特許第6407943号(P6407943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6407943-モータ駆動装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407943
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20181004BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
   H02M7/48 M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-221432(P2016-221432)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-82515(P2018-82515A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2017年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友和
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−154566(JP,A)
【文献】 特開2015−073376(JP,A)
【文献】 特開2013−243789(JP,A)
【文献】 特開2013−176264(JP,A)
【文献】 特開2015−072878(JP,A)
【文献】 特開2015−141839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M3/00−3/44
H02M7/42−7/98
H02P3/00−4/00
H02P21/00−25/03
H02P25/04
H02P25/08−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、
入力された前記直流電圧をモータ駆動用の多相交流電圧に変換するインバータと、
前記コンバータの出力端子と前記インバータの入力端子とにネジ締めにより固定されたショートバーと、
前記コンバータの前記出力端子間の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記インバータの前記入力端子間の電圧を検出する第2電圧検出部と、
前記第1電圧検出部により検出された電圧と前記第2電圧検出部により検出された電圧との差分が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知部とを備え、
前記所定の閾値が、前記ショートバーの許容熱量に基づいて設定されるモータ駆動装置。
【請求項2】
前記閾値を設定する閾値設定部を備える請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部と、直流電圧をコンデンサにより平滑化してDCリンク電圧を生成するDCリンク部と、DCリンク電圧をモータ駆動用の多相交流電圧に変換するインバータ部と、DCリンク部の端子とインバータ部の端子とを電気的に接続するショートバーと、DCリンク電圧を検出するDCリンク電圧検出部とを備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−154566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のモータ駆動装置では、DCリンク電圧検出部によりショートバーの断線を検出することができるものの、ショートバーの端子へのネジ締め不良や長期振動印加によるネジの緩みなどが発生した状態でモータを駆動すると、端子やショートバーが過度に発熱する虞がある。これを回避するためには、定期的な目視確認やマーキング等のチェックを行ってネジ締め不良の発生を監視しなければならず、煩雑であるという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、定期的なチェックを行うことなく、ショートバーのネジ締め不良を検出して、チェックにかかる作業時間を短縮することができるモータ駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、交流電圧を直流電圧に変換して出力するコンバータと、入力された前記直流電圧をモータ駆動用の多相交流電圧に変換するインバータと、前記コンバータの出力端子と前記インバータの入力端子とにネジ締めにより固定されたショートバーと、前記コンバータの前記出力端子間の電圧を検出する第1電圧検出部と、前記インバータの前記入力端子間の電圧を検出する第2電圧検出部と、前記第1電圧検出部により検出された電圧と前記第2電圧検出部により検出された電圧との差分が所定の閾値を超えた場合にその旨を報知する報知部とを備え、前記所定の閾値が、前記ショートバーの許容熱量に基づいて設定されるモータ駆動装置を提供する。
【0007】
本態様によれば、電源から供給された交流電圧がコンバータにより直流電圧に変換された後、ショートバーを介してインバータに入力され、インバータによりモータ駆動用の多相交流電圧に変換されてモータに供給されることによりモータが駆動される。この場合において、コンバータの出力端子とインバータの入力端子とにネジ締めにより固定されたショートバーにネジ締め不良が発生した場合には、ネジ締め不良部分における接触抵抗によって電圧降下が発生し、第1電圧検出部により検出された電圧と第2電圧検出部により検出された電圧との差分が所定の閾値を超えるようになる。
【0008】
電圧の差分が閾値を超えた場合には、報知部によってその旨が報知されるので、作業者は、全てのネジのネジ締め状態を定期的に目視で確認しなくても、報知部による報知によってネジ締め不良を簡易かつ確実に確認することができる。すなわち、全てのショートバーを締結している全てのネジについて定期的なチェックを行うことなく、チェックに係る作業時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
上記態様においては、前記閾値を設定する閾値設定部を備えていてもよい。
このようにすることで、ショートバーの許容電流や許容熱量に応じて適正な閾値を設定することができ、過度の発熱を発生させることなく、あるいは、過度のネジ締め不良の報知が行われないように、ネジ締め不良を報知することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、定期的なチェックを行うことなく、ショートバーのネジ締め不良を検出して、ネジ締め不良のチェックにかかる作業時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置を示す斜視図である。
図2図1のモータ駆動装置の内部構造を示すブロック図である。
図3図2のモータ駆動装置の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置1について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るモータ駆動装置1は、図1に示されるように、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ部(コンバータ)2と、直流電圧をモータ駆動用の多相交流電圧に変換するインバータ部(インバータ)3と、コンバータ部2の出力端子4とインバータ部3の入力端子5とにネジ止めされ、両端子4,5間を電気的に接続するショートバー6とを備えている。図中、符号8はネジである。
【0013】
コンバータ部2には、変換された直流電圧をコンデンサ(図示略)により平滑化してDCリンク電圧を生成するDCリンク部(図示略)が設けられ、出力端子4にはDCリンク電圧が出力されるようになっている。
【0014】
また、本実施形態に係るモータ駆動装置1は、図2に示されるように、コンバータ部2の出力端子4間の電圧を検出する第1電圧検出部(電圧検出部)9と、インバータ部3の入力端子5間の電圧を検出する第2電圧検出部(電圧検出部)10と、インバータ部3内に設けられ第1電圧検出部9により検出された電圧と第2電圧検出部10により検出された電圧との差分が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部11と、該判定部11による判定の結果、差分が閾値を超えると判定された場合にその旨を報知する報知部12とを備えている。図中、符号13は順変換器、符号14は逆変換器である。
【0015】
インバータ部3内の判定部11には、閾値設定部15が接続されており、ショートバー6の形態に合わせて適切な閾値を操作者が設定することができるようになっている。
報知部12は、例えば、モニタ、ブザー、表示灯等により構成され、電圧の差分が閾値を超えたことを、音声、光、文字あるいは画像表示等によって外部に知らせることができるようになっている。
【0016】
このように構成された本実施形態に係るモータ駆動装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るモータ駆動装置1によりモータ16を駆動するには、交流電源7にコンバータ部2の入力端子17を接続し、モータ16にインバータ部3の出力端子18を接続する。
【0017】
コンバータ部2により、交流電源7の交流電圧が直流電圧に変換されるとともに、コンバータ部2内に備えられたDCリンク部によって変換後の直流電圧が平滑化されDCリンク電圧が出力端子4間に出力される。DCリンク電圧はショートバー6によってインバータ部3の入力端子5間に供給され、インバータ部3によってモータ駆動用の多相交流電圧に変換され、モータ16に出力される。これにより、モータ16が回転駆動される。
【0018】
この場合において、ショートバー6をコンバータ部2の出力端子4およびインバータ部3の入力端子5に接続しているネジ8にネジ締め不良が発生していない場合には、第1電圧検出部9により検出された電圧と、第2電圧検出部10により検出された電圧とが等しく、電圧の差分が閾値以下に維持されるため、報知部12による報知は行われない。
【0019】
逆に、ショートバー6をコンバータ部2の出力端子4およびインバータ部3の入力端子5に接続しているネジ8にネジ締め不良が発生している場合には、ネジ締め不良部分における接触抵抗が増加して、電圧降下が発生するため、第1電圧検出部9により検出された電圧と、第2電圧検出部10により検出された電圧とが相違して、電圧の差分が閾値を超える場合がある。したがって、この場合には報知部12による報知が行われる。
【0020】
すなわち、本実施形態に係るモータ駆動装置1によれば、ショートバー6のネジ8の締結状態をマーキング等によって定期的に監視する必要がなく、報知部12による報知によって容易に確認することができる。その結果、ネジ締め不良の監視にかかる作業時間を大幅に短縮することができるという利点がある。
【0021】
一例として、コンバータ部2に実効値200Vの3相電圧を入力し、ショートバー6を流れる電流が10Aのモータ駆動装置1において、ショートバー6のネジ締め不良によって出力端子4とショートバー6との間に1Ωの接触抵抗が生じた場合について説明する。
ネジ締め不良がなければ、コンバータ部2の出力端子4間電圧とインバータ部3の入力端子5間電圧とはほぼ283Vdc(200V×√2)となる。
【0022】
これに対して、インバータ部3のネジ8にネジ締め不良が発生すると、インバータ部3の入力端子5とショートバー6との間で10Vdc(10A×1Ω)の電圧降下が生ずるので、インバータ部3の入力端子5間電圧は273Vdcとなる。コンバータ部2の出力端子4間電圧とインバータ部3の入力端子5間電圧との差が10Vdcとなるので、閾値を10V以下に設定しておくことにより、ネジ締め不良を検出して報知することができる。
【0023】
この場合において、閾値はショートバー6の許容熱量とショートバー6を流れる電流(例えば、モータ16を駆動可能な電流)とから求めることができる。
例えば、上記例においては、ショートバー6を流れる電流が10A、接触抵抗が1Ωなので、接触抵抗部分に発生する熱量は100W(10A×10A×1Ω)となる。
【0024】
ショートバー6の横断面積が大きくて許容熱量が大きい場合には、発熱量が100Wでも問題とはならず、閾値として、10Vを超える値(例えば15Vあるいは20V)に設定することができる。ネジ締め不良の検出のための閾値を15Vに設定した場合には、ネジ8の緩みが進行してショートバー6のネジ8の接触抵抗が1.5Ωになったときに、ネジ締め不良が検出され、この場合の接触抵抗部分で発生する熱量は150W(10A×10A×1.5Ω)になる。
【0025】
一方、ショートバー6の横断面積が小さくて許容熱量が小さい場合には、発熱量が100Wでも問題となる場合があるので、閾値として10V未満(例えば、5Vあるいは8V)にしてネジ締め不良を検出することができる。閾値を5Vとした場合には、ネジ締め不良を検出した場合の接触抵抗部分で発生する熱量は50Wとなる。
【0026】
なお、本実施形態においては、インバータ部3に判定部11、閾値設定部15および報知部12を設けたが、これに代えて、図3に示されるように、コンバータ部2に設けることにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 モータ駆動装置
2 コンバータ部(コンバータ)
3 インバータ部(インバータ)
4 出力端子
5 入力端子
6 ショートバー
9 第1電圧検出部
10 第2電圧検出部
15 閾値設定部
図1
図2
図3