特許第6407913号(P6407913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407913
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 25/00 20060101AFI20181004BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F25D25/00 E
   F25D11/00 101A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-83303(P2016-83303)
(22)【出願日】2016年4月19日
(65)【公開番号】特開2017-194193(P2017-194193A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2016年9月26日
【審判番号】不服2017-15567(P2017-15567/J1)
【審判請求日】2017年10月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
【合議体】
【審判長】 山崎 勝司
【審判官】 松下 聡
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−145747(JP,A)
【文献】 実開平3−87681(JP,U)
【文献】 特開昭59−26473(JP,A)
【文献】 特開平6−171674(JP,A)
【文献】 特開2013−100974(JP,A)
【文献】 実公平1−34066(JP,Y2)
【文献】 特開2010−25532(JP,A)
【文献】 特開2006−29621(JP,A)
【文献】 特開2007−113858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D17/06-17/08
F25D25/00
B65D81/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷凍室は、前記冷蔵室の下方に隣設される上部冷凍室と、前記上部冷凍室の下方に隣設される下部冷凍室と、を有し、
前記下部冷凍室は、前記上部冷凍室よりも幅寸法が大きく、最上段貯蔵容器、上段貯蔵容器及び下段貯蔵容器が配置され、
前記最上段貯蔵容器は、前記上段貯蔵容器及び前記下段貯蔵容器と比べて高さ寸法が小さく、
記最上段貯蔵容器内であって、前記最上段貯蔵容器の底面の略全域に金属トレイが配置され、
前記金属トレイ表面上に凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ、
左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置し
前記最上段貯蔵容器の上方に近接して温度センサが配置されており、
前記最上段貯蔵容器内に食品が収納されたら前記温度センサを用いて自動的に急速冷凍することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷凍室は、前記冷蔵室の下方に隣設される上部冷凍室と、前記上部冷凍室の下方に隣設される下部冷凍室と、を有し、
前記下部冷凍室は、前記上部冷凍室よりも幅寸法が大きく、最上段貯蔵容器、上段貯蔵容器及び下段貯蔵容器が配置され、
前記最上段貯蔵容器は、前記上段貯蔵容器及び前記下段貯蔵容器と比べて高さ寸法が小さく、
記最上段貯蔵容器内であって、前記最上段貯蔵容器の底面の略全域に金属トレイが配置され、
前記金属トレイ表面上に凸部が奥行方向および左右方向に複数設けられ、
奥行方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部が、左右方向に隣接する前記凹部と連続的に位置し
前記最上段貯蔵容器の上方に近接して温度センサが配置されており、
前記最上段貯蔵容器内に食品が収納されたら前記温度センサを用いて自動的に急速冷凍することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、
前記冷凍室は、前記冷蔵室の下方に隣設される上部冷凍室と、前記上部冷凍室の下方に隣設される下部冷凍室と、を有し、
前記下部冷凍室は、最上段貯蔵容器、上段貯蔵容器及び下段貯蔵容器が配置され、
前記上部冷凍室は、製氷及び氷の貯蔵を行う製氷室の側方に隣設され、前記下部冷凍室よりも幅寸法が小さく、
記最上段貯蔵容器は、他の貯蔵容器と比べて高さ寸法が小さく、
前記最上段貯蔵容器の底面の略全域にアルミトレイが配置され、
前記アルミトレイ表面上に形成される複数の凸部が、格子状に並んでおり、
前記最上段貯蔵容器の上方に近接して温度センサが配置されており、
前記下部冷凍室の背面側に、前記冷気供給路から供給される前記冷気の吐出口を備え、
前記最上段貯蔵容器内に食品が収納されたら、前記温度センサによって自動的に前記吐出口から前記冷気を吹き出し、食品が収納された前記最上段貯蔵容器を急速冷却することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記最上段貯蔵容器の前側壁面が、前記最上段貯蔵容器の左右側壁面と比べて、低く形成されていることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品や飲料水等を冷蔵或いは冷凍して貯留する冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では核家族化や共働き夫婦の増加等の家庭環境の変化により、冷凍室での冷凍保存法が多様化する傾向にある。家庭での冷凍室の使い方には、冷凍温度帯で販売されていた食品を購入して貯蔵するこれまでの使い方の他に、買い溜めした食品、例えば肉類の急速冷凍保存、或いは調理した料理の急速冷凍保存といった急速冷凍モードを主体とする使い方が提案されている。
【0003】
例えば、特開2010-25530号公報(特許文献1)においては、冷凍室の上段容器(上部冷凍室)の底部に、熱伝導性の良いアルミで形成された蓄冷材を設け、この蓄冷材の外皮肉厚に表面積を増加させるため凹凸を設けることにより、食品を急速に冷却させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-25530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の冷蔵庫は、下部冷凍室の上側に隣設される上部冷凍室に、温度の高い食品を収納して急速冷却するものであり、下部冷凍室を急速冷却させるものではない。また、冷凍室内の畜冷材に設けられる凹凸も、具体的にどのような配置にするのか開示されていない。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、幅寸法の広い冷蔵室または下部冷凍室であっても、貯蔵容器内のトレイと食品との間を冷気が通過し易くすることで、温度の高い食品や多量の食品が収納されたた場合に急速冷却する冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、冷蔵室及び冷凍室を形成する断熱箱体と、冷気を生成する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルからの冷気を送風ファンによって前記冷蔵室及び前記冷凍室に供給する冷気供給路とを備えた冷蔵庫において、前記冷凍室は、前記冷蔵室の下方に隣設される上部冷凍室と、前記上部冷凍室の下方に隣設される下部冷凍室と、を有し、前記下部冷凍室は、前記上部冷凍室よりも幅寸法が大きく、最上段貯蔵容器、上段貯蔵容器及び下段貯蔵容器が配置され、前記最上段貯蔵容器は、前記上段貯蔵容器及び前記下段貯蔵容器と比べて高さ寸法が小さく、記最上段貯蔵容器内であって、前記最上段貯蔵容器の底面の略全域に金属トレイを配置し、前記金属トレイ表面上に凸部を奥行方向および左右方向に複数設け、左右方向に複数並んだ前記凸部の間に形成される凹部を、奥行方向に隣接する前記凹部と連続的に位置させ、前記最上段貯蔵容器の上方に近接して温度センサを配置し、前記最上段貯蔵容器内に食品が収納されたら前記温度センサを用いて自動的に急速冷凍する
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、幅寸法の広い冷蔵室または下部冷凍室であっても、貯蔵容器内のトレイと食品との間を冷気が通過し易くすることで、温度の高い食品や多量の食品が収納されたた場合に急速冷却する冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用される冷蔵庫の正面外観図である。
図2図1に示す冷蔵庫の縦断面を示す縦断面図である。
図3図1に示す冷蔵庫の庫内の背面内部の構成を示す正面図である。
図4】本発明の実施例における冷凍室の要部拡大断面図である。
図5図4に示す温度センサ付近の要部拡大断面図である。
図6】最上段冷凍貯蔵容器およびアルミトレイの斜視図である。
図7】最上段冷凍貯蔵容器およびアルミトレイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0011】
本発明の具体的な実施例を説明する前に、本発明が適用される冷蔵庫の構成を図1乃至図3に基づいて説明する。図1は冷蔵庫の正面外観図であり、図2図1の縦断面を示す断面図であり、図3図1に示す冷蔵庫の庫内の背面内部の構成を示す正面図である。尚、図2においては製氷室の断面は示されていない。
【0012】
図1、及び図2において、冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、製氷室(冷凍室の一部である)3及び上部冷凍室4、下部冷凍室5、野菜室6を有する。ここで、製氷室3と上部冷凍室4は、冷蔵室2と下部冷凍室5との間に左右に並べて設けている。一例として、冷蔵室2はおよそ+3℃、野菜室6はおよそ+3℃〜+7℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上部冷凍室4及び下部冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。尚、図示していないが、製氷室3と上部冷凍室4と間には縦方向に配置された仕切部が設けられており、この仕切壁を境に製氷室3と上部冷凍室4とが左右方向に並設されている。また、上部冷凍室4は、その下方に隣設される下部冷凍室5より幅寸法が小さく、下部冷凍室5より容積が小さく、少量の食品が冷凍、貯蔵されるものである。
【0013】
冷蔵室2は前方側に、左右に分割された観音開き(いわゆるフレンチ型)の冷蔵室扉2a、2bを備えている。製氷室3、上部冷凍室4、下部冷凍室5、野菜室6は夫々引き出し式の製氷室扉3a、上部冷凍室扉4a、下部冷凍室扉5a、野菜室扉6aを備えている。
【0014】
また、各扉の貯蔵室側の面には、各扉の外縁に沿うように磁石が内蔵されたパッキン(図示せず)を設けており、各扉の閉鎖時、鉄板で形成された冷蔵庫外箱のフランジや各仕切り鉄板に密着し貯蔵室内への外気の侵入、及び貯蔵室からの冷気の漏れを抑制する構成とされている。
【0015】
ここで、図2に示すように冷蔵庫本体10の下部には機械室11が形成され、この中に圧縮機12が内蔵されている。冷却器収納室13と機械室11には水抜き通路14によって連通され、凝縮水が排出できるようになっている。
【0016】
図2に示すように、冷蔵庫本体10の庫外と庫内は、内箱と外箱との間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体15により隔てられている。また冷蔵庫本体10の断熱箱体15は複数の真空断熱材16を実装している。冷蔵庫本体10は、上側断熱仕切壁17aにより冷蔵室2と上部冷凍室4及び製氷室3(図1参照、図2中で製氷室3は図示されていない)とが区画され、下側断熱仕切壁17bにより下部冷凍室5と野菜室6とが区画されている。
【0017】
また、下部冷凍室5の上部には横仕切部18を設けている。横仕切部18は、製氷室3及び上部冷凍室4と下部冷凍室5とを上下方向に仕切っている。ただ、製氷室3、上部冷凍室4及び下部冷凍室5は流体的につながれているので、同じ冷気が供給されている。また、横仕切部18の上部には、製氷室3と上部冷凍室4との間を左右方向に仕切る縦仕切部を設けている。
【0018】
横仕切部18は、下側断熱仕切壁17bの前面及び左右側壁前面と共に、下部冷凍室扉5aの貯蔵室側の面に設けたパッキン(図示せず)と接触する。製氷室扉3aと上部冷凍室扉4aの貯蔵室側の面に設けたパッキン(図示せず)は、横仕切部18、縦仕切部53(図4)、上側断熱仕切壁17a及び冷蔵庫本体1の左右側壁前面と接することで、各貯蔵室と各扉との間での冷気の移動をそれぞれ抑制している。なお、製氷室3、上部冷凍室4及び下部冷凍室5は、同じ冷凍温度帯で保たれているので、横仕切部18及び縦仕切部53の断熱性能は、上側断熱仕切壁17aや下側断熱仕切壁17bほどは要求されない。
【0019】
図2に示すように、上部冷凍室4、下部冷凍室5及び野菜室6は、それぞれの貯蔵室の前方に備えられた扉4a、5a、6aが取り付けられている。また、上部冷凍室4には上部冷凍貯蔵容器41が配置され、下部冷凍室5には複数段の冷凍貯蔵容器、すなわち最上段冷凍貯蔵容器63、上段冷凍貯蔵容器61及び下段冷凍貯蔵容器62が配置されている。更に、野菜室6には上段野菜貯蔵容器71、下段野菜貯蔵容器72が配置されている。
【0020】
そして、製氷室扉3a、上部冷凍室扉4a、下部冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、それぞれ図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、製氷貯蔵容器3b(図示せず)、上部冷凍貯蔵容器41、下段冷凍貯蔵容器62、下段野菜貯蔵容器72が引き出せるようになっている。
【0021】
詳しくは、下段冷凍貯蔵容器62は冷凍室扉内箱に取り付けられた支持アーム5dに下段冷凍貯蔵容器62の側面上部のフランジ部が懸架されており、冷凍室扉5aを引き出すと同時に下段冷凍貯蔵容器62のみが引き出される。最上段冷凍貯蔵容器63及び上段冷凍貯蔵容器61は、冷凍室5の側面壁に形成された凹凸部(図示しない)に載置されており前後方向にスライド可能になっている。
【0022】
下段野菜貯蔵容器72も同様にフランジ部が野菜室扉6aの内箱に取り付けられた支持アーム6dに懸架され、上段野菜貯蔵容器71は野菜室側面壁の凹凸部に載置されている。また、この野菜室6には断熱箱体15に固定された電熱ヒーター6Cが設けられており、この電熱ヒーター6Cによって野菜室6の温度が冷やし過ぎにならないように、野菜の貯蔵に適した温度になるようにしている。尚、この電熱ヒーター6Cは必要に応じて設けられれば良いものであるが、本実施例では野菜の貯蔵がより上手く行えるように電熱ヒーター6Cを設けるようにしている。
【0023】
次に冷蔵庫の冷却方法について説明する。冷蔵庫本体1には冷却器収納室13が形成され、この中に冷却手段として冷却器19を備えている。冷却器19(一例として、フィンチューブ熱交換器)は、下部冷凍室5の背部に備えられた冷却器収納室13内に設けられている。また、冷却器収納室13内であって冷却器19の上方には送風手段として送風ファン20(一例として、プロペラファン)が設けられている。
【0024】
冷却器19で熱交換して冷やされた空気(以下、冷却器19で熱交換した低温の空気を「冷気」と称する)は、送風ファン20によって冷蔵室送風ダクト21、冷凍室送風ダクト22、及び図示しない製氷室送風ダクトを介して、冷蔵室2、製氷室3、上部冷凍室4、下部冷凍室5、野菜室6の各貯蔵室へそれぞれ送られる。
【0025】
各貯蔵室への送風は、冷蔵温度帯の冷蔵室2への送風量を制御する第一の送風制御手段(以下、冷蔵室ダンパ23という)と、冷凍温度帯の冷凍室4、5への送風量を制御する第二の送風量制御手段(以下、冷凍室ダンパ24という)とにより制御される。ちなみに、冷蔵室2、製氷室3、上部冷凍室4、下部冷凍室5、及び野菜室6への各送風ダクトは、図3に破線で示すように冷蔵庫本体1の各貯蔵室の背面側に設けられている。具体的には、冷蔵室ダンパ23が開状態、冷凍室ダンパ24が閉状態のときには、冷気は、冷蔵室送風ダクト21を経て多段に設けられた吹き出し口25から冷蔵室2に送られる。
【0026】
また、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室2の下部に設けられた冷蔵室戻り口26から冷蔵室−野菜室連通ダクト27を経て、下側断熱仕切壁18の下部右奥側に設けた野菜室吹き出し口28から野菜室6へ送風される。野菜室6からの戻り冷気は、下側断熱仕切壁18の下部前方に設けられた野菜室戻りダクト入口29から野菜室戻りダクト30を経て、野菜室戻りダクト出口から冷却器収納室13の下部に戻る。尚、別の構成として冷蔵室−野菜室連通ダクト27を野菜室6へ連通せずに、図3において冷却器収納室12の上面から見て、右側下部に戻す構成としてもよい。この場合の一例として、冷蔵室−野菜室連通ダクト27の前方投影位置に野菜室送風ダクトを配置して、冷却器19で熱交換した冷気を、野菜室吹き出し口28から野菜室6へ直接送風するようになる。
【0027】
図2図3に示すように、冷却器収納室13の前方には、各貯蔵室と冷却器収納室12との間を仕切る仕切部材31が設けられている。仕切部材31には、図3にあるように上下に一対の吹き出し口32a、32b、33a、33bが形成されており、冷凍室ダンパ24が開状態のとき、冷却器19で熱交換された冷気が送風ファン20により図示を省略した製氷室送風ダクトや上段冷凍室送風ダクト34を経て吹き出し口32a、32bからそれぞれ製氷室3、上部冷凍室4へ送風される。また、下段冷凍室送風ダクト35を経て吹き出し口、33a、33bから下部冷凍室5へ送風される。尚、下部冷凍室5には必要に応じて吹き出し口を増設しても良いものである。
【0028】
以上のような構成の冷蔵庫において、上部冷凍貯蔵容器41と冷蔵室との間の熱伝達を抑制しつつ、温度の高い食品が収納されたら自動的に急速冷凍できる冷蔵庫が要請されている。次に本発明の実施例について図4乃至図6を用いて説明する。
【0029】
図4は冷凍室の要部拡大断面を示し、図5は温度センサ付近の要部拡大断面を示している。図4において、製氷室3と上部冷凍室4を仕切る縦仕切部(真空断熱材を備えていない仕切構成材である)53の奥行側端面にはサーミスタ等から構成された第1の温度センサ50が取り付けられている。また、下部冷凍室5の上側付近の背面壁51には、これもサーミスタ等から構成された第2の温度センサ52が配置されている。
【0030】
本実施例では、第1の温度センサ50は食品温度に左右される空間の温度を測定し、第2のセンサ52は食品温度に左右されない空間の温度を測定するものである。したがって、この2個の温度センサの出力信号の変動状態から、上部冷凍室4や下部冷凍室5に冷凍室温度より高い温度の食品が収納されたかどうかを判断するものである。ここで、第2の温度センサ52は、既に従来から設けられている温度センサであるので、詳細な構成についての説明は省略する。なお、第1の温度センサ50は、サーミスタに限らず、赤外線センサなどの非接触で温度を検出するものであっても良い。ただし、食品が視野範囲内にないと温度が測定できない赤外線センサと比べて、サーミスタの方が設計自由度は高いので、第1の温度センサ50はサーミスタで構成するのが望ましい。
【0031】
さて、本実施例の特徴となっている第1の温度センサ50は、図5に示している通り、横仕切部18に直交するように設けた縦仕切部53の下端に設けられている。縦仕切部53の奥行方向下端部分54には第1の温度センサ50が配置されており、第1の温度センサ50の信号線55は、縦仕切部53の内部を通って外部に接続されるようにコネクタ56に接続されている。尚、第1の温度センサ50、信号線55の一部はセンサカバー57で覆われており、このセンサカバー57は、縦仕切部53に一体化されるようにねじ、接着剤、溶着等の固定手段で縦仕切部53に固定されている。
【0032】
ここで、縦仕切部53には、第1の温度センサ50、信号線55、出力信号を外部に伝送するコネクタ56、センサカバー57が事前に組み込まれて組立体として構成されており、この縦仕切部53の組立体を上側断熱仕切壁17aにねじによって固定することで、縦仕切部53を組み込むことができる。尚、上側断熱仕切壁17aの下側の縦仕切部53が位置する領域には、制御装置に繋がるコネクタ(図示せず)が固定されている。
【0033】
したがって、縦仕切部53を組み込むことによって、第1温度センサ50のコネクタ56と接続することができる構成である。また、下部冷凍室5には、下方から下段冷凍貯蔵容器62、上段冷凍貯蔵容器61、最上段冷凍貯蔵容器63が配置されている。
【0034】
このような構成において、下部冷凍室5の最上段冷凍貯蔵容器63に生肉や調理済みの食品が収納されたとする。
【0035】
この時、第1の温度センサ50は、下部冷凍室5の最上段冷凍貯蔵容器63の鉛直投影内であって、最上段冷凍貯蔵容器63の上端部より高く、上側断熱仕切壁17aの下端部や上部冷凍室4の上部冷凍貯蔵容器41の上端部よりも低い位置にある。このように、第1の温度センサ50は、最上段冷凍貯蔵容器63の上方に近接して配置されているので、収納された食品の温度の影響を受け易くなっている。つまり、第1の温度センサ50は食品温度に左右される空間の温度を測定しているものである。
【0036】
一方、第2の温度センサ52は、下部冷凍室5の最上段冷凍貯蔵容器63の鉛直投影外、具体的には下部冷凍室5の背面側にあって、最上段冷凍貯蔵容器63から離れて配置されているので、収納された食品の温度の影響を受け難くなっている。つまり、第2のセンサ52は食品温度に左右されない空間の温度を測定するものである。したがって、第1の温度センサ50の出力と第2の温度センサ52の時系列的な出力信号の変動状態を比較することで、食品が収納されたかどうかが判断できるようになる。
【0037】
また、本実施例では、上側断熱仕切壁17aに第1の温度センサ50を設けないので、上側断熱仕切壁17aに真空断熱材を広く貼り付けられ、上側断熱仕切壁17aからの冷熱の漏洩を抑制することができる。すなわち、冷凍室と冷蔵室との間の熱の移動が抑制されるので、冷凍室を冷やすための電力消費を抑制でき、また冷蔵室の冷やし過ぎも抑制できる。
【0038】
ここで、最上段冷凍貯蔵容器63内であって、この最上段冷凍貯蔵容器63の底面の略全域にはアルミトレイ101が配置され、このアルミトレイ101表面上には、図6に示すように、凸部101aが奥行方向および左右方向に複数形成されている。アルミは樹脂等と比べ熱伝導率の極めて高い材料であり、さらに複数の凸部101aにより表面積を増加させているので、上段冷凍貯蔵容器61や下段冷凍貯蔵容器62と比べて、最上段冷凍貯蔵容器63の冷却性能は高くなっている。なお、アルミトレイ101は、最上段冷凍貯蔵容器63の底面のうち、必ずしも全域を覆うような大きさでなくても、底面の90%以上を覆うような大きさであれば、略全域に配置されているとみなすことが可能である。また、アルミトレイ101表面のうち凸部101aが占める面積は、アルミトレイ101全体の70%以上となっている。さらに、トレイの材料として、アルミ以外に熱伝導率が高い金属を用いても良い。
【0039】
また、本実施例では、左右方向および奥行方向に複数並んだ凸部101aの間に形成される凹部は、隣接する凹部と連続的に位置している。このため、食品から流出した汁やこぼれた液状の食品などが、この凹部を伝わることで、広がりの方向が左右方向または奥行方向のみに制限されるため、最上段冷凍貯蔵容器63を使用者が清掃する際の作業が容易になる。特に冷凍室においては、こぼれた液状の食品が拡散すると、食品の表面積が拡大し、液体の凝固する速度が増加してしまう。しかし、本実施例のような複数の凸部101aが形成されていると、食品の拡散を制限され、液体の凝固が抑制されるので、清掃する際の作業が容易となる。
【0040】
さらに、奥行方向に複数並んだ凸部101aの間に形成される凹部も、左右方向に隣接する凹部と連続的に位置している。このため、最上段冷凍貯蔵容器63を開閉操作する際に、食品が前後方向へずれるのを抑制できる。ここで、下部冷凍室5は、上部冷凍室4と比べて左右方向の幅寸法が広いので、この下部冷凍室5の最上段冷凍貯蔵容器63に配置されるアルミトレイ101も幅寸法が広くなっている。しかし、本実施例によれば、アルミトレイ101に形成される複数の凸部101aによって底面の断面二次モーメントが増加するため、強度を向上させる効果もある。
【0041】
そして、最上段冷凍貯蔵容器63の鉛直投影外、具体的には、下部冷凍室5の背面側の最上段冷凍貯蔵容器63と略同じ高さにある吹出口から、冷気が供給される。アルミトレイ101上に食品が置かれている場合、吹出口から供給される冷気は、食品にあたることにより遮断される。しかし、図6に示すような、格子状に並ぶ複数の凸部101aの間に形成される凹部によって、アルミトレイ101と食品との間に、奥行方向および左右方向に直線的に延びる隙間が生じる。この隙間を冷気が通過することで、食品と冷気およびアルミトレイ101と冷気の対流熱伝達が促進される。
【0042】
また、最上段冷凍貯蔵容器63は、図7の最上段冷凍貯蔵容器63正面図に示すように、前側の壁面101bは、左右側壁面101cに比べ低く形成されている。このため、下部冷凍室5の背面側の最上段冷凍貯蔵容器63と略同じ高さにある吹出口から吹き出された冷気が、前側の壁面101bに遮断されることなく対流し、食品と冷気の対流熱伝達も促進されることになる。このため、最上段冷凍貯蔵容器63内の食品は急速に冷却されていくことになる。なお、最上段冷凍貯蔵容器63の左右側壁面101cは、前方と比べて後方の高さが低く形成されており、左右側壁面101cの後方は、左右方向に延びる後側壁面とほぼ同じ高さとなっている。
【0043】
また、本実施例では、上部冷凍室4内の貯蔵容器や下部冷凍室5内の他の貯蔵容器と比べて、高さ寸法が最も小さく、薄い空間である最上段冷凍貯蔵容器63を、急速冷凍の対象としているので、食品を置くときに積み重なり難く、収納や取り出しの操作がし易いという利点がある。さらに、この最上段冷凍貯蔵容器63は、上部冷凍室4の貯蔵容器と比べて幅寸法が大きいので、より多くの食品を左右方向に並べて配置できる。
【0044】
以上述べた実施例では、野菜室6を下部冷凍室5よりも低い位置に配置するレイアウトの冷蔵庫について説明したが、野菜室を冷蔵室と上部冷凍室の間に配置するレイアウトの冷蔵庫であっても良い。また、上述の実施例では、下部冷凍室5の最上段貯蔵容器63にアルミトレイ101を配置した例について示したが、冷蔵室2内に複数段の貯蔵容器が存在し、このうち最上段の貯蔵容器をチルド冷却用にアルミトレイ101を配置しても良い。
【0045】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10…冷蔵庫本体、2…冷蔵室、3…製氷室、4…上部冷凍室、5…下部冷凍室、6…野菜室、19…冷却器、12…冷却器収納室、18…断熱仕切壁、20…送風ファン、50…第1の温度センサ、51…背面壁、52…第2の温度センサ、53…縦仕切部、54…奥行方向下端部分、55…信号線、56…コネクタ、57…センサカバー、101…アルミトレイ、101a…凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7