(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の運転状態に基づいて、該内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁の開閉を制御する燃料噴射制御部と、該内燃機関の振動を検出するノックセンサから出力されるノックセンサ信号に基づいて、ノックの有無を判定するノック判定部とを備える内燃機関の制御装置であって、
前記ノック判定部は、前記燃料噴射弁の開弁又は閉弁の振動が存在するノイズ期間の現在の行程におけるノックセンサ信号と過去の行程におけるノックセンサ信号との類似度に基づいて、前記ノイズ期間の現在の行程におけるノックの有無を判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
内燃機関の運転状態に基づいて、該内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁の開閉を制御する燃料噴射制御部と、該内燃機関の振動を検出するノックセンサから出力されるノックセンサ信号に基づいて、ノックの有無を判定するノック判定部とを備える内燃機関の制御装置であって、
前記ノック判定部は、過去の行程における前記ノックセンサ信号と現在の行程における前記ノックセンサ信号を、それぞれ前記燃料噴射弁の開弁の振動が存在する開弁ノイズ期間と前記燃料噴射弁の閉弁の振動が存在する閉弁ノイズ期間に分割し、
過去の行程と現在の行程における前記開弁ノイズ期間の前記ノックセンサ信号の類似度、並びに、過去の行程と現在の行程における前記閉弁ノイズ期間の前記ノックセンサ信号の類似度から、現在の行程における前記開弁ノイズ期間および前記閉弁ノイズ期間におけるノックの有無を判定することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では通常、ノックの有無を判定するノック判定が行われ、その結果に応じて点火時期等を調整するノック制御が実施されている。
【0003】
このノック判定は、シリンダブロック等に配設された振動検出センサであるノックセンサを用いて行われ、各気筒の着火後のノックが発生しやすい所定期間を、ノック判定期間として設定し、そのノック判定期間におけるノックセンサの出力信号(ノックセンサ信号)に基づいて、ノックの有無を判定するようにしている。
【0004】
内燃機関の特性として、点火時期を進角させると、内燃機関の出力トルクは向上するがノックは発生し易くなる。逆に、点火時期を遅角させると、内燃機関の出力トルクは低下するがノックは発生し難くなる。
【0005】
そのため、従来から、上記したノック判定により、ノックが検出された場合には、点火時期を遅角側に補正することでノックを抑制し、ノックが検出されない場合には、点火時期を進角側に復帰させて、トルク低下を最小限に抑えるノック制御装置が適用されている。
【0006】
上記ノック制御装置によって、ノックを抑制しつつ最大トルクを出力するノック限界の点火時期で、内燃機関を運転することが可能となる。
【0007】
上記ノック制御装置においては、設定されたノック判定期間における振動強度のピーク値や、振動を周波数分析して得られる特定周波数成分の大きさ等から、ノックの有無を判定する方法が知られている。
【0008】
しかしながら、内燃機関の運転状態によっては、ノックに起因しない振動(ノイズ振動)が、ノック判定期間におけるノックセンサの出力信号に重畳することがある。この場合、ノックの誤検出や検出漏れが発生する可能性があり、実際のノック振動を正確に検出することが困難になる。
【0009】
その一例として、内燃機関の燃焼室に燃料噴射を行う燃料噴射弁(インジェクタともいう)は、その動作に伴い、着座時の着打音などのノイズ振動(インジェクタノイズ)を発生させ、そのインジェクタノイズがノック判定期間におけるノックセンサの出力信号に重畳することで、ノックの有無を誤判定してしまうことがある。
【0010】
その結果、ノックが発生していないにも関わらず、不要に点火時期を遅角側へ補正してしまい、トルク低下、燃費悪化に繋がるおそれがある。
【0011】
このように、インジェクタノイズを考慮することなく、燃料噴射時期とノック判定期間を設定すると、ノック判定期間にインジェクタノイズが重畳し、ノックの有無の誤判定が発生する可能性があり、インジェクタノイズの影響によって、ノック判定の精度が低下する。
【0012】
このような問題に対し、特許文献1に記載の従来技術では、デフォルト設定のノック判定期間が、インジェクタからの燃料噴射期間に重なってしまう機関運転条件では、ノック判定期間をそのデフォルト設定よりも短縮して、燃料噴射期間とノック判定期間との重なりを解消するように、燃料噴射時期とノック判定期間とを互いに関連付けて設定するようにしている。
【0013】
この従来技術によって、インジェクタノイズがノック判定期間のノックセンサの出力信号に重畳することが回避され、そのノイズに起因したノック判定の精度低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る内燃機関の制御装置(以下「エンジンコントロールユニット(ECU)」という。)の一実施形態とそれが適用された火花点火内燃機関(以下「エンジン」という。)の基本構成を示した構成図である。以下、本説明では、筒内噴射式火花点火内燃機関について説明を進めていくが、本発明は、ポート噴射式火花点火内燃機関や、筒内噴射とポート噴射の両方を備えたデュアル噴射式火花点火内燃機関においても適用可能であることは勿論である。
【0023】
図示するように、エンジン1には、基本的に、ピストン2、吸気バルブ3、排気バルブ4が備えられ、吸気は、空気流量計(AFM)18を通過して絞り弁17に入り、分岐部であるコレクタ14より吸気管10、吸気バルブ3を介してエンジン1の燃焼室19に供給される。燃料は、燃料噴射弁(インジェクタ)5から、エンジン1の燃焼室19に噴射供給され、点火コイル7および点火プラグ6で点火される。燃焼後の排気ガスは、排気バルブ4を介して排気管11に排出される。排気管11には、排気ガス中の空燃比を検出する空燃比センサ13が備えられると共に、排気ガス浄化のための三元触媒12が備えられている。エンジンコントロールユニット(ECU)9には、エンジン1の回転数を計測すべくエンジン1のシグナルプレート16に配設されたクランク角度センサ15の信号、AFM18の空気量に関する信号、空燃比センサ13の空燃比に関する信号、アクセル開度センサ20のアクセル開度に関する信号等が入力される。ECU9は、アクセル開度センサ20の信号からエンジン1への要求トルクの算出、アイドル状態の判定等を行い、エンジン1に必要な吸入空気量を算出し、それに見合った開度信号を絞り弁17に出力する。また、ECU9は、燃料噴射弁5へ燃料噴射信号(燃料噴射弁5の開閉弁時期に関する制御信号)を出力すると共に、点火プラグ6へ点火信号(点火プラグ6の点火時期に関する制御信号)を出力する。
【0024】
さらに、エンジン1(のシリンダ)に取り付けられたノックセンサ8が、エンジン1の異常燃焼時に発生するノック(振動)を検出し、そのノックセンサ8から出力されるノックセンサ信号に基づいて、ECU9が、前記点火信号をフィードバック制御している。
【0025】
図2は、
図1に示すECU9の内部構成を示したブロック図である。
【0026】
ECU9は、入力回路101、A/D変換部102、中央演算部(CPU)103、ROM104、RAM105、および出力回路106等を含んだマイクロコンピュータにより構成されている。
【0027】
入力回路101は、入力信号100がアナログ信号である場合(例えば、AFM18、アクセル開度センサ20等からの信号である場合)、その信号からノイズ成分の除去等を行い、当該信号をA/D変換部102に出力するためのものである。
【0028】
A/D変換部102は、入力回路101から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのものである。
【0029】
CPU103は、A/D変換部102のA/D変換結果を取り込み、ROM104等の媒体に記憶された、燃料噴射制御プログラムやその他の制御プログラムを実行することによって、各制御及び診断等を実行する機能を備えている。なお、CPU103の演算結果、及び、前記A/D変換結果は、RAM105に一時保管されるとともに、その演算結果は、出力回路106を介して制御信号107として出力され、燃料噴射弁5、点火コイル7等の制御(燃料噴射弁5の開閉弁時期制御や点火プラグ6の点火時期制御)に用いられる。
【0030】
次に、
図3〜
図8を参照して、
図1に示すECU9によるエンジン1のノック判定について具体的に説明する。
【0031】
図3は、
図1に示すECU9の主要構成を示した制御ブロック図である。
【0032】
図示するように、ECU9は、主に、点火プラグ6の点火時期を制御する点火制御部211と、燃料噴射弁5の開閉を制御する燃料噴射制御部212と、エンジン1のノックの有無を判定するノック判定部210とを備えている。
【0033】
ノック判定部210は、ノック判定期間演算部200において、クランク角度センサ15から得られるエンジン回転数と点火制御部211から得られる点火時期を基に、ノック判定期間を算出し、ノック判定期間波形取得部201において、そのノック判定期間のノックセンサ信号(ノック判定期間波形)を取得する。そして、ノック判定期間ノック判定部202において、ノック判定期間のノックセンサ信号や、過去のノック判定期間のノックセンサ信号も含めて算出されたバックグラウンドレベル等から、ノック判定期間におけるノックの有無を判定する。
【0034】
また、ノック判定部210は、インジェクタノイズ波形取得期間演算部203において、燃料噴射制御部212から得られる開閉弁時期(すなわち、燃料噴射時期)を基に、インジェクタノイズ波形取得期間(燃料噴射弁5の開弁および閉弁の振動が存在する期間)を算出し、インジェクタノイズ波形取得部204において、そのインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号(インジェクタノイズ波形)を取得する。
【0035】
また、期間重複判定部205において、ノック判定期間演算部200で算出したノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間演算部203で算出したインジェクタノイズ波形取得期間との重複期間を算出すると共に、その重複期間が所定値より長いか否かを判定する。
【0036】
そして、ノック判定期間ノック判定部202において、ノック判定期間にノックが有ると判定され、かつ、期間重複判定部205において、ノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間との重複期間が所定値より長いと判定された場合、インジェクタノイズ波形取得期間ノック判定部206において、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無を判定する。なお、ノック判定期間ノック判定部202において、ノック判定期間にノックが無いと判定された場合、或いは、期間重複判定部205において、ノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間との重複期間が所定値以下であると判定された場合には、インジェクタノイズ波形取得期間ノック判定部206において、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無は判定しない(判定する必要は無い)。
【0037】
次に、インジェクタノイズ波形取得期間ノック判定部206による、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無の判定方法についてより具体的に説明する。
【0038】
図4は、4気筒の内燃機関における各気筒の燃焼行程と、#1気筒におけるノック判定期間とインジェクタノイズについて示した図である。
【0039】
#1気筒の圧縮行程での点火に対して、ノック判定期間は、#1気筒が膨張行程になる行程(概ねATDC10°〜60°の範囲)に設定される。
【0040】
点火気筒順序が#1、#3、#4、#2である内燃機関において、吸気行程で燃焼噴射弁5から燃料噴射を行う場合、#1気筒のノック判定期間のノックセンサ信号には、#4気筒のインジェクタノイズが重畳する可能性がある。
【0041】
現在の行程のインジェクタノイズにノックが重畳しているか否かを判定するため、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号と、前回#1気筒が膨張行程であった4つ前の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号を、それぞれ開弁ノイズ期間、閉弁ノイズ期間の2つの期間に分割し、開弁ノイズ期間どうし、閉弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数をそれぞれ算出する。
【0042】
離散時間信号x(k)とy(k)の相互相関関数φ
xy(τ)は、次の式(1)で定義されることが知られている。ここで、Nは、離散時間信号のデータ数、τは、ラグを意味する。
(数1)
【0043】
また、正規化相互相関関数R
xy(τ)は、次の式(2)で定義されることが知られている。
(数2)
【0044】
離散時間信号x(k)とy(k)の類似度が高いとき、正規化相互相関関数R
xy(τ)の最大値は大きくなる。
【0045】
図5は、4つ前の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号(インジェクタノイズ波形取得部204で取得した信号)、および現在の行程におけるノック判定期間(インジェクタノイズ波形取得期間を含む)のノックセンサ信号(インジェクタノイズ波形取得期間にノックが無い場合と有る場合)(ノック判定期間波形取得部201で取得した信号)を示した図である。
【0046】
図示するように、現在の行程と4つ前の行程で、インジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号を、それぞれ開弁ノイズ期間と閉弁ノイズ期間に分割し、開弁ノイズ期間どうし、閉弁ノイズ期間どうしで、正規化相互相関関数を算出する。なお、ノックセンサ信号を開弁ノイズ期間と閉弁ノイズ期間に分割するのは、各行程における燃料噴射量に応じて、開弁と閉弁の間隔が変化するためである。
【0047】
インジェクタノイズ波形取得期間にノックが有る場合(下段の図)に比べて、インジェクタノイズ波形取得期間にノックが無い場合(中断の図)の方が、4つ前の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号との類似度が高いため、前記した正規化相互相関関数の最大値は大きくなる。
【0048】
この開弁ノイズ期間および閉弁ノイズ期間の正規化相互相関関数の最大値が、ともに所定の閾値以上であるとき、現在の行程と4つ前の行程で、インジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号の類似度が高く、インジェクタノイズにノックが重畳していない、すなわち、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定することができる。一方で、この開弁ノイズ期間および閉弁ノイズ期間の正規化相互相関関数の最大値の一方もしくは両方が、所定の閾値未満であるとき、現在の行程と4つ前の行程で、インジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号の類似度が低く、インジェクタノイズにノックが重畳している、すなわち、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間にノックが有ると判定することができる。
【0049】
ここで、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定するための、正規化相互相関関数の最大値の閾値は、過去に同様にして算出された正規化相互相関関数の最大値を用いて、行程ごとに算出してもよいし、予めROMに設定した値でもよい。
【0050】
また、比較対象である4つ前の行程において、インジェクタノイズ波形取得期間にノックが有ると判定されている場合は、比較対象を8つ前の行程として、ノックが重畳していないインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号と、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号とを比較すればよい。
【0051】
図6は、4つ前の行程と現在の行程における開弁ノイズ期間のノックセンサ信号の正規化相互相関関数を示した図である。
【0052】
上記したように、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間の開弁ノイズ期間にノックが無い場合、ノックが有る場合と比較して、正規化相互相関関数の最大値が大きくなる。
【0053】
上記のインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定するための閾値を、適切に設定することで、そのインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無い場合、正規化相互相関関数の最大値が前記閾値以上となり、一方で、インジェクタノイズ波形取得期間にノックが有る場合、正規化相互相関関数の最大値が前記閾値未満となる。
【0054】
このようにインジェクタノイズ波形取得期間ノック判定部206で算出する正規化相互相関関数の最大値が閾値以上か否かを判定することで、開弁ノイズ期間におけるノックの有無を判定する。また、閉弁ノイズ期間についても、開弁ノイズ期間と同様にしてノックの有無を判定する。
【0055】
そして、開弁ノイズ期間、閉弁ノイズ期間でともにノックが無いと判定された場合、現在の行程におけるインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定することができる。
【0056】
ここで、インジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定するための閾値は、開弁ノイズ期間と閉弁ノイズ期間で別個の値を設定してもよいことは当然である。
【0057】
図7は、ノックセンサ信号、開弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値、閉弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値、およびインジェクタノイズ波形取得期間のノック判定結果のタイムチャートを示した図である。
【0058】
図4で示した条件の場合、#1気筒の膨張行程に設定されるノック判定期間に、#4気筒のインジェクタノイズが重畳する可能性がある。そのため、
図7では、#1気筒の燃焼行程および#4気筒の燃焼行程のみを図示し、その時のノックセンサ信号、開弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値、閉弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値、インジェクタノイズ波形取得期間のノック判定結果を図示している。以下、それらの関連について説明する。
【0059】
インジェクタノイズ波形取得期間ノック判定部206によるインジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無の判定は、その行程におけるノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間の両方が終了した後に実施される。
【0060】
図7に示す例では、#1気筒の膨張行程と排気行程の切り替わり時に、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無の判定を行っている。
【0061】
インジェクタノイズにノックが重畳した時のノックセンサ信号が、
図5の下段で示したインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号(インジェクタノイズ波形取得期間にノックが有る場合)である場合、インジェクタノイズにノックが重畳しない場合と比較して、開弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値が大きく低下する。
【0062】
そのため、それまでインジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定するための閾値以上であった、開弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値が、前記閾値未満の値となる。それに伴い、インジェクタノイズ波形取得期間のノック判定結果が「ノック有り」となる。
【0063】
なお、上記した例は、インジェクタノイズ波形取得期間の開弁ノイズ期間にノックが重畳する場合であるが、閉弁ノイズ期間にノックが重畳する場合は、閉弁ノイズ期間どうしの正規化相互相関関数最大値が、インジェクタノイズ波形取得期間にノックが無いと判定するための閾値未満となり、インジェクタノイズ波形取得期間のノック判定結果が「ノック有り」となる。
【0064】
図8は、
図1に示すECU9によるノック判定処理のフローチャートを示したフロー図である。
【0065】
まず、ノック判定期間におけるノック判定で、ノックが有ると判定されたか否かを判定し(S801)、ノックが無いと判定された場合、インジェクタノイズがノック判定期間に重畳することによるノックの誤検出の可能性が無いため、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無を判定する必要が無いので、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノック判定処理は終了する。
【0066】
一方、ノック判定期間におけるノック判定で、ノックが有ると判定された場合、ノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間の重複期間が所定値より長いか否かを判定する(S802)。その重複期間が所定値以下である場合、ノック判定期間にインジェクタノイズが重畳していない或いはほとんど重畳していないため、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無を判定する必要が無いので、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノック判定処理は終了する。
【0067】
一方、ノック判定期間とインジェクタノイズ波形取得期間の重複期間が所定値より長い場合、4つ前の行程と現在の行程で、インジェクタノイズ波形取得期間における開弁ノイズ期間のノックセンサ信号の正規化相互相関関数の最大値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(S803)。また、同様に、インジェクタノイズ波形取得期間における閉弁ノイズ期間のノックセンサ信号の正規化相互相関関数の最大値が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(S804)。
【0068】
開弁ノイズ期間、閉弁ノイズ期間でともに、正規化相互相関関数の最大値が所定の閾値以上である場合、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックが無いと判定し(S805)、開弁ノイズ期間、閉弁ノイズ期間のいずれかで所定の閾値未満である場合、インジェクタノイズ波形取得期間におけるノックが有ると判定する(S806)。
【0069】
上記のような方法で、インジェクタノイズ波形取得期間(すなわち、インジェクタノイズとノックが重なる可能性がある期間)において、ノックの有無を判定することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、4つ前の行程と現在の行程との、インジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号の正規化相互相関関数を用いて、現在の行程のインジェクタノイズ波形取得期間におけるノックの有無を判定しているが、判定の方法は、これに限られたものではなく、4つ前の行程と8つ前の行程との、インジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号の正規化相互相関関数を用いたり、同様にさらに前の行程のインジェクタノイズ波形取得期間のノックセンサ信号を用いて判定したりしてもよい。
【0071】
また、現在の行程でノック判定期間を設定している気筒だけでなく、他の気筒で過去に同様に算出された正規化相互相関関数を用いて判定してもよい。
【0072】
また、全気筒で同じ方法で判定するのではなく、気筒ごとに判定実施の有無を設定したり、判定方法を変更したりしてもよいことは言うまでも無い。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0074】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。