(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの反射体の速度を決定するステップが、前記第1の試験セグメントの範囲内の前記少なくとも1つの反射体の運動の方向を決定するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
第2の試験セグメントを選択するステップ、次いで、該第2の試験セグメントの範囲内の前記複数の反射体の少なくとも1つに対して、前記選択するステップ、前記検出するステップ、前記少なくとも1つの反射体の速度を決定するステップ、及び前記表示するステップを繰り返すステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
第2の試験セグメントを選択するステップであって、該第2の試験セグメントが、前記第1の試験セグメントの範囲内の前記目的の領域の部分の外部の目的の領域の部分である、該ステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
前記試験セグメントを選択するステップが、bモード画像との相関及び前記受信するステップからの情報に基づいて使用者によって手動で行われる、請求項8記載の方法。
前記目的の領域の同時Bモード画像のコンピュータ支援検出解析及び該目的の領域内の相関位置情報に基づいて試験セグメントを選択するステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
前記第1の受信開口への音響経路によって画像化される各画素及び前記第2の受信開口への音響経路によって画像化される各画素の調整係数を計算するステップをさらに含む、請求項17記載の方法。
前記少なくとも1つの反射体の速度を決定するステップの結果に前記調整係数を適用することによって改善された速度測定値を得るステップをさらに含む、請求項18記載の方法。
前記調整係数が、1/cos(φ/2)であり、式中のφは、前記送信開口の位置、画像化される各画素の位置、並びに前記第1の受信開口及び前記第2の受信開口のそれぞれの位置を用いて定義される角度に関する送信機から反射体への線と受信機から反射体への線との間の角度である、請求項18記載の方法。
前記第1の受信開口から得られる調整された速度測定値を、運動している反射体用の前記第2の受信開口から得られる調整された速度測定値と組み合わせるステップをさらに含む、請求項19記載の方法。
前記第1の受信開口の位置及び該第1の受信開口を用いて得られる速度測定値、並びに前記第2の受信開口の位置及び該第2の受信開口を用いて得られる速度測定値を用いて、第1の反射体の運動の方向及び大きさを表す速度ベクトルを得ることを含む、連立方程式を解くステップをさらに含む、請求項17記載の方法。
前記第1の受信開口の位置及び該第1の受信開口を用いて得られる速度測定値、並びに第3の受信開口の位置及び該第3の受信開口を用いて得られる速度測定値を用いて、前記第1の反射体の運動の方向及び大きさを表す第2の速度ベクトルを得ることを含む、第2の組の連立方程式を解くステップをさらに含む、請求項22記載の方法。
前記第1の速度ベクトル及び前記第2の速度ベクトルを平均して、前記第1の反射体の運動の速度及び方向を表す新たな速度ベクトルを得るステップをさらに含む、請求項23記載の方法。
前記第1の音響経路及び第3の音響経路から得られる第2の複数の速度ベクトルを計算するステップ、及び前記第1の複数の速度ベクトル及び該第2の複数の速度ベクトルを平均するステップをさらに含む、請求項25記載の方法。
前記データ非依存近似が、前記送信開口、第1の試験セグメント、及び第2の受信開口によって定義される第1の角度の半分の余弦の逆数を第1の測定速度の値に乗じるステップを含む、請求項31記載の方法。
前記速度ベクトルの大きさが、第1の速度測定値及び第2の速度測定値の大きさの合計を半分にすることによって計算され、該第1の速度測定値が、前記第1の受信開口と試験セグメントと前記第2の受信開口との間の角度を二分する音響経路に沿って求められ、該第2の速度測定値が、送信開口から試験セグメントを経て該第2の受信開口に至る音響経路に沿って求められる、請求項31記載の方法。
前記第1の受信開口から離れた第2の受信開口で前記第1の波面パルスのエコーを受信するステップ、及び該受信エコーの同相値及び直角位相値を保存するステップをさらに含む、請求項40記載の方法。
前記第1のセットのパラメータ又は前記第2のセットのパラメータが、送信開口の定義、受信開口の定義、試験セグメント、主方向軸、速い運動値を遅い運動値に対して特徴付ける相対運動閾値、ドップラー運動推定アルゴリズム、音速の仮定、1つ以上の重み付け係数、デコンボリューションフィルタリング値、整合フィルタリング値、校正データ値、又は送信データ値の1つ以上を含む、請求項45記載の方法。
前記ビーム形成パラメータが、音速値、重み付け係数、適用されるフィルタの種類、プローブ校正データ、及び超音波送信信号を記述するデータの少なくとも1つを含む、請求項45記載の方法。
前記運動を検出するステップが、前記第1の非集束半円超音波波面パルスの前記受信エコーの範囲内の少なくとも1つの画素のドップラー周波数シフトを検出するステップをさらに含む、請求項49記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(発明の詳細な説明)
本明細書で説明される方法及び装置は、現在の超音波におけるドップラーの多くの問題を解決する。従来のスキャンラインベースドップラーを使用して、超音波検査者は、最良のBモード画像を得るための超音波プローブの配置と、スキャンラインビームを血管内の血流に整合させるためのプローブの配置との矛盾する要求を満たそうとして問題に直面している。従来のドップラーの第2の問題は、選択されるスキャンライン(複数可)のパルス繰り返し周波数が十分に高くてドップラー周波数に敏感であり得るように、ドップラーの視野をドップラーレンジゲートの事前の定義によって制限しなければならないことである。
【0052】
本明細書で説明される方法及びシステムの一部の実施態様は、ピングベースドップラーイメージング技術を使用する。このピングベースドップラーイメージング技術では、ドップラー周波数を、ドップラーレンジゲートを事前に定義しなくてもBモードの全視野のどこでも検出できるように、パルス長(ドップラーピング)が比較的長い非集束半円(又は円柱)超音波パルスを使用して、各ドップラーピングにおける全視野に超音波照射する。さらに、運動している反射体の速度及び方向の両方を、プローブを運動の方向に対して整合させなくても検出することができる。一部の実施態様では、多数開口超音波プローブの使用により、2次元運動ベクトルの検出がさらに可能となる。多数開口ピングベースドップラーイメージング及びBモードイメージングの様々な実施態様は、Bモード画像の方位分解能及びドップラー速度の推定の精度を同時に改善することができる。
【0053】
従来のスキャンラインベースドップラーイメージングを使用して、典型的には、集束スキャンラインビームを送信し、そして同じスキャンラインに沿って集束するエコーを受信機で受信することによって、パルスドップラー信号が生成される。このようなシステムを使用して、運動情報を検出するべき目的の領域の深さを決定するために、レンジゲートを、超音波信号の送信及び受信の前にスキャンラインに沿って定義しなければならない。連続的なパルスが同じスキャンラインに沿って送信されている間に、該レンジゲート内のエコーのサンプルが取られる。次いで、これらのサンプルが、運動を示すドップラー周波数を検出するために評価される。
【0054】
多数開口プローブを使用する超音波イメージングは、米国特許第8,007,439号、米国特許出願公開第2010-0262013-A1号、同第2010-0268503-A1号、及び同第2011-0201933-A1号に図示され、記載されている。以下の実施態様は、本出願人の以前の特許出願並びに本明細書及びその図面に示され、説明されているような多数開口プローブ及びシステムを利用する、ドップラー速度の測定及びイメージングを行うためのシステム及び方法を提供する。
【0055】
様々な実施態様が、様々な解剖学的構造の超音波イメージングに関連付けて本明細書で説明されるが、本明細書に図示され、説明される多くの方法及び装置を、他の用途、例えば、非解剖学的構造及び物体のイメージング及び評価にも使用することができることを理解されたい。例えば、本明細書で説明される超音波プローブ、システム、及び方法は、様々な機械的物体、構造的物体、もしくは材料、例えば、溶接部、管、梁、プレート、加圧容器、層状構造などの非破壊試験又は評価に使用することができる。さらに、画像化される物体もしくは物質の運動又は速度を評価するためのシステム及び方法の様々な実施態様は、非医療シナリオ、例えば、管、圧力容器、又は他の流体保持導管もしくは容器を通って移動する流体の速度の測定にも適用することができる。従って、医療又は解剖学的イメージング標的、例えば、血液、血管、心臓、もしくは他の器官への本明細書での言及は、本明細書で説明される様々な装置及び技術を用いて画像化又は評価することができるほぼ無限の様々な標的の非限定の例を単に示すためである。
【0056】
ピングベースドップラー超音波技術の概論
添付の図面を参照して本明細書で説明される様々な実施態様は、ピングベースドップラーイメージング及びピングベースBモードイメージング技術を用いて運動している物体の速度を検出し、推定し、かつ特徴付けるシステム及び方法を提供する。一部の実施態様は、多数開口超音波プローブを用いるピングベースイメージング技術と以下にさらに詳細に説明されるイメージング技術との組み合わせによるさらなる利点を提供する。
【0057】
ピングベース超音波イメージング技術を使用すると、タイミング情報と周波数情報の両方を、送信されたピングの後に受信トランスデューサ素子に戻る反射体エコーから収集することができる。エコーの位置を、ピングベースビーム形成プロセス(本明細書の他の部分及び本出願人の上記の以前の出願で説明されている)によってタイミング情報から決定することができる一方、運動している反射体の速度を、ドップラー原理を適用することによって周波数情報から決定することができる。従って、超音波照射領域内の各反射体の位置と速度の両方を1つの送信ピングから決定することができる。精度及び分解能を、多数のピングから得られる情報を組み合わせることによって改善することができる。
【0058】
図1及び
図2を参照して、ピングベース運動検出プロセス及びピングベース多数開口運動検出プロセスの一部の実施態様の概要が説明される。様々なプロセスステップのさらなる詳細及び実施態様が、別の図面を参照して以下の後続のセクションに説明される。
【0059】
図1は、運動している反射体を含む目的の超音波照射領域のセクションを識別するために、イメージングシステムが、複数の空間的に定義された「試験セグメント」を自動的に繰り返すことができるピングベースドップラー運動検出/イメージングプロセス10の一実施態様を例示している。一部の実施態様では、最終画像の各画素に対応するエコーデータを、別個の試験セグメントとして取り扱うことができる。
図1のプロセスは、送信(TX)開口12の選択で開始することができる。理想的な送信開口は、目的の領域の妨げられていない(即ち、肋骨又は他の障害物によって妨げられていない)視野を提供する送信開口である。様々な実施態様では、適切なTX開口(以下に説明される)は、自動プロセス又は手動プロセスによって選択することができる。
【0060】
TX開口が選択されたら12、第1のドップラーピングを、目的の領域に送信することができる14。第1のドップラーピングのエコーは、1つ以上の受信開口(使用されるプローブの構造によって、及び2次元ドップラー検出が後述されるように使用されるか否かによって決まる)を用いて受信することができる16。受信したエコーは、受信トランスデューサ素子ごとに別個に保存することができる18。一部の実施態様では、各受信開口によって受信されるエコーは、2つ以上の別個のデータストリームに保存することができる18。第1のデータストリームは、同相エコーを表すことができ、第2のデータストリームは、同相データに対して約90度(π/2ラジアン)に等しい時間遅延でサンプリングされた同じ受信波形を表す「直角位相」エコーを表すことができる。他の実施態様では、同様の結果を、他の方法、例えば、受信エコーデータストリームのオーバーサンプリングによって達成することができる。あるいは、約90度以外の遅延も使用することができる。一部の実施態様では、処理ハードウェアが、実質的な遅延なしにエコーデータを処理するのに十分である場合は、エコーデータを保存するステップを省略することができる。
【0061】
図1の実施態様では、次いで、受信ドップラーエコーをビーム形成して20、目的の領域内の各反射体(運動している、又は運動していない)の位置を決定することができる。一部の実施態様では、以下に説明されるようなピングベースビーム形成技術を使用することができる。ドップラーエコーがビーム成形されたら20、試験セグメント(即ち、ドップラーシフト信号が探される受信エコーデータの有限セグメント)を選択することができる。
図1のプロセス10では、このような試験セグメントを、目的の領域内の対応する反射体の位置を基準に決定することができる22。一部の実施態様では、イメージングシステムは、試験セグメントを自動的に選択することができる22。例えば、一部の実施態様では、イメージングシステムは、目的の超音波照射領域における全ての可能な試験セグメントを繰り返すように構成することができる。他の実施態様では、イメージングシステムは、目的の同じ領域の同時Bモード画像における位置に相関する位置に基づいて1つ以上の試験セグメントの選択22が可能となるように構成することができる。一部のこのような実施態様では、任意のサイズの任意の数の領域を、表示されたBモード画像から使用者が選択することができ22、ドップラーデータの対応する領域を1つ以上の試験セグメントとして取り扱うことができる。他の実施態様では、自動ヒューリスティクスを使用して、既知の特徴(例えば、血管、器官、又は他の構造)を認識し、運動が期待される又は求められ得るこれらの認識された特徴の部分に基づいて試験セグメントを自動的に選択することができる22。
【0062】
第1の試験セグメントが選択されたら(手動であろうと自動であろうと)22、試験セグメント内の反射体のエコーを評価して、存在し得るあらゆるドップラー周波数を検出することができる24。一部の実施態様では、ドップラー周波数は、
図9A及び
図9Bを参照して以下に説明される任意の方法を用いて検出することができる24。代替の実施態様では、ドップラー周波数を検出する他の方法を使用することもできる。
【0063】
ドップラー周波数が、試験セグメント内で確認されたら24、データをさらに分析して、運動している反射体の速度及び方向を決定することができる26。一部の実施態様では、運動している反射体の速度を決定するステップ26は、閾値試験を行って、反射体が閾値速度よりも速く運動しているか否かを決定するステップを含み得る。他の実施態様では、サイズ、強度、又は周波数閾値の試験を行って、運動している反射体が、閾値サイズよりも大きいか、閾値強度と少なくとも同じ強度か、又は指定周波数範囲内であるかを決定することができる。例えば、血管は、Bモード画像における周囲組織よりも暗く見える傾向にある。結果として、「明るめ」の領域によって取り囲まれた相対的に長手方向の「暗い」領域を、運動情報が探される良好な候補試験セグメントとして選択することができる。一部の実施態様では、閾値試験に落ちた反射体は、続くステップで無視することができる。一部の実施態様では、運動している反射体の速度は、以下に説明される方法を用いて検出することができる。代替の実施態様では、ドップラーシフト原理に基づいて運動している反射体の速度を定量する他の方法も使用することができる。
【0064】
一部の実施態様では、運動している反射体の方向は、超音波プローブに対して1次元的に検出することができる26。このような1次元の運動の検出の実施態様では、運動は、プローブに対して「近づいている」又は「離れている」として特徴付けることができる。このような1次元の運動の検出方法の一部の実施態様が以下に説明される。任意の他の適切な方法も使用することができる。
【0065】
他の実施態様では、エコーが、少なくとも2つの別個の開口における受信トランスデューサ素子によって受信されると、運動している反射体の方向を、画像平面内の2次元ベクトルとして特徴付けることができる26。このような2次元の運動の検出方法の一部の実施態様の詳細が、
図16を参照して以下に説明される。他の2次元の運動の検出方法も使用することができる。
【0066】
試験セグメントを選択するステップ22、ドップラー周波数を検出するステップ24、並びに運動している反射体の速度及び方向を決定するステップ26は、必要に応じて又は所望に応じて、試験された全ての試験セグメントが評価されるまで何回でも繰り返すことができる30。十分なデータ処理ハードウェアが利用可能な場合は、多数の試験セグメントを、連続的ではなく並行に評価することができる。
【0067】
全ての選択された試験セグメントにおける運動している反射体の方向及び速度が決定されたら26、このような情報を、使用者に表示するためにBモード画像に重ね合わせられる又はBモード画像と組み合わせられ得る画像に編集することができる。他の実施態様では、運動情報は、Bモード画像と組み合わせられる画像を必ずしも形成することなく、グラフとして又は他の方法により数値で表すことができる。
【0068】
図2は、ピングベースドップラー運動の検出/イメージングプロセス11の代替の実施態様を例示している。
図2のプロセス11は、
図1のプロセスに実質的に類似しているが、受信エコーをビーム形成するステップ20とドップラー周波数を検出するステップ24の順序が、
図1のプロセス10のステップの順序と比較すると
図2のプロセス11は逆である。
【0069】
図2のプロセス11では、ドップラー周波数を、ビーム形成するステップの前のエコーで検出して24、エコーを発生させる反射体の位置を決定することができる。
図2の順序は、ドップラー周波数の存在について評価される「試験セグメント」の選択19の前には、反射体の位置を必ずしも知る必要がないことを意味する。これは、試験セグメントを選択するステップ19を、所与のエコーデータストリームに対してエコー受信回数の範囲を基準に行うことができることを意味するにすぎない。あるいは、既に説明された実施態様のように、受信エコーの受信回数とBモード画像の対応する反射体の位置との間の大まかな相関関係を得ることができる。例えば、エコーが受信される時間は、一般に反射体の深さに相関するため、試験セグメントの範囲を、プローブに対する深さに関して決定することができ、このような深さ情報を、エコー受信回数の範囲に変換することができる。一部のこのようなケースでは、試験セグメントの選択は、少なくともそれぞれの使用者が、上記と実質的に同じ方法で行うことができる。完全に自動化された実施態様では、イメージングシステムは、特定の受信素子のエコーデータストリームの離散セグメントとして試験セグメントを識別するように構成することができる19。
【0070】
運動している反射体が、ドップラー検出ステップ24に基づいて識別されたら、運動している反射体に対応するエコーをビーム形成して、目的の領域内のそれらの反射体の位置を決定することができる。一部の実施態様では、ドップラーエコーデータのビーム形成は、閾値速度よりも速く運動しているとして識別された反射体(又はある他の閾値試験をパスした反射体)のみの位置の決定に限定することができる。他の実施態様では、ビーム形成されるドップラーエコーデータからの反射体の選択は、所望に応じて、任意の他のフィルタ又は制限部にかけることができる。
【0071】
ドップラーエコーがビーム形成されたら、エコーデータを評価して、対応する運動している反射体の速度及び方向を決定することができる。このような速度及び方向の検出は、以下にさらに詳細に説明されるように1次元的又は2次元的に行うことができる。
【0072】
あるいは、一部の実施態様では、運動の方向を検出するステップ26が、
図2に示されているようにプロセス11で1次元のみで行われる場合は、ビーム形成ステップ20を、方向検出ステップ26の後に行うことができる。これは、1次元の方向検出が、目的の領域内の反射体の位置についての情報を必要としないためである。
【0073】
一部の実施態様では、エコーデータを保存するステップ18の後の全てのステップ(例えば、ステップ19〜30)は、メモリから取り出されたエコーデータのみを用いて行うことができる。このような実施態様では、ステップの順序、行った仮定、又はドップラーエコーデータの処理に影響を与える他の因子に対して様々な調整を行うことができる。このような調整は、所望のレベルの質に達するまで繰り返し行うことができる。メモリから取り出された生のドップラーエコーデータの再処理のためのプロセスの例が、
図21を参照して以下に説明される。一部の実施態様では、このような処理は、超音波信号の送受信に使用される超音波イメージングシステムから完全に独立したデータ処理ハードウェアを用いて行うことができる。このような代替の処理ハードウェアとしては、デスクトップコンピュータ、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、サーバー、又は任意の他の汎用データ処理ハードウェアを挙げることができる。
【0074】
多数開口超音波イメージングプロセスの実施態様
多数開口超音波イメージングでは、一般に、従来の超音波技術で可能な全幅よりも格段に広い全幅を有する超音波プローブを使用する。多数開口超音波イメージングでは、少数のトランスデューサ素子から超音波信号を送信し、遥かに多くのトランスデューサ素子を用いてエコーを受信する。受信トランスデューサ素子を複数の受信開口に配置し、様々な処理を実施し、ステップを組み合わせることにより、従来の狭いプローブで可能な方位分解能を大幅に上回る方位分解能を有する超音波画像を形成することができる。
【0075】
多数開口イメージングをBモードイメージングに使用して、目的の領域の高分解能の空間画像を形成することができる。ドップラーイメージングに多数開口イメージングシステムを使用することにより、2次元における運動の検出能力に関するさらなる利点を提供することができる。
【0076】
本明細書で使用される「超音波トランスデューサ」及び「トランスデューサ」は、超音波イメージング技術の分野の技術者が理解する通常の意味を有することができ、限定されるものではないが、電気信号を超音波信号に変換することができ、かつ/又は逆も同様に行うことができる任意の1つの構成要素を指すことができる。例えば、一部の実施態様では、超音波トランスデューサは、圧電素子を含み得る。一部の代替の実施態様では、超音波トランスデューサは、容量性微細加工トランスデューサ(CMUT)を含み得る。トランスデューサは、しばしば、多数の素子のアレイに構成される。このようなアレイは、当業者には理解される1次元(1D)、2次元(2D)、又は1.5次元(1.5D)を有し得る。トランスデューサアレイの素子は、アレイの最も小さい別個の部品であり得る。例えば、圧電トランスデューサ素子のアレイの場合、各素子は、単一の圧電結晶、又は圧電結晶の単一の機械加工ブロックとすることができる。
【0077】
本明細書で使用される「送信素子」及び「受信素子」という語は、超音波イメージング技術の分野の技術者が理解する通常の意味を有し得る。「送信素子」という語は、限定されるものではないが、電気信号が超音波波面に変換される送信機能を少なくとも瞬間的に果たす超音波トランスデューサ素子を指すこともある。同様に、「受信素子」という語は、限定されるものではないが、該素子に衝当する超音波波面を電気信号に変換する受信機能を少なくとも瞬間的に果たす超音波トランスデューサ素子を指すこともある。超音波の媒体への送信は、本明細書では「超音波照射」と呼ばれることもある。超音波を反射する物体又は構造は、「反射体」又は「散乱体」と呼ばれることもある。
【0078】
本明細書で使用される「開口」という語は、超音波信号を送信し、かつ/又は受信することができる概念的な「開口部」を指す。実際の実施では、開口は、単に、イメージング制御電子機器によって共通の群としてまとめて管理されるトランスデューサ素子群である。例えば、一部の実施態様では、開口は、隣接する開口の素子から物理的に分離することができる素子の物理的なグループ分けとすることができる。例えば、
図3のプローブにおける3つのトランスデューサアレイのそれぞれは、別個の開口として取り扱うことができる。しかしながら、隣接する開口は、必ずしも物理的に分離する必要はない。
【0079】
本明細書で使用される「全開口」という語は、全てのイメージング開口の全積算サイズを指す。言い換えれば、「全開口」という語は、特定のイメージングサイクルに使用される送信素子及び/又は受信素子の任意の組み合わせにおける最も遠いトランスデューサ素子間の最大距離によって決定される1つ以上の寸法を指すこともある。従って、全開口は、特定のサイクルで送信開口又は受信開口として指定される任意の数のサブ開口から構成される。単一開口イメージング構成の場合、全開口、サブ開口、送信開口、及び受信開口は、全て同じ寸法を有する。多数開口イメージング構成の場合、全開口の寸法は、全ての送信開口及び受信開口の寸法とそれらの開口間の全ての距離の合計を含む。
【0080】
本明細書で使用される「受信開口」、「超音波照射開口」、及び/又は「送信開口」という語は、超音波イメージングの分野における技術者が理解する通常の意味を有し得、かつ所与の時間に所望の物理的視点又は開口から所望の送信機能又は受信機能を果たす個々の素子、アレイ内の素子群、又は共通ハウジング内のアレイ全体を指すこともある。一部の実施態様では、これらの様々な開口は、専用の機能を用いて物理的に別個の素子として形成することができる。代替の実施態様では、この機能は、必要に応じて電子的に指定及び変更することができる。なおさらなる実施態様では、開口の機能は、固定素子と可変素子の両方の組み合わせを含み得る。一部の実施態様では、2つの開口は、連続アレイ上に互いに隣接して配置することができる。なお他の実施態様では、2つの開口は、少なくとも1つの素子が2つの別個の開口の一部として機能するように、連続アレイ上に互いに重ね合わせることができる。開口の位置、機能、素子の数、及び開口の物理的サイズを、特定の適用例に必要な任意の方式で動的に決定することができる。特定の適用例のこれらのパラメータに対する制約が以下に示され、かつ/又は、このような制約は当業者には明白であろう。
【0081】
一部の実施態様では、受信開口の幅は、反射体から受信開口の各素子への各経路で音速が同じであるという仮定によって制限され得る。十分に狭い受信開口では、この単純化する仮定は許容範囲である。しかしながら、受信開口の幅が増加すると、臨界点に達し(本明細書では、「最大コヒーレント受信開口幅」と呼ばれる)、この点では、経路が、典型的には異なる音速を有する異なる種類の材料を通る。(これは、様々な組織型が、実質的に異なる音速を有し得る医療用イメージングで特に当てはまる。)この差異が、180度に近い位相のずれとなる場合、最大コヒーレント受信開口幅を越えるさらなる受信素子は、画像を改善するどころか、実際には画像を低下させてしまう。
【0082】
従って、一部の実施態様では、全開口幅が最大コヒーレント幅よりも広い広幅プローブを利用するために、全プローブ幅を、多数の開口に物理的又は論理的に分割することができ、各開口は、受信信号の位相相殺を回避するために最大コヒーレント開口幅よりも狭い幅にし、十分に小さく制限することができる。最大コヒーレント幅は、患者によって、及び同じ患者に対するプローブの位置によって異なり得る。一部の実施態様では、妥協した(例えば、予想イメージングシナリオの範囲に対して最小最適又は平均最適である)幅を、所与のプローブシステムに対して設定することができる。他の実施態様では、多数開口超音波イメージング制御システムは、多数開口の利用可能な素子を、著しい位相相殺を回避する十分に小さい群にさらに分割するために動的アルゴリズムを用いて構成することができる。
【0083】
本明細書で使用される「音響経路」という語は、超音波が通る経路を指す。多数開口イメージングの文脈において、音響経路は、送信開口(1つ以上のトランスデューサ素子を含み得る)で始まり、超音波照射物質(例えば、ヒト組織、動物組織、又は無生物物質)を進んで反射体に達し、そして受信開口の素子に戻る。一部の実施態様では、音響経路は、個々の受信素子ではなく受信開口で終端するとして説明することができる。このような実施態様は、集合データが受信開口の多数の素子によって受信されるときに起こり得る。多数開口プローブは、任意の数の送信開口及び任意の数の受信開口(それぞれが、任意の数の別個のトランスデューサ素子を利用することができる)を利用することができるため、超音波照射領域内のどの反射体も多数の音響経路によって画像化することができる。従って、音響経路は、一般に、送信開口と受信素子(又は受信開口)と反射体との固有の組み合わせである。以下にさらに詳細に説明されるように、多数開口ビーム成形を行うためには、多数開口プローブのジオメトリが既知でなければならない。
【0084】
「開口内音響経路」とは、送信開口と受信開口の中心とが同じ点に存在する音響経路のことである。例えば、送信開口として使用される1つの素子が、受信素子としても使用される音響経路は、開口内音響経路として説明することができる。従って、「開口間」音響経路とは、送信開口と受信開口の中心とが同じ点に存在しないあらゆる音響経路のことである。
【0085】
多数開口プローブの例
図3は、一部の実施態様においてドップラーイメージングに使用できる多数開口プローブ1000の一実施態様を例示している。
図3のプローブ1000は、3個のトランスデューサアレイ1001、1002、1003を備え、各トランスデューサアレイは、1D、2D、又はマトリックストランスデューサアレイである。図示されているように、外側アレイ1001及び1003は、中心アレイ1002に対して一定の角度に配置することができる。一部の実施態様では、外側アレイの中心アレイに対する角度は、0度としても良いが、0度を超える任意の角度としても良い。一実施態様では、一対の外側アレイ1001と1003を、水平中心アレイ1002の下に約30度の角度で配置することができる。一部の実施態様では、
図3のプローブ1000は、実質的に2cmよりも広い全幅を有しても良く、一部の実施態様では、10cm以上としても良い。
【0086】
図1に示されている一部の実施態様では、プローブ1000は、互いに物理的に離隔させることができる別個のトランスデューサアレイ1001、1002、1003を備えても良い。例えば、
図1では、左のアレイ1001が、中心アレイ1002から距離「d」物理的に離間している。距離「d」は、開口1001のトランスデューサ素子と開口1002のトランスデューサ素子との間の最小距離とすることができる。一部の実施態様では、距離「d」は、0としても良いし、又は特定の適用例に望ましい大きさにしても良い。代替の実施態様では、開口間の距離は、特定の適用例の制限の範囲内で可能な限り大きくして、多数開口イメージングシステムの方位分解能を高めることができる。一部の実施態様では、プローブは、隣接するトランスデューサアレイ間の距離又は角度を調整できるように構成することができる。このような調整能力は、広範な解剖学的構造をイメージングするための柔軟性を実現することができる。
【0087】
図4は、一部の実施態様においてドップラーイメージングに使用することができる多数開口プローブ1010の代替の実施態様を例示している。
図4のプローブは、単一の連続的な1D、1.5D、2D、又はCMUTトランスデューサアレイ1012を備え、該アレイ1012は、あらゆる予測されるイメージングシナリオの最大コヒーレント幅よりも実質的に広い全幅1020を有する。例えば、一部の実施態様では、
図4におけるプローブ1010のアレイ1012の全幅1020は、約2cmよりも広くしても良く、一部の実施態様では、10cm以上としても良い。
図2の実施態様では、任意の数の開口を、必要に応じて動的に割り当てることができる。アレイ1012は、対称な連続した凹状局面で示されているが、代替の実施態様では、アレイ1012は、所望に応じて、任意の他の対称又は非対称の凹状もしくは平面の形状を有しても良い。
【0088】
一部の実施態様では、隣接する開口間の距離及び向きは、例えば、硬質ハウジングを使用することによって互いに対して固定しても良い。代替の実施態様では、開口の互いに対する距離及び向きは、例えば、可動リンク機構を用いて可変としても良い。代替の実施態様では、以下のシステム及び方法は、所望に応じて、任意の多数開口プローブと共に使用することができる。なおさらなる実施態様では、上述の本出願人の以前の出願で説明されている多数開口超音波プローブ構造のいずれかを、本明細書で説明されるドップラーイメージングシステム及び方法の様々な実施態様と組み合わせて使用することができる。
【0089】
一部の実施態様では、多数開口超音波プローブ及びイメージングプロセスは、スキャンラインベースフェーズドアレイ送信システムと組み合わせて使用しても良い。他の実施態様では、多数開口超音波プローブ及びイメージングプロセスは、完全に異なる送信波形から恩恵を受けるのに何より適している。
【0090】
ピングベースイメージングの概論
従来のスキャンラインベースフェーズドアレイ超音波イメージングシステムとは対照的に、多数開口超音波イメージングシステムの一部の実施態様は、送信パルス中に点源送信を使用することができる。点源(本明細書では「ピング」とも呼ばれる)から送信される超音波波面は、それぞれ円形又は球形の波面で目的の全領域に衝当する。1つの受信トランスデューサ素子によって受信される1つのピングから受信されるエコーをビーム形成して、目的の超音波照射領域の完全な画像を形成することができる。広幅プローブ全体にわたる多数の受信トランスデューサからのデータと画像を組み合わせ、そして多数のピングからのデータを組み合わせて、高分解能の画像を得ることができる。さらに、このようなシステムは、非常に高いフレームレートでの画像化を可能にする。なぜなら、フレームレートは、ピング繰り返し周波数、即ち、送信トランスデューサ素子、最大深さの反射体、及び最も遠い受信トランスデューサ素子間を移動する送信波面の往復時間の逆数によってのみ制限されるためである。一部の実施態様では、ピングベースイメージングシステムのフレームレートは、ピング繰り返し周波数のみと同等であり得る。他の実施態様では、2つ以上のピングからフレームを形成するのが望ましい場合は、ピングベースイメージングシステムのフレームレートは、ピング繰り返し周波数を、1フレーム当たりのピング数で除した値と同等であり得る。
【0091】
本明細書で使用される「点源送信」及び「ピング」という語は、送信される超音波エネルギーの1つの空間位置から媒体への導入を指す。これは、1つの超音波トランスデューサ素子又は一緒に送信する隣接するトランスデューサ素子の組み合わせを用いて達成することができる。前記素子(複数可)からの1回の送信は、均一な球形波面に近くすることができ、2Dスライスの画像化の場合には、該2Dスライス内に均一な円形波面を形成する。場合によっては、点源送信開口からの円形又は球形波面の1回の送信は、本明細書では「ピング」、「点源パルス」、又は「非集束パルス」と呼ばれることもある。
【0092】
点源送信は、トランスデューサ素子アレイから特定の方向にエネルギーを集束させるスキャンラインベース「フェーズドアレイ送信」又は「誘導パルス」とは空間的特徴の点で異なる。フェーズドアレイ送信は、目的の特定の領域への超音波照射波を強化又は誘導するために、トランスデューサ素子群の位相を順番に操作する。
【0093】
一部の実施態様では、一連の送信ピングを用いる多数開口イメージングは、第1の送信開口から点源ピングを送信し、送信されたピングのエコーを2つ以上の受信開口の素子で受信することによって行うことができる。完全な画像は、送信と受信エコーとの間の遅延時間に基づいて反射体の位置を三角測量することによって形成することができる。結果として、各受信開口は、各送信ピングのエコーから完全な画像を形成することができる。一部の実施態様では、1つの時間領域フレームは、1つの送信ピングからの2つ以上の受信開口で受信されるエコーから形成される画像を組み合わせることによって形成することができる。他の実施態様では、1つの時間領域フレームは、2つ以上の送信ピングからの1つ以上の受信開口で受信されるエコーから形成された画像を組み合わせることによって形成することができる。一部のこのような実施態様では、多数の送信ピングは、異なる送信開口を起源とし得る。
【0094】
ピングベースビーム成形の実施態様
ビーム成形は、一般に、多数の別個の受容器で受信されるイメージング信号を組み合わせて完全なコヒーレント画像を形成するプロセスであると理解されている。ピングベースビーム成形のプロセスは、この理解に一致している。ピングベースビーム成形の実施態様では、一般に、超音波信号が移動し得る経路、仮定される一定の音速、及びピングの送信からエコーの受信時までに経過した時間に基づいて受信エコーデータの各部分に対応する反射体の位置を決定する。言い換えれば、ピングベースイメージングは、仮定の速度及び測定時間に基づいた距離の計算を含む。このような距離が計算されたら、どの反射体の可能な位置も三角測量することが可能である。この距離計算は、送信トランスデューサ素子と受信トランスデューサ素子との相対位置についての正確な情報を用いて可能となる(上述の出願人の以前の出願で考察されているように、多数開口プローブを校正して、少なくとも所望の精度で各トランスデューサ素子の音響位置を決定することができる)。一部の実施態様では、ピングベースビーム形成は、「動的ビーム形成」と呼ばれることもある。
【0095】
動的ビームフォーマーを使用して、各送信ピングから得られるエコーのそれぞれに対応する画像画素の位置及び強度を決定することができる。ピング信号を送信する場合、送信波形に対してビーム成形をする必要はないが、動的ビーム形成を使用して、複数の受信トランスデューサで受信したエコーを組み合わせて画素データを形成することができる。
【0096】
本明細書で使用される動的ビーム形成は、各画素位置に集束して該画素が画像化されるようにビームフォーマーの焦点を連続的に変更できることを意味する。一部の実施態様では、動的ビームフォーマーは、送信機からの各エコーの位置を各時刻に各受信トランスデューサ素子にプロットすることができる。1つの反射体(例えば、
図5の点(n、p)の位置は、
図5の楕円52上に沿って位置し、第1の焦点が、送信トランスデューサ素子(複数可)54の位置にあり、第2の焦点が、受信トランスデューサ素子56の位置にある。いくつかの他の可能な反射体(反射体(g、h)、(i、j)、(k、m)などによって示されている)が、同じ楕円上に沿って存在するが、同じ反射体(n、p)のエコーも、受信開口の他の各受信トランスデューサ素子によって受信される。各受信トランスデューサ素子(R1、R2、R3)のやや異なる位置は、各受信素子が、
図6に例示されている反射体(n、p)に対してやや異なる楕円を有することを意味する。共通の受信開口の全ての素子の楕円(例えば、52、57、58)をコヒーレント加算することによる結果の蓄積は、受信開口の全ての楕円の交差を示し、これにより、反射体(n、p)を表す画素を表示する点に向かって収束する。従って、任意の数の受信素子によって受信されるエコーの振幅を組み合わせて各画素値にすることができる。このようなシステムは、加算器と呼ばれることもある。他の実施態様では、計算は、実質的に同じ画像となるように異なる方法で行うことができる。
【0097】
画質は、1つ以上後の送信ピングからビームフォーマーによって形成される画像を組み合わせることによってさらに改善することができる。画質のなおさらなる改善は、2つ以上の受信開口によって形成される画像を組み合わせることによって達成することができる。重要な留意事項は、異なるピング又は受信開口からの画像の加算が、コヒーレント加算(位相感受性)であるか、又はインコヒーレント加算(位相情報なしでの信号の大きさの加算)であるかである。一部の実施態様では、コヒーレント(位相感受性)加算を使用して、1つ以上のピングから得られる、共通の開口に位置するトランスデューサ素子によって受信されるエコーデータを組み合わせることができる。一部の実施態様では、インコヒーレント加算を使用して、場合によっては位相データの消去を含み得る、受信開口によって受信されるエコーデータ又は画像データを組み合わせることができる。これは、所与のイメージング標的に対して最大コヒーレント開口幅よりも大きい組み合わせられた全開口を有する受信開口の場合であり得る。
【0098】
一部の実施態様では、第1のセットの画像を、同相データを用いて得ることができ、第2のセットの画像を、直角位相データから得ることができる。
【0099】
Bモードイメージングに使用されるこのような動的ビームフォーマーの様々な実施態様が、米国特許第8,007,439号及び米国特許出願公開第2011-0201933-A1号を含む出願人の以前の特許出願に説明されている。
【0100】
ピングベースドップラーの概論
従来のスキャンラインベースフェーズドアレイ超音波イメージングシステムとは対照的に、多数開口超音波イメージングシステムの一部の実施態様は、パルスの送信中に点源送信を使用することができる。点源(本明細書では「ピング」とも呼ばれる)から送信される超音波波面は、円形又は球形の波面で目的の全領域に衝当する。結果として、ドップラー信号を画像視野におけるどの点からも検出できるため、ピングベースイメージングシステムで送信する前に、ドップラー測定のために目的の限定された領域(例えば、このような限定された領域としての「レンジゲート」は、当分野では通常知られている)を設定する必要がない。結果として、本明細書で説明されるシステム及び方法の一部の実施態様は、どの試験セグメントが運動している反射体を含むかを決定するために、目的の全超音波照射領域内の複数の「試験セグメント」から運動情報を繰り返し個別に探すように構成することができる。この大きな利点は、1次元ドップラー信号(即ち、プローブもしくはアレイに対して近づく又は遠ざかる流れ)、及び2つ以上のトランスデューサアレイを利用して画像平面内の2次元運動ベクトルを検出するベクトルドップラーの両方で得られる。ベクトルドップラー(即ち、横方向に離隔したアレイ又はアレイセクションを使用するドップラーイメージング)をピング送信と組み合わせて用いる場合、反射体を、画像平面内で任意の向きを有する軸に沿って指定することができる。軸は、多数開口トランスデューサに対して接線方向であっても良く、トランスデューサと整合することに制限されるものではない。多数開口プローブは、流れを全方向で計算できるため、目的の領域のみを照射すれば良い。
【0101】
様々な実施態様では、多数開口超音波イメージングシステムは、非集束広幅波面パルス、例えば、半円又は球形の波面パルスを使用して、多数開口プローブを用いてBモードイメージングを行うように構成することができる。このような広幅波面パルスは、点源素子(又は素子群)から短時間の超音波波面信号を送信することによって形成することができる。このような実施態様では、ドップラー技術を用いて画像化された物体又は物質の運動を検出するための広幅波面送信ビームを使用することも望ましいであろう。このようなシステムの利点には、送信ビームフォーマーが必要ないこと、ドップラーイメージング及びBモードイメージングの両方に送信ビームフォーマーが共通である可能性が含まれる。加えて、レンジゲートを、狭いセクターに事前に割り当てる必要がない。代わりに、画像の各画素を、「試験セグメント」として個々に試験することができる。さらに、一部の実施態様では、少なくとも2つの開口を有する多数開口プローブを用いたドップラーイメージングの実施は、血流速度を全方向で検出できることを意味する。3つ以上の開口を有する多数開口プローブは、さらなる改善を提供し得る。
【0102】
ピングベースドップラー送信波形の実施態様
図7は、物体110内の運動を測定するためのピングベースドップラー処理サブシステム100の実施態様を例示するブロック図を示している。ドップラー処理サブシステム100は、広範囲の超音波イメージングシステムとは別個でも良いし、又は該イメージングシステムに組み込んでも良い。一部の実施態様では、ピングベースドップラーサブシステム100によって制御される送信トランスデューサ素子(複数可)120及び受信トランスデューサ素子112は、超音波プローブの全ての素子のサブセット(例えば、
図3、
図3、
図8、もしくは
図10〜
図13のいずれか、又は任意の他の多数開口プローブ構成)とすることができる。受信トランスデューサ素子112によって受信されるエコー信号は、様々なアナログデジタル変換及びフィルタリングの電子機器を備え得るチャネル固有受信電子機器122に送信することができる。一部の実施態様では、ピングベースドップラーサブシステム100は、プローブの利用可なトランスデューサ素子の全てを制御するように構成することができる。一部の実施態様では、送信素子120は、ドップラー送信機能専用の1つのトランスデューサ素子でも良いが、他の実施態様では、送信素子120は、ドップラー送信素子として瞬時に指定され、該ドップラー送信素子として機能し得るプローブの任意の数のトランスデューサ素子を含み得る。遅延制御装置124を設けて、さらに以下に詳細に説明されるように、チャネル固有遅延126を同相で保存される受信エコー信号及び直角位相エコー信号に適用しても良い。以下により詳細に説明されるようなメモリ220及びディスプレイ244装置を備えても良い。
【0103】
図7のドップラーサブシステム100は、以下にさらに詳細に説明されるように、ピングベースビーム形成プロセスを行うように構成された(ソフトウェア又はハードウェア)ビームフォーマーも備えても良い。ドップラーシフト周波数を検出し、かつ/又はドップラー信号の運動の方向を決定するために、複合波形プロセッサ140を使用して、同相エコー信号及び直角位相エコー信号の複合処理を行うことができる。
【0104】
図8は、多数の受信素子「rx」を含むが、比較的小さい送信開口「tx」(1つのトランスデューサ素子から構成されても良いし、又は2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の素子の組み合わせを備えても良い)を使用して非集束点源パルス信号(別名「ピング」)を送信するプローブ1030の実施態様を例示している。一部の実施態様では、送信開口は、標準的なアレイの1つ以上の素子を備えても良いし、又は大きい電圧振幅に耐え、かつ受信機としてよりも送信機としてより効率的であるように設計された特殊なトランスデューサとしても良い。一部の実施態様では、受信素子「rx」は、受信のみのモードで使用することができ、従って、費用が嵩まず、各素子における送信/受信スイッチの減衰が起こらない。
【0105】
一部の実施態様では、
図8に概略的に例示されているようなプローブ1030は、全開口が、プローブが設計される大部分のイメージングシナリオの最大コヒーレント幅よりも狭くなるように設計されている「単一開口プローブ」としても良い。あるいは、
図8の概略図は、多数開口プローブのいずれか1つの開口を表しても良い。
【0106】
使用の際は、ピングベースドップラーサブシステム(例えば、
図7に示されているような)は、
図8に示されているようなプローブを制御して、高いピング繰り返し率で送信トランスデューサ「tx」からピングを繰り返し送信することができ、受信トランスデューサ「rx」によって受信されるエコーは、ドップラーサブシステム100によってデジタル化することができる。一部の実施態様では、最大理論ピング繰り返し率は、標的組織における音速及び目的の領域の標的深さによって制限され得る(全ての減衰を考慮している)。例えば、最大ピング繰り返し率は、好ましくは、第1の送信波面が、送信トランスデューサから送信され、目的の領域にある物体によって反射され、第2の波面が送信される前に受信トランスデューサに到達するように十分に遅い。しかしながら、ピング繰り返し率は、この往復運動時間よりも遅くする必要はない。一部の実施態様では、パルス間の時間にさらなる安全域を追加して、受信トランスデューサにおける重複パルスを回避することができる。様々な実施態様では、約2,000Hz〜約8,000Hz以上のピング繰り返し率が支持され得る。一部の実施態様では、約2,500Hzのピング繰り返し率を使用しても良い。
【0107】
図7のシステムは、ドップラー送信波形を形成するように構成されたパルサーをさらに備えることができる。様々な実施態様では、ドップラー技術を用いて運動を評価するために送信される超音波ピングは、イメージング(例えば、Bモード)のために送信されるピング(又は他の超音波信号)とは異なる特徴を有し得る。一部の実施態様では、ドップラーイメージングに使用される波形は、目的の同じ領域に使用されるBモードイメージングのために送信される波形の周波数よりも低い周波数で送信することができる。例えばBモード画像が、3 MHzの周波数で送信される超音波信号を用いて得られる場合、対応するドップラーカラーフロー画像(例えば、Bモード画像に重ね合わされる)は、2 MHzで送信される超音波波形を用いて得ることができる。当分野で周知であるように、エイリアシングなしで検出できる最も高いドップラー周波数はPRF/2である。ピングベースドップラーの文脈では、これは、エイリアシングなしで検出可能な最大ドップラー周波数が、送信ドップラーピング周波数の半分であることを意味する。従って、Bモードイメージングの中心周波数よりも低い中心周波数を有するドップラーピングを送信することにより、ドップラー信号のエイリアシングの発生を低減することができる。
【0108】
ドップラーイメージングの超音波ピングは、Bモードイメージングのために送信されるピングよりも長いパルス長(即ち、周期がより多い)で送信することもできる。長いパルス長では、波面が、十分に長い時間にわたって特定の試験セグメントで持続するため、ドップラーシフトを戻りエコーで検出することができる。このようなドップラー送信ピングのパルス長は、周期で測定することができる。様々な実施態様では、画像化される媒体の特徴、送信信号の周波数、目的の領域の深さ、及び他の因子によって、ドップラーピングは、1周期から最大数十周期、又は数ダース周期以上のパルス長を有し得る。一部の特定の実施態様では、ドップラーピングは、約10周期〜約32周期のパルス長を有し得る。少数の特定の例では、ドップラーピングは、約10周期、12周期、13周期、14周期、15周期、16周期、17周期、18周期、19周期、又は20周期のパルス長を有し得る。
【0109】
パルス長の増加により、「ドップラー分解能」(即ち、運動している反射体の速度測定の質)が向上し得るが、長いパルス長は同時に、典型的には、「空間分解能」(即ち、運動している反射体の位置を表す情報の質)を低下させる。結果として、ドップラー送信ピングのパルス長のどの選択も、これらの2つの相反する因子のバランスをとる。一部の実施態様では、ユーザインターフェイス制御装置を設けて、使用者が送信パルス長を増減できるようにすることができる。パルス長の調整は、因子、例えば、画像化される物体の材料、サイズ、もしくは密度、所望のイメージング深さ、運動している反射体の位置精度に対する運動検出精度の優先度、又は他の関連因子の使用者の評価に基づいて手動で行うことができる。他の実施態様では、超音波イメージングシステムは、このような因子に関連した情報の自動評価又は手入力に基づいて送信パルス長を自動的に調整することができる。
【0110】
一部の実施態様では、超音波システムは、ドップラー信号の送信とBモード信号の送信を交互するように構成することができる。このような実施態様では、長いドップラーピングが1つの送信開口から送信された後、1つ以上のBモードイメージング信号を1つ以上のBモードイメージング送信開口から送信することができる。一部の実施態様では、Bモードイメジージング送信信号は、ドップラーピングよりもパルス長が短く周波数が高い1つ以上のピングを含み得、ドップラー信号として同じ送信開口から、又は1つ以上の異なる送信開口(複数可)から送信することができる。他の実施態様では、ドップラーイメージングシステムは、第1のドップラーピングと同じ送信開口から、第2のドップラーピング又は一連のドップラーピングを送信するように構成することができる。なお他の実施態様では、ドップラーイメージングシステムは、第1のドップラーピングが第1の送信開口から送信された後に第2のドップラーピングを第2の送信開口から送信するように構成することができる。なおさらなる実施態様では、任意の数の送信開口を使用してドップラーピングを送信することができる。殆どの実施態様では、完全なドップラーピングは、典型的には、1つの送信開口から送信されてから、さらなるドップラーピングを他の送信開口から送信する。
【0111】
一部の実施態様では、ドップラーピングは、ドップラーピング信号の開始及び/又は終了(のそれぞれ)を認識するために受信システムが使用することができるプリアンブル信号及び/又はポストアンブル信号も含み得る。このようなプリアンブル信号及び/又はポストアンブル信号は、所望に応じて任意の信号形状を含み得る。
【0112】
ピングベースドップラーエコーデータの受信及び保存の実施態様
様々な実施態様では、受信開口によって受信されるエコーは、デジタル化してメモリ装置に保存することができる(例えば、以下にさらに詳細に説明されるようなシステムを用いて)。一部の実施態様では、ドップラーピングから受信されるエコーデータは、本明細書では同相データセット及び直角位相データセットと呼ばれる2つのデータセットに保存することができる。同相データは、遅延が0の受信エコー信号を表す。直角位相データは、同じエコー信号であるが、同相データに対して送信波形の中心周波数周期の約1/4の遅延である。以下にさらに詳細に説明されるように、同相データ及び直角位相データを分析及び比較して、あらゆるドップラーシフトの方向を決定することができる。
【0113】
図19を参照して以下にさらに詳細に説明されるように、エコーデータは、受信トランスデューサ素子ごとに別個のデータストリームに保存することができる。一部の実施態様では、2つ以上のデータストリーム(例えば、同相及び直角位相)を、トランスデューサ素子ごとに保存することができる。
【0114】
本明細書で使用される「試験セグメント」という語は、試験中の受信ドップラーエコーデータの離散部分を指す。試験セグメントの概念は、従来のスキャンラインベースドップラーイメージングに使用されるドップラーレンジゲートの概念に類似しているが、この概念よりも遥かに包括的である。スキャンイランベースドップラーイメージングでは、利用可能な試験セグメントは、超音波信号の送信及び受信の前にドップラーレンジゲートとして事前に定義された超音波照射物体の部分のみに限定される。このような従来のスキャンラインベース超音波イメージングシステムでは、スキャンラインに沿ったデータのみが、常に著しく超音波照射される。従って、スキャンラインベースシステムでは、ドップラーゲートは、標的とされる最小の深さと最大の深さとの間のスキャンラインに沿って延在する領域から構成しなければならない。
【0115】
対照的に、広幅波面又は点源送信パルス(例えば、ピング)を利用するピングベースドップラーイメージングシステムでは、全画像平面は、送信された各ピングで超音波照射され、結果として、画像平面内のどの画素も、ドップラー周波数について試験する狭い領域を事前に定義せずに、別個の試験セグメントとして分析することができる。他の実施態様では、試験セグメントは、隣接する画素の群として定義することができる。一部の実施態様では、1つ以上の試験セグメントのサイズを、適切なユーザインターフェイス装置、例えば、ダイアル、スライダー、数字キーパッド、タッチスクリーンジェスチャーなどによって使用者が選択することができる。
【0116】
上記のような動的ビーム形成技術を使用して、受信開口の全ての素子によって受信されるドップラーピングのエコーを組み合わせて、各反射体(1つ以上の画素で表される)の位置を決定することができる。次いで、このように位置が決定された反射体を、ドップラー周波数検出のために評価される試験セグメントに配置することができる。他の実施態様では、エコーデータは、該エコーデータの到達時間のみに基づいて試験セグメントに配置することができる。
【0117】
ドップラー周波数の検出の実施態様
ドップラーシフト周波数は、1つのトランスデューサ素子によって受信される1つのドップラーピングからのエコーを多数のサンプルに分割することによって確認することができる。一部の実施態様では、エコー信号は、各サンプルが、送信周波数の1周期とほぼ同じサイズとなるように各サンプルに分割することができる。例えば、ドップラー送信ピングが、16周期のパルス長を有する場合、このようなドップラーピングから受信されるエコーは、ドップラー周波数検出のために16の等しい長さのサンプルに分割することができる。次いで、サンプルを分析して、受信エコーの周波数が、対応する送信されたドップラーピングの周波数よりも高い周波数又は低い周波数を有するか否かを決定することができる。対応する送信ドップラーピングの周波数よりも高い周波数又は低い周波数を有するエコーは、反射体が運動していること示す。反射体が運動していない場合は、該反射体からのエコー信号の全てのサンプルの振幅は互いに実質的に等しい。反射体が運動している場合は、サンプルの振幅は、ドップラー周波数で変動することが予期され得る。一部の実施態様では、ドップラー周波数の検出は、上記のように同相及び直角位相データストリームに受信エコー信号を分割することによってさらに支援することができる。これは、
図9A及び
図9Bを参照してさらに説明される。
【0118】
図9Aは、ドップラーピングから得られた1つの試験セグメントについての同相エコーデータの波形62の例を例示し、
図9Bは、同じドップラーピングから得られた同じ試験セグメントについての直角位相エコーデータの対応する波形64を例示している。この試験セグメントが、0運動点に位置していた場合、
図9A及び
図9Bの波形は、一定の振幅を有し得、かつ送信されたドップラーピングの周波数に実質的に等しい周波数を有し得る(これに不可避のノイズの影響が加算される)。実際、
図9A及び
図9Bの波形は、運動中の点を表し、従って、対応するドップラー周波数のサンプルである。従って、受信エコー信号の検出周波数を送信ピング信号の既知の周波数と比較することによって、ドップラーシフトを検出することができる。2つのこのような信号が、それらの信号間の位相のずれが約90度である(即ち、同相信号と直角位相信号)場合、運動がトランスデューサプローブに近づく又は離れる運動であるか否かを決定することが可能である。代替の実施態様では、受信波形からドップラー周波数を検出する任意の他の既知の方法を使用することもできる。
【0119】
ドップラーシフト周波数が、所与の運動している反射体で検出されたら、検出されたドップラー周波数に関連した速度を、受信ドップラーエコーのタイミング及び既知の情報、例えば、画像化された媒体における音速(「c」)に基づいて直接計算することができる。例えば、一部の実施態様では、時間領域相関(TDC)として知られている技術を使用することができ、この技術では、反射体の変位(Δx)が、音速(「c」)と検出時間シフト(Δt、ドップラー周波数シフトに一致する)との積を1/2にすることによって決定される。
【0121】
運動している反射体の速度(Vr)は、単に、送信波形の連続した周期間の時間(PP)によって除された変位(Δx)である。
【0123】
様々な代替の実施態様では、検出されたドップラー周波数に基づいて反射体の速度を定量化する任意の他の既知の方法も使用することができる。
【0124】
反射体のスカラー速度に加えて、運動のベクトル方向も、使用される分析の種類、利用可能な処理能力、使用されるプローブの種類、及び他の因子によって様々な精度で決定することができる。一般に、運動は、1次元又は多次元で検出することができる。
【0125】
1次元ドップラー運動の検出の実施態様
一部の実施態様では、このような処理は、
図9A及び
図9Bに例示されているような同相波形62及び直角位相波形64の複合的な(実際と架空)組み合わせに対して高速フーリエ変換を行うことによって達成することができる。このような演算の結果により、N個の成分の複合ベクトルが得られる。次いで、複合成分を振幅に変換しても良いし、又はパワースペクトルを計算しても良い。成分の半分が、正のドップラーシフト(プローブに近づく運動)に対応し、成分の残りの半分が、負のドップラーシフト(プローブから離れる運動)に対応する。代替の実施態様では、このような処理は、送信ドップラーピング周波数でサンプリングされた3つ以上のフレームの無限インパルス応答(IIR)で達成することができる。さらなる実施態様では、任意の他の直角位相検出法又は任意の他の既知の方法を使用して、検出されるドップラー周波数に基づいて、運動している反射体の方向の1次元の決定を行うことができる。一部の実施態様では、このようなドップラー処理の結果は、医師に表示することができ、かつ音声出力で提供することもできる。一部の実施態様では、ドップラーデータは、Bモードスキャンに対するオーバーレイとして表示することができる。
【0126】
一部の実施態様では、
図2を参照して上記説明されたように、あらゆるビーム形成20を行う前に、送信ドップラーピングの後に受信開口の各素子によって受信される生の非ビーム形成エコーデータを分析して、反射体が運動していることを示すドップラー周波数シフト24を検出することができる。このような実施態様では、「試験セグメント」は、上記の実施態様のように反射体の位置(ビーム形成によって決定される)に基づくのではなく、受信素子によって受信されるエコー信号の相対的なタイミングに基づいて定義し、選択することができる19。このような実施態様では、ドップラー周波数は、上記説明と実質的に同じ要領で検出することができるが24、反射体の位置に基づいて試験セグメントを定義するのではなく、試験セグメントは、各受信素子によって受信されるエコー信号のタイミングによって定義することができる。
【0127】
一部のこのような実施態様では、エコーデータの1つ以上のセクションで運動が検出されたら24、運動している反射体を示すエコーをビーム形成して20、これらの運動している反射体を表す画素の位置を決定することができる。このようなビーム形成(例えば、上記説明されたような動的ビーム形成プロセス)により、ドップラーエコーデータにおける運動している反射体の位置を決定することができる。1つの受信開口の全ての受信素子で受信されるドップラーエコーデータを、得られる位置情報の方位分解能を改善するためにコヒーレント加算によって組み合わせることができる。
【0128】
一部の実施態様では、ドップラーエコーデータセットの運動を示さない部分又は閾値よりも低い速度の運動を示す部分は、表示される画像(又は画像層)における運動している画素を表す画素位置を求めるためにビーム形成する場合は無視することができる。このようにして、閾値よりも速く運動している反射体から得られるドップラーエコーデータのみを、ドップラー画像の形成に使用することができる。
【0129】
一部の実施態様では、Bモード画像の自動発見的解析を使用して、最終ドップラー画像(又は合成画像のドップラー画像層)に含められるドップラー情報の空間分解能を改善することができる。例えば、Bモード画像を評価して、血管を識別することができる(例えば、米国特許第8,105,239号に記載されているようなプロセスを用いて)。このような情報を用いて、イメージングシステムを、血管として識別される領域のみにおける運動を示す画像を形成するように構成することができる。同様の方法を、他の医療用途又は非医療用途に適用することができる。
【0130】
一部の実施態様では、検出された運動をディスプレイ上に色で示すことができる。検出された運動が1次元である(即ち、プローブに対して近づく又は遠ざかる)実施態様では、一方向における運動(例えば、プローブに近づく運動)をある色、例えば、赤色で示すことができ、反対方向の運動(例えば、プローブから遠ざかる運動)を別の色、例えば、青色で示すことができる。様々なドップラー周波数を、2つの選択された色の強度を変更することによって示すことができる。次いで、このような色の付いたドップラー画像を、ドップラー運動情報に文脈を提供するために、Bモード画像を用いてオーバーレイすることができる。他の実施態様では、ドップラー画像を独立して表示することができる。1次元ピングベースドップラー法を用いて、Bモード画像内の任意の点における運動を、前もって目的のドップラー領域(又は試験セグメント)を特別に定義しなくても表示することができる。これは、ドップラーピングが、対応するBモード画像の範囲によって定義される目的の全領域を超音波照射するためである。
【0131】
多次元ドップラー運動の検出の実施態様
2つ以上の受信開口又は2つ以上の送信素子を使用することにより、2つ以上の軸に沿って整合した流れの成分も検出することができる。このような実施態様では、異なる軸に沿った流れの成分を組み合わせて、各ゲート又は画素についての流れの合計速度及び方向を求めることができる。例えば、
図8を参照すると、プローブ1030の送信開口「tx」の左側の受信素子「rx」は、1つの受信開口として処理することができ(例えば、上記の1次元プロセスの1つを用いて)、送信開口「tx」の右側の受信素子「rx」は、別個の受信開口として処理することができる。この場合、右側の開口の最大流量感度の方向は、左側の開口と比較するとわずかに異なるであろう。一部の実施態様では、方向感度におけるこの差異を利用して、標的物体(例えば、動脈内の血液)の総流量及び方向を推測することができる。
【0132】
代替の実施態様では、同じ効果を、多数の送信開口と単一受信開口によって達成することができる。例えば、
図10は、送信トランスデューサ素子が両端部に設けられた線形トランスデューサアレイ1034を例示している。一部の実施態様では、
図10のアレイ1034は、多数の受信開口を備えるために十分に広くすることができる。これらのアプローチのそれぞれの実施態様が、以下により詳細に説明される。
【0133】
一部の実施態様では、設計されたイメージングシナリオの最大コヒーレント開口幅の2倍又は3倍以上の全開口を備えた多数開口超音波プローブを使用して、点源送信開口「tx」、評価される画素、及び各受信開口によって範囲が決まる角度を大きくすることができる。評価する画素への経路間の角度を大きくすることにより、異なる受信開口における測定値間の差異が、一般に大きくなり、推測される総流量及び方向の誤差が少なくなる。一部の実施態様では、多数開口プローブは、2開口システム、例えば、
図11に示されているアレイ1032又は
図12に示されているアレイ1036とすることができる。他の実施態様では、多数開口プローブは、
図13に示されている3開口プローブ1038とすることができる。さらなる実施態様は、多数の他の可能性、例えば、中心、凸状、もしくは凹状曲面アレイではなく受信アレイの縁への1つ以上の送信開口の配置、又はアレイに沿った様々な点に配置される複数の送信開口を提供する。一部の実施態様では、2つ以上の送信開口を使用することができ、各送信開口を使用することによって受信されるドップラー結果を、他の送信開口からの結果と平均して結果をさらに改善することができる。多数の送信開口を備えたプローブ1034の例が
図10に例示されている。
【0134】
図14は、多数開口超音波プローブを用いてスカラー速度測定値を検出して、プローブのジオメトリに基づいてエコーデータ非依存近似を行うプロセス300の実施態様を例示している。
図14のプロセス300によると、超音波イメージングシステムは、多数開口超音波プローブが使用されていることを最初に決定することができる302。このような確認302は、プローブが接続されたときにプローブとイメージングシステムとの間のハンドシェイク通信によって行うことができる。あるいは、このような検出302は、単に、保存されたデータセットが多数開口プローブを用いて収集されたことを決定するステップを含み得る。
【0135】
プロセス300は、イメージングフィールドにおける各画素の一連の補正係数(即ち、特定の反射体が画像化される各音響経路の補正係数)を計算する又は他の方法で得ることも含み得る304。以下にさらに詳細に説明されるように、データ非依存近似係数を、使用される多数開口プローブの送信開口及び受信開口のジオメトリに基づいて各開口間音響経路について計算することができる。運動している反射体は、本明細書で説明される方法を含む任意の利用可能な方法を用いて識別して位置を求めることができる306。最小反射体速度を、測定速度にこのようなデータ非依存近似係数を乗じることによって計算することができる308。最小速度推定の精度をさらに高めるために、多数の速度測定値を、平均化法、重み付け平均化法、又は任意の他の方法によって合計することができる310。
【0136】
図15を参照して以下にさらに詳細に説明されるように、送信開口320と画素位置315とをつなぐ第1の線321と、該画素位置315と受信開口322とをつなぐ第2の線との間の角φ1は、プローブの既知のジオメトリ及び使用される画像ウィンドウのみによって決まる。
図15は、送信線321と受信線325との間の角φ2、及び送信線321と受信線327との間の角φ3をさらに例示している。結果として、所与のプローブ及び画像ウィンドウに対する送信開口320、画素位置315、及び受信開口322、324、又は326のそれぞれの組み合わせについて(即ち、各音響経路について)角φを事前に計算することができる。角φが決定されたら、1/cos(φ/2)に等しいデータ非依存近似係数を、各画素位置及び該画素の各音響ウィンドウについて事前に計算することができる。φが0であるどの音響経路(即ち、開口内音響経路)でも、補正係数は、単に1(cos(0)=1)になる。φがほぼ0であるどの音響経路でも、補正係数は、同様に1とみなすことができる。
【0137】
図14を参照すると、上記の任意の方法を又は任意の他の適切な方法を用いて、ドップラー周波数検出を行って、1つ以上の音響経路を使用してあらゆる画素位置において運動している反射体を識別し、その位置を求め306、速度を決定することができる。次いで、どの画素でも、各音響経路によって得られる速度に、該音響経路のデータ非依存近似係数を乗じて、反射体の最小速度を表す速度測定値を得ることができる308。多数の音響経路によって得られる速度測定値を組み合わせて(例えば、平均化法又は重み付け平均化法によって)、測定の精度をさらに改善することができる。他の実施態様では、多数の音響経路によって得られる最大速度測定値を、最小速度測定値と見なすことができる。
【0138】
図16は、画像平面内の運動している反射体の速度及び方向を表す2次元速度ベクトルを検出するためのプロセス350の実施態様を例示している。
図16のプロセス350は、
図14のプロセス300と実質的に同じステップで開始することができ、多数開口超音波プローブの存在を検出するステップ302、使用される音響経路の調整係数を計算するステップ304、ドップラー検出技術を用いて運動している反射体を識別してその位置を求めるステップ306、及びデータ非依存調整係数を適用するステップ308を含む。データ非依存調整係数を、速度方向を計算する前に速度に対する補正として適用することができる。次いで、速度ベクトルを、2つの異なる音響経路を用いて得られた測定値を組み合わせることによって計算することができる360。画像平面内の反射体の運動の速度及び方向を、使用される2つの経路の音響経路のジオメトリから導出された1組の連立方程式を解くことによって計算することができる360。このような連立方程式の例は、式1〜7を参照して以下に記載される。
【0139】
次いで、多数対の音響経路の測定から得られる速度ベクトルを、例えば、ベクトルの外積を求めることによって組み合わせることができる362。一部の実施態様では、特定の反射体の運動の速度及び方向の正確な測定値が得られやすくなるように、1つ以上の音響経路を認識することができる(使用者が手動で、又は画像システムもしくはイメージングシステムによって自動で)。このような実施態様では、このようなより高品質の音響経路を用いて得られる速度ベクトルには、多数の音響経路によって得られるベクトルを組み合わせる場合により高い重みを付けることができる。
【0140】
説明を簡潔にするために、多数開口ドップラーイメージングシステムの動作を、
図12のプローブ1036を参照して説明する。
図13のプローブ1038又は任意の他の可能なプローブ構成へのこの分析の拡張は、本明細書の説明及び例示から当業者には明らかであろう。
【0141】
図12のプローブ1036は、少なくとも1つの指定送信素子「tx」を有する第1の水平アレイを備えている。図示されているように、送信素子は、第1の水平アレイの中心に配置することができる。一部の実施態様では、送信機能に使用されないトランスデューサ素子は、受信機能用とすることができる。第1のアレイと一列に、又は該第1のアレイに対して一定の角度なすように配置された第2のアレイを全て、エコー受信用にすることができる。第1及び第2のアレイのそれぞれにおける各素子の音響位置は、少なくとも所望の精度で正確に分かっているのが好ましい。
【0142】
図17は、
図12のシステムのさらに簡易化された図を例示している。
図17では、点c 1050は、流れの速度及び方向を推定するための試験セグメントを表している(本明細書では、候補点1050と呼ばれる)。この説明のために、点c 1050における実際の速度は、Vとして表され、実際の方向は、角γで表されている。点「a」1052は、水平アレイの中心を表し、送信開口「tx」の位置及び第1の受信開口「Rx1」の中心に一致している。点「b」は、第2の受信開口「Rx2」の中心素子を表している。
【0143】
線「a-c」1062は、送信素子「tx」から候補点1050まで移動する送信波面の経路を表している。線「a-c」1062はまた、候補点1050から第1の受信開口「Rx1」の中心まで戻るエコーの経路も表している。線「b-c」1064は、候補点1050から第2の受信アレイ「Rx2」における点「b」1054まで移動するエコーの経路を表している。角αは、水平基準線1070に対する線「a-c」1062の角度である。同様に、角βは、同じ水平基準線1070に対する線「b-c」1064の角度を表している。
【0144】
候補点「c」1050は、送信開口「tx」から送信される(即ち、音響経路「a-c」に沿って)パルスのエコーから第1の受信開口「Rx1」によって画像化される場合、ドップラー情報は、線「a-c」1062に沿った運動の成分に対して最も敏感である。送信開口「tx」から送信されるドップラー信号を用いた第2の受信開口「Rx2」から同じ候補点「c」1050を画像化する場合(即ち、音響経路「a-c-b」に沿って)、ドップラー情報に対して最も敏感な軸は、角「a-c-b」1068を二分する例示された線「d-c」1066である。これは、ドップラー情報(即ち、送信ドップラーピング周波数に対する受信エコーの周波数の増加又は減少)が、線「d-c」1066に沿った送信経路及び受信経路の両方による影響を受けるためである。水平基準1070からの線「d-c」1066の角度は、δ=(α+β)/2である。結果として、さらなる分析を一切行うことなく、運動の方向を決定する上記の1次元法を利用して、点「c」における反射体の線「d-c」1066に沿った速度成分を測定することができる。
【0145】
この説明のために、Vmaxは、所与のドップラーピング周波数の検出可能な最大速度を表す。当分野で公知であるように、エイリアシングなしに検出可能な最大ドップラー周波数はPRF/2である。ピングベースドップラーの文脈では、これは、エイリアシングなしに検出可能な最大ドップラー周波数が、送信ドップラーピング周波数の半分であることを意味する。Vmaxで運動している候補点「c」の粒子による経路「a-c」に沿って戻る位相シフトは、1パルスに付きπラジアンである。これは、パルス間の時間における1/4の波長(λ/4)を運動する粒子に等しい。しかしながら、第2の受信開口「Rx2」による経路「a-c-b」に沿った位相シフトによって検出される、経路「d-c」に沿った同じ速度が、わずかπcos(δ−α)の位相シフトになる。これは、候補点1050における粒子が、経路「d-c」に沿って点e 1074まで距離λ/4(図面では距離が誇張されている)移動するとして示されている
図18を参照すると分かる。点「c」において、線「a-e」上の点「f」1080まで垂線1076を引くと三角形「c-e-f」が形成され、線分「e-f」1082が、点「c」1050における反射体が点「e」1074の位置に移動すると経路「a-c」の経路長が増大することを表している。角「d-e-a」が、角「d-c-a」にほぼ等しく(距離「c-e」が非常に小さいため)、従って、「e-f」≒λ/4 cos(δ−α)であることに留意されたい。この増分経路長が、経路「c-b」でも同じであるため、全位相シフトは、πcos(δ−α)である。従って、経路「a-c-d」に沿ったすべての測定値は、このような測定値に1/cos(δ−α)を乗じることによって補正することができる。
【0146】
幸いなことに、上記計算された角度差及び補正は、各画像画素について事前に知ることができ、送信データにもエコーデータにも依存しない。これは、各画像画素が、目的の領域内の既知の位置にマッピングされるためであり、かつ各トランスデューサ素子の音響位置が、イメージングシステムによって既知であるためである(例えば、上記参照された本出願人の以前の出願で説明されているような校正システムによって決定される)。従って、選択される画像深さに対して、各画像画素と各送信開口/受信開口の組み合わせ(即ち、各音響経路)の角δ及び角αを、既知のプローブのジオメトリから計算することができる。従って、任意の選択される画像深さにおける各画素又は画像ウィンドウの一連の補正係数を、ドップラー測定プロセス中に事前に計算し、使用のためにメモリに保存することができる。他の実施態様では、このような補正係数は、動的に計算することができる。
【0147】
同様の補正係数を、送信開口、反射体の点、及び受信素子によって形成される角φ(例えば、
図15に示されている)を決定することによって任意の開口間音響経路について計算し、次いで、該音響経路について1/cos(φ/2)としてデータ非依存補正係数を計算する。任意の開口内音響経路(これに対しては、φは0である)の補正係数は、1に等しい(cos(0)=1であるため)。
【0148】
経路a-c-bに沿ったドップラーシフトの補正=1/cos(δ−α) (1)
【0149】
この補正が行われると仮定すると(
図13のような多数開口構造の送信経路及び受信経路の両方に対しても)、V及びγの計算は次の通り進めることができる。
【0150】
V
aを、音響経路「d-c」を用いて点「c」におけるVの測定値とし、V
bを、音響経路「a-c」を用いて点「c」におけるVの測定値とする。すると
【0153】
V
a、V
b、α、及びδが既知である、又は測定されるため、V及びγは、次のように求めることができる:
【0156】
cos(γ−α)=K cos(γ−δ)
【0157】
cosγcosα+sinγsinα=K cosγcosδ+K sinγsinδ
【0158】
(cosα−K cosδ)cosγ=(K sinδ−sinα)sinγ
【0159】
tanγ=(cosα−K cosδ)/(K sinδ−sinα) V
b≠0の場合
【0160】
γ=arctan((cosα−K cosδ)/(K sinδ−sinα)) V
b≠0の場合 (5)
【0161】
あるいは、V
aが0でもほぼ0でもない場合は、
【0163】
cosγcosδ+sinγ+sinγsinδ=K'(cosγcosα+sinγsinα)
【0164】
(cosδ−K' cosα)cosγ=(K' sinα−sinδ)sinγ
【0165】
tanγ=(cosδ−K'coα)/(K'sinα−sinδ) V
a≠0の場合
【0166】
γ=arctan((cosδ−K'cosα)/(K'sinα−sinδ)) V
a≠0の場合 (7)
【0167】
適切な式を使用してγを求めてから、式(2)又は(3)のいずれかを用いて、流体の流れの方向に関係なく速度Vを求めることができる。
【0168】
多くのアプリケーションでは、式(4)と(5)又は(6)と(7)の比較的複雑な計算を証明することができない。データ非依存性である(即ち、これらの値を、エコーデータを一切必要とすることなくプローブのジオメトリ、イメージング深さ、及び画素位置に基づいて知ることができる)式(1)の補正を単に行う場合、以下の式を用いる全速度の推定で最大誤差となる:
【0169】
S(速度)=(V
a+V
b)/2 (8)
【0171】
S=V/2(cos(γ−α)+cos(γ−δ))
【0173】
dS/dγ=−V/2(sin(γ−α)+sin(γ−δ))=0
【0175】
sin(γ−α)=−sin(γ−δ)=sin(δ−γ)
【0179】
従って、最大速度は、Vが角(α+δ)/2に一致したときに生じる。
【0180】
システムは、線「d-c」に対して直角な方向、即ち、(α+δ)/2+π/2の流れに対して最も影響を受けない。
【0181】
S=V/2[cos((−α+δ+π)/2)+cos((α−δ+π)/2)]
【0182】
=V/2[sin((δ−α)/2)+sin((δ−α)/2)]
【0184】
角(δ−α)が30度よりも大きい画像のどの領域でも、直交方向の速度は、この単純化を用いると過小報告が50%以下である。
【0185】
角(α+δ)/2に一致した流れの場合、
【0187】
従って、(δ−α)/2が60度未満であるどの領域でも、方向(α+δ)/2における速度成分も、この単純化を用いると過少報告が50%以下である。
【0188】
対照的に、単一角(又は1次元)カラーフロードップラーによって推定される速度は、測定の角度に対して直角な方向において速度を完全に失い得る。
【0189】
上記の分析では、計算は、受信開口が中心点を中心に対称であるという仮定に基づいて、受信開口rxの中心を用いて行われ、受信開口の個々の素子によって受信されるエコーは、速度計算を行う前にコヒーレント加算される。他の実施態様では、受信開口における任意の他の点を、上記の速度計算に使用することができる。さらなる実施態様では、上記の分析は、受信開口の個々の素子によって測定される速度を別個に計算することまで拡張することができる。
【0190】
同様に、上記の分析は、3つ以上の受信開口及び/又は2つ以上の受信開口を利用するシステムまで拡張することもでき、これは、当業者には本明細書の説明から明白であろう。例えば、上記の分析は、第3の受信開口、例えば、
図13の中心アレイ「rx3」を含む超音波プローブに適用することができる。このような実施態様では、どの運動している反射体「c」の速度の第1の測定も、上記の分析を使用し、中心受信開口「rx3」及び左の受信開口「rx2」に適用して計算することができる。反射体「c」の速度の第2の測定は、上記の分析を使用し、中心受信開口「rx3」及び右の受信開口「rx1」に適用して計算することができる。次いで、第1及び第2の速度ベクトルを平均して最終速度測定値を得ることができる。一部の実施態様では、第1及び第2の速度ベクトルを、測定される点の最良の表示を提供する送信/受信開口対に対してより重みを付ける重み付け平均化法と組み合わせることができる。同様に、2つの送信開口及び1つ以上の受信開口を用いて測定される速度ベクトルを平均して、速度測定の精度を改善することができる。
【0191】
例えば、一部の実施態様では、上記のプロセスを使用して、第1の受信開口と同時に第2、第3、第4、第5の(又は任意の数の追加の)受信開口を用いて速度測定値を得ることができる。このような実施態様では、全ての受信開口から得られる速度の大きさ及び方向の測定値を組み合わせて(例えば、平均化法又は重み付け平均化法によって)、このような測定の精度をさらに高めることができる。
【0192】
非ドップラー運動検出
図20は、ドップラー周波数を検出しなくても、ピングベースイメージングシステムを用いて運動を検出することができるプロセス400の一例を例示している。このような実施態様は、高フレームレートのピングイメージング及び画像処理技術を用いて画像化された画素の運動を検出することができる。完全な画像は、1つの送信ピングのエコーから計算できるため(上記説明され、上記参照された本出願人の以前の出願にも説明されている)、ピング画像は、1つのピング信号の往復移動時間によってのみ限定される、可能な最大ピング繰り返し率と同程度に高いフレームレートで得ることができる。言い換えれば、画像の形成には1つのピングしか必要としないため、フレームレートに対する唯一の重要な制限は、画像化される媒体における超音波の速度である。例えば、一部の実施態様では、ピングベースイメージングシステムは、非常に高いフレームレートで一連の画像を用いて18cmの深さまで画像化する場合、4000フレーム/秒以上のフレームレートを達成することができ、物体の運動を直接見ることができる。さらに、カラーフロー技術又は任意の他の技術を用いて運動を自動的に識別して強調するために、一連の高フレームレート画像のコンピュータ分析を行うことができる。
【0193】
従って、一部の実施態様では、非ドップラー運動検出法のプロセス400は、送信開口を選択することによって1つのフレームを得るステップ402、Bモードピングを送信するステップ404、多数の開口を用いてBモードピングのエコーを受信するステップ406を含み得る。ステップ402〜406を繰り返して、いくつかのフレーム(例えば、数十、数百、又は数千のフレーム)を得ることができる408。(一部の実施態様では、ステップ402〜406を異なる送信開口を用いて繰り返して、第1のフレームの追加のデータを得ることができる)。次いで、各フレームをビーム形成して一連の画像を得ることができる410。
【0194】
一部の実施態様では、次いで、一連の高フレームレート画像の自動分析を、画像処理に一般的に使用されている多数の既知の運動推定技術のいずれかを用いて行うことができる412。このような技術を用いて、速く運動している反射体(例えば、管内の血液又は流体)を、静止又は遅く運動している物体(例えば、管壁、血管壁、又は固形組織)の遅い運動と区別することができる。静止又は遅く運動している物体から予期される画素値の変化よりも速い画素値の変化を運動として検出し、Bモード画像に重ね合わされた色として表示することができる。次いで、運動している物体又は物質を表しているとして識別された画素を、例えば、本明細書で説明された他の実施態様と同様に運動の方向及び速度によって強度又は濃淡が異なるように色を付けることによって強調することができる414。一部の実施態様では、信号処理、例えば、いくつかのフレームに対する1画素ベースの周波数分析を使用して、速く運動している小さい反射体と遅く運動している大きい反射体とを区別することができる。様々な実施態様では、このような技術を用いて、目的の画像化領域内のあらゆる方向における運動速度ベクトルを決定することができる。
【0195】
運動情報の表示
運動が、ドップラー技術を用いて検出されるか、又は高フレームレート運動推定技術を用いて検出されるかにかかわらず、1つ以上の閾値を設定して、「速く運動している」点と「遅く運動している」又は「静止」点とを区別するための試験を提供することができる。様々な実施態様では、閾値は、使用者によって手動で、あるいは因子に基づいたソフトウェアエージェント、例えば、既知の画像化された物体において検出される運動及び/又は予期される運動範囲についての情報の分析によって自動的に設定することができる。一部の実施態様では、遅く運動している点又は静止点は、速く運動している点とは異なる色又は強度で表示することができる。
【0196】
カラーフロードップラーに関して、本発明の実施態様は、使用可能なディスプレイのための情報を過剰に提供する可能性がある。一部の実施態様では、どの角度の流れも異なる色で色分けしても良いが、このような色の解釈は、混乱をもたらし得る。最新医療におけるカラーフロードップラーの1つの重要な用途は、血液の逆流及び乱流の検出である。これらの目的のためには、2色系が望ましいであろう。
【0197】
このような実施態様では、流れが検出される局所領域において、流れの最大の軸(例えば、動脈に沿った又は弁を通る)を決定することができる。次いで、流れの最大の軸に沿った一方向における運動を1色(例えば、赤色など)の濃淡によって示し、反対方向の運動を別の色(例えば、青色など)で示すことができる。従って、一部の実施態様では、全ての方向を、最大の軸に沿った各方向の成分の検出に基づいて赤色又は青色のいずれかで表示することができる。
【0198】
このような実施態様では、超音波イメージングシステム又は画像表示ワークステーションは、色が割り当てられるべき軸(1次元)又は座標系(2次元)を使用者が識別することができるユーザインターフェイスを備えるように構成することができる。例えば、使用者は、選択された軸に沿った速度成分の正負及び大きさによって画像における各画素に色(例えば、赤色又は青色)を割り当てることができるように、1次元を識別することができる。他の実施態様では、第2の軸に沿った速度成分に基づいて少なくとも第3の色を加えることができるように、2次元表色系を定義することができる。様々な実施態様では、主な流れの1つ又は2つ以上の軸を、運動データのソフトウェア解析によって自動的に、又は使用者が適切なユーザインターフェイスを介して手動で識別することができる。例えば、主な運動の軸は、全て(又はいくつか)の速度ベクトルの平均を計算することによって決定することができる。
【0199】
例えば、座標系は、水平軸に沿った速度成分が正の画素に、水平軸に沿った速度成分の大きさに比例した強度で赤色で着色するように定義することができる。同じ例では、水平軸に沿った速度成分が負の画素に、負の水平速度成分の大きさに比例した強度で青色で着色することができる。次いで、垂直軸に沿った速度成分が正の画素には、正の垂直速度成分の大きさに比例した強度で別の色、例えば、黄色で着色することができる。任意の他の座標系(例えば、動径座標系又は非直交座標系)及びカラースキームを使用することもできる。
【0200】
流体の流れが主な方向を有していないより複雑な状況では、それぞれの角度の流れに異なる色を利用する表示が好ましいであろう。
【0201】
スペクトルドップラーは、流速のスペクトルがY軸上に図形で表され、時間がX軸上に表される超音波画像表示の形態である。一部の実施態様では、スペクトル分析に必要な全てのデータを、Bモード画像のどの画素にも利用可能とすることができる。カーソルを目的の領域に配置して、カーソル位置の中心に置かれた、組み合わせるサンプルのサイズを決定するために制御装置が必要であろう。
【0202】
一部の実施態様では、上述の技術と同様の技術を、当分野で「パワードップラー」と呼ばれるものに使用することができる。パワードップラーは、無指向性であり、非常に低い流量を検出するために使用されている。非常に低い流量を区別するために、システムは、より長いドップラーピングを送信して、ドップラーピング周波数でより多くのサンプルを得る必要があり得る。これは、フレームレートを低減する効果を有し得る。一部の実施態様では、指向性情報は、パワードップラーでの慣習として廃棄しても良いし、又はカラードップラーについて上記説明したように表示しても良い。
【0203】
メモリアーキテクチャ
上記のシステム及び方法の様々な実施態様は、イメージングセッション中にデジタル化されたエコー波形を保存するように構成された超音波イメージングシステムを用いることによってさらに向上させることができる。このようなデジタルエコーデータは、イメージングシステム上もしくは独立したコンピュータ上で、又はエコーデータをビーム形成及び処理して画像を形成するように構成された他のワークステーションで後に処理することができる。一部の実施態様では、このようなワークステーション装置は、上記の任意の技術を用いてエコーデータを動的にビーム形成及び処理するソフトウェアを備えたあらゆるデジタル処理システムを備えることができる。
【0204】
図19は、エコーデータを保存するように構成された超音波イメージングシステムの一部の実施態様に含めることができる構成要素を例示するブロック図である。
図19のブロック図は、いくつかのサブシステム:送信制御サブシステム204、プローブサブシステム202、受信サブシステム210、画像形成サブシステム230、及びビデオサブシステム240を含む。殆どの超音波システムとは異なり、
図19のシステムは、後の取り出し及び処理のために生の非ビーム形成エコーデータを保存するように構成されたメモリ装置を提供する。
【0205】
様々な実施態様では、受信エコーデータを、きれいなアナログエコー信号から完全に処理されたデジタル画像又はデジタルビデオまでもの様々な段階で保存することができる。例えば、きれいな生のアナログ信号は、アナログ記録媒体、例えば、磁気テープを用いて保存することができる。やや高度なレベルの処理で、デジタルデータを、アナログ信号がアナログデジタル変換器を通過した直後に保存することができる。さらなる処理、例えば、バンドパスフィルタリング、補間、ダウンサンプリング、アップサンプリング、他のフィルタリングなどを、デジタル化エコーデータに対して行うことができ、そして生データを、このような追加のフィルタリングステップ又は処理ステップの後に保存することができる。次いで、このような生データをビーム形成して、各受信エコーの画素位置を決定し、これにより画像を形成することができる。個々の画像をフレームとして組み合わせてビデオにすることができる。一部の実施態様では、わずかな処理を行った後(例えば、デジタルエコーデータのある種のフィルタリング及び調整の後であるが、ビーム形成又は画像処理を行う前に)、デジタル化エコーデータを保存するのが望ましいであろう。一部の超音波システムは、ビーム形成エコーデータ又は完全に処理された画像データを保存する。それでもなお、本明細書で使用される「生のエコーデータ」及び「生データ」という句は、ビームを形成する前の任意のレベルの処理で受信される超音波エコー(RXデータ)を記述する保存されたエコー情報を指すこともある。生のエコーデータは、Bモードピング、ドップラーピング、又は任意の他の超音波送信信号から得られるエコーデータを含み得る。
【0206】
受信エコーデータに加えて、特定のセットのエコーデータを生成した1つ以上の超音波送信信号についての情報を保存することも望ましいであろう。例えば、上記のように多数開口ピング超音波法を用いて画像化する場合、特定のセットのエコーを生成した送信ピングについての情報を知ることが望ましい。このような情報は、1つ以上の送信素子の識別及び/又は位置、並びに周波数、大きさ、パルス長、期間、又は送信超音波信号を記述する他の情報を含み得る。送信データは、本明細書ではまとめて「TXデータ」と呼ばれる。一部の実施態様では、このようなTXデータは、生のエコーデータが保存される同じ生データメモリ装置に明示的に保存することができる。例えば、送信信号を記述するTXデータは、生のエコーデータのセットが送信信号によって生成される前にヘッダーとして保存するか、又は、該生のエコーデータのセットの生成の後にフッターとして保存することができる。他の実施態様では、TXデータは、ビーム形成プロセスを実施しているシステムにもアクセス可能な別個のメモリ装置に明示的に保存することができる。送信データが明示的に保存される実施態様では、「生のエコーデータ」又は「生データ」という句は、このような明示的に保存されたTXデータも含み得る。なおさらなる実施態様では、トランスデューサ素子の位置情報を、同じ又は別個のメモリ装置に明示的に保存することができる。このような素子の位置データは、「校正データ」又は「素子位置データ」とも呼ばれ、一部の実施態様では、一般に、「生データ」の中に含まれ得る。
【0207】
TXデータは、暗示的に保存することもできる。例えば、イメージングシステムが、常に定義される超音波信号(例えば、一定の大きさ、形状、周波数、期間など)を一定又は既知の順序で送信するように構成されている場合、このような情報は、ビーム形成中に仮定することができる。このような場合、エコーデータに関連させる必要がある情報は、送信トランスデューサ(複数可)の位置(又は識別)だけである。一部の実施態様では、このような情報は、生データメモリ内の生のエコーデータの構成に基づいて暗示的に得ることができる。例えば、システムは、各ピングの後に定数のエコー記録を保存するように構成することができる。このような実施態様では、第1のピングからのエコーを、メモリ位置0〜「n」に保存することができ(この「n」は、各ピングについて保存された記録の数である)、第2のピングからのエコーは、メモリ位置n+1〜2n+1に保存することができる。他の実施態様では、1つ以上の空の記録をエコーセット間に残しても良い。一部の実施態様では、受信エコーデータは、送信ピングと受信エコーデータ点(又はエコーの群)との間の関係を暗示する様々なメモリインターリービング技術を用いて保存することができる。同様に、仮定データを、一定の既知のサンプリングレートでサンプリングし、各エコーデータ点が受信される時間を、メモリ内の該データ点の位置から推測することができる。一部の実施態様では、同じ技術を用いて、多数の受信チャネルからのデータを1つの生データメモリ装置に暗示的に保存することもできる。
【0208】
図19に示されているように、超音波イメージングシステム200は、超音波プローブ202を備えることができ、該超音波プローブ202は、複数の別個の超音波トランスデューサ素子を備えることができ、その一部を送信素子として指定し、残りを受信素子として指定することができる。一部の実施態様では、各プローブトランスデューサ素子は、超音波振動を時変電気信号に変換することができ、逆も同様である。一部の実施態様では、プローブ202は、任意の所望の構造の任意の数の超音波トランスデューサアレイを備えることができる。本明細書で説明されるシステム及び方法に関連して使用されるプローブ202は、単一開口プローブ及び多数開口プローブを含め、所望に応じて任意の構成とすることができる。
【0209】
プローブ202の素子からの超音波信号の送信は、送信制御装置204によって制御することができる。送信信号のエコー受信時に、プローブ素子は、受信超音波振動に対応する時変電気信号を生成することができる。受信エコーを表す信号は、プローブ202から出力し、受信サブシステム210に送ることができる。一部の実施態様では、受信サブシステムは、多数のチャネルを備えることができ、該チャネルのそれぞれは、アナログフロントエンド装置(「AFE」)212及びアナログデジタル変換装置(ADC)214を備えることができる。一部の実施態様では、受信サブシステム210の各チャネルは、ADC 214の後にデジタルフィルタ及びデータ調整装置(不図示)を備えることもできる。一部の実施態様では、ADC 214の前にアナログフィルタを設けることもできる。各ADC 214の出力は、生データメモリ装置220に案内することができる。一部の実施態様では、受信サブシステム210の独立したチャネルを、プローブ202の各受信トランスデューサ素子に設けることができる。他の実施態様では、2つ以上のトランスデューサ素子が、共通の受信チャネルを共有することができる。
【0210】
一部の実施態様では、アナログフロントエンド装置212(AFE)は、信号をアナログデジタル変換装置214(ADC)に送る前に特定のフィルタリング処理を行うことができる。ADC 214は、受信アナログ信号を、ある所定のサンプリングレートで一連のデジタルデータ点に変換するように構成することができる。殆どの超音波システムとは異なり、
図19の超音波イメージングシステムの一部の実施態様は、次いで、さらなるビーム形成、フィルタリング、画像層の組み合わせ、又は他の画像処理を行う前に、個々の受信素子によって受信される超音波エコー信号のタイミング、位相、大きさ、及び/又は周波数を表すデジタルデータを生データメモリ装置220に保存することができる。
【0211】
収集したデジタルサンプルを画像に変換する、即ちデータを画像に変換するために、該データを、画像形成サブシステム230によって生データメモリ220から取り出すことができる。図示されているように、画像形成システム230は、ビーム形成ブロック232及び画像層組み合わせ(「ILC」)ブロック234を備えることができる。一部の実施態様では、ビームフォーマー232は、プローブ校正データを含む校正メモリ238と通信することができる。プローブ校正データは、正確な音響位置についての情報、動作の質、及び/又は個々のプローブトランスデューサ素子についての他の情報を含み得る。校正メモリ238は、プローブ内、イメージングシステム内、又はプローブとイメージングシステムの両方の外部の位置に物理的に配置することができる。
【0212】
一部の実施態様では、画像形成ブロック230を通過してから、画像データを画像バッファメモリ236に保存することができ、該画像バッファメモリ236は、ビーム形成され、(一部の実施態様では)層が組み合わせられた画像フレームを保存することができる。次いで、ビデオサブシステム240内のビデオプロセッサ242が、画像バッファから画像フレームを取り出すことができ、該画像を処理してビデオストリームにし、該ビデオストリームを、ビデオディスプレイ244に表示することができ、かつ/又は、例えば、当分野では「シネループ」と呼ばれるデジタルビデオクリップとしてビデオメモリ246に保存することができる。
【0213】
一部の実施態様では、送信制御装置204は、プローブ202のトランスデューサ素子を制御するためのアナログ部品とデジタル部品の任意の組み合わせを含み、所望のイメージングアルゴリズムに従って、所望の周波数及び選択された送信開口からの時間間隔で非集束超音波ピングを送信することができる。一部の実施態様では、送信制御装置204は、超音波周波数の範囲で超音波ピングを送信するように構成することができる。一部の(全てではない)実施態様では、送信制御装置は、フェーズドアレイとして動作し、集束(即ち、ビーム形成された)超音波スキャンラインビームを送信するように構成することもできる。
【0214】
一部の実施態様では、AFE 212は、アナログ信号をアナログデジタル変換装置に送る前に、受信アナログ信号に対して様々な増幅及びフィルタリング処理を実施するように構成することができる。例えば、AFE 212は、増幅器、例えば、低雑音増幅器(LNA)、可変利得増幅器(VGA)、バンドパスフィルタ、及び/又は他の増幅もしくはフィルタリング装置を含み得る。一部の実施態様では、AFE装置212は、トリガー信号の受信時にアナログ信号をADC 214に送り始めるように構成することができる。他の実施態様では、AFE装置を「フリーランニング」とすることができ、アナログ信号をADCに連続的に送る。
【0215】
一部の実施態様では、各アナログデジタル変換器214は、一般に、ある一定の所定のサンプリングレートで受信アナログ信号をサンプリングするように構成された任意の装置を含み得る。例えば、一部の実施態様では、アナログデジタル変換器は、25 MHz、即ち、1秒に2500万サンプル又は40ナノ秒ごとに1サンプルで時変アナログ信号のデジタルサンプルを記録するように構成することができる。従って、ADCによってサンプリングされたデータは、データ点のリストを単に含み、データ点のそれぞれは、ある瞬時の信号値に一致し得る。一部の実施態様では、ADC 214は、トリガー信号の受信時にアナログ信号のデジタルサンプリングを開始するように構成することができる。他の実施態様では、ADC装置は、「フリーランニング」とすることができ、受信アナログ信号を連続的にサンプリングする。
【0216】
一部の実施態様では、生データメモリ装置220は、任意の適切な揮発性又は不揮発性デジタルメモリ保存装置を含み得る。一部の実施態様では、生データメモリ220は、生のデジタル超音波データを、有線又は無線ネットワークを介して外部装置に送信するための通信用電子機器も備えることができる。このような場合、送信される生エコーデータを、任意の所望の形式で外部装置に保存することができる。他の実施態様では、生データメモリ220は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及び通信用電子機器の組み合わせを含み得る。
【0217】
一部の実施態様では、生データメモリ装置220は、一時的(揮発性又は不揮発性)メモリセクション、及び長期不揮発性メモリセクションを含み得る。このような実施態様の一例では、一時的メモリは、ビームフォーマーが、ADCからフルレートでデータを受け取るのに十分に速く動作できない場合に、該ADCと該ビームフォーマーとの間のバッファとして機能し得る。
【0218】
一部の実施態様では、長期不揮発性メモリ装置は、一時的メモリ装置から、又はADCから直接的にデータを受け取るように構成することができる。このような長期メモリ装置は、後の処理、分析、又は外部装置への送信のために一定量の生のエコーデータを保存するように構成することができる。
【0219】
一部の実施態様では、生データメモリにおけるデータ量は、デジタルサンプリングレート、各データサンプルのサイズ(ビット又はバイト単位)、適用されるデータの圧縮、及び他の因子によって異なり得る。従って、一部の実施態様では、容量が約2 GBのメモリ装置は、リアルタイム表示の約6秒間に相当する生のエコーデータを保存することができる。他の実施態様では、これよりも短い又は長い期間を表すデータを、同じ容量のメモリに保存することができる。
【0220】
一部の実施態様では、ビーム形成ブロック232及び画像層組み合わせブロック234はそれぞれ、特定のプロセス(例えば、以下に説明される)を実行するように構成された任意のデジタル信号処理要素及び/又は計算要素を備えることができる。例えば、様々な実施態様では、ビーム形成232及び画像層組み合わせ234は、GPUで動作するソフトウェアによって、又はFPGAアーキテクチャで動作するファームウェアによって行うことができる。
【0221】
一部の実施態様では、ビデオプロセッサ242は、表示及び/又は保存のために画像フレームをビデオストリームにアセンブルするように構成することができる任意のビデオ処理ハードウェアコンポーネント、ファームウェアコンポーネント、ソフトウエアコンポーネントを備えることができる。
【0222】
一部の実施態様では、実質的にリアルタイム(一部の実施態様では、ある程度の待ち時間)でエコーデータを受け取り、ビーム形成し、処理し、そして表示し、同時にエコーデータをメモリ装置に保存することができる。一部のこのような実施態様では、リアルタイム表示のための処理及び/又はビーム形成は、多数のピングから得られるエコーデータをメモリ装置(循環バッファモードで動作し得る)から取り出すことを含むことができ、ビーム形成又は処理を、異なる時間に送信される複数のピングから受信されるエコーデータに対して同時に行うことができる。他の実施態様では、エコーデータは、長期メモリ保存装置に保存することができ、かなり時間が経過してから表示のためにビーム形成及び処理することができ、かつ/又は超音波信号の送受信に使用されるシステムとは全く異なる計算ハードウェアを使用することができる。このような別個の計算システムは、一般に、イメージングワークステーションと見なすことができる。
【0223】
1つ以上の上記の実施態様で説明されたようにドップラーピング信号が送信されるイメージングセッション中に、実質的に未処理のエコーデータを、上記の装置(又は同等の装置)を用いて収集して保存することができる。このような生のエコーデータは、最初のイメージングセッション中にドップラー分析の結果を表示するために該エコーデータが処理されるか否かにかかわらず、収集して保存することができる。従って、一部の実施態様では、ドップラーピングから受信されるエコーは、生データメモリ装置から取り出されて収集された生のエコーデータ、及びイメージングセッションについての任意の他の利用可能な情報(例えば、ドップラーピングを記述する対応するTXデータ)のみを用いて解釈又は分析することができる。
【0224】
一例では、多数開口ドップラーパターンを、イメージングセッション中に送信することができ、かつ得られるドップラーエコーデータを、実際のイメージングセッション中にカラーフロードップラーを処理又は表示することなく、収集して保存することができる。保存された生のエコーデータは、ドップラーイメージングの結果を視覚化及び分析するために、後にメモリから取り出して、同じ又は異なる処理ハードウェアを用いて処理することができる。別の例では、多数開口ドップラーパターンを、イメージングセッション中に、Bモードイメージング信号間に又は該Bモードイメージング信号と同時に送信することができ、得られるドップラーエコーデータと得られるBモードイメージングデータの両方を取り出し、収集し、そして保存し、同時にビーム形成し、処理し、そしてBモード画像及びドップラー画像を1つのディスプレイ(例えば、オーバーレイ画像で、又は別個の並んだ画像)に表示することができる。
【0225】
多数開口ピングイメージングプロセスを用いて超音波画像を形成するとは、目的の全領域からの画像が常に「焦点が合って」いるという意味である。これは、各送信ピングが全領域を照射し、受信開口が全領域からのエコーを受け取り、そして動的多数開口ビーム形成プロセスが超音波照射領域のあらゆる部分又は全ての画像を形成することができるため真実である。このような場合、画像の最大範囲は、送信又は受信ビーム形成装置の限定された集束によってではなく、減衰係数及び信号対雑音係数によって主に限定され得る。結果として、最大解像度画像を、同じセットの生のエコーデータを用いて目的の領域のあらゆる部分から形成することができる。本明細書で使用される「画像ウィンドウ」という語は、目的の全超音波照射領域の選択された部分を指すために使用される。一部の実施態様では、超音波照射領域内の多数のオーバーラップ又は非オーバーラップ領域(画像ウィンドウ)から形成することができる。
【0226】
同様に、カラーフロー画像(又は1つ以上の画像化領域の運動を強調する他の画像)を、目的の超音波照射領域内のあらゆる選択された領域から形成することができる。従って、一部の実施態様では、エコーデータをメモリ装置から取り出すことができ、画像ウィンドウを、実際のイメージングセッション中に使用されるイメージングウィンドウとは完全に別に定義することができる。このような実施態様では、ドップラーエコーデータは、実際のイメージングセッション中に行われる選択とは別に評価することができる。例えば、メモリ装置から取り出されるエコーデータを再処理する場合は、因子、例えば、画像ウィンドウ、運動の1つの軸(又は複数の軸)、「速い」対「遅い」運動の閾値、ドップラー運動推定アルゴリズム、音速の仮定、重み付け係数、様々なフィルタリング(例えば、デコンボリューションフィルタリング又は整合フィルタリング)、校正データ、TXデータ、トランスデューサ素子の開口へのグループ分け、あるいはBモードもしくはドップラー分析、ビーム成形、又は画像処理に使用されるあらゆる他の情報を、実際のイメージングセッション中に使用される値に対して変更することができる。
【0227】
図21は、実際のイメージングセッション後のある時に、保存された生のドップラーエコーデータを再処理するためのプロセス420の実施態様を例示している。実際のイメージングセッション422中に、ドップラーピングを送信することができ、このようなドップラーピングのエコーを受信することができる。受信したエコー信号を表す生のエコーデータを、メモリ装置に保存することができる424。ある程度時間が経過してから、保存された生のドップラーエコーデータをメモリ装置から取り出し426、実際のイメージングセッション422中に使用される値に対して少なくとも1つの処理パラメータを変更すること428によって再処理することができる。次いで、運動情報を、新たなパラメータ(複数可)を用いて再計算することができ430、次いで、再計算した運動情報から得られた新たな画像を表示することができる432。
【0228】
一例では、実際のイメージングセッション中に、目的の超音波照射領域の特定の小領域部分に対して集束される第1の画像ウィンドウを選択して表示することができる一方、生のエコーデータを収集してメモリ装置に保存することができる。保存されたエコーデータが取り出されるセッション中に、第1の画像ウィンドウに部分的にしかオーバーラップしない第2の画像ウィンドウを決定することができる。他の場合には、第2の画像ウィンドウは、第1の画像ウィンドウに全くオーバーラップしなくても良い。同様に、全く異なるカラーフロー運動軸を、第2の画像ウィンドウで決定することができる。結果として、選択された画像ウィンドウが異なっていたため、又は実際のイメージングセッション中に行われる他の仮定を修正することができるため、実際のイメージングセッション中に見えなかった運動情報を表示するために第2の画像ウィンドウを決定することができる。一部の実施態様では、1回のイメージングセッションからのエコーデータを、2つ以上の別個の画像ウィンドウのためにビーム形成して処理することができる。このよう場合、ドップラーデータを、1つの画像ウィンドウにオーバーレイすることができ、一方で、両方の画像ウィンドウが並べて表示される。両方の画像が同じデータセットから形成されているため、画像化された物体の運動している画像が完全に同期され、両方の(潜在的に全くオーバーラップしていない)画像ウィンドウにおける物体の運動を同時に見て、該物体(例えば、心周期での同じ点における心臓)の異なる領域の同期された動作を可視化することができる。
【0229】
別の例では、受信「開口」の定義を、実際のイメージングセッションに対して保存されたエコーデータを再処理するときに変更することができる。エコーデータを、各受信素子に対して別個に保存することができるため、トランスデューサ素子の受信開口へのグループ分けは、いつでも変更することができる。従って、一部の実施態様では、実際のドップラーイメージングセッション中に使用される受信開口の割り当てが、特定の速度ベクトルの測定にとって準最適であると決定される場合は、受信開口の割り当てを変更することができ、上記の1つ以上の方法を用いた速度ベクトルの推定を、速度ベクトルの測定を改善する試みとして繰り返すことができる。一部の実施態様では、受信開口の数を、実際のイメージングセッション中に使用される受信開口の数に対して増減することができる。他の実施態様では、1つのアレイ(又は多数のアレイ)に沿った1つ以上の開口の位置を、実際のイメージングセッション中に使用される位置に対して変更することができる。
【0230】
本発明は、特定の好ましい実施態様及び例の文脈で開示されたが、当業者であれば、本発明が、具体的に開示された実施態様を超えて、本発明の他の代替の実施態様及び/又は使用並びに明らかな変更及びその等価物まで拡大されることを理解されよう。従って、本明細書で開示される本発明の範囲は、上記の特定の開示された実施態様によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲の正しい解釈によってのみ限定されるべきものである。特に、材料及び製造技術は、当業者のレベルの範囲内で利用することができる。さらに、単数のアイテムの言及は、同じアイテムが複数存在する可能性があることを含む。より具体的には、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「及び(and)」、「前記(said)」、及び「その(the)」は、文脈上他の意味に解釈するべき場合を除き、複数の指示対象を含む。特許請求の範囲は、任意選択の要素を全て排除するように起草できることにさらに留意されたい。従って、この文章は、クレームの構成要素の記述に関連した「だけ(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的な語の使用、又は「負の」限定の使用のための先行詞として役立たせることを目的とする。本明細書に特段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明の属する分野の一般的な技術者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。