【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの目的は、ハイブリッドコンポーネントパーツ(hybrid component part)の製造方法であって、
a)少なくとも2個のNCO官能基を有するウレトジオンである少なくとも1種の硬化剤と、3〜6個のOH官能基を有するポリオール化合物であって、エステル官能基、カーボネート官能基、アミド官能基、ウレタン官能基、尿素官能基、チオエステル官能基及びチオカーボネート官能基から選択される少なくとも1種の極性官能基を含む少なくとも1種のバインダーと、を少なくとも含む反応性組成物を用意する工程と、
b)繊維を用意する工程と、
c)前記繊維を前記反応性組成物でコーティングする工程と、
d)少なくとも前記反応性組成物を熱に暴露して第1の架橋反応を実施し、前記硬化剤及び前記バインダーを熱可塑性ポリマーに転化させて、前記繊維を前記熱可塑性ポリマーに埋め込む工程と、
e)金属本体部(main body)又はその半完成品(semifinished precursor)を用意する工程と、
f)前記繊維が埋め込まれた前記熱可塑性ポリマーを、前記本体部/半完成品の局所領域上に配置する工程と、
g)前記熱可塑性ポリマーを介して前記繊維が前記本体部/半完成品に付着するように、前記熱可塑性ポリマーを前記本体部/半完成品に対して押し付ける工程と、
h)前記工程e)において前記本体部の半完成品のみを用意する場合、前記熱可塑性ポリマーが付着した前記半完成品を成形して前記金属本体部を得る工程と、
i)少なくとも前記熱可塑性ポリマーを熱に暴露して第2の架橋反応を実施し、前記熱可塑性ポリマーを熱硬化性樹脂に転化させる工程と、
k)前記熱硬化性樹脂と、前記熱硬化性樹脂に埋め込まれた前記繊維と、によって形成されたマトリックスを含む繊維複合材料からなる少なくとも1つの局所硬化部分(local stiffening)を備えた前記金属本体部を少なくとも含む前記ハイブリッドコンポーネントパーツを得る工程と、
を含むことを特徴とする方法により達成される。
【0022】
従って、本発明はそのような製造方法を提供する。同様に本発明は、この方法で製造されるハイブリットコンポーネントパーツを提供する。最後に、本発明は、軽量構造の一環として、硬化領域において、該ハイブリットコンポーネントパーツに最大の局所応力を少なくとも断続的に作用させる、該ハイブリットコンポーネントパーツの使用をも提供する。
【0023】
本発明に係る方法の基本概念は、第1架橋反応において熱可塑性ポリマー及び層に転化され、熱硬化性マトリックス材料を供給するため第2架橋反応において全体的に架橋される、特定のポリウレタン製剤を使用することである。該熱可塑性ポリマーは、金属表面への良好な接着性によって特徴づけられる。付着した熱可塑性材料によって、該金属を更に成形することさえ可能である。該ポリウレタンは、その後熱硬化され、最終的な剛性を得る。
【0024】
従って、本発明によると、熱硬化性ポリマーを供給するための熱的硬化は、プレス工程と任意の成形工程の後でのみ行われる。従って、繊維複合コンポーネントパーツの高い最終強度は、繊維複合材料がすでに金属本体部に鋳型成形されている場合のみ実現される。
【0025】
本発明に係る方法を成功させるための条件は、金属表面への高い接着力を維持しながら2段階の架橋を可能にするポリウレタン組成物の製剤である。前記製剤は、これらの要件を全て満たしており、更に温度100℃以下で安定的に保存される。不要な架橋を防ぐために常温以下に冷却する必要がない。従って、熱架橋性ポリマーを、次段階で更に加工する前に、それに埋め込まれた繊維、定寸ピース及び/又はその与圧層、或いは未硬化のマトリックス自体を含むワークピースによって、保存又は輸送することができる。従って、異なる設備ごとに製造工程を分けることができ、その結果、組織境界を越えて工程を操作することが可能となる。これは、製造の融通性を著しく向上させ、製造コストを節約する大きな可能性を提示する。
【0026】
前記ポリウレタン組成物の更なる利点は、架橋反応を行うのに必要な温度と時間が、熱処理加工で一般的に使用され、かついずれの場合も金属加工に関連して使用される温度状況に合っている点である。従って、架橋反応を実施するための熱への暴露は、いずれの場合にも必要なそういった冶金熱処理の過程で行われてよい。これは特に、常に金属本体部の存在下で実施される第2架橋反応に適用される(第1架橋反応は、保存安定性のため、金属本体部又はその半完成品の非存在下で実施される)。架橋温度及び架橋時間と、冶金加工との適合は、ポリマー化学架橋反応に関連するコスト又は複雑さが、事実上これ以上増大しないことを意味する。
【0027】
本発明で用いられる繊維強化された硬化物のマトリックスは、ポリウレタンのカテゴリに属する。該マトリックスは、2つの開始成分であるバインダーと硬化剤の添加反応によって形成される。バインダーと硬化剤は、反応性組成物としての添加剤によって同時に提供される。
【0028】
水酸基含有有機物がバインダーとして使用される。そのため、原理上、ポリウレタン化学において一般的に使用されるポリオール化合物の全てが考えられる。しかし、ポリオールは、3〜6個の水酸基を有している必要がある。水酸基の数或いは官能性は、架橋密度に影響し、従って、硬化マトリックスの機械的特性に影響する。3次元的にしっかりと架橋された熱硬化性ポリマー網を得るためには、少なくとも3種のポリオール成分の官能性が必要である。それに反して、6種を超えると、熱硬化の最終状態のポリウレタンが過度の架橋密度に達し、マトリックスの脆化につながる。結果として、バインダーとして使用されるポリオールのOH官能性は、3〜6種でなければならない。様々なポリオール混合物を使用することが検討され、実際にそれが使用される。多数のポリオールを使用する場合、官能性に関する指標はポリオール混合物の平均値に関係する。
【0029】
更に、バインダーとして使用される少なくとも1のポリオールは、水酸基だけでなく、金属表面と相互に作用する追加の極性官能基を有している必要がある。これらは、例えばエステル基、カーボネート基、アミド基、ウレタン基、尿素基、チオエステル基、又はチオカーボネート基を含む。好適なポリールの例としては、直鎖状又は分岐鎖状の水酸基含有ポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリウレタン、又はポリアセタールが挙げられる。比較すると、ポリエーテル又はポリチオエーテルは金属接着性が著しく低く、従って、ポリオール混合物の主体には適さない。
【0030】
最も良好な金属接着性は、ポリエステルポリオールによって得られ、この物質カテゴリ内ではポリカプロラクトンよって得られる。従って、好適な実施形態によると、少なくとも1のポリカプロラクトンがバインダーとして使用される。
【0031】
しかし、ポリエーテルカテゴリの物質は、金属接着性が弱い。このため、好ましくは極性官能基を持たずエーテル官能基を有するバインダーが使用される。
【0032】
ポリオールの水酸基価は200mg KOH/g〜500mg KOH/gであり、酸価は2mg KOH/g未満でなければならない。水酸基価は、DIN 53 240−2によって、酸価はDIN EN ISO 2114によって規定される。モル質量は、ヒドロキシル末端基とカルボキシル末端基の合計から計算される。平均分子量は、50g/mol〜10000g/mol、好ましくは100g/mol〜5000g/molである。
【0033】
好ましくは、直鎖状又は分岐鎖状の水酸基含有ポリエステル、所謂ポリエステルポリオールが使用される。これらは、コイル塗装において金属接着が良好であることで知られている;有機塗装:Science and Technology,
Z.W. Wicks, Jr.F. Jones, S.P.Pappas, Wiley−Insterscience, New York 1999, chap.24.2.1.2, 459頁を参照。
【0034】
ポリエステルポリオールは、例えば重縮合反応、すなわちポリオールとポリカルボン酸又はその誘導体の不足当量、例えばポリカルボン酸無水物、低級アルコールのポリカルボン酸エステル、ラクトン、又はヒドロキシカルボン酸との反応によって製造される。
【0035】
ポリエステルポリオールの製造に好適なジオールの例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチルエチルプロパンジオール、1,3−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ビス(1,4ヒドロキシメチル)シクロヘキサン(シクロヘキサンジメタノール)、グリセロール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ノルボルニレングリコール、1,4−ベンジルジメタノール、1,4−ベンジルジエタノール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジ−β−ヒドロキシエチルブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、3(4),8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(ジシドール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス[4−(β−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,2,4(2,4,4)−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、マンニトール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、キシリレングリコール又はネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、2−メチルプロパンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールの製造に好適なジカルボン酸又は誘導体は、脂肪族の、脂環族の、芳香族の、及び/又はヘテロ芳香族の性質であってよく、かつ任意に、ハロゲン原子等によって置換され、及び/又は不飽和であってよい。
【0037】
好適なジカルボン酸又は誘導体としては、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン及びセバシン酸、アゼライン及びドデカン二酸、2,2,4(2,4,4)−トリメチルアジピン酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、及び二量体脂肪酸が挙げられる。
【0038】
ポリエステルポリオールの製造に用いられるジオール及びジカルボン酸又はその誘導体は、所望の混合物全てにおいて使用される。
【0039】
好適なポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等のラクトンからの開環による周知の方法で製造されたもの、及び開始分子としてのシンプルなジオールが挙げられる。そういったポリカプロラクトンは、例えばスウェーデンのPerstorp社の製造ラインCapa(R)から入手可能である。
【0040】
ポリエステルポリオールがバインダーとして使用される場合、そのOH価は20mg KOH/g〜500mg KOH/gの間、酸価は2mg KOH/g以下でなければならない。OH価は、DIN 53 240−2によって、酸価はDIN EN ISO 2114によって決められる。モル質量は、水酸末端基とカルボキシ末端基の合計から計算される。平均分子量は、50g/mol〜10000g/mol、好ましくは100g/mol〜5000g/molである。
【0041】
ポリウレタンマトリックスの第2開始成分は、少なくとも2つのブロック化イソシアネート基を含む潜在性の硬化剤である。使用されるポリオールとの反応後に、高い機械的強度を有する細かいポリマー網目構造を形成するためには、分子ごとに少なくとも2つのブロックイソシアネート基(所謂、NCO官能基)が必要である。硬化剤が内部にブロック化したイソシアネート基を含むことが好ましい。特に、ウレトジオンが硬化剤として使用される。
【0042】
ウレトジオンは、イソシアネートの二量化によって得られる。ウレトジオン基を含むポリイソシアネートは、よく知られており、例えば米国特許第4476054号明細書、米国特許第4912210号明細書、米国特許第4929742号明細書、及び米国特許第5329003号明細書に記載されている。イソシアネートのウレトジオンへの転化は、通常、溶解性の二量化触媒、例えばジアルキルアミノピリジン、トリアルキルホスフィン、リン酸トリアミド、又はイミダゾールの存在下で行われる。該反応は、好ましくは溶媒なしで行われ、所望の転化が完了したところへ触媒毒が添加されることにより終了する。超過分の単量体イソシアネートは、その後短工程蒸発によって除去される。該触媒の揮発性が高い場合、反応混合物は、モノマー除去の途中で触媒から遊離し得る。この場合は、触媒の転化を控えてよい。広範囲のイソシアネートが、原理上、ウレトジオン基を含むポリイソシアネートの製造に適する。
【0043】
本発明に係る硬化剤として使用可能なウレトジオンの製造に好適なジイソシアネート及びポリイソシアネートは、所望の脂肪族の、シクロ脂環族の、及び/又は(シクロ)脂肪族のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートのみから成ってよい。好適な脂肪族のジイソシアネート又はポリイソシアネートは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン部分に、3〜16個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子を有することが好ましく、好適なシクロ脂肪族の又は(シクロ)脂肪族のジイソシアネートは、シクロアルキレン部分に、4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜15個の炭素原子を有することが好ましい。(シクロ)脂肪族のジイソシアネートという用語は、その分野において、例えばイソホロンジイソシアネート(IPDI)と同様に、環状かつ脂肪族的に結合したNCO基を表すとして理解されている。
【0044】
対照的に、シクロ脂肪族のジイソシアネートは、シクロ脂肪族環に直接結合した
NCO基のみ、例えばジイソシアネートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)のみを有するジイソシアネートを表すとして理解されている。更なる例としては、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)等のノナントリイソシアネート、デカンジ−及びトリイソシアネート、ウンデカンジ−及びトリイソシアネート、ドデカンジ−及びトリイソシアネートが挙げられる。同様に、4−メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)−イソシアネートメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、2−イソシアネートプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4−ジイソシアネート−4−メチルペンタンも好適である。
【0045】
好適なウレトジオンは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)の混合物、及びノルボルネンジイソシアネート(NBDI)から作製される。IPDI、HDI、TMDI、及び/又はH12MDIが特に好ましい。IPDI及び/又はHDIが極めて好ましい。列挙されたウレトジオンの混合物が硬化剤として使用されてもよい。
【0046】
使用されるウレトジオンは好ましくは、外部ブロッキング剤からフリーである。二量化によるウレトジオン構造に対する内部ブロッキングは可逆性である。高温でウレトジオンは、元々存在する2つのイソシアネート基に開裂し、バインダーによって架橋可能となる。外部ブロッキング剤と比較した際の利点は、繊維複合材料と金属表面の間、又は硬化領域の個々のプリプレグ層の間に気泡を形成させ、層間剥離の原因となる揮発性副生成物が、開裂により形成されない点である。
【0047】
絶対的に必要な2つの開始成分である硬化剤とバインダーに加え、反応性組成物は更なる成分も含んでよい。
【0048】
初めに、共バインダーを、対応する(第2)硬化剤とともに、第1架橋反応において低度に硬化するまで架橋し、第2架橋反応において最終架橋する。これにより、架橋状態での機械的特性が更に向上するだけでなく、極性相互作用による金属接着性が付加的に向上する。
【0049】
オキシラン含有化合物が共バインダーとして使用される。原理上、全てのエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルからなるポリエポキシド、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、及び3,4−エポキシシクロヘキシルエポキシエタン又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族ポリエポキシドが考えられる。異なるエポキシ樹脂の混合物も本発明に係る共バインダーとして使用されてよい。共バインダーにより、追加架橋に結合するマトリックスの金属接着性が向上する。共バインダーは、反応性組成物中で作製されるため、接着剤のように、熱可塑物質が金属に付着する前に個別に共バインダーを塗布する必要がない。それどころか共バインダーは、マトリックスの接着特性を本質的に改善する。
【0050】
ASTM D 1652により規定される共バインダーのエポキシ当量(EEW)は、好ましくは100〜1000g/eqの間である。EEWが1000g/eqを超えるエポキシ化合物を使用する場合、マトリックスの粘度が極めて大幅に強まり、加工が阻害される。マトリックスの脆化が深刻化すると、機械的特性は喪失する。
【0051】
共バインダーに好適な対応する硬化剤としては、脂肪族又は脂環族のポリアミン、ポリエーテルアミン、ポリメルカプトン、又はポリアミドアミンが挙げられる。しかし、カルボン酸エステルを供給するため、高温で共バインダーのオキシラン成分と開環反応を起こす、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸無水物が好ましい。
【0052】
共バインダーに対応する硬化剤として、ベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物又はピロメリット酸無水物のオリゴマー付加物と、エチレングリコール及びグリセロールと、を用いることが特に好ましい。
【0053】
反応性組成物は、更に追加成分、例えば、レオロジー改質剤、剥離剤、充填剤、脱気剤、消泡剤、流動助剤、湿潤剤、難燃剤、着色顔料、及び/又は流動御制御剤等の加工助剤又は添加物を含んでよい。そういった成分は、以下、“添加剤”として総称される。
【0054】
更に、組成物の反応性は、触媒を添加することにより、必要に応じて加速されてよい。しかし、触媒を添加する場合は、熱可塑性ポリウレタンマトリックスの保存安定性に関する要件を確実に満たし続けるため、注意が必要である。本発明に係る特定の実施形態では、不要な架橋を生じさせ、その結果保存安定性を減少させないよう、反応性組成物を、第1及び/又は第2架橋反応において触媒活性を示す物質から意図的にフリーにすることを規定している。
【0055】
これに関連する触媒活性物質は、第4級アンモニウム塩、好ましくはテトラアルキルアンモニウム塩、及び/又は対イオンとしてハロゲン、水酸化物、アルコキシド、又は有機酸又は無機酸アニオンを有する第4級ホスホニウム塩である。それらの例としては、テトラメチルアンモニウムギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、及び対応するテトラエチル−、テトラプロピル−、及びテトラブチルアンモニウム又は−ホスホニウム塩が挙げられる。
【0056】
反応性組成物は、所望の通り乾燥形態又は液体形態であってよい。
【0057】
乾燥形態での反応性組成物は粉末である。該粉末は、最初の架橋前に繊維から剥離しないよう、繊維に散布又は溶解される。
【0058】
代替的に、組成物の構成要素を液体溶媒に溶解させるか、又は全ての構成要素が溶解しない場合は少なくともその中に懸濁又は分散させる。従って、組成物は実際には液体であり、繊維は液体組成物によって含浸される。液体形態で供給される組成物は、乾燥形態の粉状組成物よりも技術的に取り扱いやすい。溶媒を使用する際に考えられる不利点としては、乾燥が不十分な場合に残る揮発性の構成要素であり、それは第1架橋反応後のポリマーに残留し、気泡形成の原因となり得る。しかし、溶媒は、第1架橋反応の過程において、いずれの場合にも必要な熱処理時の蒸発によって除去され、追加操作は必要なくなる。
【0059】
従って、溶媒は、第1架橋反応において反応性組成物が熱に暴露される間に、反応性組成物の成分を可能な限り完全に溶解させるだけでなく、可能な限り完全に蒸発させなければならない。
【0060】
この目的に適する溶媒は、エステル及び/又はケトン等の、沸点が高く、極性非プロトンの物質である。特に、溶媒としてイソプロピルアセテートとメチルイソブチルケトンを使用することが好ましい。溶媒として複数の物質の混合物を使用することの可能である。コスト面と環境面の理由により、溶媒の量は必要最小限まで減らさなければならない。混合物の総重量に対し、35〜50重量%の溶媒を使用することが好ましい。
【0061】
反応性組成物を提供するため、上記成分は以下の量で調合される。
【0062】
【表1】
【0063】
これらの成分の合計は、100重量%であると理解されよう。溶媒が使用される場合、該溶媒は反応性組成物の構成要素とみなされる。
【0064】
特定の製剤は、禁水性であり、かつ反応時に水分を形成しないという技術的な利点を有する。これは、ハイブリットコンポーネントパーツ中の残留水分が、金属本体部を内部から錆びつかせ、繊維複合材料への接着性を弱めるためである。0ppmw〜500ppmwの水分を含む組成物は、禁水性であるとして理解される。この水分を意図的に添加することはないが、特に吸湿性の製剤構成要素を使用する場合は、湿潤外気からこの水分が組成物上に溜まる。
【0065】
反応性組成物として使用されるポリウレタン製剤の化学的性質が広範囲に渡って記述されてきたため、発明の態様を設計する方法が特に明瞭になった。
【0066】
繊維を提供する方法は、使用される繊維とそれらが作製される形状次第である。繊維自体は、ガラス、炭素、アラミド等の普通の繊維材料から作製される。しかし、玄武岩、金属、又は天然の有機物から成る繊維を使用することも可能である。繊維は、短繊維又は継目のないフィラメントの形状であってよい。緩んだ織物構造ではなく、シート状及び/又は直線状の織物構造の繊維が一般的に提供される。シート状の織物構造は、織ったもの、より合わせたもの、編んだもの、単一方向の繊維束、又は関連する繊維材料から成る繊維ウェブであってよい。直線状の織物構造は、粗紡、糸、又は組ひもである。シート状の織物構造は、例えば糸が織られる際に、直線状の織物構造から順番に構成されてよい。シート状の織物構造の大きさに制限はない。特に、テープ又飾りひもも使用されてよい。シート状の織物構造は、定寸型で個々に製造されるが、連続ウェブとしてロールから巻きとくことが好ましい。
【0067】
反応性組成物が乾燥粉末混合物として使用される場合、該組成物で繊維を被覆する工程は、散布によって簡易的に行われる。溶融と最初の架橋(第1架橋反応)は、接着加熱又は熱放射等の熱利用により行われる。熱を利用することにより、硬化剤とバインダー間の更なる重合がわずかに誘発される。分子量のみを増加させ、3次元網構造を増加させないように選択された方法条件下においては、反応性転化は十分に低度である。従って、これは、可逆的に溶融され再冷却され得る熱可塑性物質をもたらす。熱が原因で、熱可塑性物質は低粘度溶融物の形状をしており、繊維の空隙に浸透する。その結果、繊維が熱可塑性ポリマーに埋め込まれる。溶媒の使用とその除去が必要ないため、粉末ルートは特に環境に優しい。
【0068】
反応性組成物が液体状態で加工される場合は、溶媒に溶解したバインダーと硬化剤が提供される。繊維又はシート状の織物構造を被覆する工程は、溶液にそれらを含浸させることによって行われる。粉末散布と比較し、これには、反応性混合物がシート状の織物構造に深く浸透し、それにより、製造時及び後の繊維マトリックス複合材料において、該混合物の織物への接着性が向上するという利点がある。従って、粉末バリアントよりも液体組成物が好ましい。
【0069】
繊維又はシート状の織物構造の含浸は、浸漬、液中に沈めること、又は処理に適する他の方法によって行われる。繊維が溶液に包まれることが重要である。これは、溶液が繊維の空隙を可能な限り完全に満たした場合に達成される。原理上、繊維全体に含浸させるのではなく、個々の繊維部分のみに含浸させることが考えられる。ロールtoロール方式で連続的に含浸させるのが好ましい。
【0070】
上記で規定される溶媒は、蒸発による含浸の後、シート状の織物構造から容易に除去されてよい。これらの溶媒は揮発性が高いため、これには低い温度のみが必要である。これらの溶媒は更に、乾燥後に、わずかな残留溶媒の含有量を1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下にすることができる。
【0071】
溶媒を蒸発させる工程と第1架橋反応は、温度80℃〜170℃、好ましくは120℃〜160℃、特に好ましくは140〜160℃の熱処理による単一操作で行われることが好ましい。熱処理継続時間は、1分〜60分、好ましくは10分〜30分である。熱への暴露は、赤外線放射又は熱放射に接触しない方法で実施されるのが最も良い。熱は、高温ガス流によって適用されてもよい。熱は溶媒を蒸発させ、また熱可塑性ポリマーを提供するための硬化剤とバインダーの反応を生じさせる。繊維が溶液に含浸するため、繊維は形成される熱可塑性物質に深く埋め込まれる。含浸した繊維がロールに存在する場合、溶媒蒸発と第1架橋反応はこのロール上、例えば連続炉で最も合理的に実施される。
【0072】
第1架橋反応完了時に、形成されたプリプレグ、すなわち繊維が埋め込まれた熱可塑性ポリマーが転化される。これは、プリプレグがロールから成る場合に特に必要である。転化は、初めに熱可塑性ポリマーを定寸にカットすること、及び個々のプリプレグ層をスタックすることからなる。層数は、予定された硬化領域の厚さ次第である。個々の層において、異なるプリプレグ材料を使用することも可能である。調製されたスタックは、所定の形状を提供するため、その後切断装置で定寸にカットされる。定寸カットには、レーザー切断又は水ジェット切断等の通常採用される技術が用いられる。定寸カットは、好ましくは可能な限り多くの材料を利用し、スクラップを減らすようにして行われる。スクラップの熱可塑性ポリマーは、該方法において、それを溶融することにより付随的に再利用されてよい。しかし、未転化の繊維は通常処分しなければならない。材料は代替的に短く圧縮されてよい。
【0073】
プリプレグの製造、すなわち、組成物による繊維の被覆、第1架橋反応、及び任意に層又はスタックの転化は、好ましくは金属本体部又はその半完成品なしで行われる。より正確には、プリプレグは別の場所において、というよりはむしろ、金属部を繊維複合補強材によって作製し、ハイブリットコンポーネントパーツを作製する他の事業体又は機関において作製される。この方法において、各事業体はそのコア事業を集中させることができ、プリプレグの生産者は、異なるハイブリットコンポーネントパーツの生産者に製品を提供することができる。これは、製造の融通性を非常に高め、製造コストを極めて減少させる。これが可能なのは、熱可塑性ポリマーが、冷却することなく常温で、すなわち、約1年間に至るまでおよそ15〜30℃の間で安定的に保存されるためである。その間、それはプリプレグ生産者と実際のハイブリットコンポーネントパーツ生産者の間を広範囲に渡って輸送されてよく、任意に中間の保存設備に保管されてもよい。それにもかかわらず、単一製造ラインの単一機関で初めにプリプレグを製造し、次いでハイブリットコンポーネントパーツ全体を製造することも可能である。従って、第1架橋反応(プリプレグの製造)を実施してから、埋め込み繊維(プリプレグ)を含む熱可塑性ポリマーを保存及び/又は輸送する第2架橋反応(実際のハイブリットコンポーネントパーツの製造)を実施するまでに、1日〜1年の期間が経過してよい。
【0074】
実際のハイブリットコンポーネントパーツを製造する際、ハイブリットコンポーネントパーツの金属本体部が、繊維複合材料から成る局所補強材によって提供される。
【0075】
埋め込み繊維を含む熱可塑性ポリマーが層ごとに提供される場合、埋め込み繊維を含む熱可塑性ポリマーを層ごとに金属に配置しかつ押し付けるために、一連の配置工程と押し付け工程が繰り返し行われる。金属部のみに硬化領域を形成するために層をスタッキングすることにより、より柔軟に、層を異なるハイブリットコンポーンネントパーツに使用することが可能になる。しかし、単層は、複層のスタックほど硬くないため、個々の層を押し付ける主な理由はより良好なドレープ性にある。
【0076】
代替的に、本体部又はその半完成品なしでスタックを提供するため、埋め込み繊維を含む熱可塑性ポリマーの個々の層を押し付けてもよい。一連の配置工程と押し付け工程は、スタックを本体部又は半完成品に配置及び押し付けることにより行われる。従って、スタックとは、ハイブリットコンポーネントパーツ用に特別に予備転化され、かつ押し付け後に硬化のみを必要とする補強パッチである。スタックは、最適化された軽量構造を有する各ハイブリットコンポーネントパーツに適合される。スタックの押し付けは、個別層の塗装よりも先に行われてよい。
【0077】
熱可塑性ポリマーを金属部に層状又はスタック状に適用することは、通常、慣習的なプリプレグ加工に相当する。
【0078】
熱可塑性ポリマーは柔軟なので、金属部とともに変形されてよい。従って、本発明に係る方法は、最終形状として金属本体部を提供するか、又は、これは製造技術の観点から特に興味深いことだが、初めに金属本体部の半完成品を単に提供し、かつ該前駆体を、それに付着した熱可塑性ポリマーとともに最終形状へ転化させるか、という選択肢を提供する。半完成品は、慣習的な金属加工技術によって、本体部に成形される。予期される処理、例えば曲げ加工、プレス加工、又は深絞り加工は特に金属板成形において確立される。金属本体部は、軽量構造の観点から細身であり、それゆえ硬度が必要なので、大規模成形加工は適さない。
【0079】
埋め込み繊維を含む熱可塑性ポリマーを、本体部に配置するか又はその半完成品に配置するかは、本発明に係る製造工程において、金属部が、すでに最終形状であるか、又は更に成形されるかに拠る。補強材は局所的にのみ拡張するため、配置は本体部又はその半完成品の局所領域で行われる。
【0080】
本明細書中に記載のポリウレタン製剤の接着特性のため、熱可塑性材料が所定の局所領域へ付着し、たとえ熱可塑性物質が付着した本体部が回転され、裏返され、又は輸送された場合でもその場に留まる。半完成品が形成される際に金属が脱離した場合であっても、熱可塑性ポリマーは脱離した金属に対する接着性を維持し、対応するように変形する。位置に関連する変化は、プリプレグを半完成品の上に配置する場合に考慮される。
【0081】
次の工程において、定寸にカットされたプリプレグスタックを、押し付けによって、金属本体部又はその半完成品に接合する。これは、予備架橋された繊維複合材料を本体部に充填するか、又は反対に、本体部を繊維複合材料の上に配置することによって成される。2つの表面同士の結合を確実なものにし、かつ空気の混入を最小限にするため、接合は、好ましくは押し付けによる圧力下で実施される。熱可塑性ポリマーは、更なる助力を受けることなく、すでに金属部に接着しているため、追加の接着剤は不要である。従って、本発明が好適に発展すると、埋め込み繊維を含む熱可塑性ポリマーが、追加の接着剤を使用することなく、本体部又はその半完成品の局所領域に配置されることとなる。これは、加工費用を著しく節約することを可能にする。結合に必要な時間は、自動車産業における慣習的なサイクル時間に一致させるため、できる限り短くしておく。接合操作と押し付け操作の持続時間は好ましくは5分未満、特に好ましくは1分未満である。
【0082】
表面仕上げを熱可塑性材料に適用することも可能である。この裏にあるのは、繊維複合材料の見た目が常に魅力的というわけではなく、消費者、特に自動車分野において拒絶されていることである。硬化を低品質のプラスチックとしてカテゴライズする消費者を避けるため、薄い金属箔、又はハイブリットコンポーネントパーツの目に見える側の硬化領域を被覆する高品質な見た目を有するプラスチックによる表面仕上げを用いて、熱可塑性マトリックスが提供されてよい。表面仕上げに機械的機能はなく、従って非荷重性である。金属本体部の硬化に係る機械的特性は、もっぱら繊維複合材料によって決まる。
【0083】
また、表面仕上げは、高温での硬化時において、熱可塑性かつ粘着性のマトリックス物質が、更なるコンポーネントパーツ又は加熱炉に、不必要に付着しない程度に接触しないという利点を有する方法を提供する。
【0084】
熱可塑性物質の接着特性により、追加の結合剤なしで仕上げ面は熱可塑性物質に接着する。金属箔が表面仕上げとして使用され、次いで金属本体部とともに被覆される場合、被覆されるハイブリットコンポーネントパーツは、消費者にとっては従来の金属コンポーネントパーツのように見える。
【0085】
従って、本発明の好適な開発段階においては、第2架橋反応実施後に、仕上げ面が熱硬化性マトリックスに接着し、ハイブリットコンポーネントパーツの硬化領域の目に見える面が仕上げされるよう、熱可塑性ポリマーを熱に暴露する前に、表面仕上げを該熱可塑性ポリマーに適用し、次いでそれとともに圧縮する。
【0086】
最終的な熱硬化性物質を提供するために、金属本体部と熱可塑性ポリマーの接合、又は熱可塑性物質による半完成品の成形後に、熱可塑性マトリックスの第2架橋反応を行う。これには熱可塑性物質の熱への暴露が必要である。これは、例えば熱放射、赤外線放射、又は燃料ガスを用いて達成される。該熱処理によりポリウレタンが完全に架橋され、該ポリウレタンは熱硬化特性を得、その硬化領域は最終強度を得る。硬化領域での更なる金属成形は不可能である。ハイブリットコンポーネントパーツにおいて、繊維強化による局所的硬化をしていない領域のみ、その後の更なる成形が可能である。
【0087】
多数の硬化領域を有する金属を提供すること、及びこれらを連続的に配置し、同時に又は連続的に架橋することが可能であると理解されよう。従って、ハイブリットコンポーネントパーツは、多数の局所的硬化領域を含んでよい。
【0088】
本明細書中に記載されるポリウレタン製剤は、160℃〜220℃の温度、最も好ましくは180℃〜200℃の温度において完全な架橋を可能にする。従って、本発明の好適な開発は、160℃〜220℃、特に好ましくは180℃〜200℃の温度で行われる第2架橋反応を基礎とする。特に、第2架橋は、第1架橋反応が行われる温度より少なくとも20℃高い温度で行われなければならない。熱処理の持続時間は、数分〜数時間、好ましくは20〜60分の範囲である。
【0089】
そのような温度により、いずれの場合も金属コンポーネントパーツに必要な熱処理工程が必要でなくなるため、この温度状況は有利である。これらは例えば、焼き入れ又は応力除去焼鈍等の金属の冶金微細構造変化であってよい。しかし、熱処理は、表面技術、例えば防食処理層のベーキングのサブステップであってもよい。特に自動車に用いられるハイブリットコンポーネントパーツは、いずれの場合も陰極電着塗装され、その陰極電着塗装は、塗装中の温度範囲で電気泳動的に適用される被覆物の熱処理によって完了されるため、金属本体部に電気泳動的に適用される防食処理層の硬化途中で、第2架橋反応を行うことが可能である。この目的を達成するため、陰極電着塗装の後に、被覆層のベーキング処理工程を利用することが好ましい。この方法では、追加の処理工程を必要とすることなく、マトリックスの硬化を方法中に組み込むことができる。同様の試みが米国特許出願公開第2015/0174642号明細書に記載されている。
【0090】
金属本体部又はその半完成品は、スチール、又はアルミニム、又はマグネシウム合金等の従来の金属材料から成る最も単純なケースである。
【0091】
しかし、本発明の好適な実施形態の1つは、金属本体部がスチールから成り、その微細構造が、第2架橋反応の途中で変性及び/又は変化することを規定している。特に金属材料の特性、例えば強度又はエネルギー吸収が変更される。発泡性フェライト系マトリックスとそこに結合されたハードマルテンサイト又はベイナイト相から成る焼き入れスチール材料を使用することも例えば可能である。2種の材料変化“金属の相転移”及び“マトリックスの完全架橋”を1つの処理工程で行うことができ、その結果費用と労力を節約できる。
【0092】
前記の冶金相転移は“Structure and mechanical properties of dual phase steels”, Ylva Granbom, Doctoral thesis 2010, Royal Institute of Technology School of Industrial Engineering and Management SE−100 44 Stockholm, Swedenに詳細に記載されている。
【0093】
このタイプの微細構造を有し、この冶金効果を使用可能にするスチールは、二相スチール(DP)として知られ、商業的には焼付硬化性スチール(BHZ)としても知られる。従って、本明細書中の方法では、2段階の架橋が可能なポリウレタン組成物の強度と同じように、焼付硬化性スチール又は二相スチールの強度が、2種の熱処理工程で高められるため、焼付硬化性スチール又は二相スチールから成る金属本体部又は半完成品を使用することが好ましい。BHZ又はDPスチールは、商業上、主要な製鉄業者、例えばThyssenKrupp Steel Europe AG社製DP−W(R)及びDP−K(R)等の車体構造に利用することができる。
【0094】
冶金転移が第2架橋反応の途中で行われる場合、冶金変化又は冶金転移、及びマトリックスの架橋が時期尚早に行われないよう、金属本体部又はその半完成品の存在下で先に行われる処理工程は、低温で実施される必要がある。
【0095】
従って、本発明に係る方法が好適に発展すると、本体部又はその半完成品への熱可塑性ポリマーの押し付けは、20℃〜25℃で実施されることとなる。これらの温度は、第2架橋及び冶金転移が実施される温度をはるかに下回る。また、これらの温度は、製造設備の標準室温に対応しており、従って、追加の温度制御装置は不要である。特に、本明細書中に記載のポリウレタンプリプレグは、エポキシドプリプレグとは対照的に、冷蔵貯蔵されないため、配置後に常温まで加熱される必要がない。
【0096】
本体部の半完成品を提供し、接着性の熱可塑性ポリマーによって本体部へと成形するという条件において、成形中に第2架橋反応を起こさないよう、半完成品の本体への成形を20℃〜150℃の温度で行う必要がある。接着性の熱可塑性ポリマーから成る半完成品があまりにも低温である場合は、成形前、或いは温めた成形装置を使用する前に、前駆体半成品を加熱する。
【0097】
使用される金属板は、任意に予め防食処理層をつけて提供されていてよい。ポリウレタン系被覆物で覆われた亜鉛メッキ鉄鋼板又は金属板が考えられる。また、金属がその表面に深絞り用油の残渣、又は成形加工で使用される同様の物質を有することも可能である。本発明に係るポリウレタン組成物の接着性がそれらにより著しく阻害されることはない。
【0098】
本明細書中に記載の方法は、理想的には、様々な生産拠点にわたって実施される。これらは、異なる組織に属していてもよく、非常に離れた場所から操作されてもよい。従って、化学会社が反応性組成物を提供し、これをプリプレグ製造業者に供給してよい。該製造業者は、該組成物を繊維に適用し、第1架橋反応を実施し、任意に埋め込み繊維を有する熱可塑性ポリマーを転化させる。実際のハイブリットコンポーネントパーツは、第3製造業者を前提として、補強材によって金属本体部又はその半完成品を提供し、かつ任意に生成ハイブリットを成形する該製造業者によって作製されてもよい。被覆物のベーキング後に、熱硬化性物質を提供するため、第2架橋反応は、ワークピースの陰極電着塗装を行い、かつ熱可塑性マトリックスを完全に架橋する第4組織において実施されてよい。金属本体部又はその半完成品も金属製造業者によって提供される場合、本発明に係る方法は、全体で5つに分化した組織の貢献により実施される。これは、本発明に係る方法が実施される場合の融通性を示している。
【0099】
該方法の実施により、繊維複合材料から成る少なくとも1の局所的硬化によって提供される金属本体部を含むハイブリットコンポーネントパーツが提供され、その際、該繊維複合材料は、ポリウレタン系熱硬化性マトリックスとそれに埋め込まれた繊維を含む。該方法による製品も同様に本発明に係る主題事項部分を形成する。
【0100】
好適な発展形態では、ハイブリットコンポーネントパーツの硬化領域を目に見える側の非耐力仕上げ面に提供することとなる。目に見える側に仕上げ面を有するハイブリットコンポーネントは、仕上げ面、例えば金属箔又はプラスチック箔を、熱可塑性マトリックスに押し付けることによって得られる。それは、ねじくぎ又は接着剤等の更なる接合手段なしで、そこに固定されたまま留まる。仕上げ面は、例えば電気泳動的に、金属本体部とともに被覆されてよい。その後、ハイブリットコンポーネントパーツはもはやそれ自体確認できなくなり、観察者には純金属のように見える。
【0101】
本明細書中に記載される発明の重要な側面は、繊維複合材料による金属本体部の硬化が全体的な効果ではなく、むしろ意図的に選択され制限された金属本体部の領域に限定されることである。ハイブリットコンポーネントパーツの通常の使用において、該パーツが少なくとも断続的に最大局部応力を受ける位置に、硬化領域が配置される。これは、硬化領域のすぐ外側は、硬化領域の内側よりもハイブリットコンポーネントパーツに作用する機械応力が低いことを意味する。とは言え、これは、ハイブリットコンポーネントパーツ全体の内、最も高い応力が加えられた領域(最大全体応力)が、硬化領域に存在する必要があることを意味していない。最大局所応力が複数生じる場合、複数の局所硬化領域が提供される。これらが近接している場合、これらは共通の硬化領域に捕捉される。
【0102】
基本的な考えとしては、金属と重量を省くため、少なくともより高い応力が加えられる領域が繊維複合材料によって選択的に硬化されるような寸法を、ハイブリットコンポーネントパーツに与えることである(軽量構造)。
【0103】
硬化領域の形状、位置、方向は、通常予期されるハイブリットコンポーネントパーツの応力次第である。従って、ハイブリットコンポーネントパーツの製造時、後で使用する際にハイブリットコンポーネントパーツに対して作用する力とモーメントを想定すること、かつコンポーネントパーツにおける最大局所応力の場所をそれらから決定することが必要である。その後、これらの場所は繊維複合材料によって硬化される。この配置は、最終的に硬化領域の形状を決定する。繊維は、硬化領域を通る力伝導の方向に配置されることが好ましい。最大局所応力は、コンピュータ支援の方法で、有限要素法(FEM)により決定される。
【0104】
ハイブリットコンポーネントパーツの使用目的がその硬化領域を決定するため、硬化領域において最大局所応力が働く形でハイブリットコンポーネントパーツを使用することは進歩的である。
【0105】
繊維複合材料にハイブリットコンポーネントパーツをつなぐよりも、金属にハイブリットコンポーネントパーツをつなぐ方が構造的に容易であるため、ハイブリットコンポーネントパーツは、好ましくは金属本体部のみによって、隣接コンポーネントパーツ又はコンポーネントアセンブリにつながれる。従って、実質的には金属本体部とマトリックスの接触面によって、力が硬化領域へ導入され、かつここで提案されるポリウレタン組成物の良好な金属接着性により確実に力が導入される。