(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407997
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】電池パックとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
H01M2/10 A
H01M2/10 E
H01M2/10 V
H01M2/10 S
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-532406(P2016-532406)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2015001255
(87)【国際公開番号】WO2016006143
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-139953(P2014-139953)
(32)【優先日】2014年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】米田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】拝野 真己
(72)【発明者】
【氏名】岸田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】若林 健明
【審査官】
井原 純
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−007261(JP,U)
【文献】
特開2007−157358(JP,A)
【文献】
特開2007−317578(JP,A)
【文献】
特開2008−293863(JP,A)
【文献】
特開2009−218012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シートからなる防水袋の開口部から外部に引出線を引き出して電池コアパックを入れる収納工程と、
前記開口部を閉塞する閉塞工程と、
前記電池コアパックを収納してなる前記防水袋を外装ケースに入れる組み立て工程と、からなる電池パックの製造方法であって、
前記収納工程の前工程として、前記開口部の対向する前記可撓性シートを溶着部で溶着して、全開口幅(W)よりも小さい挿入開口を形成する溶着工程を設け、
この溶着工程において設ける挿入開口の大きさを、前記電池コアパックを挿入できる大きさとして、前記電池コアパックが前記防水袋に収納される方向では挿入できず、かつ、前記電池コアパックの方向を変えることで挿入できる大きさとして、前記収納工程において、挿入開口から前記電池コアパックを防水袋に挿入することを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載される電池パックの製造方法であって、
前記収納工程の後、前記防水袋に未硬化で液状ないしペースト状のポッティング樹脂を充填する充填工程を設け、この充填工程において、前記電池コアパックを前記ポッティング樹脂に埋設することを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される電池パックの製造方法であって、
前記溶着部を細長い溶着ラインとし、
前記閉塞工程において、前記溶着ラインに沿って前記引出線を配置し、さらに、前記引出線に沿って内側溶着ラインを設けて、前記引出線を前記内側溶着ラインと前記溶着ラインとの間に配置して前記防水袋の外部に引き出し、この状態で前記挿入開口をシールして閉塞することを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電池パックの製造方法であって、
前記閉塞工程において、前記防水袋の前記挿入開口をシールして閉塞することを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される電池パックの製造方法であって、
前記溶着工程において、前記溶着部を前記開口部の開口縁に対して傾斜する溶着ラインとして設け、前記閉塞工程において、前記溶着ラインに沿って前記引出線を配置して、前記開口部を前記溶着ラインと前記引出線とを折り返すように折曲することを特徴とする電池パックの製造方法。
【請求項6】
可撓性シートからなる防水袋と、
この防水袋に収納されて引出線を前記防水袋から外部に引き出してなる電池コアパックと、
前記電池コアパックを収納してなる前記防水袋を収納してなる外装ケースと、
を備える電池パックであって、
前記防水袋の開口部の対向する前記可撓性シートを溶着してなる溶着部でもって、前記防水袋の開口部を全開口幅(W)よりも狭くしてなる挿入開口を設けており、この挿入開口の大きさを、前記電池コアパックが前記防水袋に収納される方向では挿入できず、かつ、前記電池コアパックの方向を変えることで挿入できる大きさとしてなることを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項6に記載される電池パックであって、
前記防水袋にポッティング樹脂を充填しており、このポッティング樹脂に前記電池コアパックを埋設してなることを特徴とする電池パック。
【請求項8】
請求項7に記載される電池パックであって、
前記電池コアパックが、複数の電池と、前記電池に接続してなる回路基板と、この回路基板と前記電池とを定位置に配置する電池ホルダを備え、
前記電池ホルダの内部に前記ポッティング樹脂が充填されて、このポッティング樹脂が前記回路基板と前記電池との間に充填されて、前記電池の各々に熱結合状態に配置され、
さらに、前記電池ホルダは、前記回路基板の裏面に前記ポッティング樹脂を充填するための充填開口を有すると共に、この充填開口から充填される前記ポッティング樹脂を前記回路基板と前記電池との間に流入させる下り勾配の傾斜面を有することを特徴とする電池パック。
【請求項9】
請求項8に記載される電池パックであって、
前記回路基板の裏面に配置される前記電池が、前記ポッティング樹脂の流入方向に向かって下り勾配に傾斜してなることを特徴とする電池パック。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載される電池パックであって、
前記溶着部が細長い溶着ラインで、この溶着ラインに沿って前記引出線が配置されると共に、前記引出線に沿って内側溶着ラインが設けられて、前記引出線を前記内側溶着ラインと前記溶着ラインとの間に配置されてなることを特徴とする電池パック。
【請求項11】
請求項10に記載される電池パックであって、
前記溶着ラインが前記開口部の開口縁に対して傾斜し、前記溶着ラインに沿って前記引出線を配置してなることを特徴とする電池パック。
【請求項12】
請求項11に記載される電池パックであって、
前記開口部が、前記溶着ラインと前記引出線とを折り返すように折曲されてなることを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池をブロック状としてなる電池コアパックを防水袋に入れて外装ケースに収納してなる電池パックとこの電池パックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、電動アシスト自転車、電動バイク、電動工具、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車などの電源として、さらには家庭や店舗などでの蓄電用として幅広く用いられている。これ等の種々の用途において、防水構造の電池パックは屋外で安心して使用できる特徴がある。防水構造の電池パックとして、電池コアパックを防水袋に収納して防水構造として、これを外装ケースに収納してなる構造のものが開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−79547号公報
【発明の概要】
【0004】
この電池パックは、防水袋に電池コアパックを入れ、電池コアパックに接続している引出線を防水袋から外部に引き出し、さらに、これを外装ケースの出力端子や信号端子に接続して組み立てられる。この電池パックは、電池コアパックを防水袋に収納する状態で次々と複数の工程に搬送して組み立てられるが、このとき防水袋を種々の姿勢とするときに、電池コアパックが防水袋の定位置には配置されずに、外部にはみ出す等の弊害がある。たとえば、防水袋の開口部を折返し、あるいは溶着して防水し、あるいは内部にポッティング樹脂を充填する等の工程で、電池コアパックが防水袋の内部にあって外部にでないようにするのが難しく、このことが、作業工程を遅らせる原因となっている。
【0005】
本発明は、このような弊害を防止することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、電池コアパックを防水袋で防水構造としながら、理想的な状態で能率よく組み立てできる電池パックとその製造方法とを提供することにある。
【0006】
本発明の電池パックの製造方法は、可撓性シートからなる防水袋2の開口部20から外部に引出線5を引き出して電池コアパック1を入れる収納工程と、この開口部20を閉塞する閉塞工程と、電池コアパック1を収納してなる防水袋2を外装ケース3に入れる組み立て工程とからなる。この電池パックの製造方法は、収納工程の前工程として、開口部20の対向する可撓性シート21を溶着部22で溶着して、全開口幅(W)よりも小さい挿入開口23を形成する溶着工程を設けている。溶着工程において設ける挿入開口23の大きさは、電池コアパック1を挿入できる大きさとして、
電池コアパック1が防水袋2に収納される方向では挿入できず、かつ、電池コアパック1の方向を変えることで挿入できる大きさとして、収納工程において、挿入開口23から電池コアパック1を防水袋2に挿入する。
【0008】
本発明の電池パックの製造方法は、収納工程の後、防水袋2に未硬化で液状ないしペースト状のポッティング樹脂4を充填する充填工程を設けて、充填工程において、電池コアパック1をポッティング樹脂4に埋設することができる。
【0009】
本発明の電池パックの製造方法は、溶着部22を細長い溶着ライン22Aとし、閉塞工程において、溶着ライン22Aに沿って引出線5を配置し、さらに、引出線5に沿って内側溶着ライン24を設けて、引出線5を内側溶着ライン24と溶着ライン22Aとの間に配置して防水袋2の外部に引き出し、この状態で挿入開口23をシールして閉塞することができる。
【0010】
本発明の電池パックの製造方法は、閉塞工程において、防水袋2の挿入開口23をシールして閉塞することができる。
【0011】
本発明の電池パックの製造方法は、溶着工程において、溶着部22を開口部20の開口縁に対して傾斜する溶着ライン22Aとして設け、閉塞工程において、溶着ライン22Aに沿って引出線5を配置して、開口部20を溶着ライン22Aと引出線5とを折り返すように折曲することができる。
【0012】
本発明の電池パックは、可撓性シートからなる防水袋2と、この防水袋2に収納されて引出線5を防水袋2から外部に引き出してなる電池コアパック1と、電池コアパック1を収納してなる防水袋2を収納してなる外装ケース3とを備える。防水袋2は開口部20の対向する可撓性シート21を溶着してなる溶着部22を有し、この溶着部22でもって、防水袋2の開口部20を全開口幅(W)よりも狭くしてなる挿入開口23を設けている。挿入開口23の大きさを、電池コアパック1
が防水袋2に収納される方向では挿入できず、かつ、電池コアパック1の方向を変えることで挿入できる大きさとしている。
【0014】
本発明の電池パックは、防水袋2にポッティング樹脂4を充填して、このポッティング樹脂4に電池コアパック1を埋設することができる。
【0015】
本発明の電池パックは、電池コアパック1を、複数の電池11と、電池11に接続してなる回路基板6と、この回路基板6と電池11とを定位置に配置する電池ホルダ12とを備える構造として、電池ホルダ12の内部にはポッティング樹脂4を充填して、このポッティング樹脂4を回路基板6と電池11との間に充填して、電池11の各々に熱結合状態に配置し、さらに、電池ホルダ12は、回路基板6の裏面にポッティング樹脂4を充填するための充填開口15を設けて、この充填開口15から充填されるポッティング樹脂4を回路基板6と電池11との間に流入させる下り勾配の傾斜面16を有する構造とすることができる。
【0016】
本発明の電池パックは、回路基板6の裏面に配置している電池11を、ポッティング樹脂4の流入方向に向かって下り勾配に傾斜して配置することができる。
【0017】
本発明の電池パックは、溶着部22を細長い溶着ライン22Aとして、この溶着ライン22Aに沿って引出線5を配置し、さらに引出線5に沿って内側溶着ライン24を設けて、引出線5を内側溶着ライン24と溶着ライン22Aとの間に配置することができる。
【0018】
本発明の電池パックは、溶着ライン22Aを開口部20の開口縁に対して傾斜するように設けて、傾斜する溶着ライン22Aに沿って引出線5を配置することができる。
【0019】
本発明の電池パックは、防水袋2の開口部20を、溶着ライン22Aと引出線5とを折り返すように折曲して防水構造とすることができる。
【0020】
本発明の電池パックとその製造方法は、電池コアパックを防水袋で防水構造としながら、理想的な状態で能率よく組み立てできる特徴がある。それは、本発明が、防水袋の開口部に開口部を狭くする溶着部を設けて、この溶着部でもって、防水袋の開口部を、全開口幅(W)よりも狭い挿入開口として内部に電池コアパックを収納しているからである。この電池パックは、電池コアパックを挿入開口から防水袋に収納し、電池コアパックを収納する防水袋に種々の処理をする工程で、あるいはこれを次の組み立て工程に搬送する状態で、電池コアパックが外部に出るのを防止できる。この電池パックは、電池コアパックを防水袋に入れて防水構造としながら、組み立て工程においては、電池コアパックが防水袋から外部に出るのを防止して能率よく組み立てできる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例に係る電池パックの概略断面図である。
【
図2】電池コアパックを防水袋に収納した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2に示す防水袋の開口部を溶着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明の電池パックは、主として屋外で使用される乗り物に装着されて、駆動用のモータに電力を供給する。本発明は、たとえば、アシスト自転車、電動バイク、電動車椅子、電動三輪車、電動カート等の電源として使用される。ただし、本発明は電池パックの用途を特定するものではなく、電動工具等の屋外で使用される種々の電気機器用の電源や、太陽電池と組合せた住宅用の電源として使用することもできる。
【0023】
図1に示す本発明の電池パック100は、機器本体に装着されて、機器本体に電力を供給する。このような目的で使用される電池パック100は、電池コアパック1を防水袋2に入れて、この防水袋2を外装ケース3に収納している。電池コアパック1は、電池ホルダ12で複数の電池11を定位置に配置している。電池11は両端に正負の異なる電極端子を有する円筒形電池である。電池ホルダ12は、複数の電池11を互いに平行な姿勢とし、電池両端の電極端子を同一面に配置して多段多列に配置している。電池ホルダ12に収納している電池11は、電極端子にリード板(図示せず)を接続して、隣接する電池11を直列に、あるいは直列と並列に接続している。
【0024】
電池11は、充電できるリチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の充電できる全ての二次電池が使用できる。さらに、本実施例の電池パック100は、円筒型電池を使用するが、これに限定されず、角型電池や扁平形電池とすることもできる。電池コアパック1は、複数の電池11を平行な姿勢で多段多列に並べて電池ホルダ12に収納している。
【0025】
図1の断面図に示す電池コアパック1は、15個の電池11を互いに平行な姿勢として、電池ホルダ12に配置している。電池ホルダ12は、電池11の端部を挿入して、電池11を定位置に配置する保持筒13を備えている。電池ホルダ12は、絶縁材料であるプラスチック等の熱可塑性樹脂によって形成されている。この電池ホルダ12は、電池11の長手方向に2分割された形状に成形される。一対の電池ホルダ12は、電池11の両端を挿入する状態で互いに連結されて、各々の電池11を定位置に配置する。電池ホルダ12は、保持筒13に電池11を挿入する状態で、電池表面の一部を露出させる露出開口14を、電池11の軸方向に沿って開口して設けている。電池ホルダ12の保持筒13に挿入されて定位置に保持される電池11は、この露出開口14から電池表面を露出させている。電池11の露出面は、充填されるポッティング樹脂4に密着して、ポッティング樹脂4に熱伝導して放熱される。
【0026】
電池ホルダ12は、電池11の両端に設けている電極端子を露出させる開口窓を設けている。開口窓から露出する電極端子は、隣の電池11を直列に接続するリード板を溶接している。さらに、電池11はリード板を介して、回路基板6に接続されている。回路基板6は、電池11の保護回路や、電池11の残容量を表示するLED等を実装している。
図1の電池コアパック1は、電池ホルダ12の上部に回路基板6を配置している。回路基板6は、電池ホルダ12に保持されて定位置に配置される。
【0027】
図1に示す電池コアパック1は、防水袋2に入れられてポッティング樹脂4が充填される。ポッティング樹脂4はウレタン樹脂などの絶縁性のプラスチックで、電池11と回路基板6と回路基板6の実装部品7の表面に熱伝導状態に密着して熱を吸収し、電池11、回路基板6、実装部品7の温度上昇を防止する。ポッティング樹脂4は、未硬化な状態では液状ないしペースト状で、防水袋2に充填されて、回路基板6の下に流入し、さらに電池11の間に流入されて硬化する。硬化したポッティング樹脂4は、回路基板6の表裏両面に密着して、回路基板6に実装している半導体素子などの実装部品7に密着し、また電池11の露出面に密着する。回路基板6と実装部品7と電池11に密着するポッティング樹脂4は、回路基板6と実装部品7と電池11から熱が伝導されて、これ等の温度上昇を少なくする。回路基板6に実装する実装部品7は、FETやダイオードなどの半導体素子で、これ等の発熱はポッティング樹脂4に伝導される。とくに、電池11の表面に密着するポッティング樹脂4は、一時的に大電流で充放電されて発生する電池11の熱エネルギを効率よく吸収して、温度上昇を少なくする。
【0028】
ポッティング樹脂4は、電池11、実装部品7、回路基板6等の発熱部品の表面に密着させることが大切である。ポッティング樹脂4の密着不良は、発熱部品の発熱を効果的に伝導して放熱できず、実装部品7の温度上昇が大きくなって、正常な動作を保証できなくなる。また、ポッティング樹脂4と電池11の露出面との密着不良は、電池温度を高くして、電池11を劣化して寿命を短くする。また、電池温度で充放電の電流を制限する電池パックにおいては、充放電の電流の制限が甚だしくなって、正常な電流で充放電できるタイミングを制限する。
【0029】
図1の電池コアパック1は、ポッティング樹脂4を理想的な状態で流入させるために独特の構造としている。回路基板6の下面に速やかにポッティング樹脂4を流入せるために、電池ホルダ12は、回路基板6の側部に、ポッティング樹脂4を充填する充填開口15を設けている。
図1の電池ホルダ12は、回路基板6の両側に上方に開口するように充填開口15を設けている。さらに、この電池ホルダ12は、充填開口15から充填して流入されるポッティング樹脂4を、回路基板6と電池11との間、すなわち回路基板6の裏面にもスムーズに流入させるために、下り勾配の傾斜面16を設けている。図の電池ホルダ12は、回路基板6の両側に傾斜面16を設けている。傾斜面16は、回路基板6の中央部に向かって下り勾配に配置されて、充填開口15に充填されるポッティング樹脂4を回路基板6の裏面にスムーズに流入させる。
【0030】
図1の電池ホルダ12は、回路基板6の両側から外側に傾斜面16を設けている。したがって、傾斜面16に沿って流入するポッティング樹脂4は、回路基板6の裏面に流入した後は、電池11の上面に沿って流れて、電池11の間に流入する。電池11の両面に沿って流れるポッティング樹脂4をよりスムーズに回路基板6の中央部まで流入させるために、電池11を独特の配置とする。すなわち、回路基板6の裏面に配置される電池11は、ポッティング樹脂4の流入方向に向かって下り勾配に傾斜する位置に配置している。ポッティング樹脂4は、
図2の矢印で示す方向に流れて、回路基板6の裏面側に流入する。
図1の電池コアパック1は、電池11を右から左に向かって、1〜6列に配置している。電池11をポッティング樹脂4の流入方向に向かって下り勾配に配置するために、1列目の電池11は2列目の電池11よりも高く、2列目の電池11は3列目の電池11よりも高く配置している。また、6列目の電池11は5列目の電池11よりも高く、5列目の電池11は4列目の電池11よりも高く配置している。ポッティング樹脂4は、回路基板6の両側から中央部に流れるので、電池11は両側から回路基板6の中央部に向かって下り勾配に位置するように配置される。
【0031】
以上の電池コアパック1は、電池ホルダ12の充填開口15に供給されるポッティング樹脂4を、下り勾配の傾斜面16に沿って流入し、さらに、傾斜面16から電池11の上面に沿って下り勾配に流して回路基板6の裏面の中央部に流入させる。この電池コアパック1は、ポッティング樹脂4を確実に充填するのが難しい回路基板6の裏面側の中央部にも確実に流入できる。このため、回路基板6の裏面にもポッティング樹脂4を充填して回路基板6の表面を理想的な状態でポッティング樹脂4に密着できる。また、下り勾配に配置する電池11の上面を中央部に向かって流入されるので、ポッティング樹脂4の注入が難しい、回路基板6中央部の下に配置される電池11の表面にも密着するようにポッティング樹脂4を充填できる。回路基板6は上面にもポッティング樹脂4が充填されるが、回路基板6の上面は、回路基板6の周囲に周壁17を設け、この周壁17の内部にポッティング樹脂4を充填してポッティング樹脂4を回路基板6上面の全面に密着できる。
【0032】
電池コアパック1は、防水性に優れた水密構造を実現するために、防水袋2に電池コアパック1を収納している。とくに、電池コアパック1を防水袋2内で仮固定した状態で、防水袋2から引出線5となるリード線を引き出している。さらに、防水袋2に電池コアパック1を入れて定位置に配置する状態で、ポッティング樹脂4を充填している。
【0033】
防水袋2は、可撓性シートを袋状に加工して製作される。可撓性シートは、好ましくはプラスチックシートで、このプラスチックシートには、ポリイミド(PI)、ポリエチレンイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が使用できる。これらのプラスチックシートは、可撓性と耐熱性に優れている特長がある。また、電池11の安全弁が開弁されたときに排出される電解液によって、溶融し化学反応を起こすこともない。ただ、防水袋に使用される可撓性シートには、上述したもの以外の他のプラスチックシートも使用することができる。
【0034】
防水袋2は、可撓性のシート材を加工して、所定の形状である袋状に形成される。
図2の防水袋2は、筒状の可撓性シートを所定の長さに切断し、筒状の一端、図において底縁を溶着して袋状に加工している。この防水袋2は、底縁のみを溶着して袋状に加工できるので、能率よく多量生産でき、また袋の両側を確実に連結できる。ただし、防水袋は、2枚の可撓性シートを対向して配置して、両側縁と底縁とを溶着して袋状に加工することもできる。この防水袋は、可撓性シートからなる2枚のシートが対向するように配置されて、その両側縁と底縁とが連結される形状となる。
【0035】
防水袋2は、一端に開口部20を備えた袋状であり、この開口部20から電池コアパック1を収納して、この開口部20から、引出線5を引き出している。この引出線5は、充放電端子や信号線を備えた外装ケース3に固定しているコネクタ(図示せず)に接続される。したがって、防水袋2は、電池コアパック1を収納すると共に、防水袋2の開口部20から引出線5を外部へ引き出している。また、
図2に示すように、防水袋2の開口部20から防水構造として、引出線5を引き出している。
【0036】
防水袋2は、電池コアパック1を収納して、引出線5を外部に引き出している。
図2の防水袋2は、開口部20を狭くするために、開口部20の対向する可撓性シート21を溶着して溶着部22を設けている。溶着部22によって、防水袋2の開口部20は全開口幅(W)よりも狭くなり、電池コアパック1を挿入する挿入開口23としている。防水袋2は、溶着部22を設けた後、挿入開口23に電池コアパック1を通過させて内部に入れるので、挿入開口23の開口幅(w)は、電池コアパック1を挿入できる大きさとしている。ただし、挿入開口23は、電池コアパック1を挿入できるが、搬送工程などで電池コアパック1が外部に漏れるのを阻止するために、挿入開口23の大きさは、電池コアパック1が防水袋2に収納される方向では挿入できず、かつ、電池コアパック1の方向を変えることで挿入できる大きさで設けられる。
【0037】
防水袋2は、電池コアパック1を入れる状態で、ポッティング樹脂4を注入し、あるいは開口部20を防水構造に加工するので、これ等の工程で能率よく処理できるように、電池コアパック1よりも相当に大きく製作される。たとえば、ポッティング樹脂4を充填するときに、防水袋2の一部を変形し、あるいは防水袋2の内部で電池コアパック1を移動させる等して、必要な部位に確実にポッティング樹脂4を流入し、あるいは、開口部20を防水処理するために折曲げたり、溶着するとき便利なように、電池コアパック1よりも大きな防水袋2が使用される。大きな防水袋2は全開口幅(W)が大きく、簡単に電池コアパック1を挿入できるが、挿入した後の処理工程で電池コアパック1が防水袋2から外部に漏れやすい弊害がある。
【0038】
図2の防水袋2は、この弊害を阻止するために、防水袋2の開口部20に溶着部22を設けて、挿入開口23の開口幅(w)を全開口幅(W)よりも小さくしている。理想的な挿入開口23は、電池コアパック1を特定の姿勢、すなわち特定の挿入姿勢でのみ通過できる大きさである。たとえば、
図2に示すように細長い電池コアパック1を収納する防水袋2は、挿入開口23の大きさを、電池コアパック1を長手方向とする挿入姿勢でのみ通過できる大きさとする。この挿入開口23の防水袋2は、電池コアパック1を長手方向とする挿入姿勢でのみ通過できるので、電池コアパック1が外部に漏れるのを理想的な状態で阻止できる特徴がある。ただ、防水袋2は、挿入開口23の開口幅(w)を全開口幅(W)よりも小さくするので、必ずしも電池コアパック1を特定の挿入姿勢でのみ通過できる大きさに制限する必要はない。それは、防水袋2が、挿入開口23の開口幅(w)を全開口幅(W)よりも小さくするので、溶着部22のない防水袋2に比較して、電池コアパック1の漏れを少なくできるからである。特に、挿入開口23の開口幅(w)が防水袋2に収納される方向での電池コアパック1の幅と高さを加えた値の110%以下、特に105%以下であれば、電池コアパック1が防水袋2から外部に出るのを防止して能率よく組み立てすることができる。
【0039】
図2の防水袋2は、開口部20の両側に溶着部22を設けて、両側の溶着部22の間に挿入開口23を設けている。溶着部22は細長い溶着ライン22Aで、この溶着ライン22Aは防水袋2の開口部20の開口縁に対して、言い換えると側縁に対して傾斜する姿勢で設けられる。溶着ライン22Aは、その長さを、例えば2cm以上で7cm以下とし、好ましくは3cm以上で6cm以下とし、さらに好ましくは約5cmとする。傾斜する溶着ライン22Aは、開口部20に向かって開口幅を次第に広くする方向に傾斜している。この溶着ライン22Aの防水袋2は、電池コアパック1をスムーズに挿入しながら、電池コアパック1が外部に漏れることをより確実に防止できる特徴がある。それは、溶着ライン22Aに沿って電池コアパック1を挿入できるからである。
【0040】
防水袋2の内部に電池コアパック1を収納した後、防水袋2は、溶着ライン22Aの内側に沿って引出線5を配置して、
図3に示すように、引出線5に沿って内側溶着ライン24が設けられる。内側溶着ライン24は、溶着ライン22Aと同じように、対向する可撓性シート21を細長い形状に溶着して設けられる。内側溶着ライン24は引出線5の内側に設けられて、引出線5は内側溶着ライン24と溶着ライン22Aとの間に配置される。内側溶着ライン24は溶着ライン22Aと平行に、防水袋2の開口縁に対して傾斜する姿勢で設けられる。内側溶着ライン24と溶着ライン22Aとの間隔は、ここに引出線5を配置できるように、たとえば約1.5cmとするが、この間隔は、引出線5を配置できる範囲で、できる限り狭くする。
【0041】
さらに、
図3の防水袋2は、開口部20を防水構造に閉塞するために防水ライン25を設けている。防水ライン25は、溶着ライン22Aと同じように、開口部20の対向する可撓性シート21を細長い形状に溶着して設けられる。この防水ライン25は、防水袋2の開口縁と平行に設けられる。防水ライン25は、その両端を両側の内側溶着ライン24に連結して、防水袋2の開口部20を防水構造に閉塞する。
図3の防水袋2は、防水ライン25の両端を、内側溶着ライン24の内側端に連結するように設けている。
【0042】
電池コアパック1を収納する防水袋2は、外装ケース3に収納される。外装ケース3に収納される防水袋2は、
図3の一点鎖線で示すように、開口部20を折返しライン26で折返して全体をコンパクトにする。内側溶着ライン24と溶着ライン22Aとの間にあって、防水袋2の開口縁に対して傾斜する姿勢で定位置に配置される引出線5は、開口部20を折り返す状態で、
図3の鎖線で示すように、折返しラインに対して傾斜する姿勢で折り返されて、所定の曲率半径で湾曲される。すなわち、防水袋2の開口部20を折り返す状態で、引出線5を重ねることなく折り返しできる。また、引出線5を折り返す曲率半径を大きくできる。このことは、折り返した開口部20を薄くできると共に、引出線5をスムーズに折曲でき、さらに引出線5を小さい曲率半径で折曲して断線する弊害を防止できる。多数の電池11を内蔵する電池パック100は充放電容量が大きく、出力電流が大きいので許容電流量の大きい太い引出線5が使用される。太い引出線5は、折り返して重ね合わすと厚くなり、また小さい曲率半径で折曲するのも難しいが、
図3に示すように、引出線5を傾斜する姿勢に配置して、防水袋2の開口部20を折り返すことで、引出線5を重ねることなく、また折曲する曲率半径を大きくして、引出線5の折り返しを簡単にできる。さらに、防水袋2は、開口部20を2重3重に折り返してコンパクトとし、かつ防水特性を改善して外装ケース3に挿入させることがあるが、この電池パック100においては、とくに、引出線5を重ねることなく折り返すことで、防水袋2の開口部20を薄く、スムーズに折り返しできる特徴を実現する。
【0043】
図3の防水袋2は、開口部20の両側から引出線5を外部に引き出しているが、この電池パック100は、防水袋2の片側から出力ラインの引出線5を外部に引き出し、他の側から信号ラインの引出線5を外部に引き出しすることができる。
【0044】
外装ケース3は、
図1の断面図に示すように、電池コアパック1を収納する防水袋2を収納している。外装ケース3は、プラスチックを閉鎖構造の箱形に成形している。外装ケース3は、プラスチックを2分割して成形されて、内部に防水袋2を収納して閉塞される。この外装ケース3は、出力端子と信号端子を有するコネクタ(図示せず)を有し、コネクタに電池コアパック1の引出線5を接続している。
【0045】
以上の電池パック100は以下の工程で製造方法される。
1.溶着工程において、防水袋2の開口部20を細長い形状に溶着して溶着ライン22Aを設けて、開口部20に全開口幅(W)よりも開口幅(w)の狭い挿入開口23を設ける。また、溶着工程は、防水袋2の作製時に行われていてもよい。
【0046】
2.収納工程において、防水袋2に電池コアパック1を挿入する。
その後、溶着ライン22Aに沿って引出線5を配置し、さらに、引出線5に沿って防水袋2の開口部20を内側溶着ライン24で溶着する。内側溶着ライン24は引出線5の内側に設けられる。
その後、防水袋2にポッティング樹脂4を充填する。ポッティング樹脂4は、電池ホルダ12の充填開口15から内部に注入される。充填開口15に注入されるポッティング樹脂4は、傾斜面16に沿って回路基板6の裏面に流入し、さらに、流動方向に向かって下り勾配に傾斜するように配置している電池11に沿って流れて、回路基板6の裏面と電池11に密着するように充填される。本願発明は、回路基板6の上面にも充填されて、回路基板6と実装部品7と電池11とに密着して、すなわち熱結合状態に充填される。
【0047】
3.その後、閉塞工程において、ポッティング樹脂4を充填した防水袋2に防水ライン25を設けて、開口部20を防水構造に閉塞する。防水ライン25は、その両端を内側溶着ライン24に連結して設けられる。ポッティング樹脂4は、防水ライン25を設ける以前に充填されるが、防水ライン25を設けた後、溶着ライン22Aと内側溶着ライン24との間にノズルを挿入して、防水袋2の内部に充填することもできる。
【0048】
4.組み立て工程において、電池コアパック1を収納して開口部20を閉塞している防水袋2を外装ケース3に入れて外装ケース3を閉塞する。電池コアパック1は、防水袋2に入れて防水構造とするので、外装ケース3は防水構造に密閉する必要はない。ただ、外装ケース3を防水構造としてより確実な防水構造とすることもできるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の電池パックは、電池コアパックを防水袋に入れて防水構造とするので、屋外で使用される電動自転車や電動バイクに便利に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
100…電池パック
1…電池コアパック
2…防水袋
3…外装ケース
4…ポッティング樹脂
5…引出線
6…回路基板
7…実装部品
11…電池
12…電池ホルダ
13…保持筒
14…露出開口
15…充填開口
16…傾斜面
17…周壁
20…開口部
21…対向する可撓性シート
22…溶着部
22A…溶着ライン
23…挿入開口
24…内側溶着ライン
25…防水ライン
26…折返しライン