管によって構成される。第1ガスライン11と第2ガスライン12は複数のガス管を接続して構成することができ、その途中に必要に応じて弁やフィルタなどを介在させることができる。
【0020】
膨張タービン10は、エネルギー回収に伴ってガスの温度を低下させる。冷熱回収用熱交換部13は、第2ガスライン12を流れる温度低下したガスとの熱交換で、ガス温度を上昇させると同時に冷熱を冷熱需要先Cに供給する。冷熱回収用熱交換部13は、冷熱回収用の循環水が流れる循環流路13Aを備えており、この循環流路13Aを流れる循環水と冷熱需要先を循環する温水とが熱交換部13Bで熱交換する。
【0021】
本発明の実施形態に係る減圧エネルギー回収装置1は、このような構成に加えて、第2ガスライン12に、背圧調整弁14、ガス温度検出手段15、背圧検出手段16を備えている。背圧調整弁14は、第2ガスライン12における冷熱回収用熱交換部13の下流側に設けられる。この背圧調整弁14は、第2ガスライン12における冷熱回収用熱交換部13の下流におけるガス温度をガス温度検出手段15で検出し、また、第2ガスライン12における膨張タービン10の背圧を背圧検出手段16で検出して、ガス温度検出手段15で検出されたガス温度が設定温度(例えば0℃)以下にならないように背圧調整弁14を調整する。
【0022】
このような構成を備える減圧エネルギー回収装置1によると、冷熱需要先Cの需要が低く、第2ガスライン12を流れるガスの温度を十分に上昇させることができない場合には、背圧調整弁14を絞る方向に制御して膨張タービン10の稼働を抑制する。これによって、膨張タービン10によって回収されるエネルギー量が少なくなりガス温度の低下が抑えられる。このような膨張タービン10の背圧調整を行うと、必然的に膨張タービン10による発電量が低下することになる。ここでは、膨張タービン10の稼働による発電出力は補助的な電力供給であり、二次側パイプラインP2の二次圧を安定させることを優先している。
【0023】
また、膨張タービン10の負荷変動などで膨張タービン10の背圧が上昇した場合にも背圧調整弁14を絞る方向に制御して二次側パイプラインP2に戻すガス圧を適正値まで下げる。このような背圧調整弁14の制御によって、二次側パイプラインP2に戻すガスの温度を確実に0℃以上にすることができると共に、二次側パイプラインP2に戻すガス圧を安定させることができ、ガバナGの安定した運転を維持して安定したガス供給が実現できる。
【0024】
また、冷熱負荷が急激に変化した場合は、それによって変化するガス温度を直接検出して、ガス温度の低下に直結する膨張タービン10の仕事量を背圧調整弁14の調整によって制御するので、ガス温度を高い応答性で制御することが可能になる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の他の構成例を示した説明図である。前述した
図1における説明と共通する部位には同一符号を付して重複説明を省略する。この構成例に係る減圧エネルギー回収装置1(1A)は、
図1に示した例に膨張タービン10へのガス流入量制御の構成が付加されている。
【0026】
具体的には、第1ガスライン11にガス流量を検出するガス流量検出手段17を設け、このガス流量検出手段17の検出流量によって膨張タービン10の入口に設けた入口弁10Vの絞りを制御する。ここでは先ず、入口弁制御部18がガス流量検出手段17の検出流量によって入口弁10Vを制御し、検出流量が上昇した場合に膨張タービン10へのガス流入量を抑制するように入口弁10Vを絞る制御を行う。
【0027】
図1に示した構成例は、冷熱需要が多く第2ガスライン12のガス温度を十分に上昇させることができる場合には、背圧調整弁14を開放し膨張タービン10の背圧をガバナGの二次圧まで下げて膨張タービン10を稼働させることができる。このような状況で一次側パイプラインP1のガス流量に急激な変化が生じたり一次圧の上昇などが生じたりすると、膨張タービン10単体の回収エネルギーを制御するだけでは第2ガスライン12のガス圧(膨張タービン10の背圧)を素早く安定化させることが難しい。
【0028】
このような状況に対処するために、
図2に示した構成例は、第1ガスライン11にガス流量を検出するガス流量検出手段17を設け、膨張タービン10の入口に、ガス流量検出手段17の検出流量によって制御され検出流量が上昇した場合に膨張タービン10へのガス流入量を抑制する入口弁10Vを設けている。このような構成によると、第1ガスライン11のガス流量の上昇に対して素早く膨張タービン10へのガス流量を抑制し、第2ガスライン12のガス圧変動を安定させることができる。
【0029】
入口弁10Vの制御には、更に、第2ガスライン12に設けた背圧検出手段16によるフィードバック制御を加えることができる。この場合、入口弁制御部18は、ガス流量検出手段17の検出流量による制御に加えて背圧検出手段16の検出背圧による制御を行い、検出背圧が上昇した場合に入口弁10Vを絞って膨張タービン10へのガス流入量を抑える。ここでの背圧検出手段16は第2ガスライン12における背圧調整弁14の上流側に設置している。このように第2ガスライン12のガス圧変動(膨張タービン10の背圧変動)をフィードバックして膨張タービン10へのガス流入量を制御することで、第2ガスライン12のガス圧をより安定にすることができる。
【0030】
入口弁制御部18は、ガス流量検出手段17の検出流量による入口弁10Vの制御と背圧検出手段16の検出圧による入口弁10Vの制御をそれぞれ単独で行うことができる。第1ガスライン11のガス流量やガス圧力の変動が比較的小さい場合には、このような単独制御で第2ガスライン12の圧力を安定化させることができる。
【0031】
図2に示した例は、背圧調整弁14の調整によって膨張タービン10の稼働を制御する構成に入口弁10Vの制御を付加する例を示しているが、背圧調整弁14の制御を省いて、入口弁10Vの制御を単独で行うことも可能である。冷熱需要先Cの需要が高く第2ガスライン12におけるガス温度を常時0℃以上に維持できる場合には、ガス温度による背圧調整弁14の制御を省いて入口弁10Vの制御のみで第2ガスライン12のガス圧を安定にすることができる。
【0032】
図3は、本発明の実施形態に係るガスパイプラインにおける減圧エネルギー回収装置の他の構成例を示した説明図である。前述した
図1及び
図2における説明と共通する部位には同一符号を付して重複説明を省略する。この構成例に係る減圧エネルギー回収装置1(1B)は、
図2に示した例に冷熱回収用熱交換部13における循環水の凍結防止に係る構成が付加させている。
【0033】
この例では、第1ガスライン11に膨張タービン10に流入するガスを予加熱する予加熱用熱交換部20を設けている。予加熱用熱交換部20は、第1ガスライン11を流れるガスとの熱交換でガス温度を上昇させる。予加熱用熱交換部20は、予加熱用の循環水が流れる循環流路20Aを備えており、この循環流路20Aを流れる循環水と熱源Hを循環する温水とが熱交換部20Bで熱交換する。ここでの熱源Hは、コージェネレーションシステムからの排熱や工場排熱などを利用することができる。
【0034】
そして、予加熱用熱交換部20の循環流路20Aと冷熱回収用熱交換部13の循環流路13Aは循環水間熱交換部21で熱交換されており、予加熱用熱交換部20の熱源Hによって冷熱回収用熱交換部13の循環水を加熱している。これによると、冬期などで膨張タービン10に流入するガスの温度が低い場合にも流入するガスの温度を予加熱用熱交換部20の加熱で上昇させて、膨張タービン10のエネルギー回収量をある程度確保しながら第2ガスライン12のガス温度の低下を抑えることができる。
【0035】
また、膨張タービン10のエネルギー回収量を増やして膨張タービン10の出口ガス温度が低くなった場合にも、循環水間熱交換部21からの熱で冷熱回収用熱交換部13の循環水が凍結するのを防ぐことができる。これにより冷熱回収用熱交換部13によって円滑に冷熱を回収することが可能になる。更に、循環水間熱交換部21の採用によって、冷熱回収用熱交換部13の加温能力を高めることができるので、予加熱用熱交換部20の熱交換能力(伝熱面積)を必要最小限に抑えることが可能になる。また、循環水間熱交換部21を設けることで、冷熱需要先Cの冷熱負荷が無い又は少ないときにも、熱源Hからの熱を冷熱回収用熱交換部13に送ることで、膨張タービン10を定格運転させることができる。このため膨張タービン10の稼働率が向上する。
【0036】
図3に示した構成例において、第1ガスライン11のガス流量やガス圧が安定している場合には、入口弁10V及び入口弁10Vを制御するための構成を省くことができる。また、予加熱用熱交換部20によるガスの加熱や予加熱用熱交換部20の循環水と冷熱回収用熱交換部13の循環水との熱交換で第2ガスライン12のガス温度を常時0℃以上に上昇させることができる場合には、ガス温度検出や背圧検出によって背圧調整弁14を制御する構成を省くことができる。
【0037】
第1ガスライン11のガス流量やガス圧が安定していて、予加熱用熱交換部20によるガスの加熱や予加熱用熱交換部20の循環水と冷熱回収用熱交換部13の循環水との熱交換で第2ガスライン12のガス温度を常時0℃以上に上昇させることができる場合には、入口弁10V及び入口弁10Vを制御するための構成とガス温度検出や背圧検出によって背圧調整弁14を制御する構成の両方を省くことができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,1A,1B:減圧エネルギー回収装置,
10:膨張タービン,10V:入口弁,
11:第1ガスライン,12:第2ガスライン,
13:冷熱回収用熱交換部,13A:循環流路,13B:熱交換部,
14:背圧調整弁,15:ガス温度検出手段,16:背圧検出手段,
17:ガス流量検出手段,18:入口弁制御部,
20:予加熱用熱交換部,20A:循環流路,20B:熱交換部,
21:循環水間熱交換部,
P1:一次側パイプライン,P2:二次側パイプライン,G:ガバナ,
C:冷熱需要先,H:熱源