(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407871
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ECGを解釈するためのシステム及び該システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0452 20060101AFI20181004BHJP
A61B 5/044 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
A61B5/04 312C
A61B5/04 314G
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-538601(P2015-538601)
(86)(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公表番号】特表2015-532870(P2015-532870A)
(43)【公表日】2015年11月16日
(86)【国際出願番号】IB2013059497
(87)【国際公開番号】WO2014064595
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】61/718,905
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グルーべ ウィリアム ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ リチャード イー.
(72)【発明者】
【氏名】ギニー パトリック
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−514200(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0176802(US,A1)
【文献】
特開2011−005225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図(ECG)を解釈するためのシステムであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに結合されるメモリと、
前記メモリ内に記憶され、ECGを受け取り、解釈ステートメントを、前記ECG内の前記解釈ステートメントに関与するECG測定値と関連付け、ディスプレイに、前記解釈ステートメント及び前記ECGの波形を描画させる描画モジュールと、
前記ディスプレイに描画された少なくとも1つの解釈ステートメントを利用者が選択できるようにするインターフェイスと
を含み、
前記描画モジュールは、更に、前記ディスプレイに、前記選択された解釈ステートメントに寄与する前記ECGの波形の部分を強調表示させる、
システム。
【請求項2】
前記強調表示が、前記ECGの波形の一部の上の形状によってもたらされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記強調表示が、前記ECGの波形の一部に関するラベルによってもたらされる、請求項1に記載のシステム
【請求項4】
前記強調表示が、前記ECGの波形の一部に関する測定距離を示すための線によってもたらされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記強調表示が、色の違い、テクスチャの違い、又は形状の違いのうちの少なくとも1つによってもたらされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
被選択解釈ステートメントが、フォントの変更、色の変更、又はテクスチャの変更のうちの少なくとも1つによって強調表示される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムが、心電計、除細動器、又はモニタのうちの少なくとも1つに含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
心電図(ECG)を解釈するためのシステムであって、
ECG波形の測定値に基づいて解釈ステートメントを提供するためにECGを解釈する解釈モジュールと、
前記解釈ステートメントを前記ECG波形上の対応する測定値に関連付け、ディスプレイに解釈ステートメント及びECG波形を描画させるための、非一時的記憶媒体内の描画モジュールと、
説明のために解釈ステートメントを選択する選択装置と
を含み、
前記描画モジュールは、更に、前記選択装置にて前記解釈ステートメントが選択されることで、前記ディスプレイに、該選択された解釈ステートメントに関連する前記対応する測定値を前記ECG波形上に描画させて、参照位置を示し、前記解釈ステートメントを説明するためのラベルを提供すると共に、前記選択された解釈ステートメントに寄与する前記ECG波形の部分を強調表示させる、システム。
【請求項9】
前記参照位置が、(i)前記ECG波形の一部の上の形状、又は(ii)前記ECG波形の一部に関する測定距離を示すための線のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記参照位置又は前記ラベルの少なくとも1つが、色の違い、テクスチャの違い、又は形状の違いのうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
被選択解釈ステートメントが、フォントの変更、色の変更、又はテクスチャの変更のうちの少なくとも1つによって強調表示される、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、心電計、除細動器、又はモニタのうちの少なくとも1つに含まれる、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記選択装置が、マウス、トラックボール、ジョイスティック、又はタッチパッドのうちの少なくとも1つを含み、選択がポイントアンドクリック操作によって行われる、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記選択装置が前記ディスプレイに関するタッチスクリーンを含み、選択が、指又はスタイラスの少なくとも1つによって前記ディスプレイに触ることによって行われる、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
心電図(ECG)を解釈するためのシステムの作動方法であって、
解釈モジュールが、ECG波形の測定値に基づいて解釈ステートメントを提供するためにECGを解釈するステップと、
描画モジュールが、前記解釈ステートメントを前記ECG波形上の対応する測定値に関連付けるステップと、
ディスプレイが、前記解釈ステートメント及び前記ECG波形を表示するステップと、
インターフェイスが、説明を可能にするように解釈ステートメントの利用者による選択に係る入力を受け付けるステップと、
前記描画モジュールが、ディスプレイに、前記選択に係る解釈ステートメントに関連する前記対応する測定値を前記ECG波形上に描画させて、参照位置を示し、前記解釈ステートメントを説明するためのラベルを提供すると共に、前記選択に係る解釈ステートメントに寄与する前記ECG波形の部分を強調表示させるステップと
を含む、方法。
【請求項16】
前記参照位置が、前記ECG波形の一部の上の形状を含み、前記描画モジュールが、前記解釈ステートメントに寄与する測定データの位置を示すために、前記ECG波形の一部の上に形状を生成するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記参照位置が、前記ECG波形の一部に関する測定距離を示すための線を含み、前記描画モジュールが、前記解釈ステートメントに寄与する測定データの情報を示すための線及び矢印を生成するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ラベルが、名前、値、閾値、カテゴリの種類、振幅や持続時間、及び前記ECG波形上で印付けされる参照のうちの1つ又は複数を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記受け付けるステップは、前記描画モジュールが、前記ディスプレイに、前記選択に係る解釈ステートメントを強調表示させるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記インターフェイスが、対応する測定値、識別情報、及び関係するテキストによる解釈のうちの少なくとも1つを明らかにするために、波形上のカーソルの移動に係る入力を受け付けるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その両方が参照により本明細書に援用される、本願の譲受人に譲渡された、2012年10月26日に出願された米国仮特許出願第61/718,858号、及び本願の譲受人に譲渡された、2012年10月26日に出願された米国仮特許出願第61/718,905号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は医療機器に関し、より詳細には心電計(ECG:electrocardiograph)機器、及びECG信号の表示/解釈に関する。
【背景技術】
【0003】
心電計(例えば12誘導診断装置)は、心電図と呼ばれるレポートを生成する。心電計(ECG)信号とは、心臓の電気活動の10秒間のスナップショットである。心電図又はECGレポートは、ECG信号トレースが紙の下部に示されながら、患者の人口統計及びECG解釈をテキスト形式で紙の上部に含む。紙の向きは一般的に横方向である。
【0004】
ECG測定値を解析することによる、ECGレポートの解釈が提供される。この解釈は1組のステートメントであり、ECG測定値から検出され得る臨床状態を表す1つのステートメントが1行ごとにある。この解釈の下、ECG解釈の全体的な概要である重症度(例えば「通常」や「異常」)が含まれる。
【0005】
今日の心電図、モニタ、及び除細動器では、ECG誘導の診断表現がストリップチャートプリンタからの印刷された紙上でしか入手できないことが知られている。ECG誘導とは、2つのECG電極間で測定される信号、又は1つの電極と第1の電極の電圧基準を構成する電極の組合せとの間で測定される信号である。これらの装置は、適切な解像度で並びに較正された時間及び振幅測定値用のグリッドと共に、診断用途でECG誘導を表示する能力を有さない。印刷されたストリップは容易になくなり又は傷む可能性があり、必ずしもプリンタが信頼できる性能を提供する訳ではないので、当分野でストリップチャートプリンタを使用することは理想的ではない。印刷されるストリップ上の印刷領域の大きさも制限される。利用者、特に専門家ではない利用者にとっては、ECG解釈の各要素の理由が、12誘導ECGの印刷されたストリップからは明確ではない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本原理によれば、心電図(ECG)を解釈するためのシステムが、プロセッサとプロセッサに結合されるメモリとを含む。描画モジュールがメモリ内に記憶され、ECGから入力を受け取り、ECG内の解釈ステートメントに関与するECG測定値と解釈ステートメントを相関させるように構成される。ディスプレイ内の少なくとも1つの解釈ステートメントを利用者が選択できるようにするようにインターフェイスが構成され、ディスプレイは、ECG測定値の視覚的指示をECGのデジタル描画された波形上に描画するように構成される。
【0007】
心電図(ECG)を解釈するための別のシステムは、ECG波形の測定値に基づいて解釈ステートメントを提供するためにECGを解釈するように構成される解釈モジュールと、解釈ステートメントをECG波形上の対応する測定値に関連付けるための、非一時的記憶媒体内に構成される描画モジュールとを含む。解釈ステートメント及びECG波形を表示するようにディスプレイが構成される。説明用の解釈ステートメントを選択するように選択装置が構成され、それにより、解釈ステートメントに関連する対応する測定値を描画モジュールがECG波形上に描画して、参照位置を示し、解釈ステートメントを説明するためのラベルを提供する。
【0008】
心電図(ECG)を解釈するための方法は、ECG波形の測定値に基づいて解釈ステートメントを提供するためにECGを解釈するステップと、解釈ステートメントをECG波形上の対応する測定値に関連付けるステップと、解釈ステートメント及びECG波形を表示するステップと、説明を可能にするように解釈ステートメントを選択するステップと、解釈ステートメントに関連する対応する測定値をECG波形上に描画して、参照位置を示し、解釈ステートメントを説明するためのラベルを提供するステップとを含む。
【0009】
添付図面と併せて読まれるべき本開示の例示的実施形態についての以下の詳細な説明から、本開示のこれらの及び他の目的、特徴、及び利点が明らかになる。
【0010】
本開示では、好ましい実施形態についての以下の説明を添付図面に関して詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本原理による、心電図(ECG)を作成し、解釈するためのシステムを示すブロック図/流れ図である。
【
図2】単一のビュー内に波形及び解釈ステートメントを示す12誘導ECGレポートである。
【
図3】本原理による、被選択解釈ステートメント及びデジタル描画された波形上の関連する注釈を示す12誘導ECGレポートである。
【
図4】本原理による、別の被選択解釈ステートメント及びデジタル描画された波形上の関連する注釈を示すECGレポートである。
【
図5】或る例示的実施形態による、ECGを作成し、解釈するためのシステム/方法を示すブロック図/流れ図である。
【
図6】或る例示的実施形態による、ECGを作成し、解釈するための別のシステム/方法を示すブロック図/流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本原理によれば、例えば患者モニタ、除細動器、又は他の装置内で実装され使用され得る、これだけに限定されないが複数誘導ECG、Q波、ST上昇、ST低下等を含む、心電計(ECG)をモニタリングし、解釈するための医療システム、装置、及び方法が提供される。他の実施形態では、例えば心電計、患者モニタ、及び/又は除細動器内で実装され使用され得る、これだけに限定されないがECG解像度、診断帯域幅、12誘導ECGを含む、患者の状態の診断を可能にするために、設定された解像度又は可変解像度によってECG誘導がデジタル表示され、少なくとも較正された時間及び振幅測定値と共にグリッドがモニタ/除細動器の電子ディスプレイ上に表示される。
【0013】
特に有用な実施形態では、本原理が、デジタル描画されたECG信号波形を提供する。これらの波形は、所与の表示ウィンドウに適合され又は変倍されても良い。或る有用な実施形態では、カーソル又は他のポインティング装置がデジタルディスプレイ内の波形を選択し又はその上に重なるときに、特徴の自己識別を可能にするように、表示される波形が符号化される。この自己識別機能は、選択され又はその上に重ねられている波形の部分を識別するためのテキストボックスを描画する。別の実施形態では、波形の一部のテキスト記述が入力されても良く、入力することは、記述された特徴が波形のデジタル描画内で強調表示されることをもたらす。本明細書に記載するように、他の実施形態及び改変形態も考えられる。
【0014】
特に有用な実施形態では、解釈ステートメントに寄与するECG波形の部分が波形上でデジタル的に強調表示されて、解釈ステートメントのより優れた説明を提供する。デジタル的に強調表示される部分は、利用者によって選択された解釈ステートメントに寄与するECG波形の部分を示すボックス、形、ラベル、テキスト、線等を含み得る。
【0015】
本発明は医療機器、とりわけ心電計、除細動器、及び/又はモニタに関して説明するが、本発明の教示ははるかに広範であり、波形が実時間であろうとスナップショットであろうと、デジタル描画された波形をモニタし又は閲覧するための任意の装置に適用可能であることを理解すべきである。一部の実施形態では、本原理が、複雑な生体系又は力学系を追跡し若しくは解析する際に使用される。具体的には、本原理は、生体系の内部追跡手順、肺、心臓、消化管、排出器、血管等、身体のあらゆる部分内の手順に適用可能である。図面内に示されている要素はハードウェア及びソフトウェアの様々な組合せによって実装され、単一の要素又は複数の要素に組み合わせられ得る機能を提供することができる。
【0016】
図中に示されている様々な要素の機能は、専用ハードウェア、並びに適切なソフトウェアに関連してソフトウェアを実行可能なハードウェアを使用することによって提供され得る。プロセッサによって提供される場合、これらの機能は単一の専用プロセッサによって、単一の共用プロセッサによって、又はその一部が共用されても良い複数の個々のプロセッサによって提供され得る。更に、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語を明示的に使用することは、ソフトウェアを実行可能なハードウェアを排他的に指すものと解釈されるべきではなく、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、ハードウェア、ソフトウェアを記憶するための読取専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、不揮発性記憶域等を制限なく暗に含むことができる。
【0017】
更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びに本発明の具体例を列挙する本明細書の全ての表現は、それらの構造上の等価物及び機能上の等価物の両方を包含することを意図する。加えて、かかる等価物は、現在知られている等価物だけでなく将来開発される等価物(即ち構造に関係なく同じ機能を実行する、開発される任意の要素)の両方を含むことを意図する。従って、例えば本明細書で示されているブロック図が、本発明の原理を具体化する、例示的なシステム構成要素及び/又は回路の概念ビューを表すことが当業者によって理解される。同様に、如何なる工程図、流れ図等も、コンピュータ可読記憶媒体内で事実上表され、コンピュータ又はプロセッサによって、かかるコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されていようがいまいが、そのように実行され得る様々なプロセスを表すことが理解される。
【0018】
更に、本発明の実施形態は、コンピュータ又は任意の命令実行システムによって使用するための、又はそれらに関連して使用するためのプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形を取ることができる。この説明では、コンピュータ使用可能記憶媒体又はコンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、機器、若しくは装置によって使用するための、又はそれらに関連して使用するためのプログラムを含み、記憶し、伝達し、伝搬し、若しくは搬送することができる任意の機器とすることができる。この媒体は、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外、又は半導体のシステム(又は機器若しくは装置)若しくは伝搬媒体であり得る。コンピュータ可読媒体の例は、半導体メモリや固体メモリ、磁気テープ、着脱可能なコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、磁気ハードディスク、及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例は、コンパクトディスク−読取専用メモリ(CD−ROM)、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)、Blu-Ray(商標)、及びDVDを含む。
【0019】
次に、似た数字が同じ又は同様の要素を表す図面を参照し、まず
図1には、一実施形態によるECGシステム100が例示的に示されている。システム100は、ECG装置又はワークステーション112を含むことができ、例えば心電計、患者モニタ、又は除細動器内でそこからECG測定値又は検査が取られ監視される。ワークステーション112は、好ましくは1個又は複数個のプロセッサ114と、プログラム及びアプリケーションを記憶するためのメモリ116とを含む。メモリ116は、心電図描画システム又はモジュール152を記憶することができ、描画モジュール152は、利用者がECGレポート136を閲覧し、解析し、編集することを可能にする1つ若しくは複数のモジュールを含み又は1つ若しくは複数のモジュールと共に動作する。レポート136は、好ましくは描画システム152を使用してディスプレイ118上にデジタル描画される。描画モジュール152は、インターフェイス120に結合され、インターフェイス120は、説明されるように、データ入力がECG誘導(例えば出力波形)の一部を印付けし、ラベル付けし、強調表示し、又は他の方法で指定することを可能にするように構成される。ECGデジタル化モジュール154は、描画システム152による使用、例えばアナログ−デジタル変換のために、電極130からの出力をデジタル化する。電極130は、デジタル化モジュール154に接続する。ECG測定モジュール148は、デジタル化モジュール154からのデジタル化された出力を使用して、患者又は他のシステムから集められる測定データに対する測定を行う。解釈モジュール150は、測定モジュール148からの測定情報を使用して解釈ステートメントを発行する。
【0020】
例示的実施形態によれば、ディスプレイの解像度及びグリッドが、モニタ/除細動器112の電子ディスプレイ118上でECG誘導の診断表現を可能にすることができる。例えば、モニタ/除細動器のディスプレイ118は、波形上でのズームイン後に例えばインチ当りドット数(DPI)単位で測定される十分な解像度を有し、該当する国際的なECG標準内で規定される診断解像度をもたらすことができる。ディスプレイ118は、システム112のメインハウジングの一部とすることができ、出力に結合される関連するタブレット若しくはPCの一部とすることができ、又はローカルに若しくは遠隔的に位置し、例えば配線、無線、又はインターネットによって直接若しくは間接的に接続される、関連する携帯型表示装置又は他の表示装置メカニズムの一部とすることができる。システム112、例えばモニタ、除細動器、ECG装置等は、適切な時間及び振幅尺度でグリッド上に重ね合わせられるECG誘導トレーシングを表示することができる。グリッドは、ディスプレイ118上で審査される実時間のECG誘導波、更には取得された(例えば12誘導や16誘導)ECGセグメントの両方について表示され得る。
【0021】
システム100の例示的応用例は、これだけに限定されないが、例えば救急医療サービス(EMS)、高度救命処置(ALS)ケア、病院ALSケア、航空医療搬送、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)プログラム、米国心臓協会「ドアツーバルーン」イニシアチブ、12誘導ECG解析、及び/又は12+誘導(16、18又はそれ以上の)ECG解析等を含み得る。更に、本明細書で与えられる教示に照らして当業者なら理解するように、本明細書に記載の例示的実施形態によるディスプレイの複数の組合せが可能であり、例えば個人利用者が自分独自のディスプレイを有すること、及び/又は利用者の動き及び位置に関係なく他の利用者の同一情報が提示されることを可能にする。更に、例えば既定のテンプレートから選択すること、特定の情報フィールドを選択すること、別の特定の利用者のディスプレイを選択すること等により、利用者に表示され又は強調表示されている具体的情報を利用者が最初に選択し、随時変更することが可能である。
【0022】
ECG装置112は、レポート136を閲覧するためのディスプレイ118を含み、他のデータを含み若しくは表示し、又はECG装置112を制御し若しくは管理するためのインターフェイス(例えばタッチスクリーン、マウス、トラックボールで制御されるカーソル等)を提供することができる。ディスプレイ118は、ECG装置112、その構成要素、及び機能、又はシステム100内の他の任意の要素と利用者が対話することも可能にし得る。これは、ECG装置112からのユーザフィードバック及びECG装置112との対話を可能にするための、キーボード、マウス、ジョイスティック、触覚装置、又は他の任意の周辺装置若しくは制御部を含み得るインターフェイス120によって更に容易にされる。ECG装置112は、レポート136又は必要に応じて他の関連情報を出力するためのプリンタ122も含むことができる。ECG装置112は、アラーム、電源接続、他のソフトウェア機能等、他の機能及び能力134を含むことができる。
【0023】
ECG装置112は、測定を行うために患者に接続される複数の電極130を含むことができる。電極130の数及び種類は、応用例、装置、及び検査プロトコルに応じて異なり得る。一例では、Philips(登録商標)12/16誘導DXL、及びPhilips(登録商標)12誘導ECGの前のバージョンが使用され得る。
【0024】
一例では、Philips(登録商標)12/16誘導DXLアルゴリズム、及びPhilips(登録商標)12誘導ECGアルゴリズムの前のバージョン(例えば解釈モジュール150)が、10秒静止時ECG内で見られるECGのリズム及び任意の異常を記述する解釈ステートメントを提供する。このステートメントは2つの部分、つまり左側の状態についての記述と、その状態について満たされるECG基準の一覧又はステートメントの表示理由とを有する。他の形式も考えられる。これらの理由は、ECGレポートを審査し、ことによると正している臨床医が、自動化されたアルゴリズム(例えば解釈モジュール150)がそのステートメントを示した理由を理解するのを助ける。一部の例では、ステートメント及びその根拠が容易に理解できない場合があり、又は検討され若しくは解析されている特徴がECG波形内で容易に識別可能ではない場合もある。
【0025】
ステートメントの表示理由を理解することは、臨床医が編集中にそのステートメントを保ち又は削除するのを助けることができる。理由内のECG基準が満たされておらず、ステートメントが正しくないと臨床医が疑う場合、臨床医は自らの意思決定に追加情報を織り込むことができ、更にはそのステートメントを削除し又は除去することができる。更に、ECG基準が満たされている場合、臨床医はそのステートメントがふさわしいことに自信をもつことができる。
【0026】
解釈の「理由」部分を更に拡張するために、波形自体の中の異常が本原理に従って強調表示され得る。この機能は、専門家及び初心者のECG閲覧者の両方にとって有用であり得る。両者に対して、この機能は、解釈を読んでから波形のその部分を細かく調べる代わりに、ECG解釈を一目見てすぐに理解するのを助けることができる。ECGアルゴリズム(例えば解釈モジュール150)によって生成される解釈ステートメントよりも、ECGの自分の読み取りを信頼する臨床医にとっては、この機能は臨床医の注意を関心のある特性に向けさせることによって役立ち得る。
【0027】
例示的実施形態によれば、臨床上の許容閾値を上回るECG波形(及び他の波形)の特徴を視覚的に強調表示することが実行されても良く、従ってかかる強調表示は、波を解釈し、患者の状態を診断する際に臨床的な意義をもつ。視覚的な強調表示は、例えば心電計、患者モニタ、又はモニタ/除細動器の電子ディスプレイ118上で、並びにそれらの装置によって生成される電子レポート136及び物理的印刷出力内で提示されるECG波上で明白であり得る。
【0028】
例えば以下は、利用者がデジタル描画された波形と対話することができる例示的方法である。一例では、ECG基準に基づく異常及び/又は解釈内でコールアウトされた異常が、波形の間隔、セグメント、又は振れの異なる色(又は陰影)及び太さ、波形の間隔、セグメント、又は振れの背後の強調表示、波形を囲む円、正方形、若しくは他の何らかの形状、及び/又は波形を指す矢印のうちの1つ又は複数を(例えば特定の組合せ又は構成で)使用することによって強調され得る。他の視覚的特徴又は音声的特徴も考えられる。一実施形態では、強調表示されたECG特徴の上にカーソルを重ね合わせることを使用し、ECG解釈の該当部分を強調することができる。ECG解釈上にカーソルを重ね合わせることが、ECG波形の強調表示された該当部分を強調することもできる。強調表示されたECG特徴の上に重ね合わせることは、ツールチップタイプのポップアップボックス又はメッセージボックス内に解釈ステートメントを表示することができる。
【0029】
更に他の実施形態では、解釈内の波形の名前又はラベルが波形内で認識され得るように、波形の異常なセクションが名前付けされ又はラベル付けされ得る。例えばST上昇等の重要な測定値が、強調表示された領域の隣に又は指定された領域の中に表示されても良い。カーソルを動かすこと、又は「重ね合わせること」は、タッチスクリーン、マウス、トラックボール等によって実現され得る。
【0030】
図2〜
図4は、レポートの例の中のECG波形内の対応する特徴を強調表示するために、テキストで強調表示されている解釈ステートメントの例を示す。
図2は、12誘導ECGレポートである。
図3及び
図4は、利用者が解釈のステートメントを選択するときに何が起こるのかを示す。逆動作も使用され得ることに留意すべきである。例えば、波形の一部が選択される場合があり、該当する解釈ステートメントが強調表示されても良い。
【0031】
図2を参照し、一例示的実施形態による12誘導ECGレポート200の一例が示されている。レポート200は、解釈ステートメント202を含み、解釈ステートメント202は、2つの部分、つまり左側の状態についての記述と、その状態について満たされるECG基準の一覧206又はステートメントの表示理由とを有する。これらの理由206は、ECGレポートを審査し、ことによると正している臨床医が、自動化されたアルゴリズムがそのステートメントを示した理由を理解するのを助ける。一部の例では、ステートメント及びその根拠が容易に理解できない場合があり、又は検討され若しくは解析されている特徴が、図中に示されているECG波形I、II、III、...V6内で容易に識別可能ではない場合もある。他の測定データ208又は入力データ210も提供され得る。
【0032】
図3を参照し、一実施形態によれば、解釈ステートメント212が、マウスによって導かれるカーソル、矢印キーを使用することによって選択され、又はタッチスクリーン等によって選択される。この例では、解釈ステートメント212が右脚ブロック(RBBB:right bundle branch block)を含む。解釈ステートメント212が強調表示されるようになり(例えば変えられた色、フォントサイズ、テキストの特徴等)、該当する測定値がECG波形(I、II、III等)に参照されて表示される。例えば一覧206は、120msを超えるQRS持続時間215を含む。解釈ステートメント212を強調表示/選択する結果として、該当する測定値224がQRS波部分の範囲及び対応するラベル226を示す。関係する他の測定値は、対応するボックス216を有する218でラベル付けされた誘導I内の幅の広いS波、及び対応するボックス230を有する228でラベル付けされたV6内の幅の広いS波を含む。V1内の顕著なR’もボックス220及びラベル222によって強調表示されている。このようにして、利用者は特定の解釈ステートメント(例えばこの場合は212)に寄与する誘導波形の特徴を直ちに見ることができる。
【0033】
図4を参照し、別の実施形態によれば、解釈ステートメント240が、マウスによって導かれるカーソル、矢印キーを使用することによって選択され、又はタッチスクリーン等によって選択される。この例では、解釈ステートメント240がPR間隔延長を含む。解釈ステートメント240が強調表示されるようになり(例えば変えられた色、フォントサイズ、テキストの特徴等)、該当する測定値がECG波形(I、II、III等)に参照されて表示される。例えば、ECG基準一覧は、220msを超えるPR持続時間242を含む。解釈ステートメント240を強調表示/選択する結果として、該当する測定値244が波部分内のPR間隔の範囲及び対応するラベル246を示す。
【0034】
本原理によれば、波形の関係する部分を示すために波形領域内にボックスが実装されるが、他の形状及び視覚メカニズム(例えば円、点線、テクスチャ、色等)が使用されても良い。これらのボックスは、解釈ステートメント内の強調表示された又はイタリック体のテキストに対応するが、これはECG波形とテキストによる解釈との間の対応関係を本原理に従って示す一例に過ぎない。例示的応用例は、これだけに限定されないが、例えば安静時の12誘導ECG解釈、ストレステストECG解釈、モニタリング波形解釈、ECGやカプノグラム等の他の波形を含めること、アラームストリップ解釈、リズム解釈用のマーキング機能を含めること等を含み得る。更に、本明細書で与えられる教示に照らして当業者なら理解するように、本明細書に記載の例示的実施形態によるディスプレイの複数の組合せが可能であり、例えば個人利用者が自分独自のディスプレイを有すること、及び/又は利用者の動き及び位置に関係なく他の利用者の同一情報が提示されることを可能にする。更に、例えば既定のテンプレートから選択すること、特定の情報フィールドを選択すること、別の特定の利用者のディスプレイを選択すること等により、どの具体的情報が利用者に表示され又は強調表示されるのかを利用者が最初に選択し、随時変更することが可能である。
【0035】
図5を参照し、利用者がECGレポートを閲覧し、解析し、編集することを可能にする1つ又は複数のモジュールを含む、ECG描画システム/方法300(例えば
図1のモジュール152)が示されている。ブロック302で、当技術分野で知られている解釈アルゴリズム又は方法を使用し、ECGが自動的に実行され解釈される。波形の形状が識別される。ブロック304で、ECG解釈内のテキストによるステートメント(ブロック302で出力される解釈ステートメント)ごとに、特定の陽性のECG基準が波形内で識別され、測定値及び閾値の両方について記憶される。
【0036】
ブロック306で、テキストステートメントを求めるのに関与した各測定値、即ち測定値、閾値、及びECG波形に対する測定位置等が相関され、記憶される。特定のテキストステートメントが利用者によって選択されると、解釈をトリガしたECG基準を示すラベルと共に基準線又はボックスを描くために、記憶された値が使用される。ブロック308で、振幅、持続時間、又は他の測定値を示すために、解釈ステートメントに関与する測定値/測定基準が、点線、ボックス、ラベル等を用いて信号上で注釈を付けられる。これらの注釈は、後で描画するために記憶される。
【0037】
ブロック310で、異なるテキストステートメント間でECG測定値、閾値、及び測定位置が混同されないように、一度に1つのテキストステートメントが選択される。選択は、ポイントアンドクリック、タッチスクリーン等の知られている方法を使用して行われ得る。ブロック312で、テキストステートメント(解釈ステートメント)に関連する注釈がデジタルで、デジタル画像として、又はデジタル描画として波形上に描画される。
【0038】
図6を参照し、利用者がECGレポートを閲覧し、解析し、編集することを可能にする1つ又は複数のモジュールを含む、別のECG描画システム/方法400(例えば
図1のモジュール152)が示されている。ブロック402で、ECG波形が検出され、測定され、解釈され、その後、描画モジュールに入力される。ECG測定値は、例えばQRS持続時間、PR間隔、QT間隔、Q波振幅、R波振幅、S波振幅、Q波持続時間、R波持続時間等を含み得る。
【0039】
ブロック404で、解釈と測定値との間の対応関係に基づいてECGが解析される。ブロック406で、検出された異常ごとの具体的解析に基づく解釈ステートメントが、ECG波形のそれらの解釈ステートメントの異常特性に関連付けられる。ブロック408で、特定の解析に使用された測定値が解釈ステートメントごとに記憶される。測定値は、名前、値、閾値、カテゴリの種類、振幅や持続時間(例えばy方向又はx方向の大きさ)、測定値及び関連する点、線、ボックス、又は他の形状が波形上で印付けされるべき場所への参照のうちの1つ又は複数を含む情報と共に記憶されても良い。ラベルとして使用するために、この情報及び他の情報(例えば利用者の注釈)がフォーマットされても良い。
【0040】
ブロック410で、波形がECGレポート内に描画され又は他の方法で視覚化される。レポートは、解釈ステートメント及び波形の両方を含むことができる。解釈ステートメントは、好ましくは波形と同じビュー内で提供される。
【0041】
ブロック412で、利用者が説明用のステートメントを選択する。この選択は、例えばカーソルやポインティング装置によって解釈ステートメント上に重ね合わせることによって、又はステートメントをクリックすることによって行われ得る。ブロック414で、被選択項目に関する識別特性が示される。一実施形態では、波形の一部の上に重ね合わせることが、前に記憶されたラベル、索引、形状、線の出現を引き起こし、又は波形若しくは解釈ステートメントの一部の識別を可能にし得る。一例では、どの項目が選択されているのか利用者が分かるように、解釈ステートメント又は他の項目が強調表示され、イタリック体にされ、太字等にされても良い。
【0042】
ブロック416で、被選択解釈ステートメントに関する記憶済みの測定値及び/又は他の情報が取得される。ブロック418で、ECG波形に参照される関係する測定値、注釈、ラベル等が、波形上に表示されるようにデジタル的にプロットされ又は描画される。ブロック418で、被選択ステートメントに関係する測定値ごとに、例えば等電位線やQRSの始まりに関係付けられる線、矢印、ボックス、形状を含む、測定値、ラベル、注釈等がプロットされる。線/ボックスは、それが振幅なのか持続時間なのかに基づいて水平に又は垂直に方向付けられ得る。ボックスは、他の形式又は形状を取っても良い。それらの形式又は形状は、測定値の他の特性(例えば第1の点、第2の点等)を表すための他の特徴(色、テクスチャ等)を含むことができる。記憶済みの測定名、値、閾値等からも測定ラベルがプリントされ得る。
【0043】
ブロック420で、解釈ステートメント一覧内の他のステートメントについて、このプロセスが繰り返されても良い。各解釈ステートメントは、ステートメントが選択される場合にのみ、その関連する注釈を表示させることが好ましいが、他の実施形態によれば、比較機能が提供される場合があり、これにより、ECGの理解を更に支援するように複数の解釈ステートメントについて2つ以上の注釈の組が一緒にプロットされる。ブロック422で、その波形に関係する対応する測定値、波形のその部分に関連する異常、波形のその部分の識別情報、波形のその異常又は部分に関連する、関係するテキストによる解釈等のうちの1つ又は複数を明らかにするためにカーソルが利用者によって波形上に動かされ得る。
【0044】
添付の特許請求の範囲を解釈する際、以下を理解すべきである。
a)「含む」という語は、所与の請求項の中で列挙される以外の要素又は行為があることを除外するものではない。
b)或る要素の前に来る語「a」又は「an」は、その要素が複数あることを除外するものではない。
c)特許請求の範囲の中の如何なる参照記号も、その範囲を限定するものではない。
d)幾つかの「手段」が、同じアイテム、ハードウェア、又はソフトウェアによって実装される構造若しくは機能によって表現されることがある。
e)別段の定めがない限り、行為の特定の順序が要求されることは意図しない。
【0045】
デジタルディスプレイ上のECG誘導の診断表現及び解釈のための(限定的ではなく例示的であることを意図する)好ましい実施形態について説明してきたが、修正及び改変が上記の教示に照らして当業者によって加えられ得ることを指摘しておく。従って、開示した本明細書の特定の実施形態において変更が加えられても良く、かかる変更も、添付の特許請求の範囲によって略述される本明細書に開示した実施形態の範囲に含まれることが理解されるべきである。特許法によって要求される詳細及び独自性についてこうして記載してきたが、権利を主張し、特許証によって保護されることを望む内容を添付の特許請求の範囲に記載する。