特許第6407846号(P6407846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407846
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】車両用取付部品
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/52 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   B60R19/52 K
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-232897(P2015-232897)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-100479(P2017-100479A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】呉 龍山
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−060649(JP,U)
【文献】 特開2004−058762(JP,A)
【文献】 特開2009−220659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とがビス止めにより固定された車両用取付部品であって、
前記第1部材は、ビスが螺合されるビス孔と、前記第2部材に係止される係止爪との両方を有する取付部を備え
前記取付部は、
前記第1部材の本体部から前記第2部材側に突出した基台と、
前記基台から前記第2部材側に突出すると共に前記ビス孔を有する突起部と、
前記基台から前記第2部材側に突出する前記係止爪と、
前記突起部と前記係止爪とを接続するリブと
を備える
ことを特徴とする車両用取付部品。
【請求項2】
前記基台は、下方に向けて開口された中空体からなり、
前記係止爪は、先端部に下方に突出する返し部を有し、前記第2部材側から見て前記返し部が前記基台の下端よりも下方に突出するように前記基台に固定されている
ことを特徴とする請求項記載の車両用取付部品。
【請求項3】
前記第1部材は、前記リブの前記第2部材側の面が前記第2部材との当接面とされていることを特徴とする請求項または記載の車両用取付部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用取付部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に対しては、外観形状の視認性向上等のために、例えばフロントグリルのような車両用取付部品が設置されている。例えば、特許文献1には、フロントグリルが、グリルアウタとグリルインナとの2つの部材からなると共にビスにより締結された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−218523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示すように、フロントグリルが複数の部材から構成されている場合、先にこれらの複数の部材をビス止めしてアセンブリし、組み立てられたフロントグリルを車体に対して取り付けることが考えられる。このような場合には、組立作業中に、複数の部材同士を位置合わせし、その後部材の姿勢を変えてビス止めを行うことも考えられる。
【0005】
しかしながら、位置決めした部材同士の姿勢を変化させる際に、部材同士の位置が僅かに変位し、その後のビス止め作業が困難になる場合がある。例えば、複数の部材の縁部同士を仮止めし、姿勢変更の際に部材同士の位置の変位を抑止することも考えられるが、通常、仮止めは最終的なビス止めと異なって締結力が弱いことから、ビス止めを行う位置において部材同士の変位を確実に防止できるものではない。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、第1部材と第2部材とがビス止めにより固定された車両用取付部品であって、組立時におけるビス止め作業の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、第1部材と第2部材とがビス止めにより固定された車両用取付部品であって、上記第1部材が、ビスが螺合されるビス孔と、上記第2部材に係止される係止爪との両方を有する取付部を備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記取付部が、上記第1部材の本体部から上記第2部材側に突出した基台と、上記基台から上記第2部材側に突出すると共に上記ビス孔を有する突起部と、上記基台から上記第2部材側に突出する上記係止爪と、上記突起部と上記係止爪とを接続するリブとを備えるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記基台が、下方に向けて開口された中空体からなり、上記係止爪が、先端部に下方に突出する返し部を有し、上記第2部材側から見て上記返し部が上記基台の下端よりも下方に突出するように上記基台に固定されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記第1部材が、上記リブの上記第2部材側の面が上記第2部材との当接面とされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、単一の取付部に対してビス孔と係止爪との両方が設けられている。このため、このような取付部を有する第1部材を第2部材に組み付ける場合に、まず係止爪によって第1部材を第2部材に仮止めすることができる。このように仮止めされた第1部材と第2部材とは、姿勢変更等により僅かに変位する場合があるが、このような場合であっても係止爪の位置及びその近傍では変位量が最小限となる。ここで、本発明においては、係止爪がビス孔と共に同一の取付部に対して形成されているため、姿勢変更等により第1部材と第2部材とが僅かに変位した場合であっても、ビス孔の配置位置における第1部材と第2部材との変位量を最小限に抑えることができる。したがって、本発明によれば、仮止め後に姿勢変更したような場合であっても、ビス孔の配置位置における第1部材と第2部材との変位を抑え、その後のビス止め作業を容易に行うことができる。つまり、本発明によれば、第1部材と第2部材とがビス止めにより固定された車両用取付部品であって、組立時におけるビス止め作業の容易化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるフロントグリルを正面側から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態におけるフロントグリルを背面側から見た分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態におけるフロントグリルが備えるインナ側中央取付部の拡大図であり、(a)が背面図であり、(b)が斜視図である。
図4】本発明の一実施形態におけるフロントグリルが備えるアウタ側中央取付部の拡大図であり、(a)が背面図であり、(b)が斜視図である。
図5】本発明の一実施形態におけるフロントグリルの組立時において、インナグリルとアウタグリルとを仮止めした様子を示すインナ側中央取付部及びアウタ側中央取付部を含む拡大斜視図である。
図6】本発明の一実施形態におけるフロントグリルが備えるインナグリルとアウタグリルとを締結した様子を示すインナ側中央取付部及びアウタ側中央取付部を含む拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用取付部品の一実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、本発明の車両用取付部品をフロントグリルに適用した例について説明する。また、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1は、本実施形態のフロントグリル1を正面側から見た斜視図である。また、図2は、本実施形態のフロントグリル1を背面側から見た分解斜視図である。なお、図2において、後述するビス4は省略している。本実施形態のフロントグリル1は、車両の前面側に露出するように設置される樹脂製の外装部品であり、図1及び図2に示すように、インナグリル2と、アウタグリル3とを備えている。また、本実施形態のフロントグリル1は、インナグリル2(第2部材)と、アウタグリル3(第1部材)とを締結するビス4(図6参照)を備えている。
【0016】
インナグリル2は、図2に示すように、フレーム2aと、網状部2bと、車体取付部2cと、インナ側取付部2dとを有している。フレーム2aは、網状部2bを囲うように設けられた環状の部位であり、網状部2b、車体取付部2c及びインナ側取付部2dとを支持する。このフレーム2aは、高さ方向の幅が狭い上縁部2a1と、高さ方向の幅が広い下縁部2a2とを有している。また、下縁部2a2は、背面が鉛直方向に対して傾斜する傾斜面となるように傾斜されている。図2に示すように、上縁部2a1の背面には、複数(本実施形態においては7つ)の車体取付部2cが設けられている。また、下縁部2a2の背面には、複数(本実施形態においては9つの)のインナ側取付部2dが設けられている。
【0017】
網状部2bは、フレーム2aに囲まれた領域に形成されており、フロントグリル1よりも車両の内側に異物が侵入することを抑止しつつ外気を取り込み可能としている。なお、網状部2bの形状はあくまでも一例である。網状部2bは、車両の外観印象への寄与が大きな部分であり、車両の種類ごとに様々な形状とされる。また、網状以外の形状の部材をフレーム2aの内側に配置する場合もある。
【0018】
車体取付部2cは、フレーム2aの上縁部2a1の背面側に水平方向に配列されて複数設けられている。これらの車体取付部2cは、本実施形態のフロントグリル1(すなわちインナグリル2、アウタグリル3及びビス4がアセンブリされた組立構造体)を不図示の車体に対して固定する部位であり、不図示のビスにより車体に締結される。
【0019】
インナ側取付部2dは、アウタグリル3が備える後述するアウタ側取付部3bが取り付けられる部位である。本実施形態のフロントグリル1においては、インナ側取付部2dとして、インナグリル2の中央に配置される2つのインナ側中央取付部2eと、インナグリル2の外縁部に配置される7つのインナ側外縁取付部2fとを備えている。
【0020】
図3は、インナ側中央取付部2eの拡大図であり、(a)が背面図であり、(b)が斜視図である。これらの図に示すように、インナ側中央取付部2eは、基台2e1と、爪部2e2とを有している。基台2e1は、フレーム2aの下縁部2a2の背面から突出して設けられている。この基台2e1は、略三角板形状の2つの側壁部2e3と、後壁2e4と、底部2e5とを有しており、これらの側壁部2e3と、後壁2e4と、底部2e5とに囲まれた領域が空間とされている。つまり、基台2e1は、内側が中空とされている。また、基台2e1は、フロントグリル1の正面側から見た場合には、フレーム2aの下縁部2a2から窪むように形成されている。
【0021】
また、基台2e1の後壁2e4は、楕円形状の上側開口2e6と、矩形状の下側開口2e7とを有している。上側開口2e6は、後壁2e4を貫通するように形成されており、ビス4が挿通される開口である。下側開口2e7は、上側開口2e6の下方に配置されており、後壁2e4を貫通するように形成されている。この下側開口2e7は、フロントグリル1の正面側からアウタグリル3の後述する係止爪3c4が挿通される開口である。爪部2e2は、基台2e1の後壁2e4から後方(車両の後側方向)に向けて突出して形成されており、下側開口2e7を上下方向から挟むように2つ設けられている。下側開口2e7の上側に設けられた爪部2e2は、先端が根元よりも下方に位置するように傾斜されている。また、下側開口2e7の下側に設けられた爪部2e2は、先端が根元よりも上方に位置するように傾斜されている。これらの2つの爪部2e2の先端同士は、上下方向に僅かな隙間を空けて配置されている。この隙間は、爪部2e2が弾性変形することにより、アウタグリル3の後述する係止爪3c4が挿通可能となるように設定されている。
【0022】
インナ側外縁取付部2fは、図2に示すようにビス4が挿通可能な開口を有し、ビス4によりアウタグリル3と締結される部位である。インナ側外縁取付部2fは、インナグリル2の外縁部に沿って7つ設けられている。これらのインナ側外縁取付部2fは、各々が配置箇所に応じた形状とされている。
【0023】
アウタグリル3は、図2に示すように、本体部3aと、アウタ側取付部3bとを有している。本体部3aは、インナグリル2の下縁部2a2を前方(車両の前側方向)から覆うカバー体であり、背面側にアウタ側取付部3bが設けられている。
【0024】
アウタ側取付部3bは、インナグリル2が備えるインナ側取付部2dが取り付けられる部位である。本実施形態のフロントグリル1においては、アウタ側取付部3bとして、アウタグリル3の中央に配置される2つのアウタ側中央取付部3c(取付部)と、アウタグリル3の外縁部に配置される7つのアウタ側外縁取付部3dとを備えている。
【0025】
図4は、アウタ側中央取付部3cの拡大図であり、(a)が背面図であり、(b)が斜視図である。これらの図に示すように、アウタ側中央取付部3cは、基台3c1と、突起部3c2と、位置規制突起3c3と、係止爪3c4と、リブ3c5とを有している。基台3c1は、本体部3aの背面から突出して設けられている。この基台3c1は、略三角板形状の2つの側壁部3c6と、後壁3c7とを有しており、これらの側壁部3c6と、後壁3c7とに囲まれた領域が空間とされている。つまり、基台3c1は、下方に向けて開口された中空体とされている。なお、アウタグリル3において、基台3c1は、図1に示すように、本体部3aの前面を窪ませることなく形成されている。
【0026】
突起部3c2は、基台3c1の後壁3c7からインナグリル2側に突出した円柱形上の部位であり、中央にビス孔3c21を有している。このビス孔3c21は、ビス4が螺合される貫通孔である。
【0027】
位置規制突起3c3は、ビス孔3c21を挟むように突起部3c2の先端からインナグリル2側に突出した部位である。図5は、本実施形態のフロントグリル1の組立時において、インナグリル2とアウタグリル3とを仮止めした様子を示す取付部(インナ側中央取付部2e及びアウタ側中央取付部3c)を含む拡大斜視図である。この図に示すように、位置規制突起3c3は、インナグリル2とアウタグリル3とを仮止めした場合に、インナグリル2の上側開口2e6に入り込むことにより突起部3c2のビス孔3c21の上側開口2e6に対する位置が変化することを防止する。また、これらの位置規制突起3c3は、ビス4を突起部3c2のビス孔3c21に螺合した場合に、インナグリル2の上側開口2e6に入り込んでビス4の頭部と当接し、突起部3c2(すなわちアウタグリル3)が必要以上にインナグリル2側に近接することを防止する。
【0028】
係止爪3c4は、基台3c1の後壁3c7からインナグリル2側に突出して形成されており、突起部3c2の下方に配置されている。この係止爪3c4は、図4(b)に示すように、上下方向に可撓な板状の基体3c41と、基体3c41の先端から下方に突出する返し部3c42とを有している。基体3c41は、下面が基台3c1の下端面と面一となるように後壁3c7の下端に接続されている。返し部3c42は、基体3c41から下方に突出することにより、基台3c1の下端面よりも下方に突出している。
【0029】
このような係止爪3c4は、図5に示すように、インナグリル2の基台2e1が有する下側開口2e7に前方から挿入され、返し部3c42が後方から爪部2e2に当接することにより、インナグリル2に係止される。フロントグリル1を組み立てる場合には、係止爪3c4がインナグリル2に係止されることにより、インナグリル2とアウタグリル3とが仮止めされる。
【0030】
リブ3c5は、基台3c1の後壁3c7からインナグリル2側に突出して形成されており、図4(b)に示すように、突起部3c2と係止爪3c4とを接続している。このようなリブ3c5は、係止爪3c4の強度を高めると共に、外力により突起部3c2と係止爪3c4との位置関係が変化することを防止する。このようなリブ3c5により、フロントグリル1の組立時において係止爪3c4によりインナグリル2とアウタグリル3とが仮止めされている状態で、インナグリル2とアウタグリル3に外力が掛かった場合であっても、突起部3c2と係止爪3c4との位置関係が変化することを防止することができる。
【0031】
また、リブ3c5は、基台3c1からの突出量が突起部3c2と同一に設定されており、インナグリル2側の面が、インナグリル2の基台2e1の後壁2e4との当接面3c51(図4参照)とされている。つまり、リブ3c5の当接面3c51は、インナグリル2とアウタグリル3とを組付ける場合に、インナグリル2を受けるアウタグリル3側の座面として機能する。
【0032】
このようなアウタ側中央取付部3cは、突起部3c2、係止爪3c4及びリブ3c5をインナグリル2側に向けるようにして、基台2e1の内部に差し込まれている。つまり、アウタ側中央取付部3cは、インナ側中央取付部2eの基台2e1が備える側壁部2e3と後壁2e4と底部2e5で囲まれた空間に収容されている。図6は、インナグリル2とアウタグリル3とを締結した様子を示す取付部(インナ側中央取付部2e及びアウタ側中央取付部3c)を含む拡大断面図である。この図に示すように、アウタ側中央取付部3cが基台2e1の内部に差し込まれた状態では、係止爪3c4は、インナ側中央取付部2eの下側開口2e7に挿通されると共に、インナ側中央取付部2eの爪部2e2に係止されている。さらに、突起部3c2のインナグリル2側の表面とリブ3c5の当接面3c51とがインナ側中央取付部2eの後壁2e4に当接され、突起部3c2のビス孔3c21がインナ側中央取付部2eの上側開口2e6と連通状態とされる。これらのインナ側中央取付部2eとアウタ側中央取付部3cとは、図6に示すように、インナグリル2側から上側開口2e6を挿通され、突起部3c2のビス孔3c21に螺合されたビス4によって締結されている。
【0033】
図2に戻り、アウタ側外縁取付部3dは、インナ側外縁取付部2fに対応した位置に設けられており、ビス4が螺合されるビス孔を有している。これらのアウタ側外縁取付部3dは、ビス4によりインナ側外縁取付部2fと締結される。これらのアウタ側外縁取付部3dは、各々が配置箇所に応じた形状とされている。
【0034】
このようなアウタグリル3は、図2における前後方向(背面側と正面側とを結ぶ方向)に移動されるキャビティ及びコアと、上下方向に移動されるスライドとを有する金型によって成形することが可能である。つまり、キャビティによってアウタ側外縁取付部3dの全てを成形し、さらにアウタ側中央取付部3cの突起部3c2やリブ3c5等を成形し、スライドによって係止爪3c4や基台3c1を成形することができる。このとき、係止爪3c4の返し部3c42が基台3c1の下端面よりも下方に突出しているため、1つのスライドのみで係止爪3c4及び基台3c1を成形することができる。
【0035】
ビス4は、インナグリル2とアウタグリル3とを締結する部品であり、図6に示すように、インナ側中央取付部2eとアウタ側中央取付部3cとを締結している。また、ビス4は、インナ側外縁取付部2fとアウタ側外縁取付部3dとを締結している。このようなビス4は、インナ側取付部2dの数(すなわちアウタ側取付部3bの数)と同じだけ設けられており、本実施形態では9つ設けられている。
【0036】
以上のような構成の本実施形態のフロントグリル1を組み立てる場合には、例えば、インナグリル2を専用の治具により支え、上方からアウタグリル3をインナグリル2に対して取り付ける。このとき、アウタ側中央取付部3cが、インナ側中央取付部2eの基台2e1が備える側壁部2e3と後壁2e4と底部2e5で囲まれた空間に収容される。この結果、図5に示すように、係止爪3c4は、インナ側中央取付部2eの下側開口2e7に挿通されると共に、インナ側中央取付部2eの爪部2e2に係止される。これによって、インナグリル2とアウタグリル3とが仮止めされる。
【0037】
続いて、インナグリル2を治具から取り外すと共に仮止めされたインナグリル2及びアウタグリル3を反転し、図6に示すように、アウタ側中央取付部3cとインナ側中央取付部2eとをビス4により締結する。さらに、その後、インナ側外縁取付部2fとアウタ側外縁取付部3dとをビス4により締結する。これによって、インナグリル2とアウタグリル3とが固定され、本実施形態のフロントグリル1の組み立てが完了する。
【0038】
以上のような本実施形態のフロントグリル1によれば、単一のアウタ側中央取付部3cに対してビス孔3c21と係止爪3c4との両方が設けられている。このため、このようなアウタ側中央取付部3cを有するアウタグリル3をインナグリル2に組み付ける場合に、まず係止爪3c4によってアウタグリル3をインナグリル2に仮止めすることができる。
【0039】
このように仮止めされたアウタグリル3とインナグリル2とは、姿勢変更等により僅かに変位する場合があるが、このような場合であっても係止爪3c4の位置及びその近傍では変位量が最小限となる。ここで、本実施形態のフロントグリル1においては、係止爪3c4がビス孔3c21と共に同一のアウタ側中央取付部3cに対して形成されているため、姿勢変更等によりアウタグリル3とインナグリル2とが僅かに変位した場合であっても、ビス孔3c21の配置位置におけるアウタグリル3とインナグリル2との変位量を最小限に抑えることができる。したがって、本実施形態のフロントグリル1によれば、仮止め後に姿勢変更したような場合であっても、ビス孔3c21の配置位置におけるアウタグリル3とインナグリル2との変位を抑え、その後のビス止め作業を容易に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態のフロントグリル1においては、アウタ側中央取付部3cは、ビス孔3c21を有する突起部3c2と係止爪3c4とを接続するリブ3c5とを備えている。このようなリブ3c5は、外力により突起部3c2と係止爪3c4との位置関係が変化することを防止する。このため、インナグリル2とアウタグリル3とが仮止めされている状態で、インナグリル2とアウタグリル3に外力が掛かった場合であっても、突起部3c2と係止爪3c4との位置関係が変化することを防止することができる。したがって、その後のビス止め作業を容易に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態のフロントグリル1においては、アウタ側中央取付部3cの基台3c1は、下方に向けて開口された中空体からなり、係止爪3c4が、先端部に下方に突出する返し部3c42を有し、インナグリル2側から見て返し部3c42が基台3c1の下端よりも下方に突出するように基台3c1に固定されている。このような本実施形態のフロントグリル1によれば、アウタグリル3を射出成形する場合に、1つのスライドによって係止爪3c4や基台3c1を成形することができる。このため、アウタグリル3の製造費用を抑え、廉価なフロントグリル1とすることができる。
【0042】
また、本実施形態のフロントグリル1において、アウタグリル3は、リブ3c5のインナグリル2側の面がインナグリル2との当接面3c51とされている。このため、リブ3c5の基台3c1からの突出量を最大限に確保することができる。したがって、突起部3c2と係止爪3c4とをより強固に固定することが可能となる。
【0043】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態においては、ビス孔3c21を有する突起部3c2と係止爪3c4とを接続するリブ3c5を備える構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突起部3c2と係止爪3c4とをリブ3c5で接続しない構成を採用することも可能である。
【0045】
また、上記実施形態においては、突起部3c2を上側に配置し、係止爪3c4を下側に配置する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、突起部3c2を下側に配置し、係止爪3c4を上側に配置する構成を採用することも可能である。さらに、突起部3c2と係止爪3c4とを水平方向に配列する構成を採用することも可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、アウタ側中央取付部3cが係止爪3c4を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、係止爪をインナ側中央取付部2eに設ける構成を採用することも可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては、9つのアウタ側取付部3bのうち2つが係止爪3c4を有する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、係止爪3c4を有するアウタ側取付部3bの数をさらに増やしても良い。また、アウタ側取付部3bの数を変更することも可能である。この場合、同様にインナ側取付部2dの数も変更されることになる。
【0048】
また、上記実施形態においては、本発明の車両用取付部品をフロントグリルに適用した例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ドアパネルに対して取り付けられる装飾用の車両用取付部品等に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1……フロントグリル(車両用取付部品)、2……インナグリル(第2部材)、2d……インナ側取付部、2e……インナ側中央取付部、2f……インナ側外縁取付部、3……アウタグリル(第1部材)、3a……本体部、3b……アウタ側取付部、3c……アウタ側中央取付部(取付部)、3c1……基台、3c2……突起部、3c21……ビス孔、3c3……位置規制突起、3c4……係止爪、3c41……基体、3c42……返し部、3c5……リブ、3c51……当接面、3d……アウタ側外縁取付部、4……ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6