(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンクで発生する蒸発燃料をベーパ通路を介してキャニスタに吸着させ、キャニスタに吸着された蒸発燃料をパージ通路を介してエンジンに供給してパージするエバポ経路を備えた蒸発燃料処理装置において、
前記パージ通路には、
パージを行う際に前記パージ通路を開くべく開弁されるパージ弁と、
前記パージ弁よりエンジン側に設けられ、パージを行う際に前記パージ通路にキャニスタからエンジンに向かう流れのパージ流を発生させるパージポンプと、
前記パージポンプよりエンジン側に設けられ、前記パージポンプにより発生されるパージ流は通過させるべく開弁するが、それとは反対方向の流れは通過させないように閉弁する開閉弁とを備え、
前記パージ弁、前記パージポンプ及び前記開閉弁が直列接続して設けられており、
キャニスタを大気に連通する大気ポートを封鎖して、前記エバポ経路を気密状態とするべく閉弁される封鎖弁と、
前記エバポ経路の空気圧を検出する圧力センサと、
前記エバポ経路を、所定負圧にすべくエンジン停止中に前記パージポンプを所定時間作動させるパージポンプ作動手段と、
前記パージポンプ作動時間中に前記パージ弁を開弁すると共に、前記封鎖弁を閉弁して前記エバポ経路を所定負圧とし、前記パージポンプの作動が停止されて後、前記エバポ経路の空気漏れを診断するに必要な時間だけ、前記パージ弁の開弁状態、並びに前記封鎖弁の閉弁状態を維持するパージ弁・封鎖弁開閉手段と、
前記パージポンプ作動手段によるパージポンプの作動が停止されて後、前記パージ弁・封鎖弁開閉手段により前記パージ弁の開弁状態、並びに前記封鎖弁の閉弁状態を維持されている間において、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記エバポ経路の空気漏れを診断する第1診断手段と
を備え、
前記圧力センサは、前記診断手段による空気漏れ診断の対象となるエバポ経路を、前記パージ弁及び前記開閉弁の間の第1経路と、前記パージ弁よりキャニスタ側の第2経路とに区分けし、前記第1経路又は第2経路のいずれか一方に設けられ、
前記第1診断手段は、
前記パージ弁を閉弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられた側の経路の空気漏れを診断する一次診断手段と、
前記パージ弁を開弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記第1経路及び第2経路を含むエバポ経路全体の空気漏れを診断し、その診断結果及び前記一次診断手段の診断結果に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられていない側の経路の空気漏れを診断する二次診断手段と
を備える蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
燃料タンクで発生する蒸発燃料をベーパ通路を介してキャニスタに吸着させ、キャニスタに吸着された蒸発燃料をパージ通路を介してエンジンに供給してパージするエバポ経路を備えた蒸発燃料処理装置において、
前記パージ通路には、
パージを行う際に前記パージ通路を開くべく開弁されるパージ弁と、
前記パージ弁よりエンジン側に設けられ、パージを行う際に前記パージ通路にキャニスタからエンジンに向かう流れのパージ流を発生させるパージポンプと、
前記パージポンプよりエンジン側に設けられ、前記パージポンプにより発生されるパージ流は通過させるべく開弁するが、それとは反対方向の流れは通過させないように閉弁する開閉弁とを備え、
前記パージ弁、前記パージポンプ及び前記開閉弁が直列接続して設けられており、
キャニスタを大気に連通する大気ポートに設けられ、該大気ポートを通じてエバポ経路の空気を大気中に通流させる診断用ポンプと、
前記エバポ経路の空気圧を検出する圧力センサと、
前記パージ弁を開弁した状態で、前記診断用ポンプを所定時間作動させて前記エバポ経路を所定負圧とするパージ弁・診断用ポンプ作動手段と、
前記パージ弁・診断用ポンプ作動手段により、前記パージ弁を開弁した状態で、前記診断用ポンプを所定時間作動されている間において、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記エバポ経路の空気漏れを診断する第2診断手段と
を備え、
前記圧力センサは、前記診断手段による空気漏れ診断の対象となるエバポ経路を、前記パージ弁及び前記開閉弁の間の第1経路と、前記パージ弁よりキャニスタ側の第2経路とに区分けし、前記第1経路又は第2経路のいずれか一方に設けられ、
前記第2診断手段は、
前記パージ弁を開弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路及び第2経路を含むエバポ経路全体の空気漏れを診断する一次診断手段と、
前記パージ弁を閉弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられた側の経路の空気漏れを診断し、その診断結果及び前記一次診断手段の診断結果に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられていない側の経路の空気漏れを診断する二次診断手段と
を備える蒸発燃料処理装置の故障診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに対し、パージ流の流れの上流側にパージ弁、下流側にパージポンプを配置した場合(上記特許文献2参照)には、エバポ経路の故障診断を行う際に、パージポンプを含めて診断することができない難点がある。即ち、故障診断を行う際は、パージ弁を閉じてエバポ経路を所定の負圧にした状態で、その圧力の変化を検出する必要があるが、パージポンプはパージ弁より下流側にあって負圧下に置くことができないため、パージポンプを含めて空気漏れの診断を行うことはできない。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、パージ流の流れの上流側にパージ弁、下流側にパージポンプを配置した蒸発燃料処理装置において、パージポンプを含めてエバポ経路を負圧下に置くことができるようにすることにより、パージポンプを含めてエバポ経路の故障診断を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における第1発明は、燃料タンクで発生する蒸発燃料をベーパ通路を介してキャニスタに吸着させ、キャニスタに吸着された蒸発燃料をパージ通路を介してエンジンに供給してパージするエバポ経路を備えた蒸発燃料処理装置において、前記パージ通路には、パージを行う際に前記パージ通路を開くべく開弁されるパージ弁と、前記パージ弁よりエンジン側に設けられ、パージを行う際に前記パージ通路にキャニスタからエンジンに向かう流れのパージ流を発生させるパージポンプと、前記パージポンプよりエンジン側に設けられ、前記パージポンプにより発生されるパージ流は通過させるべく開弁するが、それとは反対方向の流れは通過させないように閉弁する開閉弁とを備え、前記パージ弁、前記パージポンプ及び前記開閉弁が直列接続して設けられている。
【0007】
本発明における第2発明は、上記第1発明において、前記開閉弁は逆止弁である。
【0008】
第2発明において、開閉弁は逆止弁、電磁開閉弁等とすることができる。
【0009】
本発明における第3発明は、上記第1又は第2発明において、エンジンは、エンジンへの給気を強制的に行うべく給気通路に設けられた過給機を備え、前記パージ通路は、前記パージポンプよりエンジン側で、エンジンへの給気の流れでスロットル弁の下流側に連通される第1通路と、エンジンへの給気の流れで過給機の上流側に連通される第2通路とに分岐され、前記開閉弁は、前記第1通路と第2通路とにそれぞれ設けられている。
【0010】
本発明における第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかの蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、キャニスタを大気に連通する大気ポートを封鎖して、前記エバポ経路を気密状態とするべく閉弁される封鎖弁と、前記エバポ経路の空気圧を検出する圧力センサと、前記エバポ経路を、所定負圧にすべくエンジン停止中に前記パージポンプを所定時間作動させるパージポンプ作動手段と、前記パージポンプ作動時間中に前記パージ弁を開弁すると共に、前記封鎖弁を閉弁して前記エバポ系を所定負圧とし、前記パージポンプの作動が停止されて後、前記エバポ経路の空気漏れを診断するに必要な時間だけ、前記パージ弁の開弁状態、並びに前記封鎖弁の閉弁状態を維持するパージ弁・封鎖弁開閉手段と、前記パージポンプ作動手段によるパージポンプの作動が停止されて後、前記パージ弁・封鎖弁開閉手段により前記パージ弁の開弁状態、並びに前記封鎖弁の閉弁状態を維持されている間において、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記エバポ経路の空気漏れを診断する第1診断手段とを備える。
【0011】
本発明における第5発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかの蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、キャニスタを大気に連通する大気ポートに設けられ、該大気ポートを通じてエバポ経路の空気を大気中に通流させる診断用ポンプと、前記エバポ経路の空気圧を検出する圧力センサと、前記パージ弁を開弁した状態で、前記診断用ポンプを所定時間作動させて前記エバポ経路を所定負圧とするパージ弁・診断用ポンプ作動手段と、前記パージ弁・診断用ポンプ作動手段により、前記パージ弁を開弁した状態で、前記診断用ポンプを所定時間作動されている間において、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記エバポ経路の空気漏れを診断する第2診断手段とを備える。
【0012】
本発明における第6発明は、上記第4又は第5発明の蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、前記第1又は第2診断手段は、空気漏れ診断の対象となるエバポ経路を、前記パージ弁及び前記開閉弁の間の第1経路と、前記パージ弁よりキャニスタ側の第2経路とに区分けし、前記第1経路と第2経路とをそれぞれ区別して診断する。
【0013】
本発明における第7発明は、上記第4発明の蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、前記圧力センサは、前記診断手段による空気漏れ診断の対象となるエバポ経路を、前記パージ弁及び前記開閉弁の間の第1経路と、前記パージ弁よりキャニスタ側の第2経路とに区分けし、前記第1経路又は第2経路のいずれか一方に設けられ、前記第1診断手段は、前記パージ弁を閉弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられた側の経路の空気漏れを診断する一次診断手段と、前記パージ弁を開弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて前記第1経路及び第2経路を含むエバポ経路全体の空気漏れを診断し、その診断結果及び前記一次診断手段の診断結果に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられていない側の経路の空気漏れを診断する二次診断手段とを備える。
【0014】
本発明における第8発明は、上記第5発明の蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、前記圧力センサは、前記診断手段による空気漏れ診断の対象となるエバポ経路を、前記パージ弁及び前記開閉弁の間の第1経路と、前記パージ弁よりキャニスタ側の第2経路とに区分けし、前記第1経路又は第2経路のいずれか一方に設けられ、前記第2診断手段は、前記パージ弁を開弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路及び第2経路を含むエバポ経路全体の空気漏れを診断する一次診断手段と、前記パージ弁を閉弁した状態で、前記圧力センサによって検出される圧力の変化に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられた側の経路の空気漏れを診断し、その診断結果及び前記一次診断手段の診断結果に基づいて、前記第1経路又は第2経路のうち、前記圧力センサが設けられていない側の経路の空気漏れを診断する二次診断手段とを備える。
【0015】
本発明における第9発明は、上記第4乃至8発明のいずれかの蒸発燃料処理装置の故障診断装置において、前記圧力センサは、前記キャニスタに接続された前記燃料タンク内の空間圧力を検出するように設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パージポンプのエンジン側に、エンジン側からエバポ経路への空気流を遮断する開閉弁が設けられているため、パージポンプを含めてエバポ経路を必要に応じて負圧下に維持することができる。そのため、必要時にパージポンプを含めてエバポ経路の故障診断を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1〜3は本発明の第1実施形態を示す。この実施形態は、車両のエンジンシステム10に付加された蒸発燃料処理装置20である。
【0019】
図1において、エンジンシステム10は、周知のものであり、エンジン本体(以下、単にエンジンという)11に対して給気管12、スロットル弁13及びフィルタ14を介して空気が供給され、燃料タンク15からの燃料が燃料噴射弁(不図示)によってエンジン11に供給されている。
【0020】
蒸発燃料処理装置20は、燃料タンク15内で発生する蒸発燃料をベーパ通路28を介してキャニスタ21に吸着し、キャニスタ21に吸着した蒸発燃料をパージ通路29を介してエンジン11の給気管12に供給してパージしている。パージ通路29には、パージ弁22、パージポンプ23及び逆止弁(本発明の開閉弁に相当)24が互いに直列接続して挿入されている。パージ弁22は、キャニスタ21のパージを行う際にパージ通路29を開くべく開弁されるものである。また、パージポンプ23は、パージ弁22よりエンジン11側に設けられ、パージを行う際にパージ通路29にキャニスタ21からエンジン11に向かう流れのパージ流を発生させるものである。更に、逆止弁24は、パージポンプ23よりエンジン11側に設けられ、パージポンプ23により発生されるパージ流は通過させるべく開弁するが、それとは反対方向の流れは通過させないように閉弁するものである。なお、逆止弁24は、同様に機能するように開閉制御される電磁開閉弁に代えてもよい。
【0021】
燃料給油時に発生する蒸発燃料は、ベーパ通路28を通じてキャニスタ21に吸着される。キャニスタ21にて蒸発燃料が吸着された後の空気は大気ポート21aを通じて大気に排気されている。キャニスタ21に吸着された蒸発燃料は、エンジン11稼動中にパージ弁22が開弁され、且つパージポンプ23が作動されると、パージ流が発生され、パージ通路29を通じてエンジン11に供給されてパージされる。このとき、パージ流は逆止弁24を通過するが、逆止弁24の圧力損失は、パージ弁22のそれより充分小さいため、逆止弁24を設けたことによるパージ機能への影響は軽微である。
【0022】
第1実施形態によれば、パージポンプ23のエンジン11側に、エンジン11側からエバポ経路への空気流を遮断する逆止弁24が設けられているため、パージポンプ23を含めてエバポ経路を必要に応じて負圧下に維持することができる。そのため、必要時にパージポンプ23を含めてエバポ経路の故障診断を行うことができる。しかも、パージ流の流れの上流側にパージ弁22、下流側にパージポンプ23を配置しているため、パージ中、パージ弁22の上流側は正圧とならず、正圧となる場合の課題であるパージ弁22が閉弁された瞬間、パージ通路29を蒸発燃料が逆流する不具合を解消することができる。
【0023】
図2は、
図1にて説明した蒸発燃料処理装置20の故障診断を第1方式で行うためのシステムを示し、キャニスタ21の大気ポート21aには封鎖弁25が接続され、燃料タンク15には圧力センサ26が設けられている。封鎖弁25は、封鎖弁25を閉弁して大気ポート21aを封鎖することにより、ベーパ通路28及びパージ通路29によって繋がったエバポ経路を気密状態とするものである。また、圧力センサ26は、燃料タンク15内の空間部の空気圧を検出することによってエバポ経路の圧力を検出している。
【0024】
図3は、蒸発燃料処理装置20を含むエンジンシステム10の制御回路16を示す。ここでは、本発明と直接関係しない部分の図示を省略している。エンジン制御回路16の基本構成は、エンジンシステム10全体の動作を制御する周知のものであり、エンジンの燃料噴射弁(不図示)の開弁制御や点火時期制御等を行い、パージポンプ23の作動制御、並びにパージ弁22及び封鎖弁25の開弁制御も行っている。エンジン制御回路16には、周知のとおり、スロットル弁開弁量センサ13a、給気管圧力センサ12a、圧力センサ26等が接続され、それぞれから検出信号を受けている。
【0025】
図4は、エンジン制御回路16内のコンピュータで行われる、本発明において特徴的な故障診断処理ルーチンを示している。
図4では、故障診断処理ルーチンを、「圧力印加処理」、「判定処理」及び「終了処理」の3段階に分けて示している。まず、「圧力印加処理」のステップS1では故障診断処理を実行する条件が成立しているか否か判定される。この条件は、エンジン11が停止中で、且つ燃料タンク15への給油が行われていない等であり、この条件が満たされると、ステップS1は肯定判断され、ステップS2において封鎖弁25が閉弁される。そして、次のステップS3ではパージ弁22が開弁され、ステップS4においてパージポンプ23が作動される。以上の処理の結果、
図5のタイミングT1で示すように圧力センサ26によって検出されるエバポ経路の圧力が大気圧から低下し始める。
【0026】
次のステップS5では、所定時間TH1を経過したか否かが判定され、
図5のタイミングT2の時点で所定時間TH1が経過すると、ステップS5は肯定判断され、ステップS6にてパージポンプ23の作動が停止され、次のステップS7では圧力センサ26によって検出された圧力がメモリ内に保持される。
【0027】
次の「判定処理」の段階におけるステップS8では、
図5のタイミングT2の時点から更に所定時間TH2を経過したか否かが判定される。
図5のタイミングT3の時点に達すると、ステップS8は肯定判断され、ステップS9において、その時点の圧力センサ26の検出圧力とステップS7にて保持された圧力との差が所定値以上か否か判定される。
図5に示すように、エバポ経路中に孔があって空気漏れがあると、破線で示すように、タイミングT2の時点でも実線で示す「孔なし」の場合に比べて圧力は大気圧に近い側となっているが、タイミングT3の時点では略大気圧となっている。そのため、「孔あり」の場合は、タイミングT2の時点で保持された圧力に対してタイミングT3の時点の圧力は大きく差があり、ステップS9は肯定判断され、ステップS10にて「孔あり」の異常判定がされる。
【0028】
エバポ経路中に孔がなく空気漏れがない場合は、
図5に実線で示すように、所定時間TH2の間にも圧力センサ26の検出圧力は殆ど変化せず、タイミングT2の時点で保持された圧力に対してタイミングT3の時点の圧力差は所定値より小さく、ステップS9は否定判断され、ステップS11にて「孔なし」の正常判定がされる。
【0029】
「終了処理」のステップS12では、封鎖弁25が開弁され、ステップS13でパージ弁22が閉弁されて故障診断処理ルーチンの処理を終了する。なお、ステップS1において故障診断の条件が成立しておらず、ステップS1が否定判断されると、ステップS2以降の処理はスキップして、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。
【0030】
以上のエバポ経路の第1方式による故障診断では、故障診断処理ルーチンの「圧力印加処理」によってエバポ経路が負圧とされると、逆止弁24は閉弁されて、パージ通路29のうちパージポンプ23を含む領域まで負圧を保持される領域とされるため、パージポンプ23を含むエバポ経路の故障診断が可能となる。
【0031】
図6は、
図1にて説明した蒸発燃料処理装置20の故障診断を第2方式で行うためのシステムを示し、
図2に示した第1方式に対して特徴とする点は、
図2における封鎖弁25に代えて診断用ポンプ27をキャニスタ21の大気ポート21aに接続している。診断用ポンプ27は、大気ポート21aを通じてエバポ経路の空気を大気中に通流させる。このように第2方式では第1方式における封鎖弁25が診断用ポンプ27に置換されているため、
図7に示す制御回路でも、エンジン制御回路16に診断用ポンプ27が接続されている。
【0032】
図8は、第2方式の故障診断処理ルーチンを示している。
図8でも、
図4の第1方式の場合と同様、故障診断処理ルーチンを、「圧力印加処理」、「判定処理」及び「終了処理」の3段階に分けて示している。まず、「圧力印加処理」のステップS1では、
図4と同様、故障診断処理を実行する条件が成立しているか否か判定される。この条件が満たされると、ステップS1は肯定判断され、ステップS21においてパージ弁22が開弁され、ステップS22において診断用ポンプ27が作動される。このとき、パージポンプ23は作動されない。
【0033】
以上の処理の結果、
図9のタイミングT1で示すように圧力センサ26によって検出されるエバポ経路の圧力が大気圧から低下し始める。なぜなら、このとき、診断用ポンプ27が作動され、パージポンプ23は作動されないため、逆止弁24より診断用ポンプ27側のエバポ経路が負圧とされる。
【0034】
次の「判定処理」の段階におけるステップS8では、診断用ポンプ27が作動開始されてから所定時間TH3を経過したか否かが判定される。所定時間TH3を経過すると、ステップS8は肯定判断され、ステップS23において、圧力センサ26によって検出される圧力が判定値以下か否か判定される。エバポ経路に孔はなく空気漏れがない場合は、
図9のタイミングT2の時点で実線で示すように所定時間TH3を経過する前の時点で、圧力センサ26の検出圧力が判定値以下となる。そのため、所定時間TH3を経過したタイミングT3の時点で、ステップS23は肯定判断され、ステップS24において「孔なし」の正常判定がされる。
【0035】
エバポ経路中に孔があって空気漏れがあると、
図9に破線で示すように、所定時間TH3を経過したタイミングT3の時点でも、圧力センサ26の検出圧力は所定値に達することはなく、ステップS23は否定判断され、ステップS25において「孔あり」の異常判定がされる。
【0036】
「終了処理」のステップS26では、診断用ポンプ27の作動が停止され、ステップS27でパージ弁22が閉弁され、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。なお、ステップS1において故障診断の条件が成立しておらず、ステップS1が否定判断されると、ステップS21以降の処理はスキップして、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。
【0037】
以上のエバポ経路の第2方式による故障診断では、故障診断処理ルーチンの「圧力印加処理」によってエバポ経路が負圧とされると、逆止弁24は閉弁されて、パージ通路29のうちパージポンプ23を含む領域まで負圧を保持される領域とされるため、パージポンプ23を含むエバポ経路の故障診断が可能となる。
【0038】
図10は、第3方式の故障診断処理ルーチンを示している。第3方式では、
図2のように、エバポ経路を、パージ弁22及び逆止弁24の間の第1経路20aと、パージ弁22よりキャニスタ21側の第2経路20bとに区分けし、第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断可能としている。
【0039】
図10のように、故障診断処理ルーチンを
図4の第1方式の場合と同様、「圧力印加処理」、「第2経路の判定処理」、「第1経路の判定処理」及び「終了処理」の4段階に分けて示している。まず、「圧力印加処理」では、
図4の第1方式の場合と全く同様の処理で、
図11で示すように、タイミングT1の時点で、封鎖弁25が閉弁されると共に、パージ弁22が開弁され、その状態で、パージポンプ23が作動される。そして、タイミングT2の時点で、圧力センサ26の検出圧力がメモリ内に保持される。
【0040】
次の「第2経路の判定処理」のステップS31では、パージ弁22が閉弁される。これによりエバポ経路の第1経路20aと第2経路20bとが分離され、圧力センサ26が設けられた第2経路20bの故障診断が行われる状態とされる。次のステップS8では、所定時間TH2が経過したか否か判定される。
図11のタイミングT3の時点に達すると、ステップS8は肯定判断され、ステップS9において、その時点の圧力センサ26の検出圧力とステップS7にて保持された圧力との差が所定値以上か否か判定される。
図11に示すように、エバポ経路中の第2経路20bに孔があって空気漏れがあると、破線で示すように、タイミングT3の時点で圧力は略大気圧となっている。そのため、ステップS32において第2経路20bに「孔あり」の異常判定がされる。
【0041】
第2経路20bに孔がなく空気漏れがない場合は、所定時間TH2の間にも圧力センサ26の検出圧力は殆ど変化せず、タイミングT2の時点で保持された圧力に対してタイミングT3の時点の圧力差は所定値より小さく、ステップS9は否定判断され、ステップS33にて、その時点に圧力センサ26で検出された圧力がメモリ内に保持される。
【0042】
次の「第1経路20aの判定処理」のステップS34では、パージ弁22が開弁される。これによりエバポ経路の第1経路20aと第2経路20bとが一つの経路として繋がり、エバポ経路全体の故障診断が行われる状態とされる。但し、上述の「第2経路20bの判定処理」のステップS9において、既に第2経路20bは「孔なし」と判定されているので、ここでは、第1経路20aの故障診断が行われることになる。
【0043】
次のステップS35では、所定時間TH4が経過したか否か判定される。
図11のタイミングT4の時点に達すると、ステップS35は肯定判断され、ステップS36において、その時点の圧力センサ26の検出圧力とステップS33にて保持された圧力との差が所定値以上か否か判定される。
図11に示すように、エバポ経路中の第1経路20aに孔があって空気漏れがあると、破線で示すように、タイミングT4の時点で圧力は略大気圧となっている。そのため、第1経路20aに「孔あり」の場合は、タイミングT3の時点で保持された圧力に対してタイミングT4の時点の圧力は大きく差があり、ステップS36は肯定判断され、ステップS37にて第1経路20aに「孔あり」の異常判定がされる。
【0044】
第1経路20aに孔がなく空気漏れがない場合は、所定時間TH4の間にも圧力センサ26の検出圧力は殆ど変化せず、タイミングT3の時点で保持された圧力に対してタイミングT4の時点の圧力差は所定値より小さく、ステップS36は否定判断され、ステップS38において「孔なし」の正常判定がされる。
【0045】
「終了処理」では、
図4で示す第1方式と全く同様に処理され、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。なお、ステップS1において故障診断の条件が成立しておらず、ステップS1が否定判断されると、ステップS2以降の処理はスキップして、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。また、ステップS32の処理が終了した後は、「終了処理」によって故障診断処理ルーチンの処理を終了する。
【0046】
以上のエバポ経路の第3方式による故障診断では、エバポ経路を、パージ弁22及び逆止弁24の間の第1経路20aと、パージ弁22よりキャニスタ21側の第2経路20bとに区分けし、第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断することができる。また、第2経路20bのみの診断結果と、第1経路20a及び第2経路20bを併せたエバポ経路全体の診断結果とを組み合わせることにより、圧力センサ26一つのみで第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断することができる。しかも、圧力センサ26として燃料タンク15の空間部の圧力を検出するセンサを使用しているため、既存のセンサを利用することができ、新たなセンサを設けることによるコストアップやシステムの複雑化を回避することができる。
【0047】
図12は、第4方式の故障診断処理ルーチンを示している。第4方式では、上述の第3方式の場合と同様、
図6のように、エバポ経路を、パージ弁22及び逆止弁24の間の第1経路20aと、パージ弁22よりキャニスタ21側の第2経路20bとに区分けし、第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断可能としている。
【0048】
図12のように、故障診断処理ルーチンを
図10の第3方式の場合と同様、「圧力印加処理」、「正常判定処理」、「異常判定処理」及び「終了処理」の4段階に分けて示している。まず、「圧力印加処理」では、
図8の第2方式の場合と全く同様の処理で、
図13で示すように、タイミングT1の時点で、パージ弁22が開弁され、その状態で、診断用ポンプ27が作動される。
【0049】
次の「正常判定処理」では、
図8の第2方式の「判定処理」と概ね同様の処理で、
図13で示すように、所定時間TH3が経過したタイミングT3の時点で、圧力センサ26の検出圧力が判定値以下となっていれば「孔なし」の正常判定がされる。タイミングT3の時点で、圧力センサ26の検出圧力が判定値以下となっていなければ、ステップS23は否定判断され、「異常判定処理」に進む。
図8の第2方式の場合は、ステップS23が否定判断されると、直ちに「孔あり」の異常判定がされるが、第4方式の場合は、「異常判定処理」にて第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを把握することになる。
【0050】
「異常判定処理」では、ステップS42においてパージ弁22が閉弁される。これによりエバポ経路の第1経路20aと第2経路20bとが分離され、圧力センサ26が設けられた第2経路20bの故障診断が行われる状態とされる。次のステップS43では、所定時間TH5が経過したか否か判定される。
図13のタイミングT4の時点に達すると、ステップS43は肯定判断され、ステップS44において、圧力センサ26の検出圧力が判定値以下か否か判定される。第2経路20bに孔はなく空気漏れがない場合は、
図13のタイミングT4の時点で実線で示すように、圧力センサ26の検出圧力が判定値以下となる。そのため、タイミングT4の時点で、ステップS44は肯定判断され、ステップS45において第1経路20aに「孔あり」の異常判定がされる。即ち、「異常判定処理」が行われる前の「正常判定処理」の時点で、エバポ経路は正常でないとの判断がなされていたので、第2経路20bに孔はなく空気漏れがないと判定されたのを受けて、第1経路20aに異常があると判断される。
【0051】
第2経路20b中に孔があって空気漏れがあると、
図13に破線で示すように、タイミングT4の時点でも、圧力センサ26の検出圧力は所定値に達することはなく、ステップS44は否定判断され、ステップS46において第2経路20bに「孔あり」の異常判定がされる。
【0052】
「終了処理」では、
図8で示す第2方式と全く同様に処理され、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。なお、ステップS1において故障診断の条件が成立しておらず、ステップS1が否定判断されると、ステップS21以降の処理はスキップして、故障診断処理ルーチンの処理を終了する。また、ステップS24の処理が終了した後は、「終了処理」によって故障診断処理ルーチンの処理を終了する。
【0053】
以上のエバポ経路の第4方式による故障診断では、エバポ経路を、パージ弁22及び逆止弁24の間の第1経路20aと、パージ弁22よりキャニスタ21側の第2経路20bとに区分けし、第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断することができる。また、第1経路20a及び第2経路20bを併せたエバポ経路全体の診断結果と、第2経路20bのみの診断結果とを組み合わせることにより、圧力センサ26一つのみで第1経路20aと第2経路20bのどちらに空気漏れの故障があるかを区別して診断することができる。しかも、圧力センサ26として燃料タンク15の空間部の圧力を検出するセンサを使用しているため、既存のセンサを利用することができ、新たなセンサを設けることによるコストアップやシステムの複雑化を回避することができる。
【0054】
第1実施形態の故障診断装置の第1〜第4方式において、
図4、10におけるステップS4〜ステップS6の処理は、本発明のパージポンプ作動手段に相当し、ステップS2、ステップS3、ステップS8の処理は、本発明のパージ弁・封鎖弁開閉手段に相当し、ステップS9〜ステップS11の処理、並びにステップS9、ステップS32〜ステップS38の処理は、本発明の第1診断手段に相当する。また、
図8、12におけるステップS21、ステップS22、ステップS8の処理は、本発明のパージ弁・診断用ポンプ作動手段に相当し、ステップS23〜ステップS25の処理、並びにステップS23、ステップS24、ステップS42〜ステップS46の処理は、本発明の第2診断手段に相当する。また、
図10におけるステップS9、ステップS32の処理は、本発明の第7発明における一次診断手段に相当し、ステップS9、ステップS32〜ステップS37の処理は、本発明の第7発明における二次診断手段に相当する。更に、
図12におけるステップS23の処理は、本発明の第8発明における一次診断手段に相当し、ステップS23、ステップS42〜ステップS46の処理は、本発明の第8発明における二次診断手段に相当する。
【0055】
<第2実施形態>
図14は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、上述の第1実施形態に対してエンジンシステム10に過給機17を備える点を特徴とする。そのため、パージ通路29は、パージポンプ23よりエンジン11側で、エンジン11への給気の流れでスロットル弁13の下流側に連通される第1通路29aと、エンジン11への給気の流れで過給機17の上流側に連通される第2通路29bとに分岐されている。そして、第1通路29aと第2通路29bとには、それぞれ逆止弁24a、24bが設けられている。その他の構成は両実施形態とも同一であり、再度の説明は省略する。
【0056】
燃料給油時に発生する蒸発燃料は、ベーパ通路28を通じてキャニスタ21に吸着される。キャニスタ21に吸着された蒸発燃料は、エンジン11稼動中にパージ弁22が開弁され、且つパージポンプ23が作動されることによりパージ流が発生され、パージ通路29を通じてエンジン11に供給されてパージされる。このとき、エンジン11に対し過給機17により給気が行われていると、主に第2通路29bを通じてパージ流は流れ、過給機17により給気が行われていない場合は、主に第2通路29aを通じてパージ流は流れる。パージ流が第1通路29a又は第2通路29bを流れるとき、それぞれ逆止弁24a又は逆止弁24bを通過するが、逆止弁24a、24bの圧力損失は、パージ弁22のそれより充分小さいため、逆止弁24a、24bを設けたことによるパージ機能への影響は軽微である。
【0057】
第2実施形態の蒸発燃料処理装置20の故障診断に際しては、第1通路29a及び第2通路29bに逆止弁24a、24bが設けられているため、上述した第1〜第4方式の各方式でパージポンプ23を含めたエバポ経路の故障診断を行うことができる。
【0058】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、車両用のエンジンシステムに本発明を適用したが、本発明は車両用に限定されない。車両用のエンジンシステムの場合、エンジンとモータとを併用したハイブリッド車でもよい。