特許第6407923号(P6407923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407923
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】射出成形機の型締装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/66 20060101AFI20181004BHJP
   B22D 17/26 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   B29C45/66
   !B22D17/26 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-166823(P2016-166823)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-34321(P2018-34321A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】仙賀 正俊
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩一
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−074109(JP,A)
【文献】 特開2010−228341(JP,A)
【文献】 特開2005−289002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/64−45/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームに固定され、固定金型を保持する固定プラテンと、
前記ベースフレームに移動可能に設けられるリアプラテンと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結し、互いに平行となるように設けられる複数のタイバーと、
前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に前記タイバーに沿って移動可能に設けられ、前記固定金型と対向する可動金型を保持する可動プラテンと、
前記可動プラテンを移動させるための駆動モータと、
前記駆動モータと前記リアプラテンとの間に設けられ、前記駆動モータを前記リアプラテンに固定する固定部材と、
前記固定部材に連結され、前記ベースフレームに対して前記固定部材を支持する支持部材と、
前記ベースフレームに対して前記支持部材を前記可動プラテンの移動方向に移動可能に支持する可動支持部材と、
を有し、
前記駆動モータの回転軸方向から見たときに、前記固定部材側から前記ベースフレーム側に向かうにしたがって、前記支持部材の幅は外側に広がるように形成され、
前記可動支持部材は、前記支持部材の前記ベースフレーム側において、前記支持部材の幅方向の少なくとも両端部に設けられる
ことを特徴とする射出成形機の型締装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機の型締装置において、
前記駆動モータの回転軸方向から見たときに、
前記支持部材は、前記ベースフレーム側の幅が、幅方向に隣り合う前記タイバーの軸間距離よりも長く形成され、
前記可動支持部材は、前記幅方向に隣り合う前記タイバーの軸よりも外側に設けられる
ことを特徴とする射出成形機の型締装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の射出成形機の型締装置において、
前記固定部材と前記支持部材とを連結する連結部材を備え、
前記連結部材は、
前記固定部材に螺合し、先端を前記支持部材の表面に当接して、前記支持部材に対する前記固定部材の高さを調整するジャッキアップボルトと、
前記ジャッキアップボルト内を軸方向に延びる貫通孔に挿入され、その先端が支持部材と螺合する固定ボルトと、
を有する
ことを特徴とする射出成形機の型締装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の型締装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の型締装置には、リアプラテンに対して可動プラテンを移動させる駆動モータが設けられている。駆動モータは固定部材を介してリアプラテンに取り付けられている。固定部材は駆動モータの反力を受けるため、固定部材が駆動モータの回転方向に振動するおそれがある。固定部材が振動すると駆動モータ全体が振動し、可動プラテンも振動する。その結果、可動金型も振動することとなる。そこで、駆動モータの反力を型締装置が設置されるベースフレームで受けるようにすることが考えられる。ベースフレームに対して駆動モータを支持する構造として、次のような技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、バックプラテンに取り付けられた駆動装置を弾性部材によって機台に対して支持する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、リアプレートに駆動用モータを固定するモータ固定部材をモータ固定部材用支持部材により支持する技術が開示されている。この技術ではモータ固定部材に螺合するボルトの先端がモータ固定部材用支持部材において突き当てられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−089295号公報
【特許文献2】特開2016−074109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、駆動装置を弾性部材により支持しているため、駆動装置の回転方向の振動を抑制することができず、振動がバックプラテンに伝達し、バックプラテンが回転方向に振動するおそれがある。
【0007】
特許文献2に開示された技術では、モータ固定部材と螺合するボルトの先端はモータ固定部材用支持部材に突き当てられているため、モータ固定部材はモータ固定部材用支持部材に対して固定されているわけではない。そのため、モータ固定部材用支持部材によりモータ固定部材の振動を抑制することはできない。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、駆動モータの回転駆動による固定部材の振動を抑制することができる射出成形機の型締装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の射出成形機の型締装置は、ベースフレームに固定され、固定金型を保持する固定プラテンと、前記ベースフレームに移動可能に設けられるリアプラテンと、前記固定プラテンと前記リアプラテンとを連結し、互いに平行となるように設けられる複数のタイバーと、前記固定プラテンと前記リアプラテンとの間に前記タイバーに沿って移動可能に設けられ、前記固定金型と対向する可動金型を保持する可動プラテンと、前記可動プラテンを移動させるための駆動モータと、前記駆動モータと前記リアプラテンとの間に設けられ、前記駆動モータを前記リアプラテンに固定する固定部材と、前記固定部材に連結され、前記ベースフレームに対して前記固定部材を支持する支持部材と、前記ベースフレームに対して前記支持部材を前記可動プラテンの移動方向に移動可能に支持する可動支持部材と、を有し、前記駆動モータの回転軸方向から見たときに、前記固定部材側から前記ベースフレーム側に向かうにしたがって、前記支持部材の幅は外側に広がるように形成され、前記可動支持部材は、前記支持部材の前記ベースフレーム側において、前記支持部材の幅方向の少なくとも両端部に設けられる。
【0010】
固定部材に伝達される駆動モータの反力は、支持部材を介して可動支持部材に伝達される。可動支持部材の位置において駆動モータの反力は重力方向成分を有する。可動支持部材からベースフレームに駆動モータの反力を伝達することでき、駆動モータの反力をベースフレームで受けることが可能となる。よって、固定部材の振動を抑制することができる。
【0011】
本発明の射出成形機の型締装置は、前記駆動モータの回転軸方向から見たときに、前記支持部材は、前記ベースフレーム側の幅が、幅方向に隣り合う前記タイバーの軸間距離よりも長く形成され、前記可動支持部材は、前記幅方向に隣り合う前記タイバーの軸よりも外側に設けられるようにしてもよい。これにより、可動支持部材からベースフレームに伝達できる駆動モータの反力を大きくすることができ、固定部材の振動を抑制することができる。
【0012】
本発明の射出成形機の型締装置は、前記固定部材と前記支持部材とを連結する連結部材を備え、前記連結部材は、前記固定部材に螺合し、先端を前記支持部材の表面に当接して、前記支持部材に対する前記固定部材の高さを調整するジャッキアップボルトと、前記ジャッキアップボルト内を軸方向に延びる貫通孔に挿入され、その先端が支持部材と螺合する固定ボルトと、を有するようにしてもよい。ジャッキアップボルトにより支持部材に対する固定部材の高さを調整しつつ、固定ボルトにより固定部材から支持部材に駆動モータの反力を伝達することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動モータの回転駆動による固定部材の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1の射出成形機の概略的な外観構成を示す図である。
図2】実施の形態1の型締装置のリアプラテン付近を示す拡大図である。
図3】実施の形態1のリアプラテンを型開閉用モータ側から見た図である。
図4】比較例のリアプラテンを型開閉用モータ側から見た図である。
図5】比較例のリアプラテンを型開閉用モータ側から見た図である。
図6】実施の形態2の型締装置のリアプラテン付近を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る射出成形機の型締装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0016】
〔実施の形態1〕
[射出成形機の構成]
図1は射出成形機10の概略的な外観構成を示す図である。射出成形機10は、ベースフレーム12と、ベースフレーム12上に設置された型締装置14及び射出装置16とを備えている。
【0017】
(型締装置の構成)
型締装置14は、固定プラテン18、リアプラテン20及び四本のタイバー22を有している。タイバー22は固定プラテン18とリアプラテン20とを連結している。タイバー22は互いに平行となるように配置されている。固定プラテン18とリアプラテン20との間に、可動プラテン24が設けられている。ベースフレーム12上には、図2において左右方向に溝12aが切られている。溝12aはベースフレーム12の幅方向に離間して複数本(本実施の形態では二本)設けられている。固定プラテン18はベースフレーム12上に移動不能に固定されている。リアプラテン20はスライドプレート20aを介してベースフレーム12上に設置されている。スライドプレート20aはベースフレーム12の溝12aに係合している。リアプラテン20は溝12aに沿ってベースフレーム12上を移動可能である。可動プラテン24は、スライドプレート24aを介してベースフレーム12上に設置されている。スライドプレート24aはベースフレーム12の溝12aに係合している。可動プラテン24は溝12aに沿ってベースフレーム12上を移動可能である。固定プラテン18と可動プラテン24との間が型締空間となる。固定プラテン18の可動プラテン24側には固定金型26が取り付けられている。可動プラテン24の固定プラテン18側には可動金型28が取り付けられている。
【0018】
リアプラテン20と可動プラテン24との間には、トルグリンク(リンク)30が設けられている。トルグリンク30は、クロスリンク32を介してクロスヘッド34と接続している。クロスヘッド34にはボールねじナット36が連結されている。ボールねじナット36にはボールねじ軸38が螺合されている。ボールねじ軸38は、回転自在ではあるものの、軸方向の移動は規制された状態でリアプラテン20に支持されている。
【0019】
ボールねじ軸38のボールねじナット36と螺合する側とは反対の端部には、ボールねじ軸38を回転駆動する型開閉用モータ(駆動モータ)40の駆動軸40aが連結されている。ボールねじ軸38と駆動軸40aとはカップリング42を介して同軸上で直接連結されている。この構造を直結構造と称する。ボールねじ軸38と駆動軸40aとの間をプーリとベルトによって連結する構造に比べて、直結構造はイナーシャが小さい。そのため、比較的小さなトルクの型開閉用モータ40を用いても、高速で回転させた後にすぐに停止させ、また、停止状態からすぐに高速で回転させることが可能となる。
【0020】
型開閉用モータ40が駆動することにより、ボールねじ軸38が回転(正転又は逆転)する。ボールねじ軸38の回転により、ボールねじナット36に連結されたクロスヘッド34がボールねじ軸38上を前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動する。クロスヘッド34の移動により、クロスリンク32及びトルグリンク30を介して、可動プラテン24はタイバー22に沿って前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動する。
【0021】
可動プラテン24が前方に移動すると、固定金型26に対して可動金型28が当接し金型が閉じる。可動プラテン24が後方に移動すると、固定金型26に対して可動金型28が離れ金型が開く。
【0022】
型締装置14は、エジェクタ機構44を有している。エジェクタ機構44は、可動金型28から成形品を取り出すための機構である。エジェクタ機構44は、エジェクタ用モータ46、ドライブプーリ48、ベルト50、ドリブンプーリ52、ボールねじナット54、ボールねじ軸56、エジェクタピン58を有している。
【0023】
エジェクタ用モータ46の駆動軸46aには、駆動軸46aとともに一体に回転するドライブプーリ48が設けられている。ドライブプーリ48とドリブンプーリ52との間にはベルト50が巻回されている。ドリブンプーリ52の内周側には、ドリブンプーリ52と一体に回転するボールねじナット54が設けられている。ボールねじナット54は、ボールねじ軸56と螺合している。ボールねじ軸56の先端にはエジェクタピン58が連結されている。エジェクタピン58は先端側の一部が可動金型28内に挿入されている。
【0024】
エジェクタ用モータ46が駆動することにより、ドライブプーリ48、ベルト50、ドリブンプーリ52を介してボールねじナット54が回転(正転又は逆転)する。ボールねじナット54の回転によりボールねじ軸56が前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動する。ボールねじ軸56の移動に伴ってエジェクタピン58が前方又は後方に移動する。エジェクタピン58が前方(図1において右方)に移動すると、可動金型28から成形品が押し出され、可動金型28から成形品が取り出される。
【0025】
型締装置14は、型厚調整機構60を有している。型厚調整機構60は、固定金型26及び可動金型28の厚さに応じてリアプラテン20を前後方向(図1において左右方向)に移動させるための機構である。型厚調整機構60は、型厚調整用モータ62、駆動ギア64、ナットギア66、リングギア68を有している。
【0026】
型厚調整用モータ62の駆動軸62aには、駆動軸62aとともに一体に回転する駆動ギア64が設けられている。駆動ギア64はナットギア66と噛合している。ナットギア66は、タイバー22の先端に形成されたねじ部22aに螺合している。またナットギア66は、リングギア68と噛合している。リングギア68は、四本のタイバー22により囲まれる領域内に配置され、それぞれのタイバー22のねじ部22aと螺合するナットギア66と噛合している。
【0027】
型厚調整用モータ62を駆動することにより、駆動ギア64を介してナットギア66が回転(正転又は逆転)する。各タイバー22に設けられたナットギア66はリングギア68と噛合していため、各ナットギア66は同期して回転する。ナットギア66の回転に伴ってリアプラテン20が前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動する。リアプラテン20の移動に伴って可動プラテン24が移動し、固定金型26及び可動金型28の厚さに応じて可動プラテン24と固定プラテン18との距離を調整することができる。
【0028】
(射出装置の構成)
射出装置16は、ノズル70、シリンダ72、スクリュ74、ホッパ76、ヒータ78を有する。ノズル70はシリンダ72の先端に設けられている。シリンダ72は中空の部材であって、シリンダ72内にスクリュ74が挿通されている。シリンダ72にはホッパ76が接続されている。ホッパ76から樹脂材料が投入され、投入された樹脂材料はシリンダ72内に供給される。シリンダ72の外周にはヒータ78が設けられている。ホッパ76から投入された樹脂材料がペレット状であるときには、ヒータ78によって樹脂材料は溶融される。なお、ホッパ76から投入される樹脂材料は溶融した樹脂であってもよい。
【0029】
射出装置16は、スクリュ駆動機構80を有している。スクリュ駆動機構80は、プッシュプレート92に設けられている。プッシュプレート92は、エクストルーダベース90に前後方向(図1において左右方向)に移動可能に設けられている。スクリュ駆動機構80は、スクリュ74を回転駆動させるための機構である。スクリュ駆動機構80は、スクリュ駆動用モータ82、ドライブプーリ84、ベルト86、ドリブンプーリ88を有している。
【0030】
スクリュ駆動用モータ82の駆動軸82aには、駆動軸82aとともに一体に回転するドライブプーリ84が設けられている。ドライブプーリ84とドリブンプーリ88との間にはベルト86が巻回されている。ドリブンプーリ88は、スクリュ74と一体に回転する。
【0031】
スクリュ駆動用モータ82が駆動することにより、ドライブプーリ84、ベルト86、ドリブンプーリ88を介してスクリュ74が回転する。スクリュ74の回転により、ホッパ76から投入された樹脂材料がノズル70側に送られる。
【0032】
射出装置16は射出機構94を有している。射出機構94はエクストルーダベース90に設けられている。射出機構94はノズル70から樹脂材料を射出するための機構である。射出機構94は、射出用モータ96、ドライブプーリ98、ベルト100、ドリブンプーリ102、ボールねじ軸104、ボールねじナット106を有している。
【0033】
射出用モータ96の駆動軸96aには、駆動軸96aとともに一体に回転するドライブプーリ98が設けられている。ドライブプーリ98とドリブンプーリ102との間にはベルト100が巻回されている。ドリブンプーリ102は、ボールねじ軸104と一体に回転する。ボールねじナット106は、プッシュプレート92に連結している。ボールねじナット106には、ボールねじ軸104が螺合されている。
【0034】
射出用モータ96が駆動することにより、ドライブプーリ98、ベルト100、ドリブンプーリ102を介してボールねじ軸104が回転する。ボールねじ軸104の回転により、ボールねじナット106に連結されたプッシュプレート92がボールねじ軸104上を前方又は後方(図1において左方又は右方)に移動する。プッシュプレート92の移動により、スクリュ74はシリンダ72内を前方又は後方(図1において左方又は右方)に移動する。スクリュ74がシリンダ72内を前方に移動することにより、シリンダ72の先端部分に貯留された樹脂材料がノズル70から射出される。
【0035】
射出装置16は、ノズルタッチ機構108を有している。ノズルタッチ機構108は、射出装置16全体をベースフレーム12に対して前方又は後方(図1において左方又は右方)に移動させる機構である。
【0036】
ノズルタッチ機構108は、エクストルーダベース90、図示しないノズルタッチ用モータ、ボールねじ軸110を有している。エクストルーダベース90は、ベースフレーム12に前方又は後方(図1において左方又は右方)に移動可能に設けられている。ノズルタッチ用モータの駆動軸にはボールねじ軸110が連結されている。ノズルタッチ用モータが駆動することにより、ボールねじ軸110が回転(正転又は逆転)する。ボールねじ軸110の回転により、エクストルーダベース90が前方又は後方(図1において左方又は右方)に移動する。エクストルーダベース90が前方(図1において左方)に移動すると、ノズル70の先端を固定金型26に押し付ける。
【0037】
[モータ固定部材及び支持部材の構成]
図2は型締装置14のリアプラテン20付近を示す拡大図である。図3はリアプラテン20を型開閉用モータ40側(型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向)から見た図である。図3では、ナットギア66、リングギア68はカバーに覆われているため見えていない。図2では型厚調整用モータ62の記載は省略している。図1では型厚調整用モータ62の位置を模式的に示していたため、図1図3とでは型厚調整用モータ62の位置が異なっている。
【0038】
型開閉用モータ40は、モータ固定部材(固定部材)112を介してリアプラテン20に固定されている。モータ固定部材112は、有底カップ状に形成されている。モータ固定部材112はリアプラテン20に固定されている。モータ固定部材112の底部112aには型開閉用モータ40がボルト114により固定されている。底部112aには貫通孔112bが形成されている。型開閉用モータ40の駆動軸40aは貫通孔112bに挿入され、駆動軸40aの先端はモータ固定部材112内に侵入されている。駆動軸40aはモータ固定部材112内でカップリング42に連結されている。
【0039】
モータ固定部材112の下壁112cには、支持部材116がボルト118により固定されている。支持部材116はスライドプレート(可動支持部材)116aを介してベースフレーム12上に設置されている。スライドプレート116aはベースフレーム12の溝12aに係合している。支持部材116は溝12aに沿ってベースフレーム12上を前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動可能である。
【0040】
支持部材116を型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向から見たときに、支持部材116は略台形状に形成されている(図3参照)。つまり、支持部材116のモータ固定部材112と連結する側(以下、上部116b)からベースフレーム12側(以下、下部116c)に向かうにしたがって、支持部材116は幅(図3において左右方向長さ)が外側に広がるように形成されている。支持部材116の上部116bと下部116cの間の中間部116dは、幅方向に隣り合うタイバー22、22の軸よりも内側に配置されている。中間部116dの幅方向の両方の辺は、上部116bから下部116cにかけて略直線状に形成されている。支持部材116の下部116cの幅は、幅方向に隣り合うタイバー22、22の軸間距離よりも長くなるように形成されている。スライドプレート116aは支持部材116の幅方向に二か所設けられている。スライドプレート116aは、幅方向に隣り合うタイバー22、22の軸よりも外側に配置されている。
【0041】
[作用効果]
図4はリアプラテン20を型開閉用モータ40側(型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向)から見た図である。実施の形態1と異なり、図4に示す図では支持部材116が設けられていない。
【0042】
型開閉用モータ40は、モータ固定部材112を介してリアプラテン20に固定されている。型開閉用モータ40が駆動すると、型開閉用モータ40の反力はモータ固定部材112で受けることとなる。そのため、モータ固定部材112が型開閉用モータ40の回転方向に変形し、モータ固定部材112が型開閉用モータ40の回転方向に振動するおそれがある。モータ固定部材112には型開閉用モータ40が固定されているため、モータ固定部材112の振動により型開閉用モータ40全体も振動する。この振動は、ボールねじ軸38にも回転方向の振動として伝達する。ボールねじ軸38の回転方向の振動は、ボールねじナット36において前後方向の振動に変換され、クロスヘッド34、クロスリンク32及びトルグリンク30を介して、可動プラテン24及び可動金型28を前後方向に振動させる。
【0043】
モータ固定部材112の振動を抑制するために、モータ固定部材112の剛性を高くすることが考えられる。モータ固定部材112内にはカップリング42が設けられている。モータ固定部材112をリアプラテン20に固定した後に、カップリング42を締結する。そのためモータ固定部材112には、カップリング42を締結する作業を行うための孔等を設ける必要がある。そのため、モータ固定部材112の剛性を高くすることが困難であった。
【0044】
仮にモータ固定部材112の剛性を高くした場合、リアプラテン20に伝達される型開閉用モータ40の反力が大きくなる。そのため、リアプラテン20が回転し、リアプラテン20とタイバー22を介して連結している可動プラテン24も回転するおそれがある。これにより可動金型28と固定金型26との間で金型のずれが生じるおそれがある。
【0045】
図5はリアプラテン20を型開閉用モータ40側(型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向)から見た図である。実施の形態1と異なり、図5に示す図では支持部材116と異なる形状の支持部材120が設けられている。
【0046】
モータ固定部材112の振動を抑制する方法として、次に、モータ固定部材112に作用する型開閉用モータ40の反力を受ける支持部材120を設けることが考えられる。支持部材120は、実施の形態1の支持部材116と同様に、スライドプレート120aを介してベースフレーム12に設置されている。支持部材120はベースフレーム12上を前方又は後方(図1において右方又は左方)に移動可能である。支持部材120を型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向から見たときに、支持部材120は、型開閉用モータ40の駆動軸40aの真下において、スライドプレート120aを介してベースフレーム12に支持されている。ここで、モータ固定部材112に図5において反時計回りに型開閉用モータ40の反力が作用したと想定する。このとき、支持部材120のスライドプレート120aには図5において右方向に力が作用する。
【0047】
支持部材120はリアプラテン20とともに前後方向(図2において手前及び奥に向かう方向)に移動する必要がある。そのため、スライドプレート120aをベースフレーム12に固定することができない。したがって、スライドプレート120aは横方向(図2において左右方向)の力を十分には受けることができない。型開閉用モータ40の反力を十分にスライドプレート120aからベースフレーム12側に伝達することができず、モータ固定部材112の振動を抑制することができない。
【0048】
そこで実施の形態1では、支持部材116を型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向から見たときに、支持部材116の上部116bから下部116cに向かうにしたがって、支持部材116を幅が外側に広がるように形成する。また、スライドプレート116aを支持部材116の下部116cの幅方向両端部に設ける。
【0049】
ここで、モータ固定部材112に図3において反時計回りに型開閉用モータ40の反力が作用したと想定する。このとき、図3において左側のスライドプレート116aには右下方向に力Faが作用する。この力Faは、重力方向成分の力Fbと水平方向成分の力Fcとに分解することができる。スライドプレート116aは、重力方向成分の力Fbを受けることができ、力Fbをベースフレーム12に伝達することができる。図5に示すように、型開閉用モータ40の駆動軸40aの真下においてスライドプレート120aが支持部材120を支持した場合に比べて、水平方向成分の力Fcを小さくすることができ、型開閉用モータ40が駆動しているときのモータ固定部材112の振動を抑制することができる。
【0050】
また、実施の形態1では、図5に示すようにスライドプレート120aを型開閉用モータ40の駆動軸40aの真下に配置した場合に比べて、モータ固定部材112と支持部材116との連結部とスライドプレート116aとの距離を長くすることができる。よって、スライドプレート116aにおける型開閉用モータ40の反力の大きさ(力Fa)を小さくすることができる。力Faを小さくすることにより、水平方向成分の力Fcも小さくすることができるため、型開閉用モータ40が駆動しているときのモータ固定部材112の振動を抑制することができる。
【0051】
また支持部材116の上部116bの幅は下部116cの幅よりも狭い。そのため、支持部材116の型開閉用モータ40の反力に対する強度を確保しつつ、支持部材116を設けたことによる型締装置14の重量増加を抑制することができる。
【0052】
また実施の形態1では、支持部材116を型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向から見たときに、支持部材116の下部116cの幅は、幅方向に隣り合うタイバー22、22の軸間距離よりも長く形成される。さらに、スライドプレート116aは幅方向に隣り合うタイバー22、22の軸間よりも外側に設けられる。スライドプレート116aの位置が型開閉用モータ40の駆動軸40aの真下の位置から幅方向(図3において左右方向)に離れるほど、スライドプレート116aの位置における型開閉用モータ40の反力の重力方向成分は大きくなる。リアプラテン20の幅方向の範囲内で、スライドプレート116aの幅方向の位置をできるだけ外側に設けることにより、スライドプレート116aにより受ける型開閉用モータ40の反力を大きくすることができる。よって、型開閉用モータ40が駆動しているときのモータ固定部材112の振動を抑制することができる。
【0053】
〔実施の形態2〕
実施の形態2の型締装置14について説明する。図6は型締装置14のリアプラテン20付近を示す拡大図である。実施の形態1の型締装置14では、支持部材116はボルト118によりモータ固定部材112に固定されていた。実施の形態2の型締装置14では、支持部材116とモータ固定部材112とを高さ調整機構(連結部材)122により連結するようにした。以下、実施の形態1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
高さ調整機構122は、ジャッキアップボルト124、固定ボルト126を有する。ジャッキアップボルト124は円筒状の部材であって、外周面に雄ねじが切られている。固定ボルト126は頭付ボルトである。
【0055】
ジャッキアップボルト124はモータ固定部材112の下壁112cに螺合している。ジャッキアップボルト124の先端は、支持部材116の上面に突き当てられている。ジャッキアップボルト124の下壁112cに対するねじ込み量を調整することによって、支持部材116に対するモータ固定部材112の高さを調整することができる。
【0056】
ジャッキアップボルト124による高さ調整後、ジャッキアップボルト124の軸方向の貫通孔に固定ボルト126を挿入し、固定ボルト126を支持部材116に螺合させる。固定ボルト126により、モータ固定部材112に作用する型開閉用モータ40の反力が支持部材116に伝達される。
【0057】
[作用効果]
型開閉用モータ40の駆動軸40aとボールねじ軸38との高さが合わないことがある。この原因の一つは、リアプラテン20の重量と型開閉用モータ40の重量との差が大きいため、リアプラテン20を支持するベースフレーム12の部分と、型開閉用モータ40を支持するベースフレーム12の部分との間に沈み量の差が生じることである。また別の原因として、各部材の加工精度誤差の蓄積が挙げられる。
【0058】
そこで実施の形態2の型締装置14では、モータ固定部材112と支持部材116との間に高さ調整機構122を設ける。高さ調整機構122のジャッキアップボルト124により、支持部材116に対するモータ固定部材112の高さを調整することが可能となる。型開閉用モータ40はモータ固定部材112に固定されているため、モータ固定部材112とともに型開閉用モータ40の支持部材116に対する高さも調整することができる。したがって、型開閉用モータ40の駆動軸40aとボールねじ軸38との高さを合わせることができる。
【0059】
〔他の実施の形態〕
以上、本発明を実施の形態1及び実施の形態2に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施の形態1及び実施の形態2に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0060】
実施の形態1及び実施の形態2では、支持部材116をベースフレーム12に対して移動可能に支持する部材としてスライドプレート116aが用いられている。この構成を、リニアガイドやローラに変更してもよい。
【0061】
実施の形態1及び実施の形態2では、支持部材116を型開閉用モータ40の駆動軸40aの方向から見たときに、支持部材116は略台形状に形成されている。支持部材116の形状は、上部116bから下部116cに向かうにしたがって支持部材116の幅が外側に広がるようになっていれば、特にその形状は限定しない。
【符号の説明】
【0062】
12…ベースフレーム 18…固定プラテン
20…リアプラテン 22…タイバー
24…可動プラテン 26…固定金型
28…可動金型 30…トルグリンク(リンク)
40…型開閉用モータ(駆動モータ) 112…モータ固定部材(固定部材)
116…支持部材
116a…スライドプレート(可動支持部材) 122…高さ調整機構(連結部材)
124…ジャッキアップボルト 126…固定ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6