(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に実施形態を掲げ、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。なお、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。
【0024】
<第1実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、ダイシングテープと該ダイシングテープ上に積層された所定のシート状樹脂組成物とを備える積層シート及びこれを用いる半導体装置の製造方法を例に説明する。従って、本実施形態では、粘着テープとしてダイシングテープを用いることになる。以下の説明は基本的にシート状樹脂組成物単独の場合にも適用することができる。
【0025】
(積層シート)
積層シート10は、ダイシングテープ1と該ダイシングテープ1上に積層された所定のシート状樹脂組成物2とを備える(
図1A参照)。
【0026】
(シート状樹脂組成物)
本実施形態におけるシート状樹脂組成物2は、表面実装(例えばフリップチップ実装等)された半導体素子と被着体との間の空間を充填する封止用フィルムとして好適に用いることができる。
【0027】
シート状樹脂組成物2の熱硬化前の80℃〜200℃における最低溶融粘度は100Pa・s以上2500Pa・s以下であればよい。さらに、最低溶融粘度は150Pa・s以上2200Pa・s以下が好ましく、200Pa・s以上2000Pa・s以下がより好ましい。最低溶融粘度を上記範囲とすることで、半導体素子の電気的接続の際のシート状樹脂組成物の半導体素子や被着体への追従性を向上させることができ、半導体素子の電気的接続の際のボイドの発生を抑制することができる。さらに、シート状樹脂組成物が適度な粘性を有することから、半導体素子と被着体との間の空間からのシート状樹脂組成物のはみ出しを安定化させることができる。最低溶融粘度が低すぎると実装時のシート状樹脂組成物の変形量が大きくなってはみ出し量が大きくなり、最低溶融粘度が高すぎるとシート状樹脂組成物の追従性が低下してボイドが発生してしまう。
【0028】
また、シート状樹脂組成物2のTI値は16以下であればよく、さらに15以下が好ましく、13以下がより好ましい。TI値を上記範囲とすることで、実装時の圧着接合操作による粘度低下を抑制することができ、その結果、シート状樹脂組成物の半導体素子からの過剰なはみ出しを防止することができる。TI値が上記範囲を超えると実装時のシート状樹脂組成物の粘度低下が大き過ぎてはみ出し量が過剰となる。なお、TI値の下限としては、実装時の圧着接合操作による適度な粘度低下を引き起こして実装確実性を高める観点から、3以上が好ましい。
【0029】
シート状樹脂組成物の構成材料としては、樹脂成分、熱硬化促進触媒、架橋剤、他の有機系添加剤等の有機成分(溶媒を除く。)や、無機充填剤、他の無機系添加剤等の無機成分等が挙げられる。樹脂成分としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用したものが挙げられる。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂単独でも使用可能である。
【0030】
(熱可塑性樹脂)
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0031】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されないものの、3×10
5以上であることが好ましく、4×10
5以上であることが好ましい。これによりシート状樹脂組成物に適度な粘度を付与することができ、ボイドの発生の抑制及び過剰なはみ出し防止をより効率的に達成することができる。なお、粘度の過度の上昇を抑制する観点から、上記重量平均分子量は1×10
7以下であることが好ましい。
【0032】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、へキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はエイコシル基等が挙げられる。
【0033】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマー、アクリロニトリル等のようなシアノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0034】
(熱硬化性樹脂)
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0035】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0036】
さらに、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0037】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。すなわち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0038】
なお、本実施形態においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を用いたシート状樹脂組成物が特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計量が50〜500重量部である。
【0039】
(熱硬化促進触媒)
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては、特に制限されず、公知の熱硬化促進触媒の中から適宜選択して用いることができる。熱硬化促進触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化促進触媒としては、例えば、アミン系熱硬化促進触媒、リン系熱硬化促進触媒、イミダゾール系熱硬化促進触媒、ホウ素系熱硬化促進触媒、リン−ホウ素系熱硬化促進触媒などを用いることができる。
【0040】
中でも、熱硬化促進触媒は窒素原子を分子内に含む有機化合物であり、該有機化合物の分子量が50〜500であることが好ましい。これにより、当該シート状樹脂組成物の昇温に伴う熱硬化反応の進行度合いを制御することができ、その結果、各温度で所望の粘度を有するような設計が容易となる。上記有機化合物の例としては、イミダゾール系熱硬化促進触媒を好適に用いることができる。市販品も好適に利用可能であり、例えば、商品名「2PHZ−PW」(四国化成株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
シート状樹脂組成物が熱硬化促進触媒を含む場合の熱硬化促進触媒の含有量は特に制限されない。シート状樹脂組成物がアクリル樹脂を含む場合、熱硬化促進触媒の含有量は、上記アクリル樹脂100重量部に対して、0.1〜2重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましい。上記範囲とすることで、硬化反応性をより向上させることができるとともに、過度の粘度上昇をより効率的に抑制することができる。
【0042】
(架橋剤)
本実施形態のシート状樹脂組成物2を予めある程度架橋をさせておく場合には、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0043】
前記架橋剤としては、特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0044】
(無機充填剤)
また、シート状樹脂組成物2には、無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、貯蔵弾性率の調節等を可能にする。
【0045】
前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、はんだ等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリカが好適に用いられる。
【0046】
無機充填剤の平均粒径は、チクソトロピー性の制御の点から、10nm以上500nm以下が好ましく、30nm以上300nm以下がより好ましく、50nm以上200nm以下がさらに好ましい。上記無機充填剤の平均粒径が上記範囲を下回ると、粒子の凝集が発生しやすくなり、シート状樹脂組成物の形成が困難となる場合がある。また、シート状樹脂組成物の可撓性が低下する原因にもなる。一方、上記平均粒径が上記範囲を超えると、シート状樹脂組成物と被着体との接合部への無機粒子の噛み込みが発生しやすくなるため、半導体装置の接続信頼性が低下するおそれがある。また、粒子の粗大化によりヘイズが上昇するおそれがある。なお、本発明においては、平均粒径が相互に異なる無機充填剤同士を組み合わせて使用してもよい。また、平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0047】
前記無機充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し50〜1000重量部であることが好ましく、100〜800重量部がより好ましい。無機充填剤の含有量を上記範囲とすることで、シート状樹脂組成物に適度な粘性と粘性変化性を付与することができ、実装時のボイドの発生の抑制及び過剰なはみ出し防止をより効率的に行うことができる。
【0048】
(他の添加剤)
なお、シート状樹脂組成物2には、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤、分散剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。分散剤は無機充填剤の分散性を高めるために用いられ、例えば、アミン価が10〜70mgKOH/g程度のブロック共重合体等が好適に用いられる。市販品も好適に利用可能であり、例えば、商品名「DISPERBYK−2155」(ビックケミー・ジャパン株式会社製、アミン価:48mgKOH/g)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0049】
シート状樹脂組成物2には、はんだバンプの表面の酸化膜を除去して半導体素子の実装を容易にするために、フラックスを添加してもよい。フラックスとしては特に限定されず、従来公知のフラックス作用を有する化合物を用いることができ、例えば、ジフェノール酸、アジピン酸、アセチルサリチル酸、安息香酸、ベンジル酸、アゼライン酸、ベンジル安息香酸、マロン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、サリチル酸、o−メトキシ安息香酸(o−アニス酸)、m−ヒドロキシ安息香酸、コハク酸、2,6−ジメトキシメチルパラクレゾール、安息香酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、チオカルボヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド及びアジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。フラックスの添加量は上記フラックス作用が発揮される程度であればよく、通常、シート状樹脂組成物に含まれる樹脂成分100重量部に対して0.1〜20重量部程度である。
【0050】
(シート状樹脂組成物の他の性状)
熱硬化前の上記シート状樹脂組成物2の温度23℃、湿度70%の条件下における吸水率は、1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。シート状樹脂組成物2が上記のような吸水率を有することにより、シート状樹脂組成物2への水分の吸収が抑制され、半導体素子31の実装時のボイドの発生をより効率的に抑制することができる。なお、上記吸水率の下限は小さいほど好ましく、実質的に0重量%が好ましく、0重量%であることがより好ましい。
【0051】
シート状樹脂組成物2の厚さ(複層の場合は総厚)は特に限定されないものの、シート状樹脂組成物2の強度や半導体素子31と被着体16との間の空間の充填性を考慮すると10μm以上100μm以下程度であってもよい。なお、シート状樹脂組成物2の厚さは、半導体素子31と被着体16との間のギャップや接続部材の高さを考慮して適宜設定すればよい。
【0052】
積層シート10のシート状樹脂組成物2は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでシート状樹脂組成物2を保護する保護材としての機能を有している。セパレータは積層シートのシート状樹脂組成物2上に半導体ウェハ3を貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0053】
(ダイシングテープ)
ダイシングテープ1は、基材1aと、基材1a上に積層された粘着剤層1bとを備えている。シート状樹脂組成物2は、粘着剤層1b上に積層されている。なお、シート状樹脂組成物2は、
図1Aに示したように、半導体ウェハ3との貼り合わせに十分なサイズで設けられていればよく、ダイシングテープ1の全面に積層されていてもよい。
【0054】
(基材)
上記基材1aは積層シート10の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。粘着剤層1bが紫外線硬化型である場合、基材1aは紫外線に対し透過性を有するものが好ましい。
【0055】
また基材1aの材料としては、上記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。上記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。
【0056】
基材1aの表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0057】
上記基材1aは、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材1aには、帯電防止能を付与するため、上記の基材1a上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材に帯電防止剤を添加することによっても帯電防止能を付与することができる。基材1aは単層又は2種以上の複層でもよい。
【0058】
基材1aの厚さは適宜に決定でき、一般的には5μm以上200μm以下程度であり、好ましくは35μm以上120μm以下である。
【0059】
なお、基材1aには、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤等)が含まれていてもよい。
【0060】
(粘着剤層)
粘着剤層1bの形成に用いる粘着剤は、ダイシングの際にシート状樹脂組成物を介して半導体ウェハをしっかり保持するとともに、ピックアップの際にシート状樹脂組成物付きの半導体素子を剥離可能に制御できるものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性接着剤を用いることができる。上記感圧性接着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0061】
上記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステルを主モノマー成分として用いたものが挙げられる。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0062】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等があげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0063】
さらに、上記アクリル系ポリマーは、架橋させるため、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等があげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0064】
上記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0065】
また、上記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるため、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法があげられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、上記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、さらには0.1〜5重量部配合するのが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、上記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0066】
粘着剤層1bは放射線硬化型粘着剤により形成することができる。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ、シート状樹脂組成物付きの半導体ウェハの剥離を容易に行うことができる。放射線としては、X線、紫外線、電子線、α線、β線、中性子線等が挙げられる。
【0067】
放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。放射線硬化型粘着剤としては、例えば、上記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化性粘着剤を例示できる。
【0068】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等があげられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その重量平均分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、上記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0069】
また、放射線硬化型粘着剤としては、上記説明した添加型の放射線硬化性粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化性粘着剤があげられる。内在型の放射線硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0070】
上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、上記例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
【0071】
上記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基および炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させる方法があげられる。
【0072】
これら官能基の組合せの例としては、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等があげられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、上記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと上記化合物のいずれの側にあってもよいが、上記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等があげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、上記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0073】
上記内在型の放射線硬化性粘着剤は、上記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に上記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0074】
上記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェニル−1,2―プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等があげられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0075】
なお、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層1bの表面よりなんらかの方法で酸素(空気)を遮断するのが望ましい。例えば、上記粘着剤層1bの表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0076】
なお、粘着剤層1bには、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、増粘剤、増量剤、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤等)が含まれていてもよい。
【0077】
粘着剤層1bの厚さは特に限定されないが、半導体ウェハの研削面の欠け防止、シート状樹脂組成物2の固定保持の両立性等の観点から1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは5〜40μm、さらには好ましくは10〜30μmである。
【0078】
(積層シートの製造方法)
本実施の形態に係る積層シート10は、例えばダイシングテープ1及びシート状樹脂組成物2を別々に作製しておき、最後にこれらを貼り合わせることにより作成することができる。具体的には、以下のような手順に従って作製することができる。
【0079】
まず、基材1aは、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0080】
次に、粘着剤層形成用の粘着剤組成物を調製する。粘着剤組成物には、粘着剤層の項で説明したような樹脂や添加物等が配合されている。調製した粘着剤組成物を基材1a上に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層1bを形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、上記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層1bを形成してもよい。その後、基材1a上に粘着剤層1bをセパレータと共に貼り合わせる。これにより、基材1a及び粘着剤層1bを備えるダイシングテープ1が作製される。
【0081】
シート状樹脂組成物2は、例えば、以下のようにして作製される。まず、シート状樹脂組成物2の形成材料である接着剤組成物を調製する。当該接着剤組成物には、シート状樹脂組成物の項で説明したとおり、熱可塑性成分やエポキシ樹脂、各種の添加剤等が配合されている。
【0082】
次に、調製した接着剤組成物を基材セパレータ上に所定厚さとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ、シート状樹脂組成物を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に接着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、上記乾燥条件で塗布膜を乾燥させてシート状樹脂組成物を形成してもよい。その後、基材セパレータ上にシート状樹脂組成物をセパレータと共に貼り合わせる。
【0083】
続いて、ダイシングテープ1及びシート状樹脂組成物2からそれぞれセパレータを剥離し、シート状樹脂組成物と粘着剤層とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば30〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。また、線圧は特に限定されず、例えば0.98〜196N/cmが好ましく、9.8〜98N/cmがより好ましい。次に、シート状樹脂組成物上の基材セパレータを剥離し、本実施の形態に係る積層シートが得られる。
【0084】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態では両面に回路が形成された半導体ウェハを用いて半導体装置を製造する。また、ダイシングテープ上でのダイシング、半導体素子のピックアップを行い、最後に半導体素子を被着体に実装する。
【0085】
本実施形態の代表的な工程としては、上記積層シートを準備する準備工程、接続部材を有する回路面が両面に形成された半導体ウェハと上記積層シートのシート状樹脂組成物とを貼り合わせる貼合せ工程、上記半導体ウェハをダイシングして上記シート状樹脂組成物付きの半導体素子を形成するダイシング工程、上記シート状樹脂組成物付きの半導体素子を上記積層シートから剥離するピックアップ工程、上記半導体素子と上記被着体との相対位置を互いの接続予定位置に整合させる位置整合工程、及び上記被着体と上記半導体素子の間の空間を上記シート状樹脂組成物で充填しつつ上記接続部材を介して上記半導体素子と上記被着体とを電気的に接続する接続工程を含む。
【0086】
[準備工程]
準備工程では、ダイシングテープ1上にシート状樹脂組成物2が設けられた積層シート10を準備する(
図1A参照)。積層シート10としては上記で説明した積層シートを好適に用いることができる。
【0087】
[貼合せ工程]
貼合せ工程では、
図1Aに示すように、接続部材4aを有する回路面3a及び裏面電極4bを有する回路面3bが両面に形成された半導体ウェハ3と上記積層シートのシート状樹脂組成物2とを貼り合わせる。なお、所定の厚さに薄型化された半導体ウェハの強度は弱いことから、補強のために半導体ウェハを仮固定材を介してサポートガラス等の支持体に固定することがある(図示せず)。この場合は、半導体ウェハとシート状樹脂組成物との貼り合わせ後に、仮固定材とともに支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。半導体ウェハ3のいずれの回路面とシート状樹脂組成物2とを貼り合わせるかは、目的とする半導体装置の構造に応じて変更すればよい。
【0088】
(半導体ウェハ)
半導体ウェハ3の回路面3a、3bには、それぞれ複数の接続部材4a及び複数の裏面電極4bが形成されている(
図1A参照)。バンプや導電材等の接続部材や裏面電極の材質としては、特に限定されず、例えば、錫−鉛系金属材、錫−銀系金属材、錫−銀−銅系金属材、錫−亜鉛系金属材、錫−亜鉛−ビスマス系金属材等のはんだ類(合金)や、金系金属材、銅系金属材等が挙げられる。接続部材及び裏面電極の高さも用途に応じて定められ、一般的には3〜100μm程度である。もちろん、半導体ウェハ3における個々の接続部材の高さは同一でも異なっていてもよい。
【0089】
半導体ウェハ3の両面の接続部材4aと裏面電極4bとは電気的に接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。両者の電気的接続には、TSV形式と呼ばれるビアを介しての接続等が挙げられる。
【0090】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、シート状樹脂組成物の厚さとしては、半導体ウェハ表面に形成された接続部材の高さX(μm)と前記シート状樹脂組成物の厚さY(μm)とが、下記の関係を満たすことが好ましい。
0.5≦Y/X≦2
【0091】
前記接続部材の高さX(μm)と前記硬化フィルムの厚さY(μm)とが上記関係を満たすことにより、半導体素子と被着体との間の空間を十分に充填することができると共に、当該空間からのシート状樹脂組成物の過剰のはみ出しを防止することができ、シート状樹脂組成物による半導体素子の汚染等を防止することができる。なお、各接続部材の高さが異なる場合は、最も高い接続部材の高さを基準とする。
【0092】
(貼り合わせ)
まず、積層シート10のシート状樹脂組成物2上に任意に設けられたセパレータを適宜に剥離し、
図1Aに示すように、前記半導体ウェハ3の接続部材4aが形成された回路面3aとシート状樹脂組成物2とを対向させ、前記シート状樹脂組成物2と前記半導体ウェハ3とを貼り合わせる(マウント)。
【0093】
貼り合わせの方法は特に限定されないが、圧着による方法が好ましい。圧着は通常、圧着ロール等の公知の押圧手段により、好ましくは0.1〜5MPa、より好ましくは0.3〜2MPaの圧力を負荷して押圧しながら行われる。この際、40〜100℃程度に加熱しながら圧着させてもよい。また、密着性を高めるために、減圧下(1〜1000Pa)で圧着することも好ましい。
【0094】
[ダイシング工程]
ダイシング工程では、直接光や間接光、赤外線等により求めたダイシング位置に基づき、
図1Bに示すように半導体ウェハ3及びシート状樹脂組成物2をダイシングしてダイシングされたシート状樹脂組成物付きの半導体素子31を形成する。ダイシング工程を経ることで、半導体ウェハ3を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体チップ(半導体素子)31を製造する。ここで得られる半導体チップ31は同形状に切断されたシート状樹脂組成物2と一体になっている。ダイシングは、半導体ウェハ3のシート状樹脂組成物2を貼り合わせた回路面3aとは反対側の回路面3b側から常法に従い行われる。
【0095】
本工程では、例えば、ダイシングブレードによりダイシングテープ1まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、ダイシングテープ1により優れた密着性で接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハの破損も抑制できる。なお、シート状樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成されていると、ダイシングにより切断されても、その切断面においてシート状樹脂組成物のシート状樹脂組成物の糊はみ出しが生じるのを抑制又は防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)することを抑制又は防止することができ、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。
【0096】
なお、ダイシング工程に続いてダイシングテープのエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープを下方へ押し下げることが可能等ナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープを支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0097】
[ピックアップ工程]
ダイシングテープ1に接着固定された半導体チップ31を回収するために、
図1Cに示すように、シート状樹脂組成物2付きの半導体チップ31のピックアップを行って、半導体チップ31とシート状樹脂組成物2の積層体Aをダイシングテープ1より剥離する。
【0098】
ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップをダイシングテープの基材側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップをピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。なお、ピックアップされた半導体チップ31は、回路面3aに貼り合わされたシート状樹脂組成物2と一体となって積層体Aを構成している。
【0099】
ピックアップは、粘着剤層1bが紫外線硬化型の場合、該粘着剤層1bに紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層1bのシート状樹脂組成物2に対する粘着力が低下し、半導体チップ31の剥離が容易になる。その結果、半導体チップ31を損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、低圧高出力ランプ、中圧水銀ランプ、無電極水銀ランプ、キセノン・フラッシュ・ランプ、エキシマ・ランプ、紫外LED等を用いることができる。
【0100】
[実装工程]
実装工程では、半導体素子31の実装位置を直接光や間接光、赤外線等により予め求めておき、求めた実装位置に従って、被着体16と半導体素子31の間の空間をシート状樹脂組成物2で充填しつつ接続部材4aを介して半導体素子31と被着体16とを電気的に接続する(
図1D参照)。具体的には、積層体Aの半導体チップ31を、半導体チップ31の回路面3aが被着体16と対向する形態で、被着体16に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ31に形成されているバンプ(接続部材)4aを、被着体16の接続パッドに被着された接合用の導電材17(はんだ等)に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ31と被着体16との電気的接続を確保し、半導体チップ31を被着体16に固定させることができる。半導体チップ31の回路面3aにはシート状樹脂組成物2が貼り付けられているので、半導体チップ31と被着体16との電気的接続と同時に、半導体チップ31と被着体16との間の空間がシート状樹脂組成物2により充填されることになる。
【0101】
また、
図1Eに示すように、半導体素子を多段積層する際には、実装した半導体素子31上に別の積層体の半導体素子32を固定する手順を目的とする段数分だけ繰り返せばよい。半導体素子31の背面である回路面3bに設けた裏面電極4bと、半導体素子32の接続部材4aとを溶融により接合してもよい。下段の半導体素子31と上段の半導体素子32との接合処理は1段ごとに行ってもよく、所定段数の半導体素子を仮固定した後に一括して接合処理を行ってもよい。後者の手順は加熱処理が一度で済むことから効率面で好ましい。
【0102】
一般的に、実装工程における仮固定条件としては温度100〜200℃であり、加圧0.5〜100Nである。また、実装工程における接合条件としては温度150〜300℃であり、加圧1〜200Nである。実装工程での1段ごとの接合処理は複数回に分けて行ってもよい。例えば、150℃、20Nで10秒間処理した後、260℃、30Nで10秒間処理するという手順を採用することができる。複数回での接合処理を行うことにより、接続部材とパッド間ないし接続部材と裏面電極間の樹脂を効率よく除去し、より良好な金属間接合を得ることが出来る。
【0103】
被着体16としては、半導体ウェハ、リードフレームや回路基板(配線回路基板等)等の各種基板、同種又は異種の半導体素子を用いることができる。基板の材質としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プラスチック基板が挙げられる。プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板、ガラスエポキシ基板等が挙げられる。1つの被着体に実装する半導体素子の数も限定されず、1つ又は複数個のいずれであってもよい。シート状樹脂組成物2は、半導体ウェハに多数の半導体チップを実装するチップオンウェハプロセスにも好適に適用することができる。
【0104】
なお、実装工程では、接続部材、裏面電極及び導電材の一つ又はこれらを組み合わせて溶融させて、半導体チップ31の接続部材形成面3aのバンプ4aと、被着体16の表面の導電材17とを接続させるとともに、半導体チップ31の裏面電極4bと半導体チップ32の接続部材4aとを接合させているが、このバンプ4a、裏面電極4b及び導電材17の溶融時の温度としては、通常、260℃程度(例えば、220℃〜300℃)となっている。本実施形態に係る積層シートは、シート状樹脂組成物2をエポキシ樹脂等により形成することにより、この実装工程における高温にも耐えられる耐熱性を有するものとすることができる。
【0105】
[シート状樹脂組成物硬化工程]
半導体素子31と被着体16と間、及び必要に応じて多段積層した半導体素子間の電気的接続を行った後は、シート状樹脂組成物2を加熱により硬化させる。これにより、半導体素子31の表面を保護することができるとともに、半導体素子31と被着体16との間及び半導体素子間等の接続信頼性を確保することができる。シート状樹脂組成物の硬化のための加熱温度としては特に限定されず、150〜250℃程度であればよい。なお、実装工程における加熱処理によりシート状樹脂組成物が硬化する場合、本工程は省略することができる。以上の工程を経て、一段の半導体素子31を有する半導体装置20や半導体素子が多段積層された半導体装置40を得ることができる。
【0106】
[封止工程]
次に、実装された半導体チップを備える半導体装置20又は40全体を保護するために封止工程を行ってもよい(図示せず)。封止工程は、封止樹脂を用いて行われる。このときの封止条件としては特に限定されないが、通常、175℃で60秒間〜90秒間の加熱を行うことにより、封止樹脂の熱硬化が行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165℃〜185℃で、数分間キュアすることができる。
【0107】
前記封止樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁樹脂)であれば特に制限されず、公知の封止樹脂等の封止材から適宜選択して用いることができるが、弾性を有する絶縁樹脂がより好ましい。封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記に例示のエポキシ樹脂等が挙げられる。また、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物による封止樹脂としては、樹脂成分として、エポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂等)や、熱可塑性樹脂等が含まれていてもよい。なお、フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂の硬化剤としても利用することができ、このようなフェノール樹脂としては、前記に例示のフェノール樹脂等が挙げられる。
【0108】
[半導体装置]
次に、当該積層シートを用いて得られる半導体装置について図面を参照しつつ説明する(
図1D、1E参照)。本実施形態に係る半導体装置40では、半導体素子31と被着体16とが、半導体素子31上に形成されたバンプ(接続部材)4a及び被着体16上に設けられた導電材17を介して電気的に接続されている。さらに、半導体素子31の裏面電極4bと半導体素子32の接続部材4aとが接合されることで、半導体素子31、32間の電気的接続が図られている。半導体素子31と被着体16との間及び半導体素子31、32間には、その空間を充填するようにシート状樹脂組成物2が配置されている。半導体装置40は、所定のシート状樹脂組成物2及び光照射による位置合わせを採用する上記製造方法にて得られるので、半導体素子31と被着体16との間及び半導体素子31、32間で良好な電気的接続が達成されている。従って、半導体素子の表面保護、半導体素子31と被着体16との間の空間及び半導体素子31、32間の空間の充填、並びに半導体素子31と被着体16との間及び半導体素子31、32間の電気的接続がそれぞれ十分なレベルとなり、半導体装置40として高い信頼性を発揮することができる。
【0109】
<第2実施形態>
第1実施形態では両面に回路が形成された半導体ウェハを用いているのに対し、本実施形態では片面に回路が形成された半導体ウェハを用いて半導体装置を製造する。また、本実施形態で用いる半導体ウェハが目的とする厚さを有していない場合、半導体ウェハの回路面とは反対側の裏面を研削する裏面研削工程を行う。従って、本実施形態では、裏面研削用テープ上に積層されたシート状樹脂組成物を備える積層シートを用いて半導体ウェハの裏面研削を行い、その後、ダイシングテープ上でのダイシング、半導体素子のピックアップを行い、最後に半導体素子を被着体に実装する。このような裏面研削用テープの基材及び粘着剤層、並びにシート状樹脂組成物としては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0110】
本実施形態の代表的な工程としては、裏面研削用テープと該裏面研削用テープ上に積層されたシート状樹脂組成物とを備える積層シートを準備する準備工程、半導体ウェハの接続部材が形成された回路面と上記積層シートのシート状樹脂組成物とを貼り合わせる貼合せ工程、上記半導体ウェハの裏面を研削する研削工程、上記シート状樹脂組成物とともに半導体ウェハを裏面研削用テープから剥離して該半導体ウェハをダイシングテープに貼り付ける固定工程、上記半導体ウェハにおけるダイシング位置を決定するダイシング位置決定工程、上記半導体ウェハをダイシングして上記シート状樹脂組成物付きの半導体素子を形成するダイシング工程、上記シート状樹脂組成物付きの半導体素子を上記ダイシングテープから剥離するピックアップ工程、上記半導体素子と上記被着体との相対位置を互いの接続予定位置に整合させる位置整合工程、及び上記被着体と上記半導体素子の間の空間を上記シート状樹脂組成物で充填しつつ上記接続部材を介して上記半導体素子と上記被着体とを電気的に接続する接続工程を含む。ダイシングテープは第1実施形態のダイシングテープを用いてもよく、公知の市販品等を用いてもよい。また、各工程の条件は公知の条件や第1実施形態と同様の条件を好適に採用することができる。
【0111】
<第3実施形態>
第1実施形態では積層シートの構成部材としてダイシングテープを用いたが、本実施形態では該ダイシングテープの粘着剤層を設けずに基材単独を用いる。従って、本実施形態の積層シートとしては、基材上にシート状樹脂組成物が積層された状態となる。本実施形態では、ピックアップ工程前の紫外線照射は粘着剤層の省略により行わない。これらの点を除けば、第1実施形態と同様の工程を経ることで所定の半導体装置を製造することができる。
【0112】
<その他の実施形態>
第1実施形態から第3実施形態では、ダイシング工程においてダイシングブレードを用いるダイシングを採用しているが、これに代えて、レーザー照射により半導体ウェハ内部に改質部分を形成し、この改質部分に沿って半導体ウェハを分割して個片化するいわゆるステルスダイシングを採用してもよい。
【実施例】
【0113】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
【0114】
<実施例1〜3及び比較例1〜2>
(シート状樹脂組成物の作製)
以下の成分を表1に示す割合でメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度が37〜48重量%となる接着剤組成物の溶液を調製した。
【0115】
アクリル樹脂:アクリル酸エチル−アクリル酸ブチルーアクリロニトリルを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(商品名「SG−70L」、ナガセケムテックス株式会社製、Mw:900000)
エポキシ樹脂1:商品名「エピコート828」、JER株式会社製
エポキシ樹脂2:商品名「エピコート1004」、JER株式会社製
フェノール樹脂:商品名「MEH−7851H」、明和化成株式会社製
無機充填剤:球状シリカ(商品名「YV180C−MJJ」、株式会社アドマテックス製、平均粒径0.18μm(180nm))
熱硬化促進触媒:イミダゾール触媒(商品名「2PHZ−PW」、四国化成株式会社製)
分散剤:湿潤分散剤(商品名「DISPERBYK−2155」、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
【0116】
この接着剤組成物の溶液を、剥離ライナ(セパレータ)としてシリコーン離型処理した厚さが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ40μmのシート状樹脂組成物を作製した。
【0117】
《評価》
<最低溶融粘度の測定方法>
溶融粘度の測定は、作製したシート状樹脂組成物を加熱処理(熱硬化処理)を経ずにサンプルとし、回転式粘度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「HAAKE Roto Visco 1」)を用いるパラレルプレート法により静的粘度を測定した。詳細には、ギャップ100μm、回転プレート直径20mm、剪断速度5s
−1、昇温速度10℃/分の条件とし、80℃から250℃まで昇温させて測定を行った。その際の80℃から200℃までにおける溶融粘度の最低値を読み取って最低溶融粘度[Pa・s]を求めた。
【0118】
<チクソトロピックインデックスの評価>
作製したシート状樹脂組成物を加熱処理(熱硬化処理)を経ずにサンプルとし、このサンプルの溶融粘度として回転式粘度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「HAAKE Roto Visco 1」)を用いるパラレルプレート法により静的粘度を測定した。詳細には、ギャップ100μm、回転プレート直径20mm、剪断速度5s
−1、一定温度120℃の条件にて5分間測定を行い、5分後の粘度の値を読み取ることでη
5[Pa・s]を得た。また、剪断速度を50s
−1としたこと以外は同様の手順でη
50[Pa・s]を得た。これらの値を下記式に代入することにより、チクソトロピックインデックスTIを求めた。
TI=η
5/η
50
【0119】
<実装評価>
12mm角のチップ(商品名「WALTS−TEG CC80 MarkII−0101JY」(株)ウォルツ社製)に、同サイズのシート状樹脂組成物を貼り付け、サンプルAとした。貼付条件は、真空度:100Paの条件下において、温度:40℃、貼り付け圧力:0.5MPaとした。
【0120】
次に、スライドガラスを100℃のステージ上に載置し、このスライドガラス上にサンプルAを実装した。実装は、東レエンジニアリング社のフリップチップボンダー(FC3000W)を用いて行った。実装条件は、荷重:20Nの条件下、260℃で10秒保持するというものであった。
【0121】
(ボイド評価)
得られた実装後のサンプルをスライドガラスの裏面側から光学顕微鏡(500倍)にて確認し、ボイド(最大径:3μm超)の発生が確認されなかった場合を「○」、1箇所でもボイドの発生が確認された場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0122】
(はみ出し評価)
得られた実装後のサンプルをスライドガラスの裏面側から光学顕微鏡(200倍)にて観察し、チップの端部からのシート状樹脂組成物のはみ出し量が100μm以下であった場合を「○」、100μmを超えていた場合を「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1より、全ての実施例においてボイドの発生が抑制されるとともに、実装後のシート状樹脂組成物のはみ出し量が抑制されていたことが分かる。一方、比較例1では、ボイド評価は良好であったものの、はみ出し評価が劣っていた。これは、シート状樹脂組成物のTI値が16を超え、シート状樹脂組成物の実装時の粘度低下が大き過ぎてはみ出し量が過剰となったことに起因すると考えられる。また、比較例2では、はみ出し評価は良好であったものの、ボイドが確認された。これは、比較例1では最低溶融粘度が高すぎ、シート状樹脂組成物の表面凹凸への追従性が低下したことに起因すると考えられる。