(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、アルカリ土類成分の合計CaO+SrO+BaOが0.4〜1.8wt%であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明なLASガラスセラミック。
さらに、81%より高い光透過率Yを有し、LASガラスセラミックの4mm厚さの研磨試料について、1.5%未満のASTM D1003による濁り(ヘイズ)の測定値の視覚阻害性の散乱がないことを特徴とする、請求項1〜33のいずれか1項に記載の透明なLASガラスセラミック。
暖炉覗き窓、防火ガラス、安全ガラス、ベーキングオーブン覗き窓またはクックトップとしての、請求項1〜38のいずれか1項に記載のLASガラスセラミックの使用。
90分未満の急速セラミック化がなされ、その結果、ガラスセラミックは、82%より高い光透過率YとLASガラスセラミックの4mm厚さの研磨試料について、1.5%未満のASTM D1003による濁り(ヘイズ)の測定値と5未満の色相c*を得ることを特徴とする、請求項1〜38のいずれか1項に記載のLASガラスセラミックの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、例21によるガラスセラミックの透過曲線を示す。
【0031】
環境に優しい組成のために、ガラスセラミックは、不可避の原料不純物を除き、通常の清澄剤として酸化ヒ素および酸化アンチモンを技術的に含んでいないと理解される。不純物として、これらの成分は通常、500ppm未満、通常200ppm未満の含量で存在する。例外的な場合において、清澄剤として酸化ヒ素を含有する透明なガラスセラミックの破片を溶融物に添加すれば、As
2O
3含量は最大で1000ppmでありうる。環境保護への効果的な寄与がエネルギーおよび原料の節約によるこのリサイクリングによって与えられるため、この場合、最大で1000ppm未満までの高いAs
2O
3含量が許容される。これは、本発明の範囲内で原料不純物に関して維持すべき上限である。
【0032】
経済的な生産のための経済的に好ましい製造特性は、安価なバッチ原料、低い溶融温度および形成温度、耐失透性、ならびに短いセラミック化時間を含む。短いセラミック化時間により、視覚阻害性の光散乱(濁りもしくはヘイズ)または着色なしに、高い光透過率が達成される。
【0033】
加えて、ガラスセラミックは特定の特性を満たすべきである。
【0034】
セラミック化後に調節される透明度は、ガラスセラミックの品質に関する本質的な特性である。したがって、CIE表色系において光透過率Y(明度)として測定される光透過率はできるだけ高いほうがよい。
【0035】
透明な、色の薄いリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックの着色は、ガラスを通して対象物または下面コーティングを見たときに色を歪ませないように、インジケーターの色と同様に、わずかであるほうがよい。
【0036】
透明なガラスセラミックは視覚阻害性の光散乱を与えないほうがよく、その結果、対象物への透視およびインジケーターへの照明を歪ませることがない。ガラス−セラミックパネルの下のディスプレイのインジケーターは、明瞭で、輪郭が鮮明で、濁りなしに見えるほうがよい。
【0037】
光透過率、着色、および濁りに関する総合的な要件の達成は、200分未満の短いセラミック化時間によって保証される。
【0038】
特に好ましくは、90分未満の短いセラミック化時間が実施される。
【0039】
しかしこの場合、相反する目的がある。
【0040】
短いセラミック化時間にとって、成分TiO
2が活性な関与物質である、高速の核形成が必須である。しかし、高いTiO
2含量は、Fe/Ti色錯体および/またはSn/Ti色錯体の形成という理由から危険である。したがって、TiO
2量は2.5wt%未満にすべきである。対照的に、1.6wt%未満の低いTiO
2含量の場合、短いセラミック化時間で、強い濁りが発生することが示されている。結果として、低い核形成密度が結晶の数も低減させ、したがってそのサイズを増加させるためである。高い結晶子サイズは散乱を大きく増加させる。したがって、TiO
2含量について特に好ましい範囲は、1.8wt%〜2.5wt%未満である。
【0041】
これらの目的の対立を解決するために、驚くべきことに、目標を設定する仕方でガラスセラミックの微細構造を確立できることを見出した。
【0042】
本発明によるアプローチは、目標を設定する仕方でガラスセラミックの微細構造、すなわち、結晶子相および残留ガラス相を確立することからなる。散乱を低減するためには、急速セラミック化でも、高温石英混晶相と残留ガラス相との屈折率の差を最小化することが望ましい。
【0043】
包括的な一連の試験において、二価成分MgO、ZnO、CaO、SrOおよびBaOがここで主要な役割を担うことを見出した。従来技術においては、CaO、SrOおよびBaOは任意の成分として挙げられている。しかし、言及した二価成分について狭い範囲と最小含量を維持することが必要であることが示された。
【0044】
MgOの一部は高温石英混晶に組み込まれる。0.2wt%の最小MgO含量が必要とされる。この成分が、高温での、たとえば10
2温度でのガラス溶融物の粘度を低下させるのに特に有効なためである。この特性は経済的な生産のために重要である。MgOの最小含量は好ましくは0.3wt%である。
【0045】
MgO含量は、最大で1.0wt%、好ましくは0.9wt%以下に限定される。より高いMgO含量は不利である。ガラスセラミックの膨張係数を許容されない程に増加させるためである。また、目的とされる短いセラミック化時間における高い含量は、強い着色または色相c
*をもたらす。
【0046】
ZnOも高温石英混晶に組み込まれる。また、この成分はガラスセラミックの透明度にとって特に好適であることもわかっている。特に、短いセラミック化時間に伴って散乱が低減する。ZnO含量は少なくとも1wt%になるべきである。ZnO含量は最大で2.5wt%の値に限定される。溶融物においておよび形成中に気化する傾向のためである。好ましくは、1.5wt%超、2.2wt%以下の含量を有する。
【0047】
アルカリ土類CaO、SrOおよびBaOは、ガラスの形成中の溶融性および耐失透性を改善する。しかし、その含量は限定すべきである。これらの成分は結晶相に組み込まれないが、ガラスセラミックの残留ガラス相に残留するためである。高すぎる含量は、結晶性初期ガラスのガラスセラミックへの変態中に結晶化挙動に悪影響を及ぼす。さらに、高い含量は、ガラスセラミックの時間/温度耐性に不利に作用する。
【0048】
アルカリ土類CaOおよびSrOの合計は1.5wt%以下になり、BaO含量は0〜1.5wt%である。
【0049】
CaOまたはSrOは好ましくは、各々0.05wt%超の含量で含有される。これらは耐失透性にとって特に有効なためである。結局、CaO+SrOの合計について特に好ましい最小量は0.1wt%になる。CaO+SrOの特に好ましい上限は1.2wt%になる。SrO量は好ましくは0.05〜1.5wt%である。CaO量は好ましくは0.05〜0.8wt%である。CaOおよびSrOは、BaOより少ないが、屈折率を増加させ、したがって残留ガラスおよび高温石英混晶の屈折率を平衡化するのに有利である。
【0050】
短いセラミック化時間によって散乱を最小化しうる。これらはムライトおよびZr含有結晶たとえばバデライトまたはケイ酸ジルコニウムによる失透を妨げる。
【0051】
BaO含量は最大で1.5wt%になる。そうしないと短いセラミック化時間に伴って散乱が増加するためである。明らかであるが、高い含量は残留ガラス相の屈折率を不利な仕方で増加させる。好ましくは、BaO量は少なくとも0.1wt%になる。
【0052】
アルカリ土類の合計CaO+SrO+BaOは、好ましくは0.2〜2wt%、特に好ましくは0.4〜1.8wt%である。この範囲では、操作を短いセラミック化時間で実施すれば、透明度(散乱、色)が好適に確立される。これは、残留ガラス相の組成を有利に確立することに帰する。
【0053】
散乱を最小化するためには、200分未満、好ましくは90分未満の短いセラミック化時間の場合、二価成分MgOおよびZnO(高温石英混晶相に組み込まれる)の、成分CaO、SrO、BaO(残留ガラスに組み込まれる)に対する比を、目標を設定する仕方で確立するのが有利であると実証されている。
【0054】
MgOおよびZnOは六方晶高温石英混晶に組み込まれ、その中で格子定数aおよびc、したがって高温石英混晶の屈折率に影響する。Liの代わりにMgまたはZnを組み込むことが高温石英の異方性、すなわちa軸とc軸との差を低減することも公知である。(Mueller,”Volumen und thermische Ausdehnung von Aluminosilikat−Mischkristallen mit h−Quarz−Struktur”[”Volume and thermal expansion of aluminosilicate mixed crystals with h−quartz structure”],Fortschr.Miner.63,pp.7−20(1985))。おそらく、ここで見出された、成分を確立することの驚くべき肯定的効果も、結晶の複屈折の低減に基づいている。
【0055】
成分CaO、SrOおよびBaOは高温石英混晶相に組み込まれ得ず、残留ガラス相に残留する。ここで、これらは残留ガラス相の屈折率に影響する。したがって、MgO+ZnOの含量がCaO+SrO+BaOの含量より大きいならば(条件B1)有利である。
【0056】
加えて、二価成分MgO+ZnOの成分CaO+SrO+BaOに対する特定の比が、急速セラミック化(短いセラミック化時間)で光散乱を低減するために有利であることが示された。
【0057】
成分MgO+ZnOの合計含量のCaO+SrO+BaOに対する比は1超〜3未満(条件B2)が有利である。
【0058】
成分MgO+ZnOの合計含量のCaO+SrO+BaOに対する比は1.5超〜3未満、特に1.7〜3未満が特に有利である。この範囲において、個々の成分の狭く特定された組成と組み合わさって、急速セラミック化による光散乱の最小化という望ましい効果が特に有利な仕方で確立される。
【0059】
成分に関するこれらの条件により、微細構造を最適化することができ、低い光散乱を伴う短いセラミック化時間が可能になる。短いセラミック化時間の場合、セラミック化プログラムの適切な設計によって色錯体の形成が低減されるため、その吸収を低減させることもできる。したがって、低い色相c
*値および高い光透過率が可能である。たとえば、90分未満、好ましくは80分未満のセラミック化時間での急速セラミック化により、82%超の光透過率Yおよび5未満の色相c
*が、視覚的に目立たない散乱によって達成されるであろう。4.5未満、好ましくは4未満の値への色相c
*のさらなる低減が好ましい。
【0060】
このように、本発明によるガラスセラミックの特徴は、例に記載されているように、好ましくは規定した組成と適合した急速セラミック化との組合せに基づいている。
【0061】
本発明によるガラスセラミックは主結晶相として高温石英混晶を含有する。
【0062】
加えて、散乱を最小化するために結晶子サイズを最小化することが有利である。
【0063】
セラミック化後のガラスセラミックの高温石英混晶は、好ましくは、45nm未満、好ましくは40nm未満の平均結晶子サイズを有する。平均結晶子サイズは、好ましくは、少なくとも20nmになる。
【0064】
ガラスセラミックの高温石英混晶の結晶相率は、好ましくは、60〜85wt%、特に65〜80wt%になる。
【0065】
結晶相率は少なくとも60wt%になるべきである。これは低い熱膨張を確立するために有利なためである。結晶相率は、好ましくは、80wt%未満になる。より高い値では、生じる結晶化熱のため、変形なしに短時間で結晶性ガラスをセラミック化することが困難である。結晶化熱としてより高い値(これはガラスセラミックの結晶化中に量において不均一に起きる)およびガラスセラミックのより大きな剛性に基づいて、変形のないガラス−セラミック物品、たとえば平坦なプレートまたはパネルを得るために、より長い時間が必要とされる。
【0066】
二次結晶相は、核形成剤TiO
2、ZrO
2および/またはSnO
2からの核形成中に生成する混晶ならびにキータイト混晶型の結晶である。ガラスセラミック中の二次結晶相の含量は、好ましくは8wt%未満、より好ましくは6wt%未満になるべきである。そうでないと、核形成剤結晶の残留ガラスに比較して高い屈折率のためまたはキータイト混晶のより大きな結晶子サイズのために、ガラスセラミックの阻害性の光散乱がある。キータイト混晶において平均結晶子サイズは通常少なくとも100nmになるためである。付随する光散乱はそれ自体、非常に阻害性の白色濁りとして透明なガラスセラミックにおいて顕著になる。
【0067】
本発明による透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、0.005wt%(50ppm)〜0.15wt%(1500ppm)の含量で、添加剤のNd
2O
3を含有する。Nd
2O
3の好ましい下限は、0.01wt%、特に好ましくは0.03wt%、特に0.04wt%である。Nd
2O
3の添加は物理的脱色剤として作用し、Fe/TiおよびSn/Ti色錯体に基づく阻害性の着色を低減する。50ppm未満のNd
2O
3では効果が小さく、一方で1500ppm超では原料のコストが不利な仕方で増加する。Nd
2O
3が高価なバッチ原料であるためでる。好ましくは、上限はたとえば1000ppmである。
【0068】
好ましい示した範囲の酸化物Li
2O、Al
2O
3およびSiO
2は高温石英混晶の成分である。
【0069】
3.2wt%というLi
2Oの最小含量が、高速のセラミック化のためならびに10
2温度および加工温度V
Aを低下させるために必要である。4.2wt%より高い含量は、Li原料の高コストのため、経済的に不利である。4wt%未満の含量は特に有利である。
【0070】
初期ガラスのより高い粘度および形成中のムライトの望ましくない失透を避けるために、Al
2O
3含量は好ましくは最大23wt%に限定される。十分な量の高温石英混晶相の形成のための最小含量は19wt%、好ましくは20wt%である。
【0071】
SiO
2含量は最大で68wt%になるべきである。この成分がガラスの粘度、したがってV
Aおよび10
2温度を大きく上昇させるためである。ガラスの良好な溶融のためおよび低い溶融温度および形成温度のために、より高い含量のSiO
2は不経済である。
【0072】
SiO
2の含量は少なくとも64wt%になるべきである。このことが、必要とされる特性、たとえば化学的安定性、セラミック化の速度および透明度のために有利なためである。散乱は高いSiO
2含量により低減され、これは結晶相および残留ガラスの屈折率が互いにより良好に適応されることを示している。SiO
2含量は好ましくは65〜68wt%である。
【0073】
アルカリNa
2OおよびK
2Oの添加はガラスの形成中の溶融性および耐失透性を改善する。ZrO
2およびSiO
2のために難溶性原料の溶融を加速させ、10
2温度および加工温度を低下させる。アルカリNa
2O+K
2Oの合計は、好ましくは少なくとも0.1wt%、より好ましくは少なくとも0.2wt%であるべきである。
【0074】
しかし、含量を限定すべきである。これらの成分は結晶相に組み込まれないがガラスセラミックの残留ガラス相に残留するためである。高すぎる含量は、ここで特に短いセラミック化時間を犠牲にして、結晶性初期ガラスのガラスセラミックへの変態中の結晶化挙動に悪影響を及ぼす。加えて、より高い含量は、ガラスセラミックの時間/温度耐性に不利に作用する。アルカリNa
2O+K
2Oの合計は、好ましくは最大1.5wt%、より好ましくは最大1.2wt%になる。
【0075】
アルカリNa
2O、K
2Oおよびアルカリ土類CaO、SrO、BaOは、結晶間の残留ガラス相の外側に、またガラスセラミックの表面に蓄積する。セラミック化中に、約200〜1000nm厚さのガラス表面層が生成し、これは結晶をほとんど含まず、これらの元素に富み、それによってLi
2Oが減損している。
【0076】
このガラス表面層はガラスセラミックの化学的安定性に有利に作用する。暖炉パネルの場合、排気からの硫黄含有酸の浸食を減少させる。高温石英混晶は特に浸食され、それによってこれはガラスセラミック中のクラック形成をもたらすため、ガラス表面層はパッシベートする仕方で作用する。この理由のため、最小含量のNa
2O+K
2OならびにCaO+SrO+BaOが有利である。
【0077】
TiO
2、ZrO
2および/またはSnO
2を核形成剤として与える。核形成中に、これらの成分が混晶を形成し、その上に高温石英混晶が成長する。
【0078】
ZrO
2含量を好ましくは2wt%未満に限定する。より高い含量はガラス生成中のバッチの溶融挙動に悪影響を及ぼし、形成中の失透安定性がZr含有結晶の形成のため悪影響を受けることがあるためである。最小含量は、十分に急速核形成を保証するために、1.2、好ましくは1.5wt%である。
【0079】
成分TiO
2は、短いセラミック化時間のために非常に有効で重要な成分である。TiO
2含量は、少なくとも1.6wt%で2.5wt%未満になるべきである。2.5wt%より高い含量は、Fe/TiおよびSn/Ti色錯体の形成のために色相c
*にとって不利である。
【0080】
成分SnO
2を、耐失透性のため、好ましくは最大で0.5wt%の値に限定する。より高い含量は、形成中に接触材料(たとえばPt/Rh)上でSn含有結晶相の結晶化をもたらし、避けるべきである。Sn/Ti色錯体の形成のため、SnO
2の含量はできるだけ低く選択すべきであり、最小必要量は十分な清澄化効果のための要件によって決定される。
【0081】
SnO
2の最小量は、好ましくは0.05wt%、特に好ましくは0.08wt%、特に0.1wt%超である。
【0082】
核形成剤TiO
2+ZrO
2+SnO
2の合計は好ましくは3.5〜5wt%になるべきである。最小含量は十分な急速核形成のために必要である。上限の5wt%は耐失透性のための要件に由来する。
【0083】
低鉄分バッチ原料の高コストのため、ガラスセラミックのFe
2O
3含量を0.01wt%(100ppm)以下の値に限定することは不経済である。また、粉砕による破片のリサイクリング中に鉄の投入が起きるため、0.011wt%超、特に0.013wt%超のFe
2O
3含量が経済的に特に有利である。
【0084】
他方、Fe/Ti色錯体の濃度は、ガラスセラミックのFe
2O
3含量とともに増加する。吸収のため、着色(色相c
*)が強まり、光透過率Y(明度)が減少する。この理由のため、ガラスセラミックは、最大で0.03wt%、好ましくは0.022wt%以下、特に0.025wt%以下のFe
2O
3を含有すべきである。
【0085】
30ppmの量でCoOを添加することは、脱色を支援しうる。0.1ppm〜20ppmCoOのCoO含量が好ましい。
【0086】
清澄剤として、好ましくは少なくとも1つはSnO
2、硫酸塩およびハライド化合物の群より選択され、これらを1.5wt%以下の量で溶融物のためのバッチに添加する。SnO
2を好ましくは0.05wt%超、特に0.08wt%超の含量で使用する。
【0087】
ハライド化合物を添加すると、概してこれらの化合物は気化して溶融タンクの雰囲気に入る。腐食性化合物たとえばHF、HCIおよびHBrが、それによって生成する。これらは、溶融タンクおよび排ガスラインの耐火レンガの腐食のため不利である。したがって、ハライド化合物を清澄助剤として添加しないことが好ましい。
【0088】
清澄剤として、0.08〜0.25wt%のSnO
2、好ましくは0.05wt%〜0.25wt%未満のSnO
2が含有される。0.05wt%の、特に0.08wt%の最小量が、十分な清澄化効果のために必要である。耐失透性を改善するためおよびSn/Ti色錯体による着色のため、含量を0.25wt%、特に0.25wt%未満に限定する。SnO
2含量は、経済的なタンク処理能力を伴って泡質を改善するために、好ましくは0.1wt%超である。SnO
2の好ましい範囲は0.05wt%超〜0.2wt%、特に0.08〜0.14wt%である。さらなる追加の清澄助剤として、特に、硫酸塩化合物および/または塩素化合物を溶融物のためのバッチに添加することができる。清澄剤の合計含量は1.5wt%以下になるべきである。
【0089】
色を減らすために、できるだけ少ない清澄剤SnO
2の量を使用することが有利である。必要とされる泡質およびタンク処理能力を伴って十分な清澄化効果を得るために、1700℃より高い、好ましくは1750℃より高い高温清澄化を実施することが有利である。この場合のSnO
2の含量は、好ましくは0.10超〜最大0.25wt%、特に好ましくは0.05wt%超〜0.2wt%である。kgあたり2未満の泡という泡質がガラスまたはガラスセラミックで達成される(一次元において0.1mm超の泡サイズによって測定する)。
【0090】
これは、好ましくはガラスセラミックの5未満の色相c
*に関連する。好ましくは、4.5未満、さらには4未満の値が達成される。少なくとも1800℃の高温清澄化はより高いタンク処理能力を可能にする。清澄化酸素の放出が加速されるためである。当然、より高い清澄化温度はSn
2+ならびにFe
2+の生成、したがって色錯体の濃度を増加させることがあり、その結果ここで、別の最適化が必要である。
【0091】
清澄化を改善するために、さらなる清澄助剤、たとえば硫酸塩化合物およびハライド(F、Cl、Br)化合物を溶融物に追加で添加することができる。添加剤を通常、1.5wt%以下の量に限定する。
【0092】
清澄化において、澄助剤は概して気化する。硫酸塩化合物の好ましい添加およびハライド化合物の省略により、硫黄は、ガラスへの小さな溶解度の結果としての数ppmを除いて、ほとんど完全に抜ける。
【0093】
第1の実施形態によれば、透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは主成分として(酸化物に基づくwt%で)下記成分を含有する:
Li
2O 3.2〜4.2
Na
2O+K
2O 0.1〜1.5
MgO 0.2〜1.0
CaO+SrO 0〜1.5
BaO 0〜1.5
CaO+SrO+BaO 0.2〜2
ZnO 1〜2.5
Al
2O
3 19〜23
SiO
2 64〜68
TiO
2 1.6〜2.5未満
ZrO
2 1.2〜2.0未満
SnO
2 0〜0.5
Nd
2O
3 0.005〜0.15
Fe
2O
3 0.01超〜0.03
別の実施形態によれば、透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはそれから生成された物品は、好ましくは、酸化物に基づくwt%で以下を含有する、ガラスセラミックの組成を有する:
Li
2O 3.2〜4.0未満
Na
2O+K
2O 0.2〜1.2
MgO 0.3〜0.9
CaO+SrO 0.05〜1.5
BaO 0〜1.5
CaO+SrO+BaO 0.4〜1.8
ZnO 1.5超〜2.2
B
2O
3 0〜1
Al
2O
3 20〜23
SiO
2 65〜68
TiO
2 1.6〜2.5未満
ZrO
2 1.5〜2.0未満
SnO
2 0超〜0.5
TiO
2+ZrO
2+SnO
2 3.5〜5
P
2O
5 0〜2
Nd
2O
3 0.005〜0.1
Fe
2O
3 0.013超〜0.025
別の実施形態によれば、透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはそれから生成された物品は、好ましくは、酸化物に基づくwt%で以下を含有する、ガラスセラミックの組成を有する:
Li
2O 3.2〜4.0未満
Na
2O+K
2O 0.2〜1.2
MgO 0.3〜0.9
CaO+SrO 0.05〜1.5
BaO 0〜1.5
CaO+SrO+BaO 0.4〜1.8
ZnO 1.5超〜2.2
B
2O
3 0〜1
Al
2O
3 20〜23
SiO
2 65〜68
TiO
2 1.6〜2.5未満
ZrO
2 1.5〜2.0未満
SnO
2 0超〜0.5
TiO
2+ZrO
2+SnO
2 3.5〜5
P
2O
5 0〜2
Nd
2O
3 0.005〜0.1
Fe
2O
3 0.011超〜0.025
溶融性および耐失透性を改善するために、1wt%以下のB
2O
3および2wt%以下のP
2O
5を含有することができる。より高い含量はガラスセラミックの化学的安定性および時間/温度耐性のために不利である。ガラスセラミックは、好ましくはB
2O
3およびP
2O
3を技術的に含んでいない、すなわち含量が0.3wt%未満になっている。
【0094】
短いセラミック化時間を使用して良好な透明度で経済的な生成をさらに改善するために、透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはそれから生成された物品は、酸化物に基づくwt%で以下を含有する、ガラスセラミックの特に好ましい組成を有する:
Li
2O 3.4〜3.9
Na
2O+K
2O 0.2〜1.0
MgO 0.4〜0.9
CaO+SrO 0.1〜1.2
BaO 0〜1.3
CaO+SrO+BaO 0.6〜1.6
ZnO 1.5超〜2.0
B
2O
3 0〜1
Al
2O
3 20〜23
SiO
2 65〜68
TiO
2 1.8〜2.5未満
ZrO
2 1.5〜1.9
SnO
2 0.08〜0.25
TiO
2+ZrO
2+SnO
2 3.6〜4.8
P
2O
5 0〜1
Nd
2O
3 0.01〜0.1
Fe
2O
3 0.013超〜0.022
短いセラミック化時間を使用して良好な透明度で経済的な生成をさらに改善するために、透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミック、またはそれから生成された物品は、酸化物に基づくwt%で以下を含有する、ガラスセラミックの特に好ましい組成を有する:
Li
2O 3.4〜3.9
Na
2O+K
2O 0.2〜1.0
MgO 0.4〜0.9
CaO+SrO 0.1〜1.2
BaO 0〜1.3
CaO+SrO+BaO 0.6〜1.6
ZnO 1.5超〜2.0
B
2O
3 0〜1
Al
2O
3 20〜23
SiO
2 65〜68
TiO
2 1.8〜2.5未満
ZrO
2 1.5〜1.9
SnO
2 0.05〜0.25未満
TiO
2+ZrO
2+SnO
2 3.6〜4.8
P
2O
5 0〜1
Nd
2O
3 0.01〜0.1
Fe
2O
3 0.011超〜0.022
上記で言及した組成例において、列挙した成分は合計組成の少なくとも98wt%、通常99wt%になることを考慮すべきである。複数の元素、たとえばF、Cl、B、P、アルカリRb、Cs、または元素、たとえばMn、Hfは、大規模生産において使用されるバッチ原料中の通常の不純物である。たとえば元素W、Nb、Y、Mo、希土類、Biからなる他の化合物が少量で含有されていてもよい。
【0095】
ガラスセラミックについて、座標L
*、a
*、b
*を有するCIELAB表色系による値c
*(色相、色)を着色のための評価として採用している。4mm厚さの研磨ガラス−セラミック試料について、標準光C、2°の観視画角での測定において、LASガラスセラミックの色c
*は、好ましくは5.5未満、より好ましくは5未満、特に好ましくは4.5未満になる。
【0096】
CIE表色系において光透過率Y(明度)として測定したLASガラスセラミックの光透過率は少なくとも81%、好ましくは少なくとも83%になる。これらの値は、4mm厚さの研磨ガラス−セラミック試料について、標準光C、2°の観視画角で測定したときに有効である。
【0097】
好ましくは、LASガラスセラミックは視覚に関連する散乱を有していない。
【0098】
散乱は、4〜7cm長さのガラス−セラミック試料の研磨エッジを見たときに視覚的に良好として評価される。ここでの基準は、SCHOTT AG社のヒ素清澄化された透明なガラスセラミックROBAX(登録商標)である。後者は非常にわずかな散乱を与える。
【0099】
ASTM D1003による濁り(ヘイズ)の測定は、LASガラスセラミックの4mm厚さの研磨試料について、好ましくは1.5%未満、特に好ましくは1%未満になる。ヘイズ測定は散乱の視覚的測定と相関するが、当然、ヘイズ測定は、特に約1%の小さな値の場合、視覚的方法を置きかえることができない。
【0100】
視覚阻害性の散乱を限定値を維持することによって避ける。約1%の小さなヘイズ値の場合、両方の方法を組み合わせることが推奨される。
【0101】
ガラスセラミックの高い透明度は、90分未満の急速セラミック化を用いて、本発明による二価成分MgOおよびZnOのアルカリ土類CaO、SrOおよびBaOに対する比によって達成される。
【0102】
好ましくは、LASガラスセラミックは、好ましくは82%超、より好ましくは84%超の光透過率(明度)Yを有する。色c
*は、標準光Cおよび2°の観視画角により4mm厚さで測定して、好ましくは5.5より小さく、より好ましくは5より小さく、特に好ましくは4.5より小さく、特に4より小さく、LASガラスセラミックは好ましくは視覚阻害性の光散乱がない。
【0103】
公知のヒ素清澄化された透明なガラスセラミックと対照的に、本発明によるガラスセラミックは、より低い圧縮値、したがってより高い温度耐性という利点を有する。
【0104】
バッチ原料の選択および溶融物のプロセス条件に依存して、透明なガラスセラミックの生産のための初期ガラスの水含量は好ましくは0.015〜0.06mol/Lにある。これは、結晶性初期ガラスの場合、0.16〜0.64mm
-1のβ−OH値に対応する。
【0105】
経済的な生産のために重要な低い溶融温度は、高温でのガラス溶融物のより低い粘度によって保証される。ガラス溶融物の粘度が10
2dPasである温度がそのための特性値である。この、本発明によるガラスセラミックに関するいわゆる10
2温度は、初期ガラスの溶融物の場合、好ましくは1770℃未満、より好ましくは1760℃未満にある。
【0106】
高温における溶融物の低い粘度は、溶融タンク中の温度をより低く設定することを可能にし、したがって溶融タンクの耐用寿命を長くする。耐火レンガの腐食が減るためである。加えて、低いガラス粘度のため、生産されたガラスセラミックの量に対する電力消費が減る。このように、低い10
2温度はガラスセラミックの環境への優しさにも寄与する。低いガラス粘度は泡が上昇することも促進し、したがって清澄化を促進するため、低いガラス粘度は高いタンク処理能力のためにも有利である。溶融および清澄化がより速く進行するためである。
【0107】
清澄化後、良好な泡質は好ましくは、結晶性初期ガラス中またはガラスセラミック中でkgあたり5未満の泡、より好ましくはkgあたり2未満の泡という泡数を有するものである(一次元において0.1mm超の泡サイズにより測定)。
【0108】
形成中の温度を低下させることも経済的に有利である。形成ツールの耐用寿命をそれにより増加させることができ、より少ない熱損失となるためである。成形、主に圧延またはフローティングは、ガラス溶融物の場合、10
4dPasの粘度で生じる。この温度は加工温度V
Aとも呼ばれ、本発明によるガラスセラミックの場合、好ましくは1325℃未満、より好ましくは1320℃未満である。
【0109】
透明なガラスセラミックは、溶融物からの成形中に、十分な耐失透性を備えるべきである。そうでないと、成形材料(たとえば、圧延プロセスにおける引き出しノズルの白金/ロジウム)との接触のとき、成形中に臨界サイズに達する結晶が生成する。その後、これらは概して視覚的に目立ち、後のガラスセラミックの強度にとって重大である。
【0110】
限界温度(それ未満では臨界失透が起きる)、すなわち失透上限(OEG)は、好ましくは加工温度V
Aより少なくとも10℃低い。成形プロセスのために十分なプロセスウインドウは、この最小の差によって規定される。少なくとも20℃になるプロセスウインドウV
A−OEGが有利である。
【0111】
透明な色の薄いガラスセラミック、またはそれから生産された物品にとって好ましい幾何形状は、プレートまたはパネルの形態である。パネルは好ましくは2.5〜14mmの厚さを有する。これが重要な用途を与えるためである
LASガラスセラミックの好ましい使用は、たとえば暖炉覗き窓、耐火板ガラス、ディスプレイパネル、クックトップ、ならびに、機械的または弾道学的な保護効果を有する安全板ガラスである。
【0112】
より小さい厚さで、強度は悪影響を及ぼし、より大きな厚さは、より多くの材料の必要性のためより経済的でない。したがって、高強度が重要になる安全ガラスとしての用途を除いて、厚さは通常6mm未満で選択される。
【0113】
要求されるプレートまたはパネル状の幾何形状に適した成形方法は、圧延およびフローティングである。
【0114】
したがって、ガラス−セラミックパネル、および好ましくはそれから生産された物品は、平面状だけでなく、三次元的に成形することができる。たとえば、折り曲げた、角度を付けた、または曲線状のパネルを使用できる。パネルは長方形またはその他の形状で存在してもよく、平面状領域に加えて、三次元的に成形された領域、たとえば中華鍋または圧延片または盛り上がった構造またはくぼみのような表面を含んでいてもよい。パネルの幾何学的な成形は、熱間成形により、たとえば構造化成形ローラーにより、または初期ガラスの下流熱間成形により、たとえばバーナーもしくは重力沈降によって行われる。セラミック化のあいだ、無制御の幾何学的形状の変化を避けるために、支持セラミックモールドを用いて操作を行う。
【0115】
主結晶相として高温石英混晶を含有する透明なリチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックは、好ましくは、暖炉パネル、耐火性ガラス、安全ガラス、特にクリーニングオーブン用のベーキングオーブンのビューイングパネルとしての、または高出力ライト用のカバー材としての用途がある。
【0116】
上面および/または下面に不透明なコーティングを導入することにより、必要とされる遮蔽を有する着色されたクックトップを透明なガラスセラミックから生産することができ、クックトップの下の技術設備への視認を防止する。
【0117】
コーティングにおける凹部は、センサー領域、および着色されたおよび白色のインジケーターならびにディスプレイを導入することを可能にする。
【0118】
透明ガラス−セラミックパネルの上面および下面にコーティングを組み合わせること、また部分的に透明な層を包含することが可能である。加えて、たとえばクッキングゾーンのために、マーキングを導入することができる。このようにして、公知の異なる種類のコーティングを、たとえばセラミック装飾用着色料、光沢のある着色料、シリコーン系およびゾル−ゲル系着色料、スパッタ層などと組み合わせることができる。
【0119】
インジケーターは、光を発する電子コンポーネント、概して光ダイオードからなる。すべての形態のインジケーターが可能であり、点状ならびに平坦な表面領域を有するものが可能である。発光インジケーターの発光スペクトルは、1つ以上の最大でブロードな領域を有することがあり、その結果、インジケーターは着色しているかまたは白色に見える。ガラスセラミックの小さな色相c
*値に基づいて、黒色/白色および着色ディスプレイまたは映像スクリーンも、ガラスセラミックの下に配置することができる。これらは、阻害性の色歪みを伴わずに外から視認可能である。任意に、観察者のためのインジケーターの色を、好ましくは下面に導入されたカラーフィルターまたはカラー層により変化させるまたは補正することができる。加えて、インジケーターの色を、目標を設定する仕方で変化させ、たとえば、異なるカラー色調の一般的な標準インジケーターの外観を可能にすることができる。したがって、カラー色調における顧客特有の差別化を低コストで表現することができる。インジケーターのカラー色調は、必要ならば、ガラスセラミックを通過するときにそれを変化させることによって補正することもできる。
【0120】
クックトップの加熱は、通常通りガスバーナー、ラジアントヒーターを用いて、または誘導式に行う。
【0121】
暖炉パネルの場合、燃焼空間および火炎への良好な視認が望ましい。下面に着色コーティングを有するクックトップの場合、下面コーティングの色がガラスセラミックの色によって歪められることはない。
【0122】
言及した使用については、82%超、好ましくは84%超の光透過率(明度)Y、および、標準光Cおよび2°の観視画角を用いて4mmの厚さで測定して5.5未満、好ましくは5未満、特に好ましくは4.5未満、特に<4で視覚阻害性の光散乱のない低い色相c
*が好ましい。
【0123】
主結晶相としてのキータイト混晶を有するガラスセラミックへの変態後、ガラスセラミックは、好ましくは電子レンジのカバーパネルまたは燃焼空間のライニングとして、半透明または不透明な形で用途がある。この場合、光透過率は15%未満になる。半透明な白色クックトップとしての使用では、より高い値を有するガラス−セラミックパネルの光透過率を、下面コーティングを使用することによって、より低い値を有するものに下げることができる。このようにして、たとえばインジケーターのための領域を未コーティングのままにできる。
【0124】
本発明を以下の例に基づいて明らかにする。
【0125】
例21によるガラスセラミックの透過曲線を単独の図面に示す。
【0126】
ガラス工業において一般的な原料からの初期ガラスを、約1620℃の温度において4時間かけて溶融した。焼結シリカガラスのるつぼでのバッチの溶融後、シリカガラスの内部るつぼを有するPt/Rhるつぼに溶融物を鋳込み、1550℃の温度で30分かけて撹拌しながら均一化した。この均一化後、1640℃で2時間ガラスを清澄化した。続いて、約140×140×30mm
3サイズの小片を鋳込み、冷却オーブン中で660℃から出発して室温まで冷却した。鋳込んだ小片を、調査およびセラミック化のために必要とされるサイズに分割した。
【0127】
透明ガラスセラミックのための結晶性初期ガラスの組成および特性を、いくつかの実施形態の例について表1に挙げている。ガラス1〜8は本発明によるガラスを含み、ガラス9、10は本発明の外の比較用ガラスを含む。比較用ガラスの組成は本発明の外であり、それらの製造特性に対して記載した欠点を示す。大きな技術的規模で使用したバッチ原料中の一般的な不純物のために、組成は合計しても正確には100wt%にならない。一般的な不純物は、それらが組成中に意図せず導入されたとしても、F、Cl、B、P、Mn、Rb、Cs、Hfであり、通常0.1wt%未満になる。それらは、しばしば関連した成分のための原料を通して混入される。したがって、たとえば、RbおよびCsはNaもしくはK原料によって混入され、またはHfはZr原料によって混入される。
【0128】
赤外分光法によって測定したガラスの水含量を表1に示す。
【0129】
ガラス状態での特性、たとえば転移温度Tg、加工温度V
A、10
2温度、失透上限OEG、密度、ならびに4mm厚さの研磨ガラス上で標準光C、2°で測定した透過値も表1に挙げている。OEGの測定のために、ガラスをPt/Rh10るつぼ中で溶融する。続いて、るつぼを、加工温度の領域内の異なる温度に5時間保持する。るつぼ壁に対するガラス溶融物の接触表面上に最初の結晶が出現する最高温度がOEGを決定する。
【0130】
表2はセラミック化プログラム1によって生産したガラスセラミックのセラミック化条件および特性を示し、表3はセラミック化プログラム2による同じものを示している。
【0131】
セラミック化プログラム1の場合、セラミック化オーブン中で600℃の温度まで20分加熱を行う。核形成のためには700から810℃までの温度範囲が重要である。この領域における温度上昇をそれぞれの組成に適合させ、その結果、大きすぎる結晶子による光散乱を避ける。約810℃超で、望ましい高温石英混晶相の結晶化が起きる。この領域では、阻害性のFe/TiおよびSn/Ti色錯体の形成が継続する。最大温度T
maxで、結晶および残留ガラスの組成が確立され、微細構造が均一化される。これとともに、化学的および物理的特性も確立される。セラミック化プログラム1において、温度T
nucleationでの核形成の範囲で保持時間t
nucleationを導入する。また、最大温度T
maxおよび保持時間t
maxを個別に組成に適合させる。値ならびに合計セラミック化時間を表2に示す。
【0132】
セラミック化プログラム1:
a)室温から600℃までの20分での急速加熱、
b)5℃/分の加熱速度での600℃から核形成温度T
nucleationまでの温度上昇、T
nucleationでの30分の保持時間t
nucleation、2.5℃/分での800℃へのさらなる加熱、
c)2.5℃/分の加熱速度でのT
nucleationから最大温度T
maxまでの温度上昇、T
maxでの10分の保持時間t
max、
d)6℃/分での700℃への冷却、その後の室温への急速冷却。
【0133】
c
*が5.5超の値を有する表2のいくつかの例の不満足な色は、最適化されたセラミック化プログラムによって色を改善することの必要性を示している。短いセラミック化時間および改善された透明度、すなわち、より高い光透過率およびより低い色相c
*値の方向に、本発明による組成物のためにセラミック化プログラム2を最適化する。プログラム1と比較して、散乱が視覚的に目立たなくなる程度まで核形成時間を短くすべきだけである。高い加熱速度を可能にするローラーキルン中で、10分で720℃まで加熱を行う。本発明による組成物にとって、これは、かなりの割合の核形成が生じる温度である。810℃までの速い核形成速度において、適合した加熱速度で温度を連続的に上昇させる。この温度領域において、視覚阻害性の散乱が起きないように時間を選択する。
【0134】
810℃超で、さらに進行する色錯体の形成のために、加熱速度が増加する。本発明による組成でガラス−セラミックパネルの平坦性が良好なことを保証するように、この温度領域における時間を選択する。平坦性からの最大の偏差はパネルのエッジ長さの0.3%未満になる。結晶化および微細構造(結晶および残留ガラス組成物)の確立は、この温度領域において最高温度で完了する。このプログラムのセラミック化時間は68分である。
【0135】
セラミック化プログラム2:
a)室温から720℃までの10分での急速加熱、
b)720から810℃までの36分での温度上昇、
c)810℃から最大温度920℃までの10分での温度上昇、T
maxにおける7分の保持時間、
d)780℃までの4.5分での冷却、その後の除熱による室温への急速冷却。
【0136】
4mm厚さの研磨パネルに関して、標準光C、2°で透過率測定を行った。透明なガラスセラミックに関する測定(表2または表3)について、選択した波長および光透過率での透過率値を示している。光透過率および明度Yという用語は、DIN5033に従って測定した、同じ測定値に対応している。
【0137】
CIELAB系における色座標L
*、a
*、b
*とc
*値とを色についての測定として示す。ASTM Standard 1925/70(77、85)に従った黄色度指数も着色についての基準として示す。
【0138】
散乱を、4mm厚さの研磨ガラスセラミック試料の研磨エッジを通して見たときに、視覚的に評価する。散乱を限界パターンにより測定し、スケール0(たとえば表1の初期ガラスのように散乱なし)から、次に1(SCHOTT AG社のガラスセラミックROBAX(登録商標)のように非常に軽微な散乱)、2(軽微な散乱)、10(半透明で乳白色の外観)まで分類する。3以上の値は市場の要求にとって不利に見える。特定の照明条件下で散乱がすでに視覚阻害性でありうるためである。
【0139】
光散乱に対してより重大な急速セラミック化プログラム2については、表3においてヘイズ値も測定した。この場合、BYK−Gardner社の市販測定機器「Haze−gard plus」を用いて、研磨した4mm厚さのパネルの両面において標準光Cで濁りを測定し、ヘイズ値として特性評価する。
【0140】
表2においては、セラミック化プログラム1について、ガラスセラミックの追加の特性、たとえば1600nmでの赤外透過、20〜700℃での熱膨張、密度、および、X線回折によって測定される高温石英混晶からなる主結晶相の相含量、ならびに平均結晶子サイズを示す。使用中の温度耐性に関連する圧縮を、プログラム1によって生産したガラスセラミックの100mm長さのロッドまたはバーの700℃で15hのアニーリングによって測定した。21μmという圧縮についての良好な値を有するSCHOTT AG社のガラスセラミックROBAX(登録商標)との比較において、これらはさらに改善された値を示す。
【0141】
表2の例9、10および表3の例19、20は、リストした結晶性の比較用ガラスから生産した、本発明の外の比較用ガラスセラミックである。比較例は透明度(色および散乱)について記載した欠点を示している。
【0142】
追加の例番号21においては、以下の組成物を工業規模で溶融した:Li
2O3.71wt%、Na
2O0.51wt%、K
2O0.10wt%、MgO0.62wt%、CaO0.24wt%、SrO0.53wt%、BaO0.52wt%、ZnO1.80wt%、Al
2O
321.5wt%、SiO
266.2wt%、TiO
22.16wt%、ZrO
21.77wt%、SnO
20.18wt%、Nd
2O
30.053wt%、およびFe
2O
30.014wt%。リチウムアルミニウムシリケートガラスセラミックの経済的な生産および透明度に関する要求に対応して組成物を最適化する。
【0143】
これは、低い10
2温度、低い加工温度および良好な耐失透性によって特徴付けられる。
【0144】
ガラス溶融物を、約1800℃の高温、15分で清澄化した。このガラスの泡質は優れており、kgガラスあたり2未満の泡であった。両面で平滑な4mm厚さのガラスストリップを、成形中に圧延し冷却オーブン中で冷却して応力の蓄積を避けた。このガラスストリップから500×500×4mmの寸法を有するプレートを切り出し、工業規模のローラーキルン中でセラミック化した。セラミック化プログラムはプログラム2に対応しており、結晶性ガラスプレートをセラミックの平坦なペースプレート上に配置した。得られた透明なガラス−セラミックプレートは、エッジ長さの0.3%未満の非常に良好な平坦性を与えた。
【0145】
本発明によるこれらのガラスセラミックの透過曲線を図面に示す。透明度は、82.7%の光透過率Y、4.4の色相c
*を有し、視覚阻害性の散乱がないという本発明の有利な値に対応している。両面で研磨した4mm厚さのプレートに関して、標準光Cで再び測定を行った。ヘイズ値を測定し0.9%であった。
【0146】
別の例番号22において、工業規模のガラス溶融物の組成を変更して透過をさらに改善した。ガラスの組成は、Li
2O3.77wt%、Na
2O0.51wt%、K
2O0.11wt%、MgO0.63wt%、CaO0.24wt%、SrO0.54wt%、BaO0.52wt%、ZnO1.80wt%、Al
2O
321.3wt%、SiO
266.5wt%、TiO
22.20wt%、ZrO
21.77wt%、SnO
20.11wt%、Nd
2O
30.055wt%、およびFe
2O
30.013wt%であった。水含量を測定し0.040mol/Lであった。
【0147】
このガラス組成物は、良好な溶融性(1760℃未満の低い10
2温度)、1320℃未満の低い加工温度および良好な耐失透性(V
A−OEG>20℃)によって特徴付けられる。
【0148】
溶融物およびセラミック化のためのプロセスパラメータは例21に対応する。
【0149】
泡質はガラスkgあたり2未満の泡という良好な値のままであった。
【0150】
光透過率Yは84.6%であり、色相c
*は3.5であった。試料は視覚阻害性の散乱がなく、ヘイズ値を測定して0.8%であった。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表3】