(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407947
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】数値制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4067 20060101AFI20181004BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20181004BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
G05B19/4067
G05B19/4155 U
B23Q15/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-244745(P2016-244745)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-97814(P2018-97814A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年1月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野 巌
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−99824(JP,A)
【文献】
実開昭61−185105(JP,U)
【文献】
特許第3810662(JP,B2)
【文献】
特開2006−172277(JP,A)
【文献】
特開平2−259911(JP,A)
【文献】
特開2000−343478(JP,A)
【文献】
特開平7−299777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B23Q 15/00 − 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに基づいて工具をワークに対して相対的に移動させることによって加工する工作機械を制御する数値制御装置において、
前記加工プログラムを解析して移動指令データを生成するプログラム解析部と、
加工中の異常を検知する異常検知部と、
該異常検知部により異常が検知されたときに、前記工具を前記ワークから退避させるリトラクト動作の動作指令を供給するリトラクト制御部と、
該リトラクト制御部から供給される動作指令に基づく前記工具の移動量を積算する移動量積算部とを備え、
前記プログラム解析部は、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した時点で前記移動量積算部により積算された前記リトラクト動作による前記工具の移動量を前記加工プログラム上の工具の座標値に加算して該座標値を更新した後に、前記工具または前記ワークを所定の位置まで移動させる工具退避プログラムを実行する数値制御装置。
【請求項2】
加工プログラムに基づいて工具をワークに対して相対的に移動させることによって加工する工作機械を制御する数値制御装置において、
前記加工プログラムを解析して移動指令データを生成するプログラム解析部と、
加工中の異常を検知する異常検知部と、
該異常検知部により異常が検知されたときに、前記工具を前記ワークから退避させるリトラクト動作の動作指令を供給するリトラクト制御部と、
前記プログラム解析部のプログラム座標と前記リトラクト制御部から供給される移動量の積算値とを加算した総移動座標を逐次算出する総移動座標算出部とを備え、
前記プログラム解析部は、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した時点で前記加工プログラム上の座標値を前記総移動座標算出部により算出された総移動座標に更新した後に、前記工具または前記ワークを所定の位置まで移動させる工具退避プログラムを実行する数値制御装置。
【請求項3】
前記プログラム解析部が、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した後に、前記工具を回転させる主軸の回転を減速し、前記主軸の回生エネルギを回収する請求項1または請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記工具が、周期動作を繰り返し実行し、
前記リトラクト制御部が、前記周期動作の最後まで前記リトラクトの前記動作指令を供給する請求項1から請求項3のいずれかに記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、停電や電源の異常による電圧の低下が発生した場合に、加工軌跡プロファイルデータに工具退避計算式に基づくデータを加算し、制御動作が不可となるまでの時間内で、工具による加工を継続しながら工具をワークから退避させた後に工作機械を停止させる加工制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3810662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された加工制御装置では、工具をワークから離れる位置まで退避させるリトラクト動作を行った後に加工動作停止としているが、工作機械の各モータの励磁が切れるときの予期せぬ工具の動作によってワークや工具が損傷することを防止するためや、リトラクト動作後に運転再開し易い位置までさらに工具またはワークを移動させておくために、リトラクト動作が完了した後に工具退避プログラムの実行が必要な場合がある。
【0005】
しかしながら、上述したようにリトラクト動作に使用される工具退避計算式に基づくデータは、加工用プログラムとは無関係に生成されるので、リトラクト動作終了後には加工用プログラム上で把握されている位置とは異なる位置に各モータが移動してしまっている。このため、工具退避プログラムを実行するには、リセットにより各モータの現在位置を加工制御装置に再認識させて、工具退避プログラムを選択してサイクルスタートをかける必要がある。
【0006】
このため、リセット動作、プログラム選択動作およびサイクルスタートのそれぞれの操作に時間がかかり、リトラクト動作が終了してから工具退避プログラムを開始するまでに数秒の時間がかかることがある。特に、停電時に工具退避プログラムを実行する場合には、大容量のコンデンサモジュールのような無停電電源装置が必要となり、更に大型の機械や軸数が多い機械はコストが高く付くという不都合がある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、異常検知により加工を停止する場合に、リトラクト動作および工具退避プログラムの実行を短時間に行うことができる数値制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の一態様は、加工プログラムに基づいて工具をワークに対して相対的に移動させることによって加工する工作機械を制御する数値制御装置において、前記加工プログラムを解析して移動指令データを生成するプログラム解析部と、加工中の異常を検知する異常検知部と、該異常検知部により異常が検知されたときに、前記工具を前記ワークから退避させるリトラクト動作の動作指令を供給するリトラクト制御部と、該リトラクト制御部から供給される動作指令に基づく前記工具の移動量を積算する移動量積算部とを備え、前記プログラム解析部は、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した時点で前記移動量積算部により積算された前記リトラクト動作による前記工具の移動量を前記加工プログラム上の工具の座標値に加算して該座標値を更新した後に、前記工具または前記ワークを所定の位置まで移動させる工具退避プログラムを実行する数値制御装置を提供する。
【0009】
本態様によれば、プログラム解析部が解析した加工プログラムに基づいて生成した移動指令データにより、工具がワークに対して相対的に移動し、ワークに対する所定の加工が施される。工具によるワークの加工中に停電等の異常が発生した場合には、異常検知部によって異常が検知され、リトラクト制御部によりリトラクト動作の動作指令が供給される。
【0010】
リトラクト動作中においても、プログラム解析部が生成した移動指令データによるワークの加工は継続されるので、リトラクト動作の動作指令はプログラム解析部が生成した移動指令データに重畳する。これにより、工具がワークの加工を継続しながらワークから退避させられ、工具が急激に停止したり、急激に方向を変えたりすることによるワークや工具の損傷を防止することができる。
【0011】
この場合において、リトラクト動作中に、移動量積算部により、リトラクト制御部から供給される動作指令に基づく工具の移動量が積算され、リトラクト動作終了時に、プログラム解析部によって、積算された移動量が加工プログラム上の工具の座標値に加算されて座標値が更新される。これにより、加工プログラム上の工具の座標値が、現実の工具の座標値に一致させられる。
【0012】
そして、その後に、工具退避プログラムを実行することにより、工具またはワークを所定の位置まで退避させることができる。すなわち、リトラクト動作終了時に加工プログラム上の工具の座標値を更新することにより、加工プログラム上で把握されている位置に工具の現在位置を一致させることができ、自動運転休止状態、リセット、工具退避プログラムの選択およびサイクルスタート等の手続を踏むことなく、即時に工具退避プログラムを実行できる。これにより、異常検知により加工を停止する場合に、リトラクト動作および工具退避プログラムの実行を短時間に行うことができ、大容量のコンデンサモジュールのような無停電電源装置のコストを削減することができる。
【0013】
また、本発明の他の態様は、加工プログラムに基づいて工具をワークに対して相対的に移動させることによって加工する工作機械を制御する数値制御装置において、前記加工プログラムを解析して移動指令データを生成するプログラム解析部と、加工中の異常を検知する異常検知部と、該異常検知部により異常が検知されたときに、前記工具を前記ワークから退避させるリトラクト動作の動作指令を供給するリトラクト制御部と、前記プログラム解析部のプログラム座標と前記リトラクト制御部から供給される移動量の積算値とを加算した総移動座標を逐次算出する総移動座標算出部とを備え、前記プログラム解析部は、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した時点で前記加工プログラム上の座標値を前記総移動座標算出部により算出された総移動座標に更新した後に、前記工具または前記ワークを所定の位置まで移動させる工具退避プログラムを実行する数値制御装置である。
【0014】
本態様によれば、リトラクト動作中に、総移動座標算出部により、リトラクト制御部から供給される動作指令に基づく工具の移動量の積算値とプログラム解析部のプログラム座標値とを加算した総移動座標が逐次算出される。したがって、リトラクト動作終了時に、プログラム解析部によって、算出された総移動座標が加工プログラム上の工具の座標値に設定されることにより、加工プログラム上の工具の座標値が、現実の工具の座標値に一致させられる。
【0015】
そして、その後に、工具退避プログラムを実行することにより、工具またはワークを所定の位置まで退避させることができる。すなわち、リトラクト動作終了時に加工プログラム上の工具の座標値を更新することにより、加工プログラム上で把握されている位置に工具の現在位置を一致させることができ、自動運転休止状態、リセット、工具退避プログラムの選択およびサイクルスタート等の手続を踏むことなく、即時に工具退避プログラムを実行できる。これにより、異常検知により加工を停止する場合に、リトラクト動作および工具退避プログラムの実行を短時間に行うことができ、大容量のコンデンサモジュールのような無停電電源装置のコストを削減することができる。
【0016】
上記態様においては、前記プログラム解析部が、前記リトラクト制御部による前記リトラクト動作が終了した後に、前記工具を回転させる主軸の回転を減速し、前記主軸の回生エネルギを回収してもよい。
このようにすることで、前記主軸の回転の減速により発生する回生エネルギを回収して使用することができ、停電による停止の場合の電力を補って、工具退避プログラムをより確実に実行することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異常検知により加工を停止する場合に、リトラクト動作および工具退避プログラムの実行を短時間に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る数値制御装置のブロック図である。
【
図2】
図1の数値制御装置の周期動作の繰り返し実行中のリトラクト動作における(a)加工する場合(b)加工を停止する場合を説明する図である。
【
図3】
図1の数値制御装置における異常発生時の制御を説明するフローチャートである。
【
図4】
図1の数値制御装置のリトラクト動作の有無を説明する模式図である。
【
図5】
図1の数値制御装置のリトラクト動作の有無による工具の機械座標上の位置を説明する図である。
【
図6】
図1の数値制御装置の変形例を示すブロック図である。
【
図7】
図6の数値制御装置のリトラクト動作の有無による工具の機械座標上の位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る数値制御装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る数値制御装置1は、
図1に示されるように、プログラム解析部10、異常検知部11、リトラクト制御部12、移動量積算部13、補間部14、補間後加減速部15、およびサーボモータ制御部16を備えている。
【0020】
プログラム解析部10は、図示しないメモリ等に記憶されている、または図示しないMDI/表示手段等から入力された加工プログラム20を解析し、加工プログラム20に設定されたプログラム座標(プログラム上の座標)における機械の各駆動軸に対する移動指令データを生成するようになっている。
補間部14は、プログラム解析部10が出力した移動指令データに基づいて指令経路上の点を補間周期で補間計算したデータを生成するようになっている。
【0021】
補間後加減速部15は、補間部14が出力した補間データに基づいて加減速処理を行い補間周期毎の各駆動軸の速度を算出し、結果データをサーボモータ制御部16へ出力するようになっている。
サーボモータ制御部16は、補間後加減速部15の出力に基づいてサーボモータ17等の工作機械の各駆動部を制御するようになっている。
【0022】
異常検知部11は、例えば、電源からの電圧を監視し、停電等の電圧低下が発生した時点を検知してリトラクト制御部12に出力するようになっている。
【0023】
リトラクト制御部12は、予めパラメータ等で定められたリトラクト量や速度に従ってワークから工具が退避するための動作指令を生成するようになっている。生成された移動指令は、プログラム解析部10から出力される移動指令データに重畳されるようになっている。
【0024】
また、リトラクト制御部12は、例えば、異常検知部11からの検知信号が到来すると予めパラメータに定められたリトラクト量分だけ動作指令を出力する場合や、周期動作を繰り返し実行して加工するときに一回の周期動作の最後を加工するまでリトラクトの動作指令を出力する場合がある。
移動量積算部13は、リトラクト制御部12から供給されるリトラクト動作の動作指令に基づく工具の移動量を積算するようになっている。
【0025】
図2(a)および
図2(b)は、周期動作を繰り返し実行して加工するときのリトラクト動作の説明図である。
図中のカム(ワーク)21は、回転軸で回転するようになっている。また、図中の砥石(工具)22は、直線軸で前後し、回転軸と直線軸とが同期して動作する一周期の動作を繰り返し実行することによってカム21を加工する場合において、
図2(a)の位置で加工停止すると、回転軸が惰性で回りカム21と砥石22とが衝突するようになっている。そのため、
図2(b)に示されるように、カム21と砥石22が最も離れた位置で加工停止する必要がある。
【0026】
周期動作を繰り返し実行して加工しているときにリトラクト動作を行った場合、異常検知の時点が不定で、リトラクト動作を終了するのは一回の周期動作の最後であるため、リトラクト動作の移動量は不定である。そこで、移動量積算部13が、リトラクト制御部12から出力されたリトラクト動作による移動量をリトラクト動作が終了するまで積算し、リトラクト動作が終了した時点で、積算された移動量をプログラム解析部10に出力するようになっている。
【0027】
プログラム解析部10は、移動量積算部13から入力されてきたリトラクト動作の積算された移動量と、加工プログラム20上で認識されているプログラム座標値とを加算して、新たなプログラム座標値として更新するようになっている。そして、プログラム解析部10は、プログラム座標値が更新された後に、工具退避プログラムを実行するようになっている。
工具退避プログラムは、運転再開し易い位置までさらにワークまたは工具を移動させておくためのプログラムである。
【0028】
このように構成された本実施形態に係る数値制御装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る数値制御装置1によれば、プログラム解析部10が加工プログラム20に基づいて生成した移動指令データにより、工具がワークに対して相対的に移動し、ワークに対して所定の加工が施される。
【0029】
加工中に停電等の異常が発生した場合には、
図3に示されるように、異常検知部11によって異常が検知され(ステップS1)、異常検知信号がリトラクト制御部12に送られて、リトラクト動作が開始させられる(ステップS2)。ステップS2において、リトラクト動作の動作指令の積算値は0に初期化される。
リトラクト制御部12は、異常検知信号が入力された時点で、予めパラメータ等で定められたリトラクト量や速度に従ってワークから工具が退避するための動作指令を生成する。
【0030】
リトラクト動作中においても、プログラム解析部10によるワークの加工のための動作指令の供給は継続されるので、リトラクト制御部12から出力されたリトラクト動作の動作指令はワークを加工するための動作指令に重畳して出力される。これにより、
図4に示されるように、工具5がワークWの加工を継続しながらワークWから退避させられ、工具5が急激に停止したり、急激に方向を変えたりすることによるワークWや工具5の損傷を防止することができる。
【0031】
この場合には、
図4に示されるように、リトラクト動作の有無による工具5の位置を比較すると、リトラクト動作が行われた場合には、リトラクト動作が行われない場合と比較して、例えば、工具5がワークWから離れる方向に移動させられている点が相違している。
しかしながら、工具5は、プログラム解析部10によってプログラムに従って移動させられるとともにリトラクト制御部12によってワークWから離れる方向に移動させられているので、プログラム解析部10においては、プログラム上、リトラクト動作がない場合と同じプログラム座標上の位置に配置されていると認識されている。
【0032】
そこで、本実施形態においては、リトラクト動作の開始と同時に、リトラクト制御部12から出力される動作指令を移動量積算部13において積算して(ステップS3)、記憶する(ステップS4)。ステップS3およびステップS4の処理をリトラクト動作が終了するまで繰り返し(ステップS5)、移動量積算部13により算出され記憶されている工具5の移動量をリトラクト動作の終了時点で読み出してプログラム解析部10に入力する(ステップS6)。
【0033】
これにより、プログラム解析部10が、自ら認識しているプログラム座標値に記憶されていた移動量を加算して、プログラム座標値を更新することにより(ステップS7)、プログラム座標上の各モータの位置と現実の各モータの位置、すなわち、プログラム座標上の工具の位置と現実の工具5の位置とを一致させることができる。
【0034】
すなわち、
図5に示されるように、加工プログラム上では、プログラム座標において、工具5を(x0,y0,z0)から(x1,y1,z1)に移動していると認識している場合において、リトラクト動作が加算されることで(x2,y2,z2)に移動していたときには、移動量積算部13によって移動量(x2−x1,y2−y1,z2−z1)が算出される。算出された移動量(x2−x1,y2−y1,z2−z1)をプログラム解析部10に入力して、プログラム解析部10がプログラム座標において認識している現在位置(x1,y1,z1)に加算して現在位置を(x2,y2,z2)に更新することができる。
【0035】
このようにすることで、プログラム解析部10において認識されているプログラム座標上の各モータの位置と現実の各モータの位置とが一致しているので、プログラム解析部10は、自動運転休止状態、リセット、工具退避プログラムの選択およびサイクルスタートのような手順を踏むことなく、迅速に工具退避プログラムを実行して、工具5を所定の位置まで移動させることができる(ステップS9)。
【0036】
その結果、自動運転休止状態、リセット、工具退避プログラムの選択およびサイクルスタートのような各手順に要する時間を省くことができ、迅速に工具5をワークWからより確実に退避させることができる。異常発生検知から工具5を十分に退避させるまでに要する時間を大幅に短縮することができるという利点がある。
また、リトラクト動作が終了した後には、プログラム解析部10が主軸を減速停止することが好ましい(ステップS8)。これにより、主軸の減速による回生エネルギを回収して使用することができ、停電による停止の場合の電力を補って、工具退避プログラムをより確実に実行することができるという利点がある。
【0037】
また、本実施形態においては、リトラクト動作中に工具5の移動量を積算する移動量積算部13を設け、リトラクト動作終了時に、移動量積算部13から出力される移動量をプログラム解析部10内に記憶されているプログラム座標値に加算することでプログラム座標値を更新することとした。これに代えて、
図6に示されるように、移動量積算部13を設けず、プログラム解析部10のプログラム座標値とリトラクト制御部12から出力される動作量の積算値とを加算して総移動座標を算出する総移動座標算出部18を備え、リトラクト動作終了時に、プログラム解析部10内に記憶されているプログラム座標値を総移動座標算出部18により算出された総移動座標に更新することにしてもよい。
【0038】
すなわち、
図7に示されるように、加工プログラム上では、プログラム座標において、工具5を(x0,y0,z0)から(x1,y1,z1)に移動していると認識している場合において、リトラクト動作が(Δx,Δy,Δz)だけ工具5を移動させた場合に、総移動座標算出部18は、常に、(x1+Δx,y1+Δy,z1+Δz)を算出している。したがって、リトラクト動作が終了した時点で総移動座標算出部18により出力される総移動座標は、(x1+Δx,y1+Δy,z1+Δz)であり、上の例において、(Δx,Δy,Δz)=(x2−x1,y2−y1,z2−z1)であるとすると、プログラム座標を総移動座標そのものに置き換えることにより、プログラム座標上の現在位置を(x2,y2,z2)に更新することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 数値制御装置
5 工具
10 プログラム解析部
11 異常検知部
12 リトラクト制御部
13 移動量積算部
14 補間部
15 補間後加減速部
16 サーボモータ制御部
18 総移動座標算出部
20 加工プログラム
21 カム(ワーク)
22 砥石(工具)
W ワーク