特許第6407986号(P6407986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407986歯の平滑化のための装置及び製作のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407986
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】歯の平滑化のための装置及び製作のための方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/00 20060101AFI20181004BHJP
   B23P 9/02 20060101ALI20181004BHJP
   B23P 15/14 20060101ALI20181004BHJP
   B21H 5/02 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B23F19/00
   B23P9/02
   B23P15/14
   B21H5/02
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-522362(P2016-522362)
(86)(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公表番号】特表2016-526491(P2016-526491A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2014061414
(87)【国際公開番号】WO2015000652
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2017年5月15日
(31)【優先権主張番号】102013213056.2
(32)【優先日】2013年7月4日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102014203088.9
(32)【優先日】2014年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ランク・ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ブック・ヤン−ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒルパート・ハインツ−ギュンター
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−124220(JP,A)
【文献】 実開昭61−96623(JP,U)
【文献】 特開昭61−25719(JP,A)
【文献】 実開昭62−78220(JP,U)
【文献】 特開昭57−48419(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007039959(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/00
B21H 5/02
B23P 9/02
B23P 15/14
B23B 39/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材(4;14)の内歯及び/又は外歯(4a;14a,14b)の平滑化のための装置において、
前記内歯(4a;14a)及び/又は前記外歯(14)に噛合し、切込み可能な第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C;Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Ca)が前記内歯(4a;14a)の内側及び/又は前記外歯(14b)の外側において回転可能に配置されていること、前記第1の平滑化歯車(A,Ai,Aa)が第1のキャリッジ(2,12)上に配置されているとともに、前記第2及び第3の平滑化歯車(B,C;Bi,Ci;Ba,Ca)が第2のキャリッジ(3,13)上に配置されており、前記第1のキャリッジ(2,12)と前記第2のキャリッジ(3,13)が互いに分離する方向又は互いに近づく方向へ可動であること、前記部材(4;14)が、平滑化の際に前記装置内に固定してはめ込まれているのではなく、平滑化の際に単に固定しないで載置台(5)上に載置されていること、及び前記第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C;Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Ca)のうち少なくとも1つが、平滑化の際に生じる、固定されてはめ込まれていない前記部材(4;14)の軸方向の運動を制限するスラストリング(6)を備えていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C;Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Ca)のそれぞれが1つのスラストリング(6)を備えていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C;Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Ca)がそれぞれ約120°互いにずらして配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記第2及び第3の平滑化歯車(B,C;Bi,Ci,Ba,Ca)が、前記第2のキャリッジ(3,13)に対して回転可能かつ振り子状に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の平滑化歯車(A;Ai,Aa)が、前記第1のキャリッジ(2,12)に対して回転可能に支持されており、回転方向に駆動可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C;Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Ca)の複数の歯が、それぞれ異なる歯輪郭を備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C)のうち1つの歯輪郭には、歯の高さ方向において見て、±0°30′の範囲の輪郭角度補正及び/又は−20〜+30μmの範囲の輪郭クラウニングが設定されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3の平滑化歯車(A,B,C)のうち1つの歯輪郭には、歯の幅方向において見て、±0°10′の範囲の歯面角度補正及び/又は−30〜+50μmの範囲の幅クラウニングが設定されていることを特徴とする請求項又は記載の装置。
【請求項9】
前記第1の平滑化歯車(A;Ai,Aa)の歯面が高さクラウニング部を備えていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の平滑化歯車(B;Bi,Ba)の前記歯輪郭が歯元修正部を備えていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第3の平滑化歯車(C;Ci,Ca)の前記歯輪郭が歯先修正部を備えていることを特徴とする請求項10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記部材が、内歯(4a)を有するリングギヤ(4)として、又は内歯(14a)及び外歯(14b)を有するサンギヤ兼リングギヤ(14)として形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
部材(4,14)において内歯及び/又は外歯を製作するための方法において、
前記内歯及び/又は前記外歯(4a;14a,14b)が、第1の方法ステップにおいて切削式の方法によって予備加工され、第1の方法ステップの直後の第2のステップにおいてソフト平滑化によって加工されること、及び該ソフト平滑化が請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置によって行われることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記ソフト平滑化の工程が、前記部材(4,14)の歯輪郭の互いに隣接する異なる領域において同時に行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第1の領域として歯面中央部が平滑化されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2の領域として歯先範囲が平滑化されることを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
第3の領域として歯元範囲が平滑化されることを特徴とする請求項1416のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による内歯及び/又は外歯の平滑化のための装置と、請求項13の前提部分による内歯及び/又は外歯を製作するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
まずは複数のリングギヤの内歯がブローチ加工によって、斜歯においてはいわゆるねじりブローチ加工によって切削的に作成されることが知られている。ブローチ加工工程により、歯面の表面には、歯面における不都合な表面粗さをもたらす先細くし状の構造が生じる。大きすぎる表面粗さは、歯車の動作時に歯面に形成されるいわゆるマイクロピッチング又は表面ピッチングについての原因の1つである。切削加工により生じる表面粗さを平滑化によって低減することが可能であることも知られている。この平滑化方法においては、粗い表面の輪郭先端部が変形によって平らにされる。これにより、歯面の表面品質を改善するとともに、マイクロピッチングの発生の原因を回避することが可能である。
【0003】
特許文献1により、リングギヤの内歯の平滑化のための装置が知られている。この装置は、それぞれ1つの平滑化歯車を備えた、互いに90°ずらされた3つの加工ユニットを含んでいる。リングギヤは、ホルダへはめ込まれているとともに、回転テーブル上でそれぞれ90°だけ揺動する。その結果、3つの加工ステーションが進行する。平滑化歯車は、3つの加工ステーションのそれぞれにおいてリングギヤの内歯に噛合し、したがって連続して、すなわち時間的及び空間的に互いに連続する3つのステップにおいて内歯の平滑化がもたらされる。平滑化歯車は、それぞれ径方向に内側から外側へブロックされており、このために、皿バネによる押圧力が作用している。平滑化歯車は、それぞれ1つのモータによって駆動されるとともに、内歯において転がり、このとき同時に軸方向において振動する。異なる加工ステーションの3つの平滑化歯車は、歯面の様々な部分へ向けられている。
【0004】
例えば、特許文献2により、歯車の外歯を反対側に配置された2つの円形歯切りカッタによって平滑に転がることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19963477号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007039959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に挙げた種類の装置を改良及び簡易化するとともに、好ましくはこの装置によって実行可能な方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、独立請求項1及び13の特徴によって解決される。有利な複数の形態は、従属請求項から明らかである。
【0008】
本発明の第1の形態によれば、装置は、内歯及び/又は外歯に噛合し、径方向に切込み可能な、部材の内側及び/又は外側に配置されている少なくとも2つの平滑化歯車を含んでいる。したがって、これら平滑化歯車は、内歯及び/又は外歯の平滑化のための様々な加工ステーションではなく、内歯及び/又は外歯の平滑化のための唯一の加工ステーションに配置されている。これにより、装置は、大幅に簡易化及びコンパクト化される。押圧力又は切込み力は、従来技術よりも大幅に小さくなっている。
【0009】
加工される部材が、平滑化の際に装置内に固定してはめ込まれているのではなく、平滑化の際に単に固定しないで載置台上に載置されていることが本発明において本質的である。また、平滑化歯車のうち少なくとも1つ、好ましくは全てが、平滑化の際に生じる、固定されてはめ込まれていない部材の軸方向の運動を制限するスラストリングを備えていることも本発明において本質的である。
【0010】
有利には、この実施形態により、数センチメートルの軸方向のわずかな遊びをもって加工される部材(ワークピース)との平滑化歯車(工具)の噛合が可能である。そして、振り子状に支持された平滑化歯車は、加工される部材の、載置台から部材を軸方向に持ち上げる際に生じ得る非常にわずかな傾斜位置を補償するものである。
【0011】
好ましい形態においては、固定してはめ込まれていない部材の軸方向の移動を制限するために設けられたスラストリングが硬化された鋼から製作されているとともに、平滑化歯車に固結されている。
【0012】
好ましい実施形態によれば、部材の内部及び/又は外部にそれぞれ約120°互いにずらして配置された3つの平滑化歯車が設けられている。したがって、平滑化歯車は、遊星歯車装置における遊星歯車のように、すなわちリングギヤの内部及び/又はサンギヤの外部に配置されているとともに、同時に内歯及び/又は外歯に噛合する。
【0013】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの平滑化歯車が可動のキャリッジ上に配置されている。これにより、少なくとも1つの平滑化歯車は、部材の内歯及び/又は外歯へ切り込まれることが可能である。
【0014】
別の好ましい実施形態によれば、第1の平滑化歯車が第1のキャリッジ上に配置され、第2及び第3の平滑化歯車が第2のキャリッジ上に配置されており、両キャリッジが互いに逆方向に摺動可能である。これに代えて、3つの内側の平滑化歯車及び3つの外側の平滑化歯車も両キャリッジに配置されることが可能である。両キャリッジは、好ましくは中央に配置された調整ユニット、例えば空圧シリンダによって内方へ及び/又は外方へ摺動され、その結果、平滑化歯車は、ワークピースの内歯及び/又は外歯に噛合することが可能である。したがって、3つあるいは6つの平滑化歯車のための1つのみの調整ユニットが必要である。
【0015】
別の好ましい実施形態によれば、第2及び第3の平滑化歯車が回転可能に支持されており、回転軸は、第2のキャリッジに対して振り子状に配置されている。これにより、両平滑化歯車が平滑化の間にリングギヤの内歯のねじれ角偏差に従うことが可能である。したがって、一定かつ均等な押圧力が平滑化歯車と内歯の間に与えられる。
【0016】
別の好ましい実施形態によれば、第1の平滑化歯車も同様に回転可能に支持されているとともに回転方向へ駆動可能である。駆動する平滑化歯車の回転軸は、振り子状に支持されていない。これにより、リングギヤは、第1の平滑化歯車によって駆動され、すなわち回転においてずらされている。その結果、全ての平滑化歯車が内歯において転がる。したがって、リングギヤ、すなわちワークピースは、平滑化歯車によって心合わせされるとともに、別々の収容及びはめ込みを必要としない。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、3つあるいは6つ(内側の3つ及び外側の3つ)の平滑化歯車は、異なる歯輪郭を有する複数の歯を備えている。異なる歯輪郭により、歯面の異なる部分又は領域が(内歯の輪郭方向に見て)連続して加工される。これにより、内歯及び/又は場合によっては外歯の歯輪郭全体の平滑化が唯一の加工ステーションにおいてなされる。したがって、従来技術と比べて2つの加工ステーションが省略される。
【0018】
別の好ましい実施形態によれば、第1の平滑化歯車の歯面は、高さクラウニング部を備えている。はっきりとした歯先修正部及び歯元修正部によって凸状に変更されている輪郭が高さクラウニングと呼ばれる。第1の平滑化歯車の高さクラウニング部により、特に歯面部分が内歯のピッチ円近傍で平滑化される。
【0019】
別の好ましい実施形態によれば、第2の平滑化歯車の歯輪郭は歯元修正部を備えており、この歯元修正部によって特に内歯の歯元範囲が平滑化される。
【0020】
別の好ましい実施形態によれば、第3の平滑化歯車は歯先修正部を備えており、この歯先修正部によって特に内歯の歯先を加工することが可能である。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、部材が、内歯を有するリングギヤとして、又は内歯及び外歯を有するいわゆるサンギヤ兼リングギヤとして形成されている。第2の代替においては、部材が、一方ではリングギヤとして、他方では(外歯を有する)サンギヤとして機能する。この場合、平滑化歯車は、サンギヤ兼リングギヤの内部にも、またサンギヤ兼リングギヤの外部にも配置されており、その結果、同時に又は連続して二重の、すなわち1回は内歯に対して、もう1回は外歯に対して平滑化プロセスがなされる。
【0022】
本発明の別の一形態によれば、内歯及び/又は外歯の製作のための方法において、内歯及び/又は外歯は、第1の方法ステップにおいて切削的な方法、例えばブローチ加工、形削り加工又はフライス加工によってあらかじめ加工され、第1の方法ステップに直接つづく第2の方法ステップでは、ソフト平滑化すなわち変形プロセスによって加工される。ここで、直接つづくとは、材料が「ソフト」な状態、すなわちまだ表面硬化されていない状態で変形されることをいう。このとき、比較的少ない変形力が必要とされるとともに、したがってマクロ形状が変化しないことが有利である。これら両方法ステップすなわち第1の切削的な加工と第2の変形による加工の組合せにより、わずかな方法技術的な手間で比較的高い表面品質が達成される。得られた表面品質は、噛合している遊星歯車の動作時にマイクロピッチングすなわち早期の摩耗が回避されることに貢献するものである。
【0023】
このとき、ソフト平滑化に際しては1つの装置が用いられ、この装置においては、加工されるワークピースが、装置に固定してはめ込まれておらず、平滑化の際に固定せずに載置台上に載置されている。装置の複数の工具(平滑化歯車)のうち少なくとも1つ(好ましくは全て)はスラストリングを備えており、このスラストリングは、平滑時に、発生する径方向の力により生じるワークピースの軸方向の移動を制限するものである。
【0024】
好ましい一方法バリエーションによれば、ソフト平滑化の工程は歯輪郭の様々な領域に分割されており、これら領域は、互いに隣接しているとともに、場合によっては重なり合っている。好ましくは、3つの領域、すなわち歯の高さにおける中央部での歯面範囲、歯先近傍の歯面範囲及び歯元近傍に分離され同時に(同期して)平滑化される。十分な空間状況においては、加工領域の数を3より多くすることもできる。これにより、短縮された加工時間の利点が生じる。
【0025】
別の好ましいバリエーションによれば、本発明による、ソフト平滑化のための方法は、有利には本発明による装置において実施される。
【0026】
特に傾斜した内歯を有するリングギヤにおいて、また傾斜した外歯を有する平歯車においても、上述の径方向の押圧力により軸方向力が発生し、この軸方向力は、固定してはめ込まれていないワークピースをその載置台から持ち上げようとし、したがって噛合が解除されかねない。この作用に対抗し、加工結果を改善するために、上記方法では、斜歯が形成されたワークピースにおいて、平滑化される部材の360°の回転後に回転方向が変更される。
【0027】
本発明の複数の実施例が図面に図示されているとともに以下に詳細に説明され、他の特徴及び/又は利点は、明細書及び/又は図面から明らかであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】内歯の平滑化のための本発明による装置の概略図である。
図2図1による本発明による装置の細部を示す図である。
図3】内歯及び外歯の平滑化のための本発明による別の装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明の第1の実施例、すなわち内歯の平滑化のための装置1が上部からの視点において概略的に示されている。装置1は、矢印P1の方向へ移動可能な第1の工具キャリッジ2(単に「キャリッジ2」という)と、矢印P2の方向に移動可能な第2の工具キャリッジ3(単に「キャリッジ3」という)とを含んでいる。第1のキャリッジ2上では、第1の平滑化歯車A(以下単に「平滑化車A」ともいう)が、紙面に対して垂直に配置された回転軸a周りに枢支されている。第2のキャリッジ3上では、第2の平滑化歯車Bが回転軸b周りに、第3の平滑化歯車Cが回転軸c周りに回転可能に配置されている。これら平滑化歯車A,B,Cは、装置1の工具であるとともに、硬化されたインボリュート歯(参照符号なし)をその周囲に備えている。回転軸aが固定して配置されている第1の平滑化歯車Aは、不図示のモータによって駆動される。第2及び第3の平滑化歯車B,Cの回転軸b,cは、振り子状に配置されている。すなわち、これらは、歯溝の進行に従うことが可能である。両キャリッジ2,3の上方にはリングギヤ4として形成された部材すなわちワークピースが配置されており、このワークピースは、不図示のプレート上に固定されずに位置している。リングギヤ4はインボリュート歯として形成された内歯を備えており、この内歯は、切削的にブローチ加工することで製作されている。好ましくは、内歯4aは斜歯として形成されており、この斜歯は、いわゆるねじりブローチ加工、すなわちブローチのらせん状の運動によって製作される。平滑化歯車A,B,Cは、リングギヤ4の内部において遊星歯車に類似して遊星歯車装置内に配置されているとともに、その外歯によってリングギヤ4の内歯4aに噛合しており、これにより、固定されずに載置されているリングギヤの心合わせももたらされる。第1のキャリッジ2と第2のキャリッジ3の間には不図示の調整装置、好ましくは空圧シリンダが配置されており、この空圧シリンダは、必要な押圧力を平滑化歯車A,B,Cと内歯4aの間で作用させるために、互いに離間されている。
【0030】
平滑化のプロセスは、ソフト平滑化であり、以下のように進行する:リングギヤ4がブローチ加工工程の直後に、すなわち「ソフトな」(表面硬化されていない)状態で装置1上に載置される。このとき、平滑化歯車A,B,Cは、ひっこめられた位置にあり、すなわち内歯4aに噛合しておらず、キャリッジ2,3はまだかみ合っている。リングギヤ4が装置1上に位置決めされた後、平滑化歯車A,B,Cは、キャリッジ2,3の分離により、内歯4aと噛合され、このとき、比較的小さな押圧力のみが作用する必要がある。そして、第1の平滑化歯車Aはリングギヤ4を駆動し、一方、第2及び第3の平滑化歯車B,Cは、内歯4aにおいて回転されるか、あるいは転がる。その振り子軸b,cにより、平滑化歯車B,Cは、内歯4aに最適に追従する。
【0031】
3つの平滑化歯車A,B,Cは、最適な平滑化の結果を所定の歯面範囲で達成されるために、その歯の微細形状について異なって構成されている。このような形状バリエーションは、歯の高さ方向において、輪郭角度補正(かみ合い角度補正、好ましくは±0°30′)の形状で、輪郭クラウニング部(好ましくは−20〜+30μm)として、及びこれらパラメータの組合せにおいて構成されることができる。歯の幅方向においては、このような形状バリエーションを、歯面角度補正(好ましくは±0°10′)として、幅クラウニング部(好ましくは−30〜+50μm)として、及びこれらパラメータの組合せにおいて構成することが可能である。加えて、歯の高さ方向における形状バリエーションと歯の幅方向における形状バリエーションを組み合わせるか、あるいは重ね合わせることが可能である。
【0032】
これに対応して、図1に示された実施例においては、平滑化歯車A,B,Cの複数の歯において異なる輪郭補正が設定されている:第1の平滑化歯車Aの歯の輪郭は、高さクラウニング部を備えており、第2の平滑化車Bの歯の輪郭は比較的大きな歯元修正部を備えており、第3の平滑化歯車Cの歯の輪郭は比較的大きな歯先修正部を備えている。したがって、これら3つの平滑化歯車は、内歯4aの異なる範囲又は領域、つまり歯面中央部、歯元及び歯先を加工あるいは平滑化するものである。平滑化過程により、特にブローチ加工工程により内歯4aの表面に生じる輪郭先端部をまだ「ソフトな」材料の変形によって平らにされ、その結果、高められた材料接触割合を有する改善された表面品質が得られる。リングギヤ4の歯を、ソフト平滑化の後、硬化することが可能である。
【0033】
リングギヤ軸方向運動を制限する支持リングを同様に斜歯が形成された複数の平滑化歯車に取り付けることによって、斜歯が形成されたリングギヤの軸方向のドリフトの作用が妨害される。これについて、図1Bを参照して以下に詳細に述べる。この作用を妨害し、加工結果を改善するための更なる可能性は、平滑化中に加工されるべきワークピースの回転方向を交互に反転させることである。
【0034】
図1Bには、本発明による装置の図1に記載した実施例の細部が示されている。図1Bには、内歯及び外歯の平滑化のために設けられた装置1の断面が図示されている。ここではリングギヤ4として例示的に構成されたワークピースは、好ましくは硬化された載置台5上に固定されずに位置しているとともに、複数の平滑化歯車(そのうち図示の断面においてその回転軸aを有する平滑化歯車Aのみを視認できる)と噛合され、これが矢印P1によって示唆されている。リングギヤ4の回転軸は符号dで示されている。
【0035】
斜歯が形成されたワークピースにおいては、径方向の押圧力F及び駆動モーメントMによって、回転方向に応じてワークピースを載置台5へ押圧又は載置台5から持ち上げる軸方向の合力成分が生じる。好ましくは硬化された鋼で構成されたスラストリング6が、平滑化歯車Aに固結されているとともに、あり得る軸方向の遊び7を数センチメートルに制限する。好ましくは固定して支持され、駆動される平滑化歯車Aから生じるリングギヤ4の傾斜位置を、残りの平滑化歯車の振り子状の支持によって補償することが可能である。上述のように、均等な加工結果のために、例えば360°ワークピース回転ごとに均等な回転方向転換が有利である。
【0036】
図2には、本発明の第2の実施例、すなわち内歯及び外歯の平滑化のための装置11が同様に平面図において概略的に示されている。同一の部分については、それぞれ10を加えた参照符号で示されている。装置11は、図1による実施例と同一であり、互いに近づくように又は互いから離れるように移動可能な第1のキャリッジ12と、第2のキャリッジ13とを含んでいる。第1のキャリッジ12は駆動される平滑化歯車Aiを備えており、第2のキャリッジ13は振り子状に支持された2つの平滑化歯車Bi,Ciを備えている。装置11上で平滑化されるワークピースは、リングギヤ及びサンギヤとして形成された部材14であり、この部材は、内歯14a及び外歯14bを備えている。内歯14aは好ましくはねじりブローチ加工、すなわち切削によって製作されている。その一方、外歯14bは例えばフライス加工、すなわち同様に切削によって製造されている。外歯14bの平滑化のために、第1のキャリッジ12上には駆動可能な平滑化歯車Aaが回転可能に配置されており、第2のキャリッジ13上には平滑化歯車Ba及び第3の平滑化歯車Caが回転可能に配置されている。これら平滑化歯車Aa,Ba,Ca(以下「平滑化車」ともいう)は、外歯によって部材14の外歯14bへ噛合する。図2に示されているように、外歯14bの平滑化の際には、平滑化工程に必要な押圧力を発生させるために、両キャリッジ12,13が互いへ向けて移動する。つづいて、両キャリッジ12,13が分離し、その結果、外側の平滑化歯車Aa,Ba,Caが噛合から外され、内側の平滑化歯車Ai,Bi,Ciが内歯14aと噛合する。内側及び外側の平滑化歯車Ai,Bi,Ci,Aa,Ba,Caは、図1による実施例の場合と同様に輪郭補正されている。
【0037】
複数の平滑化車の異なる輪郭形状により、ワークピースの歯面の異なる範囲又は領域が加工され、これにより、よりわずかな変形力も生じる。上述の輪郭補正により、工具として作用する平滑化歯車は、ワークピースの歯面との低減された線状の接触がなされる。これにより、できる限り大きな面押圧と、したがって最適な加工結果がワークピースの歯面全体にわたって補償される。上述のように、ワークピースの歯は、硬化されていない状態で、すなわちブローチ加工工程の直後に加工される。平滑化結果は、圧力及びインボリュート歯のローラすべり運動の重ね合わせによって生じる。これにより、材料の隆起部及び粗さ頂点部(輪郭頂点部)が平らにされるとともに、歯の損傷が回避される。
【0038】
本発明による装置及び本発明による方法によって得られる表面品質は、特に2つの表面パラメータ又はDIN EN ISO 4287による特性値、すなわち輪郭の材料接触割合を記述する特性値Rmrと、良好な接触特性を有する表面を定義する特性値Rsk(「」)すなわちわずかな輪郭先端割合によって特徴付けられることが可能である。歯面の表面は、ソフト平滑化の後に、両特性値の重大な改善を有する。
【符号の説明】
【0039】
1 装置
2 第1のキャリッジ
3 第2のキャリッジ
4 リングギヤ
4a 内歯
5 載置台
6 スラストリング
7 軸方向の遊び
11 装置
12 第1のキャリッジ
13 第2のキャリッジ
14 サンギヤ兼リングギヤ
14a 内歯
14b 外歯
A 第1の平滑化歯車
B 第2の平滑化歯車
C 第3の平滑化歯車
a 第1の平滑化歯車の回転軸
b 第2の平滑化歯車の回転軸
c 第3の平滑化歯車の回転軸
d リングギヤの回転軸
Ai 内側の平滑化歯車
Bi 内側の平滑化歯車
Ci 内側の平滑化歯車
Aa 外側の平滑化歯車
Ba 外側の平滑化歯車
Ca 外側の平滑化歯車
F 径方向の押圧力
M 駆動モーメント
P1 第1のキャリッジの移動方向
P2 第2のキャリッジの移動方向
図1
図1B
図2