特許第6407998号(P6407998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6407998流体移送管路を備えた遊星減速ギア、ならびにそのような減速ギアを備えた航空機用プロペラターボ機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6407998
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】流体移送管路を備えた遊星減速ギア、ならびにそのような減速ギアを備えた航空機用プロペラターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20181004BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20181004BHJP
   F01D 25/18 20060101ALI20181004BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F16H57/04 D
   F16H57/04 Q
   F01D25/16 E
   F01D25/18 A
   F02C7/06 D
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-532724(P2016-532724)
(86)(22)【出願日】2014年8月6日
(65)【公表番号】特表2016-527456(P2016-527456A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】FR2014052051
(87)【国際公開番号】WO2015019025
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】1357907
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キュリエ,オーギュスタン
(72)【発明者】
【氏名】ブデビザ,チュウフィク
(72)【発明者】
【氏名】シャリエ,ジル・アラン
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−185283(JP,A)
【文献】 特開2008−014489(JP,A)
【文献】 特開平08−270767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0317478(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F01D 25/16
F01D 25/18
F02C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車列を有する減速ギアにおいて、プラネタリインプットシャフト(35)と、前記シャフトのまわりに噛み合い、プラネットキャリア(38)によって支持されたプラネット(37)と、2つの横側部(41、43)とを備える減速ギアであって、流体供給源に連結され、プラネットキャリア(38)を、それと共に回転するように強制されながら、減速ギア(10)の前記横側部の第1部分(41)からその前記横側部の第2部分(43)まで通過して、減速ギアの外側に出現し、流体を分配することが可能であり、管路(54)には、前記横側部の前記第2部分上で、分配される流体を含む環状空洞(55)がプラネットキャリアの出口に設けられる、少なくとも1つの流体移動管路(54)を備えることを特徴とする、減速ギア。
【請求項2】
管路(54)がプラネットキャリアの横側部上、その外部に配置された軸受等(22)を潤滑化する、請求項1に記載の減速ギア。
【請求項3】
プラネット(37)のまわりに外部リングギア(39)が噛み合い、管路から出現する流体によって潤滑化される軸受(22)を担持するアウトプットシャフト(12)が外部リングギア(39)に連結されることが可能である、請求項2に記載の減速ギア。
【請求項4】
流体管路(54)がプラネットキャリア(38)の中空シャフト(50)のうちの1つを軸方向に通過し、プラネット(37)は中空シャフトのまわりにそれぞれ取り付けられる、請求項1から3のいずれかに記載の減速ギア。
【請求項5】
プラネットキャリアの横側部(41)上に側方フィンガ(58)を有するリング(57)が連結され、これが流体空洞(55)を支持する、請求項1から4のいずれかに記載の減速ギア。
【請求項6】
プラネットキャリアの複数の中空シャフト(50)がそれぞれを通過する流体管路(54)を有する、請求項5に記載の減速ギア。
【請求項7】
リングの側方フィンガ(58)は、プラネットキャリアの中空シャフト(50)を通過して、プラネットキャリアの横側部(43)上に出現して、流体空洞を支持する、請求項6に記載の減速ギア。
【請求項8】
流体空洞(55)はリング(57)の側方フィンガ(58)の自由端部に連結された環状体(70)によって形成され、流体管路が一方側に連結された、潤滑化される軸受を担持するシャフトの支持面(42)と他方側で密閉状態に接触することが可能である軸方向に開いた区画室(75)を有する、請求項7に記載の減速ギア。
【請求項9】
リングの側方フィンガの(58)自由端部同士は、流体空洞(55)を形成する環状体(70)が凭れるように取り付けられた支持環状体(63)によって接合され、組み合わされた2つの環状体の間に、動作する隙間を吸収すること、空洞を形成する環状体の区画室を支持面に対して軸方向に押圧することを目的とした封止体(67)が設けられる、請求項8に記載の減速ギア。
【請求項10】
減速ギア(10)の前記横側部の前記第1部分(41)は上流側であり、減速ギア(10)の前記横側部の前記第2部分(43)は下流側である、請求項1から9のいずれかに記載の減速ギア。
【請求項11】
ガス発生装置部分(G)と、ガス発生装置部分のタービンに連結された差動式遊星減速ギア(10)によって駆動される一対の同軸二重反転プロペラ(2、3)を有する推進部分(P)とを備えるタイプの、特に航空機用のタービンエンジンであって、作動式遊星減速ギア(10)は請求項1から10のいずれかによって規定されることを特徴とする、タービンエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊星減速ギアの分野に関し、より具体的には、以下に限らないが、一対の二重反転推進プロペラを有するタービンへのそのような遊星減速ギアの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
推進プロペラを有するタービンエンジンは、優先的な用途では、「オープンロータ」または「ダクトなしファン」という表現によって示されるターボシャフトエンジンであり、特に、商用航空機で使用されている多流式ターボジェットエンジンと比較してそれらが低燃費であることから、多くの開発の対象となっている。オープンロータタイプの推進システムの構造は、ファンがもはや内部には無く外部にあり、ガス発生装置の上流または下流に位置付けられることができる2つの同軸の二重反転プロペラから構成されるという事実によって、ターボジェットエンジンの構造とは区別される。
【0003】
二重反転する一対の上流プロペラ2と下流プロペラ3を有するターボシャフトエンジン1の概略が図1に描かれている。これは中央長手方向軸線A上に主に2つの別個の部品を備える。「ガス発生装置」部分Gが、航空機の構造体(飛行機の機体の後部など)によって担持される構造ケーシング5を有する静止型円筒形ナセル4の内側に位置付けられ、「推進」部分Pが、オープンロータファンを構成する一対の二重反転プロペラ2、3を有する。この部分Pは、このターボシャフトエンジンの実施例では、ガス発生装置部分Gおよびナセル4を延長させる。
【0004】
ターボシャフトエンジン1のガス発生装置部分Gは通常、軸線Aに対して、ターボシャフトエンジンのナセル4に進入するガス流Fの流れ方向の上流から下流にかけて、単一体または二重体のガス発生装置の構造に依存して1つまたは2つの圧縮機7と、環状燃焼室8と、前記構造に依存して異なった圧力を有する1つまたは複数のタービン9とを備える。それらの1つタービン9Aは、遊星ギア歯車列(パワーギアボックスをしてPGB)を有する減速ギア10によって、二重反転の形で、ターボシャフトエンジンの軸線Aと位置合わせされた2つの上流プロペラ2と下流プロペラ3の同心型同軸シャフト11および12を駆動する。排気ノズル13が通常通りターボシャフトエンジン1を終端させる。
【0005】
推進部Pに関して述べると、2つの二重反転プロペラ、それぞれ上流(前方)プロペラ2と下流(後方)プロペラ3が、軸線Aに対して垂直の半径方向に平行な平面内に配設され、それらは、ナセルを延長させる多角形環状体14、15を有する回転するケーシングを備える。多角形環状体14、15内には、半径方向の円筒形区画室16、17が、プロペラの羽根20、21の根元またはピボット18、19を受け取るように、均等に分配して設けられる。
【0006】
環状体14、15を有するケーシングは、タービンおよび減速ギア10によって相反する回転方向に回る駆動シャフト11、12にそれぞれ連結される。減速ギア10は2つのプロペラに対して相反する回転方向を課する。上流プロペラと下流プロペラのシャフト同士の相互の位置決めを保証するために、いくつかの軸受が設けられる。そのうちの1つの軸受22が上流プロペラと下流プロペラの2本のシャフト11と12の間に位置付けられ、下流プロペラ3のシャフト12は上流プロペラ2のシャフト11に対して半径方向で内方にあり、上流プロペラ2のシャフト11は半径方向で外方となる。
【0007】
ターボシャフトエンジンの作動中に遭遇される動的応力のために、本発明の主題である適切な潤滑化がこの軸受に、さらにターボシャフトエンジン内に存在するここに示されない他の全ての軸受にもたらされる。
【0008】
本発明の主題であるこの軸受の潤滑化に至る前に、動作中、短時間でターボシャフトエンジン1に進入する空気流れFが圧縮され、次いで燃焼室8内で燃料と混合され、燃やされる。生成された燃焼ガスは次にタービン9および9Aを有する部分を通過して、遊星減速ギア10を介して、推進力の大部分を供給するプロペラ2、3同士を相反して回転させる。燃焼ガスは排気ノズル13を通して放出され、そのようにしてターボシャフトエンジン1の推進力を増大させる。
【0009】
さらに、遭遇される様々な飛行局面によるターボシャフトエンジン1の最適な作動を可能にするために、適切な制御システム25が飛行中に羽根のピッチ、即ち二重反転プロペラのピッチを変化させることを可能にする。この目的のために、半径方向の羽根のピボット18、19は、システム25によって、長手軸線Aに実質的に垂直であるそれらの軸線Bに対して、半径方向の区画室16、17内で回るように回転される。例えば、このシステムによると、羽根は飛行局面で+90°から30°まで、地上および推進力反転の局面で+30°前後から−15°まで回転することができ、飛行の作動不良(エンジン故障)の際には、急速にフラグの位置で90°に戻る。その場合には羽根は航空機の移動方向に対して引き込められ、可能な限り小さな運動妨害しか呈示しない。
【0010】
下流プロペラ3の羽根を制御するシステム25の概略図が図1の長方形によって示される。これは一般的に、連結機構27が連結される流体リニアアクチュエータ26を備える。連結機構27は羽根21のピボット19に連結して、アクチュエータの並進運動を下流プロペラの羽根の軸線Bのまわりの回転に変換する。上流プロペラに対しても、ここに示されない羽根のピッチを制御するシステムが設けられる。
【0011】
ライン28は潤滑化供給ラインならびに高圧油ラインを備える。その数は、上述のピッチ制御システム25の上述の特定動作局面に対して3つであり、それらは、軸線Aに沿って内方シャフト12内に収容される円筒形スリーブ29の内側を走行し、上流でガス発生装置Gの排気ケーシング30に、下流でアクチュエータ26に通じる制御システム25に機械的に連結される。
【0012】
潤滑剤および高圧油を供給するライン28はそれぞれ、ナセル側の構造ケーシング5内に位置付けられた、ここに示されない潤滑剤および高圧油の供給源から供給され、半径方向アームを通過してガス発生装置部分G内で終結する。
【0013】
システム25のこれらのライン28に加えて、シャフト間軸受22とここに示されない他の軸受とのための潤滑剤ライン、特にスリーブと下流プロペラの内方シャフトとの間に位置付けられたライン、ならびに制御システム作動用の電気機器用ラインがスリーブ29を通過する。
【0014】
シャフト間軸受22の潤滑化が図2に示される。そこでスリーブ29内を走行する対応するライン31が、半径方向にスリーブの側壁に固定された少なくとも1つのノズル32内で終端するのが分かる。ライン31内で循環し、ノズル32から出現する油は、スリーブ29と下流プロペラのシャフト12との間の環状空間を通過し、シャフト間軸受22に到達する。シャフト間軸受22は、下流プロペラのシャフト12の側壁内に設けられたオリフィス33を通して潤滑される。
【0015】
したがって、このスリーブ29の内側を多数の油圧ラインおよび電気ラインが通ることが明らかであり、これはスリーブを、その中に全てのラインを収容するべく対応する直径を有するように設計することを伴う。本発明の適用においては、スリーブの外側直径は減速ギア10のプラネタリシャフトの内側直径に依存する。この内側直径は、減速ギア10を回転させる動力タービンのインプットシャフト35の直径に対応する。したがって、スリーブはターボシャフトエンジン1の中央に大きな空間を占める。このことは減速ギアのまさに一体化にとって有害である。
【0016】
上記のように、このような一体化をし易くするために、本出願人は、スリーブを通過する軸受潤滑化ラインの少なくとも1つ、この事例ではシャフト間軸受22を潤滑化するライン(下流プロペラの羽根のピッチを制御するシステム用のラインは、それらが下流に位置付けられたアクチュエータを供給しなければならいことから移動可能ではない)を移動させて、それがこのスリーブの外部を通ることを可能にし、そのようにしてスリーブを包含し、その寸法を縮小することを可能にすると同時に、減速ギア10を一体化するための空間を残すことが可能であるか否かを検討した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的はこの問題への解決法をもたらすことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明は、遊星歯車列を有する減速ギアにおいて、長手方向軸のプラネタリインプットシャフトと、前記シャフトのまわりに噛み合い、プラネットキャリアによって支持されたプラネットと、2つの横側部とを備える減速ギアであって、少なくとも1つの流体移動管路において、流体供給源に連結され、プラネットキャリアを、それと共に回転するように強制されながら、減速ギアの前記横側部の第1部分から前記横側部の第2部分まで通過して、減速ギアの外側に出現し、流体を分配することが可能であり、管路には、前記横側部の前記第2部分上で、分配される流体を含む環状空洞がプラネットキャリアの出口に設けられる、流体移動管路を備えるという事実によって卓越している、減速キアに関する。
【0019】
好ましくは、減速ギアの前記横側部の前記第1部分は上流側であり、減速ギアの前記横側部の前記第2部分は下流側である。
【0020】
このようにして、本発明によって、減速ギアの上流の横側部上に位置付けられた供給源から流体を直接減速ギアのプラネットキャリアを通して移送して、流体をプラネットキャリアに、1つの方向に回転しながら長手方向に通過させ、それを下流の横側部上でその外側にもたらして、例えば部材、機構などを直接潤滑化することが可能となる。
【0021】
減速ギアの優先的な用途では、管路内を循環する流体は、プラネットキャリアの横側部(好ましくは下流)に、その外部に、配置された軸受などを潤滑化する。
【0022】
この用途では、遊星減速ギアは、異なった速度で回転する2つのシャフトをその出力部で駆動するために差動式である。プラネットのまわりに外部リングギアが噛み合い、管路から出現する流体によって潤滑化される軸受を担持する出力シャフトがそこに連結されることが可能である。
【0023】
このようにして、潤滑剤を、詳しくは減速ギアに冷却油を供給する供給源から減速ギアに移送し、潤滑剤を従来技術の解決法に従ったスリーブによるのではなく、異なった回転速度を有する2つの基準枠の間に案内することが可能である。これはスリーブの全体寸法を制限し、そのようにして減速ギアの一体化を向上させることを可能にする。
【0024】
好ましい実施形態によると、流体管路はプラネットキャリアの中空シャフトのうちの1つを軸方向に通過し、プラネットは中空シャフトのまわりにそれぞれ取り付けられる。
【0025】
最適な潤滑化のために、プラネットキャリアの複数の中空シャフトがそれぞれを通過する流体管路を有する。
【0026】
他の特徴によると、プラネットキャリアの横側部上(好ましくは上流)に側方フィンガを有するリングが連結されて、流体空洞を支持する。有利には、リングの側方フィンガは、プラネットがまわりに取り付けられたプラネットキャリアの中空シャフトを通過して、プラネットキャリアの横側部上(好ましくは下流)に出現し、流体空洞を支持する。管路はそれぞれの側方フィンガに連結されて、それらを保持し、案内することができる。
【0027】
さらに、好ましい実施形態では、流体空洞はリングの側方フィンガの自由端部に連結された環状体によって形成され、流体管路が一方側に連結された、潤滑化される軸受を担持するシャフトの支持面と他方側で密閉状態に接触することが可能である軸方向に開いた区画室を有する。
【0028】
有利には、リングの側方フィンガの自由端部同士は、流体空洞を形成する環状体が凭れるように取り付けられた支持環状体によって接合され、組み合わされた2つの環状体の間に、動作可能な隙間を吸収することと空洞を形成する環状体の区画室を支持面に対して軸方向に押圧することとを目的とした封止体が設けられる。本発明は、ガス発生装置部分と、ガス発生装置部分のタービンに連結された差動式遊星減速ギアによって駆動される一対の同軸二重反転プロペラを有する推進部分とを備えるタイプの、特に航空機用のタービンエンジンにも関する。
【0029】
有利には、作動式遊星減速ギアは先に規定した通りである。
【0030】
この用途では、遊星減速ギアはその出力部で、相反して回転する2つのシャフト、即ち下流プロペラのシャフトが連結されたプラネットキャリアのシャフトと、上流プロペラのシャフトが連結されたリングギアのシャフトとを駆動するために、優先的に作動式である。プラネットキャリアは、プラネタリシャフトの反対方向に回る。プラネットキャリアの反対方向に回る外部リングギアはプラネットのまわりに噛み合う。このようにして、潤滑剤を、特に冷却油を供給する供給源から減速ギアに移送し、潤滑剤を相反する回転方向を有する2つの基準枠の間に案内することが可能である。
【0031】
添付図面の図は、本発明がどのようにして実装されることが可能であるかについて明確な理解を与える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ガス発生装置の下流に一対の二重反転プロペラを有し、プロペラのシャフトを二重反転駆動する遊星減速ギアと潤滑化されるシャフト間軸受とを一体化した、ターボシャフトエンジンの概略的軸方向断面図である。
図2】シャフトの内部にあるスリーブ内の通常の供給ラインから軸受を潤滑化することから成る、従来技術への解決法を備えた二重反転プロペラのシャフト間軸受の部分的軸方向断面図である。
図3】本発明の解決法によるシャフト間軸受を潤滑化する管路を有する遊星減速ギアの切断斜視図である。
図4】潤滑剤を搬送する管路の1つにおいて、リングは、潤滑化される軸受の方向に側方フィンガと潤滑剤の空洞とを有する、上流から見た拡大斜視図である。
図5】潤滑剤を搬送する管路の1つにおいて、リングは、潤滑化される軸受の方向に側方フィンガと潤滑剤の空洞とを有する、下流から見た拡大斜視図である。
図6】側方フィンガを有するリングの斜視図である。
図7】下流プロペラのシャフト上に設けられたトラックと接触するように組み立てられた環状体の半径断面図である。
図8】空洞受け取り式トラック上に取り付けられ、シャフトに固定されてシャフト間軸受を潤滑化するノズルを有する下流プロペラのシャフトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1および図3を参照すると、2つのプロペラ、上流プロペラ2と下流プロペラ3の相反する回転を可能にするために、減速ギア10は差動式であって、逆転した遊星歯車列を有する。この目的のために、減速ギア10は、この実施例では、回転方向に回りながら減速ギアを駆動するタービンシャフト36上にスプライン連結部35によって取り付けられた歯車34の形態にあるプラネタリインプットシャフトを長手方向軸線Aに対して備える。プラネット37がインプットシャフト34のまわりに噛み合い、適切にインプットシャフトの回転の逆方向に回るプラネットキャリア38によって支持され、外部リングギア39がプラネットと噛み合い、適切にインプットシャフト34と同じ方向に、かつプラネットキャリア38の反対方向に回る。
【0034】
一対のプロペラを有するターボシャフトエンジン1への適用では、上流プロペラ2を駆動する外方シャフト11は、組み立てられた部品から成る環状バルブ40(図3)によってプラネットキャリア38と共に回転するように強制される。環状バルブ40は減速ギア10を取り囲み、流れFに対して減速ギアの上流の横側部41上で、軸線Aに沿ってプラネットキャリア38に連結される。下流プロペラ3を駆動する内方シャフト12に関しては、これは、外部横面42内で終端する。外部横面42はターボシャフトエンジンの軸線Aに垂直であり、減速ギアの下流横側部43上で外部リングギア39と共に回転するように強制される。
【0035】
さらに、減速ギアの上流横側部(または面)41上の入口に、減速ギアを潤滑化する油移送軸受44が存在する。この軸受の一部が示されるが、これは概略的に2つの環状部を備える。一方の内部環状部45の一部が図3に示されるが、これはプラネットキャリアに固定され、他方のここに示されない外部環状部はケーシングに固定される。これらの環状部の間に減速ギアを潤滑化する流体が到着する。これは構造ケーシング5内に位置付けられた上流供給源46(図1)から発し、半径方向アーム49の1つを通過する。油移送軸受44と、プラネットキャリア38と、環状バルブ40と、したがって上流プロペラ2の外方シャフト11とは、相互に対して回転して結果的に同一方向かつ同一速度で回るように連結される。減速ギアの下流横側部(または面)43の出口には、潤滑されるシャフト間軸受(転がり軸受)22が存在する。その内側リング47は下流プロペラの内方シャフト12に連結され、その外側リング48はそのバルブを介して上流プロペラの外方シャフト11に連結される。
【0036】
有利には、このようにしてスリーブ29を通過する流体ラインを少なくし、減速ギア用の空間を開放しながらこのシャフト間軸受22を潤滑化するために、本発明は、移送軸受44を通過して回転方向に回る潤滑剤の一部を、長手方向に軸線Aに沿って、移送軸受44の方向に対応する方向に回るプラネットキャリア38を通過して、他方向に回るリングギア39に固定されたシャフト12の横面42まで至る間に、直接シャフト間軸受22に移送して、リングギアとプラネットキャリアにそれぞれ内側リングと外側リングが連結されるシャフト間軸受22の方向に直接潤滑剤を噴射することから成る。
【0037】
本発明を例証する実施形態に入る前に、減速ギア10について以下により精確に記述がなされる。このタイプの差動式減速ギア10の通常の形で、図3によって示されるように、プラネット37は入力タービンシャフト36のまわりに均等に分配され、それらの歯は、インプットシャフト36と共に回転するように強制された中間歯車34上の歯と協働する。変化形態では、歯車は前記シャフトと一体を成す部分であることも可能である。
【0038】
プラネットキャリア38は、図3の通り、中空シャフト50を備える。それらは軸線Aと平行であり、角度的に均等に分配され、それぞれにプラネット37が取り付けられる。中空シャフトはプラネットキャリアの連結カラー53によって一緒に連結される。特に、この実施例では、各プラネット37は、取り付けられた同一の2つの軸受(転がり軸受)に対応して、カラー53によって中空シャフト50上で互いに位置合わせおよび離隔されるようになる。軸受の内側リング51はプラネットキャリアの各中空シャフト上で不動化され、周囲部で歯を担持する外側リング52は外部リングギア39上の内部歯と協働して、これを逆回転に駆動する。上流プロペラのシャフト11の対応する端部を終端させ、減速ギアを取り囲む環状バルブまたはフランジ40は、上流横側部41によってプラネットキャリア38に固定される。
【0039】
潤滑化の移送は、特に図3図4、および図5に示されたこの実施例では、潤滑剤を収集する空洞55に通じる複数の管路54と、空洞と連通し、軸受22に向けて潤滑剤を噴射するノズル56(図5および図8)と、減速ギアを軸方向に通過する側方フィンガ58を有するリング57とを有する手段を備える。
【0040】
管路は、導管、マニホルド、チューブ等の任意の細長い物体において、機械的かつ熱的に高度な動作条件を考慮して流体を完全に安全に循環させることを可能にする細長い物体を意味する。
【0041】
管路54は、減速ギアの上流横側部41上で油移送軸受44に連結されて、軸受内を循環する油の一部をその中で受け取り、プラネットキャリア38を、それと共に同じ方向に回りながら通過する。プラネットキャリア38はそれらと実質的に平行な中空シャフト50の内部通路59を通過する。管路54は減速ギアの他方の下流横側部43上に出現して、以下で見られるように、空洞55に連結される。さらに管路54はフィンガ58に沿って、クリップまたは他の保持手段68によってそこに連結されながら案内される。
【0042】
最初に、図3から図6によって示されるように、リング57は、リングをバルブに必要な位置内で角度的にロックするように、サークリップ61等の手段と実はぎ式の連結とによって、上流プロペラのシャフトのバルブを終端させる内部環状ショルダ60内で固定されるべく、減速ギアの上流横側部41上に取り付けられる。この連結は図面には示されない。長手方向軸線Aと平行に配設されたリングの側方フィンガ58の数は、この実施例ではプラネットキャリアの中空シャフト50、即ちフィンガがそれぞれ通過して他方横側部43上に出現するシャフトと同じである。
【0043】
リング57のフィンガの自由端部62の目的は、空洞55を担持することである。空洞55は、下流プロペラの内方シャフト12の横面42と接触するようにされる。したがって、リング57が、一方向に同じ速度で回る回転基準枠(油移送軸受44と、プラネットキャリア38と、上流プロペラの外方シャフト11のバルブ40と、関連する空洞55およびこのリングに連結された管路54を伴ったリング57とを含む基準枠)から反対方向に回る別の基準枠(減速ギアの外部リングギア39と下流プロペラの内方シャフト12とを含む基準枠)に変化することを可能にすることが理解されよう。
【0044】
さらに、図4から図6によって示されるように、フィンガの端ラグ内に設けられた貫通穴をそれぞれ通過する固定要素64(ねじ等)によって、フィンガ58の自由端部62の全てに共通支持環状体63が固定される。支持環状体63はさらに、図7のように、環状体の横面66内に設けられた環状溝65を有する。これは側方フィンガを有するリングの(したがって減速ギアの)外側の方に向けられ、封止体67を受け取る。その役割については後で明記される。
【0045】
管路54を介して油を移送する空洞55を、シャフト間軸受の方向に形成することを目的とした環状体70が、この支持環状体63に固定して取り付けられる。詳しくは図5および図7によって示されるように、空洞55を形成するこの環状体70はU字形状の断面を有し、その基部71は、封止体67を軸方向に圧迫しながら支持環状体63の横面66に対して取り付けられる。空洞を形成する環状体70は図7のように、支持環状体に対して、軸方向には、環状体63上の内部周囲溝73内に収容されたサークリップ72などによって、角度的には、それ自体が知られている実はぎ連結によって保持される。
【0046】
潤滑剤を搬送する管路54同士は、特に図3図4、および図5によって示されるように、適切な継手74によって空洞を形成する環状体70の基部71内で連結される。
【0047】
これらの管路54によって搬送される潤滑剤用の空洞55は、硬質または準硬質の金属から製作されることができるが、内方シャフト12の横面42を備えたU字形状の内部環状区画室75によって画定される。図5および図7で分かるが、U字形状のフランジ76の端部が、ワッシャの形態のトラック80と接触する。これは空洞を有する環状体70のフランジの端部に収容された環状封止体77によってさらに密閉を伴い、トラック80は内方シャフトの横面42上にしっかりと保持され、環状封止体を圧迫しながら環状体のフランジ用の当接面として働く。したがって、潤滑剤は、2つの相反する回転基準枠の間を通過しながら、外側に漏れずに封止体77によって区画室75内に密封状態で包含される。
【0048】
トラック80は特に図8に関して示されるが、そこでは、内方シャフト12の横面42内に設けられた区画室81内に取り付けられ、そこにサークリップ82によって、かつここに示されない角度的な実はぎ連結によって保持されるのが分かる。横面42内に設けられた穴79を通過するノズル56は、ねじ締めまたは他の適切な固定手段によってこのトラック80内に受け取られる。図5および図8は、プロペラのシャフト11と12の間に面して位置付けられたシャフト間軸受22を連続的に潤滑化するための、横面42の後出口のノズル56の噴流Jを概略的に示す。
【0049】
封止体77の機械的および熱的強度をもたらすために、封止体77は炭素から製作され、トラック80は金属であることが好ましい。
【0050】
さらに、空洞55を間に区切る、環状体70とシャフトのトラック80との位置決め、したがってそれらの間の接触を保証するため、ならびに特に軸方向の動作可能な隙間を考慮に入れるために、有利には、組み立てられた2つの環状体63と70の間に封止体67を設けることが使用される。これは、減速ギアがこのシャフト上に堅固に取り付けられており、開口を決定するために動作可能な隙間を考慮に入れる必要があることから、油移送用の空洞55を有する環状体70の、保持サークリップに最も近い軸方向位置が、軸受22内の最大の隙間開口、即ち、下流プロペラシャフト12の減速ギア10に対する、従って上流プロペラシャフト11に対する最大の引き込みに対応することによる。2つの環状体63、70の間の離隔に変化(縮小)が発生した場合には、封止体67が圧迫され、そのようにして隙間の変化を吸収する。封止体67は、充分な弾力性をもたらすためにオメガ字形状の断面を備えることが好ましい。環状体の2つの壁が最大限に離隔した場合にも、封止体67は常に圧迫され、したがって油移送環状体の炭素封止体77を、下流プロペラシャフト上に取り付けられた炭素トラックに対して押圧する。
【0051】
上記の実施形態は、潤滑流体を遊星減速ギアに通過させることによって、既に極めて込み合った環境内の流体ラインの通行の問題に対する解決法を与える。
【0052】
本発明について、相反する方向に回転するシャフトを備えた作動式遊星減速ギアに関して本明細書で説明がなされているが、当然のことながら、直結式遊星減速ギアに適合されることも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8