(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407958
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】複数のレーザビーム群を形成するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/067 20060101AFI20181004BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20181004BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20181004BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20181004BHJP
C03B 33/02 20060101ALI20181004BHJP
H01S 3/101 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
B23K26/067
B23K26/364
B23K26/064 Z
H01L21/78 B
C03B33/02
H01S3/101
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-503716(P2016-503716)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-523710(P2016-523710A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】GB2014050762
(87)【国際公開番号】WO2014147375
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】1305303.8
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512104823
【氏名又は名称】エム−ソルヴ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラントン アダム ノース
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー サイモン ジョン
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−022602(JP,A)
【文献】
特開2007−129225(JP,A)
【文献】
特開2002−113589(JP,A)
【文献】
米国特許第05922224(US,A)
【文献】
特表2008−518278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接レーザスクライブを用いてワークピース内に複数のスクライブ溝を形成するように構成される装置であって、
第1のレーザビームを受けて当該第1のレーザビームを複数の第2のレーザサブビームに分割するように配置される第1の回折光学素子、及び、前記複数の第2のレーザサブビームを受けて当該第2のレーザサブビームを第3のレーザサブビームの2つ以上の群に分割するように配置される第2の回折光学素子が上に取り付けられるプロセスヘッド、並びに、
前記プロセスヘッドに対して第1の軸と平行な方向に前記ワークピースを動かすことで、前記第3のレーザサブビームを用いて前記第1の軸に沿って延びる複数のスクライブ溝を形成する手段、
を備え、
前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子の配置は、前記第1の軸に対して垂直な方向における前記群の分離が、前記第1の回折光学素子をその光学軸を中心として回転させることにより調整可能となるようになされ、且つ、
前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子の配置はさらに、前記第1の軸に対して垂直な方向における各群内での前記第3のレーザサブビームの分離が、前記第2の回折光学素子をその光学軸を中心として回転させることにより調整可能となるようになされることで、前記第3のレーザサブビーム、及び、前記第1の軸に平行な前記ワークピースと前記プロセスヘッドとの間での相対運動によって形成される前記スクライブ溝間の分離を調整することが可能となるようになされ、
前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子の角度的配置は、前記第1の軸に対して垂直な方向における前記群の分離が非ゼロで、かつ、前記第1の軸に対して垂直な方向における各群内での前記第3のレーザサブビームの分離が非ゼロとなるようになされる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第3のレーザサブビームの2つ以上の群を前記第2の回折光学素子から受けるように配置されたレンズを備え、前記第3のレーザサブビームの群が前記レンズから出力し、且つ各群内の前記レーザサブビームが実質的に平行であるように、前記レンズの、その光学軸に沿った位置が調節可能で、
任意で前記レンズはテレセントリックレンズである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ビームコンバイナと、第3の回折光学素子と、をさらに備え、
前記第3の回折光学素子は、前記第1のレーザビームとは異なる少なくとも1つの特性を有する第4のレーザビームを受け、且つ当該第4のレーザビームを複数の第5のレーザサブビームに分割するように配置され、
前記第5のレーザサブビームの、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離が、前記第3の回折光学素子をその光学軸を中心として回転させることにより調整可能であり、
前記ビームコンバイナが、前記第2の回折光学素子を出た前記第3のレーザサブビームの群を、前記第3の回折光学素子を出た前記第5のレーザサブビームに結合するように配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第3のレーザサブビームの少なくとも1つが第1のスポットを前記ワークピース上に形成し、
前記第5のレーザサブビームの1つは前記ワークピース上に第2のスポットを形成し、
前記第1のスポットと前記第2のスポットは共に、前記第1の軸に平行の方向な1本の線上に位置し、かつ、
前記第1のスポットと前記第2のスポットは前記線に沿って互いに離間するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第4のレーザビームの、前記第3の回折光学素子及び/又は前記ビームコンバイナへの入射方向を制御するためのビーム偏向器をさらに備え、前記第1の軸と平行の方向に沿った位置合わせを維持しつつ、前記第1のスポットと第2のスポットとの間の分離が変更され、
任意で前記ビーム偏向器は、前記第1の軸に対して垂直の面に延在する軸を中心として回転可能であるように取り付けられたミラーを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ビーム偏向器は、前記第2のスポットが、処理ラインに沿って前記第1のスポットの一の側又は他の側に選択的に配置されることを可能にするように構成され、それにより、前記第1の軸に沿った前記ワークピースの対向する両方の移動方向について、前記処理ラインに沿って前記第1のスポットを前記第2のスポットよりも必要に応じて選択的に進ませ又は遅らせることを可能にする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ビームコンバイナがダイクロイックミラー及び/又は偏光依存ミラーを含む、請求項3〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記第1の回折光学素子により生成される前記第1のレーザビームの群の分離が、前記第2の回折光学素子により生成される前記第3のレーザサブビームの分離とは異なる、請求項1〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
さらに前記プロセスヘッドを2つ以上備え、
前記2つ以上のプロセスヘッドの各々の上に第1の回折光学素子及び第2の回折光学素子が取り付けられており、
前記2つ以上のプロセスヘッドの各々は、当該ワークピースの直接のレーザスクライビングを実行するために前記ワークピースに対して移動可能である、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記第1のレーザビームを前記プロセスヘッドの一方又は各々に提供するように配置された第1のレーザ源をさらに備え、
任意で前記第4のレーザビームを前記プロセスヘッドの一方又は各々に提供する第2のレーザ源を備える、請求項3〜7のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記第1の回折光学素子により提供される前記第3のレーザサブビームの群の分離における調整が、前記第2の回折光学素子により提供される各群における前記第3のレーザサブビーム間の分離における調整とは異なるよう、前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子が構成されている、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
直接レーザスクライブを用いてワークピース内に複数のスクライブ溝を形成するための方法であって、
第1のレーザビームを第1の回折光学素子(DOE)を通過させることにより、当該第1のレーザビームを複数の第2のレーザサブビームに分割するステップと、
前記第2のレーザサブビームを第2の回折光学素子(DOE)を通過させることにより、前記複数の第2のレーザサブビームを第3のレーザサブビームの2つ以上の群に分割するステップと、
前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子に対して第1の軸と平行な方向に前記ワークピースを動かすステップ、
前記ワークピースが前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子に対して前記第1の軸と平行な方向に動いている間に前記第3のレーザサブビームを用いて複数のスクライブ溝を形成することで、前記複数のスクライブ溝は前記第1の軸に沿って延びて形成される、ステップ、
前記第1の回折光学素子をその光学軸を中心として回転させることにより、前記群の、第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するステップと、
前記第2の回折光学素子をその光学軸を中心として回転させることにより、前記第3のレーザサブビームの各群内での、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するステップと、
前記第1の軸に対して垂直な方向における前記群の分離が非ゼロで、かつ、前記第1の軸に対して垂直な方向における各群内での前記第3のレーザサブビームの分離が非ゼロとなるように、前記第1の回折光学素子及び前記第2の回折光学素子の角度的配置を調節するステップ、を含む、方法。
【請求項13】
前記第3のレーザサブビームの群の、前記第1の軸に対して垂直の第1の方向における分離を調整するために、第1の回折光学素子の、その光学軸を中心とした回転が用いられ、
前記第3のレーザサブビームの各群における、前記第1の方向と同一の、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するために、前記第2の回折光学素子の、その光学軸を中心とした回転が用いられ、且つ、
任意で前記第3のレーザサブビームの2つ以上の群が、ワークピース上で前記第1の軸に対して平行な方向での直接レーザスクライビングを実行するのに用いられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ワークピース上への、前記第1の軸に対して平行な方向の直接のレーザスクライビングを実行するために、前記第3のレーザサブビームの2つ以上の群が用いられ、
前記群の中心間の、又は、前記群内の対応するサブビーム間の角度的又は空間的分離として、前記レーザビームの群間の前記分離が測定され得る、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
薄膜ソーラーパネルにおける相互接続部の作成に、前記第3のレーザサブビームの2つ以上の群が用いられ、
任意で1つの群における前記第3のレーザサブビームが、複数の平行なレーザスクライブを同一の相互接続部に形成するために用いられ、前記第3のレーザサブビームの隣接する群が、複数の平行なレーザスクライブを1以上の隣接する相互接続部に形成するために用いられる、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスクライビングプロセスを並行して実行できるようにレーザビームを幾つかのサブビームに分割するための方法及び装置に関する。本発明は、特に、薄膜ソーラーパネルのセル(太陽電池)を形成及び接続するための「1ステップ相互接続」(“one step interconnection”:OSI)プロセスに適している。なぜなら、このプロセスにおいて、異なる材料層を通る複数の平行なスクライブを作成する必要があるからである。
【背景技術】
【0002】
図1は、先行技術(特許文献1)を示しており、この技術は、回折光学素子(DOE)3により、レーザビーム1をいかにして(この場合は4つの)サブビーム2に角度方向に分割するかを示している。レンズ4がDOEから適切な距離に配置されている。これにより、全てのビーム2が互いに平行になるようにレンズは全てのビーム2を偏向させる。レンズ4はビーム2を集束し、基板6の面上に焦点スポット5のライン(a line of focal spots 5)を形成する。このようなスポットのラインを用いることにより、基板がレンズとDOEとの組合せに対して移動された場合に複数の平行な溝を基板に同時にスクライブできる。DOEによるビームのこのような角度的分割は、ディスプレイ、テレコミュニケーション、及び、材料処理の用途に広く用いられている。レンズを用いて、より平行に又は完全に平行になるように角度分割されたビームを偏向させることは公知の技術である。
【0003】
このような構成は、広範に、特には2次元光学スキャナと共に用いられ、この場合、入射ビームは検流計モータ駆動ミラー(ガルバノミラー)により広角度範囲にわたり2次元に偏向され、レンズはビームを集束及び偏向するために用いられる。このようなレンズは、一般に、f−シータレンズと称され、出力ビームが平行か又は平行に近い場合、レンズは、テレセントリックとみなされる。一般に、レンズ後の平行な出力ビームを達成するために要求される条件は、レンズの光学中心とガルバノスキャナミラーとの距離がレンズの焦点距離に等しいことである。入射ビームがコリメートされる場合、レンズを通過したビームはレンズの焦点面に集束されるであろう。同様に、DOE3がレンズの手前の焦点距離に配置される場合、レンズを通過したビームは平行になるであろう。レーザビーム1に平行な軸に対してDOE3を回転させると、基板面上の前記焦点スポットのラインを回転させることに留意されたい。この作用は、基板移動方向に対して垂直な方向において、基板面上の焦点スポットの、有効な分離を調整するために用いられ、これにより、基板上のスクライブライン間の間隙が容易に変更されることを可能にする。
【0004】
図2は、さらなる先行技術(特許文献2)を示し、この技術は、2つのDOEの使用を示している。第1の回折光学素子(DOE)3によりレーザビーム1は(この場合は3つの)サブビーム2に角度方向に分割される。DOE3は集束レンズ4の付近に配置され、従って、ビーム2は、基板6上の焦点スポット5のラインに集束される。レンズ4は、角度方向に分割するビーム2を偏向させるが、DOEがレンズ付近にあるため、ビーム2は分散し続ける。第2のDOE7が、レンズの焦点面5におけるビームのプロファイル又は形状を変えるために用いられている。DOE7が適切な位置にない場合、基板6上の焦点スポット5は、いわゆるガウス分布プロファイルを有する。DOE7を用いることにより、焦点スポットにおけるエネルギー密度分布を、幾つかのマイクロマシニングの用途に対してより有用な異なるプロファイル、例えば「トップハット」(“top-hat”)を有するように変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/004230号
【特許文献2】米国特許第7157661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1及び
図2の構成に関する問題は、スクライブラインの相対的分離を変更できる範囲が制限されることである。さらなる問題は、異なる特性を有する2つ以上のレーザスポットを溝ラインに沿って連続的にスキャニングすることにより溝を形成する2段階溝形成プロセスに関連して、これらの構成を効率的に使用することが困難なことである。
【0007】
本発明の目的は、上記の先行技術に関する問題の1以上に少なくとも部分的に対処する装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、2つ以上のレーザビームを各群が含む複数のレーザビーム群を形成するための装置が提供され、当該装置は第1の回折光学素子(DOE)及び第2の回折光学素子(DOE)を備え、前記第1のDOEが、第1のレーザビームを受けて当該第1のレーザビームを複数の第2のレーザサブビームに分割するように配置され、前記第2のDOEが、前記複数の第2のレーザサブビームを受けて当該第2のレーザサブビームの各々を第3のレーザサブビームの2つ以上の群に分割するように配置されている。前記群の、第1の軸に対して垂直の方向における分離が、前記第1のDOEをその光学軸を中心として回転させることにより調整可能であり、且つ、各群内での前記第3レーザサブビームの、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離が、前記第2のDOEをその光学軸を中心として回転させることにより調整可能である。
【0009】
従って、2つの回転可能なDOEを光学的に連続して設けることにより、これらのDOEの両方が、受けたレーザビームのいずれをも、角度方向に分離された複数のサブビームに分割するように構成される。この装置は、例えば、基板上のサブビームにより形成されるレーザスポットの相対的分離を、先行技術による同等に単純な構造の構成よりも高い融通性で制御することを可能にする。詳細には、本発明の装置は、各群におけるスポット間の分離がスポット群間の分離とは独立に制御されうるスポットの群を提供できる。さらに、各群におけるスポット間の分離が、各群のための第1DOEの同一の回転角度により決定されるという事実により、異なる群におけるスポットが確実に同一の間隔を有することが保証される。第1のDOE及び第2のDOEを回転させることによるスポット分離の制御は費用効率的に実行され、且つ、高レベルの精度での制御が容易である。
【0010】
前記レーザビーム群間の分離は、例えばビームをワークピース上に向けるために使用されるレンズの焦点における角度的分離又は空間的分離として測定されることができ、これらの分離は、前記群の中心間、又は、前記群内の対応するサブビーム間の(例えば、同一の回析次数を有する異なる群におけるサブビーム間の)分離である。これらの群は、第1の軸に沿って見たときに互いに重なっていても、重なっていなくてもよい。
【0011】
一実施形態において、本発明の装置は、前記複数の第3レーザビームの群を前記第2のDOEから受けるように配置されたレンズ、例えば、テレセントリックレンズを備える。一実施形態において、レンズから出力されるレーザサブビームの群、及び、各群内のレーザサブビームが実質的に平行となるよう、前記レンズの、その光学軸に沿った位置が調節可能であり、且つ/又は、調節される。
【0012】
一実施形態において、本発明の装置は、さらに、ビームコンバイナを備え、ビームコンバイナは、第4のレーザビームからのサブビームが前記第1のレーザビーム由来のサブビームに結合されることを可能にする(例えば、このように結合されたサブビームが、基板の同一領域上に、任意選択的には前記領域内の異なる位置にて投射される)。一実施形態において、第3のDOEが前記第4のレーザビームを受けるように設置及び配置され得る。一実施形態において、前記第4のレーザビームは、前記第1のレーザビームとは異なる少なくとも1つの特性(例えば、波長、パルス長、パルス繰り返し率、又は、パルスエネルギー)を有する。こうして、前記第4のレーザビームから発生されたスポットは、異なる作用を、前記基板に、及び、前記基板上に形成された材料層に対してもたらすことができる。例えば、特性の違いとは、前記基板上の少なくとも1つの層を、前記第1のレーザビーム及び第2のレーザビームの一方から発生したスポットにより除去できるが、他方のレーザビームから発生したスポットによっては除去できないというような違いである。この構成は、融通性を高め、従って、構造物をより広い範囲で基板上に好都合に作成することを可能にする。一実施形態において、前記第3DOEは、前記第4のレーザビームを複数の第5のレーザサブビームに分割するように構成され、前記第5のレーザサブビームの、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離は、前記第3DOEをその光学軸を中心として回転させることにより調整可能である。一実施形態において、前記ビームコンバイナは、前記第2のDOEを出た前記第3レーザサブビームの群を、前記第3DOEを出た前記第5のレーザサブビームに結合するように配置されている。
【0013】
一実施形態において、本発明の装置は、前記第3レーザサブビームの少なくとも1つが第1のスポットを基板上に形成し、当該第1のスポットが、前記第5のレーザサブビームの1つにより形成された第2のスポットに対し、前記第1の軸に平行な方向において実質的に位置合わせされているが当該第2のスポットから間隔を有するように構成されている。このようにして、前記第1のスポットは、前記基板が前記第1の軸に沿って移動されるときに、前記基板上の所与の位置にて前記第2のスポットより前に前記基板と相互作用させられることができる(前記第1のスポットと第2のスポットとが逆の場合も同様)。これは、前記第1のスポットが前記基板(又は当該基板上に形成された層)と、前記第2のスポットとは異なるように相互作用するように構成される場合に有用であろう。例えば、前記第1のスポットは、第1のタイプの層を除去するように構成されることができ、前記第2のスポットは、前記第1のタイプの層とは異なる第2のタイプの層を除去するように構成され得る。前記第1のタイプの層が前記第2のタイプの層より上に配置されている場合、前記第1のスポットは前記基板と、所与の位置にて前記第2のスポットより前に相互作用するよう配置されることが好都合であり、これにより前記第2のスポットが到達する前に前記第1のタイプの層が除去されて前記第2のタイプの層を露出させる。
【0014】
一実施形態において、本発明の装置は、前記第4のレーザビームの、前記第3DOEへの入射方向を制御するためのビーム偏向器をさらに備える。このビーム偏向器は、例えば、前記第1のスポットと前記第2のスポットとの間の分離を変更すること(位置の連続関数又は離散関数として)を可能にするように構成され得る。分離の偏向は、前記第1のスポットと前記第2のスポットとの、前記第1の軸に平行な方向に沿った位置合わせを維持しつつ達成され得る。従って、前記基板が前記第1の軸に沿って移動するように構成されている場合、前記第1のスポットが前記基板上の所与のポイントと相互作用する時間と、前記第2のスポットが当該ポイントと相互作用する時間との差を制御しながら変更できる。また、前記ビーム偏向器を用いれば、前記スポットが前記基板と相互作用する順番を変更することも可能である。例えば、前記ビーム偏向器を用いて、前記基板の両移動方向に関して前記第2のスポットを第1のスポットよりも遅らせることができ(この逆も可能)、これは、前記基板が方向を変えるときに第1のスポットと第2のスポットとの相対位置を切り替えることにより行われる。
【0015】
一実施形態において、前記ビーム偏向器は、前記第1の軸に対して垂直の面に延在する軸を中心として回転可能であるように取り付けられたミラーを含む。
【0016】
一実施形態において、前記第1のDOEにより生成されたサブビームの群の分離、及び/又は、前記サブビームの群により基板上に形成されたスポットの分離(例えば、コリメーション後の角度的分離及び/又は空間的分離)は、前記第2のDOEにより生成された前記第3レーザサブビームの分離、及び/又は、前記第3レーザサブビームにより基板上に形成されたスポットの分離よりも、大きい。別の実施形態において、前記第1のDOEにより生成されたサブビームの群の分離、及び/又は、前記サブビームの群により基板上に形成されたスポットの分離(例えば、コリメーション後の角度的分離及び/又は空間的分離)は、前記第2のDOEにより生成された前記第3レーザサブビームの分離、及び/又は、前記第3レーザサブビームにより基板上に形成されたスポットの分離よりも小さい。
【0017】
一実施形態において、前記第1のDOEは前記第2のDOEよりも入力ビームを幅狭に分割させる。例えば、前記第1のDOE及び前記第2のDOEが回折格子を含む場合、前記第1のDOEの周期性は第2のDOEの周期性よりも長くなり得る。従って、前記第1のDOEの所与の回転により生じる、レーザサブビームによりワークピース上に形成される特徴物(例えばスクライブライン)の位置の変化は、前記第2のDOEの同一回転により生じる変化よりも小さくなるであろう。従って、前記第1のDOEは、微細な調整を効率的に提供し、前記第2のDOEは、粗い調整を提供する。この構成により、前記第1のDOEと前記第2のDOEとの所与の間隔のための前記第2のDOEの最小寸法が低減され、これにより、これらの素子の取り付けを容易にし(例えば、前記第2のDOEの寸法を大きくし過ぎずに前記第1のDOEから出力される全てのビームを取り込むために、前記第1のDOEの非常に近くに前記第2のDOEを配置するという必要性を緩和することにより)、全寸法を小型化する。その他の実施形態において、前記第1のDOEが粗い調整を提供し、前記第2のDOEが微細な調整を提供するという逆の構成が用いられる。
【0018】
一実施形態において、前記第3レーザサブビームの群の1以上の各々における第3レーザサブビームに対応するワークピース上のレーザスポット間の分離は、少なくとも約50ミクロン〜200ミクロンの範囲で調整可能である。
【0019】
一実施形態において、前記第1のDOE及び前記第2のDOEが第1のプロセスヘッドに取り付けられている。一実施形態において、前記第1のプロセスヘッドがワークピースに対してプロセスを(例えば、当該ワークピースの直接のレーザスクライビングを)実行するために移動可能である。
【0020】
一実施形態において、2つ以上のプロセスヘッドが設けられる。一実施形態において、前記2つ以上のプロセスヘッドの各々が、一実施形態に従う第1のDOE及び第2のDOEを運ぶように構成されている。一実施形態において、前記2つ以上のプロセスヘッドの各々が、ワークピースに対して移動可能であり、且つ、前記ワークピースの直接のレーザスクライビングを任意選択的に独立に実行するように構成されている。
【0021】
一実施形態において、本発明の装置は第1のレーザ源を備え、このレーザ源は、前記第1のレーザビームを前記プロセスヘッドに、及び/又は、設けられていれば複数のプロセスヘッドの2つ以上に提供するように構成されている。
【0022】
一実施形態において、本発明の装置は第2のレーザ源を備え、このレーザ源は、前記第4のレーザビームを前記プロセスヘッドに、及び/又は、設けられていれば複数のプロセスヘッドの2つ以上に提供するように構成されている。
【0023】
一実施形態において、本発明の装置は、薄膜ソーラーパネルのレーザスクライビングを、例えば、当該パネルの部分間の相互接続を形成するために実行するように構成されている。
【0024】
さらなる態様によれば、2つ以上のレーザビームを各群が含む複数のレーザビーム群を形成するための方法が提供される。この方法は、第1のレーザビームが第1の回折光学素子(DOE)を通過させることにより、当該第1のレーザビームを複数の第2のレーザサブビームに分割するステップと、前記第2のレーザサブビームが第2の回折光学素子(DOE)を通過させることにより、これらのレーザサブビームの各々を第3のレーザサブビームの2つ以上の群に分割するステップと、前記第1のDOEをその光学軸を中心として回転させることにより、前記群の、第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するステップと、前記第2のDOEをその光学軸を中心として回転させることにより、前記第3レーザサブビームの各群内での、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するステップと、を含む。
【0025】
一実施形態において、前記第3のレーザサブビームの群の、前記第1の軸に対して垂直の第1の方向における分離を調整するために、第1のDOEの、その光学軸を中心とした回転が用いられ、且つ、前記第3レーザサブビームの各群における、前記第1の方向と同一の、前記第1の軸に対して垂直の方向における分離を調整するために、前記第2のDOEの、その光学軸を中心とした回転が用いられる。従って、前記第3のレーザサブビームにより形成されるスポットとワークピースとの間の相対移動を、前記ワークピース上にレーザスクライブラインを直接形成するために用いることができる。この相対移動が前記第1の軸に平行な方向に沿っているならば、前記スクライブライン間の分離を、先に記載したように、前記第1のDOE及び/又は第2のDOEの回転により調整することができる。
【0026】
一実施形態において、前記第3レーザサブビームの2つ以上の群が、薄膜ソーラーパネルの作製、例えば、相互接続を形成するために用いられる。一実施形態において、前記第3レーザサブビームの群が、複数の平行なレーザスクライブを同一の相互接続部に形成するために用いられ、第3のレーザサブビームの隣接する群が、複数の平行なレーザスクライブを1以上の隣接する相互接続部に形成するために用いられる。
【0027】
ここで、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ、単に例として記載する。図面において、対応する参照符号は対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】レーザビームを分割するための、単一のDOEを使用する先行技術の構成を示す。
【
図2】レーザビームを分割するための第1のDOE、及び、第1のDOEから出力されたビームの形状を変えるための第2のDOEを使用する先行技術の構成を示す。
【
図3】個々に回転可能な第1及び第2のDOEと、2つのDOEからの出力をコリメートするためのレンズとを備えた、複数のレーザビーム群を形成するための装置を示す。
【
図4】
図3の装置から出力されるスポットの構成例を示す。
【
図5】
図3の装置を用いて処理する例を示すための薄膜ソーラーパネルの断面図である。
【
図6】
図5と類似の構成であるが、異なるパワーを有するサブビームを含んで処理する例を示す。
【
図7】
図4のスポット構成に対応する薄膜ソーラーパネルの上面図であり、DOEの一方又は両方の回転によりスクライブライン間の間隔をどのように変更できるかを示す。
【
図8】異なる特性を有する2つのレーザビームを別々のDOEによりサブビームに分割し、次いで結合する構成を示す。
【
図9】薄膜ソーラーパネルの上面図であり、異なるレーザ源から発生しているスポットをどのようにOSI用に用い得るかを示す。
【
図10】
図9の構成に対応する2段階溝形成プロセスを示すための薄膜ソーラーパネルの断面図である。
【
図11】ソーラーパネルの断面を上から見た図であり、
図9及び
図10に示したような単一方向の2段階溝形成プロセスをどのように展開して双方向に動作できるかを示す。
【
図12】
図11に示したプロセスを実行するための追加のサブビームを生成するための方法の例を示す。
【
図13】パネルを処理するために異なるレーザビームがパネルの対向する側から用いられる光学構成を示す。
【
図14】異なるサブビームの群の中心が互いに重なっている構成を示す。
【
図15】異なるサブビームの群の中心が互いに重なっていない構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[
図3]
図3は、一実施形態による、レーザビームの複数の群を形成するための装置を示す。この実施形態において、第1のDOE3が、第1のレーザビーム1を複数の第2のレーザサブビームに分割するために設けられており、第2のDOE8が第1のDOE3の付近に、第2のレーザサブビームの各々を複数の第3のサブビームに分割するために設けられている。レンズ4が、DOE3及びDOE8から適切な距離に配置されている。これにより、レンズ4を通過した全てのビームが平行か又は平行に近い状態になるような、尚且つ、これらのビームの全てが集束されて、焦点スポットの群の列を基板面6上に形成する。この特定の実施形態において、スポット群間の分離は、各群内のスポット間の分離よりも大きい。図は、3つの群2,2’及び2”を示し、これらの各々が3つの焦点スポット9,9’及び9”を有する。しかし実際、より多数又はより少数(例えば4つ又は2つ)の群が存在してもよい。図示されている実施形態において、各群内に3つのスポットが存在し、これは、例えばOSIの要求条件のために好都合であろう。しかし、実際、スポットの個数がより多数又はより少数(例えば4つ又は2つ)であってもよい。
【0030】
[
図4]
図4は、
図3に示したような装置により形成されるスポットの群の構成例を示す。この構成は、例えば、薄膜ソーラーパネルのセルを形成及び相互接続するためのOSI用に用いられ得る。薄膜ソーラーパネル10は複数の平行なセル11に分割され、これらのセル11は直列に電気的に相互接続されている。3つの相互接続部の一部を含むパネル上のエリア12が図面右側に拡大表示されて、焦点スポットの3つの群2,2’及び2”を示しており、各群が3つの焦点スポット9,9’及び9”を含んでいる。パネルをX方向に移動させることにより、ビームの各群が溝13,13’及び13”をパネル上の薄膜層にスクライブしてセル14及び14’を形成する。
【0031】
[
図5]
図5は、薄膜ソーラーパネルの断面図である。基板15(通常、ガラスからつくられる)が、薄い材料層、すなわち、底部接触層16、半導体層17及び上部接触層18によりコーティングされている。例えば
図3に示した光学構成を含む光学ヘッドにより生成された、3つのレーザビーム19,19’及び19”から各々が成る3つのレーザビーム群が基板の上面上に集束されている。光学ヘッドを基板に対して動かすことにより、各ビームが層の1以上を除去して基板面に溝をスクライブする。また、光学ヘッドを基板の下に配置し、ビームの群20,20’及び20”が透明な基板を通過するようにして薄膜材料を下から除去することもできる。図示されている例の場合、各ビーム群内及び全てのビーム群内の全てのレーザビームが同一の焦点スポット寸法及びパワーを有し、従って、図示されているように、全てのビームが材料を同一深さまで除去する。上部の2層のみを除去して底部接触層は無傷のまま残すような構成が、OSIプロセス実行のための1つの好ましい方法として適切である。
【0032】
シリコン又はCdTe(テルル化カドミウム)材料をベースとし、底部接触層が透明な誘電材料(例えば、ITO(スズドープ酸化インジウム)、ZnO(酸化亜鉛)、又はFTO(フッ素ドープ酸化スズ)である薄膜パネルに対して、
図5に示したスクライブ作業を実行するのに適したレーザは、基本波長が1064nm、又は、第2高調波波長が532nmで動作するパルスNd:Yag、又はNd:バナジウム酸塩DPSSレーザである。これらのレーザは、一般的に基板の下から使用されるが、基板の上側からの作業も可能である。CIGS(銅、インジウム、ガリウム、セレン)材料をベースとし、底部接触層が実質的に不透明で上部接触層が透明な薄膜パネルに対して、
図5に示したスクライブ作業を実行するために、ビームは、一般に、基板の上側から照射され、この場合、1064nm又は1550nmで動作するIR(赤外)レーザが適切である。
【0033】
[
図6]
図6は、ビームの群19,19’及び19”が、基板15の上部のコーティング側に集束され、且つ/又は、その他のビームの群20,20’及び20”が下側から基板を通過し、次いでコーティング層上に集束されるという点で、
図5に示した構成と類似する構成を示す。しかし、
図6の場合、上側の各ビーム群のビームの1つであるビーム21のパワーがその他のビーム22,22’よりも高く、且つ/又は、底側の各ビーム群のビームの1つであるビーム23がその他のビーム24,24’よりも高いように配置されており、従って、図示されているようにより強力なビームにより形成される溝は、より低力のビームにより形成される溝よりも深い。一実施形態において、この構成は、各ビーム群における2つのビームが上側の2層を除去して底部接触層は無傷のまま残し、そして、第3のより強力なビームが3層全てを除去して基板を露出させるように設定される。このような実施形態は、OSIプロセスを実行するための別の好ましい方法に適している。
【0034】
第2のDOE8は、第1のビームからのパワーを非対称に分割することにより、異なるパワーを有するスポットを各群内に形成するように構成され得る。これを達成するDOEは公知であり、容易に入手可能である。
【0035】
[
図7]
図7は、
図4に示した光学的構成に対応するソーラーパネルの上面図であり、ビームにより形成されたスクライブライン間の特定の方向における間隔を、DOEの一方又は両方の回転によりどのように変更できるかを示す。
図7のAは、ビームの3つの群2,2’及び2”を示す。各群は、3つのサブビーム9,9’及び9”を含み、全てのビームが、X軸に沿って移動される基板の面上に集束されており、これにより、X軸に対して平行な複数の溝の線を形成する。
図7のBは、第1のDOEがその軸を中心として(この場合、約45度)回転され、且つ、第2のDOEが
図7のAと比較して回転されていない場合を示す。この場合、基板面上のビームの群のパターンが同一角度回転し、これにより、基板面上のビームの群間の分離、すなわち、X軸に対して垂直のY方向におけるΔYが低減され、形成された溝の群間の分離もまた低減する。各群内のビーム間のY方向における分離は変更されないままである。
図7のCは、第2のDOEがその軸を中心として(この場合、約45度)回転され、且つ第1のDOEが
図7のAと比較して回転されていない場合を示す。この場合、基板面上のビームのグループの分離ΔYは不変のままであるが、各群内のビーム間のY方向における分離は低減される。両方のDOEを独立に回転(最大90度まで)させることにより、各群内の溝の分離、及び、群間のY方向における分離を、任意の値に(最小ゼロまでも)低減することができ、それにより、パネル上の要求されるセル幅と相互接続幅とを合致させることができる。
【0036】
[
図8]
図8は、異なる特性を有する2つのレーザビームが各々サブビームに分割され、次いで、これらのサブビームが基板の面上で結合される実施形態を示す。これは、例えばOSIプロセスにより要求されるような、異なる深さを有する溝を、より容易に形成する。第1のDOE3が第1のレーザビーム1を複数の第2のレーザサブビームに分割する。そして、第1のDOE3の付近に配置された第2のDOE8が第2のレーザサブビームを複数の第3のサブビームに分割する。レンズ4を通過した全てのビームが平行か又は平行に近い状態であるように、且つ、これらのビームの全てが集束されて焦点スポットの群の列を基板面6上に形成するように、レンズ4が配置されている。この特定の実施形態において、スポット群間の分離は、各群内のスポット間の分離よりも大きい。図は、各々が3つの焦点スポット9,9,及び9”を有する3つの群2,2’及び2”を示しているが、実際、より多数又はより少数(例えば、4つ又は2つ)の群が存在してもよい。図示されている実施形態において、各群内に3つのスポットが存在し、これは、例えばOSIの要求条件に好都合であろう。しかし、その他の実施形態において、スポットの個数が、より多数又はより少数(例えば、4つ又は2つ)であってもよい。第3のDOE25が第4のレーザビーム26を複数の第5のレーザサブビーム27,27’,27”に分割する。例えば幾つかのOSI用に好都合な一実施形態において、第5のレーザサブビームの個数は、第1のDOEにより生成される第2のレーザサブビームの個数(例えば、図示されているように3つ)と同一であるが、第5のレーザサブビームの個数がその他の個数であってもよい。第5のレーザサブビーム27,27’,27”は、ビームコンバイナ光学素子40により、レンズ4を通過して基板面6上で集束するように偏向される。一実施形態において、DOE25は、第5のレーザサブビームの焦点スポット28,28’,28”間の間隔が、第1のDOE3の回転により画成されるサブビーム焦点スポットの群間の間隔に近いがそれよりもわずかに大きいように設計される。DOE25の、DOE25の光学軸を中心とした回転が、第5のサブビーム焦点スポット28,28’,28”間の間隔と、第1のDOE3により画成されるサブビーム焦点スポット群2,2’,2”の間の、基板運動方向に対して垂直の方向における間隔とが正確に同一にされることを可能にする。一実施形態において、ビームコンバイナ光学素子40の空間的及び/又は角度的調節が行われる。この調節は、第5のサブビーム焦点スポットが基板面上に、第3サブビームの各群により形成された溝の1つに正確に重なるように配置されるように行われ、これにより、追加のレーザアブレーション作業がこれらの溝上で実行されることが可能になる。
【0037】
一実施形態において、第4のレーザビーム26と第1のレーザビーム1とは、以下のパラメータ、すなわち、波長、パルス長、パルス繰り返し率、又は、パルスエネルギーのうちの1以上が異なる。一実施形態(例えば、OSI用に適し得る)において、ビームの以下の組合せの1つが用いられる。すなわち、
1)第1のレーザビーム1が532nm又は527nmの可視領域で動作し、一方、第4のレーザビーム26は、1030nm又は1064nmのIR領域で動作する異なる波長を有する、
2)第1のレーザビーム1及び第4のレーザビーム26はともに、可視波長又はIR波長のいずれかの同じ波長で動作するが、第1のレーザビーム1は、第1のパルス持続時間、第1の繰り返し率、及び、第1のパルスエネルギーを有し、これらの少なくとも1つが、第4のレーザビーム26の第2のパルス持続時間、第2の繰り返し率、及び、第2のパルスエネルギーとは異なる、
3)第1のレーザビーム1は約1550nmのIR領域で動作し、一方、第4のレーザビーム26は、これとは異なる1030nm又は1064nmのIR領域で動作する。
【0038】
第1のレーザビーム1と第4のレーザビーム26とが異なる波長を有する場合、ビームコンバイナ光学素子40は、例えば、第1のレーザビーム1(又は第1のレーザビーム1由来のサブビーム)を完全に伝達し、且つ、第4のレーザビーム26(又は第4のレーザビーム26由来のサブビーム)を完全に反射するように構成されたダイクロイックミラータイプの素子であり得る。このようなダイクロイックビームコンバイナは公知であり、可視レーザビームとIRレーザビームとを結合するために一般的に使用されている。
【0039】
第1のレーザビーム1と第4のレーザビーム26とが同一の又は類似の波長を有する場合、ビームコンバイナ光学素子40は、例えば、偏光ミラータイプの素子であり得る。このような実施形態において、第1のレーザビーム1(又は第1のレーザビーム1由来のサブビーム)の、コンバイナ40の表面における偏光は、第1のレーザビーム1(又は第1のレーザビーム1由来のサブビーム)が完全に伝達されるようにp偏光であるように構成されることができ、また、第2のレーザビーム26(又は第2のレーザビーム26由来のサブビーム)の、ビームコンバイナ40の表面における偏光は、第2のレーザビーム26が完全に反射されるようにs偏光されるように構成され得る。このような偏光感受性ビームコンバイナは公知であり、同一波長を有する直交偏光されたレーザビームを結合するために一般的に使用されている。
【0040】
第1のレーザビーム(又は第1のレーザビーム由来のサブビーム)と第4のレーザビーム(又は第4のレーザビーム由来のサブビーム)とが異なる波長を有する場合、両方のビームが同一のレンズにより集束されるため、両方のビームが基板面上に集束することを保証するためには、ビームの一方又は両方のコリメーションに関する制御が必要であろう。
【0041】
[
図9]
図9は、薄膜ソーラーパネル10の上面図であり、セルの形成及び相互接続のためのOSI用に用いられ得るような、第1のレーザビーム及び第4のレーザビームから発生したスポットの群の1つの構成を示す。薄膜ソーラーパネル10は複数の平行なセル11に分割され、これらのセル11は直列に電気的に相互接続されている。パネル上のエリア12が図面右側に拡大表示されて、第1のレーザビームにより生成された焦点スポット9,9’及び9”の1つの群を示している。パネルをX方向に移動させることにより、ビームが溝13,13’及び13”をパネル上の薄膜層にスクライブしてセル14とセル14’との間に相互接続構造の基盤を形成する。3つの焦点スポットの全てにおけるレーザパワーが同一であるならば、3つの溝の全てが同一深さまで形成される。典型的なOSIプロセスにおいて、これは、
図5に示されているように、上側の2層が除去され、下側の電極層が無傷のまま残されることを意味するであろう。この実施形態において、
図8に示されているように、第4のレーザビーム26はサブビームに分割されるよう形成され、第1のレーザビームからのサブビームと結合される。第4のレーザビームから生成されたサブビームは、焦点スポットが、第1のレーザビームにより形成された各群における焦点スポットの1つに近くなるように、そして、そのビームにより形成されるスクライブと一致するように位置調整される。図は、第4のレーザビーム26からの1つのサブビームにより形成された焦点スポット29が、第1のレーザビーム1からのサブビームにより形成されたレーザ焦点スポット9により形成されたスクライブ13内に配置されている様子を示している。一実施形態において、焦点スポット29を形成するレーザビームのパワーが調整され、この調整は、パネルがX方向に移動されるときにレーザビームがスクライブ13内で下側電極層を除去して、基板まで貫通するスクライブ30を形成するように行われる。図示されているように、焦点スポット29は、スクライブ30がスクライブ13よりも幅狭であるように焦点スポット9よりも小さく構成され得る。この構成が、セルの相互接続構造の良好な電気的性能の維持に関して好ましいことがわかった。パネル面上のスポット9とスポット29との距離は任意の値であってよいが、実際、両方のビームが同一の光学ヘッドから発生し、且つ共通の光学素子を使用するため、好ましい距離は、数分の1mm〜数mmの範囲である。
【0042】
[
図10]
図10は、薄膜ソーラーパネルの断面図であり、
図9に示した光学的構成に対応する2段階の溝形成プロセスを示す。基板15(例えば、ガラスからつくられる)が、薄い材料層、すなわち、底部接触層16、半導体層17、及び、上部接触層18によりコーティングされている。
図10のAにおいて、
図8に示した、パネルの下に配置された光学構成を含む光学ヘッドが、第1のレーザビームから発生して下側から基板を通って層上に集束されたレーザビームの3つの群20,20’及び20”を形成している。光学ヘッドを基板に対して動かすことにより、各ビームが上側の2層を除去して溝31,31’,31”をスクライブする。
図10のBは、溝形成プロセスの第2段階を示し、第2段階において、第4のレーザビームから発生したさらなるビーム32,32’,32”が、各群における溝(すなわち、第1段階で下側電極層を除去してスクライブ33,33’及び33”を形成し、基板まで貫通するように形成された溝)の1つの上に重畳される。図は、パネルを下側から通過する溝形成段階の両方のためのビームを示し、これは、薄膜シリコン又はCdTeを基材としたソーラーパネルに特に好ましい構成である。しかし実際、その他のビームデリバリ構成、例えば、全てのビームを上側から照射する、第1のレーザビームからのサブビームを下側から照射して第4のレーザビームからのサブビームを上側から照射する、或いは、第1のレーザビームからのサブビームを上側から照射して第4のレーザビームからのサブビームを下側から照射するという構成も全て可能である。
【0043】
[
図11]
図11は、ソーラーパネルの断面を上から見た図であり、
図9及び
図10に示した単一方向の2段階溝形成プロセスをどのように展開して基板をレーザプロセスヘッドに対して双方向移動で動作できるかを示す。これは、第4のレーザビームからの追加のサブビームを提供することにより、又は、既存のサブビームを変位することにより(若しくは、サブビームの組、任意選択的には、第4のレーザビーム由来のサブビームの各々のための1つの追加又は変位されたサブビームにより)達成されることができる。図は、第1のレーザビーム由来のサブビームの群から形成された3つの焦点スポット9,9’,9”を示しており、これらは、基板を光学ヘッドに対して双方向のいずれかに移動するときに2段階溝形成プロセスの第1段階を形成することができる。第4のレーザビーム由来の焦点スポット29は、パネルをX方向の一方に(この場合、図面の下方向に向って)移動するだけで、溝形成プロセスの第2段階を完了できる。なぜなら、レーザビーム形成スポット29は、レーザビーム形成焦点スポット9に必ず追従することになるからである。第4のレーザビームからのさらなるサブビームの追加(又は、サブビームの変位)により、焦点スポット34を、焦点スポット29に対して焦点スポット9の反対側に形成することは、2方向動作を可能にする。パネルが一方のX方向に移動されると、焦点スポット9及び焦点スポット29が2段階溝を形成する。パネルが反対のX方向に移動されると、焦点スポット9及び焦点スポット34が2段階溝を形成する。
【0044】
[
図12]
図12は、必要とされる2つのサブビームを第2のレーザから生成して双方向プロセスを可能にするための1つの方法を示す。
図8に示したように、第1のDOE3及び第2のDOE8が第1のレーザビーム1を複数の第3のレーザサブビーム群に分割し、これらのサブビーム群がレンズ4により基板上に集束されて焦点スポットの群9,9’,9”を形成し、第3のDOE25が第4のレーザビーム26を複数の第5のレーザサブビームに分割し、これらのサブビームがビームコンバイナ40により結合され、尚且つ第1のレーザビーム1からのサブビームがレンズ4を通過して第3のサブビームの幾らかと基板面上で重なる。ビーム偏向器35、例えば、ミラー35が取り付けられており、ミラー35は、X軸に対して垂直の面に延在するアクスル(軸)36に対して平行な面を有し、且つ、ミラー35の、そのアクスルを中心とした回転が、第4のレーザビームから生成されたサブビームを、基板面上でX方向に平行な方向に移動させるように向けられている。ミラー35を適切に回転させることにより、
図11に示されているように、第4のレーザビームから形成された焦点スポットが、第1のレーザビームからのサブビームにより生成されたスポットの一方の側から他方の側に移動される。一実施形態において、このような回転は、光学素子ヘッドがパネルを通過するごとに、その終了時に生じ、こうして、双方向における2段階溝形成を可能にする。第4のレーザビームからのサブビームを必要な量だけ偏向させるために、ミラー35をわずかな角度回転させるだけでよい。焦点距離が100mmのレンズ4に関し、第4のレーザビームからのサブビームの偏向を、第1のレーザビームからのサブビームに対して+/−1mmにするために必要なミラーの角度運動は+/−5mradだけである。ミラー35の角度偏向が、第4のレーザビーム26からのサブビームの、第3のDOE25の開口部、ビームコンバイナ40、及びレンズ4上での運動を生じさせるが、ミラー35が第3のDOE25付近に取り付けられている限りにおいて、この運動は小さく、無視し得る。第4のレーザビームからのサブビームの焦点スポットの、第1のレーザビームからのサブビームスポットに対する類似の運動は、ビームコンバイナ40をその面に平行で且つXに対して垂直の軸を中心として回転させることにより達成され得るが、実際には、この部品の運動及び制御は、独立の部品、例えば、ミラー35の運動及び制御と比較して、より困難である。
【0045】
[
図13]
図13は、第1のレーザビームと第2のレーザビームとが互いに反対の側からパネルに向けられる光学構成を示す。このような構成は、薄膜ソーラーパネルの製造に使用される幾つかの材料に適している。第1のレーザビーム1が、第1のDOE3及び第2のDOE8により複数のサブビーム群に分割され、これらのサブビーム群は、第1のレンズ4により、一方の側からソーラーパネル6上の薄膜コーティング上に集束される。第2のレーザビーム26が第3のDOE25によりサブビームに分割され、これらのサブビームは、第2のレンズ37により、反対側からパネル上のコーティング上に集束される。ミラー35を軸36を中心として回転させることにより、第2のレーザ焦点スポットが第1のレーザ焦点スポットに対して偏向される。ソーラーパネルの作製に使用される材料に応じて、基板のコーティング側を、第1のレーザビーム又は第2のレーザビームに向けることができる。
【0046】
[
図14及び
図15]
図14及び
図15は、様々なサブビーム群間の分離をどのように測定し得るかを示す。
図14及び
図15は、共に、入力レーザビーム1が第1のDOE3によりどのように受けられるかを示す。第1のDOE3はビームを3つの第2のレーザサブビーム50,52及び54に分割する。次いで、第2のレーザサブビーム50,52及び54は、第1のDOE3の後ろに配置された第2のDOE8に入射する。第2のDOE8は、第2のサブビーム50,52及び54の各々を第3のサブビームの群に分割する。第2のサブビーム50由来の第3のサブビームの群に、符号50’,50”及び50’’’が付してある。第2のサブビーム52由来の第3のサブビームの群に符号52’,52”及び52’’’が付してある。第2のサブビーム54由来の第3のサブビームの群に符号54’,54”及び54’’’が付してある。
図3に関して先に説明したように、さらなる素子、例えばレンズ4(
図3に示したが
図14及び
図15には示していない)を第2のDOE8の下流に設けることが可能であり、それにより、第3のサブビームをワークピース上に向けさせ、及び/又は、第3のサブビームをその他のレーザビームと結合させ、及び/又は、その他、必要に応じて第3のサブビームの特性を変更し得る。
【0047】
第3のサブビームの異なる群の中心線間の所定の方向(
図14及び
図15に示されている実施形態のページの面内で水平)における分離を様々な方法で測定できる。1つの方法は、第2のDOE8からの所与の距離にて、サブビームの各群における中心点間の、分離方向に沿った距離(矢印58により示されている)を測定することであろう。或いは、異なる群における対応するサブビーム間の距離を測定してもよい。対応するサブビームは、同一の回析次数(例えば、0次、1次、2次など)であり得る。このような測定の例が、矢印56(及び矢印58、同時に中央サブビームが群の中心点に沿って延在する)により示されている。或いは、分離は、異なる群からのサブビームの角度分布の中心点間の角度差、又は、異なる群における対応するサブビーム間の角度差を比較することにより測定され得る。
【0048】
一実施形態において、第1のDOE3が粗い調整を提供するように構成され、第2のDOE8が微細な調整を提供するように構成される。このような実施形態において、第1のDOE3は、入力レーザビームを第2のDOE8よりも幅広に分割させる回折素子となる。この結果、第1のDOE3の所与の回転により生じる第3のサブビームの群の分離における変化は、第2のDOE8の同一の回転により生じる各群の個々の第3のサブビーム間の分離における変化よりも大きくなる。
【0049】
別の実施形態において、第1のDOE3が微細調整を提供するように構成され、第2のDOE8が粗い調整を提供するように構成される。このような実施形態において、第1のDOE3は、入力レーザビームを第2のDOE8よりも幅狭に分割させる回折素子となる。この結果、第1のDOE3の所与の回転により生じる第3のサブビームの群の分離における変化は、第2のDOE8の同一の回転により生じる各群の個々の第3のサブビーム間の分離における変化よりも小さくなる。実際、全てのレーザビームが、直径が数mm〜多数mmの範囲の有限寸法を有し、また、機械的取り付け条件により、第1のDOE3と第2のDOE8との間の、ビーム路に沿った距離は、1mmの数10倍であり得る。これは、第2のDOE8におけるビームパターンの全寸が、ビームが第1のDOE3により幅広に分割される場合に相対的に大きくなり得、これにより、第2のDOE8に要求される最小寸法(例えば直径)が増大することを意味する。第1のDOE3が第2のDOE8よりも微細な調整をするように構成する場合、第2のDOE8におけるビームパターンの全寸が減少し、これは、より小さい直径を有する第2のDOE8の使用を可能にし、また、
図8に示されているような、より小さい直径を有するビームスプリッタの使用も可能にする。これにより、これらの部品の取り付けがより簡単になる。
【0050】
DOE3及びDOE8の光学軸に対して垂直の(例えば、
図14及び
図15に示されている向きのページに対して垂直の)所与の軸に沿って見た場合、第3のサブビームの群が互いに重なっていても、又は、重なっていなくてもよく、これは、概してDOE3とDOE8との相対回転位置によるものである。
図14は、ビーム群の中心線が重なっていない状態の例を示す。
図15は、ビーム群の中心の線が重なっている状態の例を示す。
【0051】
反対に、特に言及されていなければ、本明細書において、有限の水平方向の拡がり又はビーム幅を常に有するビーム又はサブビーム間の分離について述べている場合、これは、これらのビーム又はサブビームの中心線間の分離に関して述べているものと理解されよう。
【符号の説明】
【0052】
1 第1のレーザビーム、2 サブビーム、3 第1の回析光学素子、4 レンズ、5 焦点スポット、6 基板、8 第2の回析光学素子、9,9’,9” 焦点スポット、10 薄膜ソーラーパネル、11 セル、13,13’ 13” 溝、14,14’ セル、15 基板、16 底部接触層、17 半導体層、18 上部接触層、19,19’,19” レーザビーム、20,20’,20” ビームの群、21,22,23,24 ビーム、25 第3のDOE、26 第4のレーザビーム、27,27’,27” 第5のレーザサブビーム、28,28’,28”第5のレーザサブビームの焦点スポット、29 焦点スポット、31,31’,31” 溝、32,32’,32” ビーム、33,33’,33” スクライブ、34 焦点スポット、35 ミラー、36 ミラーの軸、37 第2のレンズ、40 ビームコンバイナ光学素子、50 第2のレーザサブビーム、50’,50”,50’’’ 第3のサブビーム群、52 第2のレーザサブビーム、52’,52”,52’’’ 第3のサブビーム群、54 第2のレーザサブビーム、54’,54”,54’’’ 第3のサブビーム群、56 ビーム群間の分離距離、58 ビーム群間の分離距離。