(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
(実施の形態1)
本実施の形態における技術的思想は、同一の半導体チップに、MONOS型の書換え可能な不揮発性メモリと、当該不揮発性メモリの周辺回路などを構成するMISFETとを含む半導体装置に関する技術的思想である。
【0012】
本実施の形態および以下の実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、不揮発性メモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置である。本実施の形態および以下の実施の形態では、不揮発性メモリは、nチャネル型MISFETを基本としたメモリセルをもとに説明を行う。また、本実施の形態および以下の実施の形態での極性(書込・消去・読出時の印加電圧の極性またはキャリア等の極性)は、nチャネル型MISFETを基本としたメモリセルの場合の動作を説明するためのものであり、pチャネル型MISFETを基本とする場合は、印加電位またはキャリアの導電型等の全ての極性を反転させることで、原理的には同じ動作を得ることができる。
【0013】
<半導体装置の製造方法について>
本実施の形態の半導体装置の製造方法を、
図1〜
図17を参照して説明する。本実施の形態の半導体装置は、シングルゲート型のMONOSメモリを含むものである。
【0014】
図1は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。
図2〜
図17は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図2〜
図17においては、各図の左側にメモリセル領域1Aの断面図を示し、右側に周辺回路領域1Bの断面図を示している。メモリセル領域1Aには不揮発性メモリのメモリセルが、周辺回路領域1Bには低耐圧のMISFETが、それぞれ形成される様子を示す。メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bとは、同じ半導体基板の主面側において、当該主面に沿う方向に並んで存在している。
【0015】
不揮発性メモリは、書込み動作および消去動作を電気的に行うことが可能な記憶素子の一種であり、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリとも呼ばれる。本実施の形態の不揮発性メモリは、ゲート電極を1つ有するMONOS型の電界効果トランジスタ(以下、MONOSメモリと呼ぶ場合がある)トランジスタから構成されるシングルゲート型のメモリセル構造を有する。MONOSメモリの書込み動作および消去動作には、例えばファウラーノルドハイム型トンネル現象(FNトンネリング)が利用される。
【0016】
ここで、MONOSメモリの書込み動作および消去動作では、ホットエレクトロンまたはホットホールを用いる方法も考えられるが、本実施の形態のMONOSメモリでは、それらのようなホットキャリアによる動作ではなく、FN方式による書込み・消去動作を行う。
【0017】
不揮発性メモリ5の書込み動作時などには、MONOS型トランジスタに高い電位差(12V程度)を印加するため、MONOS型トランジスタとして、相対的に高耐圧のトランジスタが必要とされる。
【0018】
周辺回路とは、不揮発性メモリ以外の回路であり、例えば、CPUなどのプロセッサ、制御回路、センスアンプ、カラムデコーダ、ロウデコーダ、入出力回路などである。周辺回路領域1Bに形成されるMISFETは、周辺回路用の低耐圧MISFETである。データの書換えにFNトンネリング電流を使用するため、低電流でのデータの書換えが可能となり低消費電力を図ることができる。
【0019】
また、上記半導体基板上には、I/O(Input/Output)回路などを構成する、相対的に高耐圧の高耐圧MISFETも形成されている。I/O回路は入出力回路であり、半導体チップ内から半導体チップの外部に接続された機器へのデータの出力、または、半導体チップの外部に接続された機器から半導体チップ内へのデータの入力などを行なうための回路である。高耐圧MISFETの構造は、ゲート電極のゲート長およびゲート絶縁膜の膜厚などの違いを除いて、ほぼ低耐圧MISFETと同様の構造を有している。
【0020】
図2〜
図17の周辺回路領域1Bに形成するnチャネル型MISFETは、CMOSを構成する電界効果トランジスタであり、図示していない他の領域にはpチャネル型MISFETも形成する。また、図示していない他の領域には高耐圧MISFETも形成する。
【0021】
本実施の形態の半導体装置の製造工程では、まず、
図2に示すように、ホウ素(B)などのp型不純物を導入したシリコン(Si)単結晶からなる半導体基板SBを用意する(
図1のステップS101)。半導体基板SBは、略円盤形状を有し、半導体ウェハを構成している。その後、半導体基板SBに素子分離領域STIを形成する。素子分離領域STIは、半導体基板SB上に形成した複数の半導体素子同士が互いに干渉しないようにするために設けられる。
【0022】
素子分離領域STIは、例えば、STI(shallow trench isolation)法を用いて形成することができる。STI法では、以下のようにして素子分離領域STIを形成している。すなわち、半導体基板SBにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して素子分離溝を形成する。そして、素子分離溝を埋め込むように半導体基板SB上に絶縁膜(酸化シリコン膜等)を形成し、その後、化学的機械的研磨法(CMP;chemical mechanical polishing)により、半導体基板SB上に形成された不要な酸化シリコン膜を除去する。
【0023】
このような工程により、素子分離溝内にだけ絶縁膜(酸化シリコン膜等)を埋め込んだ素子分離領域STIを形成することができる。これにより、
図2に示すように、素子分離領域STIによって、メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bとが区画される。
【0024】
その後、半導体基板SBの上面に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いてホウ素(B)などのp型不純物を導入することにより、半導体基板SB内にp型半導体領域からなるp型ウェルPWを形成する(
図1のステップS102)。
【0025】
次に、半導体基板SBの表面を希フッ酸等で洗浄した後、周辺回路領域1Bの半導体基板SB上に絶縁膜GOX2を形成し、メモリセル領域1Aの半導体基板SB上に絶縁膜GOX1を形成する。絶縁膜GOX1、GOX2は、例えば、酸化シリコン膜から形成される。絶縁膜GOX1の膜厚は絶縁膜GOX2より大きく、絶縁膜GOX1は、図示していない領域において、例えば高耐圧MISFETのゲート絶縁膜として用いられる。続いて、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、半導体基板SBの主面の全面の上にポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)PS1を形成する。つまり、絶縁膜GOX1、GOX2のそれぞれの上にポリシリコン膜PS1を形成する。
【0026】
次に、
図3に示すように、ポリシリコン膜PS1上にレジスト膜PR1を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜PR1をパターニングする。このパターニングでは、レジスト膜PR1が周辺回路領域1Bを覆い、かつ、メモリセル領域1Aを露出するようにレジスト膜PR1を加工する。そして、パターニングされたレジスト膜PR1をマスクとしてエッチングを行うことにより、メモリセル領域1Aに形成されているポリシリコン膜PS1および絶縁膜GOX1を除去する。その後、パターニングされたレジスト膜PR1をマスクにしたイオン注入法により、メモリセル領域1Aの半導体基板SB内にp型ウェルMPWを形成する(
図1のステップS102)。
【0027】
次に、
図4に示すように、半導体基板SB上およびポリシリコン膜PS1上に絶縁膜IF1を形成し、絶縁膜IF1上に電荷蓄積膜(電荷保持膜)ECを形成する。そして、電荷蓄積膜EC上に絶縁膜IF2を形成し、絶縁膜IF2上にポリシリコン膜PS2を形成する。
【0028】
例えば、絶縁膜IF1は酸化シリコン膜から形成されており、絶縁膜IF1の形成工程では、緻密で良質な膜質の酸化シリコン膜を形成することができるISSG(In-Situ Steam Generation)酸化法を使用することができる。絶縁膜IF1の膜厚は、4nm程度である。
【0029】
また、電荷蓄積膜ECは、窒化シリコン膜から形成されており、例えば、CVD法を使用して形成することができる。電荷蓄積膜ECの膜厚は、10nm程度である。絶縁膜IF2は、酸化シリコン膜から形成されており、絶縁膜IF2の形成工程では、例えば、緻密で良質な膜質の酸化シリコン膜を形成することができるHTO(High Temperature Oxide)法を使用することができる。絶縁膜IF2の膜厚は、5nm程度である。
【0030】
また、ポリシリコン膜PS2は、例えば、CVD法を使用することにより形成することができる。以上のようにして、緻密で絶縁耐性に優れた良質な膜質を有し、内部に電荷蓄積膜ECを含む積層絶縁膜(ONO膜ON)を形成することができる。
【0031】
次に、
図5に示すように、ポリシリコン膜PS2上にレジスト膜PR2を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜PR2をパターニングする。レジスト膜PR2のパターニングは、メモリセル領域1Aのゲート電極形成領域および周辺回路領域1Bを覆うように行なわれる。そして、パターニングされたレジスト膜PR2をマスクとしたエッチング技術を使用して、ポリシリコン膜PS2をパターニングすることにより、メモリセル領域1Aにゲート電極CG1を形成する(
図1のステップS103)。
【0032】
このとき、メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bとの境界近傍の素子分離領域STI上において、ポリシリコン膜PS2の残渣部が、ポリシリコン膜PS1の側壁にONO膜ONを介してサイドウォール状に形成されることが考えられるが、ここでは当該残渣部の図示を省略する。
【0033】
次に、
図6に示すように、例えば、ドライエッチング技術を使用することにより、露出する絶縁膜IF2と電荷蓄積膜ECと絶縁膜IF1とを除去する。この結果、メモリセル領域1Aに形成されているゲート電極CG1の直下に、絶縁膜IF1と電荷蓄積膜ECと絶縁膜IF2とからなる積層絶縁膜が残存する。ゲート電極CG1の直下の絶縁膜IF1と電荷蓄積膜ECと絶縁膜IF2とからなるONO膜ONは、後に形成されるメモリセルを構成する電界効果トランジスタのゲート絶縁膜を構成する。
【0034】
次に、
図7に示すように、パターニングされたレジスト膜PR2からなるマスクをそのまま使用したイオン注入法により、メモリセル領域1Aの半導体基板SB内に、ゲート電極CG1に整合したエクステンション領域(n
−型半導体領域、低濃度不純物拡散領域)EX1を形成する(
図1のステップS104)。つまり、本実施の形態では、MONOS型トランジスタのゲート電極CG1を加工する際に使用されるマスクと、MONOS型トランジスタのゲート電極CG1に整合したエクステンション領域EX1を形成するイオン注入に使用されるマスクを共用する。これにより、本実施の形態によれば、MONOS型トランジスタを混載することによる追加マスクを削減することができる。
【0035】
なお、
図7に示すイオン注入工程では、周辺回路領域1Bに形成されているポリシリコン膜PS1が露出しているため、このポリシリコン膜PS1内にもn型不純物が導入される。ただし、この場合であっても、イオン注入工程における注入エネルギーを調整することにより、ポリシリコン膜PS1を突き抜けて、周辺回路領域1Bの半導体基板SB内にn型不純物が導入されることを防止することができる。
【0036】
次に、
図8に示すように、パターニングされたレジスト膜PR2を除去した後、メモリセル領域1Aから周辺回路領域1Bにわたってレジスト膜PR3を塗布する。具体的には、メモリセル領域1Aに形成されているゲート電極CG1を覆い、かつ、周辺回路領域1Bに形成されているポリシリコン膜PS1を覆うようにレジスト膜PR3を塗布する。その後、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜PR3をパターニングする。レジスト膜PR3のパターニングは、メモリセル領域1Aを覆い、かつ、周辺回路領域1Bのうちのゲート電極形成領域を覆うように行なわれる。そして、パターニングされたレジスト膜PR3をマスクにしたエッチングにより、ポリシリコン膜PS1を加工して、周辺回路領域1Bにゲート電極G1を形成する(
図1のステップS105)。
【0037】
次に、
図9に示すように、レジスト膜PR3をマスクとして、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面にp型不純物(例えばホウ素(B))を打ち込む。これにより、周辺回路領域1Bにおいて、ゲート電極G1の横の半導体基板SBの主面に、一対のハロー領域(p
−型半導体領域)HRを形成する(
図1のステップS106)。ハロー領域HRを形成するためのハロー注入は、例えば後に周辺回路領域1Bに形成するエクステンション領域EX2(
図10参照)に隣接する領域に、後に形成するエクステンション領域EX2および拡散領域D2(
図14参照)を含むソース・ドレイン領域の不純物とは逆の導電型の不純物を導入するものである。
【0038】
ハロー領域HRの形成は、半導体基板SBの主面に対して斜め方向からp型不純物をイオン注入することで行う。つまり、p型不純物は、半導体基板SBの主面に対して垂直な方向からではなく、半導体基板SBの主面に対して斜めの角度で入射するように注入される。このような斜めイオン注入は、例えば半導体基板SBの主面に対する角度が45度の方向から行われる。このように斜めイオン注入を行うため、ハロー領域HRは、ゲート電極G1のゲート長方向におけるゲート電極G1の中央部の直下の領域の近くに形成される。なお、ハロー領域HRは、ゲート電極G1の端部の直下の領域の近傍のみに選択的に形成してもよい。
【0039】
ハロー領域HRは、後に形成するエクステンション領域EX2から横方向に伸びる空乏層の広がりを抑制する役割を果たす。このため、ハロー領域HRを形成することで、短チャネルでのロールオフ、例えばゲート長(Lg)に対する閾値電圧(Vth)のロールオフ特性(Lg−Vth特性)などが改善し、オン電流とオフ電流との関係を適切に保つことができる。これは、上記空乏層の広がりを抑制すると同時に、ゲート長を短くすることで単位ゲート長あたりのチャネル不純物濃度が増加し、短チャネル効果によるVthの低下をある程度打ち消すことができるためである。
【0040】
次に、
図10に示すように、パターニングされたレジスト膜PR3をマスクにしたイオン注入法により、周辺回路領域1Bの半導体基板SB内に、ゲート電極G1に整合したエクステンション領域(n
−型半導体領域、低濃度不純物拡散領域)EX2を形成する(
図1のステップS107)。
【0041】
ここで、ハロー領域HRは、エクステンション領域EX2に比べて、ゲート電極G1のゲート長方向における上記中央部の直下の領域に近い箇所で終端している。また、ハロー領域HRは、エクステンション領域EX2よりも形成深さが深い。なお、エクステンション領域EX2を形成した後にハロー領域HRを形成してもよい。
【0042】
次に、
図11に示すように、パターニングされたレジスト膜PR3を除去した後、半導体基板SBの主面の全面の上に、例えばCVD法を用いて、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを順に形成する(
図1のステップS108)。絶縁膜OXは、例えば酸化シリコン膜からなり、水素含有絶縁膜HFは、水素(H)を比較的多く含む窒化シリコン膜からなる。これにより、ゲート絶縁膜であるONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜の側壁および上面は、絶縁膜OXを介して水素含有絶縁膜HFにより覆われる。同様に、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜も、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFにより覆われる。水素含有絶縁膜HFが有する水素の含有量は、例えば1×10
21/cm
3以上である。
【0043】
次に、
図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、周辺回路領域1Bの水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去する(
図1のステップS109)。これにより、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面と、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜とは、水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXから露出する。メモリセル領域1Aの絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFは除去されずに残るため、ONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜は、絶縁膜OXを介して水素含有絶縁膜HFにより覆われたままである。当該除去工程において、絶縁膜OXは、水素含有絶縁膜HFを除去する際に、絶縁膜OXに覆われた各半導体素子を保護する役割を有する。
【0044】
その後、半導体基板SBにより構成される半導体ウェハを熱処理する(
図1のステップS110)。当該熱処理は、水素雰囲気ではなく、不活性ガス雰囲気で行う。これにより、水素含有絶縁膜HF内の水素(H)を拡散させ、ONO膜ONと半導体基板SBとの界面に導入する。すなわち、ONO膜ONの底面、つまり絶縁膜IF1の底面と、半導体基板SBの主面とが接する領域に、水素を導入する。このような熱処理によりメモリセル領域のゲート絶縁膜と半導体基板SBとの界面に水素を導入する工程(以下、単に水素アニールと呼ぶ場合ある)を行うのは、以下のような問題を解決するためである。
【0045】
すなわち、ONO膜ONの底部の絶縁膜(下部絶縁膜)IF1と半導体基板SBとの界面には、不純物注入またはエッチングなどのプロセスにより、ダングリングボンドなどの欠陥が生じる問題がある。水素アニールを行わない場合、各膜の成膜時、またはその他のプロセスなどで上記界面に生じる真性の界面欠陥がそのまま残るため、界面欠陥量は非常に多くなる。界面欠陥量が多いと、メモリセルのチャネルは高抵抗となり、ON電流が極めて小さくなる。また、メモリセルの界面欠陥に電荷がトラップされることによる閾値ばらつきを引き起こす。このように、周辺回路領域1Bの低耐圧MISFETに比べ、不揮発性メモリを構成するメモリセルでは、界面欠陥が大きな問題となる。
【0046】
よって、特にメモリセルにおいては、水素アニールによる界面欠陥の修復を行うことが必要となる。このように、水素アニールは、トランジスタのゲート絶縁膜と基板界面の欠陥を水素で終端する技術である。本実施の形態では、メモリセル領域1Aにおいてゲート電極G1およびONO膜ONを覆い、かつ、周辺回路領域1Bを露出する水素含有絶縁膜HFを形成した後に熱処理を行うことで、水素アニールを行って界面欠陥を修復する。これにより、後の工程で形成するメモリセルのON電流が低下することを防ぎ、メモリセルを低抵抗化することができるため、半導体装置の性能を向上させることができる。なお、上記水素アニールは、半導体基板SBおよび半導体基板SB上の構造体に導入された不純物を活性化させる熱処理と兼ねて行ってもよい。
【0047】
次に、
図13に示すように、例えばウェットエッチング法を用いて水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去した後、半導体基板SB上に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とからなる積層膜を形成する。当該酸化シリコン膜および当該窒化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。その後、当該積層膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWを形成する(
図1のステップS111)。つまり、半導体基板SB、ゲート電極CG1およびG1のそれぞれの上面は、当該酸化シリコン膜および当該窒化シリコン膜から露出する。当該除去工程において、絶縁膜OXは、水素含有絶縁膜HFを除去する際にメモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bに形成された素子を保護する役割を有する。
【0048】
具体的に、メモリセル領域1Aにおいては、ゲート電極CG1およびONO膜ONからなる積層膜の両側の側壁にサイドウォールSWが形成される。一方、周辺回路領域1Bにおいては、ゲート電極G1の両側の側壁にサイドウォールSWが形成される。なお、図を分かりやすくするため、図では当該酸化シリコン膜および当該窒化シリコン膜をまとめて1つの膜として示し、当該酸化シリコン膜と当該窒化シリコン膜との境界の図示を省略している。
【0049】
次に、
図14に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、メモリセル領域1AにサイドウォールSWに整合した拡散領域(n
+型半導体領域、高濃度不純物拡散領域)D1を形成する(
図1のステップS112)。拡散領域D1は、リンまたはヒ素などのn型不純物を、エクステンション領域EX1よりも高い濃度で導入した半導体領域である。ゲート電極CG1の横の半導体基板SBの主面に形成された一対の拡散領域D1の形成深さは、一対のエクステンション領域EX1よりも深く、素子分離領域STIおよびp型ウェルMPWよりも浅い。拡散領域D1とエクステンション領域EX1とによって、MONOSメモリのソース領域またはドレイン領域が形成される。
【0050】
その後、半導体基板SBなどに導入された不純物を拡散させるための熱処理を行う。当該熱処理は、
図12を用いて説明した水素アニールを行う際に使用した熱処理用のチャンバを用いることで行うことができる。
【0051】
このように、MONOSメモリのソース領域とドレイン領域のそれぞれを拡散領域D1とエクステンション領域EX1とから形成することにより、MONOSメモリのソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。これにより、メモリセル領域1Aには、拡散領域D1およびエクステンション領域EX1を含む上記ソース・ドレイン領域とONO膜ONとゲート電極CG1とを含むMONOSメモリのメモリセルQ1が形成される。
【0052】
同様のイオン注入工程によって、周辺回路領域1Bにおいても、サイドウォールSWに整合した拡域散領域(n
+型半導体領、高濃度不純物拡散領域)D2を形成する(
図1のステップS112)。拡散領域D2とエクステンション領域EX2によって、低耐圧MISFETのソース領域あるいはドレイン領域が形成される。
【0053】
このように、低耐圧MISFETにおいても、ソース領域とドレイン領域を拡散領域D2とエクステンション領域EX2とから形成することにより、低耐圧MISFETのソース領域およびドレイン領域をLDD構造とすることができる。これにより、周辺回路領域1Bには、拡散領域D2およびエクステンション領域EX2を含む上記ソース・ドレイン領域と、ゲート絶縁膜である絶縁膜GOX2と、ゲート電極G1とを含む低耐圧MISFETQ2が形成される。
【0054】
その後、
図15に示すように、半導体基板SB上にニッケルプラチナ膜(NiPt膜)を形成した後、熱処理を施すことにより、メモリセル領域1Aにおいては、ゲート電極CG1を構成するポリシリコン膜とニッケルプラチナ膜とを反応させて、ニッケルプラチナシリサイド膜(NiPtSi膜)からなるシリサイド層S1を形成する。同様に、拡散領域D1の表面においてもシリコンとニッケルプラチナ膜とが反応して、シリサイド層S1が形成される。
【0055】
同様に、周辺回路領域1Bにおいても、ゲート電極G1の上面にニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド層S1が形成される。また、拡散領域D2の表面においてもシリコンとニッケルプラチナ膜が反応して、ニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド層S1が形成される。
【0056】
なお、本実施の形態では、ニッケルプラチナシリサイド膜を形成する場合について説明するが、例えば、ニッケルプラチナシリサイド膜に代えて、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜またはプラチナシリサイド膜などを形成してもよい。
【0057】
次に、
図16に示すように、半導体基板SBの主面上に窒化シリコン膜からなるエッチストッパ膜(図示しない)を形成した後、当該窒化シリコン膜上に酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜CLを形成する。その後、層間絶縁膜CLの上面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用して、層間絶縁膜CLに複数のコンタクトホールを形成する。上記窒化シリコン膜(図示しない)は、コンタクトホールを開口する際のエッチングストッパ膜として用いられる。複数のコンタクトホールのそれぞれは、層間絶縁膜CLおよび上記窒化シリコン膜を貫通して、各シリサイド層S1の上面を露出している。
【0058】
次に、
図17に示すように、各コンタクトホールの底面および内壁を含む層間絶縁膜CL上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0059】
そして、各コンタクトホールを埋め込むように、半導体基板SBの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、層間絶縁膜CL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を、例えばCMP法により除去する。これにより、複数のコンタクトホールのそれぞれの内部に埋め込まれたチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜からなるコンタクトプラグCPを形成する。
【0060】
ここでは、拡散領域D1、D2のそれぞれに、シリサイド層S1を介してコンタクトプラグCPが接続される。また、図示していない領域では、ゲート電極CG1およびゲート電極G1のそれぞれの上部に、シリサイド層S1を介してコンタクトプラグCPが接続される。
【0061】
次に、コンタクトプラグCPおよび層間絶縁膜CLの上に、例えば、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜ILを形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜ILを貫通する配線溝を複数形成する。配線溝の底部には、層間絶縁膜CLおよびコンタクトプラグCPのそれぞれの上面が露出している。
【0062】
その後、配線溝内を含む層間絶縁膜IL上にタンタル/窒化タンタル膜を形成する。このタンタル/窒化タンタル膜は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。続いて、タンタル/窒化タンタル膜上に薄い銅膜からなるシード膜を、例えば、スパッタリング法で形成した後、このシード膜を電極とする電解めっき法により、配線溝を形成した層間絶縁膜IL上に銅膜を形成する。その後、配線溝の内部以外の層間絶縁膜IL上に露出している銅膜を、例えば、CMP法により研磨して除去することにより、層間絶縁膜ILに形成された配線溝内にだけ銅膜を残す。
【0063】
これにより、複数の配線溝のそれぞれの内部に埋め込まれた上記銅膜を主に含む配線M1を形成する。さらに、配線M1の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。このようにして、本実施の形態における半導体装置を形成することができる。
【0064】
<不揮発性メモリの動作>
本実施の形態における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、
図17に記載の半導体装置に含まれるメモリセル(不揮発性メモリセル)Q1の動作について説明する。
【0065】
まず、消去動作から説明する。消去動作では、選択されたメモリセルのp型ウェルMPWの電位を1.5V、ワード線に接続されたゲート電極CG1の電位を−8.5V、ソース線に接続されたメモリセルQ1のソース領域の電位を1.5Vにする。すると、メモリセルQ1の電荷蓄積膜ECに蓄積された電荷が半導体基板SB側に引き抜かれ、データが消去される。
【0066】
次に、書込み動作について説明する。書込み動作では、選択されたp型ウェルMPWの電位を−10.5V、ワード線に接続されたゲート電極CG1の電位を1.5V、ソース線に接続されたメモリセルQ1のソース領域の電位を−10.5Vにする。すると、メモリセルQ1の電荷蓄積膜ECに電荷が注入され、データの書込みが行なわれる。この電荷の注入は、FNトンネリングを用いた方式(FN電荷注入方式)により行われる。
【0067】
次に、読み出し動作について説明する。例えば、情報(データ)の書込みが行われたメモリセルQ1では、データに“1”が書き込まれてトランジスタ(メモリセルQ1)のしきい値電圧が高くなっており、情報が消去されたメモリセルQ1では、データが“0”となってトランジスタ(メモリセルQ1)のしきい値電圧が低くなっているとする。メモリセルQ1のデータを読み出す場合、選択されたp型ウェルMPWの電位を−2V、ゲート電極CG1の電位を0V、ソース領域の電位を0Vにする。これにより、選択したメモリセルQ1のデータを読み出す。
【0068】
この場合、書き込まれた情報を保持しているメモリセルQ1のしきい値電圧は高く、情報が消去されたメモリセルQ1のしきい値電圧は低くなっている。このため、書き込まれた情報を保持しているメモリセルQ1のドレイン領域に接続されたデータ線の電位は変わらず、情報が消去されたメモリセルQ1のドレイン領域に接続されたデータ線の電位は下がる。このデータ線の電位の変動を検知することで、情報の有無を判断し、これにより情報の読出しを行うことができる。
【0069】
本実施の形態で、ゲート絶縁膜と半導体基板SBとの界面における水素終端化により最も効果が得られるのは、メモリセルQ1の書込み、消去動作にFN電荷注入方式を用いた場合である。FN電荷注入方式により注入される電荷は、半導体基板SBとONO膜ONの界面欠陥において終端化された水素を解離させる効果が小さいので、書込み、消去動作を繰り返しても、水素終端化の効果を維持することができる。
【0070】
一方、ホットキャリア注入方式を用いた場合、高いエネルギーの電荷により、終端化された水素が解離しやすい。その結果、書込み、消去動作を繰り返すことによって界面欠陥が増加し、メモリセルのON抵抗の増加などの問題が生じることになるため、水素アニールによる水素終端化を行っても、実際には効果が得られにくい。
【0071】
ホットキャリア注入方式を行う場合、注入する電荷として、電子とホールが考えられる。ここで、ホットキャリア注入方式として、特にBTBT方式などによってホットホールを注入する場合には、ホットエレクトロンを注入する場合に比べて界面欠陥が増加する効果が大きいため、水素終端化の効果はより得られにくい。SSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式などによってホットエレクトロンを注入する場合には、ホットホール注入に比べて界面欠陥の増加は少ないので、水素終端化による一定の効果を得ることが可能である。
【0072】
<実施の形態1における特徴>
本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果を、比較例の半導体装置と比較して以下に説明する。比較例の半導体装置は、
図1〜
図17を用いて説明した工程と似た工程で形成されるが、
図11および
図12を用いて説明した水素含有絶縁膜HFによる水素アニール工程(
図1のステップS108〜S110)は行わず、水素雰囲気における熱処理を行うことで水素アニールを行うものである。
【0073】
つまり、比較例の半導体装置では、まず、
図2〜
図10を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、ONO膜ON、絶縁膜GOX2、ゲート電極CG1、G1、エクステンション領域EX1、EX2およびハロー領域HRを形成する。その後、半導体基板SBにより構成される半導体ウェハをチャンバ内に設置し、当該チャンバ内を水素雰囲気とした状態で半導体ウェハに対し熱処理を行う。このようにして水素アニールを行うことで、半導体基板SBとゲート絶縁膜との界面における欠陥の修復を行う。その後は、
図13〜
図17を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、比較例の半導体装置を形成することができる。
【0074】
ここで、比較例の半導体装置では以下のような問題がある。すなわち、比較例の半導体装置のように、周辺回路のMISFETと、不揮発性メモリのメモリセルを混載する場合、半導体基板上の半導体素子の特性が変動する問題が生じる。また、水素アニールを実施するために、上記のチャンバなど、新たな装置を導入する必要が生じ、半導体装置の製造工程のコストが増大する問題がある。
【0075】
水素雰囲気において水素アニールを行った場合に半導体素子において起こる特性変動は、例えば水素アニールによるホウ素(B)の不活性現象により起こるものである。周辺回路領域に形成されたpチャネル型MISFETの場合、水素雰囲気内で水素アニールを行うと、ゲート電極または拡散領域に注入されたホウ素が不活性化するため、ゲート電極内で空乏化が起き、また、ソース領域およびドレイン領域の相互間の抵抗が増加する問題が生じる。周辺回路領域1Bに形成されたnチャネル型MISFETの場合、ハロー領域に導入されたホウ素が不活性化することで、短チャネル特性が悪化する問題が生じる。
【0076】
そこで、本実施の形態では、上記のように周辺回路領域に形成されたCMOSなどを構成する半導体素子において、ホウ素の不活性化による特性変動が起こることを防ぐため、水素雰囲気における水素アニールを行わず、
図12に示す水素含有絶縁膜HFを選択的に形成して水素アニールを行っている。
【0077】
図11および
図12を用いて説明したように、水素含有絶縁膜HFは、他の絶縁膜などを堆積させて形成する際に用いられる装置を使用して形成することができる。また、水素アニールの際に行う熱処理は、ソース・ドレイン領域などの活性化のためのアニール装置を使用することで行うことができる。また、水素含有絶縁膜HFの除去は、他の絶縁膜を除去する際に用いるエッチング装置を使用することで行うことができる。したがって、本実施の形態の水素アニールは既存の装置を流用して行うことができるため、水素雰囲気において水素アニールを行うための新たな熱処理用のチャンバなどを準備する必要がない。したがって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0078】
また、本実施の形態では水素雰囲気における水素アニールを行わないため、周辺回路領域1Bに形成されたCMOSなどを構成する半導体素子においてホウ素の不活性化が起こることを防ぐことができる。これは、
図12において説明したように、周辺回路領域1Bに形成された水素含有絶縁膜HFを除去してから水素アニールを行うためである。これにより、メモリセル領域1Aにおいては、ゲート絶縁膜であるONO膜ONと半導体基板SBとの界面における欠陥の修復を行うことができ、かつ、周辺回路領域1Bにおけるホウ素の不活性化を防ぐことができるため、周辺回路を構成する素子と不揮発性メモリとを混載した場合であっても、周辺回路領域1Bの半導体素子の特性変動を防ぐことができる。したがって、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0079】
具体的には、周辺回路領域1Bに形成されたpチャネル型MISFETにおいては、ゲート電極内での空乏化、および、ソース領域およびドレイン領域の相互間の高抵抗化を防ぐことができる。また、周辺回路領域1Bに形成されたnチャネル型MISFETにおいては、ハロー領域HRに導入されたホウ素の不活性化を防ぐことができるため、短チャネル特性の悪化を防ぐことができる。
また、本実施の形態では、メモリセル領域1Aにおいて、半導体素子を窒化シリコン膜で覆った状態で熱処理(水素アニール)を行っている。ここでいう窒化シリコン膜とは、メモリセル領域1Aに形成された水素含有絶縁膜HFを指す。これにより、メモリセルQ1には、当該熱処理において窒化シリコン膜から応力が加えられるため、電流の移動度を向上させることができる。
【0080】
(実施の形態2)
以下に、トランジスタのソース・ドレイン領域を構成する拡散領域を形成した後に水素アニールを行う本実施の形態の半導体装置の製造方法について、
図18および
図19を用いて説明する。
図18および
図19は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図18および
図19においても、図の左側にメモリセル領域1Aを示し、図の右側に周辺回路領域1Bを示している。
【0081】
本実施の形態では、まず、
図1〜
図10、
図13および
図14を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、半導体基板SB上にメモリセルQ1および低耐圧MISFETQ2を形成する。すなわち、ここでは、
図10を用いて説明したエクステンション領域EX2の形成工程の後に、
図11および
図12を用いて説明した工程を行わず、続けてサイドウォールSW(
図13参照)および拡散領域D1、D2(
図14参照)を形成する。
【0082】
次に、
図18に示すように、半導体基板SBの主面の全面の上に、例えばCVD法を用いて、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを順に形成する。絶縁膜OXは、例えば酸化シリコン膜からなり、水素含有絶縁膜HFは、水素を比較的多く含む窒化シリコン膜からなる。これにより、ゲート絶縁膜であるONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜の上面と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWの表面と、拡散領域D1の上面とは、絶縁膜OXを介して水素含有絶縁膜HFにより覆われる。同様に、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWと、拡散領域D2の上面とは、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFにより覆われる。水素含有絶縁膜HFが有する水素の含有量は、例えば1×10
21/cm
3以上である。
【0083】
次に、
図19に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、周辺回路領域1Bの水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去する。これにより、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面と、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜と、サイドウォールSWとは、水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXから露出する。メモリセル領域1Aの水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXは除去されずに残るため、ONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWと、拡散領域D1とは、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFにより覆われたままである。
【0084】
その後、半導体基板SBを含む半導体ウェハを熱処理する。これにより、水素含有絶縁膜HF内の水素(H)を、ONO膜ONと半導体基板SBとの界面に導入する。すなわち、ONO膜ONの底面、つまり絶縁膜IF1の底面と、半導体基板SBの主面とが接する領域に、水素を導入する。このようにして、水素アニールを行うことにより、絶縁膜IF1と半導体基板SBとの界面における欠陥を修復することができる。
【0085】
なお、本実施の形態ではメモリセルQ1および低耐圧MISFETQ2の拡散領域D1、D2を形成した後に水素アニールを行う。したがって、当該水素アニールを行うことで、ソース・ドレイン領域などに導入された不純物を拡散させてもよい。つまり、水素アニールと拡散アニールとを一度の熱処理により一括で行うことができる。これにより、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0086】
次に、例えばウェットエッチング法を用いて水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去し、その後、
図15〜
図17を用いた説明した工程と同様の工程を行うことで、
図17に示す半導体装置と同様の構成の半導体装置を形成する。
【0087】
上記のように、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、
図1に示すステップS108〜S110を、ステップS112の後に行うものである。すなわち、水素含有絶縁膜HF(
図19参照)を用いた水素アニールは、本実施の形態のように、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2を形成した後に行っても、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、水素アニールは、プロセス中に生じる界面欠陥の修復を目的として行うものであるため、なるべく後の工程(メモリセルおよび周辺回路トランジスタの形成後)に行うことが望ましい。本実施の形態では、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2の形成工程によりメモリセルQ1のゲート絶縁膜および半導体基板SBの界面に増加した欠陥を修復することができる。よって、前記実施の形態1に比べ、完成した半導体装置におけるメモリセルQ1の界面欠陥量をより低減することができる。
【0089】
(実施の形態3)
以下に、水素の濃度が高い水素含有絶縁膜と、水素の濃度が低い水素含有絶縁膜とを用いて水素アニールを行うことについて、
図20および
図21を用いて説明する。
図20および
図21は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図20および
図21においても、図の左側にメモリセル領域1Aを示し、図の右側に周辺回路領域1Bを示している。
【0090】
本実施の形態では、まず、前記実施の形態2と同様の工程を行い、
図18に示す構造を得る。つまり、水素アニールを行わずに半導体基板SB上にメモリセルQ1および低耐圧MISFETQ2を形成した後、半導体基板SB上に絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを順に形成する。
【0091】
次に、
図20に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、周辺回路領域1Bの水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去する。これにより、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面と、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜と、サイドウォールSWとは、水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXから露出する。メモリセル領域1Aの水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXは除去されずに残るため、ONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWと、拡散領域D1とは、絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFにより覆われたままである。
【0092】
次に、
図21に示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板SBの主面の全面の上に水素含有絶縁膜LHFを形成する。水素含有絶縁膜HFは、水素を比較的少なく含み、例えば窒化シリコン膜からなる。これにより、ゲート絶縁膜であるONO膜ONおよびゲート電極CG1からなる積層膜の上面と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWの表面と、拡散領域D1の上面と、水素含有絶縁膜HFとは、水素含有絶縁膜LHFにより覆われる。同様に、絶縁膜GOX2およびゲート電極G1からなる積層膜と、当該積層膜の側壁のサイドウォールSWと、拡散領域D2の上面とは、水素含有絶縁膜LHFにより覆われる。水素含有絶縁膜LHFが有する水素の含有量は、例えば1×10
21/cm
3未満である。
【0093】
すなわち、水素含有絶縁膜LHFの水素含有量は、水素含有絶縁膜HFよりも少ない。つまり、メモリセル領域1AのメモリセルQ1は、水素含有量が多い膜に覆われており、周辺回路領域1Bの低耐圧MISFETQ2は、水素含有量が少ない膜に覆われている。
【0094】
その後、半導体基板SBを含む半導体ウェハを熱処理する。これにより、水素含有絶縁膜HF内の水素(H)を、ONO膜ONと半導体基板SBとの界面に導入する。すなわち、ONO膜ONの底面、つまり絶縁膜IF1の底面と、半導体基板SBの主面とが接する領域に、水素を導入する。このようにして、水素アニールを行うことにより、絶縁膜IF1と半導体基板SBとの界面における欠陥を修復することができる。
【0095】
このとき、水素含有絶縁膜LHFからMISFETQ2に水素が拡散することが考えられるが、水素含有絶縁膜LHFの水素含有量は少ないため、水素アニールを行っても、ホウ素の不活性化による半導体素子の特性変動を抑えることができる。
【0096】
次に、例えばウェットエッチング法を用いて水素含有絶縁膜LHF、HFおよび絶縁膜OXを除去し、その後、
図15〜
図17を用いた説明した工程と同様の工程を行うことで、
図17に示す半導体装置と同様の構成の半導体装置を形成する。
【0097】
本実施の形態では、前記実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、本実施の形態では、メモリセル領域1Aのみならず周辺回路領域1Bにおいても、半導体素子を窒化シリコン膜で覆った状態で熱処理(水素アニール)を行っている。ここでいう窒化シリコン膜とは、メモリセル領域1Aにおいては水素含有絶縁膜HFおよびLHFを指し、周辺回路領域1Bにおいては水素含有絶縁膜LHFを指す。これにより、メモリセルQ1および低耐圧MISFETQ2には、当該熱処理において窒化シリコン膜から応力が加えられるため、電流の移動度を向上させることができる。
【0099】
なお、前記実施の形態1のように、エクステンション領域EX1、EX2の形成後であって、サイドウォールSW、拡散領域D1、D2の形成前のタイミングで、上記水素含有絶縁膜HFおよび水素含有絶縁膜LHFを用いた水素アニールを行ってもよい。
【0100】
(実施の形態4)
以下に、いわゆるゲートラストプロセスを用いて周辺回路領域の素子を形成し、スプリットゲート構造のMONOSメモリを形成する場合において、水素含有絶縁膜を用いて水素アニールを行うことについて、
図22〜
図32を用いて説明する。
図22〜
図32は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図22〜
図32においても、図の左側にメモリセル領域1Aを示し、図の右側に周辺回路領域1Bを示している。
【0101】
まず、
図22に示すように、半導体基板SBを用意した後、半導体基板SBの主面に形成した溝内に素子分離領域STIを形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、半導体基板SBの主面にp型の不純物(例えばホウ素(B))を導入することにより、メモリセル領域1Aの半導体基板SBの主面にp型ウェルMPWを形成し、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面にp型ウェルPWを形成する。続いて、半導体基板SBの主面上に、絶縁膜GOX2、ポリシリコン膜PS1および絶縁膜(キャップ絶縁膜)CFを順に形成する。
【0102】
次に、
図23に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、絶縁膜CF、ポリシリコン膜PS1および絶縁膜GOX2を加工することで、半導体基板SBの主面を露出させる。これにより、メモリセル領域1Aには、ポリシリコン膜PS1からなる選択ゲート電極CG2を形成し、その下に絶縁膜GOX2からなるゲート絶縁膜GFを形成する。また、上記加工により、周辺回路領域1Bには、ポリシリコン膜PS1からなるダミーゲート電極DGを形成し、その下に絶縁膜GOX2からなるゲート絶縁膜GFを形成する。
【0103】
次に、
図24に示すように、半導体基板SB上に、絶縁膜IF1、電荷蓄積膜ECおよび絶縁膜IF2を順に積層した積層膜からなるONO膜ONを形成する。なお、以下の説明で用いる図においては、積層構造を有するONO膜ONの図示を簡略化し、1つの膜として示す。続いて、ONO膜ON上に、ポリシリコン膜PS2を形成する。ONO膜ONは、前記実施の形態1と同様の方法で形成する。ポリシリコン膜PS2は、例えばCVD法を用いて形成する。ここで、ゲート絶縁膜GF、選択ゲート電極CG2および絶縁膜CFからなる第1積層膜と、ゲート絶縁膜GF、ダミーゲート電極DGおよび絶縁膜CFからなる第2積層膜とのそれぞれの両側の側壁および上面はONO膜ONおよびポリシリコン膜PS2より覆われる。
【0104】
次に、
図25に示すように、異方性エッチングを行うことでポリシリコン膜PS2を加工し、これにより一部のONO膜ONの上面を露出させる。当該加工により、選択ゲート電極CG2の両側の側壁にONO膜ONを介して隣接するように自己整合的に残ったポリシリコン膜PS2は、サイドウォール状の形状を有している。なお、ダミーゲート電極DGの側壁にも同様にポリシリコン膜PS2が残る。
【0105】
続いて、サイドウォール状のポリシリコン膜PS2から露出しているONO膜ONを除去することで、半導体基板SBの主面および絶縁膜CFの上面を露出させる。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、メモリセル領域1Aの第1積層膜の一方の側壁に隣接するONO膜ONおよびポリシリコン膜PS2を残して、他の領域のONO膜ONおよびポリシリコン膜PS2を除去する。
【0106】
これにより、選択ゲート電極CG2を含む第1積層膜の一方の側壁には、ONO膜ONを介して、ポリシリコン膜PS2からなるメモリゲート電極MGが形成される。つまり、メモリゲート電極MGと選択ゲート電極CG2との間にはONO膜ONが介在しており、メモリゲート電極MGと半導体基板SBの主面との間にもONO膜ONが介在している。すなわち、ONO膜ONはL字型の断面形状を有しており、メモリゲート電極MGと選択ゲート電極CG2との間から、メモリゲート電極MGと半導体基板SBの主面との間までにわたって連続的に形成されている。また、第1積層膜のもう一方の側壁および第2積層膜の両方の側壁は、ポリシリコン膜PS2およびONO膜ONから露出する。
【0107】
次に、
図26に示すように、
図7、
図9および
図10を用いて説明した方法と同様にして、エクステンション領域EX1、EX2およびハロー領域を形成する。なお、ここで、周辺回路領域1Bに形成された一対のハロー領域の図示は省略する。エクステンション領域EX1はメモリセル領域1Aにおいて、第1積層膜、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MGを含む構造体を挟むように、当該構造体の横の半導体基板SBの主面に一対形成される。エクステンション領域EX2は、周辺回路領域1Bにおいて第2積層膜を挟むように、第2積層膜の横の半導体基板SBの主面に一対形成される。エクステンション領域EX1、EX2はn型の半導体領域であり、ハロー領域はp型の半導体領域である。
【0108】
続いて、
図13および
図14を用いて説明した方法と同様にして、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2を形成する。拡散領域D1は、メモリセル領域1Aに形成された一対のn型半導体領域であり、拡散領域D2は、周辺回路領域1Bに形成された一対のn型半導体領域である。これにより、メモリセル領域1Aには、エクステンション領域EX1および拡散領域D1を含むソース・ドレイン領域が形成され、周辺回路領域1Bには、エクステンション領域EX2および拡散領域D2を含むソース・ドレイン領域が形成される。
【0109】
次に、
図27に示すように、
図18および
図19を用いて説明した工程と同様の工程を行う。すなわち、半導体基板SB上に絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを形成した後、周辺回路領域1Bの絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを選択的に除去する。その後、熱処理を行うことで、メモリセル領域1Aの第1積層膜、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MGを覆う水素含有絶縁膜HF内の水素を拡散させて、ゲート絶縁膜GFと半導体基板SBの主面との界面、および、ONO膜ONと半導体基板SBの主面との界面のそれぞれに水素を導入する。これにより、ゲート絶縁膜GFおよびゲート絶縁膜であるONO膜ONと、半導体基板SBとの間の界面欠陥を修復することができる。
【0110】
なお、前記実施の形態1と同様に、エクステンション領域EX1、EX2の形成後であって、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2の形成前に水素アニールを行ってもよい。また、前記実施の形態3のように、水素含有量が少ない水素含有絶縁膜LHF(
図21参照)を形成して水素アニールを行ってもよい。
【0111】
次に、
図28に示すように、水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去した後、
図15を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、シリサイド化を行う。これにより、拡散領域D1、D2およびメモリゲート電極MGの表面にシリサイド層S1が形成される。なお、選択ゲート電極CG2およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面は絶縁膜CFに覆われているため、選択ゲート電極CG2およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面にはシリサイド層S1は形成されない。
【0112】
次に、
図29に示すように、半導体基板SB上の主面の全面を覆うように、例えばCVD法を用いて、エッチストッパ膜(図示しない)と層間絶縁膜CL1とを順に形成する。層間絶縁膜CL1は第1積層膜および第2積層膜よりも大きい膜厚を有し、第1積層膜、メモリゲート電極MGおよび第2積層膜を覆うように形成される。続いて、層間絶縁膜CL1の上面をCMP法などにより研磨することにより、絶縁膜CFを除去し、選択ゲート電極CG2およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面を露出させる。このとき、メモリゲート電極MGの上面に形成されていたシリサイド層S1は、研磨されて除去される。
【0113】
これにより、メモリセル領域1Aにおいて、エクステンション領域EX1、拡散領域D1、選択ゲート電極CG2、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MGを含むスプリットゲート型のMONOSメモリであるメモリセルQ3を形成する。
【0114】
すなわち、メモリセル領域1Aにおいて、選択ゲート電極CG2と、選択ゲート電極CG2の横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、選択トランジスタを構成している。また、メモリセル領域1Aにおいて、メモリゲート電極MGと、メモリゲート電極MGの横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MGの下のONO膜ONは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜を構成している。
【0115】
このように、選択トランジスタおよびメモリトランジスタは一対のソース・ドレイン領域を共有しており、この選択トランジスタおよびメモリトランジスタにより、メモリセルQ3が構成されている。
【0116】
次に、
図30に示すように、周辺回路領域1Bのダミーゲート電極DGを除去する。具体的には、フォトリソグラフィ技術を用いて、メモリセル領域1Aに、選択ゲート電極CG2およびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面を覆うレジスト膜(図示しない)を形成する。
【0117】
その後、上記レジスト膜をマスクとして用いてエッチングを行うことで、ダミーゲート電極DGを除去する。その後、上記レジスト膜を除去する。ダミーゲート電極DGが除去されたことにより、周辺回路領域1Bのゲート絶縁膜GF上に溝(凹部、窪み部)が形成される。つまり、周辺回路領域1Bのゲート絶縁膜GF上の溝は、ダミーゲート電極DGが除去された領域である。
【0118】
次に、
図31に示すように、半導体基板SB上、つまり、上記溝のそれぞれの内面(底面および側壁)上を含む層間絶縁膜CL1上に、絶縁膜HKを形成する。その後、半導体基板SB上、つまり絶縁膜HK上に、上記溝を完全に埋め込むように、ゲート電極用の導電膜として金属膜を形成する。絶縁膜HKの形成工程において、上記の各溝の内側は完全には埋まらず、上記金属膜を形成することにより、各溝は完全に埋まった状態になる。また、上記金属膜は層間絶縁膜CL1上にも形成される。
【0119】
絶縁膜HKは、ゲート絶縁膜用の絶縁膜であり、当該金属膜は、ゲート電極用の導電膜である。具体的には、絶縁膜HKは、周辺回路領域1Bに形成する低耐圧MISFETのゲート絶縁膜を兼ねている。絶縁膜HKは、酸化シリコンおよび窒化シリコンのいずれよりも誘電率(比誘電率)が高い絶縁材料膜、いわゆるhigh−k膜(高誘電率膜)である。なお、本願において、high−k膜、高誘電率膜と言うときは、窒化シリコンよりも誘電率(比誘電率)が高い膜を意味する。
【0120】
絶縁膜HKとしては、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜または酸化ランタン膜などの金属酸化物膜を用いることができ、また、これらの金属酸化物膜は、窒素(N)およびケイ素(Si)の一方または両方をさらに含有することもできる。絶縁膜HKは、例えば、ALD(Atomic layer Deposition:原子層堆積)法などにより形成することができる。絶縁膜HKの膜厚は例えば3nmである。ゲート絶縁膜に高誘電率膜(ここでは絶縁膜HK)を用いた場合は、酸化シリコン膜を用いた場合に比べて、ゲート絶縁膜の物理的膜厚を増加させることができるため、リーク電流を低減できるという利点を得られる。
【0121】
上記金属膜としては、例えば、窒化チタン(TiN)膜、窒化タンタル(TaN)膜、窒化タングステン(WN)膜、炭化チタン(TiC)膜、炭化タンタル(TaC)膜、炭化タングステン(WC)膜、窒化炭化タンタル(TaCN)膜、チタン(Ti)膜、タンタル(Ta)膜、チタンアルミニウム(TiAl)膜またはアルミニウム(Al)膜などの金属膜を用いることができる。また、それらの積層膜により当該金属膜を構成してもよい。なお、ここで言う金属膜とは、金属伝導を示す導電膜を言い、単体の金属膜(純金属膜)または合金膜だけでなく、金属伝導を示す金属化合物膜も含むものとする。当該金属膜は、例えばスパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0122】
ここでは、例えば当該金属膜を、窒化チタン(TiN)膜と当該窒化チタン膜上のアルミニウム(Al)膜との積層膜により構成する。この際、窒化チタン膜よりもアルミニウム膜を厚くすることが好ましい。アルミニウム膜は、低抵抗であるため、後に形成するゲート電極G2の低抵抗化を図ることができる。ただし、図を分かりやすくするため、図においては当該積層膜の積層構造の図示を省略し、当該金属膜を1つの膜として示している。
【0123】
その後、上記溝の外部の不要な金属膜および絶縁膜HKをCMP法などによって除去することにより、周辺回路領域1Bの溝内に絶縁膜HKおよび当該金属膜を残す。これにより、周辺回路領域1Bのゲート絶縁膜GF上の溝内に埋め込まれた当該金属膜により、ゲート電極G2が形成される。これにより、周辺回路領域1Bにおいて、エクステンション領域EX2、拡散領域D2およびメタルゲート電極であるゲート電極G2を含む低耐圧MISFETQ4が形成される。
【0124】
すなわち、周辺回路領域1Bにおいて、ゲート電極G2と、ゲート電極G2の横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、低耐圧MISFETQ4を構成している。ゲート電極G2の直下の絶縁膜HKおよびゲート絶縁膜GFは、低耐圧MISFETQ4のゲート絶縁膜を構成している。
【0125】
次に、
図32に示すように、例えばCVD法を用いて、半導体基板SBの主面上に酸化シリコン膜などからなる層間絶縁膜CL2を形成する。これにより、層間絶縁膜CL1、選択ゲート電極CG2、メモリゲート電極MGおよびゲート電極G2の上面は層間絶縁膜CL2により覆われる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜CL2を貫通するコンタクトホールと、層間絶縁膜CL2、CL1を貫通するコンタクトホールとをそれぞれ形成する。
【0126】
層間絶縁膜CL2を貫通するコンタクトホールは選択ゲート電極CG2、メモリゲート電極MGおよびゲート電極G2のそれぞれに電位を供給するコンタクトプラグCPを埋め込むための開口部である。層間絶縁膜CL2、CL1を貫通するコンタクトホールは、各ソース・ドレイン領域に電位を供給するコンタクトプラグCPを埋め込むための開口部である。
【0127】
なお、周知のサリサイドプロセスを用いて、選択ゲート電極CG2およびメモリゲート電極MGの上面にシリサイド層(図示しない)を形成してもよい。当該シリサイド層を形成する際は、周辺回路領域1Bのゲート電極G2の上面を絶縁膜(図示しない)により覆った状態で金属膜を形成し、当該金属膜と選択ゲート電極CG2およびメモリゲート電極MGとを反応させてから、未反応の余分な金属膜を薬液により除去する。この際、金属からなるゲート電極G2は絶縁膜により覆われているため、当該薬液に晒されることはなく、除去されない。
【0128】
続いて、
図17を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、複数のコンタクトプラグCP、層間絶縁膜ILおよび配線M1を形成することで、本実施の形態の半導体装置を形成する。複数のコンタクトプラグCPの一部はソース・ドレイン領域に接続されており、図示していない領域において、他のコンタクトプラグCPは、選択ゲート電極CG2、メモリゲート電極MGおよびゲート電極G2のそれぞれに接続されている。
【0129】
以下では、不揮発性メモリの動作例について、
図41を参照して説明する。
【0130】
図41は、本実施の形態の「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図41の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、
図32に示されるようなメモリセルのメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmg、ソース領域に印加する電圧Vs、選択ゲート電極CG2に印加する電圧Vcg、ドレイン領域に印加する電圧Vd、および半導体基板上面のp型ウェルに印加するベース電圧Vbが記載されている。ここでいう選択メモリセルとは、「書込」、「消去」または「読出」を行う対象として選択されたメモリセルをいう。
【0131】
なお、
図41の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、
図41の表においては、書込み方法がSSI方式で、かつ消去方法がFN方式の場合を示している。書込み方式としては、FN注入方式を用いてもよい。ただし、消去方式として、BTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)方式は用いない。
【0132】
SSI方式は、電荷蓄積膜ECにホットエレクトロンを注入することによってメモリセルの書込みを行う動作法とみなすことができ、FN方式は、電子またはホールのトンネリングによって書込みまたは消去を行う動作法とみなすことができる。FN方式について、別の表現で言うと、FN方式の書込みは、窒化シリコン膜(
図24に示す電荷蓄積膜EC)にFNトンネル効果により電子を注入することによってメモリセルの書込みを行う動作方式とみなすことができ、FN方式の消去は、電荷蓄積膜ECにFNトンネル効果によりホールを注入することによってメモリセルの消去を行う動作方式とみなすことができる。以下、具体的に説明する。
【0133】
ここでの書込み方式は、いわゆるSSI方式と呼ばれるソースサイド注入によるホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式(ホットエレクトロン注入書込み方式)を用いる。
【0134】
SSI方式の書込みでは、例えば
図41の表の「書込動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=10V、Vs=5V、Vcg=1V、Vd=0.5V、Vb=0V)を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルのONO膜ON中の電荷蓄積膜EC中に電子を注入することで書込みを行う。
【0135】
この際、ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極CG2)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MGの下のONO膜ON中の電荷蓄積部である電荷蓄積膜ECにホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、ONO膜ON中の電荷蓄積膜EC中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0136】
FN方式の消去では、例えば
図41の「消去動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=12V、Vs=0V、Vcg=0V、Vd=0V、Vb=0V)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MGからホールをトンネリングさせてONO膜ON中の電荷蓄積膜ECに注入することで消去を行う。この際、ホールはメモリゲート電極MGからFNトンネリング(FNトンネル効果)により酸化シリコン膜(
図24に示す絶縁膜IF1)をトンネリングしてONO膜ON中に注入され、ONO膜ON中の電荷蓄積膜EC中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0137】
なお、FN方式の消去において、半導体基板SBからホールをトンネリングさせてONO膜ON中の電荷蓄積膜ECに注入することで消去を行うこともでき、この場合、消去動作電圧は、例えば
図41の表の「消去動作電圧」の正負を反転させたものとすることができる。
【0138】
読出し時には、例えば
図41の「読出動作電圧」に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
【0139】
以上に
図22〜
図32を用いて説明したように、本実施の形態では、周辺回路領域1Bにおいて、ダミーゲート電極を形成してからソース・ドレイン領域を形成し、その後、ダミーゲート電極を除去し、ダミーゲート電極を除去した領域に、低耐圧MISFETQ4用のゲート電極G2を形成する、いわゆるゲートラストプロセスを用いている。つまり、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、ゲートラストプロセスを用いて周辺回路の素子を形成し、かつ、スプリットゲート型のMONOSメモリを形成するものである。ここでは、
図27を用いて説明した工程において選択的に水素アニールを行うことにより、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0140】
(実施の形態5)
以下に、ゲートラストプロセスを用いて周辺回路領域の半導体素子を形成し、また、メモリセル領域にシングルゲート構造のMONOSメモリを形成する場合において、水素含有絶縁膜を用いて水素アニールを行うことについて、
図33〜
図40を用いて説明する。
図33〜
図40は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図33〜
図40においても、図の左側にメモリセル領域1Aを示し、図の右側に周辺回路領域1Bを示している。
【0141】
まず、
図33に示すように、半導体基板SBを用意した後、半導体基板SBの主面に形成した溝内に素子分離領域STIを形成する。続いて、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を用いて、半導体基板SBの主面にp型の不純物(例えばホウ素(B))を導入することにより、メモリセル領域1Aの半導体基板SBの主面にp型ウェルMPWを形成し、周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面にp型ウェルPWを形成する。続いて、半導体基板SBの主面上に、絶縁膜IF1、電荷蓄積膜ECおよび絶縁膜IF2を順に積層した積層膜からなるONO膜ONを形成する。その後、例えばCVD法などを用いて、ONO膜ON上にポリシリコン膜PS1および絶縁膜CFを順に形成する。
【0142】
次に、
図34に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、絶縁膜CF、ポリシリコン膜PS1およびONO膜ONを加工することで、半導体基板SBの主面を露出させる。これにより、メモリセル領域1Aには、ポリシリコン膜PS1からなるゲート電極CG1を形成し、その下にONO膜ONからなるゲート絶縁膜を形成する。また、上記加工により、周辺回路領域1Bには、ポリシリコン膜PS1からなるダミーゲート電極DGを形成し、その下にONO膜ONからなるゲート絶縁膜を形成する。
【0143】
次に、
図35に示すように、
図26を用いて説明した方法と同様にして、エクステンション領域EX1、EX2、ハロー領域、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2を形成する。なお、ここで、周辺回路領域1Bに形成された一対のハロー領域の図示は省略する。
【0144】
次に、
図36に示すように、
図18および
図19を用いて説明した工程と同様の工程を行う。すなわち、半導体基板SB上に絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを形成した後、周辺回路領域1Bの絶縁膜OXおよび水素含有絶縁膜HFを選択的に除去する。その後、熱処理を行うことで、メモリセル領域1Aのゲート電極CG1、ONO膜ONおよびサイドウォールSWを覆う水素含有絶縁膜HF内の水素を拡散させて、ゲート絶縁膜であるONO膜ONと半導体基板SBの主面との界面に水素を導入する。これにより、メモリセル領域1Aのゲート絶縁膜であるONO膜ONと、半導体基板SBとの間の界面欠陥を修復することができる。
【0145】
なお、前記実施の形態1と同様に、エクステンション領域EX1、EX2の形成後であって、サイドウォールSW、拡散領域D1およびD2の形成前に水素アニールを行ってもよい。また、前記実施の形態3のように、水素含有量が少ない水素含有絶縁膜LHF(
図21参照)を形成して水素アニールを行ってもよい。
【0146】
次に、
図37に示すように、水素含有絶縁膜HFおよび絶縁膜OXを除去した後、
図15を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、シリサイド化を行う。これにより、拡散領域D1、D2のそれぞれの表面にシリサイド層S1が形成される。なお、ゲート電極CG1およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面は絶縁膜CFに覆われているため、ゲート電極CG1およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面にはシリサイド層S1は形成されない。
【0147】
続いて、半導体基板SB上の主面の全面を覆うように、例えばCVD法を用いて、エッチストッパ膜(図示しない)と層間絶縁膜CL1とを順に形成する。その後、層間絶縁膜CL1の上面をCMP法などにより研磨することにより、絶縁膜CFを除去し、ゲート電極CG1およびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面を露出させる。
【0148】
これにより、メモリセル領域1Aにおいて、エクステンション領域EX1、拡散領域D1、ゲート電極CG1およびONO膜ONを含むシングルゲート型のMONOSメモリであるメモリセルQ5を形成する。
【0149】
次に、
図38に示すように、
図30を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、周辺回路領域1Bのダミーゲート電極DGを除去する。続いて、周辺回路領域1BのONO膜ONを除去する。これにより、周辺回路領域1Bには、ONO膜ONおよびダミーゲート電極DGが除去された領域である溝が形成される。
【0150】
次に、
図39に示すように、
図31を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、上記溝内に、high−k膜である絶縁膜HKと、メタルゲート電極であるゲート電極G3とを形成する。これにより、周辺回路領域1Bにおいて、エクステンション領域EX2、拡散領域D2およびメタルゲート電極であるゲート電極G3を含む低耐圧MISFETQ6が形成される。
【0151】
すなわち、周辺回路領域1Bにおいて、ゲート電極G3と、ゲート電極G3の横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、低耐圧MISFETQ6を構成している。ゲート電極G3の直下の絶縁膜HKは、低耐圧MISFETQ6のゲート絶縁膜を構成している。
【0152】
次に、
図40に示すように、
図32を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、層間絶縁膜CL2、複数のコンタクトホール、複数のコンタクトプラグCP、層間絶縁膜ILおよび複数の配線M1を形成する。これにより、本実施の形態の半導体装置を形成する。複数のコンタクトプラグCPの一部はソース・ドレイン領域に接続されており、図示していない領域において、他のコンタクトプラグCPは、ゲート電極CG1およびゲート電極G3のそれぞれに接続されている。
【0153】
本実施の形態のメモリセル領域1Aに形成したメモリセルQ5は、前記実施の形態1において説明したメモリセルQ1(
図17参照)と同様の動作により書込みなどを行う不揮発性メモリである。
【0154】
以上に説明したように、本実施の形態では、周辺回路領域1Bにおいて、いわゆるゲートラストプロセスを用いて低耐圧MISFETQ6を形成している。つまり、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、ゲートラストプロセスを用いて周辺回路の素子を形成し、かつ、メモリセル領域にシングルゲート型のMONOSメモリを形成するものである。ここでは、
図36を用いて説明した工程において選択的に水素アニールを行うことにより、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0155】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。