特許第6407988号(P6407988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407988光硬化性コーティング組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407988
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】光硬化性コーティング組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20181004BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 7/42 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20181004BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20181004BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20181004BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20181004BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20181004BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D7/40
   C09D7/48
   C09D7/42
   C09D7/47
   C09D7/63
   C09D183/00
   C09D133/04
   B05D7/24 301T
   B05D7/24 302P
   B05D1/26 Z
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   B41J2/01 129
   B41J2/01 501
   B41J2/01 123
【請求項の数】14
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2016-522494(P2016-522494)
(86)(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-525158(P2016-525158A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014063513
(87)【国際公開番号】WO2014207103
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月12日
(31)【優先権主張番号】13173735.5
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512135078
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ヒルガース,クリストフ
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−286115(JP,A)
【文献】 特表2012−517513(JP,A)
【文献】 特開2011−201930(JP,A)
【文献】 特開2012−081742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 1/00−7/26
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされる基材の表面上に、
a)少なくとも1つの光硬化性成分、
b)レーザー動的光散乱法で測定したD50<0.5μmの平均粒径を有する少なくとも1つの充填材、
c)任意にて1以上のシランまたはシロキサン、
d)少なくとも1つのUV安定剤、
e)少なくとも1つの光重合開始剤、
f)レーザー動的光散乱法で測定したD50>0.5μmの平均直径粒径を有する粒子状の非膨潤性充填材f1)および膨潤性または可溶性のポリマーf2)からなる群から選択される少なくとも1つの成分、および
g)任意にて1以上の溶媒、および
h)任意にて1以上の補助剤を含む、光硬化性コーティング組成物を適用するステップを含む、基材をコーティングするためのコーティング方法であって、
前記コーティング方法が、
i)基材を備えること、
ii)前記基材上へ装飾、パターンまたはイメージを形成すること、
iii)前記の装飾、パターンまたはイメージの表面上に、前記光硬化性コーティング組成物をスプレーすること、
iv)任意にて前記のコーティングされた表面を乾燥させること、ならびに
v)前記のコーティングされた基材に紫外線を照射すること
のステップを含む、コーティング方法。
【請求項2】
前記光硬化性成分a)が、1以上の官能性アクリラート基を有する少なくとも1つのアクリラートを含む、請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
前記光硬化性成分a)が、2から4のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラート、および5以上のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラートを含む、請求項1又は2に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記成分f1)が、シリカから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項5】
前記成分f)が、膨潤性または可溶性のポリマーf2)から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項6】
前記成分f)が、ポリアクリラートおよびポリメタクリラートからなる群から選択された膨潤性のポリマーf2)から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項7】
前記光硬化性コーティング組成物が25℃にて1〜400mPa・sの動的粘度およびD=10s−1の剪断率を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項8】
v1)200nm未満の波長の紫外線を前記のコーティングされた基材に照射すること、そしてその後、
v2)200〜440nmの波長の紫外線を照射すること、
のステップを含む、請求項からのいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項9】
前記の装飾、パターンまたはイメージを形成するステップii)および前記の組成物をスプレーするステップiii)は、インクジェット印刷によって実施される、請求項からのいずれか一項に記載のコーティング方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のコーティング方法により得られる硬化した組成物を含むコーティングされた物品。
【請求項11】
請求項10に記載のコーティングされた物品の屋外用途としての使用。
【請求項12】
a)基材、
b)任意にて前記基材上の少なくとも1つのプライマ層、
c)着色性または装飾性の層、および
d)請求項1からのいずれか一項に記載の前記光硬化性コーティング組成物の硬化により形成された透明なトップコート層、
を含む多層膜コーティングを有する、請求項10に記載のコーティングされた物品。
【請求項13】
装飾要素、標識、ステッカー、自動車部品、眼鏡、眼鏡フレーム、筆記用具、ディスプレイ、他の光学製品、可撓性のフィルムおよびシート、剛性のフィルムおよびシート、ならびに、キーパッドから選択される、請求項10または12に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
光硬化性コーティング組成物であって、
a)少なくとも1つの光硬化性成分、
b)D50<0.5μmの平均粒径を有する少なくとも1つの充填材、
c)任意にて1以上のシランまたはシロキサン、
d)少なくとも1つのUV安定剤、
e)少なくとも1つの光重合開始剤、
f)ポリブチルメタクリラートから選択される膨潤性または可溶性のポリマーf2)から選択される少なくとも1つの成分、
g)任意にて1以上の溶媒、および
h)任意にて1以上の補助剤を含む、光硬化性コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーコーティング方法、特にインクジェットコーティング方法により有利に適用できる、光硬化性コーティング組成物に関する。当該光硬化性コーティング組成物によって、コーティングまたは印刷された装飾表面を、透明で明瞭な、耐候性およびスクラッチ耐性のトップコートでさらにコーティングすることができる。好適な方法においては、このトップコートはデジタル印刷方法により適用されることになり、ここで光硬化性組成物はインクジェットノズルを通じて適用され、そして基材上のフィルムは、光、特に紫外線を照射することによって硬化プロセスを受ける。
【背景技術】
【0002】
技術的問題
スクラッチ耐性を付与する光硬化性の、例えばアクリラート組成物によるコーティング方法は、公知技術である。このようなコーティングは、通常高い光沢を有している。コーティングの技術分野におけるいくつかの適用では、より低い光沢レベルのスクラッチ耐性を付与する光硬化性コーティングを提供することが望まれている。スプレー、ディップ、フロー、またはローラーによるコーティングなどの通常のコーティング方法だけでなく、特にデジタル印刷方法によっても、これらコーティング組成物を適用することはさらに望まれている。
【0003】
一般的なつや消し剤を含む低い光沢レベルとなるUVラッカーでは、当該つや消し剤がプリントヘッドのジェットノズルを通過することができない平均粒径を有することから、インクジェットヘッドまたはノズルによっては簡単に適用することができない。シリカ、シルセスキオキサン、例えばTospearl(登録商標)マイクロスフェア(モメンティブ)など、ZnOおよびその同種のもの、あるいは他の無機または有機の粒子、例えばポリオレフィン材料(ワックス)などから選択される典型的なつや消し剤の粒子は、ある時間を経過すると、プリントヘッドのジェットノズルを物理的に詰まらせることになる。プリントヘッドの典型的なノズルの直径は、10〜40μmである。つや消し剤の典型的なサイズは、0.5μmより大きく20μmまでの範囲である(D50:平均(直径)粒子サイズ)。充填材によって生じるノズル閉塞の問題を回避するため、より大きな直径を有するノズルを適用することができる。しかしながらその結果として、当該ノズルはより大きな液滴を形成し、そして例えば低い解像度のイメージを作製することになる。
したがって、つや消し表面を有する光硬化性コーティング組成物であって、そのコーティング組成物が、スプレーノズル装置、特にインクジェット装置にて処理されるのに特に適しているものを提供することが望まれていた。
【0004】
技術的現状
EP 1381519 A1は、プライマ処理された基材であって、その上に照射硬化性の着色インク組成物がインクジェットによって適用されたもの、および、インクジェット前に基材上に施されたプライマ層にインクジェットされる照射硬化性インクを使用する、インクジェット印刷方法を開示している。ここではインクとプライマと間の粘着力最適化に焦点を置いている。
【0005】
US 7423072 B2(US 2002―0086914 A1またはEP 1355999 A2)は、屋外基材用の、顔料による着色の有無の両方における、光硬化性アクリル組成物を開示している。この開示されたアクリラートの組成物は、インクジェットプリントヘッドのノズルによって、スプレーされている。この特許の発明者等は、いくつかの実施例において深刻なノズルでの閉塞を観察している。
【0006】
EP 1404527 A1は、プライマポリマーとインクモノマーとの間の溶解度パラメータの差より、プリント品質を改善することを明らかにし、プライマ処理された基材上へインクを適用することを教示している。そのプライマおよびインクの組成物は、充填材としの他の添加フュームドシリカのうち、0.1〜10重量%のシリカを含むことができる。
【0007】
上述した特許のいずれも、インクジェット方法に関連し、最終的に硬化したコーティングにおいて、ASTM D 523により60°で測定される50未満の光沢を有するつや消し表面とする、低い光沢レベルの生成に関しては記載されていない。US 7423072 B2の開示では、高い光沢コーティングは、ASTM D 523による60°で70より高い光沢レベルを有していることが記載されている。これはモノマーのN―ビニルピロリドンおよびN―ビニル―カプロラクタムは、硬化したインクジェットコーティングにて高い光沢レベルを保つように選択されているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的
本発明の基礎となる目的は、つや消し表面を有する光硬化性コーティング組成物であって、そのコーティング組成物は、特にスプレーノズル装置、好ましくインクジェット装置により、スプレーコーティング方法により処理されるのに特に適したものを提供することである。さらに、その得られたコーティングは、耐候性およびスクラッチ耐性の、透明無色のつや消し表面を提供することである。
【0009】
発明の概要
本発明者は、驚くべきことに、選び出したスクラッチ耐性の光硬化性コーティング組成物が、摩耗や紫外線による劣化に対する好適な耐性を損なうことなく、コーティング組成物のかなり低い粘度、例えばISO 12058により測定の、50℃で1〜50mPa・s、25℃で1〜400mPa・sの各々の粘度を有しながら、つや消し剤を備えることができることを見出した。この様な光硬化性コーティング組成物は、従来のインクジェットヘッド、例えば圧電プリントヘッドで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
したがって、本発明によれば、以下を含む光硬化性コーティング組成物が提供される:
a)少なくとも1つの光硬化性成分、
b)D50<0.5μmの平均直径粒径を有する少なくとも1つの充填材、
c)任意にて1以上のシランまたはシロキサン、好ましくは1以上のアルコキシシラン、
d)少なくとも1つの紫外線安定剤、
e)少なくとも1つの光重合開始剤、
f)D50>0.5μmの平均粒径を有する粒子状の非膨潤性充填材f1)および膨潤性または可溶性のポリマーf2)からなる群から選択される少なくとも1つの成分、
g)任意にて1以上の溶媒、ならびに
h)任意にて1以上の補助剤。
【0012】
光硬化性成分a)
好ましい実施態様において、光硬化性成分a)は1以上の(ここおよび本出願において、アクリラート基およびメタクリラート基を含む)官能性アクリラート基を有する、少なくとも1つのアクリラート官能性化合物を含む。
【0013】
光硬化性成分a)は、好ましくは、1以上の官能性のアクリラート基またはメタクリラート基を有する、アクリラート官能性モノマー、オリゴマーまたはポリマーから選択される。この文脈におけるモノマーは、調製の間に、オリゴマー化またはポリマー化ステップに供されていない、(メタ)アクリルエステルなどの通常の官能性アクリラート化合物である。
【0014】
この種のアクリラートの代表的な例として、アクリル基、メタクリル基、エチルアクリル基などを有する多官能性アクリラート化合物であって、好ましくは2以上の官能基を有するものが挙げられる。
【0015】
好ましくは光硬化性成分a)は、2から4の、好ましくは2のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラート、および5以上、好ましくは6のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラートから選択される、少なくとも2つのアクリラート成分を含む。
【0016】
より好ましい実施態様において、光硬化性成分a)は、ウレタンアクリラート、すなわちウレタン基およびアクリラート基を有する化合物を含む。
【0017】
また更により好ましい実施態様において、光硬化性成分a)は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのウレタンアクリラートであって、各々が少なくとも2つの官能性アクリラート基、特に2から6の官能性アクリラート基を有するものを含む。
【0018】
特に好ましい実施態様において、光硬化性成分a)は、2つの官能性アクリラート基を有する少なくとも1つのウレタンアクリラート(つまり、ウレタンジアクリラート)および6つの官能性アクリラート基を有する少なくとも1つのウレタンアクリラート(つまり、ウレタンヘキサアクリラート)を含む。このようなウレタンアクリラートは、例えば商標Ebecryl(商標)(Cytec Specialty Chemicals)、Sartomer(登録商標)(Arkema Group)、Desmolux(登録商標)(BayerMaterialScience)、Miramer(登録商標)(Miwon Company)、またはEtercure(登録商標)(Eternal Company)にて市販されている。
【0019】
好ましくは、アクリラートは、6官能以上の官能性脂肪族アクリラートおよびウレタンアクリラート、ジペンタエリトリトールペンタアクリラート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリラート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、エトキシル化またはプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、ブタンジオールジアクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、脂肪族二官能性ウレタンアクリラート、テトラアクリラートモノマー、高分岐オリゴマーを含む脂肪族ポリエステルアクリラートオリゴマー、および次の段落に記載のアクリラート、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
より特に好ましい実施態様において、好ましくはウレタンアクリラートに加えて、光硬化性成分a)は、ウレタン官能基を含まない多官能性アクリラート化合物を少なくとも1つ含むものであって、その類としては多官能性アルコールに基づくものであり、それは例えば、ポリエステルアクリラートオリゴマー、1,4―ブタンジオールジアクリラート、1,6―ヘキサンジオールジアクリラート、トリス(2―ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリラート、1,8―オクタンジオールジアクリラート、1,10―デカンジオールジアクリラート、3―メチル―1,5―ペンタンジオールジアクリラート、および脂肪族ポリエステルポリアクリラートなどである。
【0021】
アクリラート官能性化合物は、ラジカルによって活性化し、そしてラジカル開始される架橋反応が起こりうる部分を有する。架橋反応のラジカル開始は、好ましくは紫外線照射によって誘発される。
好適なアクリラート化合物a)は、6000グラム/molまでの数平均分子量(標準ポリスチレンのGPCにて測定)を有する。特に好適なアクリラートは、150〜5000グラム/molの分子量(標準ポリスチレンのGPCにて測定)を有する。
【0022】
アクリラートの好ましい群は、3以上の官能基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリラートであり、これは好ましくは5以上の官能基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリラートを含む。官能基の数が6以上である場合、コーティングフィルムの耐候性は優れており、また優れた耐摩耗性をもたらす架橋密度が増加する。
【0023】
この種の脂肪族ウレタン(メタ)アクリラートの例として、ポリイソシアネート化合物、ポリオール、および水酸基を有する(メタ)アクリラートからなる反応生成物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の例として、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびそのオリゴマー、2,2,4―トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、例えばHDI―イソシアヌレート(トリマー)など、脂環式ジイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネートおよびそのオリゴマー、例えばトリマー(Desmodur Z4470)など、ならびに脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。脂環式ポリイソシアネート、例えばイソホロンジイソシアネートなどに基づくものは、特に好適である。
【0024】
イソホロンジイソシアネートによるペンタエリトリトールトリアクリラートの反応生成物が特に好適である。日本化薬製の二官能性モノマーである、トリシクロデカンジメタノールジアクリラートもまた好適である。
【0025】
ウレタン構成単位は、特に前記イソシアナートおよびポリオール成分の反応生成物である。好適なポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6―ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、およびペンタエリトリトールが挙げられる。他のポリオール成分は、アクリルユニットを含むものであって、例えば水酸基を有する(メタ)アクリラートであり、これらとしては、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリラート、およびジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリラートならびに同等のものが挙げられる。上述したポリイソシアネート化合物、ポリオールおよび水酸基を有する(メタ)アクリラートに反応を起こさせることによって、6官能以上の脂肪肪族ウレタン(メタ)アクリラートが得られる。この反応のために通常の触媒を使用することができる。市販の脂環式ウレタン(メタ)アクリラートとしては、例えば「EBECRYL 1290」が挙げられる。
【0026】
本発明に適したアクリラート化合物の例としては、市販の、例えば下記のもの、およびその組み合わせである。

1)またEternal EM 231、SR 351 Sartomer
2)またSR 238 Sartomer
【0027】
特に好適な光硬化性成分a)は、以下の4種類のアクリラートを含む:I)多官能アクリラート、II)トリアクリラート、(任意)III)ジアクリラートおよび(任意)IV)脂肪族化合物ウレタンアクリラート。
【0028】
光硬化性コーティング組成物におけるアクリラート成分の好適な重量比は、
I)ヘキサアクリラート/多官能性アクリラート(f≧5):8〜48重量部、
II)トリアクリラート:10〜33重量部、
III)脂肪族化合物ジアクリラート:0〜24重量部、および
IV)脂肪族化合物ウレタンジアクリラート:0〜33重量部である。
【0029】
I)からIV)の群の好適なアクリラートは、以下の通りである:
I)6官能脂肪族ウレタンアクリラート、または脂肪族多官能性アクリラート(f≧6)、例えば、Ebecryl 1290、1290K、8301、8301R(Cytec Specialty Chemicals)、Etercure 6145―100、6147、6161―100、8150―100(Eternal)、PU 810(Miwon)、Desmolux U400(Bayer Material Science)、CN9010EU(Sartomer)、Genocure 4690(Rahn);MU 9800(Miwon)、Etercure 6195―100(Eternal)、
II)1200mPa・s未満の動粘度(25℃)を有する脂肪族トリアクリラート、例えば、ペンタエリトリトールトリアクリラート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、
III)350g/mol未満の分子量および40mPa・s未満の粘度(25℃)を有する脂肪族ジアクリラート、例えば、SR606A(Sartomer)、SR 341(Sartomer)、CN 595(Sartomer)、HDDAおよびTPGDA(Cytec Specialty Chemicals)、1,4―ブタンジオールジアクリラート(SR 213、Sartomer)、
IV)4000g/mol未満の分子量Mn(GPCにて測定)を有する脂肪族ウレタンジアクリラート、例えば、Sartomer(Arkema Group)のCN 965、CN 981、CN 983、CN 991、CN 996。
【0030】
本発明の光硬化性コーティング組成物における光硬化性成分a)の量は、溶媒以外のすべての成分である光硬化性組成物の固形分に対して、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは15〜85重量%、さらにより好ましくは20〜80重量%である。
【0031】
光硬化性成分a)は、シランまたはシロキサン成分c)と異なっており、光硬化性成分a)は一般的にシラン基またはシロキサン基を有しておらず、また好ましくはシリコーンがないため、後述するようにシランまたはシロキサン成分c)もまた光硬化性アクリラートを含むことができる。
【0032】
成分b)
成分b)は、D50<0.5μmの平均直径粒径を有する少なくとも1つの充填材である。それは、D50<0.5μm、好ましくは2〜100nm、より好ましくは5〜50nmの平均(直径)粒径を有する、少なくとも1つの、好ましくは無機充填材から選択される。この種の充填材の目的は、特に硬化コーティングフィルムのスクラッチ耐性を増大させることにある。これらの充填材の粒径は、実質的に可視光を散乱させないくらいに十分に小さく、そしてこれらの充填材は、実質的に凝集を形成しない。この種の充填材は、コーティング組成物の粘度を許容できない高いレベルまでは増大させない。
【0033】
充填材b)としては、Al、Ce、Hf、La、Si、Sn、Ti、ZnおよびZrから選択される金属の酸化物、酸および/または水酸化物が挙げられ、好ましい元素はSiである。粒子は、0.5μm未満、好ましくは0.4μm未満、より好ましくは0.3μm未満、さらに好ましくは0.2μm未満の平均粒径D50を有する。
【0034】
平均粒径D50は、特に、マルバーン ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)によるレーザー光散乱法により測定され、これはまた、ISO 13320―1による光子相関分光法または準弾性光散乱法として知られている(参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamiclight_scattering)。この方法は、特に非硬化コーティング組成物では最適な判定方法ではあるものの、ある場合には、電子顕微鏡(TEM)で平均粒径D50を測定することも十分である。この種の方法は、硬化コーティングフィルムで特に使用することができる。特に、粒子は関連するTEM(透過型電子顕微鏡)写真において評価することができ、また選別収集粒子の平均サイズ値は、IS013322―1によるソフトウエアプログラムによって算出することができる。
【0035】
図1aおよび図1bは、異なる2つの倍率(1:250000および1:500000)での、充填材成分(コロイド状シリカb))の分散体のTEM顕微鏡写真を示す。粒径は500nmよりも非常に小さい。
【0036】
図2において、測定した充填材成分b)は、商品名FCS100のコロイド状シリカの分散体であり、それはヘキサンジオールジアクリラート中のメタクリロキシプロピルトリメトキシシランで処理したコロイド状シリカの固形分に対して50重量%であり、1重量部のFCS100に対し100重量部のイソプロパノールの重量比にてイソプロパノールで希釈されている。
【0037】
成分b)として可能な充填材は、好ましくは、組成物全体の粘度を適切な低レベル、ISO 12058による25℃での測定で、特に500mPa・s未満、好ましくは1〜400mPa・sに維持する種類の充填材からなる群から選択される。さらにこの種の充填材は、25℃で充分な貯蔵寿命をもたらす比較的に一定の粘度を保持しなければならず、すなわち、ゲル化はコーティング組成物の調製後、最低でも360日の期間内に発生してはならない。加えて充填材成分b)は、摩滅またはスクラッチに対する耐性を改良するのに適していなければならず、また硬化コーティング組成物に充分な透明度を提供しなければならない。略球状の形の粒子を有し、0.005〜0.25μm(5〜250nm)の範囲の平均粒径D50であって、例えばAlOH、TiOH、ZrOH,SiOHなどの特に反応性水酸基の縮合の下で凝集を形成する傾向が低い充填材が、これらの必要な条件を最も満たすことができる。したがって、Al、Ce Ti、ZrおよびSiからなる群から選択される酸化物充填材、最も好ましくはSiの酸化物充填材を使用することが好ましい。この種の酸化物充填材は、特にゾル・ゲル技術によりコロイド分散体として調製され、またこれらのコロイド分散体は、粒子の表面を処理することによって、好ましくは安定化される。好適なコロイド状材料はコロイド状シリカであり、アルコールなどの有機溶媒、また光硬化性成分a)において、好適に使用され分散される。コロイド状シリカとしては、様々な微細化SiO粒子が挙げられ、それは本発明のコーティング組成物の特性を改善するために使用することができる。更なる説明は、US 4,027,073にて参照される。
【0038】
好適なコロイド状シリカとして、Grace Company製の「Ludox」、Nalco Chemical Company製の「Nalco」、Akzo Nobel製の「Levasil、またはBindzil」、あるいは日産化学製の「ORGANOSILICASOL」などの商標名のものが利用できる。本発明の組成物に使用される好適なコロイド状シリカの例としては、特に、Nalco Chemical Companyから入手可能なNalco(登録商標)1034A、Naico(登録商標)1057、およびNalco(登録商標)1129、またはAkzo Nobel社製のLevasil 200E等のLevasil(登録商標)タイプが挙げられる。さらに、Highlink(登録商標)タイプを使用することができる。
【0039】
他の適切なシリカ粒子としては、SNOWTEX 20、SNOWTEX 30、SNOWTEX 40、SNOWTEX UP、およびSNOWTEX OUP(全て日産化学工業製)が挙げられる。
【0040】
好ましくは充填材成分b)の平均粒径D50は、5nmより大きい。充填材成分b)の平均直径粒径D50が5nm未満である場合、割れの形成により、基材に対する粘着力が劣化することがありえる。
【0041】
特に、少なくとも5nm(最高でも500nm未満、好ましくは400nm未満、好ましくは300nm未満、好ましくは200nm未満、好ましくは100nm未満)の平均粒径D50を有するコロイド状シリカのようなコロイド状酸化物は、割れの抑制と粘着力の間の良好なバランスを示している。500nmより大きい粒径は、透明度が損なわれるため不利である。好適な粒子は、均一な球形状を備えている。
【0042】
原則として、充填材成分b)として通常多様な粒径分布をもたらす1以上の種類の充填材成分b)を使用することは可能である。この種の場合、全ての種類の充填材の平均粒径は、0.5μm以下、好ましくは0.4μm未満である。単峰性の粒子分布を有する充填材を使用することが好ましい。
【0043】
好適なコロイド状シリカは、ケイ酸ナトリウム溶液を酸性化することによって調製され、そこで水溶性のコロイド状シリカ分散体が形成される。このようにして、例えば、水に分散された10〜50重量%のSiOを含むコロイド状シリカが提供される。好適な水溶性のコロイド状シリカ分散体は、pH3より大きく、7未満の範囲のpH値、好ましくはpH4〜6.5を有しており、コーティング組成物の即時のゲル化を防止し、そして低いNaOの低い含有量、例えば2重量%未満、好ましくは1重量%未満のNaOを有する。pH値は、水中にて約34重量%のSiO含有量にて測定される。
【0044】
ケイ酸ナトリウム溶液を酸性化するための適切な酸は、塩酸、酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、ギ酸、グルタミン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸およびこれらと同等のものなどの有機酸および無機酸を含む。またイオン交換樹脂のようなポリマー酸を使用することができる。利用される特定の酸はシラノール縮合比率に直接的な影響を及ぼし、それはコロイド状シリカ組成物の貯蔵寿命を決めることになる。
【0045】
一般的な充填材成分b)の水性分散体は、光硬化性成分a)、特にアクリラート成分a)と混合できるようにするため、少なくとも部分的に有機相へと移送される必要がある。好ましくは、水性コロイド分散体の水相は、徐々に、C1―C4アルコール(好ましくはイソプロパノール)での共沸蒸発により置き換えられ、そして例えばモノプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテルといった有機溶媒が分散剤として加えられる。任意にて光硬化性組成物の成分a)は、分散剤として、単独または他の非反応性有機溶媒と組み合わせて使用されることができる。さらに溶媒としては、アセトン、ブチルセロソルブおよびグリコールエーテルなどの、水溶性の極性溶媒が挙げられる。
【0046】
コロイド状金属酸化物b)は、特に水またはアルコールの蒸発の後、水酸基の縮合によりゲル化する傾向があるため、これらの溶媒が取り除かれて、粒子がバインダマトリクスに混合される前に、前処理をすることが好ましい。付加反応性基をコロイド状金属酸化物の表面上に導入することができるため、この前処理ステップは、酸化物コロイド状材料の性能を高めることになる。好ましくはこの種の前処理ステップの間、シリカ表面にある水酸基は、シランまたはシロキサンなどの処理剤と反応される。好ましい実施態様において、この処理は、成分c)の定義によるシラノールまたはシランの使用を含む。水酸基の縮合反応が抑制されるため、特にこの種の前処理ステップは、保存下でのゲル化を防止することができる。
【0047】
コロイド状充填材とシランまたはシロキサンとの間の反応は、特に貯蔵寿命期間を増大させて、充填材分散体、また光硬化性組成物のゲル化を抑制する。
【0048】
充填材成分b)の前処理ステップで使用するシランまたはシロキサンは、さらに架橋性官能基、特にアクリラート基を含む場合、充填材成分b)は、バインダ成分a)の架橋反応に加わることになる。この場合、一般的に硬化した組成物の耐摩耗性が向上する。
【0049】
縮合触媒は、充填材成分b)の表面の水酸基と、例えばアルコキシシランとの間の反応を促進することができる。好適な縮合触媒は、カルボン酸、例えばギ酸など、またはその塩、例えばアンモニウム、ナトリウムまたはカリウムの塩など、四級アンモニウムカルボキシラート、例えばベンジルトリメチルアンモニウムアセタートなど、からなる群から選択される。触媒の量は、充填材成分b)の分散体の量に対して、好ましくは約1.5重量%である。
【0050】
充填材成分b)の処理前のステップで使用される好適なシランは、特に以下に定義される成分c)として使用されるものを含み、また成分c)において以下に定義される式X3−nSi―Rを有することができる。
【0051】
シリルアクリラート変性コロイド状シリカの例としては、モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ製のFCS100、または、好適なものとして、ClariantによるいわゆるハイリンクOG分散体であって、これはイソプロパノールまたはジーおよび/またはポリアクリラートモノマーにおいて30〜50重量%の間のシリルアクリラート(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)変性コロイド状シリカを含むものである。調製方法は、例えば、US 5,468,789の実施例に記載されている。架橋反応するシリカ粒子として使用することができる他の市販の製品としては、荒川化学工業製の「BEAMSET HC―900」および「BEAMSET HC―910」、並びにJSR製の「DESOLITE Z7501」および「DESOLITE Z7503」が挙げられる。
【0052】
硬化性アクリラートコーティング組成物の充填材b)の量は、粘着力、耐摩耗性、耐候性、紫外線耐性、また熱割れ耐性などの、必要な特性に応じて調整される。本発明の光硬化性コーティング組成物の充填材b)は、好ましくは硬化性コーティング組成物の固形分における約1重量%から約40重量%の量で存在し、前処理剤が上述のように使用される場合、前処理剤がこのような重量%に含まれることを考慮する。特に好ましい実施態様においては、充填材b)は、光硬化性コーティング組成物の固形分(すなわち溶媒以外のすべての成分)において、約1.5〜約35重量%、好ましくは約2〜約30重量%、より好ましくは約2〜約25重量%の量で存在する。充填材成分b)の量が少なすぎるときには、スクラッチ耐性が劣ることがあり、また充填材成分b)の量が多すぎるときは、硬化フィルムの割れが観察されることがある。
【0053】
成分b)のSiOの量の変化、および充填材成分b)の表面の反応性シリル基(また成分c)の使用により任意に導入される)の量の変化により、結果として生じるハードコートの硬度、割れおよび耐摩耗性などの物性に影響を与えることが見出されている。下記の試験方法により定義されるスクラッチ耐性を向上させるため、溶媒以外のすべての成分に対して、成分b)の濃度が5重量%より大きいことが好ましい。
【0054】
シランまたはシロキサン成分c)
充填材成分b)がゲル化に対して薬剤によりまだ安定していない場合、反応性シランまたはシロキサンを使用することは、本発明の光硬化性コーティング組成物の耐摩耗性とともに貯蔵寿命時間を増大させるための適切な方法である。後述の成分f1)の作用によりつや消し効果をもたらすため、成分f)として更に酸化物充填材、例えば酸性または塩基性の酸化物が使用される場合には、成分c)を使用することが特に好まれる。
【0055】
好適なシランは、下記の式のものが挙げられる:
3―nSi―R
ここでn=1〜3、
X=アルコキシ、アルカノンオキシモ、例えば、ブタノンオキシモ、アルケニルオキシ、アルカノイルオキシ、アルカノイルアミノ(カルボキサミド)、好ましくはX=アルコキシ、より好ましくはC1―C4アルコキシ、
R=C1―C10アルキル、C2―C14アルケニル、例えば、ビニル、アリルおよびヘキセニル、ビニルオキシアルキル、メルカプトアルキル、エポキシアルキル、アクリロキシアルキル、メタクリロキシアルキル、特にアクリロキシプロピル、メタクリロキシプロピル。
【0056】
特に好適な化合物c)は、ジ―およびトリメトキシまたはジ―およびトリエトキシシランからなる群から選択され、これらは架橋性官能基として、例えばメタクリロキシプロピル、アクリロキシプロピル、メタクリロキシメチル、アクリロキシメチルを含む。化合物c)の最も好適な例としては、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシランおよびメタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0057】
他のアルコキシシランの例としては、ビニルトリアルコキシシラン、3,3,3―トリフルオロプロピル―トリアルコキシシラン、ガンマ―グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシランおよびエチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ならびにイソブチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0058】
本発明の好ましい実施態様において、光硬化性コーティング組成物は、SiOのゲル化を最小化し、そしてスクラッチ耐性を改善するため、成分b)、特にSiOの、10重量部当たりシリルアクリラートを少なくとも1重量部含む。
【0059】
UV安定剤成分d)
耐候性、特に紫外線による長期照射に対する耐性を高めるため、紫外線安定剤を使用することが必要である。紫外線としては、ここでは特に200〜400nmの波長の光が挙げられる。
【0060】
UV安定剤の量は、向上した耐候性をもたらすのに充分な量でなければならないが、同時に光硬化性組成物のため、またフィルムの厚みにおいて、充分な硬化速度を達成しなければならない。他の必要な条件としては、これらの安定剤が、バインダマトリクスにおいて、または少なくとも硬化性組成物において、ある程度の可溶性を与えなければならないということである。
【0061】
ここで耐候性という用語は、硬化したフィルムが特に後述する基準を満たすことを意味する。
【0062】
なかでも代表的な1つの方法は、フォルクスワーゲン社の方法であるPV3930/PV3929であり、それぞれがフロリダおよびアリゾナ/カラハリのシミュレーションである。この試験プロトコルを使用した結果により、割れの形成、目に見える劣化、すなわち表面が色および光沢に関して変化しない状態を保つことを評価することができる。これは、340nmの0.5W/mおよび0.6W/mの特定の発光を有するキセノンランプでの照射を含む。他の有用な加速風化方法としては、340nmの0.77W/mを使用するメソッドASTM G 154である。本発明の組成物は、少なくとも3200hの照射に対して目に見える劣化がなく合格するものであり、これはフロリダ、アリゾナおよびカラハリの気候における屋外の天気に少なくとも2年晒されることに匹敵するものである。
【0063】
成分d)は基本的に2種類のUV安定剤に区別され、それらは紫外線の悪影響を抑制する、異なる作用を有している。1種類のUV安定剤は紫外線を吸収することにより作用するものであり(以下にUV吸収剤d2)と称される)、また他の種類のUV安定剤は、紫外線照射で形成されるラジカルを消すことにより作用するものである(以下にUV安定剤d1)と称される)。本発明では、両方の種類のUV安定剤の混合が好ましい。
【0064】
UV安定剤d1)
UV安定剤d1は、通常、いわゆる「ヒンダードアミン」(Hindered Amine Light Stabilizers(HALS))からなる群から選択される。例として、特にTinuvin(登録商標)123、 Tinuvin 292、または Tinuvin 152(BASF)、Sanduvor(登録商標) 3058(Clariant)が挙げられる。
【0065】
UV吸収剤d2)
本発明者らによって、UV吸収剤d2)は、UV安定剤d1)と組み合わせたとき、硬化コーティングの長期間の耐候性を達成する第2の種類の安定剤として特に適切であることが明らかにされている。これらのUV吸収剤は、好ましくは、トリアジン、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾールおよびレゾルシノールからなる群から選択される。トリアジン材の例としては、Cibaの製品のTinuvin(登録商標)400、または、Cyagard(登録商標)1164、例えばCytecの製品、2―(4,6―ジフェニル―1,3,5―トリアジン―2―イル)―5―(ヘキシルオキシ)―フェノール、2―(4,6―ビス(2,4―ジメチルフェニル)―1,3,5―トリアジン―2―イル―5―オクチルオキシ)フェノールなどがある。
【0066】
ベンゾトリアゾールの例としては、2―(2’―ヒドロキシ―5’―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2―(3’―tert―ブチル―2’―ヒドロキシ―5’―メチルフェニル)―5―クロロベンゾトリアゾール;2―(3’,5’―ジ―tert―ブチル―2’―ヒドロキシフェニル)―5―クロロベンゾトリアゾール;2―(2’―ヒドロキシ―5’―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2―(2―ヒドロキシ―5―メチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2―(2―ヒドロキシ―5―tertブチルフェニル)―5―クロロベンゾトリアゾール;2―(2―ヒドロキシ―3,5―ジ―tert―ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2―(2―ヒドロキシ―5―tert―ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2―(2―ヒドロキシ―4―オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾールおよびそれらの混合物が、挙げられる。
【0067】
この種のUV光吸剤はまた、US 4,278,804;US 4,374,674;およびUS 4,419,405;US 4,299,746;US 4,495,360およびUS 4,525,426;US 5,391,795;US4,914,143;US 4,544,582;US 4,308,317に記載されており、これらは参照によりここに組み込まれる。
【0068】
これらの材料の多くは、必要に応じて、有機溶媒溶液の形で供給されることができる。
【0069】
他のUV安定剤の群は、シアノアクリラート、ヒドロキシルベンゾフェノン、オキサニリド誘導体、ポリ(エチレンナフタレート)、ホルムアミジン、シンナマート、ベンジリデンマロネート誘導体などのマロネート及びそれらの混合物から選択される。
【0070】
これらの紫外線吸収剤の例は、2,2’―ジヒドロキシ―4,4’―ジメトキシベンゾフェノン;2,4―ジヒドロキシベンゾフェノン;2,4,2’,4’―テトラヒドロキシベンゾフェノン;2―ヒドロキシ―4―オクチルオキシベンゾフェノン;2―ヒドロキシ―4―メトキシベンゾフェノン;フェニルサリチラート;フェニルベンゾアート2―ヒドロキシベンゾフェノン;5―クロロ―2―ヒドロキシ―ベンゾフェノン;2―ヒドロキシ―4―n―オクトキシベンゾフェノン;4―ドデシルオキシ―2―ヒドロキシベンゾフェノン;2―ヒドロキシ―4ーオクタデシルオキシベンゾフェノン;2,2’―ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン;パラtert―ブチルフェニルサリチラート;p―(1,1,3,3―テトラメチルブチル)フェニルサリチラート;3―ヒドロキシフェニルベンゾアート;フェニレン―1,3―ジベンゾエート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0071】
好適な紫外線吸収剤d2)の群としては、EP 824119によるレゾルシノール誘導体からなる群から好ましくは選択され、またEP 824119は参照によりここに組み込まれる。
【0072】
いくつかの好ましい実施態様において、UV吸収剤は、使用されているシランのいずれかまたは両方と共反応することができるものである。この種の材料は、US 4,914,143、US 4,680,232、およびUS 4,374,674に記載されており、これらは参照によりここに組み込まれる。
【0073】
最も好適なレゾルシノールは、ジベンゾイルレゾルシノール誘導体を含み、例えば、4,6―ジベンゾイル―2―(3―トリアルコキシシリルアルキル)レゾルシノール、および好ましくは4,6―ジベンゾイル―2―(3―トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールなどである。1つの好適な例は、モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ社によるSDBRである。
【0074】
R’=トリアルコキシシリルアルキル
【化1】
【0075】
UV吸収剤は、コーティング組成物の固形分において、2〜20重量%の濃度で使用することができる。
【0076】
本発明によれば、特に好ましい態様において、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、特にTinuvin(登録商標)123、Tinuvin 292またはTinuvin 152(BASF)、ならびにレゾルシノール、例えば4,6―ジベンゾイル―2―(3―トリアルコキシシリルアルキル)レゾルシノール、また好ましくは4,6―ジベンゾイル―2―(3―トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールなど、の組み合わせが、UV安定剤として使用される。
【0077】
光重合開始剤成分e)
光硬化性組成物は、光硬化性組成物のラジカル開始の架橋または重合反応を可能にするよう、1以上、好ましくは1または2種の光重合開始剤e)を含む。
【0078】
光重合開始剤は、好ましくはUVまたは可視光によって活性化されることができる。光重合開始剤の例としては、1―フェニル―2―ヒドロキシ―2―メチル―1―プロパノン;オリゴ{2―ヒドロキシ―2―メチル―1―[4―(メチルビニル)フェニル]プロパノン};2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニルプロパノン―1オン(DAROCURE(登録商標)1173);ビス(2,6―ジメトキシベンゾイル)―2,4,4―トリメチルペンチルホスフィンオキシド;2,4,6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2―メチル―1―[4(メチルチオ)―2―モルフォリノプロパン]―1―オン;1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;4―(2―ヒドロキシ)フェニル―2―ヒドロキシ―2―(メチルプロピル)ケトン;2,2―ジメトキシ―2―フェニルアセトフェノン;ベンゾフェノン;安息香酸;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
さらに成分e)としては、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE(登録商標)184、Ciba Specialty Chemicals);1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびベンゾフェノンの重量基準で50:50の混合物(IRGACURE 500、Ciba Specialty Chemicals);2―ベンジル―2―N,Nジメチルアミノ―1―(4―モルフォリノフェニル)―1―ブタノン(IRGACURE 369、Ciba Specialty Chemicals);2,2―ジメトキシ―1,2―ジフェニルエタン―1―オン(IRGACURE 651、Ciba Specialty Chemicals);ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)などが挙げられる。光重合開始剤の混合物は、全体硬化のための長波長の良好な吸収と共に、表層硬化のための短波長の良好な吸収を得るため、使用することができる。成分e)は、好ましくは、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾイン―n―ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、パラ―メトキシベンゾフェノン、2,2―ジエトキシアセトフェノン、α―α―ジメトキシα―フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシラート、エチルフェニルグリオキシラート、4,4’―ビス―(ジメチルアミノベンゾフェノン)、プロピオフェノン、アセトフェノン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2―ジエトキシアセトフェノン、エチルフェニルピロキシラート、フェナントラキノン、および2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニル―プロパン―1―オン、メチルベンゾイルフォルマート、7―クロロチオキサントン、2,4―ジエチルチオキサントン、および2,4―ジイソプロピルチオキサントンといった、チオキサントン光重合開始剤、並びに、例えばジフェニル(2,4,6―トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキシドなどのアシロフォスフィンオキシドといった、アシロフォスフィンオキシド光重合開始剤、からなる群から選択される。
【0080】
アルファヒドロキシケトン+ホスフィンオキシド誘導剤である、UVBおよびUV Aの吸収剤の組み合わせを使用することが好ましい。本発明の好ましい一態様において、光重合開始剤は、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニルプロパン―1―オン、2,4,6―トリメチルベンゾイル―ジフェニル―ホスフィンオキシド Lucirin TPO(BASF)、ビス―(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)を含む。ビス―(2,4,6―トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)および1―ヒドロキシ―シクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)の混合物が特に好ましい。
【0081】
参照によりここに組み込まれる他の光重合開始剤としては、US 3,211,795、US 4,451,634、US 4,558,147、US 3,759,807、US 3,968,305、US 3,966,573、US 4,113、592、US 4,131,529、US 4,130,600、およびUS 4,348,462に開示されている。これらの特許の全ては、光重合開始剤に関する教示につき、参照により本開示に組み込まれる。
【0082】
光重合開始剤に加えて、より長い波長の光を吸収するよう作用し、これにより光重合開始剤を活性化する、感光剤を使用することができる。
光重合開始剤および感光剤は、光エネルギーを吸収または移送するため、特に膜厚の奥行を通して厚手物品が完全に硬化される場合、これらの添加物の量は制限される。フィルムにつき以下に説明されるように、本発明の光硬化性組成物から調製されるコーティングまたは物品は、好ましくは3mm以下の乾燥厚を有する。
【0083】
使用時には光重合開始剤e)が、組成物の固形分(溶媒以外のすべての成分)の0.01〜10重量%の量にて加えられる。光重合開始剤e)の(固形分において)5重量%より多く使用することは、光の伝送を著しく減少させ、物品のより深い部分において充分な光エネルギーが利用できないため、硬化性組成物の硬化を損なうことになりえる。従って、光重合開始剤の使用は、a)からg)の組成物の固形分の総量に対して約1重量%から約6重量%の間が好ましい。感光剤が用いられる場合、特に目的とされたコーティングの厚みに応じて、光重合開始剤の量を調製することは必要となりえる。
【0084】
典型的には、光重合開始剤は、約200nmから約420nmの間の波長の入射光によって活性化される。本発明の配合においては、UV硬化ステップの間、紫外線の一部分を吸収しうる固体粒子が使用されるため、それぞれ異なる波長範囲、すなわち300〜440nmの範囲および表層硬化のための220〜320nmの範囲の、異なる光重合開始剤e)を使用することが好ましい。
【0085】
成分f)
更に必須成分として、本発明の光硬化性コーティング組成物は、D50>0.5μmの平均粒径を有する粒状の非膨潤性充填材f1)、および可溶性または少なくとも膨潤性のポリマーf2)からなる群から選択される、少なくとも1つの成分を含む。この表現は、光硬化性コーティング組成物が、成分f1)または成分f2)のいずれか、あるいは成分f1)および成分f2)の両方を含むことを意味している。
【0086】
成分f1)は、特に、D50>0.5μm、好ましくは0.5μmよりも大きく、50μmまで、より好ましくは1〜20μm、さらにより好ましくは2〜10μmの平均粒子直径を有する無機および有機の充填材からなる群から選択される、いわゆるつや消し剤として使用される。粒径の測定の方法に関しては、成分b)にて上述された、すなわちゼータサイザーが参照される。成分f1)と成分b)とを区別するため、同じ測定方法が使用される。
【0087】
特に、粒径(直径)は、マルバーン ゼータサイザーZSにより、レーザー「動的光散乱法」で測定される。本方法はまた、ISO 13320―1による光子相関分光法または準弾性光散乱法として知られている(http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic light_scatteringも参照のこと)。
【0088】
本発明において使用される粒状の非膨潤性充填材は、特に、光硬化性コーティング組成物の液相において、25℃で1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、および、より好ましくは0.1重量%未満の可溶性を有する充填材を含む。さらに好ましくは、これらの粒状の非膨潤性充填材は、光硬化性コーティング組成物の液相の300重量%以上、好ましくは250重量%以上を吸収しない(充填材成分を、流体成分a)、c)、g)と25℃で2時間混合し、10分間、1000gよりも高い遠心分離によって充填材成分を分離し、任意にて濾過し、湿式充填材を量ることにより、測定される)。一般的に無機充填材は、有機充填材よりも不溶で膨潤しない。
【0089】
充填材は、好ましくは、3°K/分の加熱率の示差走査熱量計による測定により、100℃よりも高い融点を有している。
透明度を容認できない低レベルにはしない、すなわち、400nmの光の伝送が、本発明の硬化した光硬化性コーティング組成物の10μm mm厚で、ASTM 1003で50%よりも大きくするように、充填材および充填材類を使用することが好ましい。
【0090】
これらの粒状の非膨潤性充填材は、0.5μm未満の充填材成分b)の粒径よりも大きい、D50>0.5μmの平均粒径を有している。理論に縛られるものではないが、粒状の非膨潤性充填材、すなわちつや消し剤f)が存在することにより、硬化したコーティングの構造において、光学または電子顕微鏡にて可視の、フィルム表面外観を粗くする粒子を形成する点において効果があると考えられる。
【0091】
特定の態様においては、非膨潤性充填材は、光硬化性成分a)と反応性の基を有している。この種の反応性基は、したがって、好ましくは、アルケニル、アクリル、メタクリル、ビニルエーテル基などのラジカル活性基の群から選択される。充填材成分b)に関して記載したように、この種の反応性基は、粒状の非膨潤性充填材f1)を成分c)で前処理させることにより、もたらされうる。
【0092】
好適な粒状の非膨潤性充填材f1)としては、シリカ、石英パウダー、無機酸化物、窒化物、カーバイド、サルフェート、カーボナート、熱可塑性パウダー、パウダー状ポリオルガノシロキサン、エラストマパウダー、ミクロゲル、シルセスキオキサンが挙げられ、これらは上述したように、好ましくは光硬化性コーティング組成物の液相(特に成分a)、c)およびg))において、25℃で1重量%未満の可溶性を有しており、またさらに好ましくは、光硬化性コーティング組成物の液相の300重量%より多くは吸収しない。成分f1)は通常、0.2〜250m/gのBET比表面積を有している。この種の充填材は、Evonik DegussaによるAcematt(登録商標)、またはGraceのSyloid(登録商標)などの商品名にて提供される。それらは、沈降またはフュームドシリカ、亜鉛またはアルミニウムの酸化物などに基づくものである。
【0093】
例えば、WO03―91349に開示される一態様において(参照によりここに組み込まれる)、これらの充填材は、球状シルセスキオキサンであり、例えば商品名Tospearl(登録商標)にて入手できる。これらの球状粒子は、少なくとも1つの、R―SiO3/2、基、ここでRは、有機基、特にC1―C18アルキルであるものを含む、ポリアルキルシロキサンからなる。この種の粒子の球状コアは、任意にて、1つのシロキシ基R−SiO3/2であって、ここでR=C1―C18炭化水素であって任意にて不飽和C2―C18炭化水素の反応性基を含むもの、にてコーティングすることができる。好ましくはこれらの反応性基は、シロキサン、シルセスキオキサン、または、シリケートのコア粒子の少なくとも表面にあり、コアユニットへSiO結合により連結している。好適な球状粒子としては、R―SiO3/2基を含む、ポリアルキルシロキサン、シルセスキオキサン、およびシリケートからなり、ここでRは、C1―C18炭化水素、C1―C18アルキル、好ましくはC2―C14アルケニル、アクリラート、メタクリラートの基である。Rは、好ましくはアクリロキシアルキル、メタクリロキシアルキルである。
【0094】
つや消し剤f2)の他の群としては、可溶性または少なくとも膨潤性のポリマーからなる群から選択される。硬化性組成物において使用される膨潤性または可溶性のポリマーf2)は、乾燥状態では粒状であっても、充分な量の溶媒を含む未硬化組成物においては、それらの粒状の形状を保っていない。非膨潤性つや消し剤f1)は、異なるように作用する。膨潤性または可溶性のポリマーf2)は、好ましくは、光硬化性組成物において可溶で膨潤可能な非反応性ポリマーからなる群から選択される。好ましくは可溶性または少なくとも膨潤性のポリマーf2)は、光硬化性コーティング組成物の液相(特に成分a)、c)およびg))において25℃で、1重量%より大きな、好ましくは2重量%より大きな、より好ましくは5重量%より大きな、より好ましくは25重量%より大きな可溶性を有している。
【0095】
本発明で使用される好適な非反応性ポリマーは、アクリラートまたはメタクリルのモノマーから調製されたアクリルまたはメタクリルのポリマーおよびコポリマーであって、これらポリマーは、それぞれ光硬化性組成物において少なくとも膨潤性および/または可溶性である。
【0096】
特に、目的とする基材のコーティングにインクジェット技術が選択された場合、粒状の非膨潤性充填材f1)によるノズル閉塞が生じうる問題があるため、粒状の非膨潤性充填材f1)よりも、膨潤性または可溶性のポリマーf2)を使用することが好ましい。
成分f2)は、特に、硬化した組成物においてつや消し効果(低い光沢)をもたらす。この種のつや消し効果は、コーティングされる装飾、パターンまたはイメージのより良い可視性をもたらすことから望ましい。つや消し効果は、成分f)の量および照射の条件によって引き起こされる。
【0097】
成分f)の使用以外にも、さらなる要因が硬化した組成物のつや消しの外見を促すことが、本発明者等により見出されている。特に、成分f)の量が、光硬化性組成物の固体に基づき、20重量%未満、好ましくは5〜15重量%の間である場合、不活性ガス、例えば窒素の下で、コーティング組成物の表面において主に硬化することをもたらす、短波長(好ましくは160〜190nmの範囲)の光の照射による予備硬化ステップを有することが好ましい。完全な硬化は、それからより長い(200nmより長い)波長の光によって作用される。
【0098】
UV吸収剤成分d2)が使用される場合、硬化性組成物の固形分に対して、10重量%より多い成分f)を使用することが好ましく、そして予備硬化ステップは、その際には必要ではなくなりうる。成分f2)が存在することは、UV安定剤d)を含む、特に紫外線吸収剤d2)が存在する光硬化性組成物の使用において、特に有利となる。
【0099】
本発明によれば、紫外線吸収剤d2)と組み合わせて成分f2)を使用することで、短波長による予備硬化照射ステップが省略されたとしても、優れたつや消し表面および改良された耐候性および耐光性を有する硬化したコーティングを得ることができる。本発明によれば、硬化したフィルムにて、wizenつや消し表面を得ることができる。本発明による硬化したコーティングは、好ましくは、DIN 67530(ASTM D2457)による測定で、60°で、好ましくは70未満、より好ましくは60未満、さらにより好ましくは50未満の光沢単位によって表されるつや消し効果がもたらされる。
【0100】
理論に縛られるものではないが、より短い波長による予備硬化ステップは特に、例えば高エネルギー照射によって誘導される原子の引抜により、光硬化性成分a)のラジカル反応基だけでなく、(例えば膨潤性または可溶性のポリマーの)他の分子部位において、さらなるラジカル部位をつくることにより、より高い架橋密度を引き起こすことになると考えられる。
【0101】
好ましい膨潤性または可溶性のポリマーf2)は、ハンセン溶解度パラメータδ14〜18(MPa)1/2[1(MPa)1/2=0.49(cal/cm1/2]を有するポリマーの群から選択される。
【0102】
優れたつや消し効果を提供するため、(非UV反応性)膨潤性または可溶性のポリマー、特にポリアルキル(メタ)アクリラートf2)と、の光硬化性成分a)、特にUV反応性アクリラートa)との重量比は、1:3〜1:17とすべきである。
【0103】
好ましい実施態様において、膨潤性または可溶性のポリマーf2)は基本的には非重合性であり(すなわち基本的にほとんど重合可能な官能基を有していない)、また、ポリ―C1―C8アルキル(メタ)アクリラートまたは異なるC1―C8アルキル基を有するC1―C8アルキル(メタ)アクリラートのコポリマーからなるアクリルポリマーを含む。
【0104】
本発明における用語の(メタ)アクリラートは、アクリラートまたはメタクリラートのいずれかを意味することを意図している。本発明において、ポリ―C1―C4アルキルメタクリラートは、成分f2)として好ましい。
【0105】
非重合性または非反応性のアクリラートf2)は、下記の式(1)に示す単位からなりえる。
【化2】

ここでRは、C1―C8アルキル基を表しており、例えばC3―C8およびC4―C8アルキル基などの、n―アルキル基、イソアルキル基、secアルキル基、およびtertアルキル基などの各種の異性体アルキル基を含む。特に好適なRは、n―ブチル、secブチル、イソブチルおよびtertブチルといった4つの炭素原子を有する基であり、イソブチルが最も好ましいRである。
【0106】
用語の非反応性ポリマーは、このポリマーは、不飽和の基が基本的になく、光硬化性成分a)とのラジカル重合に対し基本的に活性化されないことを意味している。成分f2)のための好適なポリアクリラートは、0.07mmol/g未満の不飽和度を有している。
【0107】
好適なつや消し剤f2)は、ポリブチルメタクリラートであり、これは特に、硬化性のつや消しトップコート組成物を塗布するインクジェット方法が適用される場合に選択されるものである。この種の方法においては、本発明の硬化性組成物は、上述したインクジェット印刷方法においてインクジェットノズルを通過する。1つの好ましい群として、ポリアルキル(メタ)アクリラート、ポリアクリラートポリマー、およびこれらのコポリマーが挙げられる。n―ブチル―メタクリラート、イソブチルメタクリラートポリマー、n―ブチル―イソブチルメタクリラートコポリマーが好ましく、10,000〜400,000g/molの範囲の、好ましくは20,000g/molより大きな分子量を有するイソブチルメタクリラートポリマーが最も好ましい。最も好ましいイソブチルメタクリラートポリマーは、25℃でのポリスチレン標準使用のGPCによる測定で、Mn=20,000〜400,000g/molの分子量をもたらす。ヨウ素滴定で測定されるポリアルキル(メタ)アクリラートの不飽和度は、好ましくは、0.07mol%以下である。
【0108】
硬化したコーティング組成物は、好ましくは20°または60°でのDIN 67530(ASTM D2457)で、好ましくは60未満の光沢値、最も好ましくは50未満の光沢値を有する。従って、成分f)は、好ましくはこのような光沢値をもたらすのに十分な量にて添加される。
【0109】
インクジェットヘッド以外のより大きな直径を有するスプレーノズルノズル装置が使用される場合、またはトップコート塗布のための他のコーティング方法が使用される場合、つや消し剤はまた、0.5〜50μmのD50値を有する粒状の充填材を有するf1)にて定義される群から選択されうる。
【0110】
溶媒成分g)
本発明によれば、1またはそれ以上の溶媒、特に有機溶媒が使用される。溶媒の目的は、プロセス条件を支持する硬化性組成物の粘度を調整することであり、硬化条件下にて所望の厚さおよび所望の折り重なった表面のフィルムを形成することを可能にする。従って、その可溶性および蒸発パラメータによって特徴付けられる少なくとも1つの溶媒が適用される。
【0111】
適切な溶媒は、例えば以下のパラメータの少なくとも1つを有する、極性溶媒の群から選択される:
- 4〜70の間の誘電率、
- 20mN/mより大きく、30mN/m未満の表面張力、
- 15[MPa]1/2以上、23[MPa]1/2未満のハンセン溶解度パラメータ、
- 25℃で100mPa・s未満の動的粘度、
- 2未満の相対的蒸発率(対基準=n―ブチルアセタート=1)。
【0112】
溶媒を加えることにより、一般的に、25℃で1〜400mPa・sの好ましい動的粘度および剪断率D=10s−1、またはインクジェット方法のための50℃での1〜50mPa・sの動的粘度および剪断率D=10s−1を備える硬化性組成物にすることができる。加えて、溶媒は成分f2)を溶解させる、または少なくとも膨潤させる十分な能力をもたらさねばならない。
【0113】
さらなる必要条件としては、溶媒はコーティングされるプラスチック基材を容易に溶解するものであってはならないが、所望の範囲での相対的蒸発率および硬化性組成物の成分を溶解する能力を有していなければならない。適切な溶媒は、脂肪族アルコール、グリコールエーテル、脂環式アルコール、脂肪族エステル、脂環式エステル、ハロゲン化脂肪族化合物、ハロゲン化脂環式化合物、ハロゲン化芳香族化合物、脂肪族エーテル、水;イソプロピルアルコール(IPA)またはエタノールなどのアルコール;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、またはアセトンなどのケトン;芳香族炭化水素;イソホロン;ブチロラクトン;N―メチルピロリドン;テトラヒドロフラン;エステル、例えば、ラクテート、アセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PMアセタート)、ジエチレングリコールエチルエーテルアセタート(DEアセタート)、エチレングリコールブチルエーテルアセタート(EBアセタート)、ジプロピレングリコールモノメチルアセタート(DPMアセタート)など;イソアルキルエステル、例えばイソヘキシルアセタート、イソヘプチルアセタート、イソオクチルアセタート、イソノニルアセタート、イソデシルアセタート、イソドデシルアセタート、イソトリデシルアセタートまたは、他のイソアルキルエステルなど;これらの組み合わせ、などからなる群から選択される。更に好適な溶媒としては、プロピレングリコールメチルエーテル、例えば、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、1―メトキシ―2―プロパノール、脂環式エーテルなど、アミド溶媒、およびスルホキシド溶媒などが挙げられる。好適な溶媒としては、1―メトキシ―2―プロパノール、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ブトキシエタノール、メトキシプロピルラクテート、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは少なくとも2つの溶媒の混合物が使用される。特に好ましい実施態様は、1―メトキシ―2―プロパノールおよびメチルイソブチルケトンまたはジイソブチルケトンの混合物を含む。
【0114】
一般に、コーティング溶液における溶媒の量は光硬化性組成物の総量の基準で、約5重量%から約70重量%、好ましくは約30重量から約60重量%の間である。好ましい実施態様において、成分f2)は溶媒において溶解または膨潤し、そして硬化性組成物の成分とともに混合される。
【0115】
補助添加物h)
補助剤h)は特に、感光剤およびレベリング剤を含む。
【0116】
感光剤
より長い波長の可視光にて、または1mm未満の厚さの硬化する層において、ラジカル開始重合または硬化が行われる場合、さらなる感光剤が使用される。感光剤成分は、可視光、すなわち約400nmから約800nmの範囲の波長を有する光を吸収する化合物であり、エネルギーを光重合開始剤e)または例えばプラチナまたはオニウム金属複合体などの他の触媒へ移送することができ、そして所望の架橋反応は、可視光への暴露により開始される。
【0117】
感光剤は、好ましくは2種類の化合物から選択される:1)多環式芳香族化合物、および2)ケトン発色団を含む芳香族化合物。本発明に適した多環式芳香族の感光剤の代表的な例としては、アントラセン、9―ビニルアントラセン、9,10―ジメチルアントラセン、9,10―ジクロロアントラセン、9,10―ジブロモアントラセン、9,10―ジエチルアントラセン、9,10―ジエトキシアントラセン、2―エチル―9,10―ジメチルアントラセン、ナフサセン、ペンタセン、ベンズ〔a〕アントラセン、7,12―ジメチルベンズ〔a〕アントラセン、アズレン、などが挙げられる。本発明に適した芳香族ケトン感光剤の代表的な例としては、2―クロロチオキサントン、2―イソプロピルチオサントン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾフェノン、1―クロロアントラキノン、ビアントロン、チオキサントン、2―クロロチオキサントン、1―クロロアントラキノンなどが挙げられる。感光剤の量は、全固体組成物の約50〜約50,000ppmの範囲であり、好ましくは500〜5000ppmの範囲にある。
【0118】
これらの添加物は、様々なつや消し剤(flatting agent)、界面活性剤、チキソトロープ剤、UV光安定剤、および染料からなる群から選択される。これらの添加物およびこれらの使用の全ては公知の技術であり、これ以上の説明を要しないものである。従って、限られたもののみが参照され、コーティング組成物の光硬化に悪影響を与えず、またコーティングの透明特性に悪影響を与えないかぎり、任意のこれらの化合物を使用することができる。
【0119】
レベリング剤
一つの実施態様において、硬化性コーティング組成物は任意にて、平坦化剤やレベリング剤(flattening or leveling agents)などのさまざまな添加物を含むことができ、それらは好ましくは、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであり、例えば、BYK 333、BYK 307、または、ポリアクリラート溶液のBYK―353、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンのBYK 310といった製品であり、BYK―Chemie(ドイツ)より入手できる。反応性アクリラート変性レベリング剤もまた、使用することができる。反応性アクリラートは、ラジカル重合によって、硬化コーティング組成物に組み込まれる。例としては、ポリエーテル変性アクリル官能性のポリジメチルシロキサンのBYK UV 3500、またはポリエステル変性アクリル官能性のポリジメチルシロキサンのBYK UV 3570のレベリング剤である。界面活性剤、例えばポリエーテル変性アクリル官能性のポリジメチルシロキサンのBYK―Silclean 3710(BYK―Chemieから入手可能)、チキソトロープ剤(例えばセルロースアセテートブチレート、Aldrich Chemicalsから入手可能)、およびこれらの同等物および反応産物ならびに前述の添加物のうちの少なくとも1つを含む組み合わせがある。この種の添加物は、より短時間にて均一なフィルムを得るために使用される。
これらの添加物は、フィルムが基材の表面に広げられたときにより短時間にて入り込んだ空気を放出するよう、脱気剤としても作用することができる。
【0120】
陰イオン、陽イオン、および非イオン性界面活性剤を含むさまざまな界面活性剤は、Kirk―Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、第19巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、1969、pp.507―593、およびEncyclopedia of Polymer Science and Technology、第13巻、Interscience Publishers、ニューヨーク、1970、pp.477―486、に記載されており、この両方は参照によりここに組み込まれる。
【0121】
組成物全体の定義
硬化ステップの後、つや消しでスクラッチ耐性フィルムを提供する光硬化性組成物は、好ましくは以下を含む(pt.wt.:重量部):
I)一般組成:
10〜200重量部の硬化性アクリラートa)(用語アクリラートは、ここで、また以下において、アクリラートおよびメタクリラートを含む)
0.5〜20重量部のコロイド状金属酸化物b)(a)でのb)の分散体が使用される場合、成分b)のみが計算される)、
10〜300重量部の少なくとも1つの溶媒g)、
0.5〜10重量部の少なくとも1つの光重合開始剤e)、
1〜30重量部の少なくとも1つのつや消し剤f)、
1〜22重量部の少なくとも1つのUV吸収剤d)、
0〜15重量部の補助添加物。
【0122】
II)好適な発明の組成物
15〜150重量部の硬化性アクリラートa)、
1〜15重量部のコロイド状シリカb)、
30〜250重量部の少なくとも1つの溶媒g)、
0.5〜6の少なくとも光重合開始剤e)、
1〜20重量部の少なくともポリマーつや消し剤f2)、
1〜22重量部の少なくともUV吸収剤d)、
0〜15重量部の補助添加物。
【0123】
III)最も好適な発明の組成物
20〜146重量部の硬化性アクリラートa)であって以下からなるもの:
- 多官能性アクリラート(f≧5)、好ましくはヘキサアクリラート:8〜48重量部、
- トリアクリラート:10〜33重量部、
- 脂肪族化合物(非ウレタン)ジアクリラート:2〜32重量部、および
- 脂肪族ウレタンジアクリラート:0〜33重量部
0.5〜20重量部の成分c)のアクリル官能性シリル基でコートされているコロイド状シリカb)、
30〜250重量部の少なくとも1つの好ましくは2つの溶媒g)
0.5〜5の少なくとも1つの光重合開始剤e)、
1〜20重量部の非反応性アクリラートの群から選択されるつや消し剤f2)、
1〜22重量部のレゾルシノールまたはトリアジン誘導体の群から選択される少なくとも1つのUV吸収剤d)、
0.01〜3.5重量部のレベリング添加物h)。
【0124】
本発明の典型的な組成物は、表面張力18〜35mN−1、好ましくは20〜25mN−1を示しており、好ましくはコーティングされる表面より小さい。好ましく適用できる範囲を示す例としては、例えば、デカン(13.5mN−1)、ホルムアミド(39mN−1)、またはメチルホルムアミド(33mN−1)がある。
【0125】
硬化性組成物の溶解特性は、イメージをペンキまたはインクにてコーティングしたプラスチックの基材または表面が、膨潤や剥離により破壊されないようにすべきである。
【0126】
基材の表面張力は、好ましくは27〜100mN−1の間にあり、例えばポリカーボネート、ポリエステル、イメージングのために硬化または予備硬化のインク≧25mN−1である。
本発明の組成物は、好ましくは、短いプロセス時間を可能にするよう、個別に調製された溶媒パッケージを使用する、インクジェットプロセスのプロセス条件により選択される。
本発明はさらに、処理された表面のコーティングのインクジェットプロセスにおいて、本発明の組成物を使用するための条件を開示しており、そのような表面としては、例えば、基材における前処理やコーティングを行った、または行っていない、可塑性で樹脂状のデュロメリック(duromeric)な、木製または金属製の基材などがある。
【0127】
本発明の一態様は、装飾的表面に対する耐候性およびスクラッチ耐性のトップコートを提供することである。装飾は、木の装飾、印刷もしくはインクジェットされたイメージ、またはパターンから選択することができる。つや消し剤を含む本発明の組成物は、印刷装飾またはパターンの上へのトップコートとして適用され、これによりトップコートは、好ましくはインクジェット印刷ヘッドのノズルを通して適用される。紫外線を有する照射を含む乾燥または硬化工程後に、つや消しの外観が見えるようになる。硬化したコーティングは、耐候性およびスクラッチ耐性を有する。
【0128】
インクジェットプロセスにおける本発明の組成物による改善点は、硬化性コーティング組成物の反応性アクリラートバインダマトリクスに対して、意図的な非相溶性を有する非反応性アクリラートからなる群からつや消し剤を選択することであり、これにより、コーティングフィルムの予備硬化および/または最終硬化の後または間につや消し効果が現れる。この種のフィルムは、弱い光沢を有するトップコートにおいて、つや消しの折り重なった表面を表す。
【0129】
この効果は、乾燥した組成物を硬化させ架橋するため、不活性雰囲気(例えば窒素)下にて、300nm未満の波長のエキシマUVランプを使用して強化されることができる。
【0130】
本発明の好ましい実施態様は、硬化後の耐候性およびスクラッチ耐性のコーティング組成物を提供することである。これらの特性を有する本発明は、少なくとも1つのUV安定剤、スクラッチ耐性を高める添加物、つや消し剤、少なくとも1つの光重合開始剤、および適切な溶媒を加えることにより達成される。
【0131】
方法の詳細
硬化性アクリラートコーティング組成物は、従来のコーティング技術を使用することにより物品にコーティングすることができる。これらは、例えば、フローコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、または、ドクターブレードを使用してコーティングを基材に引くことを含むことができる。
【0132】
好適な方法として、各種のスプレーコーティングの使用を含む。手動にて適用されるスプレーガンなどと同様にインクジェットプリントヘッドを使用でき、これらのノズル径は通常、スプレーガンの0.1〜2mmからインクジェットプリントヘッドの10〜50μmまでにわたる。
【0133】
コーティングステップのために使用される好適な装置は、コーティングされる基材を搬送する、2〜50m/分のライン速度で連続的に運転されるベルト、またはコンピュータプログラムによって制御される操縦可能で、移動可能なx―yテーブルを有している。これらの装置は、コーティングされるインクジェットされたイメージ、ピクチャーまたは装飾を含む様々な表面を有する物品を提供する。
【0134】
本発明の硬化性組成物より作製された、スクラッチ耐性および耐候性の、例えば装飾イメージ上のトップコートは、好ましくは約1ミクロン〜約50ミクロン(μm)乾燥厚(硬化後)を有しており、より好ましくは、その範囲は、約3ミクロンから約25μm(ミクロン)であり、それは3.6〜30g/mの乾燥後のコーティング重量に関係している。トップコートは、好ましくは、任意のノズルにて、好ましくはインクジェットノズルにて、一回の吹き付けで1つの層として適用される。硬化性インクにより前に印刷されたイメージまたは装飾は、少なくとも乾燥しているか、以前に硬化している。好ましくは、本発明のトップコートの硬化性組成物からできた層をコーティングおよび硬化するステップの前に、光硬化性インクを含むイメージまたは装飾は、適用され、そして紫外線により硬化される。
【0135】
さまざまな基材の種類および特性により定められる必要な条件に基づき、コーティングされる(好ましくはインクジェットにてコーティングされる)本発明の組成物の、適切な表面張力およびドット/インチの数は、完全なイメージ装飾または充分な厚みを達成するように選択される。
【0136】
本発明のコーティング組成物を適用するプロセスにおいて、イメージまたは装飾の印刷ステップにおいて以前に適用されたインクに用いたプリントヘッドと同じサイズを有する、インクジェットノズルを含む1以上のプリントヘッドを使用することが好ましい。
【0137】
本発明のトップコートと同様にインクジェットによる装飾表面において使用されるこの種のプリントヘッドは、例えば、Xaar 1001プリントヘッドであり、これは成分g)の観点から十分な溶媒耐性を有している。プリントヘッドの典型的な機構は、ヘッド・ベースセッティング:21V、コーティング組成物の温度:40℃、流速:100mL/分、および10〜24液滴/ドロップ(dpd)である。
【0138】
プロセスでの予定された滞留時間において所望のコーティング重量を扱うため、複数のヘッドを使用することが本発明の範囲に含まれる。
【0139】
任意にて、室温(20〜30℃)で5〜20秒の物理的乾燥プロセスの後、対流式オーブンまたはIR源を、20〜120秒間の予熱のために使用し、50〜90℃の間の最高表面温度を達成することができる。
【0140】
この任意の予熱ステップの後、実施態様A)およびB)のUV光硬化ステップが、以下の工程ステップの順で続く。
A)実施態様「直接硬化」:
UV硬化段階は、例えば、80〜200W/cmの球長の電力での中圧水銀紫外線ランプ(非ドープ)の下で、実施される。表面に受け取られるUV−Aエネルギーおよびパワーは、EIT Power Puck(登録商標)を使用することにより測定される。このプロセスの好適な波長は、200〜440nmの間である。
硬化性組成物は、少なくとも0.1W/cmのパワーおよび少なくとも1J/cmのエネルギーにより照射される。使用可能なUVランプは、IST Metz Nurtingen(ドイツ)、Nordson Ohio(米国)、Dr.Hoenle AG Munich(ドイツ)から入手できる。
B)実施態様「予備硬化および後硬化」:
ある場合においては、好ましくは不活性ガス、好ましくは窒素の下で実施される、比較的低波長の紫外線を使用した、予備硬化ステップを使用することが好ましい。
この予備硬化ステップは、表層つや消し効果の強化を補助する。好ましくは、200nm未満の波長が使用され、基本的に光重合開始剤によって開始されず、フリーラジカル重合によるものとされる表面に折り重なる工程を発生させるように、例えばキセノン充填の172nmエキシマUVランプ(Exirad 172、IOT Leiptig、ドイツ)が使用される。V(真空)−UV/UV−Cライト(10〜200nm )に対する可能性のある阻害的副作用は、好ましくは窒素の不活性ガス下でこの予備硬化工程を行うことによって排除される。組成物が予備硬化した後、実施態様A)に記載された後硬化工程が実施される。実施態様B)の紫外線の好適な適用される波長は、20nm未満である。
【0141】
つや消しのトップコートフィルムを製作する好適な方法は、成分f2)を含むコーティング組成物を用いた実施態様B)である。
【0142】
実施態様A)はまた、硬化性インクを用いたイメージ印刷ステップに適用することができる。イメージの予備硬化のため、好ましくはいわゆる「ピニング(pinning)」方法が使用され、これは好ましくは、インク組成物において使用される光開始剤システムの波長に適応するUV−LEDソースを用いて、実施される。
【0143】
上述したステップA)およびB)のための照射時間は、一般的に、1〜10秒の間であり、エネルギーは一般的に、線量計EIT(登録商標)LLC Power Puck(登録商標)(EIT Industries、Sterling、VA、米国)による基材の表面での測定で、0.5〜5J/cmの±10%の間である。
【0144】
つや消し強度は、上述したようにf2)の濃度をより高くすることにより上昇する。光学顕微鏡によって折り重ね表面を観察することができる。つや消し強度は光沢値に対応する。光沢値が低くなるとつや消し強度が高くなる。
【0145】
基材
本発明の硬化性コーティング組成物は、基材のほとんど全ての表面を保護することが可能である。
【0146】
好適なコーティングされる基材は、デュロメリック(duromeric)プラスチック、熱可塑性物質、金属、木材、セラミック、ガラスなどからなる群から選択され、ここでこれらの材料は、すでに、ラッカー、ペイントなどの第1のコーティング材、あるいは1以上の乾燥若しくは硬化後の装飾またはイメージを備えることができる。
【0147】
他の好ましい実施態様において、本発明の透明な硬化性トップコートは、透明基材を保護するために用いることができる。
【0148】
好適な基材は、プレコートされているまたはプレコートされない熱可塑性基材、芳香族熱可塑性物質、例えばビスフェノールAによるポリカーボネートなど、剛性または可撓性の基材、例えば薄型のシートおよびフィルムなど、にイメージまたは装飾が印刷されているものである。基材フィルムの厚みは、例えば15から250μmの範囲である。
【0149】
好適な透明材料としては、芳香族ポリカーボネート、ポリ(ジフェニロールプロパン)カーボネートおよびポリ(ジエチレングリコールビスアリル)カーボネート、ポリアクリラート、ポリメタクリラート(PMMA)、ポリエチレン―ジクロペンタジエン―ポリマー(COC)、例えばApel(登録商標)三井化学、Topas(登録商標)COC、Crystal(登録商標)DEWなどがあり、ポリメタクリルメチルイミド(PMMI)、これは部分的イミド化メタクリルポリマーで、例えばKamax(登録商標)Pleximidなどがあり、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(LDPE、HDPE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフォン、ポリエステル、ポリエポキシドとポリアミンおよび/またはポリオールの反応生成物、ABS、SAN、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル―スチレンのコポリマー、ABS、スチレンアクリロニトリル―ブタジエンコポリマー、SAN、ポリ塩化ビニル、ブチラートなどからなる群から選択される。コーティングされる基材がすでにコーティング層を含んでいる場合には、これらの層は、ラッカー、コーティング、インク、プライマ組成物のためのバインダ材料からなる群から選択される。
【0150】
溶媒を含むこれらプレコーティングは、実質的にすべての固体表面に対して付着することができる。プレコーティングまたはプライマは、プラスチック表面の溶媒耐性を持たせることに役立つことができ、または光吸収剤または光フィルタを含む層を提供するのに役立つことができ、または基材とトップコートの間の粘着層としての機能を果たすことができる。
【0151】
コーティングされた物品の説明
本発明のコーティングおよびこのコーティングを適用する方法は、好ましくは物品の製造において使用される。適切な物品は、特に熱可塑性基材から作られたものであり、それは本発明の実施において、高められた耐摩耗性を有する成型された熱可塑性物品を製造するのに利用することができ、例えば、この基材としては、Lexan(登録商標)または、Makrolon(登録商標)ポリカーボネート、Valox(登録商標)ポリエステル、Mylar(登録商標)ポリエステル、Ultem(登録商標)ポリエーテルイミド、PPO ポリフェニレンオキシド、ポリメチルメタクリラートなど、金属、例えば鋼、アルミニウムなど、メタライズされた熱可塑性物質などがある。
【0152】
これらの組成物でコーティングされた透明ポリマー材料は、平面または曲面の囲い、例えば、窓、天窓、および風よけなどであって、特に輸送機械において有用である。プラスチックレンズ、例えばアクリルまたはポリカーボネート眼科用レンズなどは、本発明の組成物によりコーティングすることができる。高い光学解像度を必要とする適用においては、基材に適用する前にコーティング組成物をろ過することが望ましい。
【0153】
光硬化性組成物を用いて作られる好適な物品は、イメージまたは装飾の層、そして最後にスクラッチ耐性のトップコート層をインクジェットすることによる本発明の方法にて製造される。
【0154】
好ましい物品としては、装飾的建築部材、窓枠、ドア、ガレージドア、道路標識、交通標識案内柱、ステッカー、身分証明書、クレジットカード、自動車部品、風よけ、車、輸送手段、航空機の透明な屋根またはウインドウ、眼鏡、眼鏡フレーム、筆記用具、キーパッド、ディスプレイ、その他の光学製品、また同様に、可撓性のフィルムおよびシート、剛性のフィルムおよびシート、繊維基材からなる群から選択され、これによってトップコートは、基材上に接着した装飾またはイメージ上の透明な耐摩耗性のつや消し層となる。
【0155】
詳細な工程条件
1つの好ましい実施態様において、前処理された金属基材を備えること、ならびにシアン、マゼンタ、イエローおよびブラック(CMYK)からなる装飾を提供する4つの異なる色インクを用いて色付けした装飾を作るため、充分な数のインクジェットプリントヘッド(例えばXaar 1001)を備える工業的デジタルインクジェットプリンタを用いて、前記基材に装飾を形成することのステップを含む工程によりコーティングされた物品が製造される。基材は、自動輸送システムに置かれ、例えば5〜30m/分のライン速度のインクジェットプリントステーションを通じて移動される。インクは、単一パスコーティングステップで適用され、そして各々のインク組成物に使用の光重合開始剤の受容UV波長に十分なUV−Ledランプにより予備硬化される。装飾インクの予備硬化プロセスは、「ピニング」と言われる。特定の場合では、プラズマ、UV、コロナまたはフレームの基材の前処理は有利である。
【0156】
好ましい実施態様において、その表面上に装飾、パターンまたはイメージを有する基材は、本発明のコーティング組成物により、好ましくは前記の装飾、パターンまたはイメージの表面に本組成物をスプレーすることにより、コーティングされる。
【0157】
好ましくは本発明の組成物は、ピニング工程の後、前記の装飾表面にスプレーまたはインクジェットされる。インクジェットの場合、本発明の5〜20μmの厚みの硬化乾燥フィルムを達成するため、充分な数のインクジェットヘッドが第2のプリントステーションに取り付けられていなければならない。好ましい実施態様において、圧電インクジェットヘッドXaar 1001が使用される。堆積した透明なトップコート層の均一な湿ったコーティングの厚みは、インクジェットヘッドで使用される制御プログラムによって変更され、そして本発明の組成の目標とする粘度を、粘度ワーキングウインドウおよびインクプリントヘッドの動作温度に適応させることにより、最適化することができる。
【0158】
好ましくはコーティング工程の後、湿ったコーティングを、20〜40℃で5〜15秒、空気乾燥させ、さらに50〜80℃で15〜60秒間、物理的に乾燥させる。乾燥工程において、対流式オーブン、赤外線または赤外線併用の加熱および対流オーブンを使用することができる。好ましい実施態様においては、対流式オーブン熱処理を、適用することができる。
【0159】
本発明の組成物の硬化ステップは、好ましくは5〜30m/分の所与のラインベルト速度で、80〜250W/cmの中圧力UV球を使用することにより実施される。好ましい実施態様において、予備硬化ステップが実施される。この種の予備硬化ステップでは、実質的に光重合開始剤によらずにラジカル重合によって引き起こされた表面折り重ね効果により十分なつや消し表面を得るため、基材は好ましくは窒素パージされたハウジングに導かれ、UV―エキシマ・ランプ(Exirad 172)、IOT ドイツ により処理される。
【0160】
一般的に本発明におけるコーティング方法で使用する紫外線は、150〜440nmの波長を有している。
【0161】
好適なコーティング方法は、
v1)200nm未満の波長の紫外線にてコーティングされた基材を照射すること、そして続いて、
v2)200〜440nmの波長の紫外線にて、ステップv1)得られたコーティングされた基材を照射すること、のステップを含む。
【0162】
本発明のコーティング方法において、装飾、パターンまたはイメージの形成、および本発明による組成物のスプレーは、インクジェットプロセスによって実施される。
【0163】
好適なインクジェットプリントヘッドノズルの直径は、5〜50μmである。
【0164】
本発明はまた、本発明の組成物を、透明なトップコートとして硬化することにより得られた硬化組成物を含むコーティングされた物品に関する。好ましくはコーティングされた物品は、屋外用途用である。好適なコーティングされた物品は、
a)基材
b)任意にて前記基材上の少なくとも1つのプライマ層、
c)着色または装飾的層、および
d)本発明のコーティング組成物を硬化することにより形成された透明なトップコート層、
を含む、多層膜コーティングを有する。
【0165】
本発明の好ましい実施態様:
実施態様1:
光硬化性コーティング組成物であって、
a)少なくとも1つの光硬化性成分、
b)平均粒径D50<0.5μmの、少なくとも1つの充填材、
c)任意にて1以上のシランまたはシロキサン、
d)少なくとも1つのUV安定剤、
e)少なくとも1つの光重合開始剤、
f)平均直径粒径D50>0.5μmの粒状の非膨潤性充填材f1)および膨潤性または可溶性のポリマーf2)からなる群から選択される、少なくとも1つの成分、ならびに
g)任意にて1以上の溶媒、
h)任意にて1以上の補助剤、を含むもの。
【0166】
実施態様2:
光硬化性成分a)が、1以上の官能性アクリラート基を有する少なくとも1以上のアクリラートを含む、実施態様1による実施態様。
【0167】
実施態様3:
2〜4のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラート、および5以上のアクリラート官能性を有する少なくとも1つのアクリラートを含む、実施態様1または2による実施態様。
【0168】
実施態様4:
粒状の非膨潤性充填材f1)が、Al、Ce、Hf、Si、Sn、Ti、La、ZnおよびZrから選択される金属の酸化物および水酸化物からなる群から選択される、実施態様1〜3のいずれかによる実施態様。
【0169】
実施態様5:
成分f1)が、シリカから選択される、実施態様1〜4のいずれかによる実施態様。
【0170】
実施態様6:
成分f)が、50000から150000g/molの分子量Mn(標準としてポリスチレン使用のGPCによる測定)を好ましくは有する、膨潤性または可溶性のポリマーf2)から選択される、実施態様1〜5のいずれかによる実施態様。
【0171】
実施態様7:
成分f)が、ポリアクリラートおよびポリメタクリラートからなる群から選択される膨潤性ポリマーf2)から選択される、実施態様1〜6のいずれかによる実施態様。
【0172】
実施態様8:
ポリアクリラートおよびポリメタクリラートが、ポリ((C1―C5)アルキルアクリラート)およびポリ((C1―C5)アルキルメタクリラート)からなる群から選択される、実施態様6または7による実施態様。
【0173】
実施態様9:
ポリアクリラートおよびポリメタクリラートが、ポリ(n―ブチル、イソブチル、sek.ブチル、またはtert.ブチル)アクリラート、およびポリ(n―ブチル、イソブチル、sek.ブチル、またはtert.ブチル)メタクリラートからなる群から選択される、実施態様6、7または8による実施態様。
【0174】
実施態様10:
25℃で1〜400mPa・sの動的粘度、およびD=10s−1の剪断率を有する、実施態様1〜9のいずれかによる実施態様。
【0175】
実施態様11:
50℃で1〜50mPa・sの動的粘度およびD=10s−1の剪断率を有し、成分f)が膨潤性ポリマーである、実施態様1〜10のいずれかによる実施態様。
【0176】
実施態様12:
コーティングされる基材の表面上へ、実施態様1〜11のいずれかに記載の組成物を適用するステップを含む、基材をコーティングするためのコーティング方法。
【0177】
実施態様13:
スプレーコーティング方法によって前記組成物を適用する、実施態様12による基材をコーティングするためのコーティング方法。
【0178】
実施態様14:
i)基材を備えること、
ii)前記基材上へ装飾、パターンまたはイメージを形成すること、
iii)前記装飾、パターンまたはイメージの表面上へ、実施態様1〜9のいずれかに記載の組成物をスプレーすること、
iv)任意にてコーティングされた表面を乾燥すること、および
v)紫外線にてコーティングされた基材を照射することのステップを含む、実施態様12または13によるコーティング方法。
【0179】
実施態様15:
i)透明基材を備えること、
ii)実施態様1〜9のいずれかに記載の組成物を前記基材の表面上へスプレーすること、
iii)任意にてコーティングされた表面を乾燥すること、および、
iv)紫外線にてコーティングされた基材を照射することのステップを含む、実施態様12または13によるコーティング方法
【0180】
実施態様16:
紫外線が、150〜450nmの波長を有する、実施態様14または15によるコーティング方法。
【0181】
実施態様17:
v1)200nm未満の波長の紫外線にて、コーティングされた基材を照射すること、および、続いてv2)200〜440nmの波長の紫外線にて、ステップv1)で得られたコーティングされた基材を照射することのステップを含む実施態様12〜16のいずれかによるコーティング方法。
【0182】
実施態様18:
ステップii)の装飾、パターンまたはイメージの形成およびステップ(iii)の組成物のスプレーは、インクジェット印刷方法によって実施される、実施態様12〜17のいずれかによるコーティング方法。
【0183】
実施態様19:
スプレーステップ(iii)が5〜50μmの直径を有するスプレーノズルにより実施される、実施態様12〜18のいずれかによるコーティング方法。
【0184】
実施態様20:
インクジェットプリンティングステップ(ii)が、5〜50μmの直径を有するスプレーノズルにて実施される、実施態様18または19によるコーティング方法。
【0185】
実施態様21:
ステップii)およびiii)が、コンピュータプログラムによって制御されるインクジェットノズルにより実施される、実施態様12〜20のいずれかによるコーティング方法。
【0186】
実施態様22:
実施態様1〜11のいずれかに記載の組成物を硬化することにより得られた硬化した組成物を、透明なトップコートとして含む、コーティングされた物品。
【0187】
実施態様23:
60°でのDIN 67530(ASTM D2457)において、60未満の光沢値を有する実施態様22によるコーティングされた物品。
【0188】
実施態様24:
屋外用途用の実施態様22または23によるコーティングされた物品。
【0189】
実施態様25:
a)基材
b)任意にて前記基材上の少なくとも1つのプライマ層、
c)任意にて着色性または装飾性の層、および
d)実施態様1〜10のいずれかに記載の組成物を硬化させて形成された透明なトップコート、を含む、多層膜コーティングを有する、実施態様22〜24のいずれかによるコーティングされた物品。
【0190】
実施態様26:
装飾的要素、標識、ステッカー、自動車部品、眼鏡、眼鏡フレーム、筆記用具、ディスプレイ、他の光学製品、可撓性のフィルムおよびシート、剛性のフィルムおよびシート、から選択される、実施態様22〜25のいずれかによるコーティングされた物品。
【0191】
試験方法
つや消し効果の評価のための光沢
つや消し効果の評価は、Byk―Gardner(BYK―Gardner GmbH、Geretsried、ドイツ)から入手できる、例えば、Micro―Tri―glossなどの携帯光沢計器を用いて光沢を測定することにより実施された。20°/60°の光沢は、異なる部位(n=3)で測定された。平均値は、表1bに示される。20°の光沢を測定する2回評価が推奨される。より低い角度での評価は、より低い光沢値、すなわち、よりつや消しがなされる、またはより少ない反射光となるという結果となった。
【0192】
スクラッチ耐性方法(スチールウール試験)
2×2cmのスチールウール片が、1kgの重量の円筒状体(円筒状、d=4cm、高さ=7cm)に両面接着テープにて固定され、スチールウール・タイプ0000(Rakso社の微細繊維、Lahr、ドイツ)が使用された。10cm長のコーティングされた表面を、後方および前方の、10ダブルスクラブにより、重りを横断移動させた。コーティングされた側は、上述した方法により処理された。
【0193】
評価のカテゴリ
A)値0:視認できるスクラッチはない
B)値1:1cmまでの長さのスクラッチが10個までの軽いスクラッチ
C)値2:1cmよりも長いスクラッチが10個を超える数
D)値3:全表面域に一様にスクラッチがあり、個々のスクラッチを、肉眼によって分けることができない。
【0194】
粘度
粘度は、Haake falling ball粘度計(タイプC)Thermo Fisher Scientific(Schwerte、ドイツ)を用いて、ISO 12058により、異なる温度で測定された。
【0195】
存在する場合、(ニュートンまたは非ニュートン挙動)剪断薄層化の程度を測定するため、粘度は、DIN 53018により、異なる温度および剪断率にて、ディスク流量計マルバーン ジェミニ(Malvern Gemini)で測定された。
【0196】
表面張力
静的表面張力は、Kruss K―100引張計(ドイツ、ハンブルグのKruss GmbHから入手可能)により、プレート方法を使用して、室温にて測定された。適用された基準は、DIN53914である。
【0197】
粒径測定
粒径(直径)は、マルバーン ゼータサイザーZSを用いた、レーザー動的光散乱法により測定された。本方法はまた、ISO 13320―1による、光子相関分光法または準弾性光散乱法として知られている(http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic light_scattering も参照のこと)。
【0198】
粒径測定は、充填材b)の分散体もしくは非膨潤性充填材f1)の分散体、またはイソプロパノールにて希釈後の全ての光硬化性コーティング組成物を用いて実施された。
【0199】
詳細な測定条件は、例えば、50重量%の充填材b)+シランc)およびジアクリラート含む組成物であって、イソプロパノールで1:100まで希釈し、25℃で超音波によって分散を維持したものについてされた。スキャッタリングのために使用される波長は、1000秒の測定時間およびカウント率239.2kcpsで、633nmであり、迷光は、173°の角度で検出された(バックスキャッタリング)。サンプルおよび分散体の粘度は、25℃で2.32cPであり、そしてサンプルの屈折率は、1.52であり、分散体の屈折率は、1.39であった。
【実施例】
【0200】
実施例1 異なるつや消し剤f2)の効果
表1aに示される組成物に、11.3重量部の様々な成分f2)(実施例1.1〜1.6)が添加された。シリカ成分b)(FCS 100)は、ゼータサイザーで粒径D50 12nmを有していた(D10 8nm;D90 33.2nm、表2を参照、イソプロパノールでFCS100を1:100に希釈して測定された)。表1bに示される達成可能な光沢値は、後述の異なる乾燥および硬化条件I)からIII)により比較される。成分f2)の溶液ステップを促進するため、それらは、9.1重量部の1―メトキシ―2―プロパノールによって溶解される。調製物は混合され、そして、60℃まで加熱された。調製物を室温まで冷ました後に、ポリカーボネートパネルはコーティングされ、そして、3つの異なる乾燥および硬化条件I)、II)およびIII)におかれた。つや消しレベルは測定され、20°および60°の角度にて20〜50の間のつや消し値となった(EN ISO 2813)。
【0201】
3つの異なる乾燥および硬化ステップ後の実施例1.1〜1.6におけるつや消しの効果
【0202】
乾燥および硬化ステップI)−III):
I)透明なポリカーボネートパネルは50〜70℃で2分間、対流式オーブンで乾燥された(参照条件)、
II)透明なポリカーボネートパネルは、炭素媒体波長IRランプで60秒乾燥させ、5m/分のベルト速度にて80〜200W/cmの電力の中圧水銀UVランプで200〜440nmにて硬化させた、
III)I)により前乾燥して得られた透明なポリカーボネートパネルは、10m/分のベルト速度にて不活性ガス雰囲気下で、172nmのIOT エキシマUVランプ(タイプExirad 172、IOTドイツ)にて予備硬化され、そしてその後、同じベルト速度にて80〜200W/cmの電力の中圧水銀UVランプで200〜440nmにて硬化させた。
【0203】
【表1a】

【化3】

(ここでRは、アクリラート、ここで例えばメタクリラートのエステル部分におけるアルキル残基を示す:)
【0204】
【表1b】
【0205】
表1bの結果は、本発明による光硬化性コーティング組成物によって低い光沢レベルがもたらされ、これにより最もよい結果は、C4―アルキルアクリラート、特にイソ―C4―アルキルアクリラートにて見られることが示されている。
【0206】
実施例2
表2は、成分b)および/または成分f2)の量を変化させて試験した調整物を示している。
【0207】
成分b)の量の変化(2.1から2.3)は、b)の量の増加と共にスクラッチ耐性が増大することを示している。つや消し効果もまた、増加している。
【0208】
成分f2)の変化(2.4から2.5)は、f2)の量の増加と共につや消し効果が増加することを示している。
【0209】
b)およびf2の増加(2.3と比較した2.6)は、スクラッチ耐性を維持しながらつや消し効果を増加させることにつながった。
【0210】
【表2】


図1a)】
図1b
図2
図3