特許第6407637号(P6407637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407637
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】食品用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20181004BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20181004BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B65D81/34 W
   A47J27/00 107
   F24C7/02 551C
   F24C7/02 551B
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-181134(P2014-181134)
(22)【出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2016-55873(P2016-55873A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−099968(JP,A)
【文献】 特開平10−218235(JP,A)
【文献】 特開平03−275475(JP,A)
【文献】 特開平05−262374(JP,A)
【文献】 実公昭50−021016(JP,Y1)
【文献】 特開2000−085853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/34
A47J27/00
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層を含有しない樹脂製の内側容器と、
少なくとも金属層を含む積層体で構成された外側容器と、を備え、
前記内側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第1フランジ部が延設され、該第1フランジ部の外方側の周縁から略下方に向けて段部が延ばされ、該段部の下端から水平方向の外方に向けて第2フランジ部が延設され、
前記外側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第3フランジ部が延設され、
前記外側容器の第3フランジ部の上面が前記内側容器の第1フランジ部の下面に当接して積層され、前記第3フランジ部の先端縁が、前記内側容器の段部の内周面に当接して配置されて、前記内側容器の外面に接着剤を介して前記外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化され
前記内側容器の外面の材質が、ポリプロピレン又は結晶性ポリエチレンテレフタレートであり、
前記外側容器の内面の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、エポキシ樹脂、エポキシメラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂またはアルミニウムであり、
前記接着剤として、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤及びアクリル系接着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の接着剤が用いられていることを特徴とする食品用容器。
【請求項2】
前記内側容器は、単一樹脂層で構成されている請求項1に記載の食品用容器。
【請求項3】
前記内側容器の段部の下端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部が延設されている請求項1または2に記載の食品用容器。
【請求項4】
前記返しフランジ部の上面が、前記外側容器の第3フランジ部の下面に当接している請求項3に記載の食品用容器。
【請求項5】
前記内側容器の第2フランジ部の下面における少なくとも外方側の周縁部に、前記外側容器の構成部材が積層されていない請求項〜4のいずれか1項に記載の食品用容器。
【請求項6】
電子レンジ加熱を行うまでは前記両容器が一体化された状態で使用され、電子レンジ加熱を行う際に前記両容器が分離されて前記内側容器のみが電子レンジ加熱に供されて使用されるものである請求項1〜のいずれか1項に記載の食品用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状、固形状等の食品を中に入れるための容器であって、電子レンジでの加熱の際のスパーク発生を防止できる食品用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層を含む容器は、ガスバリア性に優れることから、食品用容器として広く普及しているが、このような金属層を含む容器に充填された食品を電子レンジで加熱する際、従前は、ガラス製容器や陶磁器製容器に食品を移し替えてから電子レンジで加熱していた。このような食品の移し替えを行っていたのは、金属層を含む容器を電子レンジで使用した場合、容器のフランジ端部に露出した金属層でスパークを発生して、容器が燃える可能性があるし、内容物の食品の品質に影響を及ぼす等の問題があったためである。
【0003】
金属層を含む容器を電子レンジで使用した際の上記問題を解決するものとして、特許文献1には、金属箔の両面を熱可塑性樹脂で被覆した構成からなる容器において、該容器のフランジ端部を外装体で覆った構成とし、前記容器の底部外面の中央部に、損失係数(ε・tanδ)が0.001以下、軟化点温度が100℃以上の樹脂からなり、高さが3.5mm以上のスパーク防止部材を設け、前記スパーク防止部材の断面積が容器底面積に対して1%以上、且つ、20mm2以上であることを特徴とする電子レンジ用容器を用いることが提案されている。上記諸特徴を備えたスパーク防止部材を設けると共に、容器のフランジ端部を外装体で覆って金属層の端部が露出しないようにすることによって、電子レンジでの加熱の際のスパーク発生を防止できることが特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−131270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の容器は、金属層が露出する部分はないものの、金属層を含む容器であるため、この容器を電子レンジで加熱すると、金属層の存在により電磁波が遮蔽されてしまって、容器に入っている食品への電磁波照射は、容器の開口部(通常、容器の上端の開口部)のみからとなり、食品の加熱効率が低いし、食品の加熱温度にムラが生じやすく(食品において部分的に加熱温度にムラが生じやすく)、また液状物を含む食品では加熱ムラにより突沸現象が生じることが懸念される。
【0006】
また、特許文献1に記載の容器では、容器中の金属層が熱伝導率が大きいので、電子レンジで加熱された食品の温度(熱量)を容器の外面に伝えやすく、容器が高温になるので、電子レンジで加熱した後に容器を取り出す際にそのまま手で持ちづらいという問題があった。
【0007】
更に、特許文献1に記載の容器は、他の物品との接触、外的衝撃等により、金属層の一部が露出する可能性があり、このように金属層の一部が露出した容器を電子レンジで加熱すると、スパークを発生する。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、容器としてのガスバリア性に優れていて酸素や水分から食品を保護することができる一方、電子レンジで加熱を行う際に、スパーク発生を防止できると共に、容器が高温になり難く、食品の加熱効率が高く、食品の加熱にムラが生じ難い食品用容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1]金属層を含有しない樹脂製の内側容器と、
少なくとも金属層を含有する外側容器と、を備え、
前記内側容器の外面に接着剤を介して前記外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化されていることを特徴とする食品用容器。
【0011】
[2]前記内側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第1フランジ部が延設され、該第1フランジ部の外方側の周縁から略下方に向けて段部が延ばされ、該段部の下端から水平方向の外方に向けて第2フランジ部が延設され、
前記外側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第3フランジ部が延設され、該第3フランジ部の上面が前記内側容器の第1フランジ部の下面に当接して積層され、前記第3フランジ部の先端縁が、前記内側容器の段部の内周面に当接していることを特徴とする前項1に記載の食品用容器。
【0012】
[3]前記内側容器の段部の下端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部が延設されている前項2に記載の食品用容器。
【0013】
[4]前記返しフランジ部の上面が、前記外側容器の第3フランジ部の下面に当接している前項3に記載の食品用容器。
【0014】
[5]前記内側容器の第2フランジ部の下面における少なくとも外方側の周縁部に、前記外側容器の構成部材が積層されていない前項2〜4のいずれか1項に記載の食品用容器。
【0015】
[6]前記外側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第4フランジ部が延設され、該第4フランジ部の外方側の周縁から略上方に向けて段部が延ばされ、該段部の上端から水平方向の外方に向けて第5フランジ部が延設され、
前記内側容器の上端の開口部の周縁から水平方向の外方に向けて第6フランジ部が延設され、該第6フランジ部の下面が前記外側容器の第4フランジ部の上面に当接して積層され、前記第6フランジ部の先端縁が、前記外側容器の段部の内周面に当接していることを特徴とする前項1に記載の食品用容器。
【0016】
[7]前記外側容器の段部の上端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部が延設されている前項6に記載の食品用容器。
【0017】
[8]前記返しフランジ部の下面が、前記内側容器の第6フランジ部の上面に当接している前項7に記載の食品用容器。
【0018】
[9]前記外側容器の第5フランジ部の上面における少なくとも外方側の周縁部に、前記内側容器の構成部材が積層されていない前項6〜8のいずれか1項に記載の食品用容器。
【0019】
[10]前記内側容器の外面の材質が、ポリプロピレン又は結晶性ポリエチレンテレフタレートであり、
前記外側容器の内面の材質が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、エポキシ樹脂、エポキシメラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂またはアルミニウムである前項1〜9のいずれか1項に記載の食品用容器。
【0020】
[11]電子レンジ加熱を行うまでは前記両容器が一体化された状態で使用され、電子レンジ加熱を行う際に前記両容器が分離されて前記内側容器のみが電子レンジ加熱に供されて使用されるものである前項1〜10のいずれか1項に記載の食品用容器。
【0021】
[12]前記接着剤として、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤及びアクリル系接着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の接着剤が用いられている前項1〜11のいずれか1項に記載の食品用容器。
【0022】
[13]少なくとも金属層を含有する外側容器を準備する工程と、
前記外側容器の内面の少なくとも一部に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤塗布後の外側容器の内面に加熱溶融樹脂を射出成形することによって、前記外側容器の内面に、接着剤を介して、金属層を含有しない樹脂製の内側容器を重ね合わせて、前記両容器を分離可能に一体化させる工程と、を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【0023】
[14]金属層を含有しない樹脂製シートと、少なくとも金属層を含有する外側容器とを準備する工程と、
前記樹脂製シートにおける外側容器側の表面(外側容器の内面に重ね合わされる側の表面)の少なくとも一部または/および前記外側容器の内面の少なくとも一部に接着剤を塗布する工程と、
前記樹脂製シートに圧空成形又は真空成形を行うことによって、内側容器を成形すると同時に、該内側容器を接着剤を介して前記外側容器の内面に重ね合わせて、前記両容器を分離可能に一体化させる工程と、
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【0024】
[15]金属層を含有しない樹脂製の内側容器と、少なくとも金属層を含有する成形用シートとを準備する工程と、
前記内側容器の外面の少なくとも一部または/および前記成形用シートにおける内側容器側の表面(内側容器の外面に重ね合わされる側の表面)の少なくとも一部に接着剤を塗布する工程と、
前記成形用シートに圧空成形又は真空成形を行うことによって、外側容器を成形すると同時に、該外側容器を接着剤を介して前記内側容器の外面に重ね合わせて、前記両容器を分離可能に一体化させる工程と、
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【0025】
[16]金属層を含有しない樹脂製シートと、少なくとも金属層を含有する外側容器とを準備する工程と、
前記樹脂製シートにおける外側容器側の表面(外側容器の内面に重ね合わされる側の表面)の少なくとも一部または/および前記外側容器の内面の少なくとも一部に接着剤を塗布する工程と、
前記樹脂製シートに絞り成形を行うことによって、内側容器を成形すると同時に、該内側容器を接着剤を介して前記外側容器の内面に重ね合わせて、前記両容器を分離可能に一体化させる工程と、
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【0026】
[17]金属層を含有しない樹脂製の内側容器と、少なくとも金属層を含有する成形用シートとを準備する工程と、
前記内側容器の外面の少なくとも一部または/および前記成形用シートにおける内側容器側の表面(内側容器の外面に重ね合わされる側の表面)の少なくとも一部に接着剤を塗布する工程と、
前記成形用シートに絞り成形を行うことによって、外側容器を成形すると同時に、該外側容器を接着剤を介して前記内側容器の外面に重ね合わせて、前記両容器を分離可能に一体化させる工程と、
を含むことを特徴とする食品用容器の製造方法。
【発明の効果】
【0027】
[1]の発明(食品用容器)では、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された構成であるから、食品が充填された本発明の食品用容器を保存している状態では、外側容器が金属層を含有することにより、容器としてのガスバリア性に優れていて酸素や水分から食品を保護することができる。一方、食品が充填された本発明の食品用容器の中の食品に対して電子レンジで加熱を行う際には、内側容器と外側容器を分離して、食品が充填された内側容器だけを電子レンジに入れて加熱を行うことができ、該内側容器は、金属層を含有しない構成であるので、電子レンジで加熱を行う際に、スパーク発生を防止できると共に、容器が高温になり難く、食品の加熱効率が高く、食品の加熱にムラが生じ難いという効果が得られる。
【0028】
更に、内側容器と外側容器とが「接着剤で」一体化されているので、食品用容器が製造されてから以降、食品用容器内に食品が充填されるまでの間に、夏場等における保管温度等の影響を受けても、内側容器と外側容器の間の密着性が低下することがない。
【0029】
[2]の発明では、内側容器と外側容器の一体化強度をより増大させることができて、両容器が一体化された状態をより安定させることができる。また、内側容器が第1フランジ部を備えていることで、内側容器と蓋との封緘性を向上させることができる。
【0030】
[3]の発明では、内側容器の段部の下端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部が延設されているから、内側容器と外側容器の一体化強度をより一層増大させることができて、両容器が一体化された状態をより一層安定させることができる。
【0031】
[4]の発明では、返しフランジ部の上面が、外側容器の第3フランジ部の下面に当接している構成であるから、内側容器と外側容器の一体化強度をさらに増大させることができる。
【0032】
[5]の発明では、内側容器の第2フランジ部の下面における少なくとも外方側の周縁部に、外側容器の構成部材が積層されていない構成であるから、即ち内側容器の第2フランジ部が、外側容器の構成部材(第3フランジ部など)より外方に突出した構成であるから、内側容器と外側容器を分離する際にこの第2フランジ部がつまみ部(取っ手)の役目を果たし、内側容器と外側容器の分離作業をスムーズに行うことができる。
【0033】
[6]の発明では、内側容器と外側容器の一体化強度をより増大させることができて、両容器が一体化された状態をより安定させることができる。また、内側容器が第6フランジ部を備えていることで、内側容器と蓋との封緘性を向上させることができる。
【0034】
[7]の発明では、外側容器の段部の上端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部が延設されているから、内側容器と外側容器の一体化強度をより一層増大させることができて、両容器が一体化された状態をより一層安定させることができる。
【0035】
[8]の発明では、返しフランジ部の下面が、内側容器の第6フランジ部の上面に当接している構成であるから、内側容器と外側容器の一体化強度をさらに増大させることができる。
【0036】
[9]の発明では、外側容器の第5フランジ部の上面における少なくとも外方側の周縁部に、内側容器の構成部材が積層されていない構成であるから、即ち外側容器の第5フランジ部が、内側容器の構成部材(第6フランジ部など)より外方に突出した構成であるから、内側容器と外側容器を分離する際にこの第5フランジ部がつまみ部(取っ手)の役目を果たし、内側容器と外側容器の分離作業をスムーズに行うことができる。
【0037】
[10]の発明では、内側容器の外面の材質及び外側容器の内面の材質が、それぞれ特定のものに限定されているから、内側容器は耐熱性に優れると共に、両容器が十分に分離可能な状態で一体化されたものとなる。
【0038】
[11]の発明では、電子レンジ加熱を行うまでは両容器が一体化された状態で使用されるものであるので、電子レンジ加熱を行うまでの間は、外側容器が金属層を含有することにより、容器としてのガスバリア性に優れていて酸素や水分から食品を保護することができる。一方、電子レンジ加熱を行う際に両容器が分離されて、金属層を含有しない内側容器のみが電子レンジ加熱に供されて使用されるものであるから、電子レンジで加熱を行う際に、スパーク発生を防止できると共に、容器が高温になり難く、食品の加熱効率が高く、食品の加熱にムラが生じ難い。
【0039】
[12]の発明では、接着剤として、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤及びアクリル系接着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の接着剤が用いられている構成であるから、内側容器と外側容器とを手の力で分離可能な適度な接着強度で両容器を分離可能に一体化できる利点がある。
【0040】
[13]の発明によれば、射出成形を利用することで、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された食品用容器を製造できる。
【0041】
[14]の発明によれば、圧空成形又は真空成形を利用することで、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された食品用容器を製造できる。
【0042】
[15]の発明によれば、圧空成形又は真空成形を利用することで、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された食品用容器を製造できる。
【0043】
[16]の発明によれば、絞り成形を利用することで、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された食品用容器を製造できる。
【0044】
[17]の発明によれば、絞り成形を利用することで、金属層を含有しない樹脂製の内側容器の外面に、接着剤を介して、金属層を含有する外側容器が重ね合わされて前記両容器が分離可能に一体化された食品用容器を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明に係る食品用容器の第1実施形態を示す断面図である。
図2図1の食品用容器を内側容器と外側容器とに分離した状態を示す断面図である。
図3】本発明に係る食品用容器の第2実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る食品用容器の第3実施形態を示す断面図である。
図5】本発明に係る食品用容器の第4実施形態を示す断面図である。
図6図1の食品用容器の製造方法を工程順次に従って示す断面図であって、(A)は開いた射出成形型に、内面に接着剤が塗布された外側容器をセットした状態、(B)は射出成形型を型締めした状態、(C)は射出成形が終了した状態をそれぞれ示す。
図7図3の食品用容器の製造方法を工程順次に従って示す断面図であって、(A)は、樹脂製シートと、内面に接着剤が塗布された外側容器を圧空成形型にセットして真空引きしている状態、(B)は圧空成形した直後の状態、(C)は圧空成形型を開放して所定位置で切断を行って食品用容器を取り出した状態をそれぞれ示す。
図8図4の食品用容器の製造方法を工程順次に従って示す断面図であって、(A)は、成形用シートと、外面に接着剤が塗布された内側容器を絞り成形装置にセットした状態、(B)は絞り成形を行っている途中状態、(C)は絞り成形が終了した状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係る食品用容器1は、金属層を有しない樹脂製の内側容器2と、少なくとも金属層52を有する外側容器3と、を備え、前記内側容器2の外面に接着剤(層)10を介して前記外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に積層一体化されてなる。
【0047】
本発明に係る食品用容器1の第1実施形態を図1に示す。内側容器2は、底壁2aと、該底壁2aの周縁から上方に向けて立ち上げられた周側壁2bとを備え、前記周側壁2bの上端に開口部20が設けられている。外側容器3は、底壁3aと、該底壁3aの周縁から上方に向けて立ち上げられた周側壁3bとを備え、前記周側壁3bの上端に開口部30が設けられている。本実施形態では、前記内側容器2の底壁2aは、平面視円形状であり、前記内側容器2の周側壁2bは、略円筒形状である。また、本実施形態では、前記外側容器3の底壁3aは、平面視円形状であり、前記外側容器3の周側壁3bは、略円筒形状である。
【0048】
前記内側容器2の上端の開口部20の周縁(周側壁2bの上端)から水平方向の外方に向けて第1フランジ部21が延設され、該第1フランジ部21の外方側の周縁から略下方に向けて段部23が延ばされ、該段部23の下端から水平方向の外方に向けて第2フランジ部22が延設されている(図1参照)。
【0049】
前記外側容器3の上端の開口部30の周縁(周側壁3bの上端)から水平方向の外方に向けて第3フランジ部33が延設されている(図1参照)。
【0050】
本第1実施形態では、前記内側容器2は、単一の樹脂層(単層)で形成された内側容器であり、前記外側容器3は、金属層52の一方の面に第1樹脂層(内側層)51が積層され、前記金属層52の他方の面に第2樹脂層(外側層)53が積層された3層構成の外側容器である(図1参照)。
【0051】
しかして、前記内側容器2の外面に接着剤10を介して前記外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されている。即ち、前記内側容器2の底壁2aの外面に接着剤10を介して前記外側容器3の底壁3aの内面が当接して配置され、前記内側容器2の周側壁2bの外面に接着剤10を介して前記外側容器3の周側壁3bの内面が当接して配置され、前記外側容器3の第3フランジ部33の上面が前記内側容器2の第1フランジ部21の下面に当接して配置され、前記第3フランジ部33の先端縁が、前記内側容器2の段部23の内周面に当接して配置されて、前記内側容器2の外面に接着剤10を介して前記外側容器3が略適合状態に重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されている(図1参照)。
【0052】
本実施形態では、内面に接着剤10が塗布された外側容器3の該内面(塗布面)に加熱溶融樹脂が射出成形されることによって、外側容器3の内面に接着剤(層)10を介して内側容器2が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されたものである(図6参照)。
【0053】
また、前記内側容器2の第2フランジ部22の下面に、前記外側容器3の構成部材が積層されていない構成になっている。即ち、内側容器2の第2フランジ部22が、外側容器3の構成部材(第3フランジ部33など)より外方に突出した構成であり、このような構成により、内側容器2と外側容器3を分離する際の分離作業をスムーズに行うことができる。例えば、外方に突出している内側容器2の第2フランジ部22を手で持って該第2フランジ部22を変形させると、内側容器2と外側容器3の間に空気が入り、これにより、一体化されていた内側容器2と外側容器3とを分離できる。
【0054】
上記構成の食品用容器1では、保存中等の電子レンジ加熱を行うまでの間は内側容器2と外側容器3とが一体化された状態で使用されるのであるが、この時、外側容器3が金属層52を含有しているので、食品用容器1は、ガスバリア性に優れていて酸素や水分から食品を保護することができる。一方、食品が充填された本発明の食品用容器1の中の食品に対して電子レンジで加熱を行う際には、図2に示すように、内側容器2と外側容器3を分離して、食品が充填された内側容器2だけを電子レンジに入れて加熱を行うことができ、この時、内側容器2は金属層を含有しない構成であるので、電子レンジで加熱を行う際に、スパーク発生を防止できると共に、容器が高温になり難く、食品の加熱効率が高く、食品の加熱にムラが生じ難いという効果が得られる。
【0055】
次に、本発明に係る食品用容器1の第2実施形態について図3を参照しつつ説明する。この第2実施形態の食品用容器1は、前記第1実施形態の食品用容器の構成を具備した上で、更に次のような構成を備えている。
【0056】
即ち、前記内側容器2の段部23の下端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部24が延設されている。また、前記返しフランジ部24の上面が、前記外側容器3の第3フランジ部33の下面に当接している(図3参照)。
【0057】
この第2実施形態の食品用容器1では、前記第1実施形態の食品用容器で奏する効果と同様の効果が得られる上に、更に次のような効果も得られる。
【0058】
即ち、内側容器2の段部23の下端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部24が延設されているから、内側容器2と外側容器3の一体化強度をより増大させることができて、両容器2、3が一体化された状態をより一層安定させることができる。更に、返しフランジ部24の上面が、外側容器3の第3フランジ部33の下面に当接している構成であるから、内側容器2と外側容器3の一体化強度をさらに増大させることができる。
【0059】
本第2実施形態では、圧空成形により形成された内側容器2が成形と同時に、内面に接着剤10が塗布された外側容器3の該内面(接着剤塗布面)に重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されたものである(図7参照)。
【0060】
次に、本発明の食品用容器1の第3実施形態を図4に示す。内側容器2は、底壁2aと、該底壁2aの周縁から上方に向けて立ち上げられた周側壁2bとを備え、前記周側壁2bの上端に開口部20が設けられている。外側容器3は、底壁3aと、該底壁3aの周縁から上方に向けて立ち上げられた周側壁3bとを備え、前記周側壁3bの上端に開口部30が設けられている。本実施形態では、前記内側容器2の底壁2aは、平面視円形状であり、前記内側容器2の周側壁2bは、略円筒形状である。また、本実施形態では、前記外側容器3の底壁3aは、平面視円形状であり、前記外側容器3の周側壁3bは、略円筒形状である。
【0061】
前記外側容器3の上端の開口部30の周縁(周側壁3bの上端)から水平方向の外方に向けて第4フランジ部34が延設され、該第4フランジ部34の外方側の周縁から略上方に向けて段部36が延ばされ、該段部36の上端から水平方向の外方に向けて第5フランジ部35が延設されている(図4参照)。
【0062】
前記内側容器2の上端の開口部20の周縁(周側壁2bの上端)から水平方向の外方に向けて第6フランジ部26が延設されている(図4参照)。
【0063】
本第3実施形態では、前記内側容器2は、単一の樹脂層(単層)で形成された内側容器であり、前記外側容器3は、金属層52の一方の面に第1樹脂層(内側層)51が積層され、前記金属層52の他方の面に第2樹脂層(外側層)53が積層された3層構成の外側容器である(図4参照)。
【0064】
しかして、前記内側容器2の外面に接着剤(層)10を介して前記外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されている。即ち、前記内側容器2の底壁2aの外面に接着剤10を介して前記外側容器3の底壁3aの内面が当接して配置され、前記内側容器2の周側壁2bの外面に接着剤10を介して前記外側容器3の周側壁3bの内面が当接して配置され、前記内側容器2の第6フランジ部26の下面が前記外側容器3の第4フランジ部34の上面に当接して配置され、前記第6フランジ部26の先端縁が、前記外側容器3の段部36の内周面に当接して配置されて、前記内側容器2の外面に接着剤(層)10を介して前記外側容器3が略適合状態に重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されている(図4参照)。
【0065】
本第3実施形態では、絞り成形により形成された外側容器3が成形と同時に、外面に接着剤10が塗布された内側容器2の該外面(接着剤塗布面)に重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化されたものである(図8参照)。
【0066】
また、前記外側容器3の第5フランジ部35の上面に、前記内側容器2の構成部材が積層されていない構成になっている。即ち、外側容器3の第5フランジ部35が、内側容器2の構成部材(第6フランジ部26など)より外方に突出した構成であり、このような構成により、内側容器2と外側容器3を分離する際の分離作業をスムーズに行うことができる。例えば、外方に突出している外側容器3の第5フランジ部35を手で持って該第5フランジ部35を変形させると、内側容器2と外側容器3の間に空気が入り、これにより、一体化されていた内側容器2と外側容器3とを分離できる。
【0067】
上記構成の食品用容器1では、保存中等の電子レンジ加熱を行うまでの間は内側容器2と外側容器3とが一体化された状態で使用されるのであるが、この時、外側容器3が金属層52を含有しているので、食品用容器1は、ガスバリア性に優れていて酸素や水分から食品を保護することができる。一方、食品が充填された本発明の食品用容器1の中の食品に対して電子レンジで加熱を行う際には、内側容器2と外側容器3を分離して、食品が充填された内側容器2だけを電子レンジに入れて加熱を行うことができ、この時、内側容器2は金属層を含有しない構成であるので、電子レンジで加熱を行う際に、スパーク発生を防止できると共に、容器が高温になり難く、食品の加熱効率が高く、食品の加熱にムラが生じ難いという効果が得られる。
【0068】
次に、本発明に係る食品用容器1の第4実施形態について図5を参照しつつ説明する。この第4実施形態の食品用容器1は、前記第3実施形態の食品用容器の構成を具備した上で、更に次のような構成を備えている。
【0069】
即ち、前記外側容器3の段部36の上端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部37が延設されている。また、前記返しフランジ部37の下面が、前記内側容器2の第6フランジ部26の上面に当接している(図5参照)。
【0070】
この第4実施形態の食品用容器1では、前記第3実施形態の食品用容器で奏する効果と同様の効果が得られる上に、更に次のような効果も得られる。
【0071】
即ち、外側容器3の段部36の上端から水平方向の内方に向けて返しフランジ部37が延設されているから、内側容器2と外側容器3の一体化強度をより増大させることができて、両容器2、3が一体化された状態をより一層安定させることができる。更に、返しフランジ部37の下面が、前記内側容器2の第6フランジ部26の上面に当接している構成であるから、内側容器2と外側容器3の一体化強度をさらに増大させることができる。
【0072】
次に、本発明に係る食品用容器の製造方法について説明する。
【0073】
[射出成形を利用した製造方法]
まず、射出成形を利用した製造方法について説明する。射出成形を利用して図1に示す食品用容器1を製造した例を図6を参照しつつ説明する。図6において、61は、第1射出成形型であり、その内側の成形面は、図1の外側容器3の外面形状に適合する形状に形成されている。また、62は、第2射出成形型であり、その内側の成形面は、図1の内側容器2の内面形状に適合する形状に形成されている。前記第2射出成形型62の成形面の中心部に射出孔63が形成されている(図6参照)。前記第1射出成形型61と前記第2射出成形型62を重ね合わせて型締めした際にこれら両射出成形型61、62の間に、前記図1の食品用容器1に対応した空隙が形成され得るように構成されている(図6(B)参照)。
【0074】
而して、図6(A)に示すように、前記一対の射出成形型61、62が開放された状態において、第1射出成形型61の内側の成形面に、金属層52を含有する外側容器3であって内面に接着剤10が塗布されたものを適合状態にセットする。前記外側容器3は、絞り成形により製造されたものである。次いで、図6(B)に示すように、前記一対の射出成形型61、62を型締めすることによって、成形用キャビティー64を形成せしめる。この成形用キャビティー64は、前記図1の食品用容器1の内側容器2に対応した3次元空間を有した成形用空隙である。次に、図6(C)に示すように、加熱溶融樹脂を射出孔63を介して前記成形用キャビティー64に射出して、外側容器3の内面の接着剤塗布面に加熱溶融樹脂を射出成形することによって、外側容器3の内面に、接着剤(層)10を介して、金属層を含有しない樹脂製の内側容器3を重ね合わせ、次いで冷却を行うことによって、図1の食品用容器1を得ることができる。即ち、金属層を含有しない樹脂製の内側容器2の外面に、接着剤(層)10を介して、金属層を含有する外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造することができる。
【0075】
上記射出成形を利用して製造する場合において、接着剤10の塗布を部分的に行う場合(例えば外側容器3の内面の一部に接着剤10の塗布を行う場合)には、内側容器2の材質(加熱溶融樹脂の材質)は、外側容器3の内面の材質と異なっているのが好ましい。この場合には、射出した溶融樹脂の熱により、内側容器2と外側容器3とが部分的に溶着して分離不可能に一体化されたものとなることを十分に防止できる。
【0076】
[圧空成形を利用した製造方法]
次に、圧空成形を利用した製造方法について説明する。圧空成形を利用して図3に示す食品用容器1を製造した例を図7を参照しつつ説明する。図7において、71は、圧空成形型であり、その内側の成形面は、図3の外側容器3の外面形状に適合する形状に形成されている。また、73は、前記圧空成形型71を収容する上面開放の収容体であり、72は、蓋体である。
【0077】
而して、図7(A)に示すように、前記収容体73の内部に前記圧空成形型71を配置し、該圧空成形型71の内面に、金属層52を含有する外側容器3であって内面に接着剤10が塗布されたものを適合状態にセットすると共に、前記収容体73の上に樹脂製シート70を載置し、さらにこの上に前記蓋体72を載置する。即ち、内面に接着剤10が塗布された外側容器3に対し、該外側容器3の開口部30に対向する態様で樹脂製シート70を配置する(底壁3a側ではなく開口部30側に樹脂製シート70を配置する)。次いで、樹脂製シート70を加熱した後、収容体73と蓋体72で囲まれた空間を真空引きする。なお、前記外側容器3は、絞り成形により製造されたものである。次いで、図7(B)に示すように、樹脂製シート70の上方側から圧縮空気を入れることにより、樹脂製シート70を外側容器3の内面の接着剤塗布面に重ね合わせて圧空成形する。しかる後、図7(C)に示すように、蓋体72を取り外し、所定位置で切断を行った後、離型することにより、図3の食品用容器1を得ることができる。即ち、金属層を含有しない樹脂製の内側容器2の外面に、接着剤(層)10を介して、金属層を含有する外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造することができる。
【0078】
上記圧空成形を利用して製造する場合において、接着剤10の塗布を部分的に行う場合(例えば外側容器3の内面の一部に接着剤10の塗布を行う場合)には、内側容器2の外面の材質(樹脂製シート70における外側容器3に重ね合わせる側の面の材質)は、外側容器3の内面の材質と異なっているのが好ましい。この場合には、加熱された樹脂製シート70の熱により、内側容器2と外側容器3とが溶着して分離不可能に一体化されたものとなることを十分に防止できる。なお、接着剤10の塗布を部分的に行う場合であって、内側容器2の外面の材質が、外側容器3の内面の材質と同一である場合でも、樹脂製シート70の加熱温度等の圧空成形条件を特定範囲のものに設定することで、両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造することができる。
【0079】
なお、上記圧空成形に代えて真空成形を行うことで同様にして、金属層を含有しない樹脂製の内側容器2の外面に、接着剤(層)10を介して、金属層を含有する外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1(図3参照)を製造することができる。
【0080】
[絞り成形を利用した製造方法]
次に、絞り成形を利用した製造方法について説明する。絞り成形を利用して図4に示す食品用容器1を製造した例を図8を参照しつつ説明する。図8において、81は、パンチであり、その成形面は、図4の外側容器3の底面の形状に適合する形状に形成されている。82は、しわ抑え部である。83は、ダイスであり、固定台84の上に固定されている。85は、支持部であり、前記しわ抑え部82との間に成形用シート80を挟み込むものであり、上下移動できるように構成されている。
【0081】
而して、図8(A)に示すように、外面(底面及び周側面)に接着剤10が塗布された内側容器2をダイス83に適合状態にセットする。前記内側容器2は、真空成形又は射出成形により製造されたものである。次いで、支持部85及び内側容器2の上に、金属層52を含有する成形用シート80を載置する。即ち、外面(底面及び周側面)に接着剤10が塗布された内側容器2に対し、該内側容器2の底壁2aに対向する態様で、金属層52を含有する成形用シート80を配置する(開口部20側ではなく底壁2a側に成形用シート80を配置する)。次いで、図8(B)に示すように、しわ抑え部82を下降移動させて、支持部85の上面としわ抑え部82の下面で成形用シート80の両端部を挟み込んで、更にしわ抑え部82を下降移動させる。次いで、図8(C)に示すように、しわ抑え部82を支持部85の上面に当接するまで更に下降移動させると共に、パンチ81も下降移動させることによって、成形用シート80を絞り成形して、内側容器2の外面の接着剤塗布面に、金属層を含有する外側容器3を重ね合わせることにより、図4の食品用容器1を得ることができる。即ち、金属層を含有しない樹脂製の内側容器2の外面に、接着剤(層)10を介して、金属層を含有する外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造することができる。
【0082】
上記絞り成形を利用して製造する場合には、成形の過程で加熱を行わないので、外側容器3の内面の材質(成形用シート80における内側容器2に重ね合わせる側の面の材質)は、内側容器2の外面の材質と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
本発明において、前記内側容器2の厚さは、0.5mm〜1.0mmに設定されるのが好ましい。前記内側容器2は、金属層を含まない樹脂製の容器であれば、特に限定されず、単層(単一樹脂層)で構成されていてもよいし、複層(複数種の樹脂層の積層体)で構成されていてもよい。中でも、ポリプロピレン製内側容器、ポリエチレンテレフタレート製内側容器は、良好な耐熱性を備えているので、好適である。
【0084】
前記外側容器3の厚さは、0.05mm〜0.5mmに設定されるのが好ましい。前記外側容器3は、金属層52のみからなる単層で構成されていてもよいし、少なくとも金属層52を含む複層(積層体)で構成されていてもよい。前記積層体構成の外側容器3としては、例えば、金属層52の一方の面に第1樹脂層51が積層され、前記金属層52の他方の面に第2樹脂層53が積層された3層構成の外側容器3を例示できる(図1、3〜5参照)。
【0085】
前記金属層52を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、鉄、銅、銀、タンタル等の単金属の他、これら金属の合金、或いはマグネシウム合金、チタン合金などが挙げられる。中でも、前記金属層52は、アルミニウム層で形成されているのが、コスト面から、好ましい。アルミニウムとしては、特に限定されるものではないが、純アルミニウム系合金または8000番系合金を使用することができる。
【0086】
前記接着剤10としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル変性シリコーン系接着剤等が挙げられる。中でも、前記接着剤10としては、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤及びアクリル系接着剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の接着剤が用いられるのが好ましい。
【0087】
前記ホットメルト接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、DICグラフィックス株式会社製の「ディックメルトDX−11C」、DICグラフィックス株式会社製の「ディックメルトDX−65TS」等が挙げられる。
【0088】
前記ウレタン系接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、DICグラフィックス株式会社製の2液硬化型無溶剤ウレタン系接着剤「ディックドライSK−SF−900A(主剤)、HA−900B(硬化剤)」、大日精化工業株式会社製の2液硬化型無溶剤ウレタン系接着剤「セイカボンドXC−231(主剤)、XA−126(硬化剤)」等が挙げられる。
【0089】
前記アクリル系接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、DIC株式会社製の「ディックブラストPSX−102HC」、東亞合成株式会社製の「アロンタックS−1605」等が挙げられる。
【0090】
なお、本明細書において、「接着剤」の語は、該接着剤層を介して分離可能に一体化された内側容器と外側容器を人の手の力で分離させることができる接着力を備えた接着剤を意味する。
【0091】
前記接着剤10の塗布方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアコート法、噴霧方法、刷毛塗り方法、ホットメルトガンで塗布する方法等が挙げられる。
【0092】
上記各成形方法を利用した場合における内側容器2の材料と、接着剤10の種類と、外側容器3の材料の組み合わせの好適例を表1に示す。なお、外側容器の構成例において積層構成である場合には左側に記載の材料が内面(内側容器と接する面)になる材料である。真空成形を利用する場合における内側容器2の材料と外側容器3の材料の組み合わせの好適例は、圧空成形で示した好適例と同じである。
【0093】
【表1】
【0094】
なお、表1、2に記載の下記略号は、それぞれ下記材料(層)を意味する。
【0095】
「PP」:ポリプロピレン
「C−PET」:結晶性ポリエチレンテレフタレート
「CPP」:未延伸ポリプロピレン(フィルム)
「AL」:アルミニウム(箔)
「PE」:ポリエチレン
「Ny」:ナイロン
「樹脂コート」:樹脂が塗布されて形成された樹脂層であり、その樹脂種としては、エポキシ樹脂、エポキシメラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0096】
本発明では、内側容器2と外側容器3の間に接着剤(層)10が配置されるが、この接着剤10を配置する位置は、両容器2、3の間であれば、特に限定されず、例えば、
1)内側容器2の底壁2aと外側容器3の底壁3aの間の空間の少なくとも一部
2)内側容器2の周側壁2bと外側容器3の周側壁3bの間の空間の少なくとも一部
3)内側容器2の第1フランジ部21と外側容器3の第3フランジ部33の間の空間の少なくとも一部
4)内側容器2の第6フランジ部26と外側容器3の第4フランジ部34の間の空間の少なくとも一部
上記1)〜4)のいずれかの位置を例示できる。
【0097】
勿論、上記1)と2)の両方が採用されていてもよい。即ち、上記実施形態(図1〜5)のように、「内側容器2の底壁2aと外側容器3の底壁3aの間」および「内側容器2の周側壁2bと外側容器3の周側壁3bの間」の両方に接着剤(層)10が配置されていてもよい。
【0098】
このように、本発明では、前記内側容器2の外面の一部と、前記一部に対応する前記外側容器の内面の一部に接して接着剤が配置された態様であってもよいし、前記内側容器2の外面の全部と前記外側容器の内面の全部に接して接着剤が配置された態様であってもよい。
【0099】
なお、本発明の食品用容器1の形状は、上記実施形態の形状に特に限定されるものではなく、食品を収容できる形状であれば特に限定されない。
【0100】
また、本発明の食品用容器1は、上記例示説明した製造方法で製造されるものに特に限定されるものではなく、上記製造方法は、その一例を示したものに過ぎない。
【実施例】
【0101】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0102】
参考例1>
前項で説明した「射出成形を利用した製造方法」で図1に示す食品用容器1を製造した。外側容器3として、アルミニウム(A8021−O材)で形成された厚さ120μmの外側容器(内面にウレタン系接着剤10が塗布されている)を用い、230℃に加熱された加熱溶融ポリプロピレン樹脂を成形用キャビティー内に射出することによって、外側容器3の内面に溶融樹脂を射出成形して、厚さ1.0mmのポリプロピレン樹脂製内側容器2の外面に接着剤10を介して厚さ120μmの外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造した(図6参照)。
【0103】
<参考例
外側容器3として、アルミニウム(A8021−O材)で形成された厚さ120μmの外側容器(内面に接着剤が塗布されていないもの)を用いた以外は、参考例1と同様にして、食品用容器を得た。
【0104】
<実施例
前項で説明した「圧空成形を利用した製造方法」で図3に示す食品用容器1を製造した。外側容器3として、未延伸ポリプロピレンフィルム層(内側層)(30μm)/アルミニウム層(120μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム層(外側層)(200μm)の3層積層体からなる外側容器(内面にアクリル系接着剤10が塗布されている)を用い、樹脂製シート70として、厚さ1.0mmのポリプロピレンシートを用い、145℃に加熱した樹脂製シート70を外側容器3の内面の接着剤10塗布面に重ね合わせて圧空成形して、厚さ1.0mmのポリプロピレン製内側容器2の外面に接着剤(層)10を介して厚さ350μmの外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造した(図7参照)。
【0105】
<実施例
外側容器3として、ポリエチレン層(内側層)(30μm)/アルミニウム層(120μm)/ポリエチレン層(外側層)(200μm)の3層積層体からなる外側容器(内面にアクリル系接着剤10が塗布されている)を用いた以外は、実施例と同様にして、図3に示す食品用容器1を得た。
【0106】
参考
外側容器3として、アルミニウムで形成された厚さ120μmの外側容器(内面にアクリル系接着剤10が塗布されている)を用いた以外は、実施例と同様にして、図3に示す食品用容器1を得た。
【0107】
<実施例
樹脂製シート70として、160℃に加熱した厚さ0.6mmの結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用いた以外は、実施例と同様にして、図3に示す食品用容器1を得た。
【0108】
<実施例
樹脂製シート70として、160℃に加熱した厚さ0.6mmの結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用いた以外は、実施例と同様にして、図3に示す食品用容器1を得た。
【0109】
<参考例
外側容器3として、未延伸ポリプロピレンフィルム層(内側層)(30μm)/アルミニウム層(120μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム層(外側層)(200μm)の3層積層体からなる外側容器(内面に接着剤が塗布されていないもの)を用いた以外は、実施例と同様にして、食品用容器を得た。
【0110】
参考
前項で説明した「絞り成形を利用した製造方法」で図4に示す食品用容器1を製造した。成形用シート80として、未延伸ポリプロピレンフィルム層(内側層)(30μm)/アルミニウム層(120μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム層(外側層)(200μm)の3層積層シートを用い、内側容器2として、ポリプロピレンで形成された厚さ1.0mmの内側容器(外面にホットメルト接着剤10が塗布されている)を用い、成形用シート80に絞り成形を行うことによって外側容器3を成形すると同時に、該外側容器3を内側容器2の外面の接着剤10塗布面に重ね合わせることにより、厚さ1.0mmの内側容器2の外面に接着剤10を介して厚さ350μmの外側容器3が重ね合わされて前記両容器2、3が分離可能に一体化された食品用容器1を製造した(図8参照)。
【0111】
参考
成形用シート80として、ポリエチレン層(内側層)(30μm)/アルミニウム層(120μm)/ポリエチレン層(外側層)(200μm)の3層積層シートを用いた以外は、参考と同様にして、図4に示す食品用容器1を得た。
【0112】
参考
成形用シート80として、厚さ120μmのアルミニウム箔を用いた以外は、参考と同様にして、図4に示す食品用容器1を得た。
【0113】
参考
内側容器2として、結晶性ポリエチレンテレフタレートで形成された厚さ0.6mmの内側容器(外面にホットメルト接着剤10が塗布されている)を用いた以外は、参考と同様にして、図4に示す食品用容器1を得た。
【0114】
参考
内側容器2として、結晶性ポリエチレンテレフタレートで形成された厚さ0.6mmの内側容器(外面にホットメルト接着剤10が塗布されている)を用いた以外は、参考と同様にして、図4に示す食品用容器1を得た。
【0115】
<参考例10
内側容器2として、ポリプロピレンで形成された厚さ1.0mmの内側容器(外面に接着剤が塗布されていないもの)を用いた以外は、参考と同様にして、食品用容器を得た。
【0116】
上記のようにして得られた各食品用容器について下記評価法に基づいて評価を行った。その結果を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
<成形性評価法>
得られた食品用容器の内側容器や外側容器に破断、ピンホールがなく成形性に優れていたものを「○」、容器の深さが浅い場合には破断、ピンホールがないものの、容器の深さが深い場合には破断又はピンホールが認められることが稀にあったものを「△」、破断又はピンホールが認められたものを「×」とした。
【0119】
<密着性評価法>
得られた食品用容器を40℃のギアオーブン内に1週間放置した後、オーブンから取り出して食品用容器を25℃の室内に1日間放置し、しかる後に、下記判定基準に基づいて密着性を評価した。
(判定基準)
「○」…内側容器と外側容器とが十分に密着一体化していた
「△」…上記○評価のものよりも密着力は劣るものの、内側容器と外側容器が密着一体化していて実使用が可能なレベルである
「×」…上記△評価のものよりも密着力が劣っており、実使用できるレベルに達していない。
【0120】
なお、密着性評価の前に、食品用容器を40℃のギアオーブン内に1週間放置したのは、食品用容器が製造されてから以降、食品用容器内に食品が充填されるまでの間に、夏場等における保管温度等の影響により密着性が低下することがないことを確認するためである。
【0121】
<分離性評価法>
大きな力を要することなく人の手でスムーズに分離できたものを「○」、大きな力を用いれば人の手で分離できたものを「△」、人の手では分離が不可能であったものを「×」とした。
【0122】
表2から明らかなように、本発明の実施例1〜4、参考例1、3、5〜9の食品用容器は、内側容器と外側容器とが十分に密着していて良好状態に一体化されていると共に、大きな力を要することなく人の手で内側容器と外側容器とを分離することができた。また、成形性にも優れていて、破断、ピンホールがなく、容器としてのガスバリア性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の食品用容器は、特に限定されるものではないが、例えば、スープ、おかゆ等の液状食品、魚肉類や野菜の調理済み食品等の固形状食品等の食品が中に充填される食品用容器として用いられる。食品が充填された本発明の食品用容器の中の食品に対して電子レンジで加熱を行う際には、内側容器と外側容器を分離して、食品が充填された内側容器だけを電子レンジに入れて加熱を行う。
【符号の説明】
【0124】
1…食品用容器
2…内側容器
2a…底壁
3…外側容器
3a…底壁
10…接着剤(層)
20…開口部
21…第1フランジ部
22…第2フランジ部
23…段部
24…返しフランジ部
26…第6フランジ部
30…開口部
33…第3フランジ部
34…第4フランジ部
35…第5フランジ部
36…段部
37…返しフランジ部
52…金属層
70…樹脂製シート
80…成形用シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8