【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプリゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ アーミー ユー エス アーミー メディカル リサーチ アンド マテリアル コマンド オフィス オブ ザ スタッフ ジャッジ アドヴォケイト
【氏名又は名称】ザ ヘンリー エム ジャクソン ファンデイション フォー ザ アドヴァンスメント オブ ミリタリー メディシン インコーポレイテッド
【文献】
"envelope glycoprotein [Human immunodeficiency virus 1]" [16-JUN-2010] Retrived from GenBank [online] Accession no.ADI62361.1 [retrieved on 18 Mar 2016] URL:[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/298206032?sat=18&satkey=1930242]
【文献】
"envelope glycoprotein [Human immunodeficiency virus 1]" [16-MAR-2005] Retrived from GenBank [online] Accession no.AAN73742.1 [retrieved on 18 Mar 2016] URL:[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/25166967?sat=4&satkey=38832869]
【文献】
"envelope glycoprotein [Human immunodeficiency virus 1]" [16-MAR-2005] Retrived from GenBank [online] Accession no.AAN73661.1 [retrieved on 18 Mar 2016] URL:[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAN73661.1]
【文献】
"env [Human immunodeficiency virus 1]" [05-SEP-1995] Retrived from GenBank [online] Accession no.AAA75116.1 [retrieved on 18 Mar 2016] URL:[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAA75116.1]
【文献】
J. Virol., 2000, Vol. 74, No. 2, pp. 627-643
【文献】
Biopolymers, 1998, Vol. 47, pp. 41-62
【文献】
J. Pept. Sci., 2006, Vol. 12, pp. 808-822
【文献】
"envelope glycoprotein [Human immunodeficiency virus 1]" [16-JUN-2010] Retrived from GenBank [online] Accession no.ADI62314.1 [retrieved on 18 Mar 2016] URL:[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/298205972?sat=18&satkey=1930242]
【文献】
J. Virol., 1994, Vol. 68, No. 5, pp. 3015-3026
【文献】
Microbiol. Mol. Biol. Rev., 2008, Vol. 72, No. 1, pp. 54-84
【文献】
PNAS, 2008, Vol. 105, No. 10, pp. 3739-3744
【文献】
J. Virol., 2015, Vol. 89, No. 15, pp. 7478-7493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
多くのHIV候補ワクチンはヒトの天然の中和抗体と相互作用しない。本明細書に記載するように、本出願人らは、広域反応性抗体と結合させるためにHIV-1 Envを改変できることを示した。したがって、本発明は、新規なHIV Envタンパク質に関係する方法及び関連組成物を提供する。
本発明の新規なHIV Envタンパク質はHIV Envタンパク質の完全なエクトドメイン(gp41の膜近傍外部領域(MPER(membrane proximal external region))を含む)を含む。gp41タンパク質は、3つの主要ドメイン、すなわちエクトドメイン、トランスメンブレンドメイン及び細胞質テールから成る。エクトドメインは、融合ペプチド、N-末端ヘプタドリピート、C-末端ヘプタドリピート及びMPERから成る。
gp41のMPERは、典型的にはgp41エクトドメインの少なくとも24−28のC-末端アミノ酸を含む。MPERは、HIV Envタンパク質の高度に保存された領域であり、広域中和性ヒトモノクローナル抗体(特に2F5、Z13及び4E10モノクローナル抗体)のためのエピトープを含む。
【0018】
本明細書に記載する本発明のHIV Envタンパク質は短縮型HIV Envタンパク質であり、前記はプロテアーゼ切断を防ぐためにgp120/gp41切断部位で変異し、gp41のMPERを含み、さらにトランスメンブレンドメインの前で切りつめられている。本発明のHIV Envタンパク質は、HIV Envタンパク質gp41の本来のMPERのいずれも含むことができる。
ある種の実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、アミノ酸配列、ALDSWNNLWNWFDIS(配列番号:23)を含むMPER配列を含む。ある種の実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、アミノ酸配列LWYIK(配列番号:24)を含むMPER配列を含む。いくつかの実施態様では、MPER配列はアミノ酸配列、ELLALDSWNNLWNWFDISNWLWYIK(配列番号:25)を含む。他の実施態様では、MPER配列はアミノ酸配列、DLLALDSWKNLWNWFDITNWLWYIK(配列番号:26)を含む。
典型的には、本発明のHIV Envタンパク質は、モノクローナル抗体のためのエピトープ、2F5、Z13及び4E10の少なくとも1つを含む。2F5エピトープの例には、本明細書に開示するALDSWN(配列番号:27)、ELDKWA(配列番号:28)及びEKNEQELLELDKWASLW(配列番号:29)(例えば以下を参照されたい:Montero, M, et al., Microbiology and Molecular Biology Reviews (2008) 72(1):54-84;及び前記に引用されている参考文献)が含まれる。4E10エピトープの例には、本明細書に開示のNWFDIS(配列番号:30)及びNWFDIT(配列番号:31)(上掲書参照)が含まれる。
【0019】
本発明のHIV Envタンパク質は、トランスメンブレンドメイン及び細胞質テールを欠くが、gp41の完全なエクトドメインを含む。ある種の実施態様では、エクトドメインは改変されて、約1−10の親水性アミノ酸をそのC-末端に含む。前記親水性アミノ酸残基は典型的には、本発明の短縮型HIV Envタンパク質のエクトドメインに付加され、ある種の実施態様では、この領域をより親水性にすることによってその曝露を改善する。HIV Envタンパク質が約1−10の親水性アミノ酸をそのC-末端に含む実施態様では、前記親水性アミノ酸は、典型的には本来のMPER配列の最後のアミノ酸残基と連続する。したがって、1−10の親水性アミノ酸は、典型的にはHIV Envタンパク質のC-末端の最後のアミノ酸残基を含む。ある種の実施態様では、前記1−10の親水性アミノ酸は1つ以上のリジン残基である。
ある種の実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、急性HIV感染個体から単離されたHIV株から誘導される。他の実施態様では、HIV感染は慢性である。ある種の実施態様では、HIV Envタンパク質は、M、O、N、又はPのグループに分類されるHIV-1株から誘導される。具体的な実施態様では、HIV Envタンパク質は、HIV-1グループMから誘導される。さらに別の実施態様では、HIV-1 グループM株は、A、B、C、D、F、G、H、J、K及び前記のハイブリッドから選択される亜型(クレード)である。さらに別の実施態様では、HIV Envタンパク質は、クレードB、クレードC又はクレードD株のHIV-1グループM株から誘導される。いくつかの実施態様では、クレードB、C又はD株は急性感染個体から単離される。他の実施態様では、クレードB、C又はD株は慢性感染個体から単離される。本発明のEnvタンパク質が誘導され得る適切な親HIV株の例には、GenBankアクセッション番号AF484477、AF484511及びAF484502に示されるHIV-1クレードD配列、GenBankアクセッション番号HM215344及びHM215345に示されるHIV-1クレードC配列が含まれる。
【0020】
ある種の実施態様では、本明細書に記載のHIV Envタンパク質は、HIVワクチン成分として例えばHIV-1に対するbNabの誘引に使用される種々の形態の免疫原として有用である。HIV Envの種々の形態は、初回免疫ではタンパク質/タンパク質発現DNA/ベクターとして、及び/又は追加免疫ではタンパク質として用いることができる。例えば、いくつかの実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、哺乳動物にDNAワクチンとして投与され、その後タンパク質として追加免疫投与が実施される。さらに別の実施態様では、HIV Envタンパク質はプラスミド中の核酸として投与され、続いてウイルスベクターとして(例えばMVA中の核酸として)投与され、続いてタンパク質として投与される。いくつかの実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、ウイルス粒子(例えばQベータ、カウピーモザイクウイルス、CRM、HPV、HBsAgなど)と架橋することによって粒子状免疫原としても用いることができた。
ある種の実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、新規な広域中和抗体のスクリーニング及び/又は広域中和血清活性を有するヒト血清及び免疫実験後の動物血清のマッピングのための試薬として利用される。他の実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、広域中和抗体の結合に対して競合する小分子のスクリーニングに利用される。同定された小分子は免疫原として又は抗ウイルス化合物として利用できた。
【0021】
本明細書に記載するように、出願人らは固有の配列を有する組換えEnvタンパク質を作製した。前記固有の配列で、出願人らはそのリーダー配列を改変し、gp120/gp41のための切断部位を改変し、親水性アミノ酸テールを付加し、さらに配列がgp41の完全なエクトドメインを含むようにトランスメンブレンドメインの前で当該配列を終結させた。前記DNA配列はそれらがコドン最適化されているので固有である。
別の有益な実施態様では、HIV Envタンパク質は、
図4、6、24、35、36及び/又は37に示すHIV Envタンパク質配列に実質的に類似する配列を有する。別の特に有益な実施態様では、HIV Envタンパク質は、
図38に示すMPER配列と実質的に類似するMPER配列を有する。
特に有益な実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、配列番号:1、又は
図3−6、23、24及び35−37に示すHIV Envタンパク質配列のいずれかと約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又は約100%の配列同一性を有する。
【0022】
ある実施態様では、本発明のHIV Envタンパク質は、新規な広域中和抗体をスクリーニング及び同定する試薬として用いることができる。中和抗体をスクリーニングするアッセイは当業界では公知である。中和アッセイのアプローチは以前に報告されている(Binley JM, et al., (2004). Comprehensive Cross-Clade Neutralization Analysis of a Panel of Anti-Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monoclonal Antibodies. J. Virol. 78: 13232-13252)。シュードタイプウイルスは、本発明の可溶性Env cDNA及び残りのHIVゲノムを別々にコードする少なくとも2つのプラスミドを一緒に細胞に同時トランスフェクトすることによって作製することができる。HIVゲノムコードベクターで、Env遺伝子はホタルルシフェラーゼ遺伝子によって置き換えることができる。シュードタイプウイルスを含むトランスフェクタントの上清を、感染ドナーの初代末梢血単核細胞(PBMC)の活性化から得られたB細胞上清とともに、又はモノクローナル若しくはポリクローナル(血清)抗体とともに一晩同時インキュベートすることができる。CD4とともにCCR5及びCXCR4補助レセプターを安定的にトランスフェクトされこれらを発現する細胞を前記混合物に添加し、3日間37℃でインキュベートできる。感染細胞はルミノメトリーで定量できる。
【0023】
いくつかの実施態様では、広域中和抗体のスクリーニングのために、エンベロープタンパク質のC-末端に酵素を結合させることによってエンベロープ-酵素融合タンパク質を構築できる。融合タンパク質及び野生型及び/又は可溶性エンベロープ糖タンパク質を含むウイルス粒子を作製して、患者の血清の存在下で標的細胞の感染に用いることができる。そのような感染細胞で測定される酵素の活性は、野生型ウイルスエンベロープタンパク質によって媒介されるウイルスの結合及び標的細胞への侵入の測定値である。融合タンパク質を作製するために用いることができる酵素の例には、ルシフェラーゼ、細菌若しくは植物のアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ及び蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質又は毒素が含まれるが、ただしこれらに限定されない。一般的には、前記アッセイはまた96ウェルプレートで実施できる。血清の存在下における酵素活性の低下は、血清中に中和抗体が存在することを示す。
本明細書で用いられるように、 “医薬”、“薬剤”及び“化合物”という用語は、in vivo又はin vitroで示すことができる何らかの薬理学的作用を提供する任意の物質組成物又は混合物を包含する。前記には小分子、抗体、微生物学的物質、ワクチン、ビタミン及び他の有益な薬剤が含まれる。本明細書で用いられるように、前記用語はさらに、患者で局在化作用又は全身的作用を生じさせる生理学的に又は薬理学的に活性な物質を含む。
【0024】
核酸、タンパク質、及び組換え技術
特段の指示がなければ、本発明は、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の通常的技術(前記は当業者の技量の範囲内である)を利用する。そのような技術は文献で説明されている。例えば以下を参照されたい:J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Books 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M. et al. (1995及び定期的増補; Current Protocols in Molecular Biology, ch. 9, 13, and 16, John Wiley & Sons, New York, N.Y.); B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn, 1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; M. J. Gait (Editor), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; and, D. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology, Academic Press。前記の一般的テキストの各々は参照により本明細書に含まれる。
“核酸”という用語は、DNA、RNA(例えばmRNA、tRNA)、ヘテロデュープレックス、及びポリペプチドをコードできる合成分子を包含し、さらに当業者が天然に存在するヌクレオチド及びその骨格の代用となり得ると認識する全てのアナローグ及び骨格代用物(例えばPNA)を含む。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよく、さらに化学的な改変物でもよい。“核酸”及び“ポリヌクレオチド”という用語は互換的に用いられる。遺伝暗号は縮退しているので、2つ以上のコドンが1つの特定のアミノ酸をコードするために用いられ、本発明の組成物及び方法は、1つの特定のアミノ酸配列をコードする複数のヌクレオチド配列を包含する。
特段の指示がなければ、それぞれ、核酸は5’から3’の向きで左から右に記載され、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの向きで左から右に記載される。
【0025】
“タンパク質”、“ペプチド”、“ポリペプチド”及び“アミノ酸配列”という用語は本明細書では互換的に用いられ、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指す。ポリマーは線状でも分枝状でもよく、改変アミノ酸又はアミノ酸アナローグを含んでいてもよく、さらにアミノ酸以外の化学的成分が介在していてもよい。前記用語はまた、天然に又は介入(例えばジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、リン酸化又は任意の他の操作若しくは改変、例えば標識又は生物活性成分との結合)によって改変されてあるアミノ酸ポリマーを包含する。本明細書では、アミノ酸残基のための通常の一文字又は三文字コードが用いられる。
本明細書で用いられる “合成”分子は、生物によるのではなく化学的又は酵素的in vitro合成によって生成される。
本明細書で用いられる“発現”という用語は、ポリペプチドが遺伝子の核酸配列を土台にして生成されるプロセスを指す。前記プロセスは転写及び翻訳の両方を含む。
“遺伝子”はポリペプチド又はRNAをコードするDNAセグメントを指す。
【0026】
“単離された”ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、前記がその本来の環境において前記に付随する物質を実質的に含まないポリヌクレオチド又はポリペプチドである。実質的に含まないとは、これらの物質を少なくとも50%、有利には少なくとも70%、より有利には少なくとも80%、さらに有利には少なくとも90%含まないことを意味する。
“単離された”核酸分子は、当該分子が天然に見出される全生物から分離され別個に存在する核酸分子、又は天然で通常付随する配列を完全に又は部分的に欠いている核酸分子、又は天然に存在しているとおりであるが前記と結合した状態で異種配列を有する配列である。
“本来の”タンパク質又はポリペプチドは、当該タンパク質が天然に存在する供給源から単離されたタンパク質又はポリペプチドを指す。“組換え”ポリペプチドは、組換えDNA技術によって生成されたポリペプチド、例えば所望のポリペプチドをコードする外因性DNA構築物によって形質転換された細胞から生成されたポリペプチドを指す。“合成”ポリペプチドは、化学合成により調製されたポリペプチドを上記に記載の合成抗原と同様に含む。
“ホモローグ”とは、対象のアミノ酸配列及び対象のヌクレオチド配列とある程度の同一性を有する物質を意味する。本明細書で用いられるように、“ホモローグ”という用語は構造及び/又は機能に関する同一性をカバーする。例えば、生じたヌクレオチド配列の発現生成物は対象のアミノ酸配列の酵素活性を有する。配列同一性に関して、好ましくは少なくとも70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%もの配列同一性が存在する。これらの用語はまた、当該配列の対立遺伝子変種を包含する。ホモローグという用語は、種形成事象によって分離された遺伝子間の関係、又は遺伝的複製化事象によって分離された遺伝子間の関係に適用することができる。
【0027】
相対的な配列同一性は市販のコンピュータプログラムによって決定できる。前記プログラムは、同一性を例えば規定値パラメーターを用いて決定する任意の適切なアルゴリズムによって2つ以上の配列間の%同一性を計算することができる。そのようなコンピュータプログラムの典型的な例はCLUSTALである。有利には、BLASTアルゴリズムが用いられ、パラメーターは規定値に設定される。BLASTアルゴリズムはNCBI(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトに詳細に記載されている。
本明細書で提供されるペプチドのホモローグは、典型的にはそのようなペプチドと構造的類似性を有する。ポリペプチドのホモローグは1つ以上の保存的アミノ酸置換を含み、前記は当該アミノ酸が属するクラスの同じもの又は当該クラスの異なるメンバーから選択できる。
ある実施態様では、当該配列はまた、欠失、挿入、又はアミノ酸残基置換(サイレント変化を引き起こし機能的に等価の物質を生じる)を有することができる。残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性及び/又は両親媒性における類似性を基準に、当該物質の二次的結合活性が保持されるかぎり意図的なアミノ酸置換を実施することができる。例えば、陰性荷電アミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、陽性荷電アミノ酸にはリジン及びアルギニンが含まれ、非荷電極性ヘッド基をもち同様な親水性値を有するアミノ酸にはロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン及びチロシンが含まれる。
【0028】
本発明はまた、保存的置換を包含し(置換及び交換はともに既存のアミノ酸残基のまた別の残基による交換を意味するために用いられる)、前記は、例えば類似の残基の類似の残基による置換、例えば塩基性残基の塩基性残基による、酸性残基の酸性残基による、極性残基の極性残基による置換などを生じ得る。非保存的置換もまた、例えばあるクラスの残基から別のクラスの残基により、又は非天然アミノ酸を含むものをまた別に巻き込んで生じ得る。前記非天然アミノ酸は、例えばオルニチン(以下ではZと称する)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下ではBと称する)、ノルロイシンオルニチン(以下ではOと称する)、ピリジルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン及びフェニルグリシンである。実施できる保存的置換は、例えば塩基性アミノ酸のグループ内(アルギニン、リジン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸のグループ内(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、脂肪族アミノ酸のグループ内(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、極性アミノ酸のグループ内(グルタミン、アスパラギン、セリン、スレオニン)、芳香族アミノ酸のグループ内(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)、ヒドロキシルアミノ酸のグループ内(セリン、スレオニン)、大きなアミノ酸のグループ内(フェニルアラニン及びトリプトファン)及び小さなアミノ酸のグループ内(グリシン、アラニン)で生じる。
【0029】
DNAを増幅させる多くの方法が当業界で公知であり、そのような方法のいずれも用いることができ、例えば以下を参照されたい:Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual 2d ed. (1989)。例えば、問題のDNAフラグメントは、ポリメラーゼ連鎖反応又は他のいくつかのポリメラーゼ媒介反復増幅反応を用いて増幅させることができる。
続いてこのDNA増幅領域を当業界で公知の任意の方法を用いて配列決定できる。有利には、核酸配列決定は、自動化方法によって(以下の文献に概略されている:Meldrum, Genome Res. September 2000;10(9):1288-303(前記文献は参照により本明細書に含まれる))、例えばベックマンCEQ 8000ジネッティックアナリシス系(Beckman CEQ 8000 Genetic Analysis System(Beckman Coulter Instruments, Inc.))を用いて実施される。核酸の配列決定の方法には、自動化蛍光DNA配列決定(例えば以下を参照されたい:Watts & MacBeath, Methods Mol Biol. 2001;167:153-70 and MacBeath et al., Methods Mol Biol. 2001;167:119-52)、キャピラリー電気泳動(例えば以下を参照されたい:Bosserhoff et al., Comb Chem High Throughput Screen. December 2000;3(6):455-66)、DNA配列決定チップ(例えば以下を参照されたい:Jain, Pharmacogenomics. August 2000;1(3):289-307)、質量分析法(例えば以下を参照されたい:Yates, Trends Genet. January 2000;16(1):5-8)、ピロシークェンシング(例えば以下を参照されたい:Ronaghi, Genome Res. January 2001;11(1):3-11)、及び超薄層ゲル電気泳動(例えば以下を参照されたい:Guttman & Ronai, Electrophoresis. December 2000; 21 (18):3952-64)が含まれるが、ただしこれらに限定されない(前述の文献の開示は参照によりそれらの全体が本明細書に含まれる)。配列決定は任意の企業によって実施され得る。そのような企業の例には、ジョージア大学分子遺伝学仲介施設(University of Georgia Molecular Genetics Instrumentation Facility (Athens, Ga.))又はセックライトDNAテクノロジーサービス(SeqWright DNA Technologies Services (Houston, Tex.))が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0030】
DNA増幅のために当業界で公知の方法のうち任意の方法、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany, F., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 88:189-193, 1991)、鎖置き換えアッセイ(SDA)、又はオリゴヌクレオチド連結アッセイ(“OLA”)(Landegren, U. et al., Science 241:1077-1080, 1988)を用いることができる。D.A. Nickersonらは、PCR及びOLAの属性を合体させた核酸検出アッセイを記載している(Nickerson, D. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 87:8923-8927, 1990)。他の公知の核酸増幅方法、例えば転写依拠増幅系(Malek, L. T. et al.,米国特許第5,130,238号;Davey, C. et al., 欧州特許出願329,822;Schuster et al.,米国特許第5,169,766号;Miller, H. I. et al., PCT出願W089/06700;Kwoh, D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 86:1173 (1989);Gingeras, T. R. et al., PCT出願W088/10315)、又はイソサーマル増幅方法(Walker, G. T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 89:392-396, 1992)もまた用いることができる。
本発明のポリメラーゼ媒介反復増幅反応を実施するために、プライマーを標的DNAの向かいあう鎖とハイブリダイズ又はアニールさせ、続いて温度を上昇させて熱安定性DNAポリメラーゼにプライマーを伸長させ、したがって2つのプライマーの間の領域にまたがるDNAの特定セグメントを複製する。続いて、各サイクルで2つのプライマー間の配列を表すDNAの量が2倍になり、もし存在するとしたら遺伝子DNA配列の特定の増幅が生じ得るように、この反応をサーモサイクルさせる。
【0031】
多様なポリメラーゼのいずれも本発明に用いることができる。サーモサイクル反応のためには、ポリメラーゼは熱安定性ポリメラーゼ、例えばTaq、KlenTaq、ストッヘル(Stoffel)フラグメント、ディープベント(Deep Vent)、Tth、Pfu、ベント及びUlTmaであり、それらの各々は市場の供給源から容易に入手できる。非サーモサイクル反応のため、及びある種のサーモサイクル反応では、ポリメラーゼは、しばしば当該領域で一般的に用いられ、さらに市場で入手可能な多くのポリメラーゼの1つ、例えばDNA pol1、クレノウフラグメント、T7 DNAポリメラーゼ及びT4 DNAポリメラーゼであろう。そのようなポリメラーゼの使用の手引は、製品文献で及び一般的な分子生物学の手引き書で容易に見出すことができる。
典型的には、プライマーと標的DNA配列とのアニーリングは約37−55℃で約2分間実施され、ポリメラーゼ酵素(例えばTaqポリメラーゼ)によるプライマー配列の伸長は、ヌクレオシド三燐酸の存在下で約70−75℃で約3分間実施され、伸長したプライマーを遊離させる変性工程は約90−95℃で約1分間実施される。しかしながら、これらのパラメーターは変動可能で、当業者は、所望の結果を達成するためには反応温度及び時間のパラメーターをどのように調節するべきかを容易に知ることができる。例えば、サイクルは10、8、6、5、4.5,4、2、1、0.5分又はそれより短くてもよい。
さらにまた、“2温度”技術を用いることができ、この場合、アニーリング工程及び伸長工程はともに同じ温度で(典型的には約60−65℃の間で)実施され、したがって各増幅サイクルの長さを短縮しより短いアッセイ時間を得ることができる。
【0032】
典型的には、本明細書に記載する反応は、検出可能量の生成物が産出されるまで繰り返される。そのような生成物の検出可能量はしばしば約10ngから約100ngの間であるが、もっと大きい量、例えば200ng、500ng、1mg又はそれ以上もまたもちろん検出され得る。濃度に関しては、生成物の検出可能量は、約0.01pmolから0.1pmol、1pmol、10pmol又はそれ以上であり得る。したがって、実施される反応サイクルの回数は変動可能で、より多くのサイクルが実施されれば、より多くの増幅生成物が産生される。ある種の実施態様では、反応は2、5、10、15、20、30、40、50、又はそれ以上のサイクルを含む。
例えば、PCR反応は、以下を含む約25−50μLのサンプルを用いて実施できる:約0.01から1.0ngの鋳型増幅配列、約10から100pmolの各ジェネリックプライマー、約1.5UのTaq DNAポリメラーゼ(Promega Corp.)、約0.2mMのdDATP、約0.2mMのdCTP、約0.2mMのdGTP、約0.2mMのdTTP、約15mM MgCl
2、約10mM Tris-HCl(pH9.0)、約50mM KCl、約1μg/mLゼラチン及び10μL/mLトリトンX-100(Saiki, 1988)。
当業者は、このポリメラーゼ媒介反復反応での使用に利用可能な多様なヌクレオチドを認識していよう。典型的には、前記ヌクレオチドは少なくとも部分的にはデオキシヌクレオチド三燐酸(dNTP)から成るであろう(それらは市場で容易に入手できる)。dNTPの最適な使用のためのパラメーターもまた当業者には公知であり、文献に記載されている。さらにまた、多数のヌクレオチド誘導体が当業者には公知であり、本反応で用いることができる。そのような誘導体には下記に記載する蛍光標識ヌクレオチドが含まれ、前記はそのような標識ヌクレオチドを含む生成物の検出を可能にする。さらにまたこのグループに含まれるものは、そのようなヌクレオチドを含む核酸の配列決定を可能にするヌクレオチドで、例えば鎖終結ヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド及びヌクレアーゼ耐性ホウ素化ヌクレオチドである。これらのDNA配列決定方法のためにもっとも典型的に用いられる試薬を含む市販のキットは入手可能で広く用いられている。他のヌクレオチドアナローグにはブロモ、ヨード又は他の改変基を有するヌクレオチドが含まれる(前記改変基は、生じた核酸の多くの特性(それらの抗原性、複製能力、融解温度、結合特性など)に影響を与える)。さらにまた、ある種のヌクレオチドは反応性側鎖基(例えばスルフヒドリル基、アミノ基、N-ヒドロキシスクシンイミジル基)を含み、前記はそれらを含む核酸の更なる改変を可能にする。
【0033】
“オリゴヌクレオチド”という用語は、2つ以上(好ましくは4つ以上)のデオキシリボヌクレオチドを含む分子と定義される。その正確なサイズは、当該オリゴヌクレオチドの最終的な機能及び使用に順を追って左右される多くの因子に左右される。本明細書で用いられる“プライマー”という用語は、精製制限消化の場合のように天然に生じるか又は合成により生成されるかに関係なくオリゴヌクレオチドを指し、前記は、プライマー伸長生成物(一方の核酸鎖に対して相補性である)の合成が誘導される条件下(すなわちヌクレオチド及び誘導薬剤(例えばDNAポリメラーゼ)の存在下並びに適切な温度及びpH)に置かれたとき、合成の開始点として機能することができる。プライマーは一本鎖でも二本鎖でもよく、誘導薬剤の存在下で所望の伸長生成物の合成をプライムするために十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源及び使用方法を含む多くの要件に左右されるであろう。ある種の実施態様では、ポリメラーゼ媒介反復増幅反応(例えばPCR反応)で遺伝子の特定の核酸配列を増幅するためにプライマーとして用いることができるオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドフラグメントから成る。そのようなフラグメントは、当該核酸サンプルとの特異的なアニーリング又はハイブリダイゼーションを可能にするために十分に長くあるべきである。当該配列は、長さが典型的には約8から約44ヌクレオチドであろうが、もっと長くてもよい。より長い配列(例えば約14から約50)がある種の実施態様では有利である。
DNAのフラグメントを増幅することが所望される実施態様では、遺伝子配列の連続する約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24ヌクレオチドストレッチを有するプライマーが意図される。
【0034】
本明細書で用いられる、“ハイブリダイゼーション”は、ブロットハイブリダイゼーション技術及びPCR技術で惹起されるような核酸塩基対の一方の鎖が相補鎖と結合する過程を指す。
いずれのプローブ配列及びハイブリダイゼーション方法を用いるとしても、当業者は、適切なハイブリダイゼーション条件(例えば温度及び化学的条件)を容易に決定できる。そのようなハイブリダイゼーション方法は当業界では周知である。例えば高選択性を要求する適用では、典型的にはハイブリダイゼーション反応について相対的にストリンジェントな条件を用いることが所望されるであろう。例えば、相対的に低塩濃度及び/又は高温条件(例えば約0.02Mから約0.10MのNaCl、約50℃から約70℃の温度によって提供される)が選択されるであろう。そのような高ストリンジェンシー条件は、プローブと鋳型又は標的鎖との間のミスマッチをほとんど(もし存在するとしても)許容しない。増量されたホルムアミドの添加によって条件をよりストリンジェントにできることは概ね理解されよう。ハイブリダイゼーション反応条件の他の変型は当業界では周知である(例えば以下を参照されたい:Sambrook et al., Molecular Cloning; A Laboratory Manual 2d ed., 1989)。
ハイブリダイゼーション条件は、核酸結合複合物の融解温度(Tm)を基にし(例えば以下の文献に教示されている:Berger and Kimmel, 1987, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol 152, Academic Press, San Diego CA)、さらに下記に説明するように所定の“ストリンジェンシー”を付与する。
【0035】
最高のストリンジェンシーは典型的には約Tm-5℃(当該プローブのTmより5℃低い)で、高ストリンジェンシーはTmより約5℃から10℃低い温度で、中等度ストリンジェンシーはTmより約10℃から20℃低い温度で、さらに低ストリンジェンシーはTmより約20℃から25℃低い温度でもたらされる。当業者には理解されるところであるが、最高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションを用いて同一のヌクレオチド配列を同定又は検出でき、一方、中等度(又は低)ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを用いて類似の又は関連するポリヌクレオチド配列を同定又は検出できる。
ある特徴では、本発明は、ストリンジェントな条件下で(例えば65℃及び0.1xSSC {1xSSC =0.15 M NaCl、0.015 Mクエン酸ナトリウム、pH 7.0})別のヌクレオチド配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を利用する。ヌクレオチド配列が二本鎖である場合、当該デュープレックスの両鎖は個々に又は一緒に本発明で利用され得る。ヌクレオチド配列が一本鎖である場合、当該ヌクレオチド配列の相補性配列もまた本発明の範囲に含まれることは理解されよう。
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ポリ核酸ハイブリッドが安定である条件を指す。そのような条件は当業者には明瞭である。当業者に公知のように、ハイブリッドの安定性はハイブリッドの融解温度(Tm)に反映される(融解温度は配列相同性が1%低下するごとに約1から1.5℃低下する)。一般的には、ハイブリッドの安定性はナトリウムイオン濃度及び温度の関数である。典型的には、ハイブリダイゼーション反応はより高いストリンジェンシー条件下で実施され、続いて多様なストリンジェンシーの洗浄が実施される。
【0036】
本明細書で用いられる、高ストリンジェンシーは、65−68℃、1MのNa
+で安定なハイブリッドを形成する核酸配列のハイブリダイゼーションを許容する条件を含む。高ストリンジェンシー条件は、以下を含む水溶液中でのハイブリダイゼーションによって提供される:6x SSC、5xデンハルト溶液、1% SDS (ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1 リン酸Na
+及び非特異的競合物質として0.1 mg/mlの変性サケ精子DNA。ハイブリダイゼーションに続いて、高ストリンジェンシー洗浄を数工程実施し、最後の洗浄(約30分)は0.2 −0.1x SSC、0.1% SDS中においてハイブリダイゼーション温度で実施できる。
これらの条件は、多様な緩衝液(例えばホルムアミド系緩衝液)及び温度を用いて順応及び重複させることができる。デンハルト溶液及びSSCは他の適切なハイブリダイゼーション緩衝液と同様に当業者には周知である(例えば以下を参照されたい:Sambrook, et al., eds. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York;又はAusubel, et al., eds. (1990) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.)。最適なハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイズするペアの長さ又はGC含有量もまた役割を果たすので、典型的には経験に基づいて決定される。
本明細書に開示したプライマー及びプローブの配列と異なる核酸分子は本発明の範囲内に含まれることが意図される。これらの配列と相補的であるか又は本明細書に記載の配列と標準的若しくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし得る核酸配列、並びにアナローグ及び誘導体もまた、本発明の範囲内に含まれることが意図される。有利には、そのような変型では、ほんのわずかな数のヌクレオチド(例えば1、2又は3つのヌクレオチド)が本明細書に記載の配列と異なるであろう。
【0037】
天然の対立遺伝子変種と一致する核酸分子、ホモローグ(すなわち他の種に由来する核酸)、又は本明細書に記載の配列と関連する他の配列(例えばパラローグ)は、例えば標準的又はストリンジェントなハイブリダイゼーション反応を公知の配列の全部又は部分をプローブとして用いて実施することによって、本明細書に開示の核酸とのそれらの相同性を基準にして単離することができる。そのような核酸ハイブリダイゼーション及びクローニングの方法は当業界では周知である。
同様に、本発明の方法で検出される核酸分子は記載した特異的な配列のフラグメントのみを含むことができる。本明細書に提供するフラグメントは(連続する)少なくとも6つ(核酸プライマー又はプローブの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするために十分な長さ)の核酸配列と定義され、せいぜい完全長配列よりも短いいくらかの部分である。フラグメントは、選択された核酸配列の任意の連続する部分から誘導できる。誘導体及びアナローグは、当該誘導体又はアナローグが下記に記載するように改変核酸又はアミノ酸を含む場合完全長であっても完全長以外であってもよい。
【0038】
本発明の核酸の誘導体、アナローグ、ホモローグ及び変種には、本発明の核酸と実質的に相同であり、多様な実施態様では、同一サイズの核酸配列にわたって、又は当業界で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントが実施される配列アラインメントで比較したとき少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%もの同一性を有する領域を含む分子が含まれる(ただし前記に限定されない)。
本発明の目的のためには、配列同一性又は相同性は、オーバーラップ及び同一性は最大であるが配列ギャップは最小であるようにアラインメントを実施したときに当該配列を比較することによって決定される。特に、配列同一性は、多数の数学的アルゴリズムのいずれかを用いて決定できる。2つの配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの非限定的な例は、KarlinとAltschulのアルゴリズムであり(Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990;87: 2264-2268)、前記アルゴリズムは以下の文献にように改変される(Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993;90: 5873-5877)。
配列の比較に用いられる数学的アルゴリズムの別の例はMeyersとMillerのアルゴリズムである(Myers & Miller, CABIOS 1988;4: 11-17)。そのようなアルゴリズムはALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれている(ALIGNプログラムはGCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの部分である)。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用するときは、PAM120ウェイト残基表、ギャプ長ペナルティー12、及びギャップペナルティー4を用いることができる。局所配列類似性を有する領域の同定及びアラインメントのためのさらに別の有用なアルゴリズムはFASTAアルゴリズムで、前記は以下の文献に記載されている(Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988;85: 2444-2448)。
【0039】
本発明の使用にはWU-BLAST(Washington University BLAST)バージョン2.0ソフトウェアが有利である。いくつかのUNIX(登録商標)プラットフォームのためにWU-BLASTバージョン2.0を実行できるプログラムは、ftp://blast.wustl.edu/blast/executablesからダウンロードできる。このプログラムはWU-BLASTバージョン1.4を基準にし、前記はさらに公開ドメインNCBI-BLASTバージョン1.4を基準にしている(Altschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266: 460-480;Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990;215: 403-410; Gish & States, 1993;Nature Genetics 3: 266-272; Karlin & Altschul, 1993;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5877、前記文献はいずれも参照により本明細書に含まれる)。
セットの全検索プログラムにおいて、ギャップ付加アラインメントルーチンはデータベース検索自体に不可欠である。ギャップ付加は所望の場合にはOFFにできる。長さ1のギャップの規定値ペナルティー(Q)は、タンパク質及びBLASTPの場合Q=9であり、BLASTNの場合Q=10であるが、任意の整数に変更できる。1つのギャップを伸長するための各残基当たりの規定値ペナルティー(R)は、タンパク質及びBLASTPの場合R=2であり、BLASTNの場合R=10であるが、任意の整数に変更できる。オーバーラップ及び同一性は最大であるが配列ギャップは最小となる配列アラインメントを実施するために、Q及びRの値の任意の組合せを用いることができる。規定値のアミノ酸比較マトリックスはBLOSUM62であるが、他のアミノ酸比較マトリックス(例えばPAM)も利用できる。
【0040】
また別に或いは前記に加えて、例えばヌクレオチド又はアミノ酸配列に関して、“相同性”又は“同一性”という用語は、2つの配列間の相同性の定量的測定値を示すことができる。パーセント配列相同性は、(N
ref−N
dif)*100/N
refとして計算できる。式中、N
difは、アラインメントを実施したときの2つの配列における非同一残基の総数であり、N
refは当該配列の一方の残基数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有するであろう(N N
ref=8、N N
dif=2)。“相同性”又は“同一性”は、2つの配列の短い配列中のヌクレオチド又はアミノ酸の数で割った同一ヌクレオチド又はアミノ酸をもつ位置の数を指すことができる。ここで、2つの配列のアラインメントは、WilburとLipmanのアルゴリズム(Wilbur & Lipman, Proc Natl Acad Sci USA 1983;80:726(前記文献は参照により本明細書に含まれる))にしたがって、例えばウィンドウサイズ20ヌクレオチド、ワード長4ヌクレオチド及びギャップペナルティー4を用いて決定することができ、さらにコンピュータ支援解析及び配列データの解釈(アラインメントを含む)は市販のプログラム(例えばIntelligenetics.TM. Suite, Intelligenetics Inc. CA)を用いて簡便に実施できる。RNA配列がDNA配列と類似している、又はある程度の配列同一性若しくは相同性を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等価であると考えられる。したがって、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)と等価と考えることによって、RNA配列は本発明の範囲内である。煩雑な実験を行うことなく、当業者はパーセント相同性を決定するために多くの他のプログラム又は参考文献から助言を得ることができる。
【0041】
コドンの最適化に関しては、本発明の核酸分子は本発明の抗原をコードするヌクレオチド配列を有し、さらに当該抗原が産生されることとなる対象動物の遺伝子において用いられるコドンを利用するように設計できる。そのような方法及びそのような方法の選択は当業者には周知である。さらにまた、配列のコドンを最適化するいくつかの企業、例えばGeneart(geneart(dot)com)が存在する。したがって、本発明のヌクレオチド配列のコドンは容易に最適化できる。
本明細書で用いられるように、“プローブ”という用語は、問題の別の分子(例えば別のオリゴヌクレオチド)とハイブリダイズすることができる分子(例えばオリゴヌクレオチド、精製制限消化におけるように天然に存在するか、又は合成、組換え若しくはPCR増幅により生成されるかには関係がない)を指す。プローブがオリゴヌクレオチドであるとき、それらは一本鎖又は二本鎖である。プローブは、特定の標的(例えば遺伝子配列)の検出、同定及び単離に有用である。本明細書に記載するように、本発明で使用されるプローブは、任意の検出系で検出できるように標識で付箋を付けることができる(前記検出系には酵素系(例えばELISA及び酵素による組織化学的アッセイ)及びルミネセンス系が含まれるが、ただしこれらに限定されない)。
【0042】
本明細書に記載のプライマー及びプローブは、例えば化学的手段によりフラグメントを直接合成することによって、又は組換え体作製のために選択した配列を組換えベクターに導入することによって容易に調製できる。フラグメントのin vivo又はin vitro増幅のためにベクター又は組換え体又はプラスミドを作製する方法は、所望される任意の方法でよい。前記方法は、例えば以下に開示されてあるか、又は以下に引用された文書に開示されてあるか、又は前記と類似する:米国特許4,603,112号;4,769,330号;4,394,448号;4,722,848号;4,745,051号4,769,331号;4,945,050号;5,494,807号;5,514,375号;5,744,140号;5,744,141号;5,756,103号;5,762,938号;5,766,599号;5,990,091号;5,174,993号;5,505,941号;5,338,683号;5,494,807号;5,591,639号;5,589,466号;5,677,178号;5,591,439号5,552,143号;5,580,859号;6,130,066号;6,004,777号;6,130,066号;6,497,883号;6,464,984号;6,451,770号;6,391,314号;6,387,376号;6,376,473号;6,368,603号;6,348,196号;6,306,400号;6,228,846号;6,221,362号;6,217,883号;6,207,166号;6,207,165号;6,159,477号;6,153,199号;6,090,393号;6,074,649号;6,045,803号;6,033,670号;6,485,729号;6,103,526号;6,224,882号;6,312,682号;6,348,450号及び6,312,683号;米国特許出願920,197号(1986年10月16日出願);WO 90/01543;W091/11525;WO 94/16716;WO 96/39491;WO 98/33510;EP 265785;EP 0370 573;Andreansky et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11313-11318; Ballay ;et al., EMBO J. 1993;4:3861-65;Felgner et al., J. Biol. Chem. 1994;269:2550-2561;Frolov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11371-11377;Graham, Tibtech 1990;8:85-87;Grunhaus et al., Sem. Virol. 1992;3:237-52;Ju et al., Diabetologia 1998;41:736-739;Kitson et al., J. Virol. 1991;65:3068-3075;McClements et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11414-11420;Moss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11341-11348;Paoletti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11349-11353;Pennock et al., Mol. Cell. Biol. 1984;4:399-406;Richardson (Ed), Methods in Molecular Biology 1995;39,“Baculovirus Expression Protocols”Humana Press Inc.;Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol. 1983;3:2156-2165;Robertson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11334-11340;Robinson et al., Sem. Immunol. 1997;9:271;及びRoizman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11307-11312。プローブ設計の戦略は、WO95/11995、EP 717,113及びWO97/29212に記載されている。
【0043】
本発明はさらに直接及び間接標識技術を意図する。例えば、直接標識は、アレイ結合プローブとハイブリダイズするヌクレオチド配列に蛍光染料を直接取り込む(例えば、染料は、標識ヌクレオチド又はPCRプライマーの存在下で酵素合成によってヌクレオチド配列に取り込まれる)。直接標識案は、典型的には、類似する化学構造及び特徴を有する蛍光染料ファミリーを用い強力なハイブリダイゼーションシグナルを生じ、実施が簡単である。核酸の直接標識を含むいくつかの実施態様では、シアニン又はアレキサアナローグがマルチ蛍光比較アレイ分析で用いられる。他の実施態様では、マイクロアレイプローブとのハイブリダイゼーションの前又は後で核酸にエピトープを取り込むために、間接標識案を利用することができる。1つ以上の染色方法及び試薬を用いて、ハイブリダイズした複合体を標識する(例えば、エピトープと結合する蛍光分子はしたがってハイブリダイズした種のエピトープと染料分子の結合により蛍光シグナルを提供する)。
本発明のプローブとして用いられるオリゴヌクレオチド配列は検出可能成分で標識できる。多様な標識成分が当業界で公知である。前記成分には例えば以下が可能である:放射能標識(例えば3H、125I、35S、14C、32Pなど)、検出可能酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼなど)、蛍光染料(例えばフルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、Cy3、Cy5、ボディピー、ボディピーファーレッド、ルシファーイエロー、ボディピー630/650-X、ボディピーR6G-X及び5-CR6Gなど)、比色標識、例えばコロイド金又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)、ビーズ、又は検出可能シグナル(例えば測色、蛍光、化学冷光又は電気化学冷光(ECL)シグナル)を発生させることができる任意の他の成分。
【0044】
プローブは、直接又は間接的に検出可能な成分で標識するか、又は検出可能成分を取り込ませるために合成することができる。ある実施態様では、検出可能標識は、ポリメラーゼ媒介反復増幅反応の少なくとも1サイクルの間に核酸に取り込まれる。例えば、ポリメラーゼ媒介増幅反応過程の最中に蛍光ヌクレオチドを取り込ませるためにポリメラーゼを用いることができる。また別には、核酸プライマー又はプローブの合成中に蛍光性ヌクレオチドを取り込ませてもよい。オリゴヌクレオチドを蛍光染料で標識するために、一般的に知られている標識方法の1つを用いることができる(Nature Biotechnology, 14, 303-308, 1996; Applied and Environmental Microbiology, 63, 1143-1147, 1997; Nucleic Acids Research, 24, 4532-4535, 1996)。有利なプローブは、3’又は5’末端を蛍光染料で標識され当該標識末端に塩基としてG又はCを含むプローブである。5’末端が標識され3'末端が非標識である場合、3’末端リボース又はデオキシリボースの3’位のC原子のOH基をリン酸基などで改変してもよい(ただし前記に限定されるわけではない)。
分光光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、又は化学的手段を用いてそのような標識を検出することができる。検出装置及び方法には、光学的画像化、電気的画像化、CCDカメラによる画像化、集積回路光学画像化及び質量分析が含まれるが、ただしこれらに限定されない。さらにまた、標的に結合した標識又は非標識プローブの量を定量することができる。そのような定量には統計分析が含まれ得る。他の実施態様では、一致部位と不一致部位との間の伝導率の相違により、クェンチングにより、蛍光動揺分析により、又はドナーとアクセプター分子間の電子伝達により検出が可能である。
【0045】
さらに別の実施態様では、検出は、PCR又はハイブリダイゼーション反応におけるハイブリダイゼーション複合体の分子間のエネルギー伝達を介するもの、例えば蛍光エネルギー伝達(FET)又は蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)によるものであり得る。FET及びFRET方法では、1つ以上の核酸プローブが蛍光分子で標識され、そのうちの一方がエネルギードナーとして機能し、他方はエネルギーアクセプター分子である。これらは時にそれぞれレポーター分子及びクェンチャー分子として周知される。ドナー分子は光の特定の波長で励起され、前記波長に対してドナー分子は通常蛍光放出波長を提示する。アクセプター分子もまたこの波長で励起され、したがって多様な距離依存エネルギー伝達メカニズムによってドナー分子の放出エネルギーを受けとることができる。一般的には、アクセプター分子は、アクセプター分子とドナー分子が接近しているとき(例えば同じ分子又は近傍分子上にあるとき)、ドナー分子の放出エネルギーを受けとる。FET及びFRET技術は当業界では周知である。例えば以下を参照されたい:米国特許5,668,648号;5,707,804号;5,728,528号;5,853,992号及び5,869,255号(FRET染料について説明); Tyagi et al. Nature Biotech. vol. 14, p 303-8 (1996);及びTyagi et al., Nature Biotech. vol 16, p 49-53 (1998) (FETの分子標識の説明);並びにMergny et al. Nucleic Acid Res. vol 22, p 920-928, (1994);及びWolf et al. PNAS vol 85, p 8790-94 (1988)(FET及びFRETに関する一般的説明及び方法に関する)。
【0046】
本発明のヌクレオチド配列はベクターに挿入できる。“ベクター”という用語は、当業者によって広く用いられ周知されている。本明細書で用いられるように、“ベクター”という用語は、当業者にとって前記が意味するものと一致して用いられる。例えば、“ベクター”という用語は、ある環境から別の環境への核酸分子の移転を可能にするか若しくは容易にする、又は核酸分子の操作を可能にするか若しくは容易にする運搬具(ベヒクル)を指すために当業者によって通常的に用いられる。
例えば、ベクターは、別のDNAセグメントを結合させて、当該結合セグメントの複製をもたらすレプリコン(例えばプラスミド、ファージ又はコスミド)である。“レプリコン”は任意の遺伝的要素であり、前記はDNAのin vivo複製の自律的単位(すなわちそれ自体の制御下で複製できる)として機能する。“複製起点”は、DNA合成に関与するDNA配列を指す。“発現制御配列”は、別のDNA配列の転写及び翻訳を制御及び調節するDNA配列である。コード配列は、“作動できるように連結” され、さらに前記は、RNAポリメラーゼが当該コード配列をmRNAに転写するとき細胞内で転写及び翻訳制御配列の“制御下に”あり、続いてmRNAは当該コード配列によってコードされたタンパク質に翻訳される。
【0047】
一般的には、プロモーター配列(挿入DNAフラグメントの効率的な転写及び翻訳を促進する)を含む発現ベクターは、宿主と連携して用いられる。発現ベクターは、典型的には複製起点、プロモーター、ターミネーターとともに形質転換細胞で表現型選択を提供できる特定の遺伝子を含む。ポリヌクレオチドがポリプロテインフラグメントをコードするとき、有利なようにベクターでは、開始コドン(ATG)がリーディングフレームの5’に配置され、終止コドンが3’に配置される。発現を制御する他の要素、例えばエンハンサー配列、安定化配列及びタンパク質の分泌を許容するシグナル配列が存在し得る。形質転換宿主を当業界で公知の手段にしたがって発酵及び培養して最適な細胞増殖を達成することができる。
本発明の免疫原の発現を可能にする任意のベクターを本発明にしたがって用いることができる。ある種の実施態様では、本発明の免疫原をin vitroで(例えば無細胞発現系で)及び/又はin vitroで増殖させた培養細胞で用いることができる。そのような応用のために、in vitro及び/又は培養細胞で免疫原の発現を可能にする任意のベクターを用いることができる。
【0048】
DNA“コード配列”は二本鎖DNA配列であり、前記は、適切な調節配列の制御下に配置されたとき、in vivoでポリペプチドに転写及び翻訳される。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドン及び3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、原核細胞配列、真核細胞mRNA由来cDNA、真核細胞(例えば哺乳動物)由来ゲノムDNA配列、及び合成DNA配列さえも含まれ得る(ただし前記に限定されない)。ポリアデニル化シグナル及び転写終了配列は通常コード配列の3’に配置されるであろう。“cDNA”はコピーDNA又は相補性DNAと定義され、mRNA転写物に由来する逆転写反応生成物である。
転写及び翻訳制御配列は、DNA調節配列(例えばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、上流調節ドメイン、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなど)であり、前記は宿主細胞でコード配列の発現を提供する。“cis-エレメント”は、特定の遺伝子座の発現をアップレギュレート又はダウンレギュレートできる他のタンパク質と相互作用するヌクレオチド配列であり、“コンセンサス配列”又は“モチーフ”とも称される。“シグナル配列”もまたコード配列とともに含まれ得る。この配列はシグナルペプチドを(当該ポリペプチドのN-末端で)コードし、シグナルペプチドは宿主細胞と通信して当該ペプチドを適切な細胞内配置へ誘導する。シグナル配列は、原核細胞及び真核細胞に固有の多様なタンパク質と結合して見出され得る。所望の遺伝子が転写及び翻訳され得るならば、これらの制御配列の全てが常に組換えベクターに存在しなければならないというわけではない。
【0049】
“プロモーター配列”は、細胞内のRNAポリメラーゼと結合し、下流(3’方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNAの調節領域である。プロモーター配列は典型的には、その3’末端で転写開始部位と境界を接し、上流(5’方向)へ伸長しバックグラウンドを超えて検出できるレベルの転写を開始させるために必要な最小数の塩基又はエレメントを含む。プロモーター配列内に、転写開始部位は、RNAポリメラーゼの結合に必要なタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)と同様に存在する。真核細胞プロモーターはしばしば(常にというわけではないが)“TATA”ボックス及び“CAT”ボックスを含む。原核細胞プロモーターはシャイン-ダルガーノ配列を-10及び-35コンセンサス配列に加えて含む。
本明細書に用いられるように、“制限エンドヌクレアーゼ”及び“制限酵素”という用語は、二本鎖DNAを特異的なヌクレオチド配列で又は前記の近くで切断する酵素を指す。
“組換えDNA技術”は、2つの異種DNA分子を(通常は異なる生物のDNAをin vitroで連結した結果として)合体させる技術を指す。組換えDNA分子は、一般的には遺伝子工学における実験によって生成される。同義語には“遺伝子スプライシング”、“分子クローニング”及び“遺伝子工学”が含まれる。これらの操作の成果は“組換え体”又は“組換え分子”をもたらす。
【0050】
細胞は、外因性又は異種DNAが細胞内に導入されるとき、そのようなDNAによって“形質転換”又は“トランスフェクト”される。この形質転換をもたらしたDNAは、細胞ゲノムに組み込まれても(共有結合されても)組み込まれなくてもよい。例えば原核細胞、酵母、及び哺乳動物細胞では、形質転換DNAはエピソーム成分(例えばベクター又はプラスミド)上で維持され得る。真核細胞に関しては、安定的に形質転換された細胞は、形質転換DNAが染色体に組み込まれ、前記DNAが染色体の複製を通して娘細胞によって継承される細胞である。この安定性は、当該形質転換DNAを含む細胞株又は娘細胞集団を含むクローンを樹立する当該真核細胞の能力によって示される。“クローン”は、単一細胞又は単一祖先から有糸分裂によって誘導された細胞集団である。“細胞株”は、何世代もの間in vitroで安定的に増殖できる原発性細胞のクローンである。外因性DNAで形質転換されてある生物(例えば植物又は動物)は“トランスジェニック”と称される。
【0051】
本明細書で用いられるように、“宿主”という用語は、原核細胞だけでなく真核細胞(例えば酵母、植物及び動物細胞)を含むことが意図される。原核細胞宿主には、大腸菌(E. coli)、ネズミチフス菌(S. tymphimurium)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)及び枯草菌(Bacillus subtilis)が含まれ得る。真核細胞宿主には、酵母(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、哺乳動物細胞及び昆虫細胞及び植物細胞(例えばアラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)及びトバクム・ニコチアナ(Tobaccum nicotiana)が含まれる。当業界では多数の哺乳動物細胞株が公知であり、米国菌培養収集所(ATCC)から入手できる不朽化細胞株、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHepG2)、マンジン-ダービ(Mandin-Darby)ウシ腎臓細胞(“MDBK”)細胞、とともに他の細胞が含まれるが、ただし前記に限定されない。同様に、細菌宿主、例えば大腸菌、枯草菌及びストレプトコッカス亜種(Streptococcus spp)は、本発現構築物に関して有用であろう。本発明で有用な酵母宿主には、とりわけサッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギレリモンジイ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)及びヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)が含まれる。本発明で有用な昆虫宿主にはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞が含まれるが、ただし前記に限定されない。
【0052】
DNA構築物の“異種”領域はより大きなDNA分子内の識別し得るDNAセグメントであり、前記は天然では当該より大きな分子に付随して見出されることはない。したがって、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードするとき、当該遺伝子は、供給源の生物のゲノム内では当該哺乳動物ゲノムDNAと通常フランキングすることがないDNAとフランキングするであろう。別の例では、コード配列は、当該コード配列それ自体が天然では見出されない構築物である(例えばゲノムコード配列がイントロンを含むcDNA、又は本来の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。対立遺伝子多様性又は天然に発生する変異事象は、本明細書に規定するDNAの異種領域を生じさせない。例えば、あるポリヌクレオチドは、異なる供給源から誘導したプラスミド又はベクターに遺伝子操作技術によって配置でき、前記は異種ポリヌクレオチドである。その本来のコード配列から取り出され、本来の配列以外のコード配列に作動できるように連結されたプロモーターは異種プロモーターである。
本明細書で用いられるように、遺伝子又はポリペプチドに適用される“フラグメント”又は“部分”は、長さが通常的には少なくとも10残基、より典型的には少なくとも20残基、好ましくは少なくとも30(例えば50)残基であるが、インタクトな配列全体よりは短い。これらの遺伝子のフラグメントは、当業者に公知の方法によって、例えば天然に存在するか若しくは組換え体の線維又はフィブリチン遺伝子の制限消化によって、線維又はフィブリチン遺伝子の限定フラグメントをコードするベクターを用いる組換えDNA技術によって、又は化学的合成によって作製することができる。
【0053】
本発明の遺伝子生成物のin vivo又はin vitro発現のために、ベクター又は組み換え体又はプラスミドを作製及び/又は投与する方法は所望される任意の方法であり得る。前記方法は、以下の文献又は以下の文献に引用された文書に開示された方法によるか、又は前記方法と類似する:米国特許4,603,112号;4,769,330号;4,394,448号;4,722,848号;4,745,051号;4,769,331号;4,945,050号;5,494,807号;5,514,375号;5,744,140号;5,744,141号;5,756,103号;5,762,938号;5,766,599号;5,990,091号;5,174,993号;5,505,941号;5,338,683号;5,494,807号;5,591,639号;5,589,466号;5,677,178号;5,591,439号;5,552,143号;5,580,859号;6,130,066号;6,004,777号;6,130,066号;6,497,883号;6,464,984号;6,451,770号;6,391,314号;6,387,376号;6,376,473号;6,368,603号;6,348,196号;6,306,400号;6,228,846号;6,221,362号;6,217,883号;6,207,166号;6,207,165号;6,159,477号;6,153,199号;6,090,393号;6,074,649号;6,045,803号;6,033,670号;6,485,729号;6,103,526号;6,224,882号;6,312,682号;6,348,450号及び6; 312,683号;米国特許出願920,197(1986年、10月16日出願);WO 90/01543;W091/11525;WO 94/16716;WO 96/39491;WO 98/33510;EP 265785;EP 0 370 573;Andreansky et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11313-11318;Ballay et al., EMBO J. 1993;4:3861-65;Felgner et al., J. Biol. Chem. 1994;269:2550-2561;Frolov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11371-11377;Graham, Tibtech 1990;8:85-87;Grunhaus et al., Sem. Virol. 1992;3:237-52;Ju et al., Diabetologia 1998;41:736-739;Kitson et al., J. Virol. 1991;65:3068-3075;McClements et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11414-11420;Moss, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11341-11348;Paoletti, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11349-11353;Pennock et al., Mol. Cell. Biol. 1984;4:399-406;Richardson (Ed), Methods in Molecular Biology 1995;39, “Baculovirus Expression Protocols,” Humana Press Inc.;Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol. 1983;3:2156-2165;Robertson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11334-11340;Robinson et al. Sem. Immunol. 1997;9:271;及びRoizman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996;93:11307-11312。
【0054】
本発明はまた、本発明のベクターを含む形質転換宿主細胞を提供する。ある実施態様では、ベクターはトランスフェクション、エレクトロポレーション又は感染によって細胞に導入される。本発明はまた、本発明の免疫原を発現する形質転換細胞を調製する方法を提供し、前記方法は、発現ベクター(例えばDNAワクチン)を細胞にトランスフェクトし、エレクトロポレートし又は感染させて生産性感染細胞を作製する工程、及び宿主細胞での免疫原の発現に十分な生物学的条件下で当該宿主細胞を維持する工程を含む。
本発明の別の実施態様にしたがえば、当該発現ベクターは、適切な細胞系でのタンパク質のin vitro発現のために用いられる発現ベクターである。発現タンパク質は、分泌後又は分泌前に(分泌がない場合、典型的には細胞溶解が発生するか又は実施される)培養上清で又は培養上清から収集され、場合によって濃縮手段(例えば限外ろ過)によって濃縮され、及び/又は精製手段(例えばアフィニティ、イオン交換又はゲルろ過型クロマトグラフィー方法)によって精製される。
宿主細胞の培養条件は個々の遺伝子にしたがって変動すること、及び宿主細胞に応じてベクターの最適な培養条件を決定するために時折日常的な実験が必要であることは当業者には理解されよう。“宿主細胞”は、遺伝的に改変されているか、又は外因性ポリヌクレオチド(例えば組換えプラスミド又はベクター)の投与によって遺伝的に改変され得る原核又は真核細胞を指す。遺伝的に改変された細胞というとき、前記用語は最初に改変された細胞及びその子孫の両方を指す。
【0055】
所望の配列を含むポリヌクレオチドを適切なクローニングベクター又は発現ベクターに挿入し、このベクターを次に適切な宿主細胞に複製及び増幅のために導入することができる。ポリヌクレオチドは当業界で公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。問題のポリヌクレオチドを含むベクターは、上記に記載の適切な多数の手段のいずれかによって宿主細胞に導入できる。前記手段には以下が含まれる:直接取り込み、食作用、トランスフェクション、f-交配、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン又は他の物質を用いるトランスフェクション;微小発射体ボンバードメント;リポフェクション;及び感染(ベクターが感染性である場合(例えばレトロウイルスベクター))。導入ベクター又はポリヌクレオチドの選択はしばしば宿主細胞の特色に左右されるであろう。
免疫原は発現が所望される場合(例えば本発明の免疫原がDNA又はDNA含有ワクチンとして用いられるとき)、本発明の免疫原の発現を許容し、さらにin vivoでの使用について安全である任意のベクターを用いることができる。好ましい実施態様では、用いられるベクターは人間、哺乳動物及び/又は実験動物での使用について安全である。
【0056】
本発明にしたがって用いられるベクターは、典型的にはそれらが適切な遺伝子調節領域(例えばプロモーター又はエンハンサー)を含むように、本発明の免疫原が発現され得るように選択されるべきである。
例えば、目的が、本発明の免疫原をin vitroで若しくは培養細胞で、又は任意の原核細胞又は真核細胞系で、当該免疫原によってコードされるタンパク質を産生させるという目的のために発現させることであるとき、任意の適切なベクターを適用に応じて用いることができる。例えばプラスミド、ウイルスベクター、細菌ベクター、原生動物ベクター、昆虫ベクター、バキュロウイルス発現ベクター、酵母ベクター、哺乳動物細胞ベクターなどを用いることができる。当業者は、ベクターの特徴及び認定環境下での免疫原の発現要件を勘案しながら適切なベクターを選択することができる。
目的が、例えばHIV抗原に対する免疫応答及び/又はHIVに対する予防又は治療免疫を生じさせるために、ある対象動物において本発明の免疫原をin vivoで発現させることであるとき、当該対象動物での発現に適切であり、さらにin vivoでの使用について安全な発現ベクターが選択されるべきである。例えば、いくつかの実施態様では、例えば本発明のHIV免疫原性組成物又はワクチンの前臨床試験のために、本発明の免疫原を実験動物で発現させることが所望され得る。他の実施態様では、本発明の免疫原性組成物及びワクチンの臨床試験で及び実際の臨床的使用のために、人間を対象動物として本発明の免疫原を発現させることが所望され得る。そのような使用に適切な任意のベクターを用いることができ、適切なベクターの選択は十分に当業者の技量の範囲内である。いくつかの実施態様では、これらのin vivoでの適用で用いられるベクターは、ベクターが当該対象動物において増幅することを防止するために弱毒化されることは好ましいことであり得る。例えば、プラスミドベクターが用いられる場合、好ましくは、それらは対象動物で機能する複製起点を欠き、したがって当該対象動物でのin vivo使用について安全性が強化されるであろう。ウイルスベクターが用いられる場合、好ましくは、それらは弱毒化されるか又は対象動物での複製が不完全であり、したがって繰り返せば当該対象動物でのin vivo使用について安全性が強化される。
【0057】
ワクチンとしての投与に適切ないずれのベクターも本発明で利用することができる。本発明のある種の実施態様では、DNAワクチンとしての使用に適切なベクター、例えばpVAX及びpcDNAベクター(Invitrogen)が用いられる。
本発明の他の実施態様では、ウイルスベクターが用いられる。ウイルス発現ベクターは当業者には周知であり、以下が含まれる:ウイルス、例えばアデノウイルス(例えばアデノウイルス亜型、Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad48及びAd49)、アデノ関連ウイルス(AAV)、アルファウイルス、レトロウイルス及びポックスウイルス(アビポックスウイルス、弱毒化ポックスウイルス及びワクシニアウイルス(例えば改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA))を含む)。ある種の実施態様では、本発明のワクチンは、Ad5、Ad11、Ad26、Ad35、Ad48及びAd49から選択されるアデノウイルスを含む。そのようなウイルスは、発現ベクターとして用いられるとき、選択された対象動物(例えば人間)で本質的に非病原性であるか、又は選択された対象動物でそれらを非病原性にするために改変されてある。例えば、複製欠損アデノウイルス及びアルファウイルスが周知であり、遺伝子デリバリーベクターとして用いることができる。
発現に続いて、当業界で公知の任意の適切な技術を用いて、本発明の抗原を単離及び/又は精製するか又は濃縮することができる。例えば、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィー、等電点ゲルクロマトグラフィー若しくは任意の他の適切な方法、又は複数の方法の組合せを用いることができる。
【0058】
ある種の実施態様では、例えば目的が対象動物で免疫原性応答を生じさせることである場合、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原がin vivoで投与される。本発明の関係で“対象動物”は任意の動物である。例えばいくつかの実施態様では、例えば本発明のHIV免疫原性組成物及びワクチンの前臨床試験のために、本発明の免疫原を実験動物で発現させることを所望できる。他の実施態様では、本発明の免疫原性組成物及びワクチンの臨床試験で及び実際の臨床的使用のために、人間を対象動物として本発明の免疫原を発現させることを所望できる。ある種の実施態様では、対象動物は人間、例えばHIVに感染しているか又は感染のリスクがある人間である。
そのようなin vivo適用のために、本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原は、医薬的に許容できる担体との混合物として本発明のヌクレオチド配列及び/又は抗原を含む免疫原性組成物の成分として好ましくは投与される。本発明の免疫原性組成物は、HIVに対して免疫応答を刺激するために有用であり、HIVの予防、緩和又は治療のためにHIVに対する予防ワクチン又は治療ワクチンの1つ以上の成分として用いることができる。本発明の核酸及びベクターは、遺伝子ワクチン(すなわち本発明の抗原をコードする核酸を対象動物(例えば人間)にデリバーし、当該抗原が続いて当該対象動物で発現され免疫応答を誘引するワクチン)を提供するために有用である。
【0059】
免疫原性組成物
本明細書で用いられる“免疫原性タンパク質又はペプチド”という用語はまた、いったん宿主に投与されたら、当該タンパク質に対して液性及び/又は細胞性タイプの免疫応答を惹起することができるという意味で免疫学的に活性なペプチド及びポリペプチドを含む。好ましくは、タンパク質フラグメントは、完全なタンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するものである。したがって、本発明のタンパク質フラグメントは、少なくとも1つのエピトープ又は抗原性決定基を含む。エピトープという用語は、液性タイプ(B細胞)及び/又は細胞性タイプ(T細胞)の免疫反応を誘発することができるタンパク質の部位に関する。
“免疫原性タンパク質又はペプチド”という用語はさらに、当該ポリペプチドが機能して本明細書に記載の免疫学的応答を生じる限り、当該配列に対する欠失、付加及び置換も意図する。
“エピトープ”という用語は、特異的なB細胞及び/又はT細胞が応答する抗原又はハプテン上の部位を指す。前記用語はまた、“抗原性決定基”又は“抗原性決定部位”と互換的に用いられる。同じエピトープを認識する抗体は、ある抗体の別の抗体と標的抗原との結合を遮断する能力を示す単純な免疫アッセイで同定することができる。
組成物又はワクチンに対する“免疫学的応答”は、問題の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体媒介性免疫学的応答の宿主における発達である。通常は、“免疫学的応答”は以下の作用の1つ以上を含む(ただしこれらに限定されない):対照の組成物又はワクチンに含まれる1つの抗原又は複数の抗原に特異的に向かう抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサ-T細胞及び/又は細胞傷害性T細胞及び/又はγδT細胞の産生。好ましくは、宿主は治療的又は予防的免疫学的応答のどちらかを提示し、新規な感染に対する耐性を強化し、及び/又は当該疾患の臨床的重症度を軽減する。そのような防御は、感染宿主によって通常示される症状の緩和又は欠如、より迅速な回復時間及び/又は感染宿主のウイルス力価の低下によって示されるであろう。
【0060】
免疫学的応答の発生は抗原提示細胞(APC)を必要とする。APCは“専門的”抗原提示細胞であっても、又はT細胞に抗原を提示するために誘導され得る別の細胞でもよい。APCには以下が含まれる:樹状突起細胞(DC)(例えば指状嵌合DC又は濾胞性DC)、ランゲルハンス細胞、PBMC、マクロファージ、B-リンパ球、又は他の細胞タイプ、例えば上皮細胞、線維芽細胞又は内皮細胞(前記は活性化されるか、又はMHC分子(クラスI又はII)をそれらの表面に発現させるためにトランスフェクションによって操作される)。APCにはまたハイブリドーマ、リンパ腫、及び合成APC(例えば脂質膜)が含まれる。APCの前駆細胞には、CD34+細胞、単球、線維芽細胞及び内皮細胞が含まれる。免疫強化を促進することができるサイトカイン遺伝子にはIL-2、IL-12、IFN-γ、TNF-α、IL-18などが含まれる。そのようなタンパク質には、MHC分子(クラスI又はクラスII)、CD80、CD86、又はCD40が含まれる。T細胞の例にはヘルパーT細胞(CD4+)及びCD8+細胞が含まれる。
【0061】
本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質又はポリペプチドという用語はまた、上記に記載の免疫学的応答を誘引するアミノ酸配列を指す。本明細書で用いられる“免疫原性”タンパク質又はポリペプチドには、当該タンパク質の完全長配列、そのアナローグ、又はその免疫学的フラグメントが含まれる。“免疫学的フラグメント”とは、1つ以上のエピトープを含み、したがって上記に記載の免疫学的応答を誘引するタンパク質フラグメントを意味する。そのようなフラグメントは、多数のエピトープマッピング技術を用いて同定できる。前記技術は当業界で周知であり、例えば以下を参照されたい:Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, NJ。例えば、線状エピトープは、例えば固相上に多数のペプチド(当該タンパク質分子の複数の部分に一致する)を同時に合成し、このペプチドを当該ペプチドがなお固相に結合している間に抗体と反応させることによって決定できる。そのような技術は当業界で公知であり、例えば以下に記載されている:米国特許4,708,871号;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002;Geysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23:709-715(前記文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に含まれる)。同様に、立体エピトープは、アミノ酸の空間配座を例えばx線結晶学及び二次元核磁気共鳴によって決定することにより容易に同定される。例えばエピトープマッピングプロトコル(上掲書)を参照されたい。
【0062】
合成抗原(例えばポリエピトープ、フランキングエピトープ及び他の組換え又は合成により誘導される抗原)もまた前記定義に含まれる。例えば以下を参照されたい:Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777-2781;Bergmann et al. (1996) J. Immunol. 157:3242-3249;Suhrbier, A. (1997) Immunol. and Cell Biol. 75:402-408;Gardner et al. (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, Jun. 28-Jul. 3, 1998。
本発明の目的のためには、免疫原性フラグメントは、通常は当該分子の少なくとも約3アミノ酸、少なくとも約5アミノ酸、少なくとも約10−15アミノ酸、又は少なくとも約25以上のアミノ酸を含むであろう。フラグメントの長さに対して決定的な上限は存在せず、フラグメントは当該タンパク質配列のほぼ完全長を含むか、又は当該タンパク質の少なくとも1つのエピトープを含む融合タンパク質すら含み得る。
以前に記載したように、エピトープ決定方法、例えばオーバーラップペプチドライブラリーの作製(Hemmer B. et al., Immunology Today, 1998, 19 (4), 163-168)、Pepscan(Geysen et al., (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81, 3998-4002; Geysen et al., (1985) Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 82, 178-182; Van der Zee R. et al., (1989) Eur. J. Immunol., 19, 43-47; Geysen H.M., (1990) Southeast Asian J. Trop. Med. Public Health, 21, 523-533; Multipin.RTM. Peptide Synthesis Kits de Chiron)及びアルゴリズム(De Groot A. et al., (1999) Nature Biotechnology, 17, 533-561;及びPCT出願PCT/US2004/022605)(前記文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に含まれる)を、煩雑な実験を行うことなく本発明の実施で用いることができる。本明細書に引用され含まれる他の文書類もまた、免疫源又は抗原のエピトープ、したがってそのようなエピトープをコードする核酸分子を決定する方法について参考にすることができる。
【0063】
本明細書に用いられるように、“抗原”又は“免疫原”という用語は相互に用いられ、対象動物で免疫応答を誘発することができる物質、典型的にはタンパク質を指す。前記用語はまた、いったん対象動物に投与されたら(当該タンパク質をコードするヌクレオチド配列又はベクターを直接的に又は対象動物への投与によって)、当該タンパク質に対して液性及び/又は細胞性タイプの免疫応答を惹起することができるという意味で免疫学的に活性なタンパク質を指す。
“抗体”という用語には、完全な抗体とともにエピトープ決定基と結合することができるそのフラグメント(例えばFab、F(ab’)
2、Fv及びscFv)が含まれる。これらの抗体フラグメントは、その抗原又はレセプターと選択的に結合する何らかの能力を保持し、前記フラグメントには例えば以下が含まれる:
(i)Fab、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むこのフラグメントは、全抗体を酵素パパインで消化することによって生成され、完全な軽鎖及び重鎖の一部分を得ることができる;
(ii)Fab’、抗体分子のこのフラグメントは全抗体をペプシンで処理し続いて還元することによって得られ、完全な軽鎖及び重鎖の一部分を生じることができる。一抗体分子につき2つのFab’フラグメントが得られる;
(iii)F(ab’)
2、全抗体を酵素ペプシンで処理し、その後の還元を行わないことによって得ることができる抗体フラグメント。F(ab’)
2は、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持された2つのFab’フラグメントのダイマーである;
(iv)scFv、融合単鎖分子として重鎖及び軽鎖の可変領域を含む遺伝的に操作されたフラグメントを含む。
これらのフラグメントを作製する一般的方法は当業界で公知である(例えば以下を参照されたい:Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York (1988)、前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
【0064】
“中和抗体”は、宿主で及び/又はin vitroの標的細胞で感染を開始及び/又は永続させる当該病原体の能力を中和することができる抗体である。中和抗体は、>1.5又は>2.0の中和インデックスでHIV-1ウイルスの侵入を阻止することができる。広域性で強力な中和抗体は、中和アッセイで約50%を超えるHIV-1ウイルス(多様なクレード及び1つのクレード内の種々の株に由来する)を中和することができる。モノクローナル抗体のこの阻害濃度は、中和アッセイのインプットウイルスの約50%を中和するために約25mg/mL未満であり得る。
“単離抗体”又は“非天然状態で存在する抗体”は、その天然の環境の成分から分離されてある抗体及び/又は回収された抗体である。その天然の環境の夾雑成分は、当該抗体の診断的又は治療的使用に干渉し得る物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質であり得る。好ましい実施態様では、抗体は、(1)Lowryの方法によって決定したとき抗体の質量の95%を超えるまで、もっとも好ましくは99質量%を超えるまで、(2)スピンニングカップシークェネーターの使用によって少なくとも15残基のN-末端又は内部アミノ酸配列を得るために十分な程度、又は(3)還元又は非還元条件下でクーマシーブルー、好ましくは銀染色を用いるSDS-PAGEによる均質性まで精製される。単離抗体には組換え細胞内のin situ抗体が含まれる。なぜならば、当該抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかしながら、通常的には単離抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製されるであろう。
【0065】
本明細書で用いられる“モノクローナル抗体”は、実質的に均質な抗体集団から入手される1つの抗体を指す。すなわち当該集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る天然に生じる可能な変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、ただ1つの抗原部位に対向する。さらにまた、種々の決定基(エピトープ)に対向する種々の抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は当該抗原上のただ1つの決定基に対向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体で夾雑されることなく合成できるという利点を有する。改変“モノクローナル”はいずれかの特定の方法による抗体製造を必要とすると解されるべきではない。例えば、本発明で有用なモノクローナル抗体は、Kohlerら(Kohler et al., Nature, 256:495, 1975)が最初に記載したハイブリドーマの方法論によって調製されるか、又は細菌細胞、真核動物細胞又は植物細胞で組換えDNA方法を用いて作製できる(例えば米国特許4,816,567号を参照されたい)。“モノクローナル抗体”はまた、例えば文献に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離できる(Clackson et al., Nature, 352:624-628, 1991;及びMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-59, 1991)。
“抗体フラグメント”は、完全な抗体の一部分、好ましくは当該完全な抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFvフラグメント;ジアボディ;線状抗体(例えば以下を参照されたい:米国特許5,641,870号;Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062, 1995);単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成されるマルチ特異性抗体が含まれる。
【0066】
タンパク質(本発明の抗体を含む)は、本明細書に例示及び記載した厳密な配列とは異なることがあることは理解されよう。したがって、本発明は、当該配列が本発明の方法に一致して機能するかぎり、提示の配列に対して欠失、付加及び置換を意図する。前記に関して、特に好ましい置換は性質として概ね保存的、すなわちアミノ酸の1つのファミリー内で生じる置換である。例えば、アミノ酸は大雑把に4つのファミリーに分割される:(1)酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは時に芳香族アミノ酸として分類される。ロイシンのイソロイシン又はバリンによる(又はその逆)、アスパラギン酸のグルタミン酸による(又はその逆)、スレオニンのセリンによる(又はその逆)、単離され非天然状態で生じる置換は、又はあるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による同様な保存的置換は、生物学的活性に大きな影響を与えないであろうということは合理的に予想できる。例示の及び記載の配列と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、当該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を与えない小さなアミノ酸置換を有するタンパク質は、したがって本発明の範囲内に包含される。
【0067】
本発明にしたがえば、ある種の実施態様では、本発明のワクチンの投与は、ワクチン接種プログラムの枠組みの中で、免疫キット又はワクチンキット若しくは方法の形で、又は多価免疫原性組成物及び多価ワクチン(例えば標的病原性因子(例えばHIV)に対する少なくとも1つのワクチン成分及び少なくとも1つの他の病原性因子に対する少なくとも1つのワクチン成分を含む)の形で他のワクチンと併用することができる。前記にはまた、少なくとも2つの病原性因子の遺伝子の同じ発現ベクターによる発現が含まれる。
本発明はしたがってまた、標的病原性因子(例えばHIV)及び標的種の少なくとも1つの他の病原体に対する多価若しくは “カクテル”免疫原性組成物又は多価若しくは“カクテル”ワクチンに関する。前記は、本発明の標的病原性因子(例えばHIV)の少なくとも1つのポリヌクレオチド及び別の病原体の免疫原を発現する少なくとも1つのポリヌクレオチドを含み、さらにこれらを発現する同じin vivo発現ベクターを利用する。
本明細書で考察するように、これらの多価組成物又はワクチンはまた医薬的に許容できる担体若しくはベヒクル又は賦形剤、及び場合によってアジュバントを含むことができる。
本明細書で考察する免疫原性組成物又はワクチンはまた、同じ病原体又は当該組成物若しくはワクチンが対するのと同じ病原体又はその動物種の少なくとも1つの他の病原体に対する少なくとも1つの従来のワクチン(例えば不活化、生弱毒化又はサブユニット)と組み合わせることができる。本明細書で考察する免疫原性組成物又はワクチンは、前記従来のワクチンの前又は後に、例えば“プライム-ブースト”レジメンで投与することができる。
【0068】
処方物
本発明の組成物は医薬的に許容できる当業界で公知の任意の担体を含むことができる。
本発明のワクチンの投与を容易にするために、本ワクチンは適切な医薬的組成物に処方することができる。一般的には、そのような組成物は、活性成分(例えばDNAワクチン)及び薬理学的に許容できる担体を含む。そのような組成物は、医薬的適用のために活性成分を患者にデリバーするために適切であり、それ自体公知の態様で、例えば通常的な混合、溶解、顆粒化、糖衣剤化、均質化、乳濁化、カプセル化、被包化、又は凍結乾燥プロセスの手段によって製造することができる。
本発明にしたがって使用される医薬組成物は、1つ以上の薬理学的又は生理学的に許容できる担体(賦形剤を含む)とともに場合によって医薬として用いることができる補助剤(活性化合物の調製物への加工を容易にする)を用いて通常的な態様で処方することができる。適切な処方物は選択される投与経路に左右される。したがって、注射のためには、活性成分は水溶液、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液中で処方できる。経粘膜投与のためには、浸透するべき障壁に対して適切な浸透剤が処方物で用いられる。そのような浸透剤は当業界で一般的に知られている。経口投与のためには、活性成分は、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤などへの混合に適した担体と組み合わせることができる。吸入投与のためには、活性成分は、便利には、適切な発射薬を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエーロゾルスプレー提示物の形でデリバーされる。活性成分は、注射(例えばボーラス注射又は持続的輸液)による非経口投与のために処方してもよい。そのような組成物は、懸濁物、油性若しくは水性ベヒクル中の溶液又は乳濁物の形態を採ることができ、処方剤(例えば懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤)を含むことができる。他の薬理学的賦形剤は当業界で公知である。
【0069】
本発明の組成物は注射可能懸濁物、溶液、スプレー、凍結乾燥散剤、シロップ、エリキシルなどであり得る。組成物の任意の適切な形態を利用することができる。そのような組成物を調製するために、本発明の核酸又はベクター(所望の純度を有する)を1つ以上の医薬的に許容できる担体及び/又は賦形剤と混合する。担体及び賦形剤は、当該組成物の他の成分と適合し得るという意味で“許容可能”でなければならない。許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤は用いられる投薬量及び濃度で受容動物に対して毒性がない。前記には水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール又は前記の組合せ;緩衝液(例えばリン酸、クエン酸及び他の有機酸);抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニン);保存料、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(例えばメチル若しくはプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリン);キレート剤、例えばEDTA;糖類、例えばシュクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤TWEEM
TM、PLURONICS
TM又はポリエチレングリコール(PEG)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0070】
本発明の免疫原性又は免疫学的組成物(例えばDNAワクチン)もまた水中油エマルジョンの形で処方できる。水中油エマルジョンは例えば以下を基剤にすることができる:軽流動パラフィン油(欧州局方型);イソプレノイド油、例えばスクォラン、スクォレン、EICOSANE
TM又はテトラテトラコンタン;アルケン(例えばイソブテン又はデセン)のオリゴマー化から生じる油;鎖状アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)又はプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、例えばイソステアリン酸エステル。油は、有利には乳化剤と一緒に用いられてエマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤であり得る。前記は例えば、ソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコール、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、又はヒドロキシステアリン酸のエステル(これらは場合によってエトキシル化される)、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばPLURONIC(商標)製品、例えばL121である。アジュバントは、乳化剤、ミセル形成剤、及び油(例えばPROVAX(商標)(IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA)の名称で市販されているもの)の混合物である。
本発明の免疫原性組成物は、さらに追加される物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、緩衝剤、又はワクチンの有効性を強化するアジュバントを含むことができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, (ed.) 1980)。
【0071】
“アジュバント”という用語はワクチンアジュバントを包含する。ワクチンアジュバントは、抗原に対する免疫応答を強化し、及び/又は所望の免疫応答に向けて免疫応答を調節する成分である。以下を参照されたい:人用医薬の欧州医薬局(EMEA)評価、ワクチンにおけるアジュバントの指針(2005)、6ページ。適切なアジュバントの例には以下が含まれる:鉱物塩、例えば水酸化アルミニウム及びアルミニウム又はリン酸カルシウムゲル;オイルエマルジョン及び界面活性剤系処方物、例えばMF59(ミクロ流動化洗剤安定化水中油エマルジョン)、QS21(精製サポニン)、AS02[SBAS2](水中油+MPL+QS21)、Montanide 1SA-51及びISA-720(安定化油中水エマルジョン);粒状化アジュバント、例えばヴィロソーム(インフルエンザヘマグルチニンを取り込んだ一層薄膜リポソームベヒクル)、AS04(MPLを含む[SBAS4]Al塩)、ISCOMS(サポニンと脂質の構造形成複合体)、ポリラクチドコグリコリド(PLG);細菌誘導体(天然及び合成)、例えばモノホスホリル脂質(MPL)、Detox(MPL+M.フレイ(M. Phlei)細胞壁骨格)、APG [RC-529](合成アシル化単糖類)、DC_Chol(自己編成によりリポソームを形成できる類脂質免疫刺激物質)、OM-174(脂質A誘導体)、CpGモチーフ(免疫刺激性CpGモチーフを含む合成オリゴヌクレオチド)、改変LT及びCT(非毒性のアジュバント作用を提供するために遺伝的に改変された細菌性毒素);内因性ヒト免疫調節物質、例えばhGM-CSF又はhIL-12(タンパク質又はプラスミドコード物として投与できるサイトカイン)、Immudaptin(C3d縦列アレイ);及び不活性ベヒクル、例えば金粒子(上掲書)。
【0072】
ワクチンの有効性を強化するアジュバントもまた処方物に添加できる。上記に加えて、アジュバントには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):鉱物塩(例えばAlK(SO
4)
2、AlNa(SO
4)
2、AlNH(SO
4)
2、シリカ、ミョウバン、Al(OH)
3、Ca
3(PO
4)
2、カオリン又は炭素)、免疫刺激複合体(ISOCOM)を含む又は含まないポリヌクレオチド(例えばCpGオリゴヌクレオチド、例えば以下に記載されたもの(Chuang, T.H. et al, (2002) J. Leuk. Biol. 71(3): 538-44;Ahmad-Nejad, P. et al (2002) Eur. J. Immunol. 32(7): 1958-68);ポリIC又はポリAU酸、CpGを含む又は含まないポリアルギニン(当業界ではIC31としても知られている(以下を参照されたい:Schellack, C. et al (2003) Proceedings of the 34PthP Annual Meeting of the German Society of Immunology;Lingnau, K. et al (2002) Vaccine 20(29-30): 3498-508));JuvaVaxTM(米国特許6,693,086号);ある種の天然物質(例えばヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来ロウD、コリネバクテリウム・パルブム(Cornyebacterium parvum)、ボルデテラ・ペルチュシス(Bordetella pertussis)又はブルセラ(Brucella)属のメンバーで見出される物質)、フラゲリン(Toll様レセプター5リガンド、以下を参照されたい:McSorley, S.J. et al (2002) J. Immunol. 169(7): 3914-9);サポニン、例えばQS21、QS17及びQS7(米国特許5,057,540号、5,650,398号、6,524,584号、6,645,495号);モノホスホリル脂質A、特に3-de-O-アシル化モノホスホリル脂質A(3D-MPL)、イミキモド(imiquimod)(IQMとしてもまた当業界で公知であり、Aldara(商標)として市販されている、米国特許4,689,338号、5,238,944号;Zuber, A.K. et al (2004) 22(13-14): 1791-8);及びCCR5阻害物質CMPD167(以下を参照されたい:Veazey, R.S. et al (2003) J. Exp. Med. 198: 1551-1562)。
【0073】
水酸化又はリン酸アルミニウム(ミョウバン)は一般的にはリン酸緩衝食塩水の0.05から0.1%溶液で用いられる。特にDNAワクチンとともに用いることができる他のアジュバントは、コレラ毒素(特にCTA1-DD/ISCOM、以下を参照されたい:Mowat, A.M. et al (2001) J. Immunol. 167(6): 3398-405)、ポリホスファゼン(Allcock, H.R. (1998) App. Organometallic Chem. 12(10-11): 659-666;Payne, L.G. et al (1995) Pharm. Biotechnol. 6: 473-93)、サイトカイン、例えばIL-2、IL-4、GM-CSF、IL-12、IGF-1、IFN-α、IFN-β及びIFN-γ(ただしこれらに限定されない)(Boyer et al., (2002) J. Liposome Res. 121:137-142; WO01/095919)、免疫調節タンパク質、例えばCD40L(ADX40、例えばWO03/063899を参照されたい)、及びナチュラルキラー細胞のCD1aリガンド(CRONY又はα-ガラクトシルセラミドとしても知られている、以下を参照されたい:Green, T.D. et al, (2003) J. Virol. 77(3): 2046-2055)、免疫刺激性融合タンパク質、例えば免疫グロブリンのFcフラグメントと融合したIL-2(Barouch et al., Science 290:486-492, 2000)、及び同時刺激性分子B7.1及びB7.2(Boyer)。前記のいずれもタンパク質として又はDNAの形態で、本発明の抗原をコードするベクターと同じ発現ベクターで、又は別々の発現ベクターで投与することができる。
【0074】
水中油エマルジョン(ウイルスベクターのために特に適切である)は以下を基剤にすることができる:軽流動パラフィン油(欧州局方型)、イソプレノイド油、例えばスクォラン、スクォレン、アルケン(例えばイソブテン又はデセン)のオリゴマー化から生じる油、直鎖アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、例えば植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコール、ジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)及びプロピレングリコールジオレエート、又は分枝脂肪アルコール若しくは酸のエステル、特にイソステアリン酸エステル。油は乳化剤と一緒に用いてエマルジョンを形成する。乳化剤は非イオン性界面活性剤であり得る。前記は、一方でソルビタン、マンニド(例えばアンヒドロマンニトールオレエート)、グリセロール、ポリグリセロール、プロピレングリコールのエステル、及び他方でオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸、又はヒドロキシステアリン酸のエステル(前記エステルは場合によってエトキシル化される)、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、例えばプルロニック、例えばL121である。
無水マレイン酸-アルケニル誘導コポリマーのためには、EMA(Monsanto)が用いられる。前記は直鎖又は架橋エチレン-無水マレイン酸コポリマーであり、それらは例えばジビニルエーテルで架橋される。以下の文献もまた参照できる:J. Fields et al., Nature 186: 778-780, Jun. 4, 1960。構造に関して、アクリル又はメタクリル酸ポリマー及びEMAは、好ましくは以下の式を有する基本単位によって形成される。式中、R1及びR2(同じでも異なっていてもよい)はH又はCH
3を表し、x=0又は1(好ましくはx=1)、y=1又は2でx+y=2である。EMAについては、x=0及びy=2で、カルボマーについてはx=y=1である。これらのポリマーは水又は生理食塩水溶液(20g/L NaCl)に可溶性であり、pHは7.3から7.4に例えばソーダ(NaOH)によって調節して、発現ベクターをその中に取り込むことができるアジュバントを提供することができる。
【0075】
アジュバントのさらに別の例は、アクリル又はメタクリル酸のポリマー、及び無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、アクリル又はメタクリル酸のポリマーで、それらは特に糖又は多価アルコールのポリアルケニルエーテルで架橋される。これらの化合物はカルボマーの名称で公知である(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた米国特許2,909,462号(参照により本明細書に含まれる)を参照することができる。前記は、ポリヒドロキシル化化合物で架橋されたアクリル酸ポリマーを記載し、ここで前記ポリヒドロキシル化化合物は少なくとも3つのヒドロキシル基(好ましくは8つを超えない)を有し、少なくとも3つのヒドロキシルの水素は不飽和脂肪族ラジカル(少なくとも2つの炭素原子を有する)によって置換される。好ましいラジカルは2から4の炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリル及び他のエチレン系不飽和基である。前記不飽和ラジカルはそれ自体他の置換基(例えばメチル)を含む。CARBOPOL(商標)(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売されている製品が特に適切である。それらは、アリルシュクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。それらの中でとりわけCARBOPOL(商標)974P、934P、及び971Pを挙げることができる。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーの中で、無水マレイン酸とエチレンのコポリマーであり、鎖状であるか又は架橋(例えばジビニルエーテルで架橋)されているコポリマーEMA(商標)(Monsanto)が好ましい。以下を参照できる:J. Fields et al., Nature, 186:778-780, 4 June 1960(参照により本明細書に含まれる)。
【0076】
本明細書で用いられる“リポソーム”は、スメチックメゾフェースを包含し、前記はリン脂質又は非リン脂質のスメチックメゾフェースを含むことができる。例えば以下を参照されたい:Small, D.M.,“The Physical Chemistry of Lipids, From Alkanes to Phospholipids”Handbook of Lipid Research, Vol, 4, Plenum, NY, 1986, pp. 49-50(“smectic mesophase”)。前記文献は以下のように述べている:ある分子を直接等方性の流動体に溶融することなく加熱するとき、前記はメゾフェース又は液晶と称され、いくつかの方向において秩序が残るが他の方向では秩序が失われることを特徴とする中間状態を経ることができる・・・。一般的には、液晶の分子はそれらの幅よりもいくらか縦長であり、当該分子の縦方向にいくらか極性又は芳香族性の部分を有する。前記分子の形状及び極性-極性又は芳香族相互作用は、当該分子が部分的に秩序を有するアレイとして配列することを可能にする・・・。これらの構造は、一端に極性基を有する分子で特徴的に発生する。分子の長軸方向に長距離にわたる秩序性を有する液晶はスメチックな、層状又は薄膜状液晶と称される・・・。スメチックな状態では、前記分子は、単層又は二重層であり、層面に対して直角又は傾き、固定又は溶融脂肪族鎖を有し得る(前掲書の
図3−4もまた参照されたい)。
【0077】
有利には、本発明の免疫原性組成物及びワクチンは、本明細書に考察した1つ以上の発現ベクター及び/又はポリペプチドの免疫学的応答及び/又は予防性免疫学的応答を誘引するために有効な量を含み、有効量は、本開示(本明細書に取り込まれた文書類を含む)及び当業界の情報から特段の実験を実施することなく決定できる。免疫原性組成物は、抗原、核酸又は発現ベクターを所望の作用部位に導入し、前記を適切で制御可能な速度で放出するために設計することができる。制御放出処方物を調製する方法は当業界で公知である。例えば、制御放出調製物は、免疫原及び/又は免疫原性組成物と複合体を形成するか又は前記を吸収するポリマーを使用することによって製造することができる。制御放出処方物は、所望の制御放出特性又は放出プロフィールを提供することが判明している適切な巨大分子(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミン)を用いて調製できる。制御放出調製物によって作用期間を制御する別の可能な方法は、ポリマー物質(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、これらの酸のコポリマー、又はエチレンビニルアセテートコポリマー)の粒子中に活性成分を取り込むことである。また別には、これらの活性成分をポリマー粒子に取り込む代わりに、例えばコアセルベーション技術によって又は界面重合によって調製したマイクロカプセル(それぞれ例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)に、コロイド状薬剤デリバリー系(例えばリポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、又は巨大エマルジョン中にこれらの物質を閉じ込めることができる。そのような技術は以下の開示されている:New Trends and Developments in Vaccines, Voller et al. (eds.), University Park Press, Baltimore, Md., 1978及びRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition。
【0078】
投与
本発明の免疫原性組成物中の本発明の抗原、核酸及び発現ベクター(包括的に免疫原と称する)の適切な投薬量は当業者には容易に決定できる。例えば、免疫原の投薬量は投与ルート及び対象動物のサイズに応じて変動し得る。当業者は、例えば、対象動物(例えば実験動物)の免疫応答を通常的な免疫学的技術を用いて測定し、適切に投薬量を調整することによって適切な用量を決定することができる。対象動物の免疫応答を測定するそのような技術には、クロム放出アッセイ、テトラマー結合アッセイ、IFN-γELISPOTアッセイ、IL-2 ELISPOT、細胞内サイトカインアッセイ、及び他の免疫学的検出アッセイ(例えば以下の成書(Harlow and David Lane, Ed.,“Antibodies: A Laboratory Manual”)に記載されているもの)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
本発明のHIVワクチンに対する細胞性応答を評価するアッセイには、細胞内染色(例えばフローサイトメトリー)及びELISPOT(酵素結合免疫吸着アッセイ様式)が含まれ、前記は、抗原に応答してサイトカイン(例えばTNFα及びINF-γ)を産生する細胞を検出及び計測することを可能にする。例えば、動物又は人間の患者から脾臓細胞又は末梢血単球(PBMC)を単離し、続いてHIVエピトープ(例えば2F5又は4E10)によりin vitroでチャレンジし、最後にELISPOT及び/又は細胞内サイトカイン染色(ICS)による試験によってワクチンレシピエントにおける細胞媒介免疫応答の潜在能力を決定することができる。テトラマー(例えばあるクラスI分子と同族のペプチドと結合した前記クラスI分子の4コピー及びアルカリホスファターゼから成る分子)を用いるフローサイトメトリーは、抗原特異的T細胞の列挙(例えば主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子と結合した特異的ペプチドを認識するT細胞の検出)を可能にする。標準的なクロム放出アッセイを用いて細胞傷害性を評価することができる。DNAワクチンに対する細胞媒介免疫応答を評価するために、抗原に応答するT細胞の増殖及びHIVエピトープ発現自己細胞のCTL媒介殺滅を測定する古くからの方法もまた用いることができる。
【0079】
ELISAアッセイ及びウェスタンブロットを用いて液性免疫応答を評価してもよい。特に、ELISA及びウェスタンブロットを用いて、抗体結合、抗体中和能力、抗体媒介融合阻害、及び抗体依存細胞傷害性を評価することができる。
MT-2アッセイを実施して中和抗体応答を測定することができる。抗体媒介中和は、以前に報告されたようにMT-2細胞殺滅アッセイで測定できる(Montefiori et al., 1988, J. Clin. Microbiol., 26:231-237)。血清による合胞体形成阻害は、ワクチン接種によって誘発された当該血清に存在する中和抗体の活性を示す。略記すれば、ワクチン接種被検血清及びコントロール血清をウイルス感染細胞(例えばMT-2 T細胞株)に曝露することができる。生存細胞を染色することによって中和を測定できる(例えばコントロールウェルの細胞変性作用が約70%を超えるが100%未満であるときにFinterの中性赤を用いる)。試験ウェル(細胞+ウイルス)間の吸収(A
540)における相違を計算し、前記の結果を細胞コントロールウェル(細胞のみ)とウイルスコントロールウェル(ウイルスのみ)との間の吸収の相違で割ることによってパーセンテージ防御を決定できる。中和力価は。少なくとも50%の細胞をウイルス誘発殺滅から防御するために必要な血漿希釈の逆数として表される。
【0080】
予防的に提供されるときは、本発明の免疫原性組成物は、理想的にはHIV感染(又はHIV感染の証明)に先だって、又はエイズによる何らかの症状に先立って(特に高リスク対象動物では)投与される。免疫原性組成物の予防的投与は、HIV感染に対する防御免疫を提供するために、又は既にHIVに感染している対象動物でエイズの進行を予防するか又は軽減するために供することができる。治療的に提供されるときは、免疫原性組成物は、エイズの症状を緩和及び治療するために供することができ、有利には、感染後可能な限り速やかに、好ましくはエイズの何らかの症状の出現前に用いられるが、当該疾患の症状の開始時(又は開始後)にもまた用いることができる。
核酸組成物の人間用の適切な用量は総核酸が1μg/kgから1mg/kg、例えば全DNAが5μg/kg−500mg/kg、全DNAが10μg/kg−250μg/kg、全DNAが10μg/kg−170μg/kgの範囲であり得る。ある実施態様では、人間の対象(18−50歳、45−75kg)には1.2mg−7.2mgのDNAが投与される。DNAワクチンは、複数回、例えば2から6回、例えば3回投与できる。具体的な実施態様では、100μgのDNA組成物が人間の対象に0、4、及び12週で投与される(各投与当たり100.mu.g)。
タンパク質組成物の免疫原性量の範囲は、アジュバントを含む総タンパク質量5μg/kg−500μg/kg、例えば10−100μg/kgであり得る。ある実施態様では、325μgのタンパク質組成物の1用量が人間(18−55歳、45−75kg)に投与される。
【0081】
免疫原性組成物は、任意の適切なデリバリー方法(筋肉内、静脈内、粘膜及び局所デリバリーを含むが、ただしこれらに限定されない)を用いて投与できる。そのような技術は当業者に周知である。デリバリー方法のより具体的な例は、筋肉内注射、皮内注射、及び皮下注射である。しかしながらデリバリーを注射の方法に限定する必要はない。さらにまた、動物組織へのDNAのデリバリーは、陽イオンリポソーム(Watanabe et al., (1994) Mol. Reprod. Dev. 38:268-274; and WO 96/20013)、裸のDNAの動物筋肉組織への直接注射(Robinson et al., (1993) Vaccine 11:957-960;Hoffman et al., (1994) Vaccine 12: 1529-1533;Xiang et al., (1994) Virology 199: 132-140;Webster et al., (1994) Vaccine 12: 1495-1498;Davis et al., (1994) Vaccine 12: 1503-1509;及びDavis et al., (1993) Hum. Mol. Gen. 2: 1847-1851)、又は“遺伝子銃”技術を用いたDNAの皮内注射(Johnston et al., (1994) Meth. Cell Biol. 43:353-365)によって達成された。動物組織へのDNAのさらに別のデリバリー方法には、エレクトロポレーション、ジェットインジェクション、微小針支援デリバリーなどが含まれる。或いはデリバリールートは経口、鼻内、又は他の適切な任意のルートであり得る。デリバリーはまた粘膜表面(例えば肛門、膣又は口腔粘膜)を介して達成される。
【0082】
免疫スケジュール(又はレジメン)は動物(人間を含む)については周知であり、個々の対象動物及び免疫原性組成物について容易に決定できる。したがって、免疫原は対象動物に1回以上投与できる。ある種の実施態様では、免疫原性組成物の分離投与には設定された間隔が存在する。この間隔は対象動物ごとに変動し、典型的には10日から数週間の範囲であり、しばしば2、4、6又は8週間である。人間については、前記間隔は典型的には2から6週間及び6ヶ月まで又は前記を超える。DNAタトゥに関しては、間隔は典型的にはほんの3日間(例えば0、3及び6日)である。免疫レジメンは典型的には免疫原性組成物の1回から6回の投与を含むが、1回、2回又は4回でもよい。免疫応答を誘発する方法はまた、免疫原とともにアジュバントの投与を含むことができる。いくつかの例では、1年、2年又は他の長期間隔(5−10年)ブースター免疫が初期免疫プロトコルを補充することができる。
本方法はまた、多様なプライム-ブーストレジメンを含む。これらの方法では、1回以上のプライミング免疫の後に1回以上のブースト免疫が続く。実際の免疫原性組成物は各免疫について同じでも異なっていてもよく、さらに免疫原組成物のタイプ(例えばタンパク質又は発現ベクターを含む)、ルート及び免疫原の処方もまた変動し得る。例えば、発現ベクターがプライミング工程及びブースト工程のために用いられるならば、前記は同じタイプでも異なるタイプでもよい(例えばDNA又は細菌又はウイルス発現ベクター)。
【0083】
本発明の免疫原性組成物は単独で投与できるが、また、例えば“他の”免疫学的、抗原性若しくはワクチン組成物又は治療組成物を同時投与又は連続投与し、それによって本発明の多価若しくは“カクテル”又は組み合わせ組成物及びそれらを利用する方法を提供することができる。例えば、いくつかの実施態様では、本発明のHIV EVタンパク質はウイルスベクター(例えばMVA)で投与される(MVAはまた1つ以上の他のHIVタンパク質(例えばgag及びpol)をコードする遺伝子を含む)。繰り返せば、投与の成分及び態様(例えば連続的又は同時投与)は投薬量と同様に、個々の対象動物の年齢、性別、体重、種及び状態、及び投与ルートのような因子を考慮しながら決定することができる。
ある種の実施態様では、本発明の免疫原性組成物は哺乳動物に投与される。さらに別の実施態様では、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウサギ、モルモット、又はマウスである。
当業者は、タンパク質サブユニット及び/又はDNAワクチンの適切な投薬量を容易に決定できる。一般的にはある種の因子は投与される投薬量に影響を与えるであろうが、ただし、ある背景、DNAワクチンが投与される実施態様では、適切な投薬量とは、外因性遺伝子が発現され、当該遺伝子生成物が当該哺乳動物の特定の細胞で産生される投薬量である。好ましくは、投薬量は、当該動物で治療作用及び/又は予防作用を示すために十分な量である。
【0084】
併用療法
HIVに感染した対象動物を本発明の組成物で治療する方法には、他のHIV治療が実施される併用療法が含まれ得る。例えば、本発明のHIV Envタンパク質サブユニットワクチン接種を受けている対象動物は、抗レトロウイルス薬剤を個々に又は一緒に投与され、例えばヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、及びHIVプロテアーゼ阻害剤の多様な組み合わせを用いることができる。
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、例えばジドブジン(AZT)、ジダノシン(ddI)、ザルシタビン(ddC)、スタブジン(d4T)、ラミブジン(3TC)、アバカビア(1592U89)、アデホビアジピボキシル[ビス(POM)-PMEA]、ロブカビア(BMS0180194)、及びロデノシン(FddA)、9-(2,3-ジデオキシ-2-フルオロ-b-D-スレオ-ペントフラノシル)アデニンが含まれる。
非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、ネビラピン(BI-RG-587)、デラビラジン(BHAP, U-90152)、及びエファビレンズ(DMP-266)が含まれる。
プロテアーゼ阻害剤には、サキナビア(Ro 31-8959)、リトナビア(ABT-538)、インジナビア(MK-639)、ナルフナビア(AG-1343)(Agouron Pharmaceuticals, Inc.からVIRACEPT
TM の商標名で入手できる)、アンプレナビア(141W94)(非ペプチドプロテアーゼ、商標名AGENERASE
TM)、及びラシナビア(BMS-234475)が含まれる。
【0085】
キット
本発明の組成物及びそれらの使用方法はキット調製物に理想的に適合する。HIV Env核酸及び/又はタンパク質は、任意の形態が可能な容器中で、例えば凍結乾燥され又は溶液(例えば蒸留水又は緩衝液)で提供され得る。本発明のキットには、典型的には一組の指示書が含まれるであろう。
前記キットは、1つ以上の他の成分(他の試薬(例えば希釈剤)、装置、又は投与のために組成物を調製するための他の物質を含む);医薬的に許容できる担体;及び装置又は対象動物への投与のための他の物質を含むことができる。使用のための指示書は治療的適用のための指示を含み、前記指示は、本明細書に記載したように推奨される投薬量及び/又は例えば人間の対象における投与態様を含む。
キットはさらに別に、少なくとも1つの追加の試薬、例えば診断用又は治療用薬剤、例えば対象動物における当該組成物の免疫応答をモニターする診断用試薬、又は本明細書に記載の追加の治療薬剤を含むことができる。
ある実施態様では、キットは、本発明の1つ以上の組換えHIV Envタンパク質を含むバイアル(又は他の適切な容器)を含む。ある種の実施態様では、キットはさらにアジュバント及び賦形剤を含む。前記アジュバント及び賦形剤は当該タンパク質とともに処方され、当該処方物に含まれ得るか、又はキット内に別々に包装され得る。
本発明をこれから以下の非限定的な実施例を用いてさらに説明されるであろう。
【実施例1】
【0086】
Ba-L gp140 DC 4E10
HIV-1 Ba-L gp160遺伝子(シグナルペプチドを欠く)は、ジーンアート(Geneart)でコドン最適化され合成された。切断を防ぐためにgp120/gp41切断部位を以下のように変異させた:Arg501及びArg509をセリンに変更。gp140 DC 4E10配列をPCRによって増幅し、tPaシグナルとインフレームでpJWIRES発現ベクターに挿入した。アミノ末端はE(30)で開始し、カルボキシ末端は…WLWYIK(681)(配列番号:45)で終了し、可溶性を高めるためにさらにKKKが付加された。
pJWIRESは以下を含む:
挿入遺伝子の発現は、CMVプロモーター及びウシ成長ホルモン(BGH)ポリAによって駆動される。前記はピューロマイシン耐性のためのIRES配列により挿入遺伝子と連結されたピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を有する。
得られた構築物はpJW Ba-L gp140 DC 4E10 Puroと称される(
図1)。
トランスフェクション実験は、リポフェクタミン2000を用いHEK293細胞で実施した。4E10及び2F5ヒトMPER抗体(Polymun Scientific GmbH, Klosterneuburg, Austria)による条件付け培養液のIPウェスタンブロットは、
図2に示すようにgp140 DC 4E10との反応性を示した。
クレードB配列、Ba-L gp140 DC 4E10の核酸及びタンパク質配列についてはまた
図3、4を参照されたい。
図5、6は、第二の改変クレードB配列、Ba-L gp145の核酸及びタンパク質配列を示す。
【実施例2】
【0087】
クレードD gp140の方法
細胞株の開発及び分子クローニング
3つのHIV-1クレードDのgp160(gp140)の細胞外ドメインを安定的に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を開発した。目標は、精製してHIV-1ワクチン開発に用いることができる高レベルのgp140を分泌する細胞株を開発することであった。gp140発現のために選択した単離株は以下のとおりである:A07412(親配列、GenBankアクセッション番号AF484477(GenBankアクセッション番号AY736828もまた参照されたい))、57128(親配列、GenBankアクセッション番号AF484502(GenBankアクセッション番号AY736829もまた参照されたい))及び57140(親配列、GenBankアクセッション番号AF484511もまた参照されたい))。この系における発現を最大にするために、gp140のコードは合成によりGENEARTで作製された。この合成プロセスを介してヒト細胞に存在するもっとも豊富なtRNAと一致するコドンを使用する遺伝子を設計することによって、前記遺伝子のコドンをヒト細胞での発現のために最適化させた。ヒトコドン最適化は、ヒトで用いられるいずれのDNAワクチン成分にとっても理想的であるが、それはまたCHOでの高レベル発現の達成でもまた極めて有効である。コドン最適化に加えて、合成遺伝子はまた、転写/翻訳効率を低下させ得る多様なcis-作動性成分(例えばスプライス部位、ポリA部位、アデニン富裕成分、Rev応答性成分(RRE)及び他のmRNA二次構造)とともに、mRNAを脱安定化させ得る他のモチーフ(例えばGC-富裕ストレッチ、内部TATAボックス、Qui部位)を排除するように設計された。
各単離株についてPCR系プロセスを用い、当該gp140遺伝子を第一及び第二gp120/gp41切断部位で変異させた。前記は、gp120/gp41切断を防止する(分泌時に安定なgp140分子を生じる)ために実施された。さらにまた、各々の本来のシグナルペプチドを除去して、発現ベクター内の効率的な組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)シグナルを分泌シグナルとして用いることができる。gp140コードは各々、トランスメンブレン(TM)ドメインの直前に挿入された終止コドンを有し、gp140が分泌時に細胞膜と結合するのを防止する。gp140は、CHO細胞での安定な発現のためにNheI及びEcoRI部位で哺乳動物発現ベクターpJWTCDE-Nと連結された。
【0088】
A07412
このアミノ末端のアミノ酸配列はSL(30)WVT..(配列番号:46)で、カルボキシ末端は...FSITK(673)-終止コドン(配列番号:47)である。アミノ末端のセリンは、tPaシグナルの末端のNheIクローニング部位に由来する外来残基である。gp120/gp41切断部位は、RAKRRVVEREKR(507)(配列番号:48)からRAKSRVVEREKS(配列番号:49)に改変された。
図51(配列番号:3)もまた参照されたい。
57140
このアミノ末端のアミノ酸配列はSL(33)WVT..(配列番号:46)で、カルボキシ末端は...FSISN(673)-終止コドン(配列番号:50)である。アミノ末端のセリンは、tPaシグナルの末端のNheIクローニング部位に由来する外来残基である。gp120/gp41切断部位は、RAKRRVVEREKR(507)(配列番号:48)からRAKSRVVEREKS(配列番号:49)に改変された。
図51(配列番号:4)もまた参照されたい。
57128
このアミノ末端のアミノ酸配列はSL(33)WVT..(配列番号:46)で、カルボキシ末端は...FSITK(671)-終止コドン(配列番号:47)である。アミノ末端のセリンは、tPaシグナルの末端のNheIクローニング部位に由来する外来残基である。gp120/gp41切断部位は、KARRRVVEREKR(507)(配列番号:51)からKARSRVVEREKS(配列番号:52)に改変された。
図51(配列番号:5)もまた参照されたい。
【0089】
pJWTCDE-Nは、CHO細胞での外来遺伝子の効率的な発現のために以下の成分を含んでいる(
図7):
(1)gp140遺伝子の転写は、CMVプロモーター/イントロンA及びウシ成長ホルモン(BGH)ポリAによって駆動される。
(2)安定的にトランスフェクトされた細胞をG418スルフェート選別下で選別するために、SV40プロモーター及び合成ポリAによって駆動されるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPT II)。
(3)トランスフェクト細胞でのジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)の相応に弱い発現のために、部分的に損傷させたSV40プロモーター及びSV40ポリAによって駆動されるDHFR。前記は、DHFR阻害剤メトトレキセート(MTX)による処置を通して外来DNAの遺伝子増幅の誘発と同様に無ヌクレオシド培養液での選別を促進する。この遺伝子増幅は、MTX含有培養液中での生命維持に必要とされるDHFR生成の増加と一緒にgp140生成レベルを大きく増加させることができる。
各々について発現ベクターをクローニングした後,挿入gp140遺伝子の配列決定を実施して、適切な構築物を担保する。
gp140を分泌する安定なCHO細胞株を樹立するために、リポフェクタミン2000(Gibco)を用いて、DHFR欠損CHO細胞(CHO-dhfr
-)にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞をgp120抗原捕捉アッセイ及びHIV-1(+)ヒト血清による放射能免疫沈澱(RIP)で分析し、gp140生成の有無及び量を検出した。トランスフェクト細胞を、アルファMEM(10%ウシ胎児透析血清及び550μg/mLのG418スルフェートを含む)での選別のために96ウェルプレートにプレートした。生存細胞をgp120抗原捕捉アッセイでスクリーニングし、発現及び単一細胞クローニングのために相応に高いgp140プロデューサーを選別した。
【0090】
gp120抗原捕捉アッセイはgp120タンパク質の検出及び定量のためのELISA系アッセイである。分子、例えばgp140並びに後で述べるgp140 DC 4E10及びgp145タンパク質(前記はgp120の配列を含む)もまたこのアッセイで検出できる。96ウェルプレートのマイクロタイターウェルを、HIV-1 gp120の固有のエピトープと反応するネズミモノクローナル抗体で被覆する。gp120標準溶液又は組織培養試験サンプルを当該ウェルに添加すると、プレートに結合した抗体及び溶液中のgp120により免疫複合体が形成される。続いて未結合物質を完全に洗い流す。ペルオキシダーゼ結合ヒト抗gp120ポリクローナル抗体を含む結合溶液を続いて添加する。未結合の前記結合溶液を洗い流し、ペルオキシダーゼ基質を添加する。酵素-基質反応は基質の青色の変化を生じる。停止溶液(2N硫酸)を添加したとき青色は黄色に変化し、前記を450nmの吸収を読み取ることによって定量的に測定することができる。gp120標準物及び試験サンプル中のgp120の量は吸収に対応する。試験サンプル中のgp120の濃度は標準曲線を基準にして計算できる。
gp120抗原捕捉アッセイ及びRIPを用いて実際のクローンを比較して、いくつかの強力なプロデューサーが発見された。最良のものを0.02μMのMTXで処理して外来DNAの遺伝子増幅を促進させた。いったんMTX中で正常な速度で細胞が増殖できたら、より高いプロデューサーを見つけるためにそれらを再びクローニングした。細胞株を限定希釈によってクローニングし、最適発現について分析し、さらに無タンパク質培養液HyQPFCHOリキッドソイ(HyClone; Logan, Utah)での増殖に順応させた。
【0091】
タンパク質精製
CHO培養由来の条件付け培養液を遠心分離によって収集し、100kDa分子量カットオフ接触流フィルターを用いて約2Lに濃縮した。培養液をリン酸緩衝液で緩衝させ、pHを7.2に調整した。塩化ナトリウム濃度を300mMに調整し、0.22ミクロンフィルターでろ過した。培養液をGNLアガロース(Vector Laboratories; Burlingame, CA)カラムに通し、さらに500mMのメチルα-D-マンノピラノシドを含むPBSにEnvタンパク質を溶出させた。培養液をGNLアガロースカラムにさらに3−4回通して全てのEnvタンパク質を条件付け培養液から取り出した。追加の工程を実施してEnvタンパク質をさらに精製した。GNLアガロースカラム溶出液の塩化ナトリウム濃度を212mMに調整し、Q-セファロース(Amersham Biosciences; Piscataway, NJ)カラムに通した。高分子量不純物はQ-セファロースに結合するが、Envはこれらの条件下では結合しない。空気酸化により形成された一切の異常なマルチマーを破壊するために、Q-セファロース処理Envタンパク質を約3mLに濃縮し、50mMのDTTで4℃、15時間、続いて21℃で1時間処理した。DTT処理調製物を続いてスーパーデックス200 26/60(Amersham Biosciences)ゲルろ過カラムで泳動させて別の高分子量及び低分子量不純物を除去するとともに、Env分解生成物の量を減少させた。前記カラムは、1mMのDTTを含むPBSで0.5mL/分により泳動させた。もっとも純度の高いEnvタンパク質を含む分画(SDS-PAGEで分析)をプールした。続いて、PBSで平衡化させた10mLのPD-10カラム(Amersham Biosciences)で緩衝液の交換を実施した。最後に、タンパク質を0.22μmフィルターでろ過し、いくつかに分けて-70℃で保存した。
【実施例3】
【0092】
序
感染が急性期及び初期血清変換期にある患者から単離された4つの亜型C単離体のEnvタンパク質を発現するプラスミドDNA構築物が開発され、gp145発現について最良の候補物をダウンセレクトするために試験された。単離体C06980v0c22が選択され、C06980v0c22 gp145を発現する安定な細胞株が開発され、リサーチ細胞バンクが作成された。精製gp145タンパク質が製造され、前臨床免疫原性試験での研究のために供給された。
上記に記載したように、出願人らは亜型D HIV-1サブユニットワクチンの開発について共同で取り組んだ。亜型D HIV-1単離体の配列が提供され、いくつかのgp140及びgp120-発現CHO細胞株が調製された。細胞株は無血清培養液に順応させ、Envタンパク質が前臨床免疫原性試験のために精製された。小動物を免疫し、gp140及びgp120特異的血清抗体の結合力価をELISAにより判定し、相同な初期単離体に対する中和抗体力価をシュードタイプアッセイにより判定した。全てのgp120及びgp140タンパク質が免疫原性であったが、いずれも相同なシュードタイプ単離体に対する検出可能な中和抗体は誘引しなかった。
HIV Envサブユニットワクチンの試みは、より強力で広域な中和抗体応答を誘引することを目標に、亜型C Env配列を用いつつ推し進められた。上記に考察したように、改変HIV-1 Ba-L(亜型B)EnvをコードするDNA構築物が開発された。この構築物は短縮型gp160分子(gp145と称される)をコードする。このgp145タンパク質は、膜近傍外部領域(MPER)末端で切りつめられた切断欠損gp160の上流に改変された組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-Pa)シグナルペプチドを含む。理論的にCテールの親水性を高めるためにC末端には3つの追加のリジン残基が含まれ、免疫系に潜在的中和性MPERエピトープを提示した。上記で考察した以前のgp140分子とは異なり、このgp145分子は、ELISA及びウェスタンブロットで中和性抗MPER huMAb 4E10と反応した。
亜型Cはもっともありふれた世界的亜型であることが知られており、さらに予備的データが、亜型Cの感染はもっとも広域な交差反応性HIV-1中和応答を自然感染において誘発し得ることを提唱しているので、亜型Cを詳細に調査した。初期CCR5-依存亜型C Env配列を用いてgp145構築物を作製することが提案された。このEnvタンパク質を発現する安定なCHO細胞株が開発された。
【0093】
エンベロープダウンセレクション
4つの亜型C株由来のenv配列がコドン最適化及び合成のために提供された。一過性発現実験を実施して、更なるgp145の開発のために用いられる単離体を選別した。
3例の急性HIV-1感染(C06838v1c48、C06980v0c22及びC3728v2c6)及び1例の初期血清変換HIV-1感染(C06980v1c3)から、4つの南アフリカ亜型C R5 HIV-1エンベロープ配列の電子コピーが提供された。これらの配列の2つは同じ個体に由来する(一方は急性感染期(C06980v0c22)、他方(C06980v1c3)は血清変換後のものである)。
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での発現を最大にするために、C.グリセウス(C. griseus(チャイニーズハムスター))のコドン偏向を取り入れて、ジーンアート社(Geneart AG, Regensberg, Germany)がenv遺伝子を合成した。更なる発現の最適化のために、翻訳効率を低下させ得るcis-作動性モチーフを排除した(例えば内部TATAボックス、chi-部位、リボソーム進入部位、RNA二次構造、反復配列など)。各env遺伝子の2つのバージョンを合成した:a)gp160、本来のシグナルペプチドを欠く完全長gp160及びb)gp160 DC、本来のシグナルペプチドを欠き、さらにプロテアーゼ切断を防ぐためにgp120/gp41一次及び二次切断部位に変異を有する完全長gp160。
4つのgp160(WT)及びgp160 DC(切断変異体)遺伝子の翻訳が比較された(
図35)。分子は、発現タンパク質におけるt-Paシグナルペプチド切断に続く配列として示されている。影を付けた領域はgp120/gp41切断部位を強調し、gp160 DC遺伝子中のアルギニンからセリンへの変異はタンパク質分解切断を防ぐ。gp160遺伝子はpSWTIPK3(私有哺乳動物発現プラスミド(Advanced BioSciences Laboratories, Inc.))のtPaシグナルペプチドとインフレームにあるNhe1及びEcoRI部位でクローニングされた(
図8)。本来のリーダー配列はtPaシグナルペプチドで置き換えられ、前記シグナルペプチドはより効率的な分泌シグナル、gp160生成及び細胞膜への輸送の強化を提供する。前記発現プラスミドは、発現制御のためにサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。前記プラスミドを形質転換大腸菌(Escherichia coli)から増幅及び精製し、さらにgp160コード領域の配列を決定して配列同一性を確認した。
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1)及びヒト胎児腎細胞(HEK293;クローン293H)をトランスフェクトし、ウェスタンブロット及び抗原捕捉ELISAでgp160生成について分析した。gp160分子の生成品質及び量を基準にして、gp145タンパク質産生CHO細胞株の開発にどの単離体を用いるか否かを決定した。リポフェクション(リポフェクタミン2000;Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、4つのgp160及びgp160DCプラスミド構築物を細胞にトランスフェクトした。HIV-1Ba-L gp145、HIV-1Ba-L gp160又はHIV-1亜型C gp140発現構築物をトランスフェクトした培養は陽性コントロールとして供した。ナイーブCHO-K1及びHEK239は陰性コントロールとして供した。トランスフェクション後48時間で培養液及び細胞溶解物を分析のために採集した。
【0094】
CHO-K1のトランスフェクションに由来する培養液及び細胞溶解サンプルを、免疫沈澱にはHIV-1陽性ヒト血清を、検出にはHIV-1Ba-L gp160免疫ウサギ血清を用いてIPウェスタンブロットによりgp41/gp120/gp160含有量について評価した。Ba-L gp145コントロールを除いて、いずれの構築物についても培養液でEnv発現は検出されなかった(データは示されていない)。gp160がgp41及びgp120にプロセッシングされるならばgp120は培養液中に放出され得るであろうが、放出gp120の量はアッセイの検出限界より低い。細胞溶解物からは、Env発現は亜型Cのgp160及びgp160DC構築物の各々で明白である(
図19)。各構築物はgp160を生成し、各単離体は異なるサイズで泳動したが、おそらく異なるグリコシル化パターンに起因するのであろう。pSWC06980v0c22 gp160のみがgp120及びgp41へのgp160のプロセッシングを示す。
CHO-K1の発現レベルは極めて低いので、各構築物の更なる評価のためにはHEK293細胞を用いるトランスフェクション及び分析を実施した。HEK239トランスフェクション由来の細胞溶解サンプルを、免疫沈澱にはhuMAb to gp41(4E10)を、さらに検出にはHIV-1Ba-L gp160免疫ウサギ血清を用いてIP ウェスタンブロットによりgp41/gp160含有量について評価した。Env発現は亜型Cのgp160及びgp160DC構築物の各々に関して明瞭な証拠が示されている(
図20)。各構築物がgp160を生成し、各単離体は異なるサイズで泳動したが、おそらく異なるグリコシル化パターンに起因するのであろう。繰り返せば、pSWC06980v0c22 gp160のみがgp120及びgp41へのgp160のプロセッシングを示す。
gp120/gp160生成レベルの定量のために、トランスフェクション実施CHO-K1及びHEK239由来の培養液及び細胞溶解物を、HIV-1 gp120抗原捕捉アッセイで分析した(表1)。CHO-K1トランスフェクションでは、Env発現はC06838v1c48 gp160DCを除いて各構築物で検出された。発現レベルは、Ba-L gp145コントロールと比較して全体的に極めて低かった。これは、非常に低い発現レベルとこれら単離体のEnvタンパク質の検出の困難さによるものであった。Ba-L gp145発現レベルもまた、CHO細胞のトランスフェクション効率の低さのために極めて低かった。産生が最高の亜型C構築物はC06980v0c22 gp160及びC3728v2c6 gp160であった。濃度の値は、種々の単離体由来の亜型C gp120標準物との相対的反応性を基準にすることは留意されるべきである。厳密な濃度は、アッセイで用いられた抗体に対する各単離体の親和性における可能な相違のために報告したものと異なる可能性がある。
【0095】
表1:HIV-1亜型C gp160及びgp160DCをトランスフェクトしたCHO-K1細胞のHIV-1 gp120抗原捕捉アッセイ。gp120及びgp160の量は、トランスフェクションの48時間後に培養液及び細胞溶解物で検出される。
Envタンパク質の検出はCHO-K1細胞では非常に弱いので、HEK239トランスフェクションの分析を実施して結果を立証した。HEK239では、Env発現は各構築物の抗原捕捉を用いて検出された(表2)。HEK239では、06838v1c48 gp160DCが検出されたが、しかしながら非常に弱かった。発現レベルはCHO-K1の場合よりもはるかに高かった。産生が最高の亜型C構築物は再びC06980v0c22 gp160及びC3728v2c6 gp160であった。
【0096】
表2:HIV-1亜型C gp160及びgp160DC発現プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞のHIV-1 gp120抗原捕捉アッセイ。gp120及びgp160の量は、トランスフェクションの48時間後に培養液及び細胞溶解物で検出される。
ヒトモノクローナル抗体4E10(表3)及び2F5(表4)を用いて、2つのgp160抗原捕捉アッセイでgp160の更なる評価を実施した。各単離体由来のgp160は4E10によるアッセイで強力に反応した。C06838v1c48単離体さえも強力に反応し、gp120アッセイはこの単離体に対して人工的に低い結果を提供することが示された。各単離体のgp160は2F5によるアッセイで反応したが、ただし4E10によるアッセイよりも弱かった。C06980v1c22単離体はもっとも強く反応した。より弱い2F5の反応性は、2F5エピトープは、当該抗体が作製された亜型B単離体のエピトープとは亜型C単離体では全く異なるという事実によって説明される。理論に拘束されないが、出願人らは、2F5に対する反応性は、アミノ酸骨格との相互作用ではなく、むしろgp160結合脂質との相互作用による可能性があると考える。これらのアッセイは、MPERは各構築物上で露出されていることを示している。
【0097】
表3:HIV-1亜型C gp160及びgp160DC発現プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞を用いたHIV-1 gp160抗原捕捉アッセイ。gp41 MPERに対する4E10 huMAb が捕捉抗体として用いられる。gp160の相対量は、トランスフェクション48時間後に培養液及び細胞溶解物で検出される。
【0098】
表4:HIV-1亜型C gp160及びgp160DC発現プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞を用いたHIV-1 gp160抗原捕捉アッセイ。gp41 MPERに対する2F5 huMAb が捕捉抗体として用いられる。gp160の相対量は、トランスフェクション48時間後に培養液及び細胞溶解物で検出される。
出願人らは、gp145を産生するCHO細胞株を樹立するために単離体C06980v0c22が用いられると結論した。この単離体を使用するとの決定は下記のいくつかの要因に依った:
−単離体C06838v1c48及びC06980v1c2と比較して相対的に強い発現、
−gp120及びgp41へのgp160のプロセッシングはこの単離体でもっとも顕著であった、
−この株は急性感染期の患者から早期に単離された、
−MPER抗体4E10とのその強い反応性、
−このウイルスは感染能力を有していた。
【0099】
CHO-K1/C06980v0c22 gp145細胞株の開発
C06980v0c22 gp145 DNA発現プラスミドを構築し、gp145を産生する安定的にトランスフェクトされたCHO-K1細胞の樹立に用いた。これらの細胞株を無タンパク質培養液での増殖に順応させ、細胞バンクを作成した。gp145タンパク質生成のためにクローンH-73-9-2-8を選択した。
C06980v0c22 gp145 DNA構築物は、PCR系技術を用いてgp160DC遺伝子を改変することによって作出した。gp145遺伝子は、本来のシグナルペプチド切断部位のすぐ下流のN30残基からトランスメンブレンドメインの直前のK676までを含む。K676に続いて、gp145は3つの追加されたリジンで終わる(
図36及び
図37)。これらは、理論的にC末端の親水性を高め、したがって免疫系へ提示するためのMPERの曝露を高めるために含める。シグナルペプチド切されると、改変t-Paシグナルの外来セリンはアミノ末端に存在すると予想される。gp145遺伝子は哺乳動物発現プラスミドpSWTIPK3のNheI及びEcoRI部位で連結され、pSWC06980v0c22 gp145と称された(
図21)。このプラスミドを大腸菌(Invitrogen)株DH5αで増幅させ、エンドフリー(Endofree)プラスミドMaxiキット(Qiagen,Valencia, CA)を用いて精製した。このプラスミドを制限消化によって分析し、gp145コード領域の配列をDNA二方向配列決定によって確認した。前記プラスミドは、ピューロマイシン選別下での安定なコロニー選別のためにピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を含んでいる。前記は内部リボソーム進入部位(IRES)及びCMVプロモーターによって駆動される。前記は、その発現をピューロマイシン耐性マーカーの発現と連結させることによって高レベルのgp145の発現を容易にする。
当該哺乳動物発現ベクターの重要な特色の要旨は以下のように記載できる:
−当該ベクターは、構築中に選別可能なマーカーとして細菌で使用できる抗生物質耐性遺伝子を含む。そのようなベクターに由来する治療用生成物は、それらの構築中にペニシリン又は関連抗生物質の使用を避けなければならない。したがってアンピシリの代わりにカナマイシンが用いられる。
−発現されるべきgp145遺伝子は生成物の発現強化のためにコドンが最適化される。当該遺伝子は、CHO細胞に存在するもっとも豊富なtRNAと一致するコドンを用い、CHOコドン偏向により合成される。合成遺伝子はまた、転写/翻訳効率を低下させ得る一切のcis-作動成分とともにmRNAを脱安定化させ得る他のモチーフを排除するように設計される。
−gp145遺伝子は、細胞膜への効率的輸送を可能にするために改変t-Paシグナルペプチドとインフレームでベクターに導入される。
−当該遺伝子は強力なプロモーター及び効率的なポリAシグナルの制御下で発現される。強力なCMVプロモーター及び効率的なウシ成長ホルモン(BGH)ポリAが用いられる。
−安定なタンパク質発現細胞クローンの選別のために、ベクターは、選別可能マーカー、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子をピューロマイシン耐性のために含み、前記は内部リボソーム進入部位(IRES)及びCMVプロモーターによって駆動される。
【0100】
細胞株の開発では、これらの細胞は臨床的設定で使用する必要が生じるはずであるので、FDAが許容し得る作業を実施し記録を維持しさらに材料を使用するために注意を払った。CHO-K1(cat# CCL.61)細胞はATCC(Manassas, VA)から入手した。安定なCHO-K1細胞株を樹立するために、好ましいトランスフェクションの方法はエレクトロポレーションである。この方法の利点は、性状不明の動物由来成分を回避できることである。さらにまた、動物由来生成物は必要でないかぎり避けた。組換えトリプシンをブタトリプシンの代わりに用い、ウシ胎児血清(FBS)はニュージーランド産からしっかりと範囲を限定し、BSE夾雑の機会を減少させた。FBSは放射線照射し熱不活化しさらにろ過滅菌した。
スーパーコイル及び線状化pSWC06980v0c22 gp145 DNA(一か所切断酵素NruIで線状化)を用いてCHO-K1細胞に別々にエレクトロポレーションを実施した。細胞株の樹立時に両形態のDNAがそれらの長所及び短所を有するので、両DNA形態を用いた。スーパーコイルDNAは典型的には高効率でトランスフェクトされる(CHO-K1細胞のトランスフェクション効率は貧弱であるので、高効率は長所であり得る)。線状DNAのトランスフェクション効率は低いが、前記はスーパーコイルDNAよりも良好な高率で宿主ゲノムに組み込まれる。略記すれば、5x10
6のCHO-K1細胞を0.5mLのエレクトロポレーション緩衝液(BioRad, Hercules, CA)に懸濁させ、100μgのプラスミドDNAを含む100μLのエレクトロポレーション緩衝液と0.4cm電極キュベット中で混合した。ジーンパルサー(Gene Pulser)装置(BioRad)を用い350v、125μFDでパルスし、氷上に30分置き、プールし、5.5mLの完全F-12K培養液(10%熱不活化FBS(Hyclone Laboratories, Logan UT)、10μg/mLのゲンタマイシン(Invitrogen, Inc.)及び2mMのL-グルタミン(Quality Biologicals, Inc., Columbia, MD)を含むF12-K(Invitrogen, Inc.))中で培養した。
エレクトロポレーション後48時間で、条件付け培養液及び細胞溶解物サンプルを、gp120抗原捕捉アッセイ及びIPウェスタンブロットでの分析のために採取した。gp120抗原捕捉アッセイの結果によって、条件付け培養液中へのgp145の分泌が確認される。生成は線状DNA及びスーパーコイルDNAからそれぞれわずか4ng/mL及び9ng/mLで極めて低かった。予想した通り、スーパーコイルDNAからの生成の方が線状化DNAの場合よりも高かった。培養液及び細胞溶解物由来のEnvタンパク質をIPウェスタンブロットで分析した(
図26)。スーパーコイルDNA及び線状DNAの両方の条件付け培養液におけるgp145の存在は、予想したように約140kDaで明瞭である。予想した通り、gp145のわずかに小さい分子量種が細胞溶解物で明瞭である。これはおそらく不完全にプロセッシングされたgp145を表している。
【0101】
エレクトロポレーションから48時間後に、cF12-Kでの選別のために96ウェルプレートに4500細胞/ウェルで細胞をプレートした。24時間後に、10μg/mLのピューロマイシン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を含むcF12Kでのピューロマイシン選別下に細胞を置いた。ピューロマイシン耐性コロニーが約50%のコンフルエンシーに達するまで、週に2回培養液を交換した。gp120抗原捕捉アッセイを用い条件付け培養液をgp145生成について分析した。最高の生成を示す20の培養物を増幅し凍結しさらに限定希釈によってクローニングし、gp145を安定的に発現する本質的クローンを単離した。未クローニング培養物の最高の生成レベルは2μg/mLに達した。
まず初めに選別しクローニングした最初の20の培養物から、100を超えるクローンをgp120抗原捕捉アッセイによって分析した。gp145の生成レベルを基準に、17細胞株(最初の培養のうちの12培養を表す)がgp145生成のための潜在的候補培養であると決定された。各細胞株につて凍結ストックを作成した。選別クローンの各々の生成レベルを比較する試験を実施した。略記すれば、細胞を1mLの組織培養液中に1x10
5細胞で24ウェルプレートに播種し、37℃で64時間インキュベートした。培養液を採集しgp120抗原捕捉アッセイ及びIPウェスタンブロットによって分析した。それらの抗原捕捉及びIPウェスタンブロットの結果を基準に、クローンH-73-9, H-84-1及びH-94-10を、タンパク質製造のために必要とされる無タンパク質培養液への順応のために選択した。5本のバイアル細胞バンクを各々について凍結した。各クローンは1から2mg gp145/Lを生成した。IPウェスタンブロットでは、選別クローンの各々は、予想の通り約140kDaで強いgp145反応性を示す。
スーパーコイルDNAをエレクトロポレーションされたCHO-K1細胞は、線状化DNAをエレクトロポレーションされた細胞よりも高い一過性gp145の生成をもたらした(それぞれ9ng/mLと4ng/mL)。しかしながら、スーパーコイルDNAと線状化DNAの両方が、ピューロマイシン選別の後で約100の安定な細胞株を生じた。興味深いことには、17の最良gp145生成細胞株のうち16が線状化DNAに由来した。このことは、スーパーコイルDNAはより効率的に細胞に取り入れられるが、線状化DNAはより効率的に組み込まれ、安定な細胞株でより高いタンパク質収量をもたらすという、出願人らの予想を支持する。
【0102】
3つの選択細胞株を無タンパク質培養液での増殖に順応させた。無タンパク質培養液に順応させることはある種のクローンについては困難なことがあるので、3つは順応可能なクローンが選択される蓋然性を高めるために選択された。さらにまた、各クローンは3つの異なる培養液(PowerCHO-1 CD、PowerCHO-2 CD及びPowerCHO-3 CD, Lonza, Walkersville, MD;各々は5μg/mLのピューロマイシン及び4mMのL-グルタミンを含む)に順応させた。無タンパク質培養液での数代の継代の後で、PowerCHO-1 CD、PowerCHO-2 CD及びPowerCHO-3 CDで増殖させ順応させたクローンH-73-9は、それぞれH-73-9-1、H-73-9-2及びH-73-9-3と称された。PowerCHO-2 CDで増殖させたクローンH-84-1もまた順応され、H-84-1-2と称された。各々について2本のバイアル細胞バンクを凍結した。
4つの順応培養物を再度限定希釈によってクローニングし、gp120抗原捕捉アッセイによって確認した。これらのうちで、2つの培養、H-73-9-2-8 及びH-73-9-3-9が最高のプロデューサーであることが確認された。各々について2本のバイアル細胞バンクを凍結し、小規模タンパク質精製のために培養を約500mLに増幅させた。条件付け培養液を採集し、20mMトリス(pH8)、0.5%トリトン-X-100及び500mM塩化ナトリウムで緩衝させた。緩衝化培養液をガランタス・ニバリス(Galanthus nivalis)レクチン(GNL)アガロース(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)の2mLカラム中を泳動させた。このカラムをトリス(pH8)、0.5%トリトン-X-100及び500mM塩化ナトリウム、続いてPBSで洗浄した。結合gp145を400mMメチルα-D-マンノピラノシドで溶出させた。精製gp145をSDS-PAG及びウェスタンブロットで分析した(
図27及び
図28)。どちらのクローンも、ウェスタンブロットで良好に反応する約145kDaのタンパク質を生成する。非還元条件下では、いくつかのダイマー及び高次マルチマーもまた明瞭である。どちらの細胞株も、クーマシープラスプロテインアッセイ(Pierce)にしたがえば1.2mg/Lを超える生成をもたらした。クローンH-73-9-2-8はより良好な増殖特性を有し(わずかに元気がよく増殖が速い)、したがってgp145生成のために選択した。
【0103】
H-73-9-2-8(lot 4/17/08)について10本のバイアルのリサーチ細胞バンク(RCB)を作成し、液体窒素フリーザーで保存した。1mLの無タンパク質凍結培養液(7.5%DMSO (Sigma-Aldrich)、50%新しい増殖培養液、42.5%プロフリーズ(Profreeze CDM, Lonza))を含む10本のバイアルに2x10
6細胞を凍結した。5x10
6細胞からキアンプブラッドミニキット(Qiamp Blood Mini Kit, Qiagen)を用いて、ゲノムDNAを単離し、組み込まれているgp145遺伝子領域をPCRで増幅させ、両方向で配列を決定した。gp145コード領域で100%の配列マッチが存在した。細胞バンク作成から2週間後に、マイコアラート(MycoAlert)マイコプラズマ検出キット(Lonza)を用いてマイコプラズマ夾雑について試験し、陰性であることが判明した。1本のバイアルを融解し、培養して生存率を試験した。培養3日後に細胞は77%が生存し、さらにgp120抗原捕捉アッセイによってgp145生成について陽性であることを調べた。培養を細菌の夾雑について試験し、37℃で24時間のインキュベーション後に、接種SOCブロスで細菌の増殖は認められなかった。
H-73-9-2-8 RCB(lot 4/17/08)から増殖させた培養を用いて25本のバイアルのRCB(lot F1144)を作成し、液体窒素フリーザーで保存した。10x10
6細胞を1mLの無タンパク質凍結培養液(7.5%DMSO(Sigma-Aldrich)、50%PowerCHO-2 CD、42.5%プロフリーズ(Profreeze CDM, Lonza))を含む25本のバイアルで凍結した。細胞バンクを作成するときに、この培養をマイコプラズマの夾雑について試験し、陰性であることが判明した。この培養を細菌及び真菌の夾雑について試験し、チオグリコレートブロスでの細菌の増殖も大豆カゼイン消化ブロスでの真菌の増殖もないことが示された。当該細胞バンクの1本のバイアルを融解し、以前に記載した生存率チェック及びこれらの細胞におけるgp145の生成の確認のための培養液で培養した。融解時の生存率は87%と認めることができた。増殖の特徴は予想された通りで、gp145の生成は抗原捕捉アッセイによって確認された。
【0104】
C06980v0c22 gp145タンパク質の生成
gp145の3つのロットを生成し、更なる試験のためにデリバーした(表5)。
表5:提供されたHIV-1C06980v0c22 gp145ロット
Lot 112009
ローラーボトルを用い、4mMのL-グルタミン及び5μg/mLのピューロマイシン補充PowerCHO-2 CD中でH-73-9-2-8培養物を3Lに増幅させた。条件付け培養液を遠心分離によって清澄にした。3L採集物の培養液サンプルを抗原捕捉によって分析した。結果から、1Lの全培養液につきほぼ4mgのgp145が予想された。品質及び収量は、3L採集物を用いた製造について許容できると判定された。下記の記載及び
図29の概略に示すようにgp145タンパク質を精製した。
採集培養液を0.1m
2のペリコン(Pellicon)ろ過ユニット(分子量カットオフ30kDa)を用い室温で濃縮した。この系を1.0MのNaOH、その後WFI水、続いて1xPBSでフラッシュした。CHO細胞培養上清(3L)を導入し、この系を再循環モードで稼働させた。濃縮は、透過流-1L/hr/0.1m
2及び交差流0.5L/分で実施した。濃縮終了時に、サンプルは200mLに濃縮された。この濃縮細胞培養上清を更なる処理まで-70℃で保存した。
前記gp145をレクチンアフィニティクロマトグラフィーを用いて精製した。濃縮培養液を塩化ナトリウム500mMに調整し、25mLのGNLアガロースカラムで泳動させた。前記カラムをPBSで洗浄し、結合gp145を500mMメチルα-D-マンノピラノシドで溶出させた。前記精製は10mL/分の流速で実施した。溶出液(100mL)を濃縮し、さらに接触流ろ過を用いてPBSに透析した。前記工程には50cm
2のペリコンろ過ユニット(分子量カットオフ30kDa)を用いた。前記系を1.0MのNaOH、その後WFI水、続いて1xPBSでフラッシュした。続いて溶出液を導入し、この系を再循環モードで稼働させた。限外ろ過は、透過流2.0mL/分及び交差流約40mL/分で実施した。GNL-溶出液の体積はPBS中で8mLに減少した。
タンパク質含有量はBradfordアッセイによって概算し、1.1mg/mLと判明した。精製gp145中のエンドトキシンは比色LALアッセイ(Lonza)を用いて概算し、31.8EU/mgタンパク質と判明した。還元及び非還元条件下でのSDS-PAGE分析は、当該精製タンパク質について約145kDの分子量を示した。
SE-HPLC分析(
図30)から分かるように、lot 112009 gp145は、4つのマルチマー型(A、B、C及びDと称される)で溶出した。タンパク質標準物の移動度を基準に、各gp145の見かけの分子量を計算した(表6)。主要ピークは>669kDaと計算され(約680kDaと概算される)、A型に一致する。2つのショルダーは、>669(約680kDaと概算される)及び571kDaで明瞭であり、それぞれB及びC型に一致する。417kDaの第四の、ただし小さなピークはD型に一致する。
【0105】
表6:タンパク質標準物及び精製gp145(lot 112009)マルチマー種の保持時間及び分子量
SDS-PAGEとその後のレーザーデンシトメトリーによるとgp145の純度は96.1%であった。
【0106】
Lot120710A
ローラーボトルを用い、4mMのL-グルタミン及び5μg/mLのピューロマイシン補充PowerCHO-2 CD中でH-73-9-2-8培養を11Lに増幅させた。条件付け培養液を遠心分離によって清澄にした。11L採集物の培養液サンプルを抗原捕捉によって分析した。結果から、1Lの全培養液につきほぼ8mgのgp145が予想された。品質及び収量は、11L採集物を用いた製造について許容できると判定された。下記の記載及び
図31の概略に示すようにgp145タンパク質を精製した。
採集培養液を0.1m
2のペリコンろ過ユニット(分子量カットオフ30kDa)を用い室温で濃縮した(前記ユニットはlot112009について記載したように再循環モードで稼働させた)。11Lの条件付け培養液を1Lに濃縮した。
濃縮した条件付け培養液を20mMトリス(pH8)、500mM塩化ナトリウム及び0.5%トリトンX-100により緩衝させ、続いて0.22μmフィルターで清澄にした。条件づけ培養液を20mLのGNL-アガロース樹脂に4℃にて1mL/分で通した。前記樹脂を20mMトリス(pH8)、500mM塩化ナトリウム及び0.5%トリトンX-100緩衝液で洗浄し、続いてPBSで平衡化した。gp145を0.5Mメチルα-D-マンノピラノシド含有PBSに溶出させた。50kDa MWCOフィルターを用いてGNL-溶出液(88mL)を20mLに濃縮した。10mLをlot120710Bの調製に使用するために取りおいた。残りの10mLをPD10緩衝液交換樹脂からPBSに泳動させた。溶出材料を0.22μmフィルターでろ過滅菌し、いくつかに分け-70℃で保存した。Lot120710A最終生成物は22mLの体積を有する。
タンパク質含有量はBradfordアッセイによって概算し、1.0mg/mLと判明した。精製gp145中のエンドトキシンは比色LALアッセイを用いて概算し、<0.313EU/mgタンパク質と判明した。還元及び非還元条件下でのSDS-PAGE分析は、当該精製タンパク質について142kDの分子量を示す。非還元条件下では、マルチマーもまた明瞭である。これは、マルチマーがジスルフィド結合で一緒に保持されていることを示している。
SE-HPLC分析(
図32)から分かるように、gp145 lot120710Aは、lot112009の場合のように4つのマルチマー型で溶出した。タンパク質標準物の移動度を基準に、各gp145種の分子量を計算する(表7)。主要ピークは666kDaと計算され、B型に一致する。第二のピーク及びショルダーは、>669kDa(約845kDaと概算される)及び584kDaと計算され、それぞれA及びC型に一致する。411kDaの第四の、ただし小さなピークはD型に一致する。
【0107】
表7:タンパク質標準物及び精製HIV-1C06980v0c22 gp145 lot120710Aマルチマー種の保持時間及び分子量
SDS-PAGEとその後のレーザーデンシトメトリーによるとHIV-1C06980v0c22 gp145 lot 120710Aの純度は94.2%であった。
【0108】
Lot120710B
Lot 120710Bは、レクチンアフィニティクロマトグラフィー中に溶出されたlot 120710Aと同じgp145から生成される。lot 120710Bのために、分子間ジスルフィド結合を減少させるという目的のために追加の工程が用いられる。この目的の根本的な理由は、gp145の前のロット(lot 112009)は高次マルチマーの形態を有するという観察による。理論に拘束されないが、出願人らは、これらのマルチマーの多くは酸化(分子間ジスルフィド架橋を生じる)に起因すると考える。これらの結合の減少は、より低次のマルチマー(好ましくはトリマー)の形態を有するタンパク質を生成しようとするものである。
下記の記載及び
図33の概略に示すようにgp145タンパク質を精製した。
lot 120710Aに関して記載した濃縮GNL溶出液の10mLをlot 120710Bの調製で使用するために取り分けておいた。前記10mLを50mMのDTTを用い37℃で30分処理し、続いてPD10緩衝液交換樹脂からPBSに泳動させた。溶出材料を0.22μmフィルターでろ過滅菌し、いくつかに分け-70℃で保存した。Lot120710B最終生成物は22mLの体積を有する。
タンパク質含有量はBradfordアッセイによって概算し、0.975mg/mLと判明した。精製gp145中のエンドトキシンは比色LALアッセイを用いて概算し、<0.321EU/mgタンパク質と判明した。還元及び非還元条件下でのSDS-PAGE分析は、当該精製タンパク質について143kDの分子量を示す。非還元条件下では、わずかに痕跡量のマルチマーもまた明瞭である。これは、マルチマーがジスルフィド結合で一緒に保持されていることを示している。DTTによる処理は、DTT未処理の120710Aと比較してこれらの結合の多くを還元した。
ウェスタンブロットは還元及び非還元条件下で約143kDaの主要バンドを示す。いくつかのマルチマー型が非還元条件下で明瞭であるが、DTT未処理のlot120710Aで観察されるよりも少ない。還元条件下では、これらのマルチマーは主としてモノマーに還元される。
SE-HPLC分析(
図34)から分かるように、gp145は、lot120710A及びlot112009の場合のように4つのマルチマー型で溶出した。タンパク質標準物の移動度を基準に、各gp145種の分子量を計算する(表8)。主要ピークは665kDaと計算され、B型に一致する。第二のピーク及びショルダーは、>669kDa(約844kDaと概算される)及び572kDaと計算され、それぞれA及びC型に一致する。412kDaの第四の、ただし小さなピークはD型に一致する。
【0109】
表8:タンパク質標準物及び精製HIV-1C06980v0c22 gp145 lot120710Bマルチマー種の保持時間及び分子量
SDS-PAGEとその後のレーザーデンシトメトリーによるとgp145の純度は94.2%である。
分子間ジスルフィド結合のDTT還元はgp145のマルチマー型に対していくらかの影響を示した。SDS-PAGEでは、大半の分子間ジスルフィド結合がDTT処理により還元されたことは、DTT未処理と比較するならば明瞭である。SE-HPLCはC型の控えめな増加を示し、おそらくA型の控えめな減少によるものであろう。
マルチマー型の特性の更なる解明は下記の実施例7に含まれる。
【実施例4】
【0110】
急性クレードC HIV-1に由来するCHO発現組換えgp145で免疫することによるHIV-1中和抗体の誘発
動物:24匹のニュージーランドホワイトの雌ウサギ、1.8−2kg
ウサギを各々4匹ずつ6グループに分ける。個々の動物をケージカード及び耳タグによって識別する。
抗原:25μg/ウサギ/用量
CHO細胞で発現されたPBS(pH7.4)中の上記記載のgp145(急性クレードC、C0698v0c22)。
mper23(NK-4):LELDKWASLWNWFDITNWLWYIK(配列番号:53)、(HBX2変種;Swiss-Protアクセッション番号P04578(ただし674位のNはDに置換))。
アジュバント:
0.125mLのPBS(pH7.4)中で0.6mg Al3+で処方したAlヒドロゲル(0.6mg Al3+/用量);
等体積の抗原と混合する
リポソーム処方物1−DMPC:コレステロール:DMPG(9:7.5:1);100μgの脂質Aを含む50mMリン脂質/0.25mL用量;PBS(pH7.4)。DPMCはジミリストイルホスホチジルコリンを指し、DMPGはジミリストイルホスホチジルグリセロールを指す。
リポソーム処方物2−DMPC:コレステロール:PIP(1:1.5:1);100μgの脂質Aを含む50mMリン脂質/0.25用量;PBS(pH7.4)。PIPホスホチジルイノシトール-4-ホスフェートを指す。
採血: -2、0、4、8及び10週目に動物の耳動脈から20−24ゲージの蝶型カテーテルを用いて採血する。各瀉血でほぼ5mLの血液が採取される。前記血液を室温で2−3時間インキュベートし、続いて4℃で一晩冷蔵してから遠心分離し凝血から血清を取り出す。前記血清を以下のようにいくつかに分け(プラスチックバイアルに1x1mL及び3x0.5mL)、-80℃で凍結する。
12週目に、60cc注射筒及び18ゲージ針を用いアタミン/キシラニンによる麻酔後に、前記ウサギを心臓穿刺によって最終採血する。血清を以下のようにいくつかに分け(プラスチックバイアルに5x1mL及び5x5mL)、-80℃で凍結する。
免疫:交互の尾方大腿筋の筋肉内ルートで0、4及び8週目に23−27ゲージ針を用いて0.25mLを注射する。
スケジュール:
図41も参照されたい。結果は
図42−48、52に提示される。
【実施例5】
【0111】
マウスに関して下記に詳述する以下の方法は、図(
図41−48、52参照)に示したウサギの実験で用いた免疫原性/抗原性に関する方法を取り入れているが、ただしウサギには記載のとおりリポソーム中の25μgのgp145又はプラセボが投与された。
gp145マウス免疫原性試験:抗原性/免疫原性に関する方法
抗原
gp145は、タンザニア出身の急性C亜型感染個体から単離したエンベロープ配列から生成された。このタンパク質の完全なエクトドメイン(gp41のMPERを含む)が存在する。前記タンパク質は、プロテアーゼ切断を防ぐためにgp120/gp41切断部位に2つの変異(R508S、R511S)を、さらに生成及びMPERエピトープの提示を促進するためにマルチリジンC-末端を含むように設計された。前記タンパク質をCHO細胞で産生させ、レクチンアフィニティクロマトグラフィーで精製し、実施例7に記載したようにマルチマーの混合物として存在する。このgp145タンパク質は以下のMPERエピトープ配列を含んでいた:ALDSWNNLWNWFDIS(配列番号:23)。
リポソーム調製物
抗原、実験用M13ファージ又はgp145タンパク質は免疫前にリポソームで被包化された。リポソーム(ジミリストイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びコレステロールを1.8:0.2:1.5の分子比で含む)は、凍結乾燥脂質混合物を50mMのリン脂質濃度で、0.4g/mLの脂質Aを含むダルベッコー(Dulbecco)のPBSに抗原無しに又は抗原とともに分散させることによって調製した。リポソームは無菌的食塩水で2回洗浄して非被包化抗原を除去した。
動物の免疫
40匹の雌のBALB/Cマウス(各々25g)を、院内実験動物管理及び使用委員会(Institutional Laboratory Animal Care and Use Committee)によって承認されたプロトコルの下で免疫した。動物を各グループ5匹で8つのグループに分けた(表9)。マウスを尾方大腿筋の筋肉内に交互に4回2又は3週間の間隔で、各用量当たりそれぞれ5x10
11ファージ又は10μgのgp145タンパク質により免疫した。血液は最初の免疫の2週間前から2週間間隔で収集し、動物を安楽死させるときに収集を終了した。血液を室温で2−3時間インキュベートし、4℃で一晩冷蔵してから遠心分離した。血清を収集し-20℃で保存した。最後のブーストから2週間後に(10週目)、マウスを安楽死させる。ナイーブマウス及び免疫マウスから血液、脾臓、リンパ節、骨髄及び肝臓を入手し処理した。
表9:マウスの免疫プラン
【0112】
IFNγ放出ELISPOT(酵素結合免疫吸着スポット)アッセイ
IFNγを分泌する脾臓細胞をELISPOTにより分析した。ニトロセルロース裏打ち96ウェルマルチスクリーン滅菌プレート(Millipore)を、滅菌PBS中の10μg/mLの抗ガンマインターフェロン(IFNγ)(PBL Interferon Source)で一晩4℃にて被覆した。前記ウェルを0.5%のウシ血清アルブミン含有滅菌PBSにより30分37℃でブロックし、さらに0.025% Tween20含有PBS(洗浄溶液)、続いて滅菌RPMI-1640完全培養液で洗浄した。単一細胞懸濁物を各グループのマウス(5マウス/グループ)から調製した。細胞(2x10
6/ウェル)を抗IFNγ被覆プレートにプレートし、加湿CO
2インキュベーターで37℃18時間インキュベートした。細胞は、5μg/mLの急性C gp145(HIV-1 C06980、Advanced Bioscience Laboratories)、gp140(HIV-1 IIIB、Advanced Bioscience Laboratories)、酵母由来gp41(Meridian Biosciences)若しくは10μg/mLのカテプシン分解-酵母由来gp41とともに、又は無タンパク質下でインキュベートされた。洗浄溶液で続いて蒸留水でプレートを洗浄し、0.125μg/mLのビオチニル化抗IFNγ(クローンXMG 1.2;BD PharMingen)を重層し、さらに室温で2時間インキュベートした。その後でプレートを洗浄し、さらに1:1000稀釈のアビジン結合アルカリホスファターゼ(Vector Laboratories)とともに2時間室温でインキュベートした。プレートを洗浄し、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート(BCIP)/ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)(Kirkegaard and Perry Labs)の添加により結合IFNγを検出した。前記プレートを水で洗浄して個々のスポットを可視化し、次の日に二眼立体顕微鏡を用いて数えた。スポット数/プレート細胞数の平均をプロットした。
【0113】
フローサイトメトリーによるT細胞抗原提示及びサイトカイン検出
種々のマウスグループの脾臓及びリンパ節細胞を、5μg/mLの急性C gp145(HIV-1 C06980、Advanced Bioscience Laboratories)、gp140(HIV-1 IIIB、Advanced Bioscience Laboratories)、酵母由来gp41(Meridian Biosciences)若しくは10μg/mLのカテプシン分解-酵母由来gp41、又は陽性コントロールとしてConAとともに22時間37℃で刺激した。これらの細胞をブレフェルジンA(1mg/mL、Sigma-Aldrich)及びモネンシン(0.07mg/mL、BD Pharmingen)の添加前に上記抗原で2時間インキュベートした。細胞はさらに20時間インキュベートされた。細胞をLSR II(BD Immunocytometry Systems)フローサイトメトリーで分析し、500,000事象をFACSDivaソフトウェア(BD Immunocytometry Systems)を用いて収集した。死細胞は生存マーカーを用いて排除し、さらにB細胞も排除した。CD3+ CD4+及びCD3+ CD8+ T-細胞をゲートコントロールし、IL-2、TNF-α、IFN-γ及びCD107aについて分析した。データはFlowJoソフトウェア(Tree Star)を用いて解析した。各グループについて陽性染色細胞パーセントを示す。黒棒線は、コントロール応答(M13-挿入物無し)の2倍の範囲を示す。
【0114】
抗原特異的血清IgGのELISA
抗原特異的IgG力価を、標的としてgp145及びgp41を用い結合ELISAタイトレーションによって決定した。抗原をPBS(pH7.4)で0.25μg/mLに稀釈し、100μL/ウェルを96ウェルマイクロタイターImmunol2ポリスチレンプレートに添加した。プレートを一晩4℃でインキュベートし、続いて300μLの0.1%PBST(0.1%Tweenn20含有PBS)で3回洗浄した。血清は2倍連続希釈(血清希釈液(5%脱脂乳含有0.1%PBST)で1:50稀釈から開始)し、各希釈の100μLをプレートに添加して力価を測定した。プレートは37℃1時間インキュベートされ、続いて洗浄緩衝液で3回洗浄された。HRP標識抗マウスIgG抗(血清希釈液で1:16,000に稀釈)を100μL/ウェルで添加した。プレートを37℃1時間インキュベートし、続いて洗浄緩衝液で3回洗浄した。TMB(100μL、Kirkegaard and Perry Labs)を添加して37℃30分インキュベートし、反応は1Mのリン酸を100μL添加することによって停止させた。プレートは410nmで、570nm参照フィルターにより分光光度計で読み取った。抗原結合力価は、バックグラウンドより3倍高い結合を検出できる濃度を計算することによって決定した。2つの別個のアッセイを実施し、それらの結果の平均を得た。
【0115】
Biacoreによる表面プラスモン共鳴(SPR)測定
SPRはCM5チップを用いBiacore T200で実施した。Biacoreアミンカップリングキット(Biacore, AB)を用い、ペプチドをチップ表面に固定した。全固定工程は10μL/分の流速で25℃にて実施された。ペプチドローディング緩衝液は20mM酢酸ナトリウム(pH4.2)であった。T200制御ソフトウェアにパッケージされた固定ウィザードを用いて、10μMのスクランブルMPERペプチドの14700共鳴ユニット(RU)及びMPERペプチドの20500RUをそれぞれ対応するフローセルに固定した。両ペプチドについて固定化の際に10分間の接触時間を設定した。血清サンプルをトリス緩衝食塩水(pH7.4)で1:50に稀釈し、チップ表面上を30μL/分で3分間通過させ、その後続いて5分間の解離時間をとった。前記5分間の終わりに、ヒツジ抗マウスIgG(Fc)抗体(The Binding Site)の75μg/mLを2分間流速10μL/分で前記フローセル上を通過させた。70秒の解離時間後に、以下を用いて前記チップ表面を再生させた:50 mM HClの30秒パルス、20 mMトリス(pH7.4)中の100 mM EDTAの30秒パルス及び50%酢酸の30秒パルスとその後に続くトリス緩衝食塩水(pH7.4)の1分間注入。非特異的結合を差し引いてから、BIAエバリュエーション4.1ソフトウェアを用いてデータ解析を実施した。IgG特異的な値の報告された応答ユニットは、抗IgG注入の終了後から60秒間採取された5秒ウィンドウの平均値と抗IgG注入の開始前10秒間採取された5秒ウィンドウの平均値の差である。
【0116】
シュードウイルス中和アッセイ
TZM-bl細胞をアッセイ標的として用いてHIV-1の中和を測定した。BnAb又は血漿は、増殖培養液(100μg/mLストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(Quality Biologics Inc.)及び15%ウシ胎児血清(Gemini Bio-Products)を含むDMEM)で4倍連続希釈(それぞれ25μg/mL又は1:20稀釈から開始する)し、25μLをデュープリケートで96ウェルの平底黒色プレートに添加して力価を測定された。シュードウイルス(約150,000相対ルミネセンスユニット(RLU)を生じるように最適化稀釈に増殖培養液で希釈されてある)を各ウェルに等体積で添加した。前記サンプルを5%CO
2の加湿インキュベーターで37℃1時間インキュベートした。全てのインキュベーションをこれらの条件下で実施した。60μg/mLのDEAE-デキストラン(Sigma)を含む増殖培養液中にTZMbl細胞を2x10
5細胞/mLで懸濁させ、50μLを各ウェルに添加した。各プレートは、細胞及びシュードウイルス(ウイルスコントロール)又は細胞のみ(バックグラウンドコントロール)を有するウェルを含んでいた。プレートを48時間インキュベートし、続いて100μL/ウェルの再構成ブライトライトプラス(Brite Lite Plus, Perkin Elmer)を添加した。Victor 2 ルミノメーター(Perkin-Elmer)を用いてRLU値を測定した。抗体含有ウェルのRLU値をウイルスコントロールウェルと比較することによって抗体の存在によるパーセント阻害を計算した。2つの別個のアッセイを実施して結果の平均を得た。
【0117】
PBMC中和アッセイ
PBMC(HIV陰性ドナーより収集し凍結保存したもの)をHIV-1中和決定のためのアッセイ標的として用いた。このアッセイは、レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)ルシフェラーゼ(LucR)-発現HIV-1レポーター遺伝子を含む、複製能力をもつHIV感染性分子クローン(IMC)を用いる。ウイルス産生はルミノメーターで測定される(Edmonds, TG et al. Virology 408:1-13, 2010)。血清は、IL-2増殖培養液(100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(Quality Biologics Inc.)、15%ウシ胎児血清(Gemini Bio-Products)及び20U/mLの組換えインターロイキン-2(Roche Diagnostics)を含むRPMI-1600)で4倍連続希釈(1:20稀釈から開始する)し、25μLをデュープリケートで96ウェルの丸底プレートに添加して力価を測定された。IMC(約50,000 RLUを生じるようにIL-2増殖培養液で最適化稀釈に希釈されてある)を各ウェルに等体積で添加した。前記サンプルを5%CO
2の加湿インキュベーターで37℃1時間インキュベートした。全てのインキュベーションをこれらの条件下で実施した。PHA/IL-2刺激PBMCをIL-2増殖培養液中に2x10
6細胞/mLで懸濁させ、50μLを各ウェルに添加した。各プレートは、細胞及びIMC(ウイルスコントロール)又は細胞のみ(バックグラウンドコントロール)を有するウェルを含んでいた。プレートを24時間インキュベートし、100μLの増殖培養液を各ウェルに添加し、続いてプレートをさらに72時間インキュベートした。レニラルシフェラーゼアッセイ系(Promega)を用いてルシフェラーゼ生成を定量した。溶解緩衝液を添加し(50μL/ウェル)、2回の凍結/融解サイクルを実施し、20μL/ウェルを平底黒色プレートに移し、100μLの基質注入後に直ちに各ウェルのRLUを測定した。抗体含有ウェルのRLU値をウイルスコントロールウェルと比較することによって抗体の存在によるパーセント阻害を計算した。2つの別個のアッセイを実施して結果の平均を得た。
【0118】
結果
中和を阻害できる5つのM13ディスプレイされた4E10エピトープの免疫原性をin vivoで評価した。35匹の雌BALB/Cマウス(各グループ5匹の7グループ)に単一M13ディスプレイエピトープ、5つ全てのM13ディスプレイエピトープ、又はHIV-1 gp145エンベロープタンパク質と組み合わせた5つ全てのM13ディスプレイエピトープのワクチンを接種した(表9)。gp145エンベロープタンパク質(急性クレードC HIV-1感染に由来)はウサギで中和抗体を誘発することを示した。
誘発された細胞性免疫応答の分析
ワクチン接種によって誘発された細胞性免疫応答を、脾臓及びリンパ節の両方においてIFNγ放出ELISPOT及び細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイで評価した。これらのアッセイでは、HIV特異的応答は、HIV-1エンベロープタンパク質(gp145、gp140、gp41又はカテプシン分解gp41)による刺激後に測定された。コントロールグループ(M13-挿入物無しで免疫されたマウス)より2倍高い応答を陽性応答と考えた。ICSデータを分析して、CD3+CD4+又はCD3+CD8+ T-細胞特異的応答を決定した。
IFNγ放出ELISPOTアッセイでは、以下のようにリンパ節及び脾臓の両方で全グループにおいて単一の応答が観察された:リンパ節においてgp140で刺激されたM13-全5免疫グループ及び脾臓においてgp145で刺激されたgp145免疫グループ(
図53)。脾臓T細胞ではgp140に対するバックグラウンド応答は高かった。IL-2応答は、いくつかのHIV-1エンベロープ抗原に対して全てのグループについてICSで観察され、TNFα、CD107a及びIFNγ応答は検出されなかった。陽性IL-2応答はリンパ節で脾臓よりも頻繁であった(それぞれ85%及び48%の陽性応答)が、規模は低かった(それぞれコントロールの3.9倍及び4.5倍)。陽性IL-2応答は、CD4+T細胞区分でCD8+T細胞よりも頻繁で(それぞれ73%及び60%の陽性応答)、規模も高かった(コントロールよりもそれぞれ4.5倍及び3.8倍)(
図54)。リポソームのみで免疫されたマウスはHIV-1特異的細胞応答を示さない。
【0119】
誘引抗体応答の分析
液性免疫応答をIgG結合ELISA、Biacoreによって、及び中和アッセイによって分析した。gp145及びgp140に対する結合力価を全グループについて決定した(
図55)。gp145又はgp145/M13-全5で免疫した動物は、gp145に対して高力価の抗体(平均してそれぞれ512000及び409600)、及びgp41に対して平均してそれぞれ30400及び43200の抗体を生じた。両グループはgp145免疫タンパク質に対して最高の力価を生じた。他のグループはこのアッセイでは検出可能な結合力価を示さなかったが、ただしM13-全5は例外であった(前記はgp145に対し平均1200の弱い結合力価を生じた)。Biacoreを用いて、MPERペプチドに対するプール血清のエピトープ特異的IgG結合の性状を調べたが、結合は観察されなかった(データは示されていない)。
アッセイ標的としてTZMbl及びPBMCの両方を用いて中和アッセイを実施した。両アッセイプラットフォームで、2つの中和感受性HIV-1株に対して血清の力価を測定し、ID50値を計算した(
図56)。gp145/M13-全5で免疫した動物は、TZMbl及びPBMCアッセイの両アッセイで最高の中和力価を生じた(gp145免疫グループよりもそれぞれ2.1倍及び1.9倍高い)。単一M13展示MPERエピトープ(M13-12D4及びM13-12B7)、又はマルチM13展示MPERエピトープ(M13-全5)で免疫した動物もまたHIV中和抗体を生じた。全ての血清をHIV-2/MPERキメラ及び非特異的ウイルスコントロール(MuLV)に対してスクリーニングしたが、中和はこれらウイルスのどちらに対しても観察されなかった。
【実施例6】
【0120】
α4β7遮断アッセイ
材料:
培養液:10%FCS/RPMI/Lglut/PenStrep
細胞:RPMI8866
表10:試薬
α4β7結合緩衝液の調製:
−散剤から1MのMnCl
2を新しく調製する(1gのMnCl
2-4H
2O(Arthos Lab;MW 197.9)+5mLのd H
2O)
−下記の表により結合緩衝液を調製する
−溶液をろ過滅菌し4℃で保存
【0121】
表11:
細胞の採集:
−非粘着性細胞を収集し、50mLチューブに移す
−200xg、10分で細胞を沈殿させ、上清を廃棄する
−10mL培養液に全細胞をまとめ、激しく懸濁して塊を破壊し数える
−体積を1.0x10
6細胞/mL培養液に調整する
−アッセイプレート(96ウェルU底ポリプロピレン)にウェル当たり100μL(100,000個)の細胞を分注する
−200xg、10分で細胞をペレット化
−結合緩衝液で2回細胞を洗浄する
【0122】
表12:サンプル
タンパク質+IgGの前インキュベーション:
−プレートレイアウト及びサンプル計算にしたがいウェルに緩衝液を添加する
−サンプル計算にしたがい適切なサンプルウェルにIgGを添加する
−UNTREATED、POS CTRL及びNO IgG CTRLのためのウェルに40μLの結合緩衝液のみを添加する
−結合緩衝液でタンパク質ストックを0.025μg/μLにする
【0123】
表13:
−UNTREATEDのウェルに20μLの結合緩衝液を添加する
−サンプルウェル、POS CTRL及びNO IgG CTRLのウェルに20μLのタンパク質を添加する(=0.5μgタンパク質/ウェル)
−プレートを37℃で60分インキュベートする
結合アッセイ:
−遮断緩衝液を調製する(結合緩衝液中に10%マウスIgG。10%ヒトIgG)
−遮断緩衝液を50μL/ウェルで添加する
−POS CTRLウェルに4μL(2μg)の抗α4遮断mAbを添加する
−氷上で10分インキュベートする(洗い流さない)
−レイアウトにしたがってアッセイプレートに50μLのタンパク質/IgG複合体を移す
−氷上で30分インキュベートする
−結合緩衝液で2回洗浄する
染色:
−染色カクテルを調製する
表14:
−未染色ウェルに50μLの結合緩衝液を添加する
−NO IgG CTRL、POS CTRL及び全てのサンプルウェルに50μLの染色カクテルを添加する
−4℃で30分インキュベートする
−結合緩衝液で2回洗浄する
−4%PFAで30−60分、4℃で固定する
−細胞を遠心沈殿させ、150μLの結合緩衝液に再懸濁する
−読み取りができるまで4℃でプレートを保存する
補整ビーズ調製:
−2ウェルの補整ビーズを調製し、染色緩衝液でビーズを洗浄する
−45μLの染色緩衝液にビーズを再懸濁する
−5μLのCD4-FITCを一方のウェルに、5μLのCD4-PEを他方のウェルに添加し、ウェルを十分に混合する
−4℃で30分間インキュベートする
−染色緩衝液を2回洗浄する
−200μLの染色緩衝液に再懸濁する
【0124】
第二のα4β7結合阻害アッセイは、RMPI8866細胞株で実施できるフローサイトメトリー系アッセイであるが、主として、α4β7ヘテロダイマーの活性型を発現させるために培養した単離CD4+及びCD8+T細胞で実施される。このアッセイのモデルは
図57に示されている。このアッセイを結合アッセイとして実施して、選択した急性配列に由来するHIV-1 envの変種を試験することができる。本アッセイの拡大された有用性には、envタンパク質又はインテグリンのどちらかに対するモノクローナル抗体又は精製血清IgGによるenv/α4β7相互作用の機能的遮断の試験が含まれる。選択したHIV-1 envタンパク質を作製してビオチニル化し、さらに抗体と前インキュベートしてからα4β7発現細胞とインキュベートする。結合はニュートラビジン-PEの添加によって検出され、α4β7の存在はFITC結合非遮断性mAbで染色することによって確認される。抗インテグリン抗体を試験するとき、細胞はビオチニル化envタンパク質を添加する前に当該抗体とともに前インキュベートされ、検出は記載のように進められる。出願人らは、全envタンパク質をビオチニル化線状及び環状ペプチドと同様に用いるために前記方法を適合させた。ある種の実施態様では、本アッセイはIMC及びVLP構築物を用いて使用するために開発された。
このアッセイの重要な特色の1つは、α4β7の活性型を発現する初代T細胞を用いることができるということである。これらの細胞を生成するために、出願人らは、磁性ビーズ分離によってPBMCからCD4+及びCD8+T細胞を単離する。陰性選別プロトコルを用いるので、得られた細胞は“手つかず”であり、精製され、ビーズフリーである。単離の後、細胞を抗CD3/抗CD28、IL-2及びレチン酸の存在下で5日間インキュベートし、α4β7の表面発現を誘発させる(
図58)。
【0125】
このアッセイ開発中に予備的実験を実施して、結合動態及び多様なHIV-1エンベロープ試薬を用いる前記アッセイの全体的な有用性が決定された。組換えCRF01_AEgp120及び急性亜型C gp145(上記に記載したとおり)をビオチニル化し、α4β7発現CD4+又はCD8+T細胞と結合させた(
図59、左及び中央パネル)。CRF01-AE由来のHIV-1 Env V2ループを含むビオチニル化環状ペプチドもまたCD4+α4β7+及びCD8+α4β7+細胞と結合した。同様な結合はまたRPMI8866細胞株でも観察された(データは示されていない)。クレードB MN由来gp120又は当該ループの頂点に変異を含む環状V2ペプチドでは結合は検出されなかった(データは示されていない)。
初期遮断実験は、ヒト抗V2モノクローナル抗体(S.ゾラ-パズナーから供与)及びCRF01_AE-由来gp120又は環状V2ペプチドを用いて実施された。試験した両方のV2反応性モノクローナル抗体(697-30D及び2158)がEnvとCD4+α4β7+及びCD8+α4β7+細胞との結合を遮断した(
図60)。陽性コントロールとして、タンパク質又はペプチドの添加前に抗α4遮断抗体HP2/1とともに細胞が前インキュベートされた。出願人らはこれらの実験を進め、V2ループに由来する一組のオーバーラップする線状ペプチドを調べてこの相互作用に必要なアミノ酸残基の輪郭を示した(データは示されていない)。
方法論
α4β7 Tリンパ球の調製:凍結保存したPBMCを完全培養液中で融解し、CD4+又はCD8+T細胞を磁性ビーズ陰性選別によって単離する。細胞を抗CD3/抗CD28、IL-2及びレチン酸の存在下で5日間培養する。多染色フローサイトメトリーを用いて、表現型、細胞生存率、及びα4β7の活性型の発現をモニターする。いくつかのアッセイのためには、ヒトB細胞リンパ腫株RPMI8866がα4β7の活性型を高度に発現するので用いられる。
α4β7結合/遮断アッセイ:α4β7を発現する細胞を、2−5μgのビオチニル化V2ペプチド又はHIV-1エンベロープ糖タンパク質とともに30分間インキュベートする。洗浄して未結合ペプチド/タンパク質を除去した後、細胞をニュートラビジン-PEで染色し、結合をフローサイトメトリーでアッセイする。遮断実験のためには、添加前に30分間、抗体は適切なα4β7発現細胞又はHIV-1エンベロープタンパク質のどちらかとともに前インキュベートされる。
HIV-1エンベロープタンパク質の調製:急性エンベロープ配列は、RV217急性感染実験で合成のために対象動物から選択される。配列は、コドン最適化及び哺乳動物発現ベクターでのクローニングのためにジーンアート社(GeneArt, Inc.)に付託される。タンパク質はCHO細胞又はHEK293細胞で発現される(前記細胞は結合アッセイに重要であり得る種々のグリコシル化パターンを提供する)。
ビオチニル化V2ペプチドの合成:Dr. Tim Cardozo(New York University)が設計したペプチドは、ジームドシンテシス社(Genemed Synthesis Inc.)によって合成及びビオチニル化される。
【実施例7】
【0126】
要約
ゲルろ過のデータは種々のマルチマー種の混合物が存在することを支持した。しかしながら、gp145の球状の性質、疎水性領域及び強いグリコシル化が種々のマルチマーの解離にどのように影響を与えるかはこのアッセイでは明らかではなかった。したがって、どの種がどんな割合で存在するかを結論することは困難であった。さらにまた、このアッセイの貧弱な解析度は各型の相対的な量を決定することも困難にした。C06980v0c22 gp145の精製ロットに存在するオリゴマー型をさらに分析するために、精製タンパク質を用いてブルーネイティブPAGE(BN PAGE)及びEGS架橋、SDS-PAGEを実施した。さらにまた、ゲルろ過クロマトグラフィーを用いてオリゴマー型の分離を試みた。
BN PAGE
ブルーネイティブPAGEを用いて精製HIV-1C06980v0c22 gp145ロット112009、120710A及び120710Bを分析した。ネイティブPAGE系(Invitrogen)を用い、HIV-1C06980v0c22 gp145を4−16%ノベックス(Novex)Bis-Trisポリアクリルアミドゲルで泳動させた(
図61)。比較のために、上記に記載のBa-L gp145及び3つのクレードC gp140タンパク質(A07412、57128及び57140)もまた泳動させた。レーザーデンシトメトリーをBLUEネイティブPAGEで実施し、各タンパク質についてマルチマー型混合を予想した(表15)。
【0127】
表15:gp140及びgp145のマルチマー組成のレーザーデンシトメトリーによる予想
*数百kDaに広がる極めて分散したバンド;分子量を記述するのは困難である。これらの分画には2つ以上の種が存在する可能性がある。
**不完全な分離を示すダブレットはいくつかの分解生成物を含む2つの種を表す可能性がある。
ブルーネイティブPAGEから、gp140及びgp145タンパク質は多様なマルチマーの混合物として存在することが明瞭である。しかしながら、どんな種が存在するかは十分に明らかではない。モノマーが約140kDaであると仮定するならば、トリマー、テトラマー、ペンタマー及びヘキサマーの予想される分子量は、それぞれ約420 kDa、560 kDa、700 kDa及び840 kDaである。しかしながらそれらの球状形態、疎水性領域及び強いグリコシル化のために、タンパク質がそのような態様を示し得るかは疑わしい。したがって、本実施例については、出願人らは各マルチマー種をA、B、C又はDと称し、Aは複合性がもっとも高く、Dは複合性がもっとも小さい。C06980v0c22 gp145の全ロットが同様な態様を示し、Bがもっとも多い形態で、C及びDは有意な量を示す。ロット120710Bの DTT処理はマルチマー組成に対して顕著な影響を与えないように思われる。同様な傾向はクレードDのD 57140及び57128 gp140について認められる。クレードD A07412 gp140も同様であるが、C型はB型よりもわずかに量が多い。Ba-L gp145については、もっとも多い種は、広く拡散したバンド(おそらくより高次のマルチマーの混合物に一致する)で見出され、A種に分類される。別個の大量のC集団及びより小量のB集団もまた明瞭である。
【0128】
EGS架橋/SDS-PAGE
マルチマー型の更なる性状決定のために、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)で架橋したタンパク質のSDS-PAGEによって、C06980v0c22 gp145の性状をさらに調べた。これらのデータは、トリマーがもっとも豊富であるが、ダイマー及び微量のモノマー及びより高次のマルチマーもまた存在することを示している。精製HIV-1C06980v0c22 gp145(lot 120710A)を0.2、1、5及び12.5mMのEGSで架橋し、3−8%のNuPAGEトリスアセテートポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)により還元及び非還元条件下で分離し、クーマシーブルーで染色した(
図62)。レーザーデンシトメトリー分析を用いて、各gp145種の分子量を概算した。0.2mMのEGSで処理したとき、gp145の架橋は完全ではなく、3つの種が334、232及び139kDaで明瞭である。これらは、トリマー、ダイマー及びモノマー型の予想分子量と良好に一致する。EGS濃度を5及び12.5mMに増加させるとき、架橋は完全で、トリマーがもっとも豊富な種であることを示す。大量のダイマー種も存在するが、モノマーは総タンパク質の微量を構成するのみである。非還元条件下では、より高次のマルチマーと一致するかすかなバンドもまた、完全に架橋されたサンプルとともに明瞭である。これは、ジスルフィド結合で一緒に保持されるいくつかのより高次のマルチマーが存在することを示している。マルチマー種A、B及びCは、おそらくEGS架橋タンパク質で解明されたより高次のマルチマー、トリマー及びダイマー種にそれぞれ対応する。ブルーネイティブPAGEの結果にしたがえば、主要なマルチマー種B及びCは見かけの分子量751及び621kDAをそれぞれ有していた。これらの見かけの分子量は、それらがトリマー及びダイマーを表すと確信をもって結論するには大きすぎた。しかしながら、EGS架橋を用いたときには、見かけの分子量は、主要な型がトリマー又はダイマーであるということとより調和する。EGS架橋SDS-PAGEはJ.P. Nkololaらが用いた方法で、彼らは(1)バキュロウイルス系でトリマーとして生成された組換えHIV-1 92UG037.8 gp140を記載している。これらのタンパク質は、同様なEGS架橋方法を用いたときC06980v0c22 gp145と類似の分子量で泳動した。BN-PAGE及びEGS架橋SDS-PAGEで観察されたgp145オリゴマーの予想分子量における明らかな矛盾は、gp145の荷電、球状の性質、疎水性領域及び強いグリコシル化が、これらのアッセイで種々のマルチマー型の分離にどのように影響するかに関係があるかもしれない。BN-PAGEは本来の状態でオリゴマー型を分離することができると考えられよう。しかしながら、分子量をgp145及び分子量マーカーの移動度における比例的相違にしたがって決定することはできない。EGS架橋SDS-PAGEでは、オリゴマーは一緒に共有結合されるが、通常のSDS-PAGEの場合のように変性される。これらの条件下では、gp145は、架橋されていない場合にそれが示すよりいっそうその見かけの分子量を基準に標準物に対して相対的に移動する。
【0129】
ダイマー及びトリマーの精製
ゲルろ過クロマトグラフィーを用いてgp145の多様なオリゴマー種を単離できるか否かに関してゲルろ過クロマトグラフィーを精査した。多様な形態の単離が成功すれば、各形態の抗原性又は免疫原性の潜在的な精査が可能になるであろう。
スーパーロース6を用いるゲルろ過クロマトグラフィーを実施した。スーパーロース6は、その高分子量範囲ゆえに、高分子量のgp145種を分離する潜在能力を有するであろうと考えられている(最適なタンパク質分離は5から500kDaである)。大きなタンパク質の分離は、高分子量タンパク質(例えばgp145オリゴマー)に対するゲルろ過樹脂の比較的貧弱な分解のために困難であることがしばしば証明されている。スーパーロース6は種々のオリゴマーの分離にいくらかの有望性を示す。分析用スーパーロース6 PC 3.2/30(GE Healthcare)カラムでは、PBS(pH7.2)中に200μgのHIV-1C06980v0c22 gp145 lot120710Aを含む25μLを0.05 ml/分でロードした。50μL分画を収集し、EGS架橋/SDS-PAGEで分析した(
図63)。いずれの分画も純粋なトリマー又はダイマーを含まなかったが、ある程度濃縮されたトリマーが一定の分画で明瞭であった。種々のカラムサイズ及び条件がより良好な分解を提供し、トリマーをより高次のマルチマー及びダイマーから潜在的に分離することを可能にするかもしれない。さらに別の実施態様では、分離条件の最適化がスーパーロース6を用いて実施できる。
参考文献
Nkolola, J.P., et al. 2010. Breadth of neutralizing antibodies elicited by stable, homogeneous clade A and clade C HIV-1 gp140 envelope trimers in guinea pigs. J. Virol. 84: 3270-3279.
【0130】
これまで本発明の実施態様を詳細に記載してきたが、上記のパラグラフで規定した本発明は、上記記載で説明した特定の詳細な説明に限定されるべきではないことは理解されよう。なぜならば、前記の多くの明白な変型が本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく可能だからである。
本出願に引用又は記載された各特許、特許出願及び刊行物は、あたかも個々の特許、特許出願及び刊行物が具体的に個別に参照により本明細書に含まれることを指示されたかの如くに参照により本明細書に含まれる。