(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の電線分離装置について
図1〜
図5を参照して説明する。本発明の電線分離装置1は、束ねられた複数の電線21のうち1本を他の電線21から分離する装置である。このような複数の電線21から構成される電線として、
図1(A)に示すシールド線2が一例として挙げられる。本実施形態では、シールド線を一例として説明するが、これに限らずツイスト電線やキャプタイヤケーブルなどであってもよい。
【0019】
図1(A)に示すように、シールド線2は、所謂被覆電線から成る複数の電線21を束ね、一括して周知の金属箔シールドにより覆い、さらにその外側を絶縁性のシース22で覆って構成している。複数の電線21は、例えば信号線やグランド線からなり、
図1(B)に示すように、その端末に端子23を接続したり、図示しない防水栓を挿入するなどの端末処理を施す場合がある。本実施形態の電線分離装置1は、端末処理を施すために、束ねられた複数の電線21のうち1本を分離する装置である。
【0020】
図2〜
図5に示すように、電線分離装置1は、一対の整列ブロック11A、11Bと、寄せ集めブロック12(=押出ブロック)と、一対の分離ブロック13と、支持ブロック14と、ストッパ15と、電線固定部16(
図3〜
図5)と、保持部17(
図3〜
図5)と、を備えている。
【0021】
一対の整列ブロック11A、11Bは、それぞれ板状に形成され、互いに平行に配置されると共に、隙間S1を空けて配置されている。一対の整列ブロック11A、11Bの隙間S1は、複数の電線21のうち1本分の直径よりも大きく、2本分の直径を合わせた長さよりも小さくなるように調整される。そして、
図3などに示すように、この一対の整列ブロック11A、11B間に、シールド線2を構成する複数の電線21が一列に並べられた状態で挿入される。
【0022】
寄せ集めブロック12は、板状に形成され、一対の整列ブロック11A、11B間に電線21の並び方向Y1に沿ってスライド自在に挿入される。寄せ集めブロック12は、
図4などに示すように、並び方向Y1の他方側から一対の整列ブロック11A、11B間に挿入される。この寄せ集めブロック12を並び方向Y1の一方側に向かってスライドさせると、複数電線21を押して並び方向Y1の一方側に寄せ集める。これにより、並び方向Y1の一方側の電線21を一対の整列ブロック11A、11B間外に押し出す。
【0023】
なお、寄せ集めブロック12は、図示しない空気駆動ポンプやモータなどの駆動源に接続され、この駆動源からの駆動力によりスライドされる。
【0024】
一対の分離ブロック13は各々板状に形成され、並び方向Y1の他方側の端部から後述する支持ブロック14まで延在する並び方向Y1に沿ったスリットSLが形成されている。各分離ブロック13のスリットSLを挟んだ両側が一対の分離爪13Aとなる。即ち、一対の分離爪13Aは、一対の整列ブロック11A、11Bの対向方向Y2に並べて配置されている。この一対の分離ブロック13は、
図4(B)に示すように、一対の整列ブロック11A、11B間外に押し出された電線21が一対の分離爪13A間(即ちスリットSL内)に挿入される挿入位置に配置される。
【0025】
支持ブロック14は、一対の分離ブロック13の並び方向Y1一方側の端部に固定され、一対の分離ブロック13を電線21の長手方向Y3に離間するように支持している。これら一対の分離ブロック13及び支持ブロック14は、
図4(B)の実線で示す挿入位置と
図4(B)の二点鎖線で示す分離位置との間で、対向方向Y2にスライド自在に設けられている。
【0026】
よって、分離ブロック13を挿入位置に位置付けて一対の分離爪13A間に電線21を挿入させた後、分離ブロック13を対向方向Y2の一方側(本実施形態では図面下側)にスライドさせて分離位置に位置付けることにより、一対の分離爪13Aに挿入された電線21を整列ブロック11A、11Bに挿入された他の電線21と分離することができる。
【0027】
なお、分離ブロック13及び支持ブロック14は、図示しない空気駆動ポンプやモータなどの駆動源に接続され、この駆動源からの駆動力によりスライドされる。
【0028】
このストッパ15は、板状に形成され、一対の分離ブロック13間に位置付けられている。本実施形態のストッパ15は、一対の整列ブロック11A、11Bのうち対向方向Y2の他方側(本実施形態では図面上側)にある整列ブロック11Aに固定されている。詳しく説明すると、ストッパ15は、整列ブロック11Aの並び方向Y1の一方側の端部に固定されていて、一対の整列ブロック11A、11Bの隙間S1に対向するように配置される。
【0029】
また、ストッパ15は、一対の整列ブロック11A、11Bのうち対向方向Y2の一方側にある整列ブロック11Bとは並び方向Y1に隙間S2を空けて配置されている。このようにするために、整列ブロック11Aは整列ブロック11Bよりも並び方向Y1の一方側に突出して配置される。上記整列ブロック11Bとストッパ15との隙間S2は、複数の電線21のうち1本分の直径よりも大きく、2本分の直径を合わせた長さよりも小さくなるように調整される。
【0030】
これにより、ストッパ15は、
図4に示すように、寄せ集めブロック12により複数の電線21が寄せ集められた際に、並び方向Y1の一方側の電線21と当接して、当接した電線21以外の他の電線21を一対の分離爪13A間に挿入させないように規制する。上述した分離ブロック13を挿入位置から分離位置に向かってスライドさせると、一対の分離爪13A内に挿入された電線21はストッパ15と整列ブロック11Bとの隙間S2を通る。
【0031】
また、上記ストッパ15及び当該ストッパ15が固定された整列ブロック11Aは、
図6に示すように、斜め方向Y4にスライド自在に設けられている。ストッパ15及び整列ブロック11Aを斜め方向Y4にスライドさせると、並び方向Y1の一方側に向かうに従って一対の整列ブロック11A、11Bの隙間S1が広がる。これにより、ストッパ15及び当該ストッパ15が固定された整列ブロック11Aを斜め方向Y4にスライドさせれば、整列ブロック11Bとストッパ15との隙間S2、及び、一対の整列ブロック11A、11Bの隙間S1、を同時に電線21の径に合わせて調整できる。
【0032】
この斜め方向Y4は、対向方向Y2に対して45°の角度で傾いているのが望ましい。この角度で傾けることによって、ストッパ15及び整列ブロック11Aのスライドによって隙間S1及び隙間S2が常に同じ大きさになるように調整できる。
【0033】
電線固定部16は、複数の電線21を束ねて所定位置に固定する。複数の電線21は、
図3及び
図4に示すように、電線固定部16よりも端末側が一対の整列ブロック11A、11B間に挿入される。本実施形態において、電線固定部16は、例えば4つの固定治具16Aから構成され、この4つの固定治具16Aにより複数電線21の並び方向Y1両側及び対向方向Y2両側を挟んで固定している。
【0034】
この4つの固定治具16Aは、
図3(B)に示すような複数の電線21を挟んで固定する固定位置と、電線21の固定を解除する解除位置と、の間で移動可能に設けられている。本実施形態では固定治具16Aは、4つ設けられているが、これに限らず、例えば、2つの固定治具16A間に挟んで固定するようにしてもよい。
【0035】
保持部17は、電線21を挟んで保持する一対の保持爪17Aと、この保持爪17Aを支持する支持台17Bと、から構成されている。一対の保持爪17Aは、並び方向Y1に沿って並んで設けられる。保持部17は、
図5に示すように、上記分離ブロック13が分離位置に向けてスライドされると、一対の分離爪13A間に挿入された電線21が一対の保持爪17A間に挿入される位置に配置される。
【0036】
なお、このとき分離ブロック13とぶつからないように、
図3及び
図4に示すように、分離ブロック13よりも長手方向Y3の電線21端末から離れた側に配置される。その後、保持部17を並び方向Y1の他方側に向かってスライドさせると、電線21が一対の分離爪13A間から外れて、一対の保持爪17A間のみに保持される。
【0037】
次に、上述した構成の電線分離装置1を用いた電線分離方法について説明する。まず、
図1(A)に示すように、シールド線2の端末のシース22を除去して、複数の電線21の端末を露出させる。
【0038】
次に、一対の整列ブロック11A、11B間に複数の電線21を一列に並べる。複数電線21を一列に並べる方法としては、作業員が手作業で一列にしてもよい。また、手作業をなくすために、例えば、
図7(A)に示すように、束ねられた複数電線21を一対の軸3間に挟んで、一対の軸3を互いに近づける方向に付勢しながら、電線21の長手方向Y3に沿って軸3を動かしてしごくことにより一列に並べてもよい。
【0039】
また、
図7(B)に示すように、ストッパ15及び当該ストッパ15が固定された整列ブロック11Aを斜め方向Y4において隙間S1及び隙間S2が広がる側に向けてスライドさせ、隙間S1及び隙間S2を広げておく。その後、一対の整列ブロック11A、11B間に一列に並べられた複数の電線21を挿入する。次に、
図7(C)に示すように、ストッパ15及び当該ストッパ15が固定された整列ブロック11Aを斜め向Y4において隙間S1及び隙間S2が狭くなる側に向けてスライドさせ、隙間S1及び隙間S2を電線21の径に合わせて調整する。
【0040】
このストッパ15及び整列ブロック11Aの位置調整は、手作業で行ってもよい。また、整列ブロック11Aに電線21との距離を検出する距離センサを設けて、距離センサの検出距離に応じてストッパ15及び整列ブロック11Aを駆動する駆動源を制御して、ストッパ15及び整列ブロック11Aの位置調整を自動に行ってもよい。
【0041】
また、図示しない駆動源により分離ブロック13及び支持ブロック14を、
図4(B)の実線で示す挿入位置に位置付けておく。次に、
図4に示すように、図示しない駆動源により一対の整列ブロック11A、11B間に挿入させた寄せ集めブロック12をスライドさせる。そうすると、寄せ集めブロック12により複数の電線21が押されて並び方向Y1一方側に寄せ集められ、一対の整列ブロック11A、11B間外に押し出される。押し出された電線21は、ストッパ15に当接して、一対の分離爪13A間にストッパ15に当接された電線21のみが挿入される。
【0042】
次に、図示しない駆動源により分離ブロック13及び支持ブロック14が、挿入位置から分離位置にスライドされると、
図4の二点鎖線に示すように、一対の分離爪13A間に挿入された電線21を整列ブロック11A、11B間に挿入された他の電線21と分離できる。なお、挿入位置から分離ブロック13をスライドさせると、並び方向Y1の一方側から2番目の電線21は分離ブロック13に当接して、寄せ集めブロック12により押されても一対の整列ブロック11A、11B間外に出ないようになっている。
【0043】
また、分離ブロック13及び支持ブロック14を分離位置にスライドさせると、
図5に示すように、一対の保持爪17A間に電線21が挿入され保持される。その後、図示しない駆動源により、この保持部17を並び方向Y1の他方側に移動させると、一対の分離爪13A間から電線21を取り外すことができる。次に、図示しない駆動源により分離ブロック13及び支持ブロック14を挿入位置に戻すと、分離ブロック13に当接していた電線21が寄せ集めブロック12により一対の整列ブロック11A、11B間外に押し出され、一対の分離爪13A間に挿入され、これが繰り返される。保持部17は、例えば端子圧着装置などの他の設備に搬送される。
【0044】
上述した実施形態によれば、一対の整列ブロック11A、11B間に複数の電線21を一列に並べた状態で挿入し、一対の整列ブロック11A、11B間に挿入された寄せ集めブロック12をスライドさせて、並び方向Y1一方側の電線21を一対の整列ブロック11A、11B間外に押し出してストッパ15に当接させ、ストッパ15に当接された電線21のみを一対の分離爪13A間に挿入し、一対の分離爪13Aを対向方向Y2の一方側にスライドして、一対の分離爪13A間に挿入された電線21を他の電線21と分離させている。これにより、自動で複数の電線21の1本を他の電線21から分離できる。
【0045】
また、上述した実施形態によれば、複数の電線21を束ねて所定位置に固定する電線固定部16を備え、複数の電線21は、電線固定部16よりも端末側が一対の整列ブロック11A、11B間に挿入されている。これにより、
図4に示すように、一対の分離爪13A間に挿入される電線21の長手方向Y3における位置は、電線固定部16から一対の分離爪13Aまでの経路長となる。このため、複数の電線21において、一対の分離爪13Aに挿入される位置を揃えることができる。
【0046】
また、上述した実施形態によれば、ストッパ15は、整列ブロック11Aに固定され、ストッパ15及び当該ストッパ15が固定された整列ブロック11Aが、斜め方向Y4にスライド自在に設けられている。これにより、ストッパ15及びストッパ15が固定された整列ブロック11Aをスライドさせるたけで、整列ブロック11Bとストッパ15との隙間S2、及び、一対の整列ブロック11A、11B間の隙間S1、を同時に電線21の径に合わせて調整できる。
【0047】
また、上述した実施形態によれば、一対の分離爪13Aを対向方向Y2にスライドさせたときに、一対の分離爪13Aに挿入された電線21が互いの間に挿入される一対の保持爪17Aを備えている。この一対の保持爪17Aに保持させることにより、端子圧着装置などの別の設備に搬送してセット可能となる。
【0048】
なお、上述した実施形態によれば、保持部17は1つの支持台17Bに一対の保持爪17Aを設けていたが、これに限ったものではない。例えば、
図8に示すように、1つの支持台17Bに複数対の保持爪17Aを並べて設けるようにしてもよい。複数対の保持爪17Aは、並び方向Y1に沿って並べられている。この場合、分離ブロック13が分離位置にスライドされて、一対の保持爪17A間に電線21が挿入される毎に、保持部17を並び方向Y1の他方側にスライドさせる。このとき、保持部17のスライド量を少なくするために、隣り合う一対の保持爪17A同士が、一部重なるように長手方向Y3の位置をずらして支持台17Bに支持される。
図8に示す実施例では、並び方向Y1の一方側の一対の保持爪17Aほど、長手方向Y3の紙面手前側に位置するように支持台17Bに搭載されている。
【0049】
また、上述した実施形態によれば、一対の分離爪13Aが分離位置に位置付けられる毎に、保持部17を並び方向Y1の他方側に向けて1つずつスライドさせていた。例えば、複数の電線21の被覆が例えば赤、黄、緑、青に着色された場合について考えてみる。この場合、整列ブロック11A、11Bに電線21が並び方向Y1の一方側から順に赤、黄、緑、青の順に並べられているとすると、保持部17にも並び方向Y1の他方から順に赤、黄、緑、青の順に並べて保持される。このため、シールド線2毎に保持部17に並べられる順番が異なってしまう。
【0050】
そこで、シールド線2を構成する電線21の色を識別できる色センサを設けて、色センサの検出結果に基づいて、予め定めた順番で保持部17に並べられるように、保持部17をスライドさせるようにしてもよい。また、ここでは色センサを用いて電線21を識別していたが、これに限らず電線21を識別できる識別センサであればよい。
【0051】
上述した実施形態によれば、電線固定部16を設けていたがこれに限ったものではない。電線固定部16は必須ではない。位置を揃える必要がなければなくてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態によれば、ストッパ15は、整列ブロック11Aに固定されていたが、これに限ったものではない。例えば、図示しない固定台にストッパ15を設けてもよい。そして、分離ブロック13はこの図示しない固定台にスライド自在に固定されていてもよい。また、分離ブロック13にストッパ15を固定してもよい。
【0053】
また、上述した実施形態によれば、1つの分離ブロック13に一対の分離爪13Aのみが設けられていたが、これに限ったものではない。例えば、
図9に示すように、1つの分離ブロック13に複数対の分離爪13Aを対向方向Y2に並べて設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態によれば、ストッパ15及び整列ブロック11Aを斜め方向Y4にスライド自在に設けていたがこれに限ったものではない。整列ブロック11Bを斜め方向Y4にスライド自在に設けるようにしてもよい。整列ブロック11Bをスライドさせると並び方向Y1の一方側に向かうに従って一対の整列ブロック11A、11B間の隙間S1が狭くなる。
【0055】
この場合も、上記実施形態と同様に、整列ブロック11Bをスライドさせるだけで、隙間S1及び隙間S2を同時に電線21の径に合わせて調整できる。なお、整列ブロック11Aを斜め方向Y4にスライドさせる場合、整列ブロック11Aにストッパ15を固定して、ストッパ15も同時にスライドさせる必要があったが、整列ブロック11Bを斜め方向Y4にスライドさせる場合は、ストッパ15をスライドさせる必要がない。このため、整列ブロック11Aにストッパ15を固定する必要はない。
【0056】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。