(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用するとき、用語
「a」、「an」、及び「the」は互換可能に使用され、1又はそれよりも多くを意味する。
「及び/又は」は、記載される事例の一方又は両方が起こりうることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0009】
本明細書においてはまた、端点による範囲の記載には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等が含まれる)。
【0010】
本明細書においてはまた、「少なくとも1」の記載には、1以上のすべての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)。
【0011】
都市用水供給は、精製又は処理を行って、人間が飲用とするのに安全と見なされる水を生産している。物理的処理(例えば濾過、蒸留)、生物学的処理(例えば緩速濾過)、及び化学的処理(例えば塩素化)のすべてが、特定の基準を満たした水を供給するために使用され得る。クロラミンは現在、遊離塩素による塩素化に代わる二次的な消毒剤として、都市用水配水システムにおいて、低濃度で一般的に使用されている。しかしながら、クロラミンにより処理された水の味とにおいに関する懸念に伴い、クロラミン除去能を有する濾水器の需要が増大した。
【0012】
水流からクロラミンを除去するには、触媒活性を有する多量の活性炭粒子が使用されてきた。例えば、米国特許第5,338,458号(Carrubbaら)は、ガス又は液体媒体と、触媒活性な炭素質チャーとを接触させることにより、その媒体からクロラミンを除去する、改良されたプロセスを開示している。米国特許第6,699,393号(Bakerら)は、触媒活性な炭素質チャーに対比して改良された、窒素含有分子の存在下で熱分解された活性炭に流動体が接触した場合の、流動体からのクロラミン除去を記載している。国際特許公開第2011/125504号(Hitomiら)は、酸素1.40〜4.30質量%、窒素0.90〜2.30質量%、硫黄0.05〜1.20質量%、及び水素0.40〜0.65質量%を含有する触媒活性の高い活性炭を開示しており、これはクロラミンを効果的に分解するとされる。Hitomiらは、これらの元素の量が多すぎると、活性炭の触媒活性が低下すると開示している。
【0013】
出願者らは最近、現在入手可能な濾過媒体よりも安価で、かつ/又はより効率的にクロラミンを除去する炭素系濾過媒体を見出した。更に、この濾過媒体は、濾床との接触時間が短く、高スループット用途で効果的に使用することができる。
【0014】
この炭素系濾過媒体は現在、クロラミンの除去に加えて、水流中の他の汚染物質(例えば有機化合物)を除去するよう調整することができ、単一の濾過媒体で、複数の種類の不純物(この場合はクロラミンと有機化合物)の除去を可能にすることが、見出されている。
【0015】
有機化合物、具体的には揮発性有機分子と不揮発性有機分子の両方が、飲料水供給中に見出される汚染物質であり、これらは望ましくは除去される。飲料水供給中に見出される一般的な有機物としては、トリハロメタンなどの消毒副生成物、農薬、除草剤、医薬化合物、及びガソリン構成成分(例えばベンゼン、MTBEなど)が挙げられる。これらの有機汚染物質は、クロラミンと共に飲料水中に存在し得る。典型的に、これらの有機汚染物質の存在量は微量である(例えば数ppb〜数百ppb、場合によっては、例えば医薬化合物などの場合はppt(1兆分の1)レベル)。
【0016】
よって、クロラミンと有機化合物の両方を除去できる媒体に対する要求が存在する。本開示の目的は、そのような媒体を提供することであり、好ましくは、クロラミンと有機化合物の両方を除去するための、高処理容量を有する媒体を提供することである。
【0017】
本開示において、硫黄及び炭素基材を含む反応性化合物が接触させられ、熱処理に曝されて、本開示の濾過媒体を形成する。
【0018】
反応性化合物
本開示の濾過媒体を調製するのに使用される反応性化合物は、硫黄を含む。実施形態において、この反応性化合物は硫黄含有の反応性化合物、又は硫黄及び窒素含有の反応性化合物である。本明細書で使用されるとき、硫黄含有反応性化合物とは、硫黄を含有する任意の反応性物質を指し、これは単体硫黄を含み得る。一実施形態において、追加化合物を加えることができ、例えば窒素含有反応性化合物又は酸素を加えることができる。一実施形態において、この反応性化合物は金属塩であり得る。別の実施形態において、この反応性化合物は金属塩を含まない。
【0019】
一実施形態において、この反応性化合物は、800、600、500、400、又は更には200g/モル以下の分子量を有する。一実施形態において、この反応性化合物は、少なくとも32、50、又は更には100g/モルの分子量を有する。この化合物の分子量は、使用される炭素基材の性質に対して適切である必要がある。
【0020】
硫黄含有反応性化合物
国際特許出願第US2012/052502号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、単体硫黄、SO
2、SOCl
2、SO
2Cl
2、CS
2、COS、H
2S、及びエチレンスルフィド、及びエポキシドの硫黄類似体などの硫黄含有化合物の使用を開示しており、これらは炭素基材と共に熱処理される。
【0021】
国際特許出願第US2012/070300号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、金属硫化物の使用を開示しており、これは炭素基材と共に熱処理される。金属硫化物は、硫黄と化学的に結合した金属を含み、更に酸素又は炭素など他の元素を任意追加的に含み得る。金属硫化物の金属は、元素周期表の3〜12列及び4〜6行に配置される化学元素を指し、またランタニドとして知られる元素57〜71も指す。金属硫化物の代表的な金属には、銅、鉄、マンガン、銀、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タングステン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
代表的な金属硫化物には、硫化銅、硫化鉄、硫化マンガン、硫化ジルコニウム、硫化亜鉛、硫化ニオブ、硫化モリブデン及び硫化タングステン、並びにこれらの金属の酸硫化物、例えばモリブデン酸硫化物が挙げられる。
【0023】
国際特許出願第US2012/069414号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、硫黄含有アニオンを含む金属塩(金属塩又は金属錯体を含む)の使用を開示している。硫黄含有アニオンは、硫酸塩、スルファミン酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び/又はチオ硫酸イオンから選択されるアニオンを含み得る。金属塩の金属部分としては、任意の金属が含まれ得るが、飲料水中での存在が許容される金属が好ましい。典型的な金属として、銅、鉄、銀、及びマンガンが挙げられる。代表的な金属塩としては、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸クロム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
一実施形態において、この硫黄含有反応性化合物は、チオ金属酸塩又はオキシチオ金属酸塩であり、ここにおいてチオ金属酸塩には、MS
4−2、MO
2S
22−、及びMOS
32−の塩のうち少なくとも1つが含まれ、式中、金属Mはモリブデン又はタングステンである。代表的な塩には、(NH
4)
2MS
4、(NH
4)
2MO
2S
2、及び(NH
4)
2MOS
3が挙げられ、式中MはMo又はWであり、これらは水溶性である。
【0025】
硫黄及び窒素含有反応性化合物
米国特許仮出願第61/699324号(2012年9月11日出願)(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、硫黄及び窒素含有塩の使用を開示している。一実施形態において、反応性化合物は、式[C]
+yx[A]
−xyで表わされる塩であり、式中、[C]はカチオン、[A]はアニオン、x及びyは独立に、少なくとも1である。これらの塩は、少なくとも1つの硫黄原子と、少なくとも1つの窒素原子を含む。
【0026】
一実施形態において、カチオン[C]は窒素含有塩基の共益酸であり、少なくとも1つの窒素原子を含む。代表的なカチオンには、アンモニウム、及びそのアルキル化又はアリール化誘導体(例えば(NH
4)
+、(NH
3CH
3)
+など)、グアニジニウム、イミダゾリウム、モルホリニウム、アニリウム、チオモルホリニウム、ピリジニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態において、カチオン[C]は少なくとも1つの硫黄原子を含む。代表的なカチオンには、トリメチルスルホニウム、トリメチルスルホキソニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。更に別の実施形態において、カチオン[C]は、少なくとも1つの硫黄原子と少なくとも1つの窒素原子とを含む。代表的なカチオンには、フェノチアジニウム(phenothazinium)が挙げられる。
【0027】
一実施形態において、アニオン[A]は、少なくとも1つの硫黄原子を含む。代表的なアニオンには、硫酸イオン、重硫酸イオン、亜硫酸イオン、重硫酸イオン、多硫化イオン、スルファミン酸イオン、ポリチオン酸イオン[すなわちS
n(SO
3)
22−]、及びこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態において、アニオン[A]は少なくとも1つの窒素原子を含む。代表的なアニオンには、シアン酸イオン、グアニジン、イミダゾール、ピリジン、トリアゾール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。更に別の実施形態において、アニオン[A]は、少なくとも1つの硫黄原子と少なくとも1つの窒素原子とを含む。代表的なアニオンには、チオ硫酸イオン、チオシアン酸イオン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
一実施形態において、塩[C]
+yx[A]
−xyは、金属含有塩であってよく、例えばチオシアン酸カリウム又はチオシアン酸ナトリウムであり得る。
【0029】
別の実施形態において、硫黄及び窒素の両方を含有する反応性化合物は、塩ではない。代表的な反応性化合物には、チオモルホリン、フェノチアジン、2−メルカプトピリジン、チオ尿素、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
追加化合物
炭素基材と共に熱処理に使用される硫黄含有反応性化合物、並びに/又は硫黄及び窒素含有反応性化合物に加えて、更に、例えば窒素含有反応性化合物及び/又は酸素含有反応性化合物などの追加化合物を使用して、本開示の媒体を達成することもできる。
【0031】
国際特許出願第US2012/069414号(参照により全体が本明細書に組み込まれる)は、金属を反応生成物に導入するための、窒素含有オキシアニオンを含む金属塩(金属塩又は金属錯体を含む)の使用を開示している。飲料水中での存在が許容される金属が好ましい。
【0032】
一実施形態において、硫黄含有反応性化合物、並びに/又は硫黄及び窒素含有反応性化合物に加えて、酸素もまた、含めることができる。
【0033】
一実施形態において、酸素は、この硫黄含有反応性化合物、並びに/又は硫黄及び窒素含有反応性化合物の一部であり得る。
【0034】
一実施形態において、炭素基材の表面は、酸素を含む。そのままの状態の炭素基材は、表面の炭素原子に付着した、化学的に有意な量の酸素を含み得る。例えば、X線光電子分光(XPS)分析によれば、Mead Westvaco Corp(Richmond,VA)から商標名「RGC」として入手可能な粒状活性炭は、約2.9原子パーセントの酸素を含有する。この酸素量は本開示にとっては十分な量であり得るが、より多くの量の表面酸素が望ましい場合には、追加の酸素をこの炭素基材に組み込むことができる。
【0035】
一実施形態において、酸素は、硫黄含有反応性化合物及び/又は窒素含有反応性化合物に曝される前に炭素基材に追加され得る。例えば、炭素基材は空気中で加熱することもでき、又は硝酸水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、オゾン水溶液、過酸化水素水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液、フェントン試薬、若しくはその他の公知の酸化剤で処理することもできる。
【0036】
別の実施形態において、追加の酸素は、空気又は水の存在下で、炭素基材と硫黄含有反応性化合物、並びに/又は硫黄及び窒素含有反応性化合物との間の熱処理を行うことで、本開示の媒体に組み込むことができる。炭素の燃焼を防ぐために、使用される空気の量は制限されなければならない。追加の酸素はまた、水又は蒸気を加えることで供給されてもよく、この水又は蒸気は、加熱反応中に加えることもでき、又は炭素基材の表面に存在していてもよい(例えば、水を化学吸着する高表面積の炭素質材料、特に親水性の酸化炭の場合)。酸素は、加熱反応中に、二原子酸素、二酸化硫黄、二酸化炭素、又はこれらの組み合わせの形態で追加されてもよい。
【0037】
炭素基材と硫黄含有反応性化合物、並びに/又は硫黄及び窒素含有反応性化合物との加熱中に酸素源を追加することに加えて、代替的実施形態においては、加熱処理は追加の酸素が存在しない状態で行われる。
【0038】
炭素基材
炭素基材は、粒状材料、粉末材料、繊維、チューブ、ウェブ、又はフォームであり得る。
【0039】
炭素基材の形態は、特に限定されるものではないが、非粒子状、粒子状、又は凝集体状であってもよい。非粒子状炭素基材とは、識別可能な別々の粒子により構成されていない支持体である。粒子状炭素基材とは、識別可能な粒子を有する支持体であり、この粒子は球形又は不規則形状であってよく(例えば非球形、立方体、多面体粒子、及び/又はその他の幾何学的形状)、少なくとも0.1、1.5、10、20、又は更には40マイクロメートル(μm)から、最大75μm、100μm、500μm、1ミリメートル(mm)、2mm、4mm、6.5mm、又は更には7mmの平均直径を有する。凝集体(又は複合体)は、小さな粒子が互いに結合又は凝集するか、あるいは大きな担体粒子又は表面と結合又は凝集することによって形成される。この凝集体は自立(重力に対し自己支持)していてもよい。
【0040】
一般的に、炭素基材の形態は用途に基づいて選択される。例えば、本開示の媒体が、低い圧力損失が要求される用途(例えば、気体又は液体を通過させる層)に使用される場合には、粒径の大きな粒子が望ましい。別の実施例では、カーボンブロックのモノリスで使用される場合は、約20〜200μmの粒径が好ましい場合がある。
【0041】
炭素基材の孔径は、その用途に応じて選択することができる。この炭素基材は、ミクロ孔質炭素(2ナノメートル未満の孔幅を有する)、マクロ孔質炭素(2〜50ナノメートルの孔幅を有する)、メソ孔質炭素(50nm超の孔幅を有する)、又はこれらの混合物であり得る。
【0042】
一実施形態において、この炭素基材は活性炭、言い換えれば、高い表面積を持たせるように高多孔質(すなわち、単位体積あたり多数の孔を有すること)化処理をされた炭素により構成される。
【0043】
一実施形態において、この炭素基材は多孔質であることが望ましい。好ましくは、この炭素基材は高表面積を有する(BET(ブルナウアー−エメット−テラー法)窒素吸着に基づき、例えば少なくとも100、500、600、又は更には700m
2/g、かつ最大で1000、1200、1400、1500、又は更には1800m
2/g)。高表面積は、例えば活性炭基材などの高多孔性炭素基材を使用して利用可能にすることができる。
【0044】
活性炭は、様々な材料から生成することができるが、市販されている活性炭の多くは、泥炭、石炭、リグニン、木材、及びヤシガラから製造される。炭素は、原料によって、孔径、灰分、表面規則性、及び/又は不純物特性が異なり得る。例えば、ヤシガラ原料の炭素は主としてミクロ孔質であるが、木材原料の活性炭は主としてメソ孔質又はマクロ孔質の孔径を有する。例えば、ヤシガラ原料及び木材原料の炭素は典型的に、灰分が約3重量%未満であるが、石炭原料の炭素は典型的に、4〜10重量%以上の灰分を有する。
【0045】
一実施形態において、本開示に使用される多孔質炭素基材は主にミクロ孔質であり、すなわち、炭素基材の孔の65、75、80、85、90、95、又は更には99%はミクロ孔であるが、一部の孔はミクロ孔より大きくてもよい。
【0046】
市販されている炭素基材としては、商標名「NUCHAR RGC」としてMead Westvaco Corp(Richmond,VA)から入手可能な木材原料の活性炭、商標名「AQUAGUARD」としてMead Westvaco Corpから入手可能な木材原料の炭素、商標名「KURARAY PGW」としてKuraray Chemical Co.,LTD(Okayama,Japan)から入手可能なヤシガラ原料の活性炭、「CARBSORB」及び「FILTRASORB」としてCalgon Carbon Corp.(Pittsburgh,PA)から入手可能な石炭原料の炭素が挙げられる。
【0047】
熱処理
単体炭素の反応は、一般的に、高い活性化エネルギーを示すため、高温で行われる。反応性化合物を炭素基材表面に導入するのに使用される反応は、硫黄化学種(及び、存在する場合は追加の反応性種)を熱により分解し、並びに、炭素基材との反応を可能にするのに十分な温度で、実施され得る。代表的な温度は、少なくとも200、250、300、400、又は更には500℃、かつ最高650、700、800、900、1000、1200又は更には1400℃を含む。本明細書で得られる生成物は、反応生成物又は媒体と呼ばれる。
【0048】
一般に、熱処理を実施する際の温度は、最初に、制御された条件下(雰囲気及び加熱速度)で実施される示差熱分析/熱重量分析(DTA/TGA)により、反応性化合物を分析して、その熱分解挙動を判定することにより、決定することができる。次に、炭素基材及び反応性化合物を様々な温度(分解の開始温度から始まる)で熱処理することによって試行して、どの時点及びどの条件(温度、時間、及び雰囲気)下で最も活性な物質が形成されるのかを決定することができる。
【0049】
熱処理は空気中環境で行うこともできる。しかしながら、燃焼を制御するためには、酸素源(例えば空気又は水)を除外してもよく(例えば減圧することにより)、あるいは、アルゴン又は窒素などの不活性ガス(これらの酸素濃度は2000ppm(百万分率)、200ppm、又は更には50ppm未満である)で置換することもできる。
【0050】
反応性化合物は、固体、液体、又は気体形態で使用され得る。単一の反応性化合物を使用することができ、あるいは、複数の反応性化合物(例えば硫黄含有反応性化合物と窒素含有反応性化合物)を使用することができる。反応温度は、反応性化合物の沸点を上回る温度が使用できる。
【0051】
一実施形態において、反応性化合物は、乾燥混合により炭素基材と合わせてから、熱処理(加熱)に曝すことができる。炭素支持体に加えられる反応性化合物の量は、活性な除去材料を製造するために最終生成物中に存在する十分な量の硫黄(及び任意追加的に窒素及び/又は酸素)が得られるように、実験により決定される。
【0052】
別の実施形態において、反応性化合物は、融解させることができ、あるいは溶媒(例えば水、又はメタノール、又は溶媒混合物)中に溶解又は分散させることができ、この液体を使ってで炭素基材を濡らし、炭素基材に反応性化合物を含浸させることができる。そのような含浸は、例えば反応性化合物を含む溶液を炭素基材の上にスプレーするか、又は反応性化合物を融解させてこれを炭素基材に接触させるなど、単純な技法を使用して達成することができる。溶媒を用いて溶液を形成する際、反応性化合物は、硫黄及び/又は窒素の存在量を最大化するために、溶解限度まで溶媒中に溶解されるが、活性な除去材料を製造するために最終生成物中に十分な硫黄及び/又は窒素が存在する限り、これより少ない量を使用することができる。
【0053】
次に、含浸させた炭素基材が加熱され、本開示の媒体を生成する。炭素基材の表面上での反応性化合物の分解は、反応性硫黄と、任意追加的に反応性窒素種とを生成すると考えられる。炭素基材に反応性化合物を含浸させることにより、炭素基材の表面に、より均一に分散した反応性表面が生じ、より均質かつより性能の良い媒体が得られると考えられる。
【0054】
金属塩と共に行う熱処理においては、熱分解プロセスが利用でき、これは、金属塩の加熱を、金属塩が、金属に結合した水(もしあれば)を失い始め、かつ化合物の塩部分が分解し始める温度以上で行うことを伴う。本明細書で使用する場合、「熱分解生成物」は、熱による化合物の解離又は分解によってもたらされる生成物を指す。この熱分解プロセスによって、金属塩の性質は、異なる化学量論及び組成物並びに異なる化学的性質を有する材料に変化すると考えられ、塩の少なくとも一部は、熱的に分解されて、ガスとして揮発によって取り除かれる。
【0055】
下記の記述は、本明細書に開示される反応生成物を生成するための熱処理の具体的な実施形態である。
【0056】
一実施形態において、炭素基材が、硫黄と窒素両方を含む反応性化合物(例えば、硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、及びチオ硫酸アンモニウム)で含浸され、次に、含浸した炭素を窒素雰囲気下で、その反応性化合物の分解点を超える温度(好ましくは445℃、500℃、550℃、又は更には800℃)で熱処理し、次いで窒素雰囲気下で冷却する。
【0057】
一実施形態において、炭素基材は、550℃以上の温度で、硫黄含有反応性化合物(例えば単体硫黄、H
2S、SO
2、及びアンモニウム硫黄含有化合物)で処理される。硫黄源としては単体硫黄が好ましく、なぜならば単体硫黄は、溶媒の非存在下かつ高圧ガスを必要とせずに使用し得るからである。
【0058】
一実施形態において、金属硫化物を含む反応生成物は、炭素基材上に担持された金属酸化物を硫黄源で処理することによって調製され得る。
【0059】
別の実施形態において、炭素基材が、硫黄含有反応性化合物の存在下で、金属カルボニルと共に加熱される。
【0060】
別の実施形態において、チオ金属酸塩又はオキシチオ金属酸塩を含む炭素基材が、熱分解して、本開示の反応生成物を形成する。
【0061】
反応生成物
炭素基材と、硫黄を含む反応性化合物との反応生成物は、本明細書において、互換可能に反応生成物又は媒体と呼ばれる。
【0062】
本開示の反応生成物は、固−気化学(すなわち、固−蒸気化学)により得ることができる。この種の特定の反応においては、炭素基材の外面部分のみが反応性気体に曝される。これは、炭素基材の内部孔への反応性化合物の拡散が、処理時間に比較して遅い可能性があるからである。加えて、場合によっては、生成物の被覆層が、その気体の内部への拡散を抑制するため、反応は自己制限的となり得る。そのような場合、形成される新しい化合物は、表面近くの領域に閉じ込められ、表面化合物を含み得る(例えば、炭素基材上の10ナノメートル(nm)以下)。
【0063】
固−蒸気系熱処理プロセスを使用することにより、いくつかの利点を実現することができる。反応は、無溶媒であってもよく、又は少なくとも有機溶媒を用いなくともよいため、生成物を分離するために乾燥作業が必要とされない。更に、残留して固体の細孔に詰まる不揮発性の副生成物が、通常存在しない。溶媒が使用されない場合、本明細書に記載の処理は、費用の低減及び/又はスループットの増加を可能とする連続処理として行うことを想定できる。本開示の固−蒸気処理は、小分子反応物質のミクロ細孔への浸透を可能とし、また、非常に不規則な表面により窪みを形成する。この結果として、有利な、均一に分布した硫黄及び/又は窒素種が得られる。
【0064】
別の実施形態において、反応性化合物は融解されるか、液体中に溶解されるか、又は溶液中に懸濁されて、得られた液体を使用して炭素基材に含浸させる。この実施形態において、反応性種が炭素基材全体に分散し、これによって、熱処理中に炭素基材と反応することができ、均一に処理された基材が得られる。有利なように、容易に蒸発しない反応性種、又は微粉末状の反応性種を使用することができる。更に、反応性化合物が、気体拡散の懸念なしに、液体として炭素基材内に浸透するため、より大きな炭素基材を均一に処理することができる。
【0065】
炭素基材が大径粒子である場合、コアシェル構造が結果として生じ、ここで、コアは炭素基材であり、これが、炭素基材と共に反応性化合物を熱処理した結果生じた反応生成物を含むシェル(すなわち、第2の層)に覆われている。
【0066】
本明細書で開示される反応は表面反応であるため、炭素基材が高表面積の小径粒子状(例えば、公称−325メッシュ、公称表面積1400〜1800m
2/gを有するRGC Powder)である場合、粒子の表面と内部は、同等の広がりを有し得る。一例において、粒子の外側表面と内部の間に明白な化学的差異がなくてもよい。別の例において、体積中の硫黄及び/又は窒素の含有量は、表面の硫黄及び/又は窒素含有量に近づくか、又は更にはこれを上回ることができる。
【0067】
本開示の一実施形態において、炭素基材の炭素と、硫黄、並びに所望により窒素及び/又は酸素(存在する場合)は、化学的に相互作用し合っており、つまり、これらの元素が化学的に互いに結合されてもよく(すなわち、隣接した元素間の共有化学結合)、あるいは、隣接していない元素間に、水素結合等の、より弱い結合が存在し得るということを意味する。
【0068】
一実施形態において、反応生成物が硫黄を含む場合、反応生成物中の硫黄の少なくとも15%、20%、25%、30%、又は更には50%が、0を超える酸化状態にある。例えば、酸化状態が+1、+2、+4、又は更には+6である。本開示の反応生成物は、少なくとも1.5質量%の硫黄を含むため、一実施形態において、XPS表面分析に基づき、媒体の少なくとも0.2質量%、0.5質量%、又は更には1質量%が、0を超える酸化状態にある硫黄を含む。
【0069】
反応性化合物からの硫黄(及び/又は、存在する場合には窒素)がすべて炭素基材表面内に組み込まれるわけではない(例えば、一部はCOS又はH
2Sに転換される場合がある)ので、結果として生じる組成物を分析して、媒体の炭素基材表面上の炭素、酸素、硫黄、及び窒素の原子分率を決定することが重要であり得る。
【0070】
炭素基材が非常に多孔質である場合、反応性化合物と炭素基材との反応生成物は、燃焼分析を行って、どれだけの量の炭素、水素、窒素、及び硫黄が存在するかを決定できる。
【0071】
一実施形態において、本開示の媒体は、炭素及び硫黄を含み、この媒体の硫黄含有量は、反応生成物の合計質量に対して、少なくとも1.5、2.0、3.0、4.0、6.0、8.0、又は更には10.0質量%である。
【0072】
一実施形態において、本開示の媒体は、炭素及び窒素を含み、この窒素含有量は、反応生成物の合計質量に対して、0.5、1.0、1.5、2.0、2.4、2.5、2.7、3.0、4.0、5.0、7.0、又は更には10.0質量%を超える。
【0073】
一実施形態において、本開示の媒体は、反応生成物の合計質量に対して、4.0、4.5、5.0、7.0、9.0、10.0、12.0、15.0、又は更には22.0質量%を超える窒素と硫黄との合計量を含む。
【0074】
一実施形態において、本開示の媒体は、実質的に水素を含まず、反応生成物の合計質量に対して、0.40、0.30、0.20、0.10、0.05、又は更には0.01質量%未満の水素を含む。
【0075】
一実施形態において、本開示の媒体は、実質的に金属を含まず、換言すれば、反応生成物の合計質量に対して、1、0.5、0.1、又は更には0.05質量%未満の金属を含む。
【0076】
一実施形態において、金属(例えばカルシウム、マグネシウム、鉄など)は、本開示の媒体中に低濃度で存在し得る。これは、ヤシガラ又は石炭に由来する炭素などの植物由来の材料にもともと、低濃度の金属が含まれているためである。
【0077】
一実施形態において、本開示の媒体は、CN
pS
rを含み、式中、p及びrは独立に、0より大きい数である。一実施形態において、pは、0.004、0.008、0.013、0.020、0.025、0.035、0.045、0.065、又は更には0.10より大であり得、rは0.004、0.006、0.008、0.015、0.025、0.035、又は更には0.42より大であり得る。
【0078】
一実施形態において、本開示の媒体はCO
xS
yを含み、一実施形態において、xは0、又は少なくとも0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、又は更には0.05であり、かつ最大で0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.15、又は更には0.2であり、yは、少なくとも0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、又は更には0.06であり、かつ最大で0.12、0.14、0.15、0.16、0.18、0.2、0.22、0.25、0.3、0.35、又は更には0.4である。一実施形態において、炭素基材は、CO
xS
yを主成分とした表面を有する。これは、この表面が炭素、酸素、及び硫黄を必ず含み、本発明の基本的な性質及び新規な性質に実質的に影響しない限り、他の原子も含んでいてもよいという意味である。言い換えれば、炭素、酸素、及び硫黄の他にも、基材の表面は、合計で10%未満、又更には5%未満の他の原子を含む。これらの他の原子は、出発原料、及び/又は熱処理中に使用される雰囲気に由来するものであり得る。不純物は一般的に、組成物の重量を基準として、特定の不純物原子の5%、2%、1%、0.1%、0.05%、又は更には0.01%未満である。
【0079】
一実施形態において、反応生成物の炭素、酸素、及び硫黄は、化学的に相互作用し合っており、つまり、これらの元素が化学的に互いに結合されてもよく(すなわち、隣接した元素間の共有化学結合)、あるいは、隣接していない元素間に、水素結合等の、より弱い相互作用が存在し得るということを意味する。
【0080】
一実施形態において、本開示の組成物は高い熱安定性を有する。例えば、CO
xS
yを含む炭素基材では、窒素下において、硫黄の沸点よりもかなり高い温度の約800℃まで、著しい重量減少は始まらず、このことは、これらの組成物が出発物質の単なる物理的混合物ではないことを示している。
【0081】
本開示の組成物の分析によると、少なくとも一実施形態において、硫黄及び酸素は炭素基材の表面上で化学的に結合されている。酸素及び炭素は、炭素基材の表面に一体化しており、400℃に加熱することでは容易には取り除かれない。この構造及び結合の性質は複雑である。CO
xS
yを含む炭素基材について、注意深くデコンボリューションされたXPS(X線光電子分光法)スペクトルが示すところによれば、硫黄は、S2p
3/2結合エネルギーが約162.0、164.3、165.8、及び168.9eV(25.96、26.32、26.56、27.06aJ)[C(1s)=285.0eV]の4つの異なる化学環境にある。したがって、これらは3つの形式価状態[S(VI)、S(IV)、及びS(II)]にあり、4つの異なる化学環境にある、化学的に結合された硫黄を含む。これらの化学環境は、(1)SO
42−又は有機スルホンC−SO
2−CにおけるS(VI)、(2)有機スルホキシドC−SO−CにおけるS(IV)、(3)チオフェンにおけるS(II)、及び(4)有機硫化物C−S−C、又は二硫化物C−S−S−CにおけるS(II)である。
【0082】
一実施形態において、この反応生成物は、0.50、0.57、0.60、又は更には0.65g/ccを超える嵩密度を有する。
【0083】
一実施形態において、この反応生成物は、4%未満、又は3%未満、又は更には2%未満の灰分を有する。
【0084】
硫黄は腐卵臭を伴い、本開示は水溶液(例えば飲料水)の処理における使用を目的としているため、飲料水の処理に硫黄含有材料を使用するのを思い止まる場合があるかもしれない。しかしながら、有利なことに、本明細書に開示される反応生成物は、場合によっては大量の硫黄(例えば10重量%)を含むものの、この反応生成物には顕著なにおいはない。
【0085】
カーボンブロック
一実施形態において、反応生成物は、マトリックス内に配置されて、フィルターを形成する。マトリックスは、チューブ又は水溶液が内部を通ることができるようにする他の構造体の表面上のウェブのポリマー含有複合体ブロックであり得る。一実施形態において、反応生成物は、ポリエチレン(例えば超高分子量ポリエチレン、又は高密度ポリエチレン(HDPE))などの結合材料と共に混合及び圧縮され得る。別の実施形態において、この反応生成物を、ウェブ(例えば、ブローンマイクロファイバ)内に充填してもよく、このウェブは、圧縮してもよいし又はしなくてもよい。これは、例えば、米国公開特許出願第2009/0039028(Eatonら)に記載されており、この全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
一実施形態において、本開示の反応生成物を含むマトリックスは、酸化物又は珪酸塩の形態のチタン粒子を更に含む。これらの粒子は、マトリックスに添加することにより、鉛などの望ましくない金属の除去を改善することができる。典型的には、これらの粒子は、20〜50マイクロメートルの寸法を有する。
【0087】
フィルター(反応生成物、マトリックス及び追加添加物を含む)の合計重量に対する反応生成物の重量として表わされる充填量は、使用されるマトリックスによって異なり得る。一実施形態において、含まれる反応生成物の量は、フィルターの、少なくとも10、25、40、50、60、75、又は更には80質量%、最高で90、92、95、97、又は99質量%、又は更には100質量%である。例えば、カーボンブロックが使用される場合、フィルターは約50〜85質量%の反応生成物を含み得るが、炭素が充填されたウェブの場合は、フィルターは約80〜95質量%の反応生成物を含み得る。
【0088】
一実施形態において、反応生成物は、流体管(例えば、少なくとも入口及び出口を含むハウジング又は容器)内に配置され、この流体管は、流体入口及び流体出口に流体連通している。かかるシステムは、充填層を含み得る。
【0089】
除去
本開示の媒体は、流体流れから、具体的には液体の流体流れから、より具体的には水性流体流れから、クロラミン及び/又は有機化合物を除去するのに使用され得る。
【0090】
クロラミンは、アンモニアと塩素(次亜塩素酸塩)との水性反応により生成される。したがって、アンモニア(NH
3)が塩素消毒システムに加えられると、塩素はクロラミンに変換される。具体的には、低濃度のモノクロラミン(以下「クロラミン」と呼ぶ)は、飲用水源の消毒により発生する。一実施形態において、水溶液を本開示の媒体に接触させた後、本明細書に開示されるように、得られる水溶液は、減少した量のクロラミンを含む。
【0091】
飲料水供給に見出される一般的な有機物には、トリハロメタンなどの消毒剤副生成物が挙げられ、この例としてはクロロホルムが挙げられる。クロロホルムは、ナショナル・サニテーション・ファウンデーションNSF/ANSI基準53(「飲料水処理装置、健康への影響」)により、揮発性有機化合物低減のための代理物として使用されている。揮発性有機化合物除去のための、濾過媒体の除去能力を測定するには、濾過媒体にクロロホルム300ppbの水溶液を適用し、15ppb漏出が観察されるまでに処理されたガロン数を測定する。一実施形態において、水溶液を本開示の媒体に接触させた後、本明細書に開示されるように、得られる水溶液は、減少した量の有機化合物を含む。
【0092】
上記に参照される出願者らの以前の出願において、様々な反応性物質(例えば硫黄含有化合物並びに/又は硫黄及び窒素含有化合物)の存在下で炭素基材を熱処理することにより、クロラミン除去に対して活性のある材料が得られたことが見出されている。これらの材料は、未処理の活性炭(クロラミン除去用に市販されているものを含む)に比べ、水溶液からクロラミンを除去する活性が同様又はそれ以上であることが見出されている。これまでは、木材原料の炭素基材が主に研究されてきた。これは、(a)これまでのところクロラミン除去のために利用できる最良の炭素は木材原料の炭素であり、かつ(b)クロラミンの低減は孔拡散(すなわち、クロラミンの炭素の孔への拡散と、この孔からの反応生成物の相互拡散)により制限されると考えられていたためである。よって、木材原料の炭素は、より大きな孔径を有するため、望ましいと考えられていた。
【0093】
しかしながら、出願者らの研究において、ヤシガラ原料の炭素基材から製造された、硫化炭素(CxSz)を含む反応生成物は、木材原料の炭素基材と同様に高いクロラミン除去速度及びクロラミン処理容量を示した。更に、後述の実施例に示されるように、本開示の媒体は、有機化合物の除去のための処理容量を保持し、これは、炭素基材の孔への吸着によって除去されると考えられる。よって、理論により制限されることを望むものではないが、炭素基材の反応性化合物と共に行う熱処理は、反応時に多孔質炭素基材の孔を実質的にブロックしないと考えられる。
【0094】
一実施形態において、ヤシガラ原料の炭素基材と、硫黄を含む反応性化合物との熱処理から製造される反応生成物は、特にクロラミン除去用に市販されている現在商業的に入手可能な濾過媒体、及び/又は、木材原料の炭素基材で本明細書に開示される熱処理を用いて製造された濾過媒体に比べて、クロラミンと有機化合物両方の除去について、処理容量の改善及び/又は反応速度の改善をもたらすことが見出されている。
【0095】
本開示の媒体は、溶液がこの媒体に接触したときに、水溶液中のクロラミンと有機化合物の量を減少させる。一実施形態において、この水溶液は、3ppmから0.5ppm未満のクロラミンを含む。媒体に接触することにより、水溶液は、クロラミン含有量が0.1ppm以下に減少する。例えば、一実施形態において、3ppmのクロラミンを含む溶液を用いた場合、クロラミンの量は少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は更には100%減少する。一実施形態において、水溶液は約300ppbの有機化合物を含み、この水溶液は、媒体に接触することにより、有機化合物含有量が15ppb未満に減少する。例えば、一実施形態において、15ppbのクロロホルムを含む溶液を用いた場合、有機化合物の量は少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は更には100%減少する。別の実施形態において、水溶液は1ppb未満の有機化合物を含み、この水溶液は、媒体に接触することにより、有機化合物含有量が0.5ppb未満に減少する。例えば、別の実施形態において、1ppbのクロロホルムを含む溶液を用いた場合、有機化合物の量は少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、又は更には100%減少する。
【0096】
一実施形態において、本明細書に開示される熱処理は、クロラミン及び/又は塩素を除去する炭素基材の処理容量を改善する。一実施形態において、本開示の媒体は、クロラミンを除去する高い処理容量を有する(例えば、反応生成物の体積当たり除去されるクロラミンの量に基づいて少なくとも0.1g/cc、又は更には0.2g/cc)。一実施形態において、本開示の媒体を用いて製造されるフィルター媒体は、有機化合物を除去する高い処理容量を有する(例えば、反応生成物の体積当たり除去されるクロロホルムの量に基づいて少なくとも0.05g/cc、0.1g/cc、又は更には0.2g/cc)。この処理容量、及びしたがって水のスループットは、許容できる長使用寿命を備えたフィルターの設計のために重要である。
【0097】
本開示の反応生成物を含むカーボンブロックサンプルの処理容量(又は使用寿命)は、流出液中のクロラミン濃度が上昇して0.5mg/Lを超えるまでの間に達成されたスループットとして報告された。一実施形態において、空の濾床との接触時間を9.5秒とし、3ppmクロラミンを通したときに、この媒体は、クロラミン3ppmで、媒体1グラム当たり少なくとも0.05、0.1、又は更には0.19gのクロラミンの処理容量を有する。
【0098】
濾過媒体を設計する際、対象汚染物質と素早く反応できる媒体を有することもまた有利である。本明細書に開示される反応生成物を使用して製造された濾過媒体は、速い反応速度を提供できることが見出されており、これによって、空の濾床との接触時間が3〜5秒という短い時間で、クロラミン及び/又は有機化合物の除去に良好な性能が得られる。空の濾床との接触時間は、フィルターの体積(ガロン単位)を、水の流量(毎秒ガロン単位)で割った値として定義される。クロラミン及び/又は有機化合物を迅速かつ効果的に除去する能力は、フィルターの必要寸法を縮小するために重要である。多くの用途においてスペースは限られているため、フィルター体積を「小型化」することは、顧客に受け入れてもらうために重要である。スペースが限られている用途としては、冷蔵庫フィルター、蛇口末端フィルター、卓上フィルター、ポータブル及び家庭用透析システムのフィルター、自然流下装置(ピッチャー)、並びに家屋取水設備フィルターが挙げられる。よって、本明細書に開示される媒体は、水からのクロラミン及び有機化合物の除去が、顧客にとって便利かつ望ましいものであるような用途範囲に拡大され得る。現在、上述の用途用のそのようなフィルターは、幅広いユーザーにとって実際に用いるには、大きすぎるか又は処理容量が少なすぎる。
【0099】
本明細書に開示される反応生成物は、次の用途に有用であり得る:家庭用又は商業用の、ユースポイントフィルター又は家屋取水設備フィルター、水流から汚染物質(例えばクロラミン、有機化合物など)を除去する透析水用フィルター。
【0100】
本明細書に開示される反応生成物は、クロラミン及び/又は有機化合物を除去するために使用されるだけでなく、他の汚染物質を除去するのにも使用され得る。米国特許出願第61/777,013号及び同第61/777,010号(両方とも2013年3月12日出願)(これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に示されているように、この反応生成物は、水銀及び/又は塩素を除去するのに使用することができる。場合によっては、水供給側において、処理源から使用場所に至るまでに水溶液が汚染物質に曝露する変化が生じた場合、水流中に何の汚染物質があるかは、エンドユーザーが知り得ない。よって、各汚染物質にそれぞれ固有の複数のフィルターが必要になり得る。様々な種類の汚染物質を除去することができる濾過媒体によって、占有面積及び/又は費用を節約することができる。場合によっては、水供給の処理は、エンドユーザーの知るところか否かを問わず、変化することがあり、よって、上流側で起こった変化に伴って変更する必要のない濾過媒体を有することが有利であり得る。
【0101】
本開示の一実施形態において、水溶液から様々な汚染物質を除去するための方法であって、クロラミン、塩素、有機化合物(トリハロメタンなど、例えばクロロホルム)、及び水銀から選択される少なくとも2つの汚染物質を含む水溶液を提供する工程と、その水溶液を、多孔質炭素基材を含む媒体に接触させる工程とを含み、多孔質炭素基材は、少なくとも1.5質量%の硫黄を含み、媒体がその少なくとも2つの汚染物質の量を減少させる、方法が提供される。
【0102】
別の実施形態において、炭素及び硫黄を含む媒体が開示され、その媒体は、クロラミン、遊離塩素、水銀、及びトリハロメタン(例えばクロロホルム)のうち少なくとも1つを除去する能力を有し、媒体と結合材とを含む複合体カーボンブロックフィルターは、カーボンブロック体積1リットル当たり少なくとも5000リットルの水の濾過処理容量を有し、かつ、濾過処理容量は、ナショナル・サニテーション・ファウンデーション基準53(水銀及びクロロホルム)及び42(クロラミン及び塩素)プロトコルに従って試験した場合、空の濾床との接触時間が約2.4秒(±5%)と測定される。この試験方法の開示については、下記の実施例の項、及び、米国特許出願第61/777,013号及び同第61/777,010号(両方とも2013年3月12日に出願)(これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に開示される方法を参照されたい。
【0103】
本開示の別の実施態様において、水溶液の濾過のための媒体が提供され、ナショナル・サニテーション・ファウンデーション基準53及び42プロトコルに従って空の濾床との接触時間約2.4秒(±5%)で試験すると、媒体は以下の処理容量を含む:3ppmのクロラミンを通した場合、媒体1グラム当たり少なくとも0.05、0.06、0.07、0.08、又は更には0.1gのクロラミン処理容量、2ppmの塩素を通した場合、媒体1グラム当たり少なくとも0.5、0.7、0.8、又は更には1gの塩素処理容量、150ppbの有機化合物(クロロホルムとして測定される)を通した場合、媒体1グラム当たり少なくとも0.002、0.003、0.004、又は更には0.0050gの有機化合物処理容量、及び、水銀を通した場合、媒体1グラム当たり少なくとも0.002、0.003、0.004、0.005又は更には0.007gの水銀処理容量を含む。この試験方法の開示については、下記の実施例の項、及び、米国特許出願第61/777,013号及び同第61/777,010号(両方とも2013年3月12日に出願)(これらは参照により全体が本明細書に組み込まれる)に開示される方法を参照されたい。
【0104】
本開示の代表的な実施形態は、以下のものを包含するが、これらに限定されるものではない:
実施形態1.水溶液からクロラミン及び有機化合物を除去するための方法であって、
クロラミン及び有機化合物を含む水溶液を提供する工程と、
水溶液を、多孔質炭素基材を含む媒体に接触させる工程と、を含み、多孔質炭素基材は少なくとも1.5質量%の硫黄を含む、方法。
【0105】
実施形態2.多孔質炭素基材が主にミクロ多孔質である、実施形態1に記載の方法。
【0106】
実施形態3.多孔質炭素基材の表面が、化学種CO
xS
yを含み、式中、xは0.1以下、yは0.005〜0.3である、実施形態1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
実施形態4.多孔質炭素基材が窒素を更に含み、かつ硫黄と窒素の合計量が少なくとも4.0質量%である、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【0108】
実施形態5.多孔質炭素基材が活性炭である、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【0109】
実施形態6.媒体の少なくとも0.2質量%が、XPS表面分析に基づいて0より大きい酸化状態の硫黄を含む、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
実施形態7.媒体が、0.6g/ccを超える嵩密度を有する、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
実施形態8.媒体が、3%未満の灰分を有する、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
実施形態9.媒体がマトリックス内に配置され、マトリックスがポリマーマトリックスである、実施形態1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
実施形態10.媒体が、チタンを含む粒子を更に含む、実施形態9に記載の方法。
【0114】
実施形態11.水溶液から有機化合物を除去するための方法であって、
少なくとも0.5ppmのクロラミン及び有機化合物を含む水溶液を、少なくとも1.5質量%の硫黄を有する多孔質炭素基材を含む媒体に接触させる工程と、溶出物を収集する工程とを含み、溶出物は、0.1ppm未満のクロラミンを含む、方法。
【0115】
実施形態12.
(i)炭素支持体の表面と、(ii)硫黄を含む反応性化合物とを熱処理することにより調製される媒体を提供する工程と、
媒体を、クロラミン及び有機化合物を含む水溶液に接触させる工程とを含む方法であって、
水溶液は、媒体に接触した後、減少した量のクロラミンと、減少した量の有機化合物とを有する、方法。
【0116】
実施形態13.熱反応生成物が、(iii)窒素を含む反応性化合物を更に含む、実施形態12に記載の方法。
【0117】
実施形態14.硫黄を含む反応性化合物が、単体硫黄、酸化硫黄、硫化水素、硫黄のオキシアニオンを含む塩、及びこれらの組み合わせのうち少なくとも1つから選択される、実施形態12〜13のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
実施形態15.熱処理が、不活性雰囲気中、445℃を超える温度で実施される、実施形態12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
実施形態16.3ppmのクロラミンを含む溶液を用いた場合、クロラミンの量が、少なくとも80%減少する、実施形態12〜15のいずれか一項に記載の方法。
【0120】
実施形態17.15ppbのクロロホルムを含む溶液を用いた場合、有機化合物の量が95%減少する、実施形態12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【実施例】
【0121】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に説明するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、すべての百分率、割合及び比率は、特に指示しない限り重量による。
【0122】
別途記載されるか又は明らかでない限り、すべての材料は市販(例えばSigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)より)であるか又は当業者に既知のものである。
【0123】
以降の実施例において下記略称が使用される。g=グラム、hr=時、in=インチ、kg=キログラム、min=分、mol=モル、M=モル濃度、cc=cm
3、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、mL=ミリリットル、L=リットル、N=規定、psi=平方インチ当たりの圧力、及びwt=重量。
【0124】
方法
クロラミン試験
サンプル中の全塩素含有量から、水サンプル中のクロラミン含有量を求めた。全塩素(OCl
−及びクロラミン)濃度は、Hach Companyが米国環境保護庁公定法(USEPA Method)330.5に相当すると主張する全塩素分析DPD法(DPD Total Chlorine Method)、Hach Method 8167により測定した。遊離塩素(OCl−)濃度は、Hach Companyが米国環境保護庁公定法330.5に相当すると主張する遊離クロラミン分析DPD法(DPD Free Chloramine Analysis)、Hach Method 8021により定期的に測定した。遊離塩素は無視できる程の低濃度(<0.2ppm)に保たれたため、全塩素分析は、水中のクロラミン濃度の良い推量となると考えられた。すべての試薬及び器具は、標準Hach Methodに記載されたものであり、Hach Company(Loveland,CO)より入手可能であった。
【0125】
クロラミン除去試験
通過流システムにおけるクロラミン処理容量は、通過流試験方法により評価された。pHが7.6±0.25、総溶解固形物が200〜500mg/L、硬度がCaCO3換算で170mg/L未満、濁度が1比濁計濁度単位未満、温度が20±3℃である、クロラミン水溶液試験液を3mg/L、調製した。クロラミン濃度は、次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、次に塩化アンモニウム溶液を加えることにより、2.7〜3.3mg/Lに制御した。pHは、必要により、水酸化ナトリウムを加えることで調整した。
【0126】
その後、端キャップ付きカーボンブロックサンプル(下記の通り調製)を、フィルター媒体の外側から内側に放射状に流れることが可能な、一般的な濾過容器の中に設置した。容器は入口と出口を備えていた。0.13ガロン/分(0.49リットル/分)の流量で、クロラミン水溶液試験液を濾過システムに通した。この試験では、水の流速は一定に維持した。
【0127】
カーボンブロックサンプルを湿潤させるために、上記のクロラミン水溶液試験液を、濾過システムに5分間通した。その後、流出液のサンプル(カーボンブロックサンプルからの流出物)を定期的に採取し、スループットをガロン単位で記録した。上記のクロラミン試験を用いて、流出液サンプルをクロラミンについて分析した。次に、クロラミン流出液濃度を、クロラミン水溶液試験液スループットの関数としてプロットした。流出液の最大クロラミン濃度は0.5mg/Lである。
【0128】
クロロホルム(有機化合物)除去試験
有機化合物を除去する処理容量は、クロロホルムを代理物として使用し、通過流試験方法により評価された。クロロホルムの試験溶液は、300μg/L±30μg/Lの平均クロロホルム濃度で調製した。
【0129】
端キャップ付きカーボンブロックサンプル(下記の通り調製)を、フィルター媒体の外側から内側に放射状に流れることが可能な、一般的な濾過容器の中に設置した。容器は入口と出口を備えていた。0.13ガロン/分(0.49リットル/分)の流量で、水溶液試験液を濾過システムに通した。水流の負荷サイクルは、15分間オン/15分間オフ、1日当たり16時間であった。
【0130】
カーボンブロックサンプルを湿潤させるために、上記のクロロホルム水溶液試験液を、濾過システムに5分間通した。その後、流出液のサンプル(カーボンブロックサンプルからの流出物)を定期的に採取し、スループットをガロン単位で記録した。GC/MSを使用して、流出液サンプルをクロロホルムに関して分析し、クロロホルム流出液の濃度を、クロロホルム水溶液試験液スループットの関数としてプロットした。流出液の最大クロロホルム濃度は15μg/Lである。この方法のクロロホルムの検出限界は0.15ppbであり、定量化の限界は0.5ppbであった。
【0131】
水素、窒素、硫黄の燃焼分析
サンプル中の炭素、水素、窒素及び硫黄の重量パーセントは、LECO TruSpec Micro CHNS元素分析器(Laboratory Equipment Co.(St.Joseph,MI))を使用して燃焼により測定された。手短に言えば、サンプルを装置に設置し、雰囲気ガスでパージした。その後、サンプルを酸素存在下で1000℃超まで加熱して、サンプルを燃焼させた。その後、更なる酸化、還元、及び粒子除去のために、サンプルを第2炉に通した。その後、炭素、水素、窒素、及び硫黄の含有量を測定するために、燃焼ガスを各種検知器に通した。
【0132】
スルファメタジン標準物質(>99%、LECOより入手)を、スルファメタジン1mg〜2.6mgの範囲の検量線作成のために希釈した。装置は、CHNS検知器が安定するまで、周囲空気で基準を定められた。その後、3〜4個の空のるつぼを測定し、器具ブランクとして設定した。次に、スルファメタジン標準物質を分析し、検量線を作成した。それぞれの元素について、スルファメタジン標準物質の絶対標準偏差(純粋な均質材料について許容可能な精度)は、水素が+/−0.3重量%未満、窒素が+/−0.3重量%未満、硫黄が+/−0.3重量%未満で、元素それぞれについて検出限界は0.10重量%であった。
【0133】
サンプルの表面分析
サンプルの化学的状態及び元素組成は、X線光電子分光法により、Kratos Axis Ultra(商標)XPSシステム(Shimadzu Corp.(Columbia,MD))を使用し、ベース圧10
−9Torr(1.3×10
−9kPa)未満で分析された。単色AlKα(1486.6eV(238.18 aJ))X線源は、140ワット(14KV、10mA)で操作された。半球型電子エネルギー分析器は、概略測定では160eV(26aJ)、高解像度スペクトルでは20eV(3aJ)の、一定のパスエネルギーで動作した。結合エネルギー(BE)尺度は、C 1sピークのBEに対して較正された。このスペクトルは、サンプル表面に対して90°の射出角で検出された。データ処理は、PHI MultiPak V8.2B、2006及びCasa XPSバージョン2.3.16 Dev41ソフトウェアで実施した。表面組成は、適切なスコフィールドイオン化断面の補正を行った後、概略測定スペクトルで計測した光電子ピーク面積から計算された。報告されている全体の原子濃度は、無作為に選択された複数のサンプル領域で収集された概略測定スペクトルから誘導された平均値である。触媒官能基の表面成分は、C 1s、O 1s、N 1s及びS 2pコアレベルスペクトルのデコンボリューション/曲線あてはめ分析により決定された。曲線あてはめ分析は、ガウス/ローレンツGL関数の和、及びシャーリー型バックグラウンド除去法に基づいて行われた。
【0134】
炭素基材A
炭素基材Aは、更なる処理なしにそのまま使用した木材原料活性炭(公称80×325メッシュ、MeadWestvaco Specialty Chemicals(North Charleston,SC)より、商標名「AQUAGUARD 325」で入手)であった。炭素基材Aは現在、水中のクロラミン、塩素、味、及びにおいを制御するため特に設計された製品として市販されている。比類のないクロラミン高処理容量を有するとされ、クロラミン低減処理容量が重要であるユースポイント浄水フィルターに選択される触媒性炭素である。製品パンフレット「AQUAGUARD 200 and 325:Catalytic Activated Carbon」(2012年6月改訂)を参照。
【0135】
炭素基材B
炭素基材Bは、ヤシガラ活性炭(公称80×325メッシュ、Kuraray Chemical(Osaka,Japan)より、商標名「PGW100MP」で入手)であった。ヤシガラ活性炭は公称120マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0136】
実施例1の炭素基材
炭素基材Bをるつぼ内で180℃に加熱してから、撹拌しながら、単体硫黄(炭素1g当たり硫黄0.2g、Alfa Aesar(Ward Hill,MA)から入手、−325メッシュ、99.5%)を加えた。硫黄は溶融し、炭素基材B内に組み込まれた。
【0137】
炭素基材と硫黄の混合物が入ったるつぼの上に、ゆるい蓋を置いた。次にこのるつぼを、窒素パージしたマッフル炉に設置し、550℃に平衡させて、その温度で30分間保持した。るつぼを、炉から取り出し、窒素パージした容器の中に移して、室温近くまで冷ました。
【0138】
上記の「水素、窒素、硫黄の燃焼分析」手順に従って試験したところ、実施例1は、硫黄8.44重量%、窒素0.12重量%、水素は検出限界未満であることが見出された。
【0139】
実施例2の炭素基材
実施例2は、上記の実施例1の記述に従って調製され、上記の「表面分析」方法に従って試験された。実施例2の炭素基材は、炭素91.1原子%、窒素0.6原子%、酸素2.1原子%、及び硫黄5.3原子%を含むことが見出された。サンプル表面の5.3原子パーセントの硫黄のうち、7.4%が酸化状態−2、65.9%が酸化状態0、13.4%が酸化状態+2、9.5%が酸化状態+4、3.8%が酸化状態+6であった。
【0140】
カーボンブロックサンプルの作製
選択された炭素基材(80×325メッシュ公称粒径)を40cm
3、ブレンダーに入れた。最大の非圧縮密度における炭素の体積を測定した。40cm
3のTicona GUR 2126超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末(Ticona Engineering Polymers(Florence KY)から入手)を、最大の非圧縮密度で測定し、ブレンダーに入れた。この炭素とUHMWPEを3分間混合した。次に、この混合物を、外径1.35in(34.3mm)、内径0.375in(9.5mm)、長さ3.6in(91.4mm)の寸法を有する、コアが円筒状の中空である円筒状の型に定量的に移した。この型は、米国特許第8,206,627号(Stoufferら)に記述されているインパルス充填を使用して、最大の非圧縮密度まで充填した。この型に蓋をしてから、熱対流炉で50分間、180℃で加熱した。加熱後すぐに、この型をピストンで圧縮し、固定長さ3.1in(78.7mm)のブロックにした。この型を室温まで冷まし、得られたカーボンブロックを型から取り出した。ホットメルト接着剤を使用して、端キャップをこのブロックに接着した。
【0141】
実施例1の炭素基材、炭素基材A、及び炭素基材Bはそれぞれ個別に、上記の手順に従ってカーボンブロックサンプルとして製造された。これらのカーボンブロックは、クロラミン除去試験及びクロロホルム除去試験に従って試験された。
【0142】
図1には、実施例1並びに炭素基材A及びBで作製されたカーボンブロックについて、検出されたクロラミンの量と、ガロン単位のスループットとを示す。カーボンブロックサンプルの処理容量は、流出液中のクロラミン濃度が上昇して0.5mg/Lを超えるまでの間に達成されたスループットとして報告された。実施例1の炭素によるカーボンブロックのクロラミンに関する水処理容量は約440ガロン(1700リットル)、炭素基材Aを用いたカーボンブロックでは約40ガロン(150リットル)、及び炭素基材Bを用いたカーボンブロックでは10ガロン(40リットル)未満である。
【0143】
図2には、実施例1並びに炭素基材A及びBで製造されたカーボンブロックについて、検出されたクロロホルムの量と、ガロン単位のスループットとを示す。カーボンブロックサンプルの処理容量は、流出液中のクロロホルム濃度が上昇して15μg/Lを超えるまでの間に達成されたスループットとして報告された。実施例1炭素によるカーボンブロックのクロロホルムに関する水処理容量は約100ガロン(400リットル)、炭素基材Aを用いたカーボンブロックでは約10ガロン(40リットル)、及び炭素基材Bを用いたカーボンブロックでは約100ガロン(400リットル)である。
【0144】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される実施形態に限定されるべきものではない。本明細書と、参照により本明細書に組み込まれているすべての文書内の開示との間に不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書が優先される。