(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のボトルに代表される飲料用容器(以下、単に容器ということがある)に飲料を充填するにあたって、容器の内外が殺菌される。また、ボトル成形前のプリフォームの段階で殺菌されることもある。
この容器成形前及び容器成形後に殺菌するのに、過酸化水素や次亜塩素酸ソーダ等の殺菌用薬剤溶液を容器の内部に注入した後、その薬剤溶液を排出し、さらに、容器の内側を水で洗浄する作業が行われていた。
【0003】
しかし、薬剤溶液による殺菌処理は、環境負荷が大きく、薬剤コストや廃液処理コストも高いという問題があるために、いわゆる乾式の殺菌方法が提案されている。乾式の殺菌方法としては、紫外線を照射する方法(例えば、特許文献1)及び電子線を照射する方法が知られている。ところが、電子線を照射する方法は、電子線照射により二次的に生成するX線を外部に漏洩させないための遮蔽構造が大きくかつ重い。また、電子線を容器に照射する殺菌装置は、電子線照射によってオゾンが生じるので、それを排気する装置が必要であり、このオゾンの回収装置も手伝って、大がかりなものになる傾向がある。これに比べて、紫外線を照射する方法は、殺菌装置の構成が簡易である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紫外線照射による容器の殺菌において、紫外線を容器にムラなく照射することが容易でない。特許文献1に記載されるように、光源で発光した紫外線を容器に導くのに線状又は棒状の導光体を用いることができるが、紫外線は導光体の先端から出射されるので、容器の内部を殺菌する場合に、容器の底には紫外線を十分に照射できるものの、側面に殺菌に足りる紫外線を照射するのは難しい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、容器の底に加えて側面にもムラなく紫外線を照射することのできる、容器の殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもとになされた本発明の容器の殺菌装置は、電力の供給を受けて紫外線を発光する光源と、光源で発光された紫外線を導く導光体と、導光体の先端に設けられる光分配器と、を備え、光分配器は、導光体で導かれてきた紫外線の一部を、導光体で導かれてきた向きで出射させる第一光路と、導光体で導かれてきた紫外線の他の一部を、導光体で導かれてきた向きと交差する向きで出射させる第二光路と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の殺菌装置において、光分配器を実現する形態は少なくとも三つある。
一つ目の形態は、第一光路が、紫外線の一部が直進して透過する光学部材により構成され、第二光路が、紫外線の他の一部を反射させる反射面を備える光学部材と、反射面で反射されて光学部材から出射された紫外線を、交差する向きに反射させる反射体と、により構成される。
【0008】
二つ目の形態は、第一光路が、紫外線の一部が直進して透過する第一光学部材により構成され、第二光路が、紫外線の他の一部を反射させる反射面を周囲に備える第一光学部材と、第一光学部材の周囲を取り囲み、反射面で反射された紫外線を、交差する向きに導きかつ出射させる第二光学部材と、により構成される。そしてこの二つ目の形態は、第一光学部材の反射面は、第一光学部材の屈折率が第二光学部材の屈折率よりも大きいことにより設けられるものとされる。
【0009】
三つ目の形態は、第一光路が、紫外線の一部が直進して透過する第三光学部材により構成され、第二光路が、紫外線の他の一部を反射させる、第三光学部材に形成される光沢を有する反射面により構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導光体で導かれてきた紫外線の一部を、導光体で導かれてきた向きで出射させる第一光路と、導光体で導かれてきた紫外線の他の一部を、導光体で導かれてきた向きと交差する向きで出射させる第二光路と、を備える。したがって、本発明によれば、第一光路から出射された紫外線により容器の底を殺菌し、第二光路から出射された紫外線により容器の側面を殺菌できるので、容器にムラなく紫外線を照射することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一実施形態〕
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における容器の殺菌装置1の最小限の構成要素を示している。
殺菌装置1は、電源2と、電源2から電力の供給を受けて紫外線UVを発光する光源4と、光源4で発光された紫外線UVを導く導光体6と、導光体6上に設けられる反射板8と、導光体6の先端に設けられる光学部材としてのプリズム10と、を備えている。殺菌装置1は、PETボトルの前駆体であるプリフォーム40の内部を紫外線UVにより殺菌する装置である。プリズム10は、殺菌処理時に、導光体6を操作することにより、把持具3で支持されたプリフォーム40の開口41を通過して、プリフォーム40の内部に挿入され、往復進退される。プリズム10は、プリフォーム40の内部を進退しながら、導光体6を導かれてきた紫外線UVを、プリフォーム40の底面43及び側面45に向けて照射する。プリズム10は、底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて、紫外線UVを照射するために、以下に説明する構成を備えている。なお、底面43及び側面45は、プリフォーム40の内側の面をいう。
【0013】
本実施形態において、光源4としては、低圧〜高圧の各種UVランプを用いることができる。また、導光体6としては、例えば、光ファイバ、あるいは、光ファイバと石英カラスの組み合わせなど、任意である。
【0014】
プリズム10は、
図2(a)に示すように、導光体6の先端に位置する出射面7に接しており、かつ、導光体6の先端に固定、例えば接着により固定されている。導光体6の出射面7は、導光体6に導かれる紫外線UVの光軸(
図2(b)参照)に対して直交するように形成されている。
プリズム10は、ダイヤモンドに適用されているブリリアント カット、特にラウンド ブリリアント カットが施されている部材であり、石英(SiO
2)ガラスや、蛍石(CaF
2)ガラスから構成することができる。
プリズム10は、ガードル(girdle)11を境界にしてクラウン(crown)12とパビリオン(pavilion)15を備える。クラウン12の頂部には円形のテーブル(table)面13が、また、テーブル面13と対向するパビリオン15の頂部には円形のキューレット(culet)面16が形成されている。クラウン12は、テーブル面13を除く概ねテーパ状の第一傾斜面14を備え、また、パビリオン15は、キューレット面16を除くテーパ状の第二傾斜面17を備えている。ここで、テーブル面13は、導光体6よりも径が大きく、一方、キューレット面16は、導光体6よりも径が小さく設定されている。なお、クラウン12とパビリオン15の表面にもカットが形成されているが、ここでの具体的な記載は省略する。
【0015】
反射板8は、プリズム10よりも導光体6の手前(紫外線UVのすすむ向きを基準にして手前)に設けられている。反射板8とプリズム10により、本発明の分光器が構成される。
反射板8は、
図2(b)において、プリズム10のテーブル面13から出射される紫外線UVを、反射面9で受光するとともに、周囲に放射状に反射させる。この反射板8は、円板状の形態をなしているが、プリズム10からの紫外線UVを受光して、周囲に反射させる機能を有する限り、その形態は限定されない。例えば、反射面9がテーパ状をなしていたり、球面をなしていたりしてもよい。
【0016】
導光体6からプリズム10に向けて紫外線UVが照射されると、
図2(b)を参照して以下説明するように、紫外線UVの反射及び出射が生じる。
導光体6を進んできた紫外線UVは、出射面7から出射されると同時にプリズム10のテーブル面13に入射される。テーブル面13は紫外線UVの光軸に対して直交するので、屈折することなくそのまま真直ぐにプリズム10に入射され、クラウン12及びガードル11を順に通過して、パビリオン15に到る。
【0017】
パビリオン15を進む紫外線UVは、中央寄りの一部はキューレット面16に達するが、キューレット面16もパビリオン15を進む紫外線UVの光軸に対して直交するので、キューレット面16を通過して真直ぐに進む。ただし、パビリオン15を進む紫外線UVの中で、外周寄りの一部(他の一部)はキューレット面16よりも外側の第二傾斜面17に達し、ここでは全反射されて向きを変えて、パビリオン15及びクラウン12と進み、テーブル面13又は第一傾斜面14から外部に向けて出射される。テーブル面13又は第一傾斜面14から出射された紫外線UVは、反射板8の反射面9に達し、ここで周囲に放射状に反射される。
【0018】
以上説明したように、本実施形態の殺菌装置1は、プリズム10に、導光体6から導かれてきた紫外線UVの一部をそのままの向きで真直ぐ通過させる第一光路と、導光体6から導かれてきた紫外線UVの他の一部を交差する向きに変えて周囲に放射させる第二光路と、を備えている。したがって、導光体6とプリズム10の単一の組み合わせだけで、プリフォーム40の底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて紫外線UVをムラなく照射できる。
【0019】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態に係るプリズム20を、
図3を参照して説明する。プリズム20も、導光体6の先端に設けられるものであるが、第一実施形態が備える反射板8を用いることなく、プリフォーム40の底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて紫外線UVをムラなく照射できる構成を備えている。
【0020】
プリズム20は、各々が光学部材である第一部材21と第二部材26の組み合わせからなる分光器を備え、
図3(a),(b)に示すように、導光体6の先端に第一部材21が接して固定され、第二部材26が第一部材21に接して固定されている。第一部材21と第二部材26は同軸上に配置されている。ここで、第一部材21を構成する材料の屈折率をn
21、第二部材26を構成する材料の屈折率をn
25とすると、n
21>n
25が成り立つ。第一部材21としては、例えば石英ガラスが、また、第二部材26としては、例えば蛍石ガラスが用いられる。なお、両者の屈折率(250nm付近)n
21,n
25は、n
21=約1.50, n
25=約1.46である。
【0021】
第一部材21は、中高な円筒状の形態を有しており、導光体6の出射面7に対向する入射面22と、入射面22から下向きに末広がりの第一傾斜面23と、第一傾斜面23の下端から下向きに窄まる第二出射面24と、下端に開口し、第二部材26を収容する収容空隙25と、を備える。
第二部材26は、円錐台状の形態を有しており、上底に対応する入射面27と、下底に対応し、入射面27に対向する第一出射面28と、入射面27と第一出射面28を繋ぐ反射面29と、を備える。第二部材26は、第一部材21の収容空隙25の中に隙間なく収容される。
【0022】
ここで、第一部材21の入射面22は、紫外線UVの光軸に直交しているとともに、第二部材26の入射面27及び第一出射面28が、紫外線UVの光軸に直交している。また、第二部材26の入射面27は、導光体6の出射面7よりも径が小さく設定されている。
【0023】
プリズム20における紫外線UVの反射及び出射を、
図3(b)を参照して説明する。
導光体6を進んできた紫外線UVは、出射面7から出射されると同時にプリズム20(第一部材21)の入射面22に入射される。入射面22は紫外線UVの光軸に対して直交するので、屈折することなくそのまま真直ぐに進み、第一部材21を通過して、第二部材26に到る。
【0024】
第二部材26に到った紫外線UVの中で、中央寄りの一部は、入射面27が光軸に対して直交するので、そのまま真直ぐに第二部材26を進み、第一出射面28から外部に向けて出射される。ここから出射された紫外線UVは専らプリフォーム40の底面43を殺菌するのに用いられる。しかし、第二部材26に到った紫外線UVの中で、外周寄りの一部は入射面27よりも外側の反射面29に達し、ここで全反射されて向きを変えながら第一部材21を進み、第二出射面24から外部に向けて、放射状に出射される。ここから出射された紫外線UVは専らプリフォーム40の側面45を殺菌するのに用いられる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のプリズム20は、導光体6から導かれてきた紫外線UVの一部をそのままの向きで真直ぐ通過させる第一光路と、導光体6から導かれてきた紫外線UVの他の一部を交差する向きに変えて周囲に放射させる第二光路と、を備えている。したがって、導光体6とプリズム20の組み合わせだけで、プリフォーム40の底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて紫外線UVをムラなく照射できる。しかも、本実施形態は、第一実施形態のように、反射板8を設ける必要がない。
【0026】
第二実施形態において、
図4に示すように、第二部材26の反射面29に曲率を持たせることにより、第一部材21から放射状に出射される紫外線UVを、導光体6に対して直交する向きに出射させることができる。
【0027】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係るプリズム30を、
図5を参照して説明する。プリズム30も、導光体6の先端に設けられるものであるが、第一実施形態が備えていた反射板8を用いることなく、プリフォーム40の底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて紫外線UVをムラなく照射できる構成を備えている。
【0028】
光学部材であるプリズム30は、
図5(a)に示すように、円錐台状の形態を有しており、上底に対応する入射面31と、下底に対応し、入射面31に対向する出射面33と、入射面31と出射面33を繋ぐ反射面35と、を備える。反射面35は、例えば金属膜を形成することにより構成することができる。プリズム30は、導光体6と同軸上に設けられ、入射面31が導光体6の出射面7と接合されている。プリズム30の入射面31は、導光体6の出射面7よりも径が小さく設定されており、出射面33は、導光体6の出射面7よりも径が大きく設定されている。
【0029】
プリズム30における紫外線UVの反射及び出射を、
図5(b)を参照して説明する。
導光体6を進んできた紫外線UVは、出射面7から出射されると同時にプリズム30の入射面31に入射される。入射面31は紫外線UVの光軸に対して直交するので、屈折することなくそのまま真直ぐに進み、プリズム30を通過して、出射面33に到る。この紫外線UVは、出射面33が光軸に対して直交するので、そのまま真直ぐに進み、外部に向けて出射される。ここから出射された紫外線UVは専らプリフォーム40の底面43を殺菌するのに用いられる。
【0030】
導光体6の出射面7から出射される紫外線UVの中で、プリズム30の入射面31より外側の部分を進む紫外線UVは、プリズム30の外周面である反射面35に達し、ここで全反射されて向きを変えながら、放射状に出射される。ここから反射された紫外線UVは専らプリフォーム40の側面45を殺菌するのに用いられる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のプリズム30は、導光体6から導かれてきた紫外線UVの一部をそのままの向きで真直ぐ通過させる第一光路と、導光体6から導かれてきた紫外線UVの他の一部を交差する向きに変えて周囲に放射させる第二光路と、を備えている。したがって、導光体6とプリズム20の組み合わせだけで、プリフォーム40の底面43及び側面45という直交する二つの面に向けて紫外線UVをムラなく照射できる。しかも、本実施形態は、単一のプリズム30を設けるだけで足りる。
【0032】
以上、本発明の好ましい形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、上記した第実施形態の光源4はランプを想定しているが、LEDを光源として用いることもできる。この場合には、LED光源を導光体6に直接固定することができる。
また、導光体6の昇降は、プリフォーム40(容器)との相対的な関係として捉えることができ、導光体6を昇降させてもよいし、プリフォーム40(容器)を昇降させてもよい。