(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るレーザ加工ヘッド10について説明する。
【0014】
なお、以下の説明において、軸方向は、レーザ加工ヘッド10内を伝搬するレーザ光の光軸Oに沿う方向を示す。また、周方向は、光軸Oを中心とする円の円周方向を示し、径方向は、光軸Oを中心とする円の半径方向を示す。
【0015】
レーザ加工ヘッド10は、光ファイバAを介して、レーザ発振器(図示せず)に光学的に接続されており、該レーザ発振器から出射されたレーザ光を受光し、受光した該レーザ光を集光して、ワークWへ照射する。
【0016】
レーザ加工ヘッド10は、接続部12、本体部14、光学部材16、ノズル18、循環路20、およびクーラント循環装置22を備える。接続部12には、光ファイバAが接続されている。接続部12は、光ファイバA内を伝搬したレーザ光を受光し、光学部材16へ向かって導光する。
【0017】
本体部14は、中空部材であって、その内部にレーザ光の光路を画定している。本体部14は、光学部材16を保持している。光学部材16は、例えば、フォーカスレンズ等を有し、本体部14の内部に画定されたレーザ光の光路上に、配置されている。光学部材16は、接続部12から伝搬するレーザ光を集光し、ノズル18へ向かって導光する。
【0018】
ノズル18は、光学部材16によって集光されたレーザ光を、ワークWへ向かって出射する。このようにワークW上へ照射されたレーザ光によって、ワークWがレーザ加工される。
【0019】
循環路20は、液体または気体のクーラントを循環させるための、閉じられた流路である。本実施形態においては、循環路20は、本体部14に形成された穴によって画定され、光学部材16を取り囲むように周方向へ延びている。クーラントは、例えば、水、ロングライフクーラント、または防食材の添加された溶液を含む。
【0020】
クーラント循環装置22は、例えば電動ポンプであって、循環路20に配置された回転体と、該回転体を回転させるモータとを有する。クーラント循環装置22は、循環路20内に封入された流体に圧力変動を生じさせ、循環路20内の流体を流動させる。これにより、クーラントは循環路20内を循環する。
【0021】
このように、循環路20は、レーザ加工ヘッド10の外部に設置された外部機器(例えばクーラント供給装置)に流体的に接続されることなく、該循環路20の内部に流体を封入することができ、封入した流体を流動させた場合に該流体を循環させることのできる、閉流路である。
【0022】
光ファイバAから接続部12にてレーザ光を受光すると、レーザ光に含まれる散乱光が、該接続部12に入射して吸収される。これにより、接続部12が発熱する。また、光学部材16に入射したレーザ光が該光学部材16に吸収され、該光学部材16が発熱する。
【0023】
このように、レーザ加工ヘッド10内の光路を伝搬するレーザ光によって、該レーザ加工ヘッドの構成部材が発熱する。このように発生した熱を除去するために、循環路20内にクーラントを封入し、クーラント循環装置22によって、該クーラントを循環路20内で循環させる。
【0024】
次に、
図3および
図4を参照して、本発明の他の実施形態に係るレーザ加工ヘッド30について説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、既述の実施形態と同様の要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】
レーザ加工ヘッド30は、接続部12、本体部32、光学部材16、ノズル18、循環路34、およびクーラント循環装置22を備える。循環路34は、上述の循環路20と同様に、クーラントを循環させるための、閉じられた流路である。
【0026】
本実施形態においては、循環路34は、本体部32の周囲に取り付けられた、該本体部32とは別体の管によって画定されている。循環路34は、光学部材16を取り囲むように、周方向に延在している。クーラント循環装置22は、循環路34内に封入された流体を循環させる。
【0027】
次に、
図5を参照して、本発明のさらに他の実施形態に係るレーザ加工ヘッド40について説明する。レーザ加工ヘッド40は、接続部12、本体部32、光学部材16、ノズル18、循環路42、およびクーラント循環装置22を備える。
【0028】
循環路42は、上述の循環路20、34と同様に、クーラントを循環させるための、閉じられた流路である。本実施形態においては、循環路42は、接続部12の周囲に取り付けられた、該接続部12とは別体の管によって画定されている。
【0029】
循環路42は、接続部12の径方向外側の位置で、周方向に延在している。クーラント循環装置22は、循環路42内に封入された流体を循環させる。なお、循環路42は、接続部12に形成された穴によって画定されてもよい。
【0030】
上述したレーザ加工ヘッド10、30、40においては、循環路20、34、42が閉じられた流路として構成されている。したがって、クーラント循環装置22を動作させることによって、クーラントを、レーザ加工ヘッド10、30、40内で循環させ、これにより、レーザ加工ヘッド10、30、40に生じた熱を除去することができる。
【0031】
この構成によれば、クーラントを循環路20、34、42に外部機器(クーラント供給装置)から供給する必要がないので、循環路20、34、42に、外部機器から延びるクーラント供給管等の部材を接続するジョイント部を設ける必要もない。
【0032】
したがって、該ジョイント部からクーラント供給管を取り外す作業、または、該ジョイント部とクーラント供給管との取付不良等によって、クーラントが漏出する可能性を排除できる。これにより、クーラントの漏出によって光学部品16等の部材が汚染されてしまうのを、確実に防止できる。
【0033】
また、循環路20、34、42に外部機器からクーラントの供給をすることがないので、使用者は、外部機器から供給されるクーラントの品質管理(例えば、温度、pH値)を行う必要がない。その一方で、使用者は、循環路20、34、42内のクーラントを定期的に交換することで、クーラントの品質を容易に管理できる。
【0034】
また、循環路20および34は、光学部材16を取り囲むように配置され、循環路42は、接続部12を取り囲むように配置されている。この構成によれば、レーザ加工ヘッド10、30、40内を伝搬するレーザ光によって発熱し易い部分を、効果的に冷却することができる。
【0035】
次に、
図6および
図7を参照して、さらに他の実施形態に係るレーザ加工ヘッド50について説明する。レーザ加工ヘッド50は、接続部52、本体部54、光学部材16、ノズル18、循環路56、クーラント循環装置22、放熱フィン57、ファン60、温度検出部62、および制御部64を備える。
【0036】
制御部64は、CPUおよび記憶部(ともに図示せず)等を有し、レーザ加工ヘッド50の各構成要素を、直接的または間接的に制御する。制御部64は、本体部54に取り付けられている。
【0037】
接続部52は、光ファイバA内を伝搬したレーザ光を受光し、光学部材16へ向かって導光する。本体部54は、中空部材であって、その内部にレーザ光の光路を画定している。本体部54は、光学部材16を保持している。
【0038】
循環路56は、クーラントを循環させるための、閉じられた流路である。本実施形態においては、循環路56は、接続部52および本体部54に形成された穴によって画定されている。
【0039】
具体的には、循環路56は、接続部52に形成された穴によって画定された流路56aと、本体部54に形成された穴によって画定された流路56bとを有する。流路56aおよび56bは、互いに連通し、閉じられた循環路56を形成している。
【0040】
クーラント循環装置22は、循環路56に配置された回転体(図示せず)と、該回転体を回転させるモータ58(
図7)とを有する。モータ58は、例えばサーボモータであって、制御部64からの指令に応じて、回転体を回転駆動する。
【0041】
こうして、クーラント循環装置22は、循環路56内に封入された流体に圧力変動を生じさせ、流体を循環路56内で循環させる。
【0042】
クーラント循環装置22には、エンコーダ68(
図7)が取り付けられている。エンコーダ68は、クーラント循環装置22の回転体の回転数を検出し、回転数に係るデータを制御部64へ送信する。
【0043】
放熱フィン57は、本体部54の外面上に取り付けられている。放熱フィン57は、流路56aの部分56cに隣接して配置されており、部分56c内を流動するクーラントから放熱する。
【0044】
ファン60は、放熱フィン57に隣接して配置されている。具体的には、ファン60は、複数の羽根を有する回転体(図示せず)と、該回転体を回転させるファンモータ66(
図7)とを有する。ファン60は、放熱フィン57を通過する気流を生じさせるように、配置される。
【0045】
ファン60には、エンコーダ70(
図7)が取り付けられている。エンコーダ70は、ファン60の回転体の回転数を検出し、回転数に係るデータを制御部64へ送信する。
【0046】
温度検出部62は、熱電対または白金測温抵抗体等を有し、本体部54に取り付けられている。温度検出部62は、該温度検出部62が配置されている部位の温度を検出し、温度に係るデータを制御部64へ送信する。
【0047】
次に、
図8および
図9を参照して、レーザ加工ヘッド50の動作について説明する。
図8に示すフローは、制御部64が、使用者、上位コントローラ、またはレーザ加工プログラム等から動作指令を受け付けたときに、開始する。
【0048】
ステップS1において、制御部64は、クーラント循環装置22を始動する。具体的には、制御部64は、モータ58に回転指令を送り、クーラント循環装置22の回転体を、予め定められた回転数P
0で回転させる。これにより、循環路56内に封入された流体が流動し、循環路56内を循環する。
【0049】
ステップS2において、制御部64は、クーラント循環装置22の回転数Pを取得する。具体的には、制御部64は、エンコーダ68に指令を送り、クーラント循環装置22の回転体の回転数Pを検出する。制御部64は、回転数Pに係るデータをエンコーダ68から取得する。
【0050】
ステップS3において、制御部64は、ステップS2にて取得した回転数Pが、予め定められた回転数の閾値P
1よりも小さい(すなわち、P<P
1)か否かを判定する。
【0051】
この閾値P
1は、クーラント循環装置22が正常に動作していると推定できる回転数Pの下限値(0<P
1<P
0)であって、使用者によって予め定められ、制御部64の記憶部に記憶される。一例として、閾値P
1は、ステップS1にてモータ58に送信された回転指令P
0の50%に設定される。
【0052】
制御部64は、P<P
1である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS4へ進む。一方、制御部64は、P≧P
1である(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS5へ進む。
【0053】
ステップS4において、制御部64は、警告信号を生成する。例えば、制御部64は、「クーラント循環装置の動作に異常あり」との画像または音声の形態で、警告信号を生成する。そして、制御部64は、生成した警告信号を表示部またはスピーカ(図示せず)へ送信し、表示部またはスピーカを介して、使用者に警告を報知する。
【0054】
このように、本実施形態においては、制御部64は、ステップS2およびS3によって、クーラント循環装置22の回転数Pを監視し、回転動作に異常がある場合(ステップS3にてYES)に、ステップS4にて使用者に警告を発信している。したがって、制御部64は、クーラント循環装置22の動作を監視する循環装置監視部72(
図7)としての機能を有する。
【0055】
ステップS5において、制御部64は、レーザ加工ヘッド50の温度Tを取得する。具体的には、制御部64は、温度検出部62に指令を送り、レーザ加工ヘッド50の温度Tを検出する。制御部64は、温度Tに係るデータを温度検出部62から取得する。
【0056】
ステップS6において、制御部64は、ステップS5にて取得した温度Tが、予め定められた温度の閾値T
1よりも低い(すなわち、T<T
1)か否かを判定する。この閾値T
1は、ファン60を動作させる必要のない、レーザ加工ヘッド50の温度の下限値であって、使用者によって予め定められ、制御部64の記憶部に記憶される。
【0057】
制御部64は、T<T
1である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS7へ進む。一方、制御部64は、T≧T
1ある(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS8へ進む。
【0058】
ステップS7において、制御部64は、ファン60の回転数Rをゼロに制御する。具体的には、制御部64は、ファンモータ66へ指令を送り、ファンモータ66の回転を停止する。
【0059】
ステップS8において、制御部64は、ファン60の動作スキームを実行する。このステップS8について、
図9を参照して説明する。
【0060】
ステップS8の開始後、ステップS21において、制御部64は、直近に実行したステップS5にて取得した温度Tが、上記の閾値T
1以上、且つ、予め定められた温度の閾値T
2よりも小さい(すなわち、T
1≦T<T
2)か否かを判定する。この閾値T
2は、閾値T
1よりも大きな値として使用者によって予め定められ、制御部64の記憶部に記憶される。
【0061】
制御部64は、T
1≦T<T
2である(すなわちYES)と判定した場合、ステップS22へ進む。一方、制御部64は、T
2≦Tである(すなわちNO)と判定した場合、ステップS23へ進む。
【0062】
ステップS22において、制御部64は、ファン60を第1の回転数R
1で駆動する。具体的には、制御部64は、第1の回転数R
1に相当する第1の回転指令を生成し、ファンモータ66へ送信する。ファンモータ66は、第1の回転指令に従って、ファン60の回転体を第1の回転数R
1で回転駆動する。
【0063】
ステップS23において、制御部64は、直近に実行したステップS5にて取得した温度Tが、上記の閾値T
2以上、且つ、予め定められた温度の閾値T
3よりも小さい(すなわち、T
2≦T<T
3)か否かを判定する。この閾値T
3は、閾値T
2よりも大きな値として使用者によって予め定められ、制御部64の記憶部に記憶される。
【0064】
制御部64は、T
2≦T<T
3である(すなわちYES)と判定した場合、ステップS24へ進む。一方、制御部64は、T
3≦Tである(すなわちNO)と判定した場合、ステップS25へ進む。
【0065】
ステップS24において、制御部64は、ファン60を第2の回転数R
2(>R
1)で駆動する。具体的には、制御部64は、第2の回転数R
2に相当する第2の回転指令を生成し、ファンモータ66へ送信する。ファンモータ66は、第2の回転指令に従って、ファン60の回転体を第2の回転数R
2で回転駆動する。
【0066】
ステップS25において、制御部64は、ファン60を第3の回転数R
3(>R
2)で駆動する。具体的には、制御部64は、第3の回転数R
3に相当する第3の回転指令を生成し、ファンモータ66へ送信する。
【0067】
ファンモータ66は、第3の回転指令に従って、ファン60の回転体を第3の回転数R
3で回転駆動する。一例として、第3の回転数R
3は、ファン60の最大許容回転数に設定される。
【0068】
このように、本実施形態においては、制御部64は、ステップS21〜S25において、温度検出部62が検出した温度Tに応じた回転数で、ファン60を動作させている。したがって、制御部64は、温度検出部62が検出した温度Tに基づいてファン60を制御するファン制御部74(
図7)としての機能を有する。
【0069】
ステップS26において、制御部64は、ファン60の回転数Rを取得する。具体的には、制御部64は、エンコーダ70に指令を送り、ファン60の回転体の回転数Rを検出し、回転数Rに係るデータをエンコーダ70から取得する。
【0070】
ステップS27において、制御部64は、ステップS26にて取得した回転数Rが、予め定められた回転数の閾値R
4よりも小さい(すなわち、R<R
4)か否かを判定する。 この閾値R
4は、ファン60が正常に動作していると推定できる回転数Rの下限値であって、使用者によって予め定められ、制御部64の記憶部に記憶される。一例として、閾値R
4は、ステップS22、S24、またはS25にて制御部64がファンモータ66に送信した回転指令R
1、R
2、またはR
3の50%の値として、設定される。
【0071】
制御部64は、R<R
4である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS28へ進む。一方、制御部64は、R≧R
4である(すなわち、NO)と判定した場合、
図8中のステップS9へ進む。
【0072】
ステップS28において、制御部64は、警告信号を生成する。例えば、制御部64は、「ファンの動作に異常あり」との画像または音声の形態で、警告信号を生成する。そして、制御部64は、生成した警告信号を表示部またはスピーカ(図示せず)へ送信し、該表示部または該スピーカを介して、使用者に警告を報知する。
【0073】
このように、本実施形態においては、制御部64は、ステップS26およびS27によって、ファン60の回転数Rを監視し、回転動作に異常がある場合(ステップS27にてYES)に、ステップS28にて使用者に警告を発信している。したがって、制御部64は、ファン60の動作を監視するファン監視部76(
図7)としての機能を有する。
【0074】
再度、
図8を参照して、ステップS9において、制御部64は、使用者、上位コントローラ、またはレーザ加工プログラム等から動作停止指令を受け付けたか否かを判定する。制御部64は、動作停止指令を受け付けた(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS10へ進む。一方、制御部64は、動作停止指令を受け付けていない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS2へ戻る。
【0075】
ステップS10において、制御部64は、上述のステップS7と同様に、制御部64は、回転数Rをゼロに制御する。
【0076】
ステップS11において、制御部64は、クーラント循環装置22を停止する。具体的には、制御部64は、モータ58に指令を送り、クーラント循環装置22のモータ58を停止させる。そして、制御部64は、
図8に示すフローを終了する。
【0077】
本実施形態においては、循環路56が閉じられた流路として構成されているので、クーラント循環装置22を動作させることによって、クーラントを、レーザ加工ヘッド50内で循環させることができる。
【0078】
この構成によれば、クーラントを循環路56に外部機器(クーラント供給装置)から供給する必要がないので、循環路56に、外部機器から延びるクーラント供給管等の部材を接続するジョイント部を設ける必要もない。
【0079】
したがって、該ジョイント部からクーラントが漏出する可能性を排除できるので、クーラントの漏出によって光学部品16等の部材が汚染されてしまうのを、確実に防止できる。
【0080】
また、循環路56に外部機器からクーラントの供給をすることがないので、使用者は、外部機器から供給されるクーラントの品質管理(例えば、温度、pH値)を行う必要がない。その一方で、使用者は、循環路56内のクーラントを定期的に交換することで、クーラントの品質を容易に管理できる。
【0081】
また、本実施形態においては、放熱フィン57とファン60を用いて、いわゆる空冷式で、循環路56内を流動するクーラントから抜熱している。この構成によれば、レーザ加工ヘッド50の構成部材の温度が露点以下まで下がることがないので、レーザ加工ヘッド50の構成部材に結露が発生してしまうのを防止できる。
【0082】
また、本実施形態においては、制御部64は、レーザ加工ヘッド50の温度Tを検出し、ファン60を、温度Tに応じた回転数で動作させている(ステップS21〜S25)。この構成によれば、ファン60の稼働効率を最適化することができるので、消費電力を抑えることができる。
【0083】
また、本実施形態においては、制御部64は、ファン60の動作を監視し、ファン60の動作に異常があることを検出したとき(ステップS27にてYES)に、使用者にその旨を警告している(ステップS28)。
【0084】
この構成によれば、例えばファン60の回転体に塵埃等の異物が付着して該回転体の回転が阻害された不具合が発生したときに、使用者は、該不具合を自動的且つ直感的に認識でき、その結果、ファン60を交換または修理するといった対策を、迅速に講じることができる。
【0085】
また、本実施形態においては、制御部64は、クーラント循環装置22の動作を監視し、該クーラント循環装置22の動作に異常があることを検出したとき(ステップS3にてYES)に、使用者にその旨を警告している(ステップS4)。
【0086】
この構成によれば、例えばクーラント循環装置22の回転体に塵埃等の異物が付着して該回転体の回転が阻害された不具合が発生したときに、使用者は、該不具合を自動的且つ直感的に認識でき、その結果、クーラント循環装置22を交換または修理するといった対策を、迅速に講じることができる。
【0087】
次に、
図10および
図11を参照して、本発明の一実施形態に係るレーザ加工システム80について説明する。レーザ加工システム80は、レーザ発振器82、レーザ発振器制御部84、およびレーザ加工ヘッド100を備える。
【0088】
レーザ発振器82は、例えばCO
2レーザ発振器であって、出力鏡86、リア鏡88、および放電管90を有し、レーザ発振器制御部84から指令に応じてレーザ光を生成し、生成したレーザ光を出力鏡86から出射する。
【0089】
レーザ発振器制御部84は、レーザ発振器82のレーザ光生成動作を制御する。具体的には、レーザ発振器制御部84は、レーザ出力指令、周波数指令、またはデューティー指令等の、レーザ発振器82から出射させるべきレーザ光のレーザパワーに関する指令を、該レーザ発振器82へ送信する。
【0090】
レーザ加工ヘッド100は、少なくとも1つのミラーBによって形成された光路Cを介して、レーザ発振器82の出力鏡86に光学的に接続されており、該出力鏡86から出射されたレーザ光を受光し、受光した該レーザ光を集光して、ワークWへ照射する。
【0091】
レーザ加工ヘッド100は、接続部102、本体部104、光学部材16、ノズル106、循環路108、クーラント循環装置22、放熱フィン110、ファン60、および制御部112を備える。
【0092】
制御部112は、CPUおよび記憶部(図示せず)等を有し、本体部104に取り付けられている。制御部112は、レーザ加工ヘッド100の各構成要素を、直接的または間接的に制御する。
【0093】
本実施形態においては、制御部112およびレーザ発振器制御部84は、互いに通信可能に接続されている。制御部112およびレーザ発振器制御部84は、互いに通信しつつ、ワークWへのレーザ加工プロセスを実行する。
【0094】
接続部102は、光路C内を伝搬したレーザ光を受光し、光学部材16へ向かって導光する。本体部104は、中空部材であって、その内部にレーザ光の光路を画定している。本体部104は、光学部材16を保持している。ノズル106は、光学部材16によって集光されたレーザ光を、ワークWへ向かって出射する。
【0095】
循環路108は、クーラントを循環させるための、閉じられた流路である。本実施形態においては、循環路108は、流路108a、流路108b、流路108c、流路108d、流路108e、流路108f、流路108g、および流路108hと、クーラント溜り部108iおよび108jとを含む。
【0096】
流路108aは、接続部102に形成された穴によって画定されている。流路108bは、接続部102とは別体の管によって画定されており、流路108aおよび流路108cに流体的に接続されている。
【0097】
流路108cは、放熱フィン110に形成された穴によって画定されている。流路108dは、本体部104とは別体の管によって画定されており、流路108cおよび流路108eに流体的に接続されている。流路108eおよび流路108gの各々は、本体部104に形成された穴によって画定されている。
【0098】
なお、本実施形態においては、流路108gに、リリーフバルブ109が設けられている。リリーフバルブ109は、循環路108内のクーラントの圧力に応じて開閉する圧力調整弁である。
【0099】
リリーフバルブ109は、レーザ加工システム80を長期に亘って停止させた場合等に、クーラントが気化して循環路108内の圧力が異常に上昇し、これにより、循環路108が破損してしまうのを防止できる。
【0100】
流路108fは、ノズル106に形成された穴によって画定されており、流路108eおよび流路108gに流体的に接続されている。流路108hは、本体部104および接続部102とは別体の管によって画定されており、流路108aと流路108gに流体的に接続されている。これら流路108a〜108hは、互いに連通し、閉じられた循環路108を形成している。
【0101】
クーラント溜り部108iは、流路108gの途中に形成された、流路108gよりも大きな相当直径(断面積)を有する領域であって、流路108g内を流れるクーラントを一時的に溜めることができる。
【0102】
一方、クーラント溜り部108jは、流路108eの途中に形成された、流路108eよりも大きな相当直径(断面積)を有する領域であって、流路108e内を流れるクーラントを一時的に溜めることができる。
【0103】
これらクーラント溜り部108iおよび108jは、レーザ加工ヘッド100内を伝搬するレーザ光によって発熱し易い部分に、形成される。本実施形態においては、クーラント溜り部108iおよび108jは、光学部材16の近傍に配置されている。なお、クーラント溜り部は、接続部102(例えば、流路108aの途中)に形成されてもよい。
【0104】
放熱フィン110は、本体部104の外面上に取り付けられている。上述したように、放熱フィン110には、該放熱フィンを貫通する穴が形成されており、該穴によって、流路108cが画定されている。
【0105】
次に、
図12および
図13を参照して、レーザ加工システム80の動作について説明する。
図12に示すフローは、レーザ発振器制御部84が、使用者、上位コントローラ、またはレーザ加工プログラム等から、レーザ加工指令を受け付けたときに、開始する。
【0106】
ステップS31において、制御部112は、上述のステップS1と同様に、クーラント循環装置22のモータ58に回転指令を送り、クーラント循環装置22を回転数P
0で回転させる。これにより、循環路108内に封入された流体が流動し、循環路108内を循環する。
【0107】
ステップS32において、レーザ発振器制御部84は、レーザ光を生成する。具体的には、レーザ発振器制御部84は、上記レーザ加工指令に従って、レーザ発振器82から出射させるべきレーザ光のレーザパワーに関する指令を、レーザ発振器82へ送信する。
【0108】
具体的には、レーザ発振器制御部84は、連続発振(CW)のレーザ出力指令、パルス発振(PW)の周波数指令またはデューティー指令を、レーザ発振器82へ送信する。レーザ発振器82は、レーザ発振器制御部84から受信した指令に従って、レーザ光を生成し、出力鏡86から出射する。
【0109】
レーザ加工ヘッド100は、出力鏡86から出射されたレーザ光を接続部102にて受光し、光学部材16によって集光する。そして、レーザ加工ヘッド100は、集光されたレーザ光をノズル106から出射し、ワークWへ照射する。これにより、ワークWは、レーザ加工指令に従って、レーザ加工される。
【0110】
ステップS33において、制御部112は、ステップS32にてレーザ発振器制御部84がレーザ発振器82へ送信した指令を、該レーザ発振器制御部84から取得する。具体的には、制御部112は、レーザ発振器82へ送信されたレーザ出力指令、周波数指令、またはデューティー指令を、レーザ発振器制御部84から取得する。
【0111】
ステップS34において、制御部112は、ステップS33にて取得した指令に基づいて、レーザ発振器82から出射されるレーザ光のレーザパワーWを求める。
【0112】
一例として、ステップS32にて連続発振(CW)のレーザ出力指令(例えば5kW)が発信された場合、レーザ出力指令と、レーザ発振器82から出射されるレーザ光のレーザパワーとは、略一致することになる。
【0113】
したがって、この場合、制御部112は、ステップS33にて取得したレーザ出力指令(例えば5kW)を、レーザ発振器82から出射されるレーザ光のレーザパワーWとして、記憶部に記憶する。
【0114】
また、他の例として、制御部112は、ステップS33にて周波数指令またはデューティー指令を取得した場合、周波数指令またはデューティー指令から、レーザパワーの平均値を算出する。制御部112は、算出した平均値を、レーザ発振器82から出射されるレーザ光のレーザパワーWとして、制御部112の記憶部に記憶する。
【0115】
ステップS35において、制御部112は、上述のステップS2と同様に、エンコーダ68を介して、クーラント循環装置22の回転体の回転数Pを取得する。
【0116】
ステップS36において、制御部112は、循環装置監視部72(
図11)として機能して、上述のステップS3と同様に、P<P
1であるか否かを判定する。制御部112は、P<P
1である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS37へ進む。一方、制御部112は、P≧P
1である(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS38へ進む。
【0117】
ステップS37において、制御部112は、上述のステップS4と同様に、例えば「クーラント循環装置の動作に異常あり」との画像または音声の形態で、警告信号を生成する。そして、制御部112は、表示部またはスピーカ(図示せず)を介して、使用者に警告を報知する。
【0118】
ステップS38において、制御部112は、ファン60の動作スキームを実行する。このステップS38について、
図13を参照して説明する。
【0119】
ステップS38の開始後、ステップS51において、制御部112は、直近に実行したステップS34にて求めたレーザパワーWが、予め定められたレーザパワーの閾値W
1よりも小さい(すなわち、W<W
1)か否かを判定する。この閾値W
1は、使用者によって予め定められ、制御部112の記憶部に記憶される。
【0120】
制御部112は、W<W
1である(すなわちYES)と判定した場合、ステップS52へ進む。一方、制御部112は、W≧W
1である(すなわちNO)と判定した場合、ステップS53へ進む。
【0121】
ステップS52において、上述のステップS7と同様に、制御部112は、ファン60の回転数Rをゼロに制御する。そして、制御部は、
図12のステップS39へ進む。
【0122】
ステップS53において、制御部112は、直近に実行したステップS34にて求めたレーザパワーWが、上記の閾値W
1以上、且つ、予め定められたレーザパワーの閾値W
2よりも小さい(すなわち、W
1≦W<W
2)か否かを判定する。この閾値W
2は、閾値W
1よりも大きな値として使用者によって予め定められ、制御部112の記憶部に記憶される。
【0123】
制御部112は、W
1≦W<W
2である(すなわちYES)と判定した場合、ステップS54へ進む。一方、制御部112は、W
2≦Wである(すなわちNO)と判定した場合、ステップS55へ進む。
【0124】
ステップS54において、制御部112は、上述のステップS22と同様に、第1の回転数R
1に相当する第1の回転指令を生成してファンモータ66へ送信し、ファン60を第1の回転数R
1で回転駆動する。
【0125】
ステップS55において、制御部112は、直近に実行したステップS34にて求めたレーザパワーWが、上記の閾値W
2以上、且つ、予め定められたレーザパワーの閾値W
3よりも小さい(すなわち、W
2≦W<W
3)か否かを判定する。この閾値W
3は、閾値W
2よりも大きな値として使用者によって予め定められ、制御部112の記憶部に記憶される。
【0126】
制御部112は、W
2≦W<W
3である(すなわちYES)と判定した場合、ステップS56へ進む。一方、制御部112は、W
3≦Wである(すなわちNO)と判定した場合、ステップS57へ進む。
【0127】
ステップS56において、制御部112は、上述のステップS24と同様に、第2の回転数R
2に相当する第2の回転指令を生成してファンモータ66へ送信し、ファン60を第2の回転数R
2で回転駆動する。
【0128】
ステップS57において、制御部112は、上述のステップS25と同様に、第3の回転数R
3に相当する第3の回転指令を生成してファンモータ66へ送信し、ファン60を第3の回転数R
3で回転駆動する。
【0129】
このように、本実施形態においては、制御部112は、ステップS34において、レーザ発振器制御部84からレーザ発振器82へ送られる指令に基づいてレーザパワーWを求め、ステップS51〜S57において、レーザパワーWに応じた回転数で、ファン60を動作させている。
【0130】
したがって、制御部112は、レーザ発振器制御部84からレーザ発振器82へ送られる指令に基づいて、ファン60を制御するファン制御部114(
図11)としての機能を有する。
【0131】
ステップS58において、制御部112は、上述のステップS26と同様に、エンコーダ70を介して、ファン60の回転数Rを取得する。
【0132】
ステップS59において、制御部112は、ファン監視部76(
図11)として機能し、上述のステップS27と同様に、R<R
1であるか否かを判定する。
【0133】
制御部112は、R<R
1である(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS60へ進む。一方、制御部112は、R≧R
1である(すなわち、NO)と判定した場合、
図12中のステップS39へ進む。
【0134】
ステップS60において、制御部112は、上述のステップS28と同様に、例えば「ファンの動作に異常あり」との画像または音声の形態で、警告信号を生成する。そして、制御部112は、表示部または該スピーカを介して、使用者に警告を報知し、
図12中のステップS40へ進む。
【0135】
再度、
図12を参照して、ステップS39において、制御部112は、上述のステップS9と同様に、動作停止指令を受け付けたか否かを判定する。
【0136】
制御部112は、動作停止指令を受け付けた(すなわち、YES)と判定した場合、ステップS40へ進む。一方、制御部112は、動作停止指令を受け付けていない(すなわち、NO)と判定した場合、ステップS32へ戻る。
【0137】
ステップS40において、制御部112は、上述のステップS52と同様に、ファン60の回転数Rをゼロに制御する。
【0138】
ステップS41において、制御部112は、上述のステップS11と同様に、クーラント循環装置22のモータ58に指令を送り、クーラント循環装置22のモータ58を停止させる。そして、制御部112は、
図12に示すフローを終了する。
【0139】
本実施形態においては、循環路108が閉じられた流路として構成されている。したがって、上述の実施形態と同様に、外部機器から延びるクーラント供給管を接続するためのジョイント部を循環路108に設ける必要がない。
【0140】
したがって、該ジョイント部からクーラント供給管を取り外す作業、または、該ジョイント部とクーラント供給管との取付不良等によってクーラントが漏出し、これにより光学部品16等の部材が汚染されてしまうのを、確実に防止できる。
【0141】
また、循環路108に外部機器からクーラントの供給をすることがないので、使用者は、外部機器から供給されるクーラントの品質管理(例えば、温度、pH値)を行う必要がない。その一方で、使用者は、循環路108内のクーラントを定期的に交換することで、クーラントの品質を容易に管理できる。
【0142】
また、放熱フィン110とファン60を用いて、いわゆる空冷式で、循環路108内を流動するクーラントから抜熱している。したがって、レーザ加工ヘッド100の構成部材に結露が発生してしまうのを防止できる。
【0143】
また、本実施形態においては、制御部112は、ファン60を、レーザ発振器82から出射されるレーザ光のレーザパワーWに応じた回転数で、動作させている(ステップS51〜S57)。この構成によれば、ファン60の稼働効率を最適化することができるので、消費電力を抑えることができる。
【0144】
なお、本実施形態においては、制御部112は、レーザ発振器制御部84とは別の要素として設けられている。しかしながら、制御部112は、レーザ発振器制御部84に組み入れられてもよい。この場合、レーザ発振器制御部84が、制御部112としての機能を担う。
【0145】
また、上述の循環路20、34、42、56、108に、クーラントを交換または注入するためのポートを形成してもよい。この場合、レーザ加工ヘッド10、30、40、50、100の稼働時においては、該ポートは、蓋部材によって閉鎖される。
【0146】
また、循環路20、34、42、56、108内のクーラントの液量を確認できる指示器をさらに設けてもよい。
【0147】
また、上述のエンコーダ70、68の代わりに、モータ58、66のインピーダンスを検出するインピーダンス検出部を設けてもよい。ここで、不具合によってモータ58、66の回転が阻害された場合、モータ58、66のインピーダンスに変動が生じる。したがって、制御部64、112は、インピーダンス検出部が検出したインピーダンスに基づいて、モータ58、66の不具合を検出できる。
【0148】
例えば、制御部64は、上述のステップS2において、インピーダンス検出部からモータ58のインピーダンスZを取得する。次いで、ステップS3において、取得したインピーダンスZが、予め定められたインピーダンスの閾値Z
1とは異なる(例えば、差|Z−Z
1|が閾値以上である)か否かを判定する。
【0149】
または、制御部64は、上述のステップS26において、インピーダンス検出部からファンモータ66のインピーダンスZを取得する。次いで、ステップS27において、取得したインピーダンスZが、予め定められたインピーダンスの閾値Z
2とは異なる(例えば、差|Z−Z
2|が閾値以上である)か否かを判定する。このようなスキームによって、モータ58、66の動作異常を検知できる。
【0150】
また、
図6の実施形態において、複数の温度検出部を設けてもよい。この場合において、複数の温度検出部の少なくとも1つを、レーザ光によって発熱し易い部分(例えば、光学部材16の近傍、または接続部)に配置してもよい。
【0151】
また、
図1〜
図5に示す循環路20、34、42を、
図6または
図10に示す実施形態に適用することができる。また、
図1〜
図5、
図6および
図10の実施形態の特徴を組み合わせることもできる。
【0152】
例えば、
図1に示す循環路20を、
図10に示すレーザ加工ヘッド100の本体部104に形成することもできる。この場合、レーザ加工ヘッド100は、循環路20内のクーラントを循環させる第1のクーラント循環装置と、循環路108内のクーラントを循環させる第2のクーラント循環装置とを備え得る。このように、レーザ加工ヘッドは、複数の循環路と、複数のクーラント循環装置とを備え得る。
【0153】
また、
図10に示すクーラント溜り部108i、108jを、
図6に示す循環路56の途中に形成してもよい。
【0154】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0155】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」、「次いで」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。