(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に延在する本体部と、前記第1の方向における前記本体部の一端面及び他端面に開口すると共に入射した電子に応じて二次電子を放出するチャネルと、を備える電子増倍体の製造方法であって、
表面と前記表面の反対側の裏面とを有する第1の板状部材、及び、一対の第2の板状部材を準備する準備工程と、
前記表面から前記裏面に至ると共に前記表面及び前記裏面に沿って延びる孔部を前記第1の板状部材に形成する孔形成工程と、
前記第1の板状部材を一対の前記第2の板状部材で挟むように前記第1及び第2の板状部材を互いに積層して積層体を構成することにより、前記孔部によって規定される前記チャネルを前記積層体に形成する積層工程と、
前記積層体を一体化する一体化工程と、
一体化された前記積層体を切断することにより前記本体部を構成する切断工程と、
前記チャネルの内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する層形成工程と、
を備え、
前記切断工程においては、前記一端面及び前記他端面に前記チャネルが開口するように前記積層体を切断する、
電子増倍体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載の電子増倍体では、2つのブロックのそれぞれに波状の溝部を形成すると共に、これらのブロックを組み合わせて通路(チャネル)を形成している。しかしながら、このような方法ではチャネルの加工性を向上することが困難である。
【0005】
本発明は、そのような事情に鑑みてなされたものであり、チャネルの加工性を向上できる電子増倍体の製造方法、光電子増倍管、及び光電子増倍器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子増倍体の製造方法は、第1の方向に延在する本体部と、第1の方向における本体部の一端面及び他端面に開口すると共に入射した電子に応じて二次電子を放出するチャネルと、を備える電子増倍体の製造方法であって、表面と表面の反対側の裏面とを有する第1の板状部材、及び、一対の第2の板状部材を準備する準備工程と、表面から裏面に至ると共に表面及び裏面に沿って延びる孔部を第1の板状部材に形成する孔形成工程と、第1の板状部材を一対の第2の板状部材で挟むように第1及び第2の板状部材を互いに積層して積層体を構成することにより、孔部によって規定されるチャネルを積層体に形成する積層工程と、積層体を一体化する一体化工程と、一体化された積層体を切断することにより本体部を構成する切断工程と、チャネルの内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する層形成工程と、を備え、切断工程においては、一端面及び他端面にチャネルが開口するように積層体を切断する。
【0007】
この電子増倍体の製造方法においては、表面から裏面に至ると共に表面及び裏面に沿って延びる孔部を第1の板状部材に形成する。そして、第1の板状部材を一対の第2の板状部材で挟むように互いに積層して積層体を構成すると共に、孔部によって規定されるチャネルを形成する。この積層体を一体化して切断することで本体部を構成する。また、チャネルの内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する。このような方法によれば、板状部材に孔部を形成することが比較的容易であることに起因して、チャネルの加工性を向上できる。また、同様の理由から、製造コストを低減できる。
【0008】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、層形成工程において、抵抗層及び二次電子増倍層を原子層堆積法(ALD:AtomicLayer Deposition)によって形成してもよい。この場合、チャネルの内面に抵抗層及び二次電子増倍層を容易に形成できる。
【0009】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、第1及び第2の板状部材は導電体からなり、層形成工程の前に、本体部の表面及びチャネルの内面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を更に備えてもよい。この場合、第1及び第2の板状部材として導電体を用いることができるため、多様な材料によって電子増倍体を製造できる。
【0010】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、孔形成工程において、第1の方向における第1の板状部材の一端又は他端に至るように孔部を形成してもよい。この場合、切断工程の前において、第1の板状部材の一端又は他端のいずれか一方に孔部が至っている。このため、切断工程においては、第1の板状部材の一端又は他端のいずれか他方のみを切断するだけで本体部の一端面及び他端面にチャネルを開口させることができる。また、切断工程の前において、第1の板状部材の一端又は他端のいずれか他方には孔部が至っていない。このため、第1の板状部材が2つの部分に分離することを抑制できる。これらにより、作業性を向上できる。また、チャネルの幅を精度よく簡便に作ることができる。
【0011】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、孔形成工程において、第1の板状部材の端部に至らないように孔部を形成してもよい。この場合、切断工程の前において、第1の板状部材の端部には孔部が至っていない。このため、第1の板状部材が2つの部分に分離することをより確実に抑制できる。これにより、作業性を向上できる。また、チャネルの幅を精度よく簡便に作ることができる。
【0012】
本発明に係る電子増倍体においては、第1及び第2の板状部材の厚さは5mm以下としてもよい。この場合、第1及び第2の板状部材を比較的薄くすることで孔部の形成がより容易となる。このため、チャネルの加工性をより向上できる。
【0013】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、準備工程において、複数の第1の板状部材を準備すると共に、第3の板状部材を更に準備し、積層工程において、第1の板状部材間に第3の板状部材を介在させつつ第1及び第3の板状部材を一対の第2の板状部材で挟むように第1、第2、及び第3の板状部材を互いに積層して積層体を構成してもよい。この場合、第3の板状部材と一対の第2の板状部材との間のそれぞれに第1の板状部材が挟まれることで、それらの積層方向に複数のチャネルが構成される。このため、マルチチャネルの電子増倍体を容易に製造できる。
【0014】
本発明に係る電子増倍体の製造方法においては、孔形成工程において、第1の板状部材に複数の孔部を形成してもよい。この場合、第1の板状部材の表面及び裏面に沿った方向に複数のチャネルが構成される。このため、マルチチャネルの電子増倍体を容易に製造できる。
【0015】
本発明に係る光電子増倍管は、上記の電子増倍体の製造方法によって製造された電子増倍体と、電子増倍体を収容する管体と、一端面におけるチャネルの開口に対向するように管体に設けられ、チャネルに光電子を供給する光電面と、他端面におけるチャネルの開口に対向するように管体内に配置され、チャネルに入射した光電子に応じてチャネルから放出される二次電子を受ける陽極と、を備える。
【0016】
この光電子増倍管は、上述した電子増倍体の製造方法によって製造された電子増倍体を備えている。このため、上記作用効果を好適に奏することができる。
【0017】
本発明に係る光電子増倍器は、上記の電子増倍体の製造方法によって製造された電子増倍体と、一端面におけるチャネルの開口を塞ぐように設けられ、チャネルに光電子を供給する光電面と、他端面におけるチャネルの開口を塞ぐように設けられ、チャネルに入射した光電子に応じてチャネルから放出される二次電子を受ける陽極と、を備える。
【0018】
この光電子増倍器は、上述した電子増倍体の製造方法によって製造された電子増倍体を備えている。このため、上記作用効果を好適に奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、チャネルの加工性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る光電子増倍管の断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子増倍体の斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図9】第1の変形例に係る電子増倍体の製造方法によって製造される電子増倍体を示す図である。
【
図10】第2の変形例に係る電子増倍体の製造方法によって製造される電子増倍体を示す図である。
【
図11】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法によって製造される電子増倍体の斜視図である。
【
図12】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図13】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図14】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図15】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図16】第3の変形例に係る電子増倍体の製造方法の一工程を示す図である。
【
図17】
図2に示された電子増倍体を適用した光電子増倍器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る光電子増倍管の断面図であり、
図2は、本実施形態に係る電子増倍体の斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、光電子増倍管1は、電子増倍体2と、管体3と、光電面4と、陽極5と、を備えている。電子増倍体2は、電子の入射に応じて二次電子を放出することで電子を増倍する。電子増倍体2は、本体部6と、チャネル8と、を有している。
【0023】
本体部6は、第1の方向D1に延在している。また、本体部6は、直方体状をなしている。本体部6は、第1の方向D1における一端面6aと、他端面6bと、を有している。本体部6の少なくとも表面は絶縁体によって形成されている。ここでは一例として、本体部6は絶縁体であるセラミックによって形成されている。
【0024】
チャネル8は、入射した電子に応じて二次電子を放出する。チャネル8は、電子入射部8aと、増倍部8bと、を含んでいる。電子入射部8aは、本体部6の外部から本体部6の内部に電子を入射するための入口部分である。電子入射部8aは、第1の方向D1における本体部6の一端面6aに開口するように本体部6に設けられている。一端面6aにおける電子入射部8aの開口は、第1の方向D1から見て矩形状を呈している。また、電子入射部8aは、第1の方向D1に沿って、後述する第2の方向D2に徐々に狭まっている。つまり、電子入射部8aは、第1の方向D1に沿って縮小するテーパ状を呈している。
【0025】
増倍部8bは、電子入射部8aから入射した電子に応じて二次電子を放出する。増倍部8bは、第1の方向D1における本体部6の他端面6bに開口している。他端面6bにおける増倍部8bの開口は、陽極5に対向している。増倍部8bは、電子入射部8aに至るように本体部6に設けられている。従って、チャネル8は、全体として、本体部6の一端面6a及び他端面6bに開口している。
【0026】
増倍部8bは、第1の方向D1について当該増倍部8bの全体にわたって延在すると共に互いに対向する第1の内面9及び第2の内面10を含む。第1の内面9及び第2の内面10は、第1の方向D1と交差する第2の方向D2に離間している。なお、第2の方向D2は、第1の内面9から第2の内面10に向かう方向であって、ここでは、第1の方向D1に垂直な方向である。
【0027】
第1の内面9は、第1の方向D1に沿って交互に配列された凸状の第1の屈曲部9a及び凹状の第2の屈曲部9bを含む。また、第1の内面9は、第1の屈曲部9a及び第2の屈曲部9bのそれぞれを規定する複数の第1の傾斜面9cを含む。第1の傾斜面9cは平面状をなしている。本実施形態では、第1の屈曲部9a及び第2の屈曲部9bは角状に折れ曲がっている。
【0028】
第2の内面10は、第1の方向D1に沿って交互に配列された凸状の第3の屈曲部10a及び凹状の第4の屈曲部10bを含む。また、第2の内面10は、第3の屈曲部10a及び第4の屈曲部10bのそれぞれを規定する複数の第2の傾斜面10cを含む。第2の傾斜面10cは平面状をなしている。本実施形態では、第3の屈曲部10a及び第4の屈曲部10bは角状に折れ曲がっている。
【0029】
すなわち、第1の内面9及び第2の内面10は、第1の方向D1に沿ってジグザグ状(例えば、波状)に屈曲を繰り返すように形成されている。ここで、第1の内面9及び第2の内面10においては、第2の方向D2について、第1の屈曲部9aと第4の屈曲部10bとが互いに対向し、第2の屈曲部9bと第3の屈曲部10aとが互いに対向し、第1の傾斜面9cと第2の傾斜面10cとが互いに対向している。
【0030】
電子入射部8aの内面と増倍部8bの内面(少なくとも第1の内面9及び第2の内面10)とには、抵抗層及び二次電子増倍層が互いに積層するように設けられている。そして、電子入射部8aの表層と増倍部8bの表層とは、二次電子増倍層である。抵抗層の材料としては、例えばAl
2O
3(酸化アルミニウム)とZnO(酸化亜鉛)との混合膜、又は、Al
2O
3とTiO
2(二酸化チタン)との混合膜等を用いることができる。また、二次電子増倍層の材料としては、例えばAl
2O
3、又は、MgO(酸化マグネシウム)等を用いることができる。
【0031】
また、本体部6の一端面6a及び他端面6bには、それぞれニッケル系の金属を含む金属層11,12が蒸着等の方法によって設けられている。本体部6には、一端面6aに設けられた金属層11よりも他端面6bに設けられた金属層12の方が高電位となるように電位差が付与されている。このように電位差が付与されていることにより、チャネル8内にも第1の方向D1に沿った電位差が生じている。
【0032】
なお、本体部6は、後述するように、複数(ここでは4つ)の第1の板状部材21を一対の第2の板状部材22で挟むように、第1及び第2の板状部材21,22を互いに積層して構成されている。これにより、第1の板状部材21のそれぞれに形成された孔部24が互いに繋がると共に、第2の板状部材によって積層方向の両端が塞がれることでチャネル8が構成されている。
【0033】
管体3は、電子増倍体2を収容している。
図1に示されるように、管体3は第1の方向D1に延在している。第1の方向D1において、管体3の一端3aが開口すると共に他端3bが封止されている。ここで、管体3の一端3a側には電子増倍体2の本体部6の一端面6aが位置し、管体3の他端3b側には電子増倍体2の本体部6の他端面6bが位置している。
【0034】
光電面4は、光の入射に応じて光電子を発生する。光電面4は平板状をなしている。光電面4は、管体3の一端3aの開口を塞ぐように設けられている。光電面4は、電子増倍体2の本体部6の一端面6aにおける電子入射部8aの開口に対向している。これにより、光電面4において発生した光電子は電子入射部8aに供給される。なお、管体3の一端3aの開口が光電面4によって塞がれた状態で、管体3の内部が減圧される。
【0035】
陽極5は、チャネル8に入射した光電子に応じてチャネル8から放出される二次電子を受ける。陽極5は平板状をなしている。陽極5は、本体部6の他端面6bにおける増倍部8bの開口に対向するように管体3内に配置されている。陽極5は、本体部6の他端面6b及び管体3の他端3bから離間して配置されている。なお、陽極5には、当該陽極5が受けた二次電子に対応した電気信号のパルスを検出する検出器(不図示)が接続されている。
【0036】
引き続いて、以上のような電子増倍体2の製造方法について説明する。この製造方法においては、まず、
図3に示されるように、表面21aと、表面21aの反対側の裏面21bと、を有する複数(ここでは4つ)の第1の板状部材21、及び、一対の第2の板状部材22を準備する(準備工程)。なお、ここでは、後述する孔部24は第1の板状部材21に形成されていない。第1及び第2の板状部材21,22は、矩形状を呈している。また、第1及び第2の板状部材21,22のそれぞれの厚さは、5mm以下である。第1及び第2の板状部材21,22は、絶縁体であるセラミックによって形成されている。なお、ここでは、第1及び第2の板状部材21,22をセラミックによって形成していることから、この積層工程をロールコンパクションによって行うことで第1及び第2の板状部材21,22を比較的薄く形成できる。
【0037】
続く工程においては、複数(ここでは6つ)の孔部24を第1の板状部材21に形成する(孔形成工程)。孔部24は、例えばレーザー加工、或いは金型による打ち抜き等により形成することができる。孔部24は、表面21aから裏面21bに至ると共に表面21a及び裏面21bに沿って延びている。孔部24は、第1の方向D1及び第2の方向D2に沿って2次元状に配列されている。
【0038】
孔部24は、第1の方向D1に沿って延在している。具体的に、孔部24は、第1の方向D1に対して反対方向に向かって広がるような三角形状に形成された三角形状部24aと、当該三角形状部24aから第1の方向D1に向かって延在する延在部24bと、を有している。ただし、孔部24は、第1の板状部材21の端部(特に、第1の方向D1における一端25及び他端26)に至らないように形成されている。
【0039】
続く工程においては、
図4及び
図5に示されるように、第1の板状部材21を一対の第2の板状部材22で挟むように第1及び第2の板状部材21,22を互いに積層して積層体27を構成する(積層工程)。ここでは、4つの第1の板状部材21を一対の第2の板状部材22で挟む構成としている。このように第1及び第2の板状部材21,22を互いに積層することにより、積層体27内に、孔部24によって規定される複数のチャネル8が形成される。ここでは、孔部24の三角形状部24aが電子入射部8aを構成し、延在部24bが増倍部8bを構成する(
図7参照)。なお、第1の板状部材21を積層する枚数を調整することにより、板状部材の積層方向におけるチャネル8の幅を調整できる。
【0040】
続く工程においては、積層体27を一体化する(一体化工程)。ここでは、セラミックによって形成された第1及び第2の板状部材21,22をプレス及び焼結することによって一体化する。
【0041】
続く工程においては、
図6及び
図7に示されるように、一体化された積層体27を切断することにより本体部6を構成する(切断工程)。この切断工程では、積層体27に設定された仮想的な切断予定ラインL1,L2,L3に沿って積層体27を切断する。切断予定ラインL1,L2,L3は、第1の方向D1及び第2の方向D2に沿って2次元的に配列されたチャネル8を1つずつ切り分けるように、格子状に設定される。切断予定ラインL1は、第1の方向D1に沿って設定される。切断予定ラインL1は、第2の方向D2に沿った本体部6の幅を規定する。切断予定ラインL2,L3のそれぞれは、第2の方向D2に沿って設定される。切断予定ラインL2,L3は、第1の方向D1に沿った本体部6の長さを規定する。切断予定ラインL2は、切断予定ラインL2に沿って切断を行ったときに、その切断面に電子入射部8aが開口するように設定される。また、切断予定ラインL3は、切断予定ラインL3に沿って切断を行ったときに、その切断面に増倍部8bが開口するように設定される。以上のような切断予定ラインL1,L2,L3に沿って積層体27を切断することにより、それぞれ単一のチャネル8を備えた複数の本体部6が構成される。
【0042】
続く工程においては、本体部6に形成されたチャネル8の内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する(層形成工程)。抵抗層及び二次電子増倍層は、ここでは原子層堆積法によって形成される。以上の工程により、
図8に示されるような電子増倍体2が複数製造される。
【0043】
以上説明した通り、本実施形態に係る電子増倍体2の製造方法においては、表面21aから裏面21bに至ると共に表面21a及び裏面21bに沿って延びる孔部24を第1の板状部材21に形成する。そして、第1の板状部材21を一対の第2の板状部材22で挟むように互いに積層して積層体27を構成すると共に、孔部24によって規定されるチャネル8を形成する。この積層体27を一体化して切断することで本体部6を構成する。また、チャネル8の内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する。このような方法によれば、板状部材に孔部24を形成することが比較的容易であることに起因して、チャネル8の加工性を向上できる。また、同様の理由から、製造コストを低減できる。
【0044】
また、電子増倍体2の製造方法においては、層形成工程において、抵抗層及び二次電子増倍層を原子層堆積法によって形成する。このため、チャネル8の内面に抵抗層及び二次電子増倍層を容易に形成できる。
【0045】
また、電子増倍体2の製造方法においては、孔形成工程において、第1の板状部材21の端部に至らないように孔部24が形成されている。このため、切断工程の前において、第1の板状部材21の端部には孔部24が至っていない。従って、第1の板状部材21が2つの部分に分離することをより確実に抑制できる。これにより、作業性を向上できる。また、チャネル8の幅を精度よく簡便に作ることができる。
【0046】
また、電子増倍体2においては、第1及び第2の板状部材21,22の厚さは5mm以下である。このため、第1及び第2の板状部材21,22を比較的薄くすることで孔部24の形成がより容易となる。このため、チャネル8の加工性をより向上できる。
【0047】
本実施形態に係る光電子増倍管1においては、上述した電子増倍体2の製造方法によって製造された電子増倍体2を備えているため、上記作用効果を好適に奏することができる。
【0048】
[第1の変形例]
続いて、第1の変形例に係る電子増倍体の製造方法について説明する。
図9(a)に示されるように、第1の変形例に係る電子増倍体31は、ファンネル形状(例えば、漏斗状)を呈した電子入射部8aを有する。すなわち、本体部6の一端面6aにおける電子入射部8aの開口は、板状部材の積層方向における中央部で広く、両端部に近づくほど狭くなる。
【0049】
図9(b)に示されるように、上記のような電子入射部8aを構成するために、電子増倍体31の製造方法では、孔形成工程において、第1の板状部材21のそれぞれに対して三角形状部24aの広がり角が互いに異なる孔部24を形成する。そして、積層工程において、電子入射部8aが上述したファンネル形状を呈するように複数の第1の板状部材21を積層する。このような工程とすることにより、上述したような形状のチャネル8を容易に形成できる。
【0050】
[第2の変形例]
続いて、第2の変形例に係る電子増倍体の製造方法について説明する。
図10(a)及び
図10(b)に示されるように、第2の変形例に係る電子増倍体32は、3次元的に屈曲した形状(例えば、螺旋状)を呈したチャネル8を有する。このような電子増倍体32の製造方法では、孔形成工程において、第1の板状部材21のそれぞれに対して三角形状部24a及び延在部24bの形状が互いに異なる孔部24を形成する。そして、積層工程において、チャネル8が三次元的に屈曲した形状を呈するように複数の第1の板状部材21を積層する。このような工程とすることにより、上述したような形状のチャネル8を容易に形成できる。
【0051】
[第3の変形例]
続いて、電子増倍体33の製造方法について説明する。
図11に示されるように、第3の変形例に係る電子増倍体33は、板状部材の積層方向及び第2の方向D2に沿って2次元状に配列された複数のチャネル8を有する。すなわち、電子増倍体33はマルチチャネルの電子増倍体33である。このような電子増倍体33の製造方法においては、まず、複数の第1の板状部材21、一対の第2の板状部材22、及び、第3の板状部材23を準備する(準備工程)。第3の板状部材23の形状、材質等は、第1及び第2の板状部材21,22と同様とすることができる。
【0052】
続く工程においては、
図12に示されるように、複数の孔部24を第1の板状部材21に形成する(孔形成工程)。ここで、孔部24は、第1の方向D1及び第2の方向D2に沿って2次元的に配列されている。
図12に示す例では、第1の方向D1において2つ、第2の方向D2において2つの孔部24が、互いに並んで形成されている。
【0053】
続く工程においては、
図13に示されるように、第1の板状部材21間に第3の板状部材23を介在させつつ、第1の板状部材21を一対の第2の板状部材22で挟むように第1、第2、及び第3の板状部材23を互いに積層して積層体27を構成する(積層工程)。すなわち、ここでは、第2の板状部材22、2つの第1の板状部材21、第3の板状部材23、2つの第1の板状部材21、及び、第2の板状部材22が、この順に積層されている。このように第1、第2、及び第3の板状部材23を互いに積層することにより、第3の板状部材23の両面側における第1の板状部材21のそれぞれにおいて、積層体27内に、孔部24によって規定されるチャネル8がそれぞれ形成される(
図16参照)。
【0054】
続く工程においては、
図14に示されるように、積層体27を一体化する(一体化工程)。
【0055】
続く工程においては、
図15及び
図16に示されるように、一体化された積層体27を切断することにより本体部6を構成する(切断工程)。この切断工程では、積層体27に設定された仮想的な切断予定ラインL1,L2,L3に沿って積層体27を切断する。切断予定ラインL1,L2,L3は、第1の方向D1及び第2の方向D2に沿って2次元的に配列されたチャネル8を複数個ずつ(ここでは、2つずつ)に切り分けるように、格子状に設定される。切断予定ラインL1は、第1の方向D1に沿って設定される。切断予定ラインL1は、第2の方向D2に隣り合う2つのチャネル8を一組として切り分けるように設定される。切断予定ラインL2,L3のそれぞれは、第2の方向D2に沿って設定される。切断予定ラインL2は、切断予定ラインL2に沿って切断を行ったときに、その切断面に2つのチャネル8のそれぞれの電子入射部8aが開口するように設定される。また、切断予定ラインL3は、切断予定ラインL3に沿って切断を行ったときに、その切断面に2つのチャネル8のそれぞれの増倍部8bが開口するように設定される。以上のような切断予定ラインL1,L2,L3に沿って積層体27を切断することにより、それぞれ第2の方向D2に隣り合う2つのチャネル8を備えた複数の本体部6が構成される。
【0056】
続く工程においては、本体部6に形成されたチャネル8の内面に抵抗層及び二次電子増倍層を形成する(層形成工程)。以上の工程により、
図11に示されるようなマルチチャネルの電子増倍体33が製造される。
【0057】
この電子増倍体33の製造方法においては、準備工程において、複数の第1の板状部材21を準備すると共に、第3の板状部材23を更に準備し、積層工程において、第1の板状部材21間に第3の板状部材23を介在させつつ第1及び第3の板状部材21,23を一対の第2の板状部材22で挟むように第1、第2、及び第3の板状部材21,22,23を互いに積層して積層体27を構成する。このため、第3の板状部材23と一対の第2の板状部材22との間のそれぞれに第1の板状部材21が挟まれることで、それらの積層方向に複数のチャネル8が構成される。従って、マルチチャネルの電子増倍体33を容易に製造できる。
【0058】
また、この電子増倍体33の製造方法においては、孔形成工程において、第1の板状部材21に複数の孔部24を形成する。このため、第1の板状部材21の表面21a及び裏面21bに沿った方向に複数のチャネル8が構成される。従って、マルチチャネルの電子増倍体33を容易に製造できる。
【0059】
以上の実施形態は、本発明に係る電子増倍体の製造方法、光電子増倍管、及び光電子増倍器の一実施形態を説明したものである。従って、本発明に係る電子増倍体の製造方法、光電子増倍管、及び光電子増倍器は、上述したものに限定されない。本発明に係る電子増倍体の製造方法、光電子増倍管、及び光電子増倍器は、各請求項の要旨を変更しない範囲において、上述したものを任意に変更したものとすることができる。
【0060】
例えば、孔形成工程において、第1の板状部材21の一端25又は他端26に至るように孔部24を形成してもよい。この場合、切断工程の前において、第1の板状部材21の一端25又は他端26のいずれか一方に孔部24が至っている。このため、切断工程においては、第1の板状部材21の一端25又は他端26のいずれか他方のみを切断するだけで本体部6の一端面6a及び他端面6bにチャネル8を開口させることができる。また、切断工程の前において、第1の板状部材21の一端25又は他端26のいずれか他方に孔部24が至っていない。このため、第1の板状部材21が2つの部分に分離することを抑制できる。これらにより、作業性を向上できる。また、チャネル8の幅を精度よく簡便に作ることができる。
【0061】
また、
図17に示されるように、電子増倍体2は、光電面29と陽極30とを用いて光電子増倍器35とすることができる。光電面29は、第1の方向D1から見て電子増倍体2の本体部6の外形と略同一の形状を呈している。また、光電面29は、平板状をなしている。光電面29は、本体部6の一端面6aにおける電子入射部8aの開口を塞ぐように一端面6aに設けられている。これにより、光電面29において発生した光電子は電子入射部8aに供給される。
【0062】
陽極30は、チャネル8に入射した光電子に応じてチャネル8から放出される二次電子を受ける。陽極30は、本体部6の他端面6bにおけるチャネル8の開口を塞ぐようにチャネル8内に設けられている。これにより、陽極30は、電子増倍体2のチャネル8を進行して他端面6bに至った二次電子を受ける。
【0063】
本実施形態に係る光電子増倍器35は、上述した電子増倍体2を備えている。このため、電子増倍体2による作用効果を好適に奏することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、層形成工程は切断工程に続いて行われるが、積層工程に続いて行われてもよく、一体化工程に続いて行われてもよい。
【0065】
また、金属等の導電体からなる第1及び第2の板状部材21,22を用いてもよい。その場合、切断工程の後であって、層形成工程の前に、本体部6の表面及びチャネル8の内面に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を更に実施する。この場合、第1及び第2の板状部材21,22として金属等の導電体を用いることができるため、多様な材料によって電子増倍体2を製造できる。