特許第6407772号(P6407772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407772
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/32 20130101AFI20181004BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20181004BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20181004BHJP
   G06F 21/31 20130101ALI20181004BHJP
【FI】
   G06F21/32
   G06T1/00 400G
   G06F3/0354 443
   G06F21/31
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-48918(P2015-48918)
(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公開番号】特開2016-170549(P2016-170549A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 祐貴
【審査官】 宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0276805(US,A1)
【文献】 特開2002−297552(JP,A)
【文献】 特開2008−197995(JP,A)
【文献】 特開2001−125734(JP,A)
【文献】 特開2007−293469(JP,A)
【文献】 特開2005−250776(JP,A)
【文献】 特開2003−036247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 21/30−21/46
G06F 3/0354
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク接続されるコンピュータ装置と接続して用いられる入力装置であって,
生体情報およびサイト要求情報を関連づけて記憶する記憶手段,
生体情報を取得する生体情報取得手段,
上記生体情報取得手段によって取得された生体情報と上記記憶手段に記憶されている生体情報とを比較することによって個人認証する認証手段
上記認証手段によって個人認証が成功したときに,認証に成功した生体情報に関連づけられて上記記憶手段に記憶されているサイト要求情報を送信する送信手段,ならびに
入力装置の使用者の変更を検知する使用者変更検知手段を備えている,
入力装置。
【請求項2】
上記サイト要求情報はログイン情報である,
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
上記サイト要求情報はクレジットカード情報である,
請求項1に記載の入力装置。
【請求項4】
サイト要求情報の送信リクエストを受信する受信手段を備え,
上記送信手段は,
上記受信手段がサイト要求情報の送信リクエストを受信したことに応じて,サイト要求情報を送信するものである,
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項5】
上記記憶手段において,上記サイト要求情報が要求元情報に関連づけられて記憶されており,
上記サイト要求情報の送信リクエストが要求元情報を含み,
上記送信手段は,
上記サイト要求情報の送信リクエストに含まれる上記要求元情報に関連づけられているサイト要求情報を送信する,
請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
送信すべきサイト要求情報の選択を受付ける選択受付手段を備えている,
請求項1から4のいずれか一項に記載の入力装置。
【請求項7】
上記送信手段は,上記使用者変更検知手段が上記入力装置の使用者の変更を検知したときに,上記サイト要求情報を送信するものである,
請求項に記載の入力装置。
【請求項8】
上記コンピュータ装置に信号を送信するときに操作される操作部を備え,
上記操作部に上記生体情報取得手段が設けられている,
請求項1からのいずれか一項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,入力装置,特にコンピュータ装置と接続されて用いられる入力装置に関する。コンピュータ装置と入力装置とは有線によって接続するものであっても,無線(たとえばBluetooth(登録商標))によって接続するものであってもよい。
【背景技術】
【0002】
ショッピングサイトを利用して商品を購入したり,インターネットバンキングサイトを利用して残高照会を行ったりする場合には,一般にサイトごとに固有のユーザID,パスワード等を入力してログインしなければならない。
【0003】
通信プログラム(ブラウザ)の機能によって,サイトごとに固有のユーザID等をパーソナルコンピュータに記憶させておくことができ,そうすることでユーザID等の再度の入力の手間を省くことができる。しかしながら,この場合にはパーソナルコンピュータを使用する者が基本的には特定の人物であることを前提にする。1台のパーソナルコンピュータを使用する者が複数人いれば,かえって悪用される可能性も生じる。
【0004】
特許文献1は,指紋を用いて個人認証が成功したときにパーソナルコンピュータを使用できるようにし,個人認証が成功しなかったときにはコンピュータを使用できないようにするものを記載する。これを用いれば,パーソナルコンピュータを使用する者を特定の人物に限定することができる。しかしながら,この場合も,パーソナルコンピュータを使用する者が特定の人物である必要があることに変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−125734号公報
【発明の開示】
【0006】
この発明は,コンピュータ装置を使用する者が複数いても,現実に使用している人物を特定することができ,その人物に固有のユーザID等をサイトに送信することができるようにすることを目的とする。
【0007】
この発明はまた,サイトごとに固有のユーザID等の入力の手間を省くことができるようにすることを目的とする。
【0008】
この発明による入力装置は,ネットワーク接続されるコンピュータ装置と接続して用いられるものであって,生体情報およびサイト要求情報を関連づけて記憶する記憶手段,生体情報を取得する生体情報取得手段,上記生体情報取得手段によって取得された生体情報と上記記憶手段に記憶されている生体情報とを比較することによって個人認証する認証手段,ならびに上記認証手段によって個人認証が成功したときに,認証に成功した生体情報に関連づけられて上記記憶手段に記憶されているサイト要求情報を送信する送信手段を備えている。
【0009】
この発明によると,生体情報を用いた個人認証が成功したときに,認証に用いられた生体情報に関連づけられて記憶手段に記憶されているサイト要求情報,たとえばログイン情報(ユーザIDなど),クレジットカード番号などが送信される。サイトからログイン情報,クレジットカード番号等を要求されたときに,それらを入力する手間を省くことができる。また,生体情報を用いた個人認証が成功することを条件にしてサイト要求情報は送信され,さらに上述のように生体情報とサイト要求情報とが関連づけられて記憶手段に記憶されているので,コンピュータ装置を使用する者が複数いるとしても,コンピュータ装置を現実に使用している(コンピュータ装置に接続された入力装置を現実に使用している),個人認証に成功した特定の人物に固有のサイト要求情報を,確実に送信することができる。
【0010】
好ましくは,上記コンピュータ装置に信号を送信するときに操作される操作部に,上記生体情報取得手段は設けられる。たとえば入力装置がコンピュータ装置に接続されるマウスであれば,マウスが備える操作部(たとえばクリック・パネル)に生体情報取得手段は設けられる。マウスを操作している操作者に固有の生体情報を取得することができる。
【0011】
一実施態様では,上記サイト要求情報の送信リクエストを受信する受信手段を備え,上記送信手段は,上記受信手段がサイト要求情報の送信リクエストを受信したことに応じて,サイト要求情報を送信するものである。サイト要求情報が必要とされるタイミングで,サイト要求情報を送信することができる。
【0012】
好ましくは,上記記憶手段において,上記サイト要求情報が要求元情報(たとえばURL)に関連づけられて記憶されており,上記サイト要求情報の送信リクエストが要求元情報を含み,上記送信手段は,上記サイト要求情報の送信リクエストに含まれる要求元情報に関連づけられているサイト要求情報を送信する。生体情報に関連づけられて複数種類のサイト要求情報が記憶されている場合であっても,その中から必要とされる(リクエストされている)特定のサイト要求情報を送信することができる。
【0013】
もっとも,送信すべきサイト要求情報の選択を受付ける選択受付手段を備えてもよい。この場合には,複数種類のサイト要求情報のうち,選択受付手段を用いて選択されたサイト要求情報が送信される。
【0014】
他の実施態様では,入力装置の使用者の変更を検知する使用者変更検知手段を備えている。入力装置が備える生体情報取得手段によって取得される生体情報が用いられて個人認証が行われるから,生体情報取得手段による生体情報の取得および取得された生体情報を用いた個人認証を繰り返すことで,入力装置の使用者が別の人物に変わったことを検知することができる。使用者の変更が検知されたときに上記サイト要求情報を送信するようにしてもよいし,その事実(使用者が変更したこと)を,たとえば入力装置が接続されているコンピュータ装置に通知するようにしてもよいし,さらにはコンピュータ装置とネットワーク接続されているサイトに通知するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】指紋認証マウスの平面図である。
図2】指紋認証マウスの内部構造を示す。
図3】指紋認証マウスの電気的構成を示すブロック図である。
図4】認証用データテーブルを示す。
図5】ショッピングサイトの商品購入画面を示す。
図6】指紋認証マウスと,パーソナルコンピュータと,サーバとの間のデータの送受信の流れを示すフローチャートである。
図7】他の実施例を示すもので,指紋認証マウスとパーソナルコンピュータとの間のデータの送受信の流れを示すフローチャートである。
図8】識別情報選択画面を示す。
図9】さらに他の実施例を示すもので,指紋認証マウスの処理の流れを示すフローチャートである。
【実施例】
【0016】
図1は指紋認証マウスの平面図である。図2は指紋認証マウスの内部構造を概略的に示している。図3は指紋認証マウスの電気的構成を示すブロック図である。
【0017】
指紋認証マウス1は,上面が丸みを帯びて形成され,下面がほぼ平坦に形成された筐体2を備える。丸みを帯びた筐体2の上面の前方がわに,押下可能な一対のクリック・パネル3L,3Rが設けられている。また筐体2の下面はその一部が開口している(下面開口を符号5で示す)。筐体2およびクリック・パネル3L,3RはABS樹脂(アクリロニトリル,ブタジエン,スチレン共重合合成樹脂)等によって作られている。クリック・パネル3L,3Rの部分が指の腹で押下される。
【0018】
一対のクリック・パネル3L,3Rのうちの左側のクリック・パネル3Lには,光透過性プラスチック,たとえばポリカーボネート製の光透過窓6が設けられている。左側のクリック・パネル3Lが押下されるときに,光透過窓6に指の腹が接触する。
【0019】
さらに筐体2の上面のほぼ中央に表示装置19が設けられている。後述するように,表示装置19の表示画面には,指紋認証マウス1を使用している個人の氏名が表示される。
【0020】
筐体2の内部には,データバス10が形成されたプリント基板(図示略)が設けられている。プリント基板上のデータバス10に,コントローラ11,指紋読取用イメージセンサ12,ポインティング用イメージセンサ13,クリック検知スイッチ14,データの送受信のための通信装置15および信号ケーブル16,表示装置19,ならびに記憶装置22が接続されている。
【0021】
指紋認証マウス1の動作(指紋認証マウス1から信号ケーブル16を通して送信されるデータの作成処理など)はコントローラ11によって統括される。コントローラ11はメモリ21を備え,メモリ21内に,指紋認証マウス1の基本的な処理を実行するためのプログラム(たとえば指紋認証マウス1の移動方向および移動量を算出するプログラムなど)を格納する領域,計算結果を一時的に格納する領域などが確保されている。
【0022】
指紋認証マウス1の信号ケーブル16をパーソナルコンピュータに接続すると,信号ケーブル16を通じてパーソナルコンピュータから電源が供給される。筐体2内に発光ダイオード17が設けられており,この発光ダイオード17に電源が供給されることで光が出射する。発光ダイオード17から出射した光はプリズムおよびレンズが一体に形成された光学部材18のプリズム部に入射し,ここで数回の反射を繰り返して筐体2の下面にあけられた開口5から外に出射する。開口5から出射した光の反射光(たとえば,マウスパッドからの反射光)が光学部材18のレンズ部を介してポインティング用イメージセンサ13に入射する。ポインティング用イメージセンサ13によって撮像される被写体(マウスパッドなど)の画像データがデータバス10を通じてコントローラ11に送信される。コントローラ11は繰返し撮像される被写体の画像を比較することで指紋認証マウス1の移動方向および移動量を算出し,移動方向および移動量を表すデータを通信装置15および信号ケーブル16を通じてパーソナルコンピュータに送信する。パーソナルコンピュータでは指紋認証マウス1の移動に応じて移動するマウスカーソルが,表示画面上に表示される。後述するように,指紋認証マウス1の通信装置15は,パーソナルコンピュータに向けてデータを送信するのみならず,パーソナルコンピュータからのデータを受信するためにも用いられる。
【0023】
クリック・パネル3L,3Rの内面側に細長いアクチュエータ4が連結されており,アクチュエータ4の先端のすぐ近くにクリック検知スイッチ14が設けられている。図2には一つのアクチュエータ4およびクリック検知スイッチ14のみが示されているが,クリック・パネル3L,3Rのそれぞれに対応してアクチュエータ4およびクリック検知スイッチ14が設けられるのは言うまでもない。クリック・パネル3L,3Rが押下されるとアクチュエータ4が下向きにわずかに移動する。アクチュエータ4の先端によってクリック検知スイッチ14が押されることで,クリック・パネル3L,3Rが押下されたことが検知される。クリック信号はデータバス10を介して信号ケーブル16に送信される。なお,アクチュエータ4はバネ(図示略)などによって常に上向きに付勢されており,クリック・パネル3L,3Rの押下をやめると元の位置に戻るようになっている。
【0024】
左側のクリック・パネル3Lに設けられた光透過窓6の内面側に,指紋読取用イメージセンサ12が設けられている。光透過窓6を指で触れているとき(クリック時を含む)に指の腹(指紋を含む)が指紋読取用イメージセンサ12によって撮像される。指紋読取用イメージセンサ12から出力される指画像データはデータバス10を介してコントローラ11に送信され,そこで指紋認証処理を含む所定の処理(詳細は後述する)が実行される。指紋認証処理等のためのプログラムおよびデータはデータバス10に接続された記憶装置22に記憶されている。指画像(指紋)を指紋読取用イメージセンサ12によって読取るために,光透過窓6は上述したように光透過性プラスチックによって作られており,光透過窓6を通して取り入れられる外光が用いられて指の腹が照らされる。もっとも,指紋認証マウス1の筐体2内に指に向けて光を出射する光源(発光ダイオードなど)を設けてもよい。
【0025】
図4は指紋認証マウス1が備える記憶装置22に記憶されている,認証用データテーブルを示している。
【0026】
認証用データテーブルT1には,指紋認証マウス1を用いて個人認証されるべき個人のそれぞれについて,指紋画像,氏名および識別情報(サイト要求情報)を含む認証用データが,あらかじめ記憶(登録)されている。識別情報(サイト要求情報)には,クレジットカード番号,ショッピングサイトの会員番号,社員番号,インターネット・バンキングのIDおよびパスワード,図書予約システムのIDおよびパスワードなど,複数種類のデータを含ませることができる。識別情報(サイト要求情報)は,ログイン処理,支払い処理などを行うときにサーバ(ウェブ・サイト)から要求される情報である。
【0027】
たとえば第1行目の認証用データを参照して,この認証用データは「総研太郎」に関する認証用データであり,総研太郎の右手の人差し指の指紋画像データ,氏名(総研太郎)を表す文字データ,総研太郎が所持するクレジットカードの番号,AAAショッピングサイトにおける総研太郎の会員番号,および総研太郎が所属する企業における総研太郎の社員番号,○○銀行のインターネット・バンキングで用いられる総研太郎のIDおよびパスワード,××銀行のインターネット・バンキングで用いられる総研太郎のIDおよびパスワード,△△図書館で用いられる総研太郎のIDおよびパスワード,ならびに**図書館で用いられる総研太郎のIDおよびパスワードを表すデータが,互いに関連づけられて記憶されている。以下に詳細に説明するように,指紋画像を用いて指紋認証マウス1を用いている者(クリックした者)の認証処理が行われる。認証が成功すると,認証されることで特定される個人に関連づけられている識別情報(クレジットカード番号,会員番号,社員番号,ID,パスワードなど)が指紋認証マウス1の記憶装置22から読み出され,インターネットなどを通じて送信される。識別情報を入力する手間を省くことができる。
【0028】
ショッピングサイトを例にして,上述した指紋認証マウス1を利用した処理の流れを説明する。
【0029】
図5はショッピングサイトの商品購入画面(ウインドウ)を示している。図6は指紋認証マウスと,指紋認証マウスが接続されているパーソナルコンピュータ(以下,PCという)と,ショッピングサイトのサーバ(ウェブ・サーバ)との間のデータの送受信の流れを示すフローチャートである。
【0030】
PCのブラウザを用いてショッピングサイトにアクセスする(URL(Uniform Resource Locator)「www.aaa.jp」を入力する)と,PCの表示画面上にAAAショッピングサイトの商品紹介画面が表れる。商品紹介画面を用いて購入を希望する商品が選択される。図5に示す商品購入画面W1がPCの表示画面に表示される。
【0031】
商品購入画面W1には,選択された商品の画像,商品名および販売価格が表示されるとともに,「カートに入れる」のボタンC1が表示される。この「カートに入れる」ボタンC1にマウスカーソルを重ね合わせ,その状態で指紋認証マウス1のクリック・パネル3Lを押下する(「カートに入れる」ボタンC1をクリックする)ことで,商品の購入処理が開始する(ステップ31)。
【0032】
「カートに入れる」ボタンC1がクリックされたことに応答して,ショッピングサイトのサーバは,ショッピングサイトのURL(www.aaa.jp),転送命令および識別情報リクエストを含む応答データをPCに送信する(ステップ61)。応答データを受信したPCは,転送命令にしたがって,応答データに含まれるURLおよび識別情報リクエストを,PCに接続されている指紋認証マウス1に転送する(ステップ32)。
【0033】
通信装置15を通じてURLおよび識別情報リクエストをPCから受信した指紋認証マウス1は,指紋認証処理を開始する。指紋読取用イメージセンサ12が起動され,指紋認証マウス1のクリック・パネル3Lの光透過窓6に触れている指(指紋)が撮像される(ステップ41)。撮像されて生成された指紋画像データは,データバス10を介してコントローラ11に送られ,認証用データテーブルT1に記憶されている指紋画像データと比較される(ステップ42)。
【0034】
認証用データテーブルT1にあらかじめ記憶されている指紋画像データ(以下,登録指紋データという)と指紋読取用イメージセンサ12によって生成される指紋画像データ(以下,照合指紋データという)の比較は,画像マッチングによって行われる。たとえば,登録指紋データおよび照合指紋データのそれぞれから抽出される複数の特徴点の一致の程度が判断され,照合指紋データと同一の登録指紋データが,記憶装置22に記憶されている認証用データテーブルT1に含まれているかどうかが判断される。
【0035】
照合指紋データと同一の登録指紋データが見つかった場合,認証成功と判断される(ステップ43でYES )。指紋認証マウス1は,認証用データテーブルT1に記憶されている,認証された登録指紋データ(見つかった登録指紋データ)に関連づけられている識別情報のうち,受信したURLにも関連づけられている識別情報を認証用データテーブルT1から読み出す(ステップ45)。図4を参照して,たとえば受信したURLがAAAショッピングサイトのURL(www.aaa.jp)であれば,AAAショッピングサイトの会員番号が認証用データテーブルT1から読み出される。さらに,認証された登録指紋データに関連づけられている氏名を表すデータが用いられて,指紋認証マウス1の表示装置19に自分の氏名が表示される(図1参照)。認証が成功したことを確認することができる。
【0036】
読み出された識別情報は,転送命令とともに指紋認証マウス1からPCに送信される(ステップ46)。PCは,転送命令にしたがって,受信した識別情報をサーバに転送する(ステップ33)。識別情報,たとえば会員番号を受信したサーバは,受信した会員番号を用いたログイン処理に進む(ステップ62)。サーバにおけるログイン処理を経ることによって,商品購入画面W1(図5)にはユーザの氏名が表示される(図示略)。サーバが求めるログイン処理に必要な会員番号を,PCのキーボードを用いて入力する手間を省くことができる。サーバが,ログイン処理に会員番号に加えてパスワードを求める場合であれば,上述した認証用データテーブルT1にはあらかじめ会員番号に加えてパスワードも記憶され,指紋認証が成功したときには,会員番号とパスワードとが読み出されることになるのは言うまでもない。会員番号やパスワードなどを,キーボード等を用いて入力することなくサーバに送信することができるので,いわゆるスパイウエアが待ち受けるイベントが発生することがない。ゆえにキーロガーや画面をキャプチャするスパイウエアが潜んでいても脅威にはならない。キーボードのみならず,ソフトウエアキーボードやタッチパネルも用いずに会員番号やパスワードなどをサーバに送信することができるので,スパイウエアに対して強力な保護が実現される。
【0037】
照合指紋データと同一の登録指紋データが見つからなかった場合(ステップ43でNO),指紋認証マウス1は所定処理を実行する(ステップ44)。たとえば,再度の指紋読取りを促すメッセージ・データをPCに送信してもよいし,指紋認証できなかった旨を表すデータを転送命令とともにPCに送信し,サーバに通知するようにしてもよい。指紋認証することができなかったときに,指紋認証マウス1の動作を少なくとも部分的に停止させてもよい。たとえば,指紋認証マウス1からパーソナルコンピュータに,何も信号を送信することができないようにする,またはクリック信号のみを送信することができないようにすることが考えられる。指紋認証マウス1の操作に対して,パーソナルコンピュータが少なくとも部分的に反応しなくなる(クリック不能になるまたはあたかもパーソナルコンピュータとの接続が外れた状態になるなど)ので,ユーザは指紋認証に失敗したことを認識することができる。もっとも,指紋認証に失敗した場合には指紋認証マウス1の表示装置19に自分の氏名が表示されないから,これによっても指紋認証に失敗したことを認識することができる。
【0038】
指紋認証マウス1の記憶装置22には,複数人の登録指紋データおよび識別情報が記憶されており(図4参照),複数人(たとえば家族)によって使用される。上述のように,指紋認証によって指紋認証マウス1(指紋認証マウス1に接続されているPC)を現実に使用している人物を特定することができるから,指紋認証マウス1(PC)を使用する者が複数いても,その中の特定の人物(指紋認証マウス1を使っている人物)に固有の識別情報をサーバに送信することができる。たとえば一つのショッピングサイトにおいて家族で代わる代わる商品を注文することもできる。
【0039】
ショッピングサイト以外においても,上述と同様の処理によって,サーバが求める情報(サイト要求情報)を,PCのキーボードを用いて入力することなく,サーバに送信することができる。たとえば,総研太郎の識別情報(サイト要求情報)には,○○銀行および××銀行のIDおよびパスワードが含まれているので(図4参照),PCのキーボートを用いて入力することなく,指紋認証マウス1から○○銀行のサーバに,総研太郎の○○銀行についてのIDおよびパスワードを送信してたとえば残高確認ページで預金残高を確認することができる。××銀行も同様である。さらに,総研太郎の識別情報(サイト要求情報)には,△△図書館および**図書館のIDおよびパスワードも含まれているので,PCのキーボードを用いてこれらのIDおよびパスワードを入力することなく,それぞれの図書館で図書の予約や予約待ちがどのくらいかを確認することもできる。
【0040】
もちろん,IDやパスワードを要求するダイヤログが表示されてもよく,指紋認証マウス1から送信されるIDやパスワードを自動取得後にダイヤログを非表示にするということでもよい。
【0041】
図7は他の実施例を示すもので,指紋認証マウス1とPCとの間のデータの送受信の流れを示すフローチャートである。
【0042】
図1から図6を用いて説明した実施例では,サーバから送信されるURLに基づいて,複数種類の識別情報(クレジットカード番号,会員番号,社員番号,銀行のIDおよびパスワード,図書館のIDおよびパスワードなど)のうちのいずれの識別情報を認証用データテーブルT1から読み出すかを判断している(図6のステップ61,45)。図7に示す実施例では,認証用データテーブルT1から読出すべき識別情報の種別が,ユーザ(指紋認証マウス1の操作者)によって選択される。図6に示すフローチャートの処理と同一処理には同一符号を付し,重複した詳細な説明を避ける。サーバからPCに送信される応答データにURLが含まれない点を除いて,サーバの処理は図6と同じであるので,図7においてサーバの処理は省略されている。また,図6におけるPCのステップ31,32の処理も,指紋認証マウス1への送信データにURLが含まれない点を除いて図7において同じである。
【0043】
照合指紋データと同一の登録指紋データが見つかると(ステップ43でYES ),認証された登録指紋データに関連づけられている識別情報の種別を表すデータが,指紋認証マウス1からPCに送信される(ステップ47)。
【0044】
図8は,指紋認証マウス1からPCに送信される識別情報種別を表すデータに基づいてPCの表示画面上に表示される画面例(識別情報選択ウインドウW2)を示している。
【0045】
たとえば,認証された者についての識別情報に,クレジットカード番号,ショッピングサイトの会員番号,社員番号,○○銀行のIDおよびパスワード,××銀行のIDおよびパスワード,△△図書館のIDおよびパスワード,ならびに**図書館のIDおよびパスワードの7種類の識別情報が関連づけられているとする(図4の第1行目の認証用データを参照)。この場合,7種類の識別情報のうちのいずれの識別情報を指紋認証マウス1から読み出すべきであるか(さらにインターネットを通じてサーバに送信すべきであるか)が,識別情報選択ウインドウW2が用いられてユーザによって選択される。ラジオボタンが用いられて識別情報の種別が選択される。右下の設定ボタンC2がクリックされることで,選択された識別情報の種別がPCから指紋認証マウス1に通知される(ステップ34)。指紋認証マウス1は,ユーザによって選択された種別の識別情報を読出し(ステップ48),PCに送信することになる(ステップ46)。
【0046】
図9はさらに他の実施例を示すもので,指紋認証マウス1の処理を示すフローチャートである。
【0047】
この実施例の指紋認証マウス1は,複数の人物についての登録指紋データおよび識別情報が認証用データテーブルT1に記憶されているときに,いずれの人物についての識別情報を読出すべきかを,あらかじめスタンバイするものである。
【0048】
指紋認証マウス1のクリック・パネル3Lが押下されることでクリック検知スイッチ14が押されるたびに,指紋読取用イメージセンサ12による指紋の読取りおよび認証処理が行われる(ステップ49でYES,ステップ41〜44)。認証に成功すると(ステップ43でYES),前回認証した指紋と同じであるかどうかが判断される(ステップ50)。今回認証した指紋が前回認証した指紋と同じであれば,指紋認証マウス1は特段の処理を行わない(ステップ50でYES)。
【0049】
今回認証した指紋が前回認証した指紋と異なる場合,それは指紋認証マウス1を使用しているユーザが,別の新たなユーザに変わったことを意味する。あらかじめスタンバイされる識別情報が,新たなユーザの識別情報に変更される(ステップ51)。指紋認証マウス1の表示装置19(図1参照)には新たなユーザの氏名が表示される。
【0050】
新たなユーザについての識別情報に複数種類の識別情報が含まれている場合には,サーバから送信されるURLに基づいて(図5,ステップ45),または新たなユーザによる選択に基づいて(図6,ステップ48),複数種類の識別情報のうちのいずれを指紋認証マウス1から読出すかを特定するようにすればよい。ユーザの変更が検知されたときに,新たなユーザの識別情報をサーバに送信して,サーバにユーザが変更したことを通知するようにしてもよい。ユーザの変更の通知を受けたサーバは,ユーザが変更した旨(あるいは変更後のユーザの氏名など)をPCの表示画面に表示するようにしてもよい。
【0051】
上述した実施例では,指紋認証マウス1を説明したが,その形態はマウスに限られず,たとえば筆記用具(ペン)や文房具(ポインタ)などの形態を持つものであってもよいし,ビデオゲーム装置のコントローラのような形態であってもよい。
【0052】
また,指紋認証に代えて,静脈認証など,他の生体に関する情報を利用して個人認証を行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 指紋認証マウス(入力装置)
3L,3R クリック・パネル(操作部)
6 光透過窓
10 データバス
11 コントローラ(認証手段,選択受付手段,使用者変更検知手段)
12 指紋読取用イメージセンサ(生体情報取得手段)
14 クリック検知スイッチ
15 通信装置(送信手段,受信手段)
16 信号ケーブル
22 記憶装置(記憶手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9