(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407935
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ヒートシール欠陥の防止方法および製品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20181004BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/76
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-200491(P2016-200491)
(22)【出願日】2016年10月12日
(62)【分割の表示】特願2013-541039(P2013-541039)の分割
【原出願日】2011年11月23日
(65)【公開番号】特開2017-35890(P2017-35890A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/416,903
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516220365
【氏名又は名称】ミラクロン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100155125
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 直俊
(72)【発明者】
【氏名】スウェンソン,ポール,エム.
【審査官】
深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−153327(JP,A)
【文献】
特表2004−523398(JP,A)
【文献】
特開平07−330042(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0160346(US,A1)
【文献】
特開平05−261759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/24,45/46−45/63,45/70−45/72,45/74−45/84
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー材を含む内側層、
第1のポリマー材を含む外側層、および
第2のポリマー材を含む内部層であって、多層成形品のヒートシール可能なゾーン内にバリアまたはスカベンジャーカバーを提供しかつ維持するために、内側および外側層の間に延在しかつ多層製品の生じる外壁面の方へ偏っている内部層、
を含み、
内部層が、生じる外壁面の方へヒートシール可能なゾーン内のヒートシール接触面から離れるように折り返されている、共射出成型された多層製品。
【請求項2】
ヒートシール可能なゾーン内のヒートシール接触面にヒートシールされたカバーをさらに含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
ヒートシール可能なゾーン内のヒートシール接触面を有するフランジをさらに含む、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
多層製品のヒートシール可能なゾーン内のヒートシール接触面であって、ヒートシール可能なゾーン内の第1のポリマー材の内部層の方向と実質的に平行であるヒートシール接触面をさらに含む、請求項1に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年11月24日に出願された米国仮特許出願第61/416,903号の利益を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、多層射出成形品に関するものである。特に、実施形態は、製品に埋め込まれたバリアまたはスカベンジャー構成要素に損傷を与えることなく、ヒートシール(熱溶着)のメカニズムで密封するのに適した多層成形プラスチック製品に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
射出成形品はさまざまな目的のために使用されている。プラスチック射出成形品は一般的にポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)などの材料から作られる。多くの用途において、射出成形容器は容器の開口部にヒートシールされた蓋またはクロージャを備えている。多くの場合、そうした容器には、クロージャがシールされる容器の開口端にフランジ、リップまたはその他の突起がある。一般に、クロージャは、容器を囲むように構成された第1層と、第1層の少なくとも一部を覆うプラスチック層(該容器に接触している)とを含む。多くの用途では、第1層は、ホイル、例えばアルミニウムホイル、または容器の開口部にガスバリアおよび/または水バリアを提供する別の材料を含む。プラスチック層は例示的には、容器材料とのヒートシールを形成することができる、容器と同じ(または類似の)材料である。容器とプラスチック層が接触している領域内の容器およびクロージャのプラスチック材料はその後、多くの場合圧縮しながら、(種々の公知の加熱方法によって)加熱され、これによって、プラスチック層および/または隣接するプラスチック容器材料が、蓋を容器にシールするのに十分な程度に軟化および/または溶融される。ヒートシール法は、結果的に、ヒートシールに隣接する容器材料に、例えばフランジの厚さの約10%に、熱影響部(heat-affected zone)を生じさせる。
【0004】
PETおよびPPなどのプラスチック材料はガス(例えば、酸素、窒素など)透過性である。ガス透過性が望ましくない用途、例えば食品、医薬品、およびガスへの暴露時に劣化する製品では、バリア材料またはスカベンジャー材料がプラスチック材料と共射出される。例示的には、エチルビニルアルコール(EVOH)などのバリア材料がPETまたはPP材料流の内部に射出されて、PETまたはPPの内側層と外側層の内部に埋め込まれたEVOH内部層を形成する。
【0005】
この共射出成形法は、バリア層を形成させることに関してのプロセス限界のため、これまで形状が本質的に対称である製品に限られてきた。さらに、望ましくないガス透過性を防止するため、成形品を通して十分に延在する内部層を提供するために、内部層材料は、それが本質的に金型全体にわたって流れるような方法で、金型内に射出される。
【0006】
しかしながら、この方法で内部層材料を射出すると、内部層材料が所望の内部位置を越えて流れることがある。例えば、内部層材料が内側および外側層材料のフローフロントまたはリーディングエッジを突き抜けたり、ブレイクスルーしたりすることがある。内部層がヒートシールの熱影響部に入り込む場合には、ヒートシール欠陥につながる層間剥離を起こす可能性がある。現在知られている解決策は、内部層が所望の内部層位置を越えて流れることなく金型キャビティ全体に十分に流れるように、例えば射出圧力、温度、タイミング、射出位置などを制御することによって、内部層材料の流れをより正確に制御しようとするものである。それにもかかわらず、その他のシステムおよびプロセスの変動によって、依然として、内部層材料が熱影響部に流入するという結果になる。
【0007】
したがって、内部層材料がヒートシール影響部に有害な程度に延在または衝突しない、そうした内部層をもつ射出成形品を形成するための方法および装置が必要である。さらに、内部層を含むが、内部層材料がヒートシール影響部に有害な程度に延在または衝突しない、共射出成形品の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
バリア層またはスカベンジャー層が埋め込まれている多層成形品であって、多層成形品の開口部を密封するヒートシール工程後に該層が無傷のままであって機能を依然として維持している、そうした多層成形品を形成するための例示的な方法およびシステムが本明細書に教示される。バリア層またはスカベンジャー層が埋め込まれている多層成形品であって、多層成形品の開口部を密封するヒートシール工程後に該層が無傷のままであって機能を依然として維持している、そうした例示的な多層成形品が本明細書に教示される。いくつかの例示的な実施形態では、例示的な多層成形品のヒートシール可能なゾーンは、その多層成形品の開口端のまわりに円周方向に延在するリムまたはフランジ部に位置している。
【0009】
いくつかの実施形態において、例示的な共射出成形装置は、多層成形品を共射出/押出成形するための金型キャビティを画定する金型を含み、その多層成形品は内側層と、外側層と、内側および外側層(すなわち、スキン層)の内部に埋め込まれた内部層と、クロージャまたは他の構成要素がヒートシールされ得るヒートシール可能部内の表面とを有する。
内部層は第1のポリマー材であり得る。内側および外側層は第
2のポリマー材であり得る。内部層は、第
2のポリマー材のガス透過性に対して実質的にガス不透過性であり得る。内部層は、第
2のポリマー材のガス透過性に対して実質的にガス掃去性(gas-scavengable)であり得る。成形装置は、結果として得られる多層成形品を形成するために、金型キャビティ内に内側層のポリマー材と、外側層のポリマー材と、内部層のポリマー材を同時に射出するように構成される。前記成形装置はさらに、複合材料の流れのゼロ速度勾配からオフセットされた流線に沿って、金型キャビティ内に内部層のポリマー材を射出するように構成される。複合材料の流れは内側ポリマー材の流れと、内部ポリマー材の流れと、外側ポリマー材の流れから形成される。前記成形装置はさらに、ヒートシール可能な表面部と反対側のまたは該表面部から離れているゼロ速度勾配の側に、内部ポリマー材を射出するように構成される。ヒートシール操作中、多層成形品のヒートシール可能な部分の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されるが、内部ポリマー材は無傷のままであり、かつ多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層としての機能を依然維持している。
【0010】
他の実施形態においては、ヒートシール可能なゾーンを有する多層成形品を形成するための例示的な方法が教示される。例示的な方法では、得られる多層成形品のヒートシール可能な部分のヒートシール面と反対側のまたは該面から離れている、複合材料の流れのゼロ速度勾配の側に、内部層のポリマー材が射出される。内部層のポリマー材は、得られる多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層を形成する。バリア層またはスカベンジャー層は、内側および外側ポリマー材から形成されたスキン層内に埋め込まれる。例示的な方法では、クロージャまたは他の構成要素がヒートシールされ得るヒートシール可能な部分を有する多層成形品が形成される。例示的な方法では、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール可能な部分へ向かわせ、その後、ヒートシール操作時の、ヒートシール可能な部分における内部層の欠陥を回避するように、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール可能な部分に位置づける。ヒートシール操作中、多層成形品のヒートシール可能な部分の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されるが、内部ポリマー材は無傷のままであり、かつ多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層としての機能を依然維持している。
【0011】
他の実施形態においては、ヒートシール可能なゾーンを有する多層成形品を形成するための例示的な方法が教示される。例示的な方法では、得られる多層成形品のヒートシール可能な部分のヒートシール面と反対側のまたは該面から離れている、複合材料の流れのゼロ速度勾配の側に、内部層のポリマー材が射出される。内部層のポリマー材は、得られる多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層を形成する。バリア層またはスカベンジャー層は、内側および外側ポリマー材から形成されたスキン層内に埋め込まれる。例示的な方法では、クロージャまたは他の構成要素がヒートシールされ得るヒートシール可能な部分を有する多層成形品が形成される。例示的な方法では、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール可能な部分へ向かわせ、その後、ヒートシール操作時の、得られる多層製品のヒートシールの欠陥を回避するように、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール可能な部分に位置づける。ヒートシール操作中、多層成形品のヒートシール可能な部分の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されるが、内部ポリマー材は無傷のままであり、かつ多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層としての機能を依然維持している。
【0012】
いくつかの実施形態において、共成形品は内側層と、外側層と、内側および外側層の内部に実質的に含まれた内部層と、クロージャまたは他の構成要素がヒートシールされ得る表面部をもつヒートシール可能な部分とを有する。内部層は、内側および外側層と異なる材料とすることができ、かつ/または内側および外側層と異なる組成物を含むことができる。内部層は、内側および外側層材料と比べて増加したガス不透過性またはガス掃去性を示す材料および/または組成物を含むことができる。内部層は、ヒートシール操作に起因するバリア層またはスカベンジャー層の欠陥を回避する形で、ヒートシール可能な部分に位置づけられる。構成要素(例えば、蓋またはシール)は、共成形品の表面部にヒートシールされて、構成要素と表面部の間に無傷のヒートシールを形成することができる。ヒートシール操作中、多層成形品のヒートシール可能な部分の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されるが、内部ポリマー材は無傷のままであり、かつ多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層としての機能を依然維持している。
【0013】
いくつかの実施形態においては、コンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ読取可能媒体が教示される。プロセッサによる命令の実行によって、本明細書に教示される共成形多層製品の形成が制御される。命令の実行によって、得られる多層成形品のヒートシール可能な表面部と反対側のまたは該表面部から離れている、複合材料の流れのゼロ速度勾配の側への、内部層ポリマー材の射出が起こる。内部層のポリマー材は、得られる多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層を形成する。バリア層またはスカベンジャー層は、内側および外側ポリマー材から形成されたスキン層内に埋め込まれる。例示的な命令は、実行されると、クロージャまたは他の構成要素がヒートシールされ得るヒートシール可能な部分をもつ多層成形品を形成する。例示的な命令の実行は、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール可能な部分へ向かわせ、その後、ヒートシール操作時の、ヒートシール可能な部分における内部層の欠陥を回避するように、内部ポリマー材のリーディングエッジをヒートシール部に位置づける。ヒートシール操作中、多層成形品のヒートシール可能な部分の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されるが、内部ポリマー材は無傷のままであり、かつ多層成形品のバリア層またはスカベンジャー層としての機能を依然維持している。ヒートシール操作によって、クロージャまたは他の構成要素を多層成形品に固着させることが可能である。
【0014】
例示的な実施形態の他の目的および利点は、以下の実施形態の詳細な説明および添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従う容器の概略断面図であるが、例示目的のために容器の壁厚が誇張されている。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従う金型キャビティの概略断面図である。
【
図4】
図4は、本明細書に教示される種々の実施形態に従う例示的な成形システムの断面図を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に教示される例示的な実施形態を実施するのに適した例示的なコンピューティング環境を示す。
【
図6】
図6は、複合ポリマー流が金型キャビティの環状経路に沿って流れるときの、複合ポリマー流のファウンテンフロー効果の断面図である。
【
図7A-B】
図7Aおよび7Bは、複合ポリマー流の環状流の速度プロファイル、および複合ポリマー流の流れ勾配にわたる相対的速度差の断面図である。
【
図7C】
図7Cは、
図4におけるようなノズル内の環状流路にわたる、または金型キャビティの環状流路についての、結果として生じる流れ分率および速度プロファイルの曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本明細書には、例示的な共射出成形装置、多層成形品および容器、ならびに多層成形品または容器の開口部を密封するヒートシール工程の実施中および実施後のバリア層もしくはスカベンジャー層および/またはヒートシールゾーンの完全性を確保するために、多層成形方法においてバリア層またはスカベンジャー層を形成しかつ制御するための方法が開示される。バリア層もしくはスカベンジャー層および/またはヒートシールゾーンの完全性を確保することによって、前記容器は、バリア層もしくはスカベンジャー層および/またはヒートシールゾーンが完全に無傷で、破損個所または弱体化部分がないように作製され、それゆえに、該容器の貯蔵寿命が延長される。ヒートシールゾーンにおけるヒートシールの完全性は、バリア層もしくはスカベンジャー層がヒートシールゾーンのヒートシール可能な表面に接触することを制限することによって、またはそれがヒートシール工程中に触れる可能性があるヒートシールゾーンの該表面に近い領域に位置することを制限することによって、確保される。これによって、蓋またはシールをヒートシールゾーンで容器に完全に固定することが可能になる。バリア層もしくはスカベンジャー層がヒートシール工程前、工程中または工程後にヒートシール可能な表面を突き破ると、蓋またはシールとヒートシール可能な表面との間に適切な密封が形成されず、容器の貯蔵寿命が低下する原因となる。同様に、バリア層もしくはスカベンジャー層の完全性は、バリア層もしくはスカベンジャー層を、ヒートシールゾーン内において、ヒートシール工程中にバリア層もしくはスカベンジャー層の溶融、突破または穿孔を生じさせないように位置づけることによって維持される。
【0017】
図1を参照すると、容器100は、底部105、底部105の外縁から延びて開口端107を有するチャンバ106(この実施形態では一般にカップ状またはU字形である)を形成する側壁110、および容器の開口端107で側壁110の外縁から延在するフランジ115を有する。クロージャ120(従来のタイプのものであってよい)は、従来のヒートシール法によってフランジ115にヒートシールされ得る。容器100には、ヒートシール面182をもつヒートシール可能なゾーン180が含まれる。この実施形態では、ヒートシール可能なゾーン180は開口端107のまわりに円周方向に延びている。同様に、この実施形態では、ヒートシール面182は開口端107のまわりに円周方向に延びている。この実施形態において、ヒートシール可能なゾーン180とヒートシール面182はフランジ115に形成されている。例示した実施形態はカップ状の形をしているが、他の例示的な実施形態では、容器の一部を封止するためにヒートシールが使用される任意の形状または構成をもつ容器が考えられる。
【0018】
容器100は、例えば
エチレンビニルアルコール(EVOH)などの第1のプラスチック材料と、例えば
ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)などの第2のプラスチック材料とを金型キャビティ内に射出することによって、形成することができる。金型キャビティは、内側層130、内部層150および外側層132を形成するように構成されており、一般には容器または製品の所望の最終形状に一致しており、周知のように製造要件(例えば、熱膨張/収縮)の要因となる。PE、PPおよびEVOHはよく用いられる材料であるが、当然、他の適切な材料を使用してもよく、本発明は他の材料を用いた場合にも適用される。いくつかの態様では、得られる多層製品の内側および外側層を形成するためにPEまたはPPのいずれかが用いられ、そして得られる多層製品の内部層を形成するためにEVOHが用いられる。
【0019】
図1に見られるように、内部層150は実質的に容器100の全体にわたって延びているが、内側層130と外側層132によって完全に取り囲まれているか、これらの層の間に埋め込まれている。内部層150は、酸素などのガスが容器を通って(すなわち、外側から内側へまたはその逆へ)透過するのを十分に防止するガスバリア材料、例えばEVOHまたは他の適切な材料(知られているか、知られるようになり得る材料)であり得る。内部層150は、酸素などのガスを十分に掃去するガススカベンジャー材料であってもよい。
図1の特定の実施形態に見られるように、内部層150はフランジ115へと延びている。
【0020】
例示的な実施形態では、内部層150を形成するポリマー材のリーディングエッジは、ヒートシール可能なゾーン180内の外部層132の方へ折り返すか、外部層132の方へ回り込むように位置づけられる。内部層150のフォールドオーバー部150aは、内部層150が、容器の周囲を完全に囲む、ヒートシール可能なゾーン180へと実質的に延在しながら、内側層と外側層(それぞれ130および132)の内部に包み込まれることを保証する。内部層がヒートシール可能なゾーンにまで延びていない隙間では、密封容器への過剰なガスの透過が可能になり、このことで、得られた容器内に保持される内容物の貯蔵寿命が短くなることがあるので望ましくない。ヒートシール操作時に、ヒートシール可能なゾーン180の材料の厚さの最大10%またはそれ以上が溶融されて、クロージャと容器の間にガス不透過性の結合を形成する。
【0021】
ヒートシール操作時に外側層132の方へ偏ったフォールドオーバー部150aが存在しないと、ヒートシール可能な表面182にあるまたはそのすぐ下にある内部層150がクロージャと容器の間の密封に影響を及ぼす可能性がある。なぜならば、第1のポリマー材とクロージャ材料との間の密着性は、第2のポリマー材とクロージャ材料との間ほど良好ではない場合があるからである。さらに、外側層132または内側層130の方へ偏ったフォールドオーバー部150aが存在しないと、内部層150はヒートシール可能なゾーン180の完全な外周にまで延在せず、したがって、容器表面のシール可能な部分の一部がバリア材料によってカバーされず、こうして容器内に密封された内容物への過剰なO
2透過が可能になる。例えば、その部分の表面積のわずか1%〜2%に内部層のカバーが存在しない場合、外側層132の高い透過率のため、その容器内に密封された物品の貯蔵寿命が短くなることがある。フォールドオーバー部150aは、内部層150がヒートシール可能なゾーン180の完全な外周にまで延在し、かつその部分の周囲を完全に囲むことを保証する上で有利である。
【0022】
好ましくは、内部層150は、フォールドオーバー部150aを介して、ヒートシール可能なゾーン180へと延びており、かつヒートシール可能な表面182から適切に遠ざけられている。内部層150がヒートシール可能な表面182のすぐ下に位置づけられるならば、ヒートシールクロージャと容器フランジとの接着が不十分であるか弱いと考えられ、あるいはそうした接着が起こらない。不十分なまたは弱い接着は、ヒートシールクロージャと容器との間のO
2透過を可能にして、悪影響を及ぼす。
【0023】
ヒートシール可能なゾーン180内のまたはゾーン180へのフォールドオーバー部150aの適切な位置決めは、有利には、本明細書の教示に従って行うことができる。内部層150がヒートシール可能な表面182で容器100の内側層130を突き破るならば、一部のバリア材料(例えば、EVOH)によって吸収された水が、その材料のバリア性を低下させて、容器の貯蔵寿命を短くする可能性がある。さらに、内部層150がヒートシール可能な表面182で容器100の内側層130を突き破った場合には、内部層150がヒートシール可能な表面182に接触して付着する可能性がある。仮にこれが発生したら、ヒートシールクロージャは、内部層150によってもたらされた汚染のため、ヒートシール可能な表面182に完全には付着せず、容器の貯蔵寿命を短縮するかもしれない。
【0024】
内部層150は、内部層150を形成する第1のポリマー材を、内側層130および外側層132を形成する第2のポリマー材と同時に射出することによって、作製することができる。このような方法は一般に知られており、例えば、米国特許第6,908,581号およびそこに組み込まれた文献に記載されており、それらも参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
図2に模式的に示されるように、金型200は型部分210a、210bを有し、それらの間に金型キャビティ220を形成している。ノズルアセンブリからの複合環状流300は、ゲート射出位置140で射出ゲートから金型キャビティ220内に射出され、そして複合環状流300は射出位置140から金型キャビティ220を通って流れる。複合環状流300はノズルアセンブリ内で形成される。ノズルアセンブリでは、内部層150のための第1のポリマー材から、および内側層130と外側層132のための第2のポリマー材から、複合環状流300が形成される。第2のポリマー材が内側環状流と外側環状流を形成する一方で、第1のポリマー材は複合環状流300の内側環状流と外側環状流の間に位置づけられる内部環状流を形成する。複合環状流300の流れは、金型キャビティ220を通って移動するフローフロント330を形成する。
【0026】
複合環状流300を形成する内側流と外側流の体積流量比は、複合環状流300のゼロ速度勾配340(Vmax)からオフセットされた流線に沿って、しかし平均流速(Vave)360より大きい速度を有しかつ外側流の方へ偏った流線上に、内部層流を流れさせるように選択される。これは、内部層材料の流れ150がフローフロント330を突き破るのを防止する。それどころか、第1のポリマー材のリーディングエッジの位置決めおよび射出タイミングにより、
図3に示されるように、内部層材料の流れ150のリーディングエッジがフランジ115に入り、次いでヒートシール可能なゾーン180内で、生じる外側層132の方へ折り返ってフォールドオーバー部150aを形成するように、該リーディングエッジを誘導することが有利である。好ましいことに、第1のポリマー材のリーディングエッジはフローフロント330の後方にとどまり、複合環状流300の内側流と外側流によって包み込まれたままである。ゼロ速度勾配からオフセットされた内部層材料の流れ150を開始することによって、または内部層材料の流れ150をゼロ速度勾配から第2のポリマー材の外側流の方へ偏ったより遅く移動する流線へシフトすることによって、第1のポリマー材は平均速度より大きい速度を有する。こうして、内部層の第1のポリマー材は、複合流130のファウンテンフローに「追い付き」かつ折り返って、バリアまたはスカベンジャー層を形成することができ、該層はフランジ115にまで延在して、容器100の開口端107を密封するヒートシール操作時にバリアまたはスカベンジャーとしての欠陥を回避する。
【0027】
米国特許第6,908,581号の技術は、内部層材料がフローフロント330を突き破って、ヒートシール可能な表面182の上に流れて悪影響を及ぼすのを防止するが、本発明者は、第1のポリマー材のリーディングエッジがヒートシール可能な表面182の上にまたは該表面の近くに流れることが原因で、ヒートシール欠陥が依然として発生し得ることを見いだした。本発明者が発見したことは、内部層150の第1のポリマー材の流路を外側層132の側の方へゼロ速度勾配340からオフセットすることによって、フォールドオーバー部150aが内側および外側層への内部層150の密着性を保全し、かつヒートシール操作中および操作後の、第2のポリマー材のヒートシール可能な表面182へのクロージャの密着性を保全して、容器100におけるバリアまたはスカベンジャーのカバーを維持する、ということである。
【0028】
図4は、例示的な実施形態を実施するのに適した例示的なシステムを示す。共射出成形システム1000は、少なくとも2つの材料を金型キャビティ内に射出するように構成されている。本発明で使用するのに適した材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、エチレンビニルアルコール(EVOH)およびポリカーボネートなどのポリマー系材料が挙げられる。共射出成形システム1000は、第1の材料源1200、第2の材料源1400、およびマニホールド1600を含む。共射出成形システム1000はさらに、ノズルアセンブリ18A〜18Dおよび金型2400を含む。金型2400には、ゲート20A〜20Dおよびキャビティ22A〜22Dが含まれる。
【0029】
第1のポリマー材は第1の材料源1200から、そして第2のポリマー材は第2の材料源1400からマニホールド1600に押し出され、ノズル18A〜18D内で組み合わされてから金型キャビティ22A〜22D内に射出される。第1および第2のポリマー流は、環状複合ポリマー流を形成するために、第1のポリマー材が複合ポリマー流の内部コア流を形成する一方で、第2のポリマー材が複合流の内側および外側流を形成するように、組み合わされる。環状複合ポリマー流がノズルから射出されるとき、内側および外側流は内部コア流を包み込む。
【0030】
図5は、本明細書に教示される例示的な実施形態を実施するのに適した例示的なコンピューティング環境を示す。その環境は、共射出成形システム1000に有線で、無線で、または有線と無線の混線で接続された共射出制御装置900を含むことができる。共射出制御装置900は、ヒートシール操作中および操作後に無傷のままであるバリア層またはスカベンジャー層を多層成形品のヒートシール可能な部分に形成するための、実行可能なバリア保護コード950を実装するようにプログラム可能である。共射出制御装置900は、例示的な実施形態を実行するための1つ以上のコンピュータ実行可能命令またはソフトウェアを格納するための1つ以上のコンピュータ読取可能媒体を含む。コンピュータ読取可能媒体には、1つ以上のタイプのハードウェアメモリ、非一時的な有形の媒体などが含まれるが、これらに限定されない。例えば、共射出制御装置900に内蔵されるメモリ906は、コンピュータ実行可能命令またはソフトウェア、例えば実行可能なバリア保護コード950のあらゆるモジュールを実行して処理するための命令、を格納することができる。共射出制御装置900にはさらに、メモリ906に格納されたソフトウェアと、システムのハードウェアを制御するための他のプログラムを実行するための、プロセッサ902および1つ以上のプロセッサ902’も含まれる。プロセッサ902および1つ以上のプロセッサ902’はそれぞれ、シングルコアプロセッサまたはマルチコア(904および904’)プロセッサとすることができる。
【0031】
コンピューティングデバイスのインフラとリソースを動的に共有できるように、共射出制御装置900では仮想化(virtualization)を用いることが可能である。仮想化されたプロセッサはまた、ストレージ916内の実行可能なバリア保護コード950および他のソフトウェアと共に使用することもできる。複数のプロセッサ上で動作しているプロセスを処理するために仮想マシン914を設けることができ、その結果、そのプロセスは複数ではなくただ1つのコンピューティングリソースを使っているように見える。複数の仮想マシンを1つのプロセッサと共に使用することも可能である。
【0032】
メモリ906はコンピュータシステムメモリまたはランダムアクセスメモリ、例えばDRAM、SRAM、EDO RAMなどを含むことができる。メモリ906は他のタイプのメモリまたはそれらの組合せを含んでもよい。
【0033】
ユーザは、ユーザインターフェース924または他の任意のインターフェースを表示しうる、コンピュータモニタなどの、視覚的表示装置922を介して共射出制御装置900と相互作用することができる。視覚的表示装置922はまた、例示的な実施形態の他の側面または要素、例えばデータベース、SPC過去データなどを表示することもできる。共射出制御装置900は、ユーザからの入力を受信するための、他のI/Oデバイス、例えばキーボードまたはマルチポイントタッチインターフェース908、およびポインティングデバイス910、例えばマウス、を含むことができる。キーボード908とポインティングデバイス910は視覚的表示装置922に接続され得る。共射出制御装置900は他の適切な従来のI/O周辺機器を含んでもよい。共射出制御装置900はさらに、オペレーティングシステム918と他の関連ソフトウェアを格納するための、および実行可能なバリア保護コード950を格納するための、ストレージデバイス916、例えばハードドライブ、CD-ROM、または他の非一時的コンピュータ読取可能媒体を含んでもよい。
【0034】
共射出制御装置900は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)またはインターネットにさまざまな接続手段を介して接続するためのネットワークインターフェース912を含むことができ、かかる接続手段としては、限定するものではないが、標準的な電話回線、LANもしくはWANリンク(例:802.11、T1、T3、56kb、X.25)、ブロードバンド接続(例:ISDN、フレームリレー、ATM)、ワイヤレス接続、コントローラエリアネットワーク(CAN)、または上記のいずれかまたは全部の組合せが挙げられる。ネットワークインターフェース912は、内蔵型ネットワークアダプタ、ネットワークインターフェースカード、PCMCIAネットワークカード、カードバスネットワークアダプタ、ワイアレスネットワークアダプタ、USBネットワークアダプタ、モデム、または通信が可能でありかつ本明細書に記載の操作を実行できる任意のタイプのネットワークに認可コンピューティングデバイス900を接続するのに適した他のいずれかのデバイスを含むことができる。さらに、共射出制御装置900は、通信が可能でありかつ本明細書に記載の操作を実行するのに十分なプロセッサパワーとメモリ容量がある、ワークステーション、デスクトップコンピュータ、サーバー、ラップトップ、ハンドヘルドコンピュータ、または他の形態のコンピューティングもしくはテレコミュニケーションデバイスなどの任意のコンピュータシステムであり得る。
【0035】
共射出制御装置900は、以下のようなオペレーティングシステムを実行することが可能である:Microsoft(登録商標)Windows(登録商標)オペレーティングシステムのバージョンのいずれか、Unix(登録商標)およびLinux(登録商標)オペレーティングシステムの異なるリリース、Macintoshコンピュータ用のMacOS(登録商標)の任意のバージョン、任意の組み込みオペレーティングシステム、任意のリアルタイムオペレーティングシステム、任意のオープンソースオペレーティングシステム、任意のプロプライエタリオペレーティングシステム、モバイルコンピューティングデバイス用の任意のオペレーティングシステム、またはコンピューティングデバイス上で動作可能でありかつ本明細書に記載の操作を実行することが可能な他のいずれかのオペレーティングシステム。オペレーティングシステムはネイティブモードまたはエミュレーションモードで動作可能である。
【0036】
バリア保護コード950は、共射出成形システム1000を制御するための、プロセッサ902によって実行可能な実行コードを含んでおり、該実行コードは、本明細書に教示されるように、選択的に内側および外側ポリマー流の体積流量を制御し、複合ポリマー流のフローフロントに対する内部コア材料の流れ150の位置を制御し、そして内側および外側ポリマー流の押出開始時間に対する内部コア流の押出開始時間を制御する。すなわち、バリア保護コード950は、内部コア材料の流れ150のリーディングエッジを、複合環状流300の平均速度より大きい速度をもつ流線上に配置または誘導するように共射出成形システム1000を制御するための、プロセッサ902によって実行可能な実行コードを含んでいる。バリア保護コード950は、内部コア材料の流れ150のリーディングエッジを、生じる外側層132の方へ偏った流線上に配置または誘導し、内部コア材料の流れ150のリーディングエッジを下流のヒートシール可能なゾーン内に配置または誘導し、そして内部コア材料の流れ150のリーディングエッジをヒートシール可能なゾーンでまたはその近くで折り返らせて、ヒートシール工程中または工程後のバリア層またはスカベンジャー層の欠陥を回避するように、共射出成形システム1000を制御するための、プロセッサ902によって実行可能な実行コードを含んでいる。内部コア材料の流れ150は、生じる外壁132の方へ折り返す。プロセッサ902によるバリア保護コード950の実行によって、共射出成形システム1000は、内部層材料の流れ150を、得られる多層プラスチック製品のヒートシール可能なゾーンに配置して、ヒートシール操作中または操作後における、得られる多層成形品における内部層150の突破または欠陥を回避することができる。特に、本発明のバリア保護コード950は、内部層150の完全性を確保し、かつ、前述したように、内部層150がヒートシール可能な表面182に接触して該表面を汚染するのを制限することによって、ヒートシール可能な表面182の完全性を確保する、ことを目指している。本明細書に教示される方法および共射出成形システムは、ヒートシール可能な食品または飲料容器の共射出成形を容易にするものであり、それによって、内部コア流はヒートシール可能なゾーンに位置づけられて、ヒートシール操作の間、その完全性を維持する。
【0037】
図6は、ファウンテンフロー効果を示し、それによって、複合流は、体積流量が複合ポリマー流の中心部で最も速くなり、複合ポリマー流と金型キャビティの環状流路の壁との接触面でまたはその付近で最も遅くなるような、速度勾配22を有する。複合流のフローフロント23は、キャビティ壁間のポリマーの流動中に発生するファウンテンフロー効果を示す。ポリマーのファウンテンフローは、成形品の外面を、フローフロントの上流の流れのゼロ勾配に沿って流れていた材料から構成させる。内部層が複合流のゼロ勾配に沿って流れる場合、フローフロントが金型キャビティの端部に達する前に内部層が複合ポリマーの流れのフローフロントに到達するならば、それは成形品の内面または外面上に「ファウンテンフロー」で流れることになる。
【0038】
図7Aおよび7Bは、複合流がポイント「A」で最も速くなり、ポイント「C」でより遅くなる、速度勾配を示す。ゼロ速度勾配は流れの速度が最大となるポイントで発生する。ゼロ速度勾配の流線での流れはフローフロントの平均速度より大きいため、ゼロ速度勾配のポイントで射出された内部材料は、たとえ内部材料の射出が内側層と外側層(PETまたはPP)の射出後に始まる場合でも、いくつかの状況下では、フローフロントに「追いつき」かつそれを通り越して、スキン層を突き破る可能性がある。内部コア流の材料は、その内部材料がゼロ速度勾配のフローフロントに到達したとき、ブレイクスルーを起こすことになる。
【0039】
図7Cは、内側および外側流路壁間の環状部の半径の関数としての流速-対-平均流速の比をプロットしたものである。
図7Cは、n=0.8(ここでnは流体の流れの非ニュートンべき乗則モデルのパラメータである)の場合の流体に関する正規化速度プロファイル350および内側と外側の体積分率を示す。複合流(CF)のゼロ勾配340は正規化速度プロファイル350上に記される。円のマークで指定した曲線は、内壁から外壁までの半径と円筒形内壁Tとの間の内側流(IF)をプロットしている。三角のマークが付いた曲線は、円筒形外壁と環状半径との間の外側流(OF)をプロットしている。斜線の領域は、平均速度より大きくかつゼロ速度勾配340からはずれている、内部層の配置のための許容可能な位置を示す。この領域内に配置された内部層材料はこの要素の外側へ折り返すことになる。このグラフから、我々は外側層の流れ分率を0.1〜0.45の範囲にし得ることが見てとれる。内側層の流れ分率は0.9〜0.55とすることができる。内部層の厚さは流動層の厚さの約25%の厚さとすることができ、これは流れ分率0.1〜0.45の約35%である。斜線の領域がゼロ速度勾配340の反対側にある場合は、内側層と外側層の流れ分率が同様の大きさであるが逆転し、内部層が内壁の方へ折り返すことになる。
【0040】
例示的な実施形態は、クロージャと容器フランジとの密着性が、内部層材料、内側層材料および/またはクロージャ材料の互いの密着性によって影響を受ける可能性がある場合、ヒートシール可能な表面から離れて偏っているフォールドオーバーを有する。他の実施形態は、クロージャの密着性が、ヒートシール可能な表面への内部層の接近によって悪影響を受けない場合、ヒートシール可能なゾーンの方へ偏っている内部層をもつことができる。
【0041】
本明細書の教示に基づいて当業者には認識されるように、本開示の上記および他の実施形態に対して多くの変更および修飾が、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の精神から逸脱することなく可能である。したがって、この実施形態の詳細な説明は、限定的な意味とは対照的に、例示的な意味で解釈されるべきである。
(付記1)
多層製品を成形する方法であって、以下の工程:
第1のポリマー材を、結果として得られる多層製品を形成するように構成された金型キャビティ内に射出する工程;
第2のポリマー材を、得られる多層製品の内側および外側層を形成するために、該金型キャビティ内に射出する工程;および
ヒートシール操作の間、得られる多層製品に生じる内部層の完全性を維持するように、得られる多層製品のヒートシール可能なゾーン内に第1のポリマー材を位置づける工程;を含む方法。
(付記2)
第1のポリマー材と第2のポリマー材が異なる材料である、付記1記載の方法。
(付記3)
第1のポリマー材が、得られる多層製品における内部バリア層または内部スカベンジャー層を形成する、付記1記載の方法。
(付記4)
第1および第2のポリマー材の複合流のゼロ速度勾配からオフセットされ、かつ得られる多層製品に生じる外壁面の方へ偏っている流線に沿って、第1のポリマー材を共射出することをさらに含む、付記1記載の方法。
(付記5)
第1および第2のポリマー材の複合流のゼロ速度勾配からオフセットされ、かつ得られる多層製品に生じる内壁面の方へ偏っている流線に沿って、第1のポリマー材を共射出することをさらに含む、付記1記載の方法。
(付記6)
ヒートシール可能なゾーンの表面部に構成要素をヒートシールする工程をさらに含む、付記1記載の方法。
(付記7)
多層製品を成形する方法であって、以下の工程:
第1のポリマー材を、結果として得られる多層製品を形成するように構成された金型キャビティ内に射出する工程;
第2のポリマー材を、得られる多層製品の内側および外側層を形成するために、該金型キャビティ内に射出する工程;および
ヒートシール操作の間、得られる多層製品のヒートシールの完全性を維持するように、得られる多層製品のヒートシール可能なゾーン内に第1のポリマー材を位置づける工程;を含む方法。
(付記8)
第1のポリマー材と第2のポリマー材が異なる材料である、付記7記載の方法。
(付記9)
第1のポリマー材が、得られる多層製品における内部バリア層または内部スカベンジャー層を形成する、付記7記載の方法。
(付記10)
第1および第2のポリマー材の複合流のゼロ速度勾配からオフセットされ、かつ得られる多層製品に生じる外壁面の方へ偏っている流線に沿って、第1のポリマー材を共射出することをさらに含む、付記7記載の方法。
(付記11)
第1および第2のポリマー材の複合流のゼロ速度勾配からオフセットされ、かつ得られる多層製品に生じる内壁面の方へ偏っている流線に沿って、第1のポリマー材を共射出することをさらに含む、付記7記載の方法。
(付記12)
ヒートシール可能なゾーンの表面部に構成要素をヒートシールする工程をさらに含む、付記7記載の方法。
(付記13)
金型キャビティを画定する金型を含む共射出成形装置であって、
得られる多層製品の内部層を形成するために構成された金型キャビティ内に第1のポリマー材を射出し、かつ得られる多層製品の内側および外側層を形成するために該金型キャビティ内に第2のポリマー材を射出するように構成されたノズルアセンブリ;および
ヒートシール可能なゾーンがヒートシール操作中に溶融されるときの、得られる多層製品の欠陥を回避するように、得られる多層製品のヒートシール可能なゾーン内に第1のポリマー材の流れを位置づけるための命令を実行するようにプログラムされたプロセッサ;を含む共射出成形装置。
(付記14)
前記欠陥が、得られる多層製品の層の完全性の破損である、付記13記載の共射出成形装置。
(付記15)
層の完全性の破損がヒートシールされた製品の性能を損なう、付記14記載の共射出成形装置。
(付記16)
前記欠陥が、ヒートシールされた製品のヒートシール部の完全性の破損である、付記13記載の共射出成形装置。
(付記17)
プロセッサが、複合材料の流れのゼロ速度勾配からオフセットされかつ生じる外壁面の方へ偏っている第1のポリマー材の流れを維持するための命令を実行するように、さらにプログラムされている、付記13記載の共射出成形装置。
(付記18)
プロセッサが、第1のポリマー材をヒートシール接触面から離れるように、ヒートシール可能なゾーン内で折り返らせるための命令を実行するように、さらにプログラムされている、付記13記載の共射出成形装置。
(付記19)
多層成形品であって、
内側層;
外側層;および
多層成形品のヒートシールされたゾーン内にバリアまたはスカベンジャーカバーを提供しかつ維持するために、内側層と外側層の間に延在している内部層;
を含む成形品。
(付記20)
内部層が、ヒートシールされたゾーン内のヒートシール接触面から離れるように折り返されている、付記19記載の成形品。
(付記21)
内部層が、ヒートシールされたゾーン内のヒートシール接触面の方へ折り返されている、付記19記載の成形品。
(付記22)
ヒートシール接触面にヒートシールされたカバーをさらに含む、付記20記載の成形品。(付記23)
付記1の方法によって形成された、付記19記載の成形品。
(付記24)
多層製品を成形するためのコンピュータ実行可能命令を保持する非一時的なコンピュータ読取可能媒体であって、
第1のポリマー材を、得られる多層製品を形成するように構成された金型キャビティ内に射出するための命令;
第2のポリマー材を、得られる多層製品の内側および外側層を形成するために、該金型キャビティ内に射出するための命令;および
後続のヒートシール操作中および操作後に、得られる多層製品に生じる内部層の完全性を維持するように、得られる多層製品のヒートシール可能なゾーン内に第1のポリマー材を位置づけるための命令;
を含む媒体。
(付記25)
第1および第2のポリマー材の複合流のゼロ速度勾配からオフセットされ、かつ得られる多層製品に生じる外壁面の方へ偏っている流線に沿って、第1のポリマー材を共射出するための命令をさらに含む、付記24記載の媒体。
(付記26)
第1のポリマー材を、ヒートシール接触面から離れるように、ヒートシール可能なゾーン内で折り返らせるための命令をさらに含む、付記25記載の媒体。