(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(2)と、シリンダヘッドカバー(2)で覆われたロッカアーム(3)と、シリンダヘッドカバー(2)内に配置されたブリーザ室(4)を備えた、エンジンにおいて、
シリンダヘッドカバー(2)の長手方向を前後方向として、ブリーザ室(4)は、前後方向一端側にブローバイガス入口(5)を、前後方向他端側にブローバイガス出口(6)を、前後方向中間位置にオイル排出ガイド室(7)をそれぞれ備え、
ブローバイガス入口(5)は、ブリーザ室(4)の底壁(4a)に開口され、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、ブローバイガス出口(6)側のロッカアーム(3)とブローバイガス入口(5)の間に向けて、ブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設され、
ブリーザ室(4)はオイル排出ガイド室(7)の下部にオイル排出部(16)を備え、シリンダヘッド(1)はオイル溜め(17)を備え、オイル溜め(17)に溜められた分離オイル(18)にオイル排出部(16)のオイル排出口(16a)が浸漬され、
複数のロッカアーム(3)(3)中に、オイル排出ガイド室(7)を間に挟んで、ブローバイガス入口(5)と前後方向反対側に位置する所定のロッカアーム(3)を備え、前後方向に平行な向きに見て、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、前記所定のロッカアーム(3)の入力揺動端部(3a)と重なる位置までブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設されるとともに、筒状のオイル排出部(16)は、前後方向に平行な向きに見て、前記所定のロッカアーム(3)のプッシュロッド(33)と重なる位置に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 オイル消費が高まるおそれがあった。
特許文献1のものでは、ロッカアームで跳ね上げられたオイルがブリーザ室底壁に沿うブローバイガスの流れに乗って、ブローバイガス入口に進入しやすく、ブリーザ室へのオイル進入量が過剰になり、ブリーザ室のオイル分離が間に合わず、シリンダヘッドカバー外へのオイルの流出で、オイル消費が高まるおそれがあつた。
【0007】
本発明の課題は、オイル消費を低減することができるエンジンを提供することにある。
【0008】
本発明の発明者らは、研究の結果、ブローバイガス入口を、ブリーザ室の底壁に開口し、オイル排出ガイド室の周壁を、ブローバイガス出口側のロッカアームとブローバイガス入口の間に向けて、ブリーザ室の底壁から下向きに突設すれば、ブローバイガス出口側のロッカアームで跳ね上げられたオイルがブリーザ室の底壁に沿うブローバイガスの流れに乗っても、この流れがオイル排出ガイド室の周壁で遮られ、ブローバイガス入口へのオイル進入量が減少し、ブリーザ室へのオイル進入量が適正化され、シリンダヘッドカバー外へのオイルの流出が抑制され、オイル消費を低減することができることを発見し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図2に例示するように、シリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(2)と、シリンダヘッドカバー(2)で覆われたロッカアーム(3)と、シリンダヘッドカバー(2)内に配置されたブリーザ室(4)を備えた、エンジンにおいて、
図2,3に例示するように、シリンダヘッドカバー(2)の長手方向を前後方向として、ブリーザ室(4)は、前後方向一端側にブローバイガス入口(5)を、前後方向他端側にブローバイガス出口(6)を、前後方向中間位置にオイル排出ガイド室(7)をそれぞれ備え、
図2,4に例示するように、ブローバイガス入口(5)は、ブリーザ室(4)の底壁(4a)に開口され、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、ブローバイガス出口(6)側のロッカアーム(3)とブローバイガス入口(5)の間に向けて、ブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに
突設され、
図10(A)(C) ,図12(A)に例示するように、ブリーザ室(4)はオイル排出ガイド室(7)の下部にオイル排出部(16)を備え、シリンダヘッド(1)はオイル溜め(17)を備え、オイル溜め(17)に溜められた分離オイル(18)にオイル排出部(16)のオイル排出口(16a)が浸漬され、
図2に例示するように、複数のロッカアーム(3)(3)中に、オイル排出ガイド室(7)を間に挟んで、ブローバイガス入口(5)と前後方向反対側に位置する所定のロッカアーム(3)を備え、図6,7に例示するように、前後方向に平行な向きに見て、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、前記所定のロッカアーム(3)の入力揺動端部(3a)と重なる位置までブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設されるとともに、筒状のオイル排出部(16)は、前後方向に平行な向きに見て、前記所定のロッカアーム(3)のプッシュロッド(33)と重なる位置に配置されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 オイル消費を低減することができる。
図2に例示するように、ブローバイガス出口(6)側のロッカアーム(3)で跳ね上げられたオイルがブリーザ室(4)の底壁(4a)に沿うブローバイガス(11)の流れに乗っても、この流れがオイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)で遮られ、ブローバイガス入口(5)へのオイル進入量が減少し、ブリーザ室(4)へのオイル進入量が適正化され、シリンダヘッドカバー(2)外へのオイルの流出が抑制され、オイル消費を低減することができる。
【0011】
《効果》 シリンダヘッドカバーからのエンジン騒音の放出を低減することができる。
図2に例示するように、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、ブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設されているので、ブリーザ室(4)の底壁(4a)の剛性が高まり、底壁(4a)が振動しにくく、この振動を媒介とするシリンダヘッドカバー(2)からのエンジン騒音の放出を低減することができる。
《効果》 ブローバイガスがオイル排出部のオイル排出口を経てオイル排出ガイド室に進入しない。
図10(A)(C) ,図12(A)に例示するように、オイル溜め(17)に溜められた分離オイル(18)にオイル排出部(16)のオイル排出口(16a)が浸漬されているので、オイル排出部(16)のオイル排出口(16a)が分離オイル(18)で塞がり、ブローバイガス(11)がオイル排出部(16)のオイル排出口(16a)を経てオイル排出ガイド室(7)に進入しない。
【0012】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ブローバイガスのオイル分離が促進される。
図3に例示するように、ブリーザ室(4)は、ブローバイガス入口(5)のある入口側オイル分離室(9)と、ブローバイガス迂回通路(10)を備えているので、ブローバイガス(11)は、入口側オイル分離室(9)とブローバイガス迂回通路(10)で連続的にオイル分離され、ブローバイガス(11)のオイル分離が促進される。
【0013】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 分離オイルを速やかにオイル排出ガイド室(7)に誘導することができる。
図3,9(A)に例示するように、分離オイル誘導路(13)は、始端部(13a)が入口側オイル分離室(9)に配置され、中間部(13b)がブローバイガス迂回通路(10)の始端部(10a)に配置され、終端部
(13c)が隔壁(12)の下方をくぐり抜けて、オイル排出ガイド室(7)まで導出されているので、分離オイル誘導路(13)を短く形成することができ、分離オイル(18)を速やかにオイル排出ガイド室(7)に誘導することができる。
【0014】
《効果》 ブローバイガスが短絡することがない。
図3,9(A)に例示するように、分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)は隔壁(12)の下方をくぐり抜けて、オイル排出ガイド室(7)まで導出されているので、隔壁(12)の下方をくぐり抜ける分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)が分離オイル(18)で塞がり、分離オイル誘導路(13)を介してオイル排出ガイド室(7)にブローバイガス(11)が短絡することがない。
【0015】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 分離オイルが速やかに誘導される。
図3,8(A)〜(C)に例示するように、分離オイル誘導路(13)は溝(14)で構成されているので、入口側オイル分離室(9)やブローバイガス迂回通路(10)の始端部(10a)で分離された分離オイル(18)が、溝(14)の上側開口から溝(14)内に速やかに流入し、かつ溝(14)内を小さい通路抵抗で通過し、分離オイル(18)が速やかに誘導される。
【0016】
《効果》 分離オイル(18)が再ミスト化されにくい。
図3,8(A)〜(C)に例示するように、分離オイル誘導路(13)が溝(14)で構成されている場合、分離オイル(18)が分離オイル誘導路(13)を通過する際に、ブローバイガス迂回通路(10)を通過するブローバイガス(11)と接触するおそれがあるが、請求項3の効果で説明した通り、分離オイル誘導路(13)を短く形成することができるので、分離オイル(18)がブローバイガス(11)と接触しにくく、再ミスト化されにくい。また、再ミスト化された場合でも、下流のブローバイガス迂回通路(10)で再分離される。このため、分離オイル(18)が再ミスト化されにくい。
【0017】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 分離オイルが再ミスト化されにくい。
図9(A)(B)に例示するように、分離オイル誘導路(13)はパイプ(15)で構成されているので、分離オイル誘導路(13)は上面が覆われ、分離オイル誘導路(13)に導入された分離オイル(18)が、ブローバイガス迂回通路(10)を通過するブローバイガス(11)と接触せず、分離オイル(18)が再ミスト化されにくい。
【0018】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 分離オイルがスムーズに排出される。
図10(A)に例示するように、オイル排出ガイド面(7b)は、分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)からオイル排出部(16)に向けて下り傾斜しているので、分離オイル(18)がスムーズに排出される。
その理由は、オイル排出ガイド面(7b)の下り傾斜した表面には、傾斜を流れ落ちる分離オイル(18)で切れ間のない油膜が形成され、後続の分離オイル(18)が油膜の表面をスムーズに滑り落ちるためと推定される。
【0019】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項3から請求項5のいずれかに係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジン傾斜時に分離オイルがオイル排出ガイド面を逆流しにくい。
図11(A)に例示するように、オイル排出ガイド面(7b)は、分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)からオイル排出部(16)に下る階段状のジグザグ面で構成されているので、エンジンがオイル排出ガイド面(7b)側に傾斜しても、分離オイル(18)がジクザグ面で構成されたオイル排出ガイド面(7b)の窪みに溜まり、エンジン傾斜時に分離オイル(18)がオイル排出ガイド面(7b)を逆流しにくい。
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図14は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図であり、この実施形態では、立形の直列2気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0023】
この実施形態のエンジンの概要は、次の通りである。
図2に示すように、シリンダブロック(図外)の上部にシリンダヘッド(1)が組み付けられ、シリンダヘッド(1)の上部にシリンダヘッドカバー(2)が組み付けられている。クランク軸(図外)の架設方向を前後方向として、その一方を前、他方を後とする。
シリンダブロック(図外)の下部にはオイルパン(図外)が組み付けられている。
【0024】
図2に示すように、シリンダヘッド(1)にはうず室(図外)が設けられ、このうず室(図外)に燃料噴射ポンプ(図外)から燃料噴射管(図外)と燃料噴射ノズル(図外)を介して燃料が噴射される。
【0025】
図7に示すように、シリンダヘッドカバー(2)内には、吸気及び排気の弁装置(32)が収容され、この弁装置(32)が動弁装置(33)で駆動される。動弁装置(33)は、動弁カム(図外)とタペット(図外)とプッシュロッド(33c)とロッカアーム(3)を備えている。プッシュロッド(33c)は
図4に示すプッシュロッド室(33d)に収容されている。クランクケース(図外)内のブローバイガス(11)は、プッシュロッド室(33d)を介してシリンダヘッドカバー(2)内に進入する。
【0026】
図1に示すように、シリンダヘッドカバー(2)内にブリーザ室(4)の底壁(4a)が下側から組み付けられ、シリンダヘッドカバー(2)の天井壁(2a)に給油孔(2b)が開口され、この給油孔(2b)が着脱自在の蓋(2c)で塞がれている。
ブリーザ室(4)の底壁(4a)は合成樹脂製である。シリンダヘッドカバー(2)はアルミダイカスト製である。
【0027】
図2に示すように、このエンジンは、シリンダヘッド(1)と、シリンダヘッド(1)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(2)と、シリンダヘッドカバー(2)で覆われたロッカアーム(3)と、シリンダヘッドカバー(2)内に配置されたブリーザ室(4)を備えている。
このため、ロッカアーム(3)で跳ね上げられたオイルがブローバイガス(11)と共にブリーザ室(4)を通過し、ブリーザ室(4)でブローバイガス(11)からオイルが分離され、シリンダヘッドカバー(2)外へのオイルの流出が抑制され、オイル消費を抑制することができる。
【0028】
図2,3に示すように、シリンダヘッドカバー(2)の長手方向を前後方向として、ブリーザ室(4)は、前側にブローバイガス入口(5)を、後側にブローバイガス出口(6)を、前後方向中間位置にオイル排出ガイド室(7)をそれぞれ備えている。後側にブローバイガス入口(5)を、前側にブローバイガス出口(6)を配置してもよい。
図2,4に示すように、ブローバイガス入口(5)は、ブリーザ室(4)の底壁(4a)に開口され、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、ブローバイガス出口(6)側のロッカアーム(3)とブローバイガス入口(5)の間に向けて、ブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設されている。
【0029】
このため、
図2に示すように、ブローバイガス出口(6)側のロッカアーム(3)で跳ね上げられたオイルがブリーザ室(4)の底壁(4a)に沿うブローバイガス(11)の流れに乗っても、この流れがオイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)で遮られ、ブローバイガス入口(5)へのオイル進入量が減少し、ブリーザ室(4)へのオイル進入量が適正化され、シリンダヘッドカバー(2)外へのオイルの流出が抑制され、オイル消費を低減することができる。また、ブリーザ室(4)の底壁(4a)の剛性が高まり、底壁(4a)が振動しにくく、この振動を媒介とするシリンダヘッドカバー(2)からのエンジン騒音の放出を低減することができる。
【0030】
図2,3に示すように、ブローバイガス入口(5)にはリード弁(5a)が取り付けられている。開いたリード弁(5a)はストッププレート(5b)で受け止められる。入口側オイル分離室(9)では、ブローバイガス入口(5)から進入したブローバイガス(11)に含まれるオイルミストをリード弁(5a)に衝突させてオイル分離するとともに、室壁でオイルミストを凝縮させてオイル分離する。
ブローバイガス入口(5)側のロッカアーム(3)とブローバイガス入口(5)との間に向けて、ブリーザ室(4)の底壁(4a)から邪魔板(45)が下向きに突設している。このため、ブリーザ室(4)の底壁(4a)に沿うブローバイガス(11)の流れが邪魔板(45)に遮られ、ブローバイガス入り口(5)へのオイル進入量が減少する。邪魔板(45)はブリーザ室(4)の底壁(4a)と一体成型されている。
【0031】
図2,3に示すように、ブリーザ室(4)は、ブローバイガス入口(5)のある入口側オイル分離室(9)と、ブローバイガス迂回通路(10)を備え、入口側オイル分離室(9)を出たブローバイガス(11)がブローバイガス迂回通路(10)を介してオイル排出ガイド室(7)に導入されるように構成されている。
このため、ブローバイガス(11)は、入口側オイル分離室(9)とブローバイガス迂回通路(10)で連続的にオイル分離され、ブローバイガス(11)のオイル分離が促進される。
入口側オイル分離室(9)は前後方向に長く形成され、ブローバイガス迂回通路(10)は横方向に長く形成され、これらは入口側オイル分離室(9)の後部の開口(9a)で相互に連通し、ブローバイガス迂回通路(10)では開口(9a)から進入したブローバイガス(11)に含まれるオイルミストを通路壁で凝縮させて、オイル分離を行う。
入口側オイル分離室(9)とブローバイガス迂回通路(10)とを区画する第1の隔壁(46)は、横方向に長く形成され、シリンダヘッドカバー(2)と一体成型で天井壁(2a)から下向きに突設されている。
【0032】
図3に示すように、ブリーザ室(4)は、ブローバイガス迂回通路(10)とオイル排出ガイド室(7)を仕切る隔壁(12)と、分離オイル誘導路(13)を備え、分離オイル誘導路(13)は、始端部(13a)が入口側オイル分離室(9)に配置され、中間部(13b)がブローバイガス迂回通路(10)の始端部(10a)に配置され、終端部(13c)が隔壁(12)の下方をくぐり抜けて、オイル排出ガイド室(7)まで導出されている。
このため、分離オイル誘導路(13)を短く形成することができ、分離オイル(18)を速やかにオイル排出ガイド室(7)に誘導することができる。
また、隔壁(12)の下方をくぐり抜ける分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)が分離オイル(18)で塞がり、分離オイル誘導路(13)を介してオイル排出ガイド室(7)にブローバイガス(11)が短絡することがない。
ブローバイガス迂回通路(10)とオイル排出ガイド室(7)を仕切る第2の隔壁(12)は横方向に長く形成され、シリンダヘッドカバー(2)と一体成型で天井壁(2a)から下向きに突設されている。
【0033】
図3に示すように、分離オイル誘導路(13)は溝(14)で構成されている。
このため、入口側オイル分離室(9)やブローバイガス迂回通路(10)の始端部(10a)で分離された分離オイル(18)が、溝(14)の上側開口から溝(14)内に速やかに流入し、かつ溝(14)内を小さい通路抵抗で通過し、分離オイル(18)が速やかに誘導される。
また、分離オイル誘導路(13)が溝(14)で構成されている場合、分離オイル(18)が分離オイル誘導路(13)を通過する際に、ブローバイガス迂回通路(10)を通過するブローバイガス(11)と接触するおそれがあるが、先に説明した通り、分離オイル誘導路(13)を短く形成することができるので、分離オイル(18)がブローバイガス(11)と接触しにくく、再ミスト化されにくい。また、再ミスト化された場合でも、下流のブローバイガス迂回通路(10)で再分離される。このため、分離オイル(18)が再ミスト化されにくい。
【0034】
溝(14)は、
図8(A)に示す基本例では、断面半円形に形成されている。
溝(14)は、
図8(B)に示す第1変形例のように、断面楔形に形成され、内底面がブローバイガス迂回通路(10)の終端部(10b)側に向けて次第に浅くなっているものであってもよい。
溝(14)は、
図8(C)に示す第2変形例のように、断面フラスコ形に形成され、下半部(14a)は上半部(14b)よりも幅広とされ、広い通路断面積の下半部(14a)で分離オイル(18)が速やかに誘導されるとともに、狭い開口面積の上半部(14b)では分離オイル(18)とブローバイガス(11)が接触しにくく、ブローバイガス(11)で分離オイル(18)が再ミスト化されにくいものであってもよい。
【0035】
分離オイル誘導路(13)は、
図9(A)(B)に示す第3変形例のように、パイプ(15)で構成されたものであってもよい。
この場合、分離オイル誘導路(13)は上面が覆われ、分離オイル誘導路(13)に導入された分離オイル(18)が、ブローバイガス迂回通路(10)を通過するブローバイガス(11)と接触せず、ブローバイガス迂回通路(10)で分離オイル(18)が再ミスト化されにくい。
パイプ(15)は、ブローバイガス迂回通路(10)の終端部(10b)側にも設けることができる。このブローバイガス迂回通路(10)の終端部(10b)側に配置されるパイプ(15)の分離オイル誘導路(13)は、始端部(13a)が入口側オイル分離室(9)に配置され、中間部(13b)がブローバイガス迂回通路(10)の終端部(10b)に配置され、終端部(13c)が隔壁(12)の下方をくぐり抜けて、オイル排出ガイド室(7)まで導出されている。
【0036】
図10(A)に示すように、ブリーザ室(4)はオイル排出ガイド室(7)の下部にオイル排出部(16)を備え、オイル排出ガイド室(7)は内周にオイル排出ガイド面(7b)を備え、オイル排出ガイド面(7b)は、分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)からオイル排出部(16)に向けて下り傾斜している。
このため、分離オイル(18)がスムーズに排出される。
その理由は、オイル排出ガイド面(7b)の下り傾斜した表面には、傾斜を流れ落ちる分離オイル(18)で切れ間のない油膜が形成され、後続の分離オイル(18)が油膜の表面をスムーズに滑り落ちるためと推定される。
オイル排出ガイド面(7b)は、
図9(A)に示す基本例では、凹凸のない平坦な傾斜面とされている。
オイル排出ガイド室(7)は横方向に長く形成され、オイル排出ガイド室(7)の室壁とオイル排出部(16)とは、ブリーザ室(4)の底壁(4a)と一体成型で、底壁(4a)から下向きに突設されている。
【0037】
オイル排出ガイド面(7b)は、
図11(A)に示す第1変形例のように、分離オイル誘導路(13)の終端部(13c)からオイル排出部(16)に下る階段状のジグザグ面で構成されているものであってもよい。
この場合、エンジンがオイル排出ガイド面(7b)側に傾斜しても、分離オイル(18)がジクザグ面で構成されたオイル排出ガイド面(7b)の窪みに溜まり、エンジン傾斜時に分離オイル(18)がオイル排出ガイド面(7b)を逆流しにくい。
【0038】
オイル排出ガイド面(7b)は、
図11(B)に示す第2変形例のように、前側から見て、分離オイル誘導路(13)の終端部
(13c)からオイル排出部(16)に向かう下り傾斜の接線を有するサイクロイド曲線の湾曲面で構成されているものであってもよい。
この場合、分離オイル(18)がスムーズに排出される。
その理由は、オイル排出ガイド面(7b)の下り湾曲面の表面には、下り湾曲面を流れ落ちる分離オイル(18)で切れ間のない油膜が形成され、後続の分離オイル(18)が油膜の表面を最短距離でスムーズに滑り落ちるためと推定される。
【0039】
オイル排出ガイド面(7b)は、
図11(C)(D)に示す第3変形例のように、分離オイル誘導路(13)の終端部
(13c)からオイル排出部(16)に向かう下窄まりの漏斗状湾曲面となっているものであってもよい。
この場合、エンジンがどの方向に傾斜しても、分離オイル(18)が下り傾斜状のオイル排出ガイド面(7b)をスムーズに流れ落ちる利点がある。
【0040】
図10(A)(C)に示すように、ブリーザ室(4)はオイル排出ガイド室(7)の下部にオイル排出部(16)を備え、シリンダヘッド(1)はオイル溜め(17)を備え、オイル溜め(17)に溜められた分離オイル(18)にオイル排出部(16)のオイル排出口(16a)が浸漬されている。
このため、オイル排出部(16)が分離オイル(18)で塞がり、ブローバイガス(11)がオイル排出部(16)を経てオイル排出ガイド室(7)に進入する不具合が防止される。
図2に示すように、複数のロッカアーム(3)(3)中に、オイル排出ガイド室(7)を間に挟んで、ブローバイガス入口(5)と前後方向反対側に位置する所定のロッカアーム(3)を備え、図6,7に示すように、前後方向に平行な向きに見て、オイル排出ガイド室(7)の周壁(7a)は、前記所定のロッカアーム(3)の入力揺動端部(3a)と重なる位置までブリーザ室(4)の底壁(4a)から下向きに突設されるとともに、筒状のオイル排出部(16)は、前後方向に平行な向きに見て、前記所定のロッカアーム(3)のプッシュロッド(33)と重なる位置に配置されている。
【0041】
オイル排出部(16)は、
図10(A)(C)に示す基本例では、内周面が凹凸のない円柱周面形状とされている。
オイル排出部(16)は、
図12(A)(B)に示す第1変形例のように、円柱周面形状の内周面に軸長方向に沿う流下オイル案内溝(16b)を備えているものであってもよい。流下オイル案内溝(16b)は周方向に所定間隔を保持して、複数本形成する。
この場合、オイル排出部(16)を流下する分離オイル(18)が流下オイル案内溝(16b)で鉛直下向きに案内され、オイル排出部(16)からスムーズに排出される。
【0042】
オイル排出部(16)は、
図12(C)〜(E)に示す第2変形例のように、下端部に逆止弁(34)が設けられ、ブリーザ室(4)の内外の差圧が大きく、逆止弁(34)が閉じている場合は、オイル排出部(16)からオイル排出ガイド室(7)へのブローバイガス(11)の進入が防止され、ブリーザ室(4)の内外の差圧が小さく、逆止弁(34)上に溜まる分離オイル(18)の荷重で逆止弁(34)が開弁されると、オイル排出部(16)から分離オイル(18)が排出されるものであってもよい。
逆止弁(34)は、ゴム製で、スリット状の弁口(34a)が設けられ、
図12(C)(D)に示す閉弁時は逆止弁(34)の弾性力で弁口(34a)が閉じられ、
図12(E)に示す開弁時は分離オイル(18)の荷重で弁口(34a)が押し開かれるものを用いることができる。
オイル排出部(16)の第2変形例を用いると、基本例や第1変形例で用いたシリンダヘッド(1)のオイル溜め(17)を設ける必要がなくなる。オイル排出部(16)の
図12(F)に示す第3変形例、
図13(A)(B)に示す第4変形例、
図13(C)に示す第5変形例の場合も同様である。
【0043】
オイル排出部(16)は、
図12(F)に示す第3変形例のように、下端部にオリフィス(35)が設けられ、オリフィス(35)上に分離オイル(18)を溜めながら、分離オイル(18)を徐々に流出させ、オリフィス(35)を分離オイル(18)で塞いで、オイル排出部(16)を経てオイル排出ガイド室(7)にブローバイガス(11)を進入させないものであってもよい。
【0044】
オイル排出部(16)は、
図13(A)(B)に示す第4変形例のように、下端部の内周面から上下一対の下り傾斜状の邪魔板(36)が突設され、邪魔板(36)上に分離オイル(18)を溜めながら、分離オイル(18)を徐々に流出させ、オイル排出部(16)を分離オイル(18)で塞いで、オイル排出部(16)を経てオイル排出ガイド室(7)にブローバイガス(11)を進入させないものであってもよい。
【0045】
オイル排出部(16)は、
図13(C)に示す第5変形例のように、上端部に径大室(37)が設けられ、径大室(37)の上部にオリフィス(37a)を備えた天井(37b)が設けられているものであってもよい。
この第5変形例の場合、通常は分離オイル(18)がオリフィス(37a)を通過後、径大室(37)を経て、オイル排出部(16)へ流れる。この際、オイル排出部(16)には分離オイル(18)が溜まっているため、オイル排出ガイド室(7)にブローバイガス(11)が進入する不具合を防止することができる。また、オイル排出ガイド室(7)が急激に減圧され、分離オイル(18)がオイル排出部(16)から径大室(37)に吸い上げられて逆流しても、分離オイル(18)が径大室(37)の大きな空間からオリフィス(37a)を通過する過程で、抵抗を受け、オイル排出ガイド室(7)への吸い上げが防止される。
【0046】
図3に示すように、ブローバイガス出口(6)を備えた出口側オイル分離室(6a)とオイル排出ガイド室(7)との間は隔壁(39)で区画され、これらは横一側の連通口(40)で相互に連通し、出口側オイル分離室(6a)ではブローバイガス(11)に含まれるオイルミストを室壁で凝縮させて、ブローバイガス(11)のオイル分離を行う。
出口側オイル分離室(6a)は横方向に長く形成されている。出口側オイル分離室(6a)とオイル排出ガイド室(7)との間を区画する第3の隔壁(39)は、横方向に長く形成され、ブリーザ室(4)の底壁(4a)と一体成型で、底壁(4a)から上向きに突設されている。
【0047】
ブリーザ室(4)の内面、ブリーザ室(4)の底壁(4a)の上面、
分離オイル誘導路(13)を構成する溝(14)の内周面、
分離オイル誘導路(13)を構成するパイプ(15)の内周面、オイル排出ガイド室(7)の内面、オイル排出ガイド面(7b)、オイル排出部(16)の内周面の全部または一部には、次のような表面処理を行うことができる。
フッ素樹脂等の撥油層を設ける。この場合、分離オイル(18)が撥油層の表面を速やかに通過し、分離オイル(18)が速やかに排出される。
シボ加工を行う。この場合、加工面のオイル保持性が高まり、加工面を流れる分離オイル(18)で切れ間のない油膜が形成され、後続の分離オイル(18)が油膜の表面をスムーズに通過し、分離オイル(18)が速やかに排出される。
シボ(38)は、
図14(A)に示す基本例では、クロスハッチング溝が用いられている。シボ(38)は、
図14(B)に示す第1変形例のような亀甲溝、
図14(C)に示す第2変形例のようなオイル排出ガイド面(7b)の傾斜に沿う平行溝であってもよい。