(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記装着判定部は、前記オフ電圧信号と前記オン電圧信号共に装着判定条件を満足しているかに応じて第1カウント数又は第2カウント数を変化させ、前記第1カウント数、前記第2カウント数のいずれが所定値に達したかに応じて装着/未装着判定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脈波センサ。
前記装着判定部は、前記オフ電圧信号と前記オン電圧信号の少なくともいずれかが装着判定条件を満足していない場合はカウント数を変化させ、そうでない場合は前記カウント数をリセットしつつ装着判定を行い、前記カウント数が所定値に達すると未装着判定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脈波センサ。
前記装着判定部は、所定の判定期間に亘って複数回モニタリングされた前記オフ電圧信号についてそれぞれ前記第1閾値電圧との比較処理を行い、全ての比較結果に基づいて前記装着判定を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の脈波センサ。
前記装着判定部は、汎用入出力ポート又はシリアル通信ポートを介して、前記装着判定の結果を出力することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の脈波センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被験者の脈拍数などを正しく取得するためには、脈波センサを被験者の腕や指などに正しく装着する必要がある。しかし、従来の脈波センサは、これが生体に装着されているか否かを判定せずに計測を行い、その結果をパラメータ値として出力していた。
【0006】
そのため、例えば、生体に装着する前に電源が投入された脈波センサは、無意味なパラメータ値を出力してしまう不自然な動作状態に陥る場合があった。また、例えば、生体への装着が不完全な脈波センサは、誤ったパラメータ値を出力してしまう不都合な動作状態に陥る場合があった。
【0007】
なお、脈波センサの装着判定手法としては、例えば、脈波の振幅強度を検出する手法が考えられる。この手法では、所定の発光強度で発光部を発光させて脈波信号の振幅(=最大信号値と最小信号値との差)を直接読み取り、読み取った振幅が所定の閾値を超えているか否かにより、生体への装着/未装着を判定する。
【0008】
しかしながら、安静時における脈波の周期が1Hzであるとした場合、脈波信号の振幅を直接読み取るためには、最低でも1秒程度の時間を要し、通常は2〜3秒程度の時間を要する。また、装着判定の精度を高めるべく、上記の振幅読み取りをn回(ただし、n≧2)に亘って繰り返すことも考えられる。この場合には、装着判定に要する時間が上記のn倍(=2n〜3n秒)になる(通常10秒前後)。
【0009】
また、例えば、脈波センサを生体に装着せずに放置した状態で周囲光が変化しないような状況では、脈波信号は基準電圧で固定され、周囲光が変化する状況では振幅変化が生じる。また、生体に未装着で脈波センサが動かされる場合(手に持って歩くなど)、やはり振幅変化が生じる。従って、脈波信号の振幅に基づく未装着判定は困難となる。
【0010】
一方、生体と脈波センサとの装着を判定するための装着センサ(近接センサなど)を別途追加することも考えられる。しかしながら、この場合には、装着センサの追加に伴い、制御の複雑化、部品点数の増加、コストの上昇、ないしは、サイズの大型化が招かれる。
【0011】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、生体への装着/未装着を迅速かつ正確に判定することのできる脈波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る脈波センサは、発光部から生体に光を照射して前記生体からの反射光または透過光を受光部で検出することにより受光強度に応じた電流信号を生成する光センサ部と、
前記発光部を所定のフレーム周波数及びデューティで点消灯させるパルス駆動部と、
前記電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、
前記発光部の消灯期間に前記トランスインピーダンスアンプで得られるオフ電圧信号と所定の第1閾値電圧とを比較することにより装着判定を行う装着判定部と、を有する構成としている(第1の構成)。
【0013】
また、上記第1の構成において、前記第1閾値電圧は、前記トランスインピーダンスアンプの基準電圧よりも低い電圧値に設定されていることとしてもよい(第2の構成)。
【0014】
また、上記第1又は第2の構成において、前記装着判定部は、前記発光部の点灯期間に前記トランスインピーダンスアンプで得られるオン電圧信号を、所定の第2閾値電圧及び前記第2閾値電圧よりも低い所定の第3閾値電圧と比較することにより装着判定を行うこととしてもよい(第3の構成)。
【0015】
また、上記第3の構成において、前記パルス駆動部に前記発光部を点消灯させて得られる前記オン電圧信号に基づく電圧値と所定の調整用閾値電圧との比較により、前記発光部の輝度を調整する輝度調整制御部を更に備え、
前記第2閾値電圧は前記調整用閾値電圧よりも高く、前記第3閾値電圧は前記調整用閾値電圧よりも低いこととしてもよい(第4の構成)。
【0016】
また、上記第3又は第4の構成において、前記装着判定部は、前記オフ電圧信号と前記オン電圧信号共に装着判定条件を満足しているかに応じて第1カウント数又は第2カウント数を変化させ、前記第1カウント数、前記第2カウント数のいずれが所定値に達したかに応じて装着/未装着判定を行うこととしてもよい(第5の構成)。
【0017】
また、上記第3又は第4の構成において、前記装着判定部は、前記オフ電圧信号と前記オン電圧信号の少なくともいずれかが装着判定条件を満足していない場合はカウント数を変化させ、そうでない場合は前記カウント数をリセットしつつ装着判定を行い、前記カウント数が所定値に達すると未装着判定を行うこととしてもよい(第6の構成)。
【0018】
また、上記第1〜第6のいずれかの構成において、前記トランスインピーダンスアンプの出力信号に基づいて包絡線を抽出する処理を行うことにより脈波信号を出力する信号出力部を更に備え、
前記装着判定部は、前記脈波信号を所定の第4閾値電圧と比較することにより装着判定を行うこととしてもよい(第7の構成)。
【0019】
また、上記第1〜第7のいずれかの構成において、前記装着判定部は、前記オフ電圧信号を所定のサンプリングレートで複数回モニタリングすることとしてもよい(第8の構成)。
【0020】
また、上記第8の構成において、前記サンプリングレートは、1〜8Hzであることとしてもよい(第9の構成)。
【0021】
また、上記第8又は第9の構成において、前記装着判定部は、所定の判定期間に亘って複数回モニタリングされた前記オフ電圧信号についてそれぞれ前記第1閾値電圧との比較処理を行い、全ての比較結果に基づいて前記装着判定を行うこととしてもよい(第10の構成)。
【0022】
また、上記第10の構成において、前記判定期間は、1〜5秒であることとしてもよい(第11の構成)。
【0023】
また、上記第1〜第11のいずれかの構成において、前記フレーム周波数は、50〜1000Hzであることとしてもよい(第12の構成)。
【0024】
また、上記第1〜第12のいずれかの構成において、前記デューティは、1/8〜1/200であることとしてもよい(第13の構成)。
【0025】
また、上記第1〜第13のいずれかの構成において、前記装着判定部は、汎用入出力ポート又はシリアル通信ポートを介して、前記装着判定の結果を出力することとしてもよい(第14の構成)。
【0026】
また、上記第1〜第14のいずれかの構成において、前記発光部の出力波長は、600nm以下の可視光領域に属することとしてもよい(第15の構成)。
【0027】
また、本発明の他の態様に係る脈波計測モジュールは、発光部から生体に光を照射して前記生体からの反射光又は透過光を受光部で検出することにより受光強度に応じた電流信号を生成する光センサ部と、
前記発光部を所定のフレーム周波数及びデューティで点消灯させるパルス駆動部と、
前記電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプの出力信号に基づいて包絡線を抽出する処理を行うことにより脈波信号を出力する信号出力部と、
前記信号出力部から出力された前記脈波信号に基づいて脈波情報を生成する生成部と、
前記発光部の消灯期間に前記トランスインピーダンスアンプで得られるオフ電圧信号と所定の閾値電圧とを比較することにより装着判定を行う装着判定部と、
前記生成部により生成された前記脈波情報を外部へ送信する第1送信部と、
前記装着判定部による判定結果を外部へ送信する第2送信部と、
を備える構成としている(第16の構成)。
【0028】
また、上記第16の構成において、前記第1送信部はシリアルデータ通信ポートであり、前記第2送信部はシリアルデータ通信ポート又は汎用入出力ポートであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、生体への装着/未装着を迅速かつ正確に判定することのできる脈波センサを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<脈波測定の原理>
図1は、手首での脈波測定の原理を説明するための模式図であり、
図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
【0032】
容積脈波法による脈波測定では、例えば、
図1に示したように、測定窓に押し当てられた生体の一部(
図1では手首)に向けて発光部(LED[Light Emitting Diode]など)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、
図2に示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO
2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、非侵襲で容積脈波を測定することができる。
【0033】
なお、
図1では、図示の便宜上、脈波センサ(発光部と受光部)を手首の背側(外側)に装着した様子が描写されているが、脈波センサの装着位置についてはこれに限定されるものではなく、手首の腹側(内側)であってもよいし、他の部位(指先、指の第3関節、額、眉間、鼻先、頬、眼下、こめかみ、耳たぶなど)であってもよい。
【0034】
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
【0035】
<脈波センサ>
図3は、脈波センサの一構成例を示すブロック図である。本構成例の脈波センサ1は、本体ユニット10と、本体ユニット10の両端部に取り付けられて生体2(具体的には手首)に巻き回されるベルト20とを備えた腕輪構造(腕時計型構造)とされている。ベルト20の素材としては、皮革、金属、樹脂などを用いることができる。
【0036】
本体ユニット10は、光センサ部11と、フィルタ部12と、制御部13と、表示部14と、通信部15と、電源部16と、パルス駆動部17と、を含む。
【0037】
光センサ部11は、本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、発光部11Aから生体2に光を照射して生体2からの反射光(又は透過光でも可)を受光部11Bで検出することにより受光強度に応じた電流信号を生成する。本構成例の脈波センサ1において、光センサ部11は、発光部11Aと受光部11Bが生体2を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、
図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部11Aと受光部11Bが生体2に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、
図1の実線矢印を参照)とされている。なお、本願の発明者らは、手首での脈波測定について、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。
【0038】
フィルタ部12は、光センサ部11から入力される電流信号に各種の信号処理(電流/電圧変換処理、検波処理、フィルタ処理、及び、増幅処理)を施して制御部13に出力する。なお、フィルタ部12の具体的な構成については後ほど詳細に説明する。
【0039】
制御部13は、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御するほか、フィルタ部12の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得する。
【0040】
表示部14は、本体ユニット10の表面(生体2と対向しない側の面)に設けられており、表示情報(日付や時間に関する情報のほか、脈波の測定結果なども含まれる)を出力する。すなわち、表示部14は、腕時計の文字盤面に相当する。なお、表示部14としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
【0041】
通信部15は、脈波センサ1の測定データを外部機器(パーソナルコンピュータや携帯電話機など)に無線または有線で送信する。特に、脈波センサ1の測定データを外部機器に無線で送信する構成であれば、脈波センサ1と外部機器とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。また、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、無線送信方式を採用する場合、通信部15としては、Bluetooth(登録商標)無線通信モジュールICなどを好適に用いることができる。
【0042】
電源部16は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ1の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このように、バッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、脈波センサ1の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USB[universal serial bus]ケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
【0043】
パルス駆動部17は、光センサ部11の発光部11Aを所定のフレーム周波数f(例えば50〜1000Hz)、及び、デューティD(1/8〜1/200)で点消灯させる。
【0044】
上記のように、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者が意図的に脈波センサ1を手首から外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ1が手首から脱落してしまうおそれは殆どないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
【0045】
また、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者に対して脈波センサ1を装着していることをあまり意識させずに済むので、長期間(数日〜数ヶ月)に亘る継続的な脈波測定を行う場合であっても、被験者に過度のストレスを与えずに済む。
【0046】
特に、脈波の測定結果だけでなく、日時情報なども表示することのできる表示部14を備えた脈波センサ1(すなわち、腕時計構造の脈波センサ1)であれば、被験者は脈波センサ1を腕時計として日常的に装着することができるので、脈波センサ1の装着に対する抵抗感をさらに払拭することが可能となり、延いては、新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
【0047】
また、脈波センサ1は、防水構造としておくことが望ましい。このような構成とすることにより、水(雨)や汗などに濡れても故障せずに脈波を測定することが可能となる。また、脈波センサ1を多人数で共用する場合(例えばスポーツジムでの貸し出し用として使用する場合)には、脈波センサ1を丸ごと水洗いすることにより、脈波センサ1を清潔に保つことが可能となる。
【0048】
<光センサ部及びパルス駆動部>
図4は、光センサ部11及びパルス駆動部17の一構成例を示す回路図である。本構成例の光センサ部11は、発光ダイオード(発光部に相当)11Aと、フォトトランジスタ(受光部に相当)11Bとを含む。また、本構成例のパルス駆動部17は、スイッチ171と電流源172とを含む。
【0049】
発光ダイオード11Aのアノードは、スイッチ171を介して電源電圧AVDDの印加端に接続されている。発光ダイオード11Aのカソードは、電流源172を介して接地端に接続されている。スイッチ171は、パルス駆動信号S171に応じてオン/オフされる。電流源172は、輝度制御信号S172に応じた定電流IAを生成する。なお、運動時や屋外での脈波測定を精度良く実施するためには、発光ダイオード11Aを外来光よりも高い輝度でパルス駆動することが望ましい。
【0050】
スイッチ171がオンされているときには、定電流IAの流れる電流経路が導通されるので、発光ダイオード11Aが点灯して生体2に光が照射される。このとき、フォトトランジスタ11Bのコレクタとエミッタとの間には、生体2から戻ってくる反射光の受光強度に応じた電流信号IBが流れる。一方、スイッチ171がオフされているときには、定電流IAの流れる電流経路が遮断されるので、発光ダイオード11Aが消灯する。
【0051】
<フィルタ部>
図5はフィルタ部12の一構成例を示すブロック図である。本構成例のフィルタ部12は、トランスインピーダンスアンプ121(以下、TIA[transimpedance amplifier]121と略称する)と、バッファ回路122と、検波回路123と、バンドパスフィルタ回路124と、増幅回路125と、基準電圧生成回路126と、を含む。なお、TIA121より後段側のバッファ回路122から増幅回路125までの構成によって、後述する出力信号Se(脈波信号に相当)を出力する信号出力部が形成される。
【0052】
TIA121は、電流信号IBを電圧信号Saに変換して後段のバッファ回路122と制御部13に各々出力する電流/電圧変換回路の一種である。
【0053】
バッファ回路122は、電圧信号Saをバッファ信号Sbとして後段に伝達するボルテージフォロワである。
【0054】
検波回路123は、パルス駆動される電圧信号Sbからその包絡線のみを抽出することにより検波信号Scを生成し、これを後段に出力する。検波回路123としては、半波整流検波回路や全波整流検波回路などを用いることができる。
【0055】
バンドパスフィルタ回路124は、検波信号Scに重畳した低周波成分と高周波成分をいずれも除去することによりフィルタ信号Sdを生成し、これを後段に出力する。なお、バンドパスフィルタ回路124の通過周波数帯域は、0.6〜4.0Hz程度に設定しておくことが望ましい。
【0056】
増幅回路125は、フィルタ信号Sdを所定のゲインで増幅することにより出力信号Seを生成し、これを後段の制御部13に出力する。
【0057】
基準電圧生成回路126は、電源電圧AVDDを1/2に分圧することにより基準電圧VREF(=AVDD/2)を生成し、これをフィルタ部12の各部に供給する。
【0058】
本構成例のフィルタ部12であれば、被験者の体動ノイズを適切に除去することができるので、被験者の安静時における脈波はもちろん、被験者の運動時(歩行時、ジョギング時、ないしは、ランニング時など)における脈波についても、高精度に検出することが可能となる。
【0059】
また、本構成例のフィルタ部12において、TIA121、バッファ回路122、検波回路123、バンドパスフィルタ回路124、及び、増幅回路125は、いずれも基準電圧VREF(=AVDD/2)をセンターとして動作するので、フィルタ部12の出力信号Seは、基準電圧VREFに対して上下に振幅変動する波形となる。従って、本構成例のフィルタ部12であれば、出力信号Seの飽和(電源電圧AVDDや接地電圧GNDへの張り付き)を防止して、脈波データを正しく検出することが可能となる。
【0060】
<TIA>
図6は、TIA121の一構成例を示す回路図である。本構成例のTIA121は、オペアンプAMP1と、抵抗R1と、キャパシタC1と、を含む。オペアンプAMP1の非反転入力端(+)は、基準電圧VREF(=AVDD/2)の印加端に接続されている。オペアンプAMP1の反転入力端(−)は、フォトダイオード11Bのエミッタに接続されている。フォトダイオード11Bのコレクタは、電源電圧AVDDの印加端に接続されている。オペアンプAMP1の出力端は、電圧信号Saの出力端に相当する。抵抗R1及びキャパシタC1は、それぞれ、オペアンプAMP1の反転入力端(−)と出力端との間に並列接続されている。
【0061】
本構成例のTIA121では、オペアンプAMP1の反転入力端(−)から抵抗R1を介して電圧信号Saの出力端に至る電流経路を電流信号IBが流れる。従って、オペアンプAMP1の反転入力端(−)には、電圧信号Saに抵抗R1の両端間電圧を足し合わせた電圧(=Sa+IB×R1)が印加される。一方、オペアンプAMP1は、非反転入力端(+)と反転入力端(−)がイマジナリショートするように出力信号Saを生成する。従って、TIA121で生成される電圧信号Saは、基準電圧VREFから抵抗R1の両端間電圧を差し引いた電圧値(VREF−IB×R1)となる。
【0062】
すなわち、抵抗R1に流れる電流信号IB(フォトトランジスタ11Bでの受光量に相当)が大きいほど電圧信号Saが低くなり、逆に、電流信号IBが小さいほど電圧信号Saが高くなる。なお、TIA121のゲインは、抵抗R1の抵抗値を変えることによって任意に調整することが可能である。
【0063】
<制御部に関して>
図7は、制御部13の一構成例を示すブロック図である。本構成例の制御部13は、主制御回路131と副制御回路132を含む。
【0064】
主制御回路131は、主として、表示部14を用いた表示動作や通信部15を用いた通信動作を司る主体である。
【0065】
副制御回路132は、主として、光センサ部11を用いた脈波測定動作を司る主体であり、A/D変換器132aと、デジタル信号処理部132bと、シリアルデータ通信ポート132cと、を含む。なお、上記の脈波測定動作には、例えば、発光部11Aのパルス駆動制御及び輝度設定制御(キャリブレーション)、出力信号Seのデジタル信号処理、並びに、電圧信号Sa及び出力信号Seに基づく装着判定処理が含まれる。
【0066】
A/D変換器132aは、アナログ形式の出力信号Se及び電圧信号Saを時分割で受け取り、各々をデジタル形式に変換してデジタル信号処理部132bに順次出力する。なお、マルチ入力型のA/D変換器132aに代えて、出力信号Se及び電圧信号Saの各個入力を受け付けるシングル入力型のA/D変換器を複数並列に設けても構わない。
【0067】
デジタル信号処理部132bは、A/D変換器132aの出力に各種のデジタル信号処理を施す。ここでのデジタル信号処理には、出力信号Seに基づく脈波データの波形整形処理や解析処理のほか、電圧信号Sa及び出力信号Seに基づく装着判定処理が含まれる。すなわち、デジタル信号処理部132bは、脈波センサ1の装着/未装着を判定する装着判定部としての機能を備えている。装着判定処理の詳細については後述する。また、上記解析処理には、脈波に関する種々の情報(心拍数、心拍変動、加速度脈波など)を算出等によって生成する処理が含まれる。
【0068】
シリアルデータ通信ポート132cは、主制御回路131と副制御回路132との相互間で、シリアルデータ通信を行うためのポートである。例えば、デジタル信号処理部132bは、脈波測定動作によって得られた脈波に関する種々の情報(脈波情報)をシリアルデータ通信ポート132c経由で主制御回路131に送信する。主制御回路131は、副制御回路132から送信された脈波情報を表示部14に表示させたり、通信部15から外部機器に転送させたりする。
【0069】
また、デジタル信号処理部132bは、脈波センサ1の装着判定結果をシリアルデータ通信ポート132cから主制御回路131に送信することも可能である。例えば、主制御回路131からシリアルデータ通信ポート132c経由でリクエスト信号を定期的に送信し、当該リクエスト信号を受けたデジタル信号処理部132bからシリアルデータ通信ポート132c経由で脈波センサ1の装着判定結果を返信する。
【0070】
なお、シリアルデータ通信ポート132cとしては、I
2Cポートなどを好適に利用することが可能である。
【0071】
<脈波計測モジュールに関して>
ここで、本実施形態に係る脈波センサ1においては、
図8に示すように、光センサ部11、フィルタ部12、パルス駆動部17、及び副制御回路132が脈波計測モジュールM1としてモジュール化されている。
【0072】
脈波計測モジュールM1における副制御回路132に含まれるデジタル信号処理部132bによって脈波情報の生成処理や装着判定処理を行い、その結果をシリアルデータ通信ポート132c経由で主制御回路131に送信するので、主制御回路131では上記処理を行う必要が無くなるので、その分の負荷を他の制御に当てることが可能となる。なお、デジタル信号処理部132bの処理能力は、主制御回路131よりも低いものでよい。
【0073】
また、変形例に係る脈波センサ1’の構成を
図9に示す。
図9では、
図8との相違点として副制御回路132’がシリアルデータ通信ポート132cに加えて汎用入出力ポート132dを備えている。そして、光センサ部11、フィルタ部12、パルス駆動部17、及び副制御回路132’が脈波計測モジュールM1’としてモジュール化されている。
【0074】
汎用入出力ポート132dは、1ビット信号(2値信号)の入出力を行うためのポートである。例えば、デジタル信号処理部132bは、装着判定フラグ(装着判定の結果に相当)を汎用入出力ポート132dに出力する。具体的に述べると、デジタル信号処理部132bは、脈波センサ1が正しく装着されていると判定したときに汎用入出力ポート132dをハイレベルとし、脈波センサ1が正しく装着されていないと判定したときに汎用入出力ポート132dをローレベルとする。主制御回路131は、汎用入出力ポート132dの出力論理レベルを監視しており、その監視結果を表示部14に表示させたり、通信部15から外部機器に転送させたりする。なお、汎用入出力ポート132dとしては、GPIO[general purpose input/output]ポートなどを好適に利用することが可能である。
【0075】
<装着判定処理>
図10では、脈波センサ1を正常に装着した状態での、電圧信号Saの信号波形とその部分拡大図が描写されている。先にも述べたように、TIA121で生成される電圧信号Saは、基準電圧VREFから抵抗R1の両端間電圧を差し引いた電圧値(VREF−IB×R1)となる。ここで、発光部11Aの点灯期間Tonにおける受光部11Bの受光強度(延いては、電流信号IBの電流値)は、被験者の拍動に伴って変動する。従って、図中のB点で示すように、発光部11Aの点灯期間TonにTIA121で得られる電圧信号Sa(オン電圧信号Sa@B)を包絡線検波することにより、被験者の脈波データ(図中の細破線を参照)を取得することができる。
【0076】
一方、受光部11Bに全く光が入射されず、抵抗R1に電流信号IBが一切流れない場合、理想的には電圧信号Saが基準電圧VREFと一致する。例えば、光センサ1が生体2に正しく装着されている状態(受光部11Bに対する外来光の入射が適切に遮断されている状態)では、発光部11Aの消灯期間Toffにおける受光部11Bでの受光強度がほぼゼロとなるので、抵抗R1には電流信号IBが殆ど流れなくなる。従って、図中のA点で示すように、発光部11Aの消灯期間ToffにTIA121で得られる電圧信号Sa(オフ電圧信号Sa@A)は、基準電圧VREFとほぼ一致するはずである。
【0077】
上記の知見に鑑み、制御部13(特にデジタル信号処理部132b)は、オフ電圧信号Sa@Aと所定の閾値電圧Vthとを比較することにより、脈波センサ1の装着判定処理を行う構成とされている。
【0078】
なお、以下で説明する脈波センサ1の装着判定処理を実施する際、発光部11Aのパルス駆動時におけるフレーム周波数fは、50〜1000Hzの範囲内で設定することが望ましい(例えばf=128Hz)。また、発光部11Aのパルス駆動時におけるデューティD(フレーム周期に占めるオン期間Tonの割合)は、1/8〜1/200の範囲内で設定することが望ましい(例えばD=1/16)。
【0079】
図11は、装着判定処理の一例を示すフローチャートである。装着判定処理が開始されると、まずステップS1では、所定の判定期間Tj(例えばTj=1〜5秒)に亘って、所定のサンプリングレートfs(例えばfs=1〜8Hz)でオフ電圧信号Sa@Aの測定(複数回モニタリング)が行われる。例えば、判定期間Tjが3秒であってサンプリングレートfsが4Hzである場合、ステップS1では、合計12(=3秒×4Hz)回の測定が行われる。
【0080】
続くステップS2では、判定期間Tjに亘って複数回モニタリングされたオフ電圧信号Sa@Aについてそれぞれ所定の閾値電圧Vthとの比較処理が行われ、全ての比較結果に基づいて所定の装着判定条件を満足しているか否かの判定処理が行われる。ここで、イエス判定が下された場合にはフローがステップS3に進められ、ノー判定が下された場合にはフローがステップS5に進められる。
【0081】
なお、上記の閾値電圧Vthは、TIA121の基準電圧VREFよりも低い電圧値に設定されている。例えば、基準電圧VREFが1.50Vである場合には、閾値電圧Vthを1.40〜1.49Vの範囲内で設定することが望ましい(例えばVth=1.49V)。先にも述べたように、光センサ1が生体2に正しく装着されている状態では、発光部11Aの消灯期間Toffにおける受光部11Bでの受光強度がほぼゼロとなるので、オフ電圧信号Sa@Aが閾値電圧Vthを上回るはずである。
【0082】
従って、複数モニタリングされたオフ電圧Sa@Aと閾値電圧Vthとを逐一比較し、その比較結果を所定の装着判定条件と照らし合わせれば、脈波センサ1が生体2に正しく装着されているか否かを判定することができる。
【0083】
なお、上記の装着判定条件としては、複数モニタリングされたオフ電圧Sa@Aについて、(1)その全てが閾値電圧Vthを上回っている、(2)ほぼ全て(80〜90%)が閾値電圧Vthを上回っている、(3)過半数が閾値電圧Vthを上回っている、などが挙げられる。これらの例示について言えば、当然のことながら、(1)が最も厳しい条件となり(3)が最も甘い条件となる。
【0084】
ステップS2でイエス判定が下された場合、ステップS3では、脈波センサ1が生体2に正しく装着されていると判定される。そして、続くステップS4では、通常動作に移行されて、一連の装着判定フローが終了する。
【0085】
一方、ステップS2でノー判定が下された場合、ステップS5では、脈波センサ1が生体2に正しく装着されていないと判定される。そして、続くステップS5では、表示部14などを用いたエラー出力(被験者へのエラー通知)が行われて、一連の装着判定フローが終了する。
【0086】
このように、脈波信号の振幅強度を読み取る構成ではなく、パルス駆動される発光部11Aの消灯時における受光部11Bの受光強度から脈波センサ1の装着判定を行う構成であれば、生体2への装着/未装着を迅速かつ正確に判定することが可能となる。
【0087】
また、脈波センサ1が生体2に正しく装着されていない状態では、表示部14などを用いてエラー出力を行うことができるので、被験者に正しい装着を促すことが可能となる。
【0088】
なお、脈波計測の安定性とパラメータ算出の精度向上を図るためには、上記一連の装着判定処理は、脈波の計測中においても定期的に繰り返すことが望ましいと言える。
【0089】
また、発光部11Aの輝度調整処理(キャリブレーション処理)を行う場合には、まず上記の装着判定処理を行い、脈波センサ1が生体2に正しく装着されていることが確認された後に、上記の輝度調整処理を開始することが望ましい。
【0090】
<装着判定例>
図12は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第1挙動(脈波センサ1が生体2にベルト20で固定されている状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。なお、電圧信号Saについては、基準電圧VREF付近(1.5V付近)の部分拡大図も併せて描写されている。本図の第1挙動では、オフ電圧信号Sa@Aがほぼ基準電圧VREFと一致しており、閾値電圧Vthを上回っている。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていると判定される。
【0091】
図13は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第2挙動(脈波センサ1が生体2上に置かれているだけであり、ベルト20で固定されていない状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。なお、電圧信号Saについては、基準電圧VREF付近(1.5V付近)の部分拡大図も併せて描写されている。本図の第2挙動では、先の第1挙動(
図10)と同じく、オフ電圧信号Sa@Aがほぼ基準電圧VREFと一致しており、閾値電圧Vthを上回っている。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていると判定される。
【0092】
図14は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第3挙動(脈波センサ1の受光面が生体2から5mm浮いている状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。なお、電圧信号Saについては、基準電圧VREF付近(1.5V付近)の部分拡大図も併せて描写されている。本図の第3挙動では、受光部11Bに外来光が漏れ入っているので、オフ電圧信号Sa@Aが閾値電圧Vth(1.49V)を下回っている。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていないと判定される。
【0093】
図15は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第4挙動(脈波センサ1の受光面を下向きにして机上に放置した状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。本図の第4挙動では、発光部11Aの点消灯に伴う電圧信号Saのパルスが判別不能となっている。また、基準電圧VREF付近(1.5V付近)の部分拡大図を示すまでもなく、オフ電圧信号Sa@Aが閾値電圧Vthを下回っている様子を見てとれる。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていないと判定される。
【0094】
図16は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第5挙動(脈波センサ1の受光面を下向きにして800lxの光環境に放置した状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。本図の第5挙動では、電圧信号Saが常に閾値電圧Vthを下回っている様子が見てとれる。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていないと判定される。
【0095】
図17は、電圧信号Sa及び出力信号Seの第6挙動(脈波センサ1の受光面を上向きにして800lxの光環境に放置した状態下で得られた信号波形)を示すタイムチャートである。本図の第6挙動では、電圧信号Saがほぼ0Vに張り付いている様子が見てとれる。従って、脈波センサ1は、生体2に正しく装着されていないと判定される。
【0096】
<装着判定処理の変形実施例>
ここで、
図18に、脈波センサ1を正常に装着した状態での、電圧信号Saの実際の波形例を示す(発光部11Aの駆動条件としては、フレーム周波数f=200Hz、デューティD=1/16)。上述したように、オフ電圧信号Sa@Aは、ほぼ基準電圧VREF=1.5Vで一定となっている。従って、オフ電圧信号Sa@Aを基準電圧VREFよりも低い電圧値である第1閾値電圧Vth1(例えば1.4V)と比較することで装着判定を行うことが可能である。
【0097】
また、脈波センサ1においては、脈波計測開始前に発光部11Aの輝度設定制御(キャリブレーション)が行われる。輝度設定制御は、デジタル信号処理部132bが主体となって行われる(すなわち、デジタル信号処理部132bは輝度調整制御部に相当)。例えば、輝度制御信号S172(
図4)によって電流源172の電流値を設定した状態で、パルス駆動信号S171によってスイッチ171を数フレーム分オンオフさせ、オン電圧信号Sa@Bの統計値(例えば平均値)を算出し、統計値と所定の閾値電圧(調整用閾値電圧)を比較する。統計値が上記閾値電圧より高い値であれば、上記電流値を増加するよう設定し、更にスイッチ171をスイッチングする。上記電流値を増加すれば、発光部11Aの輝度が増加し、電流信号IBの電流値が増加するので、オン電圧信号Sa@Bは低下する。そして、統計値が上記閾値電圧以下となれば、そのときの電流値を使用電流値として設定する(すなわち、発光部11Aの輝度が設定される)。その後、使用電流値を用いて発光部11Aがパルス駆動開始され、出力信号Seの出力が開始される(すなわち、脈波計測が開始される)。
【0098】
図18では、上記輝度設定制御で用いる上記閾値電圧を1.3Vとした場合のオン電圧信号Sa@Bを示している。
図18に示すように、脈波センサ1が正常に装着されていれば、オン電圧信号Sa@Bは上記閾値電圧を基準値として、基準値より高い第2閾値電圧Vth2(例えば1.4V)と基準値より低い第3閾値電圧Vth3(例えば1.2V)の間で規定される範囲内に収まるはずである。従って、オン電圧信号Sa@Bを第2閾値電圧Vth2及び第3閾値電圧Vth3で規定される範囲と比較することで装着判定を行うことが可能である。
【0099】
また、
図19に、脈波センサ1を正常に装着した状態での、出力信号Seの実際の波形例を示す。このように正常に装着していれば、脈波信号としての出力信号Seは、基準電圧VREF(=1.5V)を基準としてプラス側とマイナス側に振れて振動する波形となる。この場合、
図19に示すように、基準電圧VREFよりも高い電圧値を第4閾値電圧Vth4(例えば1.6V)とすれば、出力信号Seが第4閾値電圧Vth4以上となるタイミングが存在する。従って、出力信号Seを第4閾値電圧Vth4と比較することで装着判定を行うことが可能である。
【0100】
以上のような電圧信号Sa、及び出力信号Seに基づく装着判定の原理に基づいた具体的な装着判定処理について以下述べる。
図20は、装着判定処理の第1変形実施例に係るフローチャートである。
【0101】
脈波センサ1を正常に生体2に装着した状態で操作部(
図3で不図示)において脈波計測開始操作(例えばキー押し操作)がなされると、主制御回路131は当該操作を検知し、副制御回路132に脈波計測動作を開始させる。副制御回路132は、先述した発光部11Aの輝度設定制御を行った上で発光部11Aをパルス駆動開始させ、出力信号Seが出力開始される(すなわち、脈波計測が開始される)。
【0102】
このとき、
図20に示す装着判定処理のフローも開始される。フローは、デジタル信号処理部132bが主体となって行われる。また、フロー開始時には、エラーフラグ(error flag)はゼロに初期化される。
【0103】
まず、ステップS1で、オフ電圧信号Sa@A、オン電圧信号Sa@B、及び出力信号Seのデータがそれぞれ所定のサンプリング周波数fsで所定の個数だけ取得される。例えば、サンプリング周波数fs=8Hzとして、8個のデータが取得される(この場合、1秒間分のデータ取得となる)。
【0104】
そして、ステップS2で、取得されたオフ電圧信号Sa@A、オン電圧信号Sa@B、及び出力信号Seが共に装着判定条件を満足しているか否かが判定される。ステップS2のより具体的な処理を、
図21のフローチャートに示す。
【0105】
図21に示すように、まずステップS21で、取得した全てのオフ電圧信号Sa@Aが第1閾値電圧Vth1以上であるかが判定され、もしそうである場合は(ステップS21のY)、ステップS22に進む。ステップS22では、取得したすべてのオン電圧信号Sa@Bが第3閾値電圧Vth3以上第2閾値電圧Vth2以下で規定される範囲に属するかが判定され、もしそうである場合は(ステップS22のY)、ステップS23に進む。
【0106】
ステップS23では、取得した出力信号Seの最大値が第4閾値電圧Vth4以上であるかが判定され、もしそうである場合は、ステップS2(
図20)において装着判定条件を満足しているとして(ステップS2のY)、ステップS7に進む。一方、ステップS21、S22、S23のいずれかにおいて条件を満たさなかった場合は(ステップS21、S22、S23のN)、ステップS2(
図20)において装着判定条件を満足していないとして(ステップS2のN)、ステップS3に進む。
【0107】
なお、ステップS21、S22における条件を満足しているかの判定は、例えば取得したデータの大多数(80%以上など)や過半数が満たしているかで行うこととしてもよい。
【0108】
ステップ3に進んだ場合は、Noカウント数(初期値はゼロ)が1だけ増加され、ステップS4に進む。ステップS4で、Noカウント数が所定値(例えば3)以上であるかが判定され、もしそうでない場合は(ステップS4のN)、ステップS9に進み、エラーフラグは保持される。また、ステップ7に進んだ場合は、Yesカウント数(初期値はゼロ)が1だけ増加され、ステップS8に進む。ステップS8で、Yesカウント数が所定値(例えば3)以上であるかが判定され、もしそうでない場合は(ステップS8のN)、ステップS9に進み、エラーフラグの値は保持される。ステップS9の後は、ステップS1に戻る。
【0109】
そして、ステップS4においてNoカウント数が所定値以上となれば(ステップS4のY)、ステップS5に進み、未装着(異常に装着している場合も含む)であるとしてエラーフラグが1に設定される。そして、ステップS6に進み、Yesカウント数、及びNoカウント数がゼロにリセットされ、ステップS1に戻る。
【0110】
また、ステップS8においてYesカウント数が所定値以上となれば(ステップS8のY)、ステップS10に進み、正常に装着されているとしてエラーフラグが0に設定される。そして、ステップS11に進み、Yesカウント数、及びNoカウント数がゼロにリセットされ、ステップS1に戻る。
【0111】
例えば、ステップS1でのデータのサンプリング周波数fsを8Hzとし、データの取得個数を8個とし、ステップS4、S8での判定閾値である所定値を3とした場合は、最短で3秒間(=1/8×8×3)で装着有無の判定を行うことができる。また、
図20に示す処理であれば、実際は未装着であるにも関わらず、途中何らかの理由でステップS2の判定にて装着判定条件を満足しているとされた場合でも、最終的にはNoカウント数のほうが先に所定値に達して未装着であると判定できる。
【0112】
なお、未装着判定がされてエラーフラグが1に設定され、主制御回路131からのリクエスト信号によってデジタル信号処理部132bから主制御回路131にエラーフラグが送信された場合、主制御回路131は例えば副制御回路132に対して脈波計測を停止するよう指令する。これにより、未装着でありながら脈波情報(心拍数など)が表示されるといった不自然な状況を回避できる。
【0113】
また、このとき主制御回路131は、例えば表示部14に警告表示を行わせてもよい。警告表示は、例えばユーザに対して正常な装着を促すものでもよい。これにより、装着しているが脈波センサ1が外れかけなどの場合にユーザに気付かせることができる。または、表示部14以外でも例えば、LEDやスピーカなどを用いて報知するようにしてもよい。
【0114】
図22には、装着判定処理の第2変形実施例に係るフローチャートを示す。本図に示すフローにおけるステップS31、S32は、それぞれ先述した第1変形実施例(
図20)のステップS1、S2に相当し、相違点はステップS33以降の処理となる。
【0115】
ステップS32において装着判定条件を満足していないと判定された場合(ステップS32のN)、ステップS33に進み、Noカウント数を1だけ増加させる。そして、ステップS34で、Noカウント数が所定値(例えば3)以上であるかが判定され、もしそうでない場合は(ステップS34のN)、ステップS35に進み、エラーフラグは保持される。ステップS35の後、ステップS31へ戻る。
【0116】
ステップS34でもしNoカウント数が所定値になっていた場合は(ステップS34のY)、ステップS36に進み、未装着であると判定されてエラーフラグが1に設定される。そして、ステップS37に進み、Noカウント数がゼロにリセットされ、ステップS31へ戻る。
【0117】
また、ステップS32において装着判定条件を満足していると判定された場合は(ステップS32のY)、ステップS38に進み、装着されていると判定されてエラーフラグは0に設定される。そして、ステップS37でNoカウント数がゼロにリセットされた後、ステップS31に戻る。
【0118】
図22で示す第2変形実施例の処理では、実際には未装着の場合にNoカウント数が増加する途中にて、何らかの理由でステップS32において装着判定条件を満足していると判定された場合、ステップS38で装着されていると判定され、ステップS37でNoカウント数がゼロにリセットされるので、未装着であると判定される条件としては第1変形実施例に比べて厳しいものとなる。
【0119】
<各周囲環境における信号実測例>
ここで、装着有無判定の有効性を検証するために、室内、屋外、暗室といった各周囲環境において信号を実測した例を
図23の一覧表に示す。また、
図23に対応する、室内での各装着状態における信号実測波形例を
図24に、同様に屋外、暗室での波形例を
図25、
図26にそれぞれ示す。
【0120】
図23において、「装着/未装着状態」の欄は上段から、正常に装着した状態、装着しているが外れかけの状態、光センサ部11の受光面を上にして机上に放置した状態、光センサ部11の受光面を下にして机上に放置した状態、光センサ部11の受光面を下にして机上から浮いた位置で放置した状態、脈波センサ1を手に持って揺らした状態を示す。
【0121】
また、
図23において、「A点」はオフ電圧信号Sa@A、「B点」はオン電圧信号Sa@B、「C点」は出力信号Seの各実測電圧値を示す。なお、電圧値が変化する場合はその変動範囲を示し、「←」はオフ電圧信号Sa@Aと同じ値であることを示す。
【0122】
そして、
図23において、「判定」の欄は、左から順にオフ電圧信号Sa@A、オン電圧信号Sa@B、出力信号Seのそれぞれについての装着判定結果を示す。「○」は装着判定、「×」は未装着判定、「−」は信号が飽和した状態(接地電圧から電源電圧まで変動する状態)を示す。なお、装着判定条件としては、オフ電圧信号Sa@Aは第1閾値電圧1.4V以上であるか、オン電圧信号Sa@Bは第3閾値電圧1.2V以上且つ第2閾値電圧1.4V以下であるか、出力信号Seは第4閾値電圧1.6V以上となるタイミングがあるか、としている。
【0123】
図23に示すように、室内、屋外、及び暗室のいずれの周囲環境においても、正常に装着した状態では全ての信号について装着判定がなされ、それ以外の状態(未装着又は異常に装着)では少なくともいずれかの信号について未装着判定がなされており、装着有無の検出が適切に行えることが分かる。
【0124】
特に周囲環境が暗室の場合は、未装着又は異常に装着した全ての状態で、オフ電圧信号Sa@Aだけでは装着判定がなされてしまうので、オン電圧信号Sa@Bも判定に加えることで正確に判定が行える。従って、例えば暗室対応といった目的では、出力信号Seは用いずに判定を行ってもよい(なお、
図23から分かるように室内においてもこの方法にて判定可能である)。但し、
図23に示すように、周囲環境が屋外の場合に、光センサ部1を下にして机上に放置した状態では、オフ電圧信号Sa@A、及びオン電圧信号Sa@Bについていずれも装着判定がなされており、出力信号Seによる判定を加えることで正確に未装着検出を行うことができる。
【0125】
<出力波長についての考察>
実験では、いわゆる反射型の脈波センサにおいて、発光部の出力波長をλ1(赤外:940nm)、λ2(緑:630nm)、及び、λ3(青:468nm)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域において、酸素化ヘモグロビンHbO
2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
【0126】
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO
2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
【0127】
ただし、単一の光センサ部を用いて、脈波と血中酸素飽和度の両方を検出する場合には従前と同様、近赤外領域の波長を用いても構わない。
【0128】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示された種々の発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。