(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素ガスの収着能力を有する非水溶性の二酸化炭素収着材粒子を担持したハニカムロータを、少なくとも収着ゾーンと脱着ゾーンを有する夫々シールされたケーシング内に収納回転させ、収着ゾーンにてハニカムの湿った状態で二酸化炭素を含む混合ガスと接触させて気化冷却しながら二酸化炭素を収着する工程と、脱着ゾーンでは二酸化炭素を収着したハニカムに水蒸気を導入して、高濃度の二酸化炭素を脱着させる工程とを含む、二酸化炭素ガスの回収濃縮方法。
二酸化炭素ガスの収着能力を有する非水溶性の二酸化炭素収着材粒子を担持したハニカムロータを、少なくとも収着ゾーンと脱着ゾーンを有する夫々シールされたケーシング内に収納回転可能にし、収着ゾーンにてハニカムの湿った状態で二酸化炭素を含む相対湿度100%以下の混合ガスと接触させて気化冷却しながら二酸化炭素を収着するようにし、脱着ゾーンには水蒸気を通すようにした、二酸化炭素ガス回収濃縮装置。
二酸化炭素ガスの吸着能力を有する非水溶性の収着材で構成したロータの、ロータの回転方向に対し、収着ゾーン及び脱着ゾーンの境目の、何れか一方または両方に注水スクリーンパージゾーンを設けた請求項2に記載の二酸化炭素ガス回収濃縮装置。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として、産業や自動車及び家庭から排出される二酸化炭素をできるだけ削減しようとする取り組みが世界レベルで行われている。これには、エネルギーを消費する機器を省エネルギーとなるように改良し、古い機器と置き換えるという取り組みをしている。また、発電などのエネルギーを生み出す機器としては、太陽光や風力等再生可能エネルギーを利用したものを用いたり、火力発電所の発電効率を上げる改良を行ったり、将来的には火力発電所から排出される二酸化炭素を回収濃縮して、地中や深海に貯留する技術等も研究開発されている。
【0003】
以上のような取り組みの中で、本件発明は特に火力発電所や燃焼炉等から排出されるガスから、二酸化炭素を回収して濃縮する技術に関する。
【0004】
火力発電所としては、燃料に石油や天然ガスや石炭を用いるものが最も普及しており、これ以外には都市より排出されるゴミを焼却するもの等がある。このような火力発電所の中で、石炭を燃料として使用するものは、次のような特徴がある。即ち燃料が安価であり、石炭の世界的な埋蔵量は石油よりも遥かに多く、埋蔵場所も世界各地にあるため入手が容易であり、よって安定して電力を供給できるという特徴がある。
【0005】
しかし、石炭は燃焼時に排出する二酸化炭素が石油や天然ガスと比較して多く、さらに硫化物も多いという問題が有る。さらに石炭だけでなく、重質の石油も石炭と同様の問題があった。このため、石炭や重質油を燃料とする発電所などでは、硫黄酸化物や窒素酸化物を除去する装置を設けて、環境汚染を防止している。
【0006】
しかし硫黄酸化物や窒素酸化物を除去して環境汚染を防止しても、依然として二酸化炭素を多量に排出し、地球の温暖化を促進するという問題があった。
【0007】
この改善策として、排ガス中の二酸化炭素を分離回収濃縮し、回収した二酸化炭素を地中や深海に貯留するという技術が研究開発されている。この二酸化炭素の分離回収濃縮手段としては、深冷法、吸収法、吸着法、膜分離法等種々提案されている。
【0008】
深冷法は原料ガスを加圧して、加圧下での各ガスの液化温度の差を利用して、二酸化炭素を液化分離する方法である。ガスを圧縮するコンプレッサの電力と、深冷する冷凍機の電力が必要で、例えば二酸化炭素濃度が10%前後の場合、二酸化炭素以外の、回収する必要のないその他90%のガスも一緒に圧縮、深冷しなくてはならない為、エネルギー消費が過大になる欠点が有る。
【0009】
吸収法は、二酸化炭素をモノエタノールアミン等アミン系のアルカリ液に吸収させて回収し、加熱することで二酸化炭素を脱離させて濃縮する方法で、すでに実用化されているが、アルカリ液を取り扱うことで耐蝕性の高価な材料が必要で高コストである。また、アミン水溶液の濃度は30%前後で、70%前後が水であり、取り扱う液体の熱容量が膨大なため、要所に熱交換器を配置して熱回収しても省エネルギー化の限界に近づいている。(非特許文献2)さらには、モノエタノールアミン等は蒸気化する薬品なので、大気中に排気されての二次汚染も懸念されるなどの問題が有る。
【0010】
吸着法はゼオライトや活性炭などのガス吸着材を用いるもので、圧力差を利用して吸・脱着するプレッシャースイング法(以下PSA法)と温度差を利用して吸・脱着するサーマルスイング法(以下TSA法)とがある。PSA法は圧力により二酸化炭素の吸着量が変わる原理を利用して、加圧して二酸化炭素のみを吸着させ、減圧して二酸化炭素を脱着分離回収する方法なので耐圧力容器が必要で、周辺機器として電磁弁やコンプレッサ、真空ポンプ等精密機械も必要となり大型化が困難という問題が有る。
【0011】
TSA法は摂氏50℃(以降、温度は全て「摂氏」とする)以下の温度で二酸化炭素を吸着させ、100〜200℃前後の温度に加熱して二酸化炭素を脱着させて回収する方法である。二酸化炭素吸着材を充填した複数の吸着塔を吸着と再生と交互に切り替える多塔式では、ガスの圧力損失が高く、塔の切り替えによる濃度、圧力の変動が避けられない、大型化が困難などの欠点が有る。
【0012】
TSA法の中でも、回転型吸着ハニカムロータを用いることにより、低圧力損失化や大型化の可能な方法が特許文献3〜5に示されている。しかしながら、二酸化炭素の回収率、濃縮濃度、回収エネルギーの省エネ性の点で不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は二酸化炭素回収濃縮方法に関するもので、高い回収率で回収し、高濃度に濃縮でき、小型化でき、耐久性が高く、100℃前後の廃熱を再生に利用でき、かつ消費エネルギーの少ない、サーマルスイング二酸化炭素回収濃縮装置を提案するものである。
【0016】
特許文献1、2に開示されたものは、粒状の二酸化炭素吸着材をバケット状の容器に分割して収納した円筒形状容器のロータを用いて、ロータを回転させるか、またはダクト装置を回転させて、吸着ゾーンで二酸化炭素を吸着して、脱着ゾーンで加熱ガスにより高濃度の二酸化炭素を脱着回収する方法が示されている。
【0017】
この技術ではガスの圧力損失が高く、省エネルギー性も考慮されていない。特許文献2では、原料ガスの熱を二酸化炭素の脱着ガスの熱源に利用する方法が開示されているが、回収濃縮装置そのものの省エネルギー性については考慮されていない。
【0018】
特許文献3にはハニカム構造のロータが提案され、圧力損失の低減がなされている。またロータが回転に伴って順次吸着ゾーンと、加熱二酸化炭素ガスによる脱着ゾーンと、ガスパージゾーンと、再生冷却ゾーン(以下冷却ゾーンと表示)を経て再び吸着ゾーンに戻るフローが開示されている。脱着ゾーンを通過して次のゾーンに移る段階で、ハニカム空隙に内包する高濃度二酸化炭素ガスが、ロータの回転に伴って次のゾーンに移動、次のゾーンが冷却ゾーンである場合には高濃度ガスが冷却ガス中に放出されて二酸化炭素回収率を減ずる。この対策としてパージゾーンを設けている。
【0019】
また脱着ゾーンの次にパージゾーンを通過して後も、ハニカムは蓄熱により高温のままなので二酸化炭素の吸着力が弱く、ここに原料ガスを流しても二酸化炭素ガスは吸着されずに流出してしまう。そこで吸着ゾーンの前に冷却ゾーンを設けて、ハニカムを冷却した後吸着ゾーンに移るように構成されている。これにより二酸化炭素の回収率を高めることができるとしている。
【0020】
脱着ゾーンでは、ガス加熱コイルと脱着ゾーンとの循環回路を構成し、ボイラ等から排出される高温ガスの熱を回収利用して、省エネ性を向上させる工夫がされている。また冷却ゾーンではガス冷却コイルと冷却ゾーンとの循環回路を構成し、冷却効果を高めるよう工夫されている。しかし夫々の循環ガス量が多いため、より大型のハニカムロータが必要という欠点がある。
【0021】
特許文献4は、ボイラ、脱硫装置、エリミネータ、ハニカムロータ除湿装置、ハニカムロータ二酸化炭素回収濃縮装置を一体システムとして、全体システムの最適化を提案しているが、二酸化炭素回収濃縮装置に関しては特許文献3からの進歩性は無い。
【0022】
特許文献5は、二酸化炭素吸着ロータの吸着材として、Li、Mg、Na、Ca、SrをカチオンとするSiO
2/Al
2O
3比が2〜2.5の範囲のX型ゼオライトを用いることが開示されているが、二酸化炭素濃縮装置に関しては特許文献3からの進歩性は無い。
【0023】
非特許文献1に開示されている
図1の二酸化炭素回収濃縮装置は、特許文献3〜5に関連するもので二酸化炭素吸着ハニカムロータ1を、ロータ駆動モータ2によって、ロータ駆動ベルト(又はチェーン)3を介して、1時間に数〜十数回転の速度で回転させる。ロータ1の回転方向に従って吸着ゾーン4、脱着ゾーン5、ガスパージゾーン6、冷却ゾーン7を経て吸着ゾーン4に戻るサイクルで構成されている。冷却ゾーン7とガス冷却コイル8と冷却ガスブロア9との循環回路が構成されている。脱着ゾーン5と脱着ガス加熱コイル10と脱着ガス循環ブロア11とは、循環回路が構成されている。
【0024】
特許文献3〜5及び、非特許文献1に開示されている二酸化炭素回収濃縮システムの構成について説明する。煙道ガスは高温高湿度で、硫黄酸化物、窒素酸化物、粉塵等の汚染ガスも含まれるため、脱硝装置、ウェットスクラバー、脱硫装置、バグフィルタ等特許文献4に開示されているような前処理装置を設けて、有害なガスや粉塵を除去処理する。二酸化炭素濃縮にゼオライト系吸着材を担持したハニカムロータを用いるので、ゼオライトが二酸化炭素よりも水蒸気を優先的に吸着して、二酸化炭素吸着能力が低下することから、特許文献4に開示されているように、ハニカムロータ除湿機による前処理にて、露点温度−20〜−60℃程度に除湿して導入する必要がある。
【0025】
以上の構成の従来例の動作を以下説明する。煙道ガスを前処理した原料ガスは吸着ゾーン4に導入され、ハニカムが二酸化炭素を吸着して濃度が減少し、冷却ゾーン7の出口空気と合流混合する。合流したガスは冷却ガス循環ブロア9でガス冷却コイル8を通過して冷却され、冷却ゾーン7に導入される。冷却ゾーン7では脱着ゾーン5からパージゾーン6を回転移動してきて、いまだに高温のため二酸化炭素吸着能力の回復していないハニカムの吸着能力を回復するため、冷却ゾーン7にてハニカムを冷却する。
【0026】
冷却ゾーン7でも二酸化炭素の吸着は進行する。冷却ゾーン7を循環するガスは、吸着ゾーン4から導入される原料ガスから、回収した二酸化炭素を除いた容積分のガスが余剰となり、系外に排出、大気中に排気される。
【0027】
脱着ガス循環回路では、高濃度二酸化炭素ガスが脱着ガス加熱コイル10にて、140〜220℃に加熱されて脱着ゾーン5に導入され、ハニカムを加熱してハニカムに吸着した二酸化炭素を脱着させる。つまり脱着ゾーン5を出たガスは、脱着ガス循環ブロア11にて再度脱着ガス加熱コイル10に戻って循環するが、循環回路内のガスは脱着した二酸化炭素ガスで増量し、増量した容積分は循環回路外に取り出し回収される。この方式は加熱した二酸化炭素ガスで、二酸化炭素ガスを脱着するため完全脱着が困難で、このこともロータ大型化の要因になっている。
【0028】
ハニカムロータ除湿機やハニカムロータ有機溶剤濃縮装置では、加熱した空気を脱着ゾーンに導入して、ハニカムに吸着している水蒸気、あるいはVOCをキャリアガスである空気にのせて脱着するが、二酸化炭素濃縮装置でキャリアガスを用いると回収二酸化炭素濃度を減じることになる。そのため脱着に高濃度二酸化炭素ガスを用いる。ハニカムロータ除湿機やハニカムロータ有機溶剤濃縮装置とは全く異なる考え方が必要になる。
【0029】
パージゾーン6では、脱着ゾーン5から回転移動してきたハニカムの空隙に内包される高濃度二酸化炭素ガスを、パージして脱着ゾーン5に戻すことで回収した二酸化炭素の流失を防ぐ。パージガスには冷却ガスの一部が使われるが、原料ガスを用いることも可能である。このガスパージにより、二酸化炭素回収率を高める効果が有る。
【0030】
パージガス量をさらに増量すると、予熱を利用してガスパージゾーン6にて披吸着質の脱着が促進され、さらにパージゾーン6にて熱回収して脱着ゾーン5にて再利用することによる省エネルギー効果が有り、ロータ式除湿機、ロータ式有機溶剤濃縮装置では多用されるフローである。しかし本発明が対象とする二酸化炭素濃縮装置の場合、二酸化炭素濃度の低いガスが脱着回路に導入されて二酸化炭素回収濃度を減じてしまうので、パージガス量を増量して省エネ効果を出すという使い方は成り立たない。
【0031】
さらに別の問題として、冷却ゾーンでは、再生直後のハニカムの冷却と、冷却ゾーン通過時に二酸化炭素の吸着により発生した吸着熱を除去するために、処理ガス量の4〜6倍の循環冷却ガスを流さなくてはならず、ガス冷却器に供給する冷水量や循環ブロアの動力消費が大きくかつロータが大型化するという欠点が有る。
【0032】
また脱着ガスも原料ガス量に対して約2倍量循環させなくてはならず、表1のようにハニカムロータ有機溶剤濃縮装置のロータ径と比較して、同じ処理(原料)ガス量に対してボリュームで5倍以上、ロータ直径で2.2倍以上の大型のロータが必要になるという問題がある。
【表1】
以上のように二酸化炭素回収濃縮装置としては、濃縮濃度と回収率を同時に向上させることと、ロータの小型化と、消費エネルギーを劇的に下げなくてはならないという4つの課題が有る。先述のように、二酸化炭素回収濃縮装置の小型化と高性能化のために、いかにして効果的にハニカムを冷却するかという大きな課題が有る。ハニカムロータ式の有機溶剤濃縮装置や、除湿機でもパージゾーンを設けてハニカムを予冷却することで、性能向上できることは常識であるが、冷却除去しなければならない熱量のレベルにおいて別物と考える必要が有る。
【0033】
その理由の一つ目は吸着容量の問題である。有機溶剤や水蒸気よりはるかに高濃度のガスを吸着しなくてはならない為、処理ガス量に対する吸着ゾーンへの吸着材投入量が有機溶剤濃縮装置や除湿機の数倍〜十数倍になる。言い換えれば原料ガス量に対して、従来装置の数倍から〜数十倍の体積のロータが必要になる。そのためにロータ回転数を早くして、吸着処理量に対処しようとしているが、脱着の終わったハニカムの蓄熱を除去するために、原料ガスによるパージ冷却効果では全く不十分で、そのために吸着ゾーンより何倍も広い冷却ゾーンを設け、吸着ガスの何倍もの冷却ガスを循環させて冷却しなくてはならない。
【0034】
二つ目は二酸化炭素の吸着熱である。ハニカムを通過するガスから二酸化炭素を吸着すると吸着熱が発生し、吸着熱によりガスやハニカムが昇温することで吸着材の吸着力が低下する。二酸化炭素の吸着熱は水蒸気の吸着熱の6〜7分の1程度であるが、有機溶剤濃縮装置やハニカムロータ除湿機と比較してはるかに高濃度の二酸化炭素を吸着しなくてはならないため多くの吸着熱が発生する。ハニカムロータ式除湿機では、高湿度の場合は前段にて冷却式除湿機でプレ除湿した後、ハニカムロータ除湿機で除湿するという2段階で対応できるが、二酸化炭素濃縮の場合はこのような方法は不可能である。
【0035】
そのため冷却ゾーンで十分に冷却しても、吸着ゾーンでの二酸化炭素吸着が不十分になり、回収率及び濃縮濃度が上がらない。以上二つの理由から蓄熱と吸着熱を除去するために比較的大きい冷却ゾーンを設けて循環冷却しているが、冷却のためのエネルギー増やロータ径の大径化や、装置が過大になるという問題がある。ハニカムロータ式除湿機とVOC濃縮装置との比較例を表1に示す。
【0036】
試験結果や非特許文献1のシミュレーション結果を分析すると、ハニカムロータ二酸化炭素回収濃縮装置の二酸化炭素回収エネルギーは、二酸化炭素脱着エネルギーの目安と考えられる二酸化炭素の気化潜熱369.9kJ/kgの約15倍にもなっており、脱着ゾーンに投入される熱エネルギーの約8〜9割が、ハニカム(ハニカム基材と吸着材と吸着材を固定しているバインダー)を温めるだけに投入されていると考えられる。冷却ゾーンではこのときの膨大な蓄熱を厄介者として除去するために、さらにエネルギー消費が増加するという悪循環が有る。
【0037】
吸収法では、30%前後のアミン水溶液と原料ガスを接触させて二酸化炭素を吸収させるが、アミン液は70%前後が水であり、しかも水の密度は原料ガスの主成分である窒素の約800倍(1.251:1000 kg/m3)で、比熱は約4倍(4.187:1.038 kJ/kg・k)なので体積あたりの熱容量は約3200倍と熱容量が非常に大きいため、二酸化炭素の吸収熱は水に吸収され前述の吸着式よりもはるかに温度上昇が少なく、従って原料ガス及び吸収液の温度が上昇して吸収量が低下するという影響は少ないため、原料ガスを吸収液に1回接触させるだけでガス中の二酸化炭素のほとんどが吸収できる。これが吸収法のメリットであるが、逆に吸収液の熱容量が膨大であるために、加熱と冷却によるロスも大きくなるというデメリットにもなっている。
【0038】
以上の問題を解決する方法として特許文献6に宇宙ステーションや潜水艦などの閉鎖空間の二酸化炭素を除去する目的の、固定層(床)式の二酸化炭素回収濃縮技術が開示されている。アミン系イオン交換樹脂や活性炭の二酸化炭素吸着材を収納した吸着塔に処理ガスを通して二酸化炭素ガスを吸着させ、次いで管路を切替えて水蒸気を導入加熱し、二酸化炭素を脱着回収する。二酸化炭素を脱着回収後再度管路を戻し、処理ガスを流して二酸化炭素を吸着する連続サイクルで目的を達成する。二酸化炭素の吸着時には、脱着時に吸着材に凝縮した水の蒸発によって吸着材が冷却され吸着が促進されることも開示されている。
【0039】
特許文献7には移動層(床)式の二酸化炭素回収濃縮技術が開示されている。二酸化炭素吸着材を収納した吸着塔に原料ガスを通して二酸化炭素を吸着させ、吸着後吸着材を再生塔に移動して、水蒸気で加熱して二酸化炭素を脱着回収する。さらに二酸化炭素吸着材は乾燥塔を経て再度吸着塔に移動して二酸化炭素を吸着する連続サイクルで目的を達成する。また吸着塔と乾燥塔を一体にできることも開示されている。
【0040】
特許文献8ではアミン基を有する弱塩基性イオン交換樹脂の床(層)に原料ガスを導入して、原料ガス中の二酸化炭素を吸着し、脱着工程では床(層)に温水を直接注入することにより温度を上昇させて二酸化炭素を脱着回収する。次に床(層)に冷水を直接注入することにより温度を低下させてから後、再び原料ガスを導入する工程に戻ることで連続的に二酸化炭素を回収する方法が開示されている。
【0041】
特許文献3〜5及び、非特許文献1の方法において、熱容量の少ない二酸化炭素ガスを脱着用熱媒体に用いるため、脱着用ガスの必要量が膨大になり、装置が大型化するという問題に対し、特許文献6、7では水蒸気の凝縮潜熱を用い、特許文献8では熱容量が二酸化炭素ガスの約500倍の温水を用いるという原理なので、装置の大型化が避けられていると分析した。
【0042】
さらに、特許文献3〜5及び、非特許文献1の方法において、再生後の吸着材の冷却及び二酸化炭素ガスの吸着熱の除去のために、熱容量の少ない混合ガスを用いるため冷却工程では冷却ガスの循環量が膨大になり装置の大型化が避けられない。この問題に対し特許文献6、7では再生工程にて二酸化炭素吸着材表面に凝縮した水を、二酸化炭素の吸着工程にて発生する吸着熱を水の蒸発による気化冷却効果で除去できることで大型化が避けられていると分析した。また特許文献8では再生工程後に水を直接注水する冷却工程を設けることでこの問題が顕在化していないと分析した。しかし特許文献6、7、8、は粒状の吸着材を用いるための欠点、つまり粒子層の通気抵抗の課題や、粒子外部と内部の収・脱着速度の違いや、凝縮水の毛細管挙動、粒子の流動性により処理ガスの速度が制約される。また粒子の強度が必要であるなど、解決できていない問題も多くある
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、固体で非水溶性のアミン系二酸化炭素収着材を用いて二酸化炭素ガスを回収濃縮する技術に関するもので、二酸化炭素収着材粒子を担持したシートを加工した、ハニカムロータを用いた二酸化炭素ガス回収濃縮装置に関するものである。ハニカムロータは、少なくとも収着ゾーンと脱着ゾーンの2区画に仕切られシールされたケーシング内を回転する。収着ゾーンに原料ガスを導入し、ガス中の二酸化炭素を収着する。二酸化炭素を収着したハニカムはロータの回転により脱着ゾーンに移動する。脱着ゾーンでは、ハニカムに大気圧近傍の低圧水蒸気を導入接触させてハニカムを加熱し、二酸化炭素を脱着させ回収する。二酸化炭素ガスを脱着させたハニカムはロータの回転により再び収着ゾーンに戻る。
【0044】
吸着と吸収現象は異なるが似た現象で、両方の要素がある場合には収着という言葉を用いることもある。イオン交換樹脂は含水により水で満たされた細孔が存在し、その細孔内を拡散して細孔表面のアミン基に二酸化炭素が吸着すると考えられる。また多孔質固体吸着材の細孔内にアミン液やイオン液体など吸収剤を添着した吸着材もこれに含まれ、何れであっても操作原理において
湿った状態で二酸化炭素を収着し、非水溶性で固体状の
1mm以下の小径粒子
又は1mm以下のシート状であることが本発明の要点であり、小径粒子を用いてハニカム化することで、様々なメリットが生じる。
【0045】
大気圧近傍の低圧水蒸気とは、50〜100℃の基本的に大気圧であって、高濃度二酸化炭素を含む水蒸気を流動させたり、大気の漏れ込み混入を防止したりするために陽圧にする程度の圧力で、せいぜい100〜2000Pa程度の圧力を意味する。脱着ゾーンに導入された低圧水蒸気はハニカムの加熱や二酸化炭素の脱着熱供給により冷却凝縮し、ハニカムや収着材表面に結露する。収着材の表面は脱着再生ゾーンにて凝縮した水蒸気由来の水で濡れたまま吸着ゾーンに戻るが、原料ガスの通過による水の気化冷却現象によって吸着材の冷却を促進し、かつ二酸化炭素ガスの収着熱を除去冷却することで高効率に二酸化炭素ガスを吸着できるという効果を発揮する。
【0046】
固体非水溶性のアミン系二酸化炭素収着材としてはアミン基を有する塩基性イオン交換樹脂の他に、細孔内にアミン系二酸化炭素吸収剤又はイオン液体などの吸収剤を細孔内に添着した吸着材を用いることもできる。吸着材の細孔内に浸水して二酸化炭素収着性能が阻害される場合には、吸着材の表面を弱疎水性にして細孔内への浸水を防止することもできるが、微細孔なので微弱な疎水性で目的を達成することが出来る。逆に強い疎水性では凝縮水が収着材表面を避け、水滴が大径化して気化冷却効果が低下するので望ましくない。本発明では、二酸化炭素収着材粒子を担持したシートをコルゲート加工して巻き付けまたは積層した形状の積層ハニカムを用いるが、その理由を以下に示す。
【0047】
特許文献7、8、9に示されるような粒子状吸着材を詰め込んだ層(床)では、球の最密充填理論から、粒子同士の接触点が一つの粒子に少なくとも12ヶ所存在し、その接触点に毛細管が形成され、接触点では
図9のように毛細管力により凝縮水が引き寄せられ、粒子表面で凝縮水の粗密が形成されて、吸着工程での二酸化炭素吸着と水の蒸発冷却現象の同時進行現象に悪影響を及ぼす。つまり凝縮水が粗の部分では気化冷却水が途中で途切れ、粒子の接触箇所の凝縮水の密の部分では、表面を厚く覆った水膜により吸着の開始が遅れる。
【0048】
粒子の収着容量と水の凝縮及び蒸発量及び粒子の表面積の関係から、最適な粒子の直径が決まる。つまり収着材表面での水蒸気の凝縮による二酸化炭素ガスの脱着工程があり、収着工程においては、二酸化炭素の収着熱を収着材表面に付着した水の蒸発潜熱で除去する二酸化炭素収着濃縮装置の原理においては、効果的な粒子径が存在する。
【0049】
特許文献7では望ましい層(床)の水の含有量が指定されているが、イオン交換樹脂の含水可能量を超えて多量に表面を覆う水は、
図9のように正常なガス通過を遮るばかりか、ガス流によって水が下流側に吹き飛ばされ、水の含有量を想定量に制御することは困難なのでガス流速が制限される。圧力損失も考えれば、吸着層の前面風速で1m/s以下が実用範囲とならざるを得なかった。例えば2mm以上の粒子になると
図11のように吸着量の関係から粒子上に凝縮する水膜も厚くなり、重力により流下したり、粒子間に形成される毛細管力により凝縮水の偏在が生じたりするというデメリット等がある。
【0050】
図2に粒子径と表面積、体積、比表面積の関係を示す。また
図12に粒子径と、二酸化炭素が脱着する温度まで粒子を加熱する熱量と、二酸化炭素を脱着するための潜熱をプラスした熱量分に相当する潜熱の水蒸気が凝縮した場合の、水膜厚さの関係を示す。粒子径と二酸化炭素の収着量と、粒子表面に凝縮する水膜厚さは比例関係にあり、吸・脱着速度や蒸発冷却効果に大きく影響することが分かる。また
図13は垂直親水面(ガラス)に付着した水膜の、流下による時間と厚さ変化を計算したグラフである。この図から本開発装置が想定する分単位の操作時間において、維持できる水膜厚さは約10μmであることが分かる。つまり10μm以上の水膜が生ずるような粒子径のCO
2収着材粒子を用いた場合、脱着工程で生じた凝縮水の水膜は収着工程で蒸発冷却に利用する前に粒子表面から流下してしまって、凝縮水の偏在を生じてしまうので望ましくない。
図12にも示すように、水膜の分単位の維持も考慮すれば粒子径は1mm以下が望ましく、0.6mm以下がより望ましい。このような小粒子では特許文献7、8、9に示されるような固定床、移動床式では高い圧力損失や、ガス流による粒子の流動、磨耗の問題があり、大型の装置は困難である。そこで粒子径1mm以下の小粒子の二酸化炭素収着材の効果を発現させる為に、第一の方法として
図10のようなシート上両面に1mm以下の小粒子を夫々一層のみ分布接着したシートを、コルゲート加工して巻き付け又は積層したハニカムをこの原理装置に適用させることを考案した。
図14に1mm以下の小粒子を一層のみ分布接着したシート表面写真を示すが、夫々の粒子と粒子はほとんど接触せず、接触していても接触点は少なく、CO
2脱着時に生じた凝縮水は、収着工程に移動して冷却蒸発するまで粒子表面にそのまま留まり、粒子全体の表面で蒸発冷却効果を発揮することが出来る。
【0051】
0.6mm以下の微粒子になると粒子間には強い毛細管力と、高い圧力損失によって粒子間に浸透した水は排水が不可能になる。そこで逆に毛細管力を有効に利用する別の第二の方法を考案した。0.1mm以下の微小粒子とバインダーを混合したスラリーを多孔質シートにコーティングして、0.4mm以下のシートにして用いれば良い(
図15にシート表面写真を示す)。前述したように、コーティング層内で複数重なった微小粒子間が凝縮水の毛細管力により満たされるが、ハニカム形状なので通気に影響は無く、
図10のように広いハニカム表面からシートの内部へと二酸化炭素ガスの収着と水の蒸発冷却が進むので、2mm以上の粒径の吸着材を充填した層(床)で問題になるデメリットは解消される。またシートの表裏で収着速度や容量の差や、凝縮水量や気化冷却効果にむらがあっても、0.4mm以下の薄いシートのハニカムなので、表裏での凝縮水の物質移動や、熱移動が良いのでむらは緩和され、従って性能向上できる。
【0052】
第二の方法として0.1mm以下の微粒子を用いる場合は、紙に抄き込むか、多孔質紙にコーティングした後コルゲート加工して積層ハニカムに加工するか、多孔質紙で製作した積層ハニカムに、収着材粒子とバインダーを調合したスラリーに浸漬コートする方法を示したが、ハニカム体積あたりの収着材含有量を多くするにはシート上に1mm以下の粒子を分布接着させる第一の方法が、収着容量を多くするための効果的な方法である。しかし何れの方法も、1mm以上の粒子の充填層(床)、移動床(層)を用いる方法よりも、収着工程にて効果的に気化冷却効果を発揮して収着性能を向上するという効果では同じである。しかもハニカムロータ式であるがために圧力損失が少なく、収着材粒子の流動、磨耗を生じることなく、かつ大型でも軽量な装置化も可能であるという特徴を有する。
【0053】
基本実施形体としては、円盤状又は中空円筒状のロータ何れでも可能で、ロータの回転によって次工程に収着ハニカムが移動するため構造や切替え制御が容易で、大型化し易いというメリットがある。一例について説明すると、無機繊維シート、又は金属シート、又はプラスチックシートを加工したハニカムのフルート内表面に、アミン基を有する粒状イオン交換樹脂や、アミン系二酸化炭素収着剤やイオン液体等を担持した粒状吸着材ロータを用い、
図4に示すようにロータの回転方向に沿って、原料ガスを導入する収着ゾーン13と、大気圧近傍で60〜100℃の低圧水蒸気または飽和水蒸気を用いた二酸化炭素脱着ゾーン14を経て、再び収着ゾーン13に戻る構成にしている。
【0054】
収着ゾーン13に原料ガスを導入して二酸化炭素ガスを収着させ、次にロータが回転してハニカムが脱着ゾーンに移動し、低圧水蒸気を導入加熱して二酸化炭素を脱着させる。二酸化炭素の脱着と水蒸気の凝縮が同時に進行する。次いでハニカムは脱着ゾーン14から収着ゾーンに回転し、収着ゾーン13では、再び原料ガスが流入し二酸化炭素の収着が始まる。
【0055】
さらに本考案は回転型であることから、収着ゾーンと脱着ゾーンの前後の境目に、
図6に示すように通水スクリーンによるパージゾーンを設けることもでき、回収二酸化炭素ガスへの原料ガスの混入及び、回収ガスの原料ガスへの流出を防止することができる。
【発明の効果】
【0056】
収着ゾーンに二酸化炭素を含む原料ガスを流してハニカムに二酸化炭素を収着させるときに、収着熱により収着材や原料ガスが温度上昇すると
図3の様に収着量が減少するが、本発明では二酸化炭素の収着によって生ずる収着熱は同時に進行するハニカム表面の水の蒸発冷却によって除去されることで、ハニカムや原料ガスの温度上昇が抑制され、高効率に二酸化炭素ガスを収着することが出来る。
図16に二酸化炭素収(吸)着中の空気線図上の温度湿度変化を示す。例えば従来のゼオライトロータによる濃縮方法では処理ガス0(ゼロ)から二酸化炭素の吸着熱等により(1)の55℃まで昇温するので、冷却コイルを通過させて冷却し0→(1)→0→(2)→0→(3)までの3回冷却循環が必要であるが、本発明の気化冷却収着法では○→◎のように1回通すだけで従来法の3回循環処理分の吸着熱を潜熱に変えて除去し、45℃までの昇温に留まるので収着性能が向上する。また耐熱性の低いアミン系収着材の耐久性を高める効果もある。
【0057】
二酸化炭素を収着したハニカムはロータの回転によって脱着ゾーンに移動し、脱着ゾーンでは大気圧近傍の低圧水蒸気が導入され、ハニカムと収着材は蒸気により直接加熱され、脱着された二酸化炭素ガスを回収する。
【0058】
100℃近い飽和蒸気は、同じ100℃の大気や二酸化炭素ガスの100倍以上のエンタルピを有するので、
図1のような二酸化炭素ガスを脱着させるために二酸化炭素ガスを何度も再加熱しながら循環させる必要がない。熱容量の膨大な水蒸気は、必要な導入体積が少ないので脱着ゾーンは小さくでき、また
図1のような脱着ガスを何度も循環させる動力ロスは無い。水蒸気はハニカムの加熱および二酸化炭素の脱着熱により冷却され、ハニカム及び収着材表面に凝縮する。
【0059】
収着ゾーンに移動した直後のハニカム及び収着材は前述の理由で濡れているが、原料ガスが流入すると水の蒸発冷却現象により強力に冷却され、二酸化炭素ガスの収着が始まる。原料ガスの蒸発冷却効果を効果的に利用するためは、原料ガスを冷却減湿する事が望ましいが、特許文献3〜5、非特許文献1に示す合成ゼオライトを用いる場合のように、マイナス露点まで除湿する必要はなく、中間期外気の10〜20℃D.P.で良い。従って原料ガスの前処理装置はシンプルで、特許文献4に示すような低露点除湿専用機は不要で、イニシャルコスト、ランニングコストも抑えられる。
【0060】
特許文献3〜5、非特許文献1の方法では、二酸化炭素の吸着により吸着熱が発生し、ガス及びハニカムが高温になって吸着量が低下するが、本発明の方法によると、ハニカムは水に濡れている限り原料ガスによる気化冷却現象が続くので、収着熱は気化熱に変換して効果的に冷却され、高い吸着性能を維持することが出来る。ちなみに二酸化炭素の収着熱の目安と考えられる気化潜熱369.9kJ/kg〜昇華潜熱573kJ/kgに対し、水の気化潜熱は2500kJ/kgなのでハニカム及び収着材に付着または吸収している水1kgの蒸発によって、二酸化炭素約4〜5kgの収着熱を除去することが出来る計算になる。
【0061】
図1では、吸着熱による温度上昇により1パス当たりの吸着量が低下するため、処理ガスを再冷却しながら4〜7回パスさせなくてはならないが、本発明の方法によると、収着熱は水の気化冷却現象により強力に冷却されるので、1回パスで大部分の二酸化炭素を収着でき、収着ゾーンは非特許文献1の4分の1以下になり、従ってロータサイズを飛躍的に小径化できることになる。 また処理ガス循環ブロアと再生ガス循環ブロアの動力費やイニシャルコストも飛躍的に削減できる。
【0062】
また長期運用上の効果として耐久性の向上がある。固体アミン系二酸化炭素収着材やアミン系イオン交換樹脂は酸素がなければ耐熱性は100℃まで耐えるものがあるが、酸素のあるガス中では50〜60℃でも著しく劣化する例がある。本発明の方法では、収着時のアミン系収着材の温度は40℃以下に抑えられ、脱着時は60〜100℃になるが酸素がほとんど無いので酸化劣化が防止され、耐久性が向上する。
【0063】
収着ゾーンと脱着ゾーンの前後の境目に、
図6に示すように水スクリーンによるパージゾーンを設けたケースのメリットについて解説する。ロータハニカムが収着ゾーンから脱着ゾーンに移動する箇所ではハニカムの空隙の原料ガスが脱着ゾーンに持ち込まれると二酸化炭素の回収濃度を減じる。またロータハニカムが脱着ゾーンから収着ゾーンに移動する箇所では、ハニカム空隙中の高濃度二酸化炭素ガスが収着ゾーン出口側に持ち出され回収率を減じる。そこで
図6のように水スクリーンによるパージゾーンを設けると、ロータハニカムが収着ゾーンから脱着ゾーンに移動する箇所ではハニカムの空隙の原料ガスはパージ水の流下により収着ゾーン側に排気されるので、原料ガスが脱着ゾーンに持ち込まれて回収ガスの濃度を減じることを防止できる。
【0064】
さらにロータハニカムが脱着ゾーンから収着ゾーンに移動する箇所では、ハニカムの空隙中の二酸化炭素ガスは、パージ水により脱着ゾーン内に推し戻され、回収ガスの逸失を防止できると共に、脱着ゾーンから収着ゾーンに移動するハニカムの予冷効果と、パージ後の水を蒸気発生槽に給水することで、給水を予熱する熱回収効果もある。
【0065】
また原料ガスには前処理で除去できなかった硫黄酸化物や窒素酸化物等の汚染ガスが存在し、そのためにアミン液吸収法では、汚染ガスにより劣化した高価なアミン液を年単位で更新しなくてはならない。本発明の方法では、水スクリーンパージ水により水洗する効果で、汚染ガスはパージ水に溶解して、定期的にパージ水を精浄水に入れ替えることでパージ水に溶解した汚染物質を除去でき、固体アミン系収着材の劣化が軽減される効果もある。またメンテナンスにあたっては、パージ水に精浄水や純水を用いて洗浄したり、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等を溶解したアルカリ性再生液で洗浄したりすることも可能なので、ハニカムロータの再生効果や、耐用年数を高めることが出来るという効果もある。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明をハニカムロータ式で説明する。無機繊維シート、又は金属シート、又はプラスチックシート等で出来たハニカムにアミン基を有するイオン交換樹脂等、非水溶性固体アミンを担時したロータを用い、ロータの回転方向に沿って収着ゾーンと、大気圧近傍の低圧水蒸気による二酸化炭素脱着ゾーンを経て、再び収着ゾーンに戻る構成にしている。
【0068】
煙道ガスは高温高湿度で、硫黄酸化物、窒素酸化物、粉塵等の汚染ガスも含まれるため、脱硝装置、ウェットスクラバー、脱硫装置、バグフィルタ等、特許文献4に開示されているような前処理装置を設けて、有害なガスや粉塵を除去処理し、原料ガスとする。
【0069】
収着ゾーンに二酸化炭素を含む原料ガスを流してハニカムに二酸化炭素を収着させる。二酸化炭素を収着したハニカムはロータの回転によって脱着ゾーンに移動して蒸気が導入され、ハニカムは水蒸気で直接加熱され、水蒸気はハニカム表面に凝縮、脱着された二酸化炭素ガスを回収する。次にハニカムロータは脱着ゾーンから再度収着ゾーンに回転し、収着ゾーンではハニカム流路に再び原料ガスが流入して二酸化炭素ガスの収着が始まる。
【0070】
吸着法では、例えば二酸化炭素吸着性に優れた合成ゼオライトや活性炭等、大小はあるが何れも処理ガス中の水蒸気を優先吸着して二酸化炭素の吸着率を減じ、かつ再生脱着側では吸着した水蒸気を脱着するために多くのエネルギーを必要とするという欠点がある。また定期的に吸着蓄積した水蒸気を脱着するための専用の賦活工程を設ける必要がある。
【0071】
これに対し、本発明の方法では収着材は、脱着から収着に切り替わった直後は凝縮水で濡れているが、その水分は処理原料ガスの通過によって蒸発し、脱着直後のハニカムの蓄熱を冷却する効果と、二酸化炭素の収着熱を蒸発冷却により除去する効果を発揮するので、系内の水の挙動はマイナス効果ではなく、むしろプラス効果に転ずることが出来るという特徴を有する。
【0072】
二酸化炭素濃縮にゼオライト系吸着材を担持したハニカムロータを用いる場合は、ゼオライトが二酸化炭素よりも水蒸気を優先的に吸着して、二酸化炭素吸着能力が低下することから、特許文献4に開示されているように、ハニカムロータ除湿機による前処理にて、露点温度−20〜−60℃程度に原料ガスを除湿して導入する必要があるが、本考案では必要が無い。しかし収着ゾーンで前述する気化冷却効果を利用するには、ある程度冷却減湿したほうが良いが、マイナス露点温度まで下げる必要はない。
【0073】
処理ガスを冷却減湿するには、冷熱機器が必要で、エネルギー消費も増加するが、収着ガス温度を低温化すると
図3のように固体アミンの吸着容量は飛躍的に増加できる。吸着材の吸着量を2倍に向上することは現実的には不可能に近いが、ガス温度を下げること、また吸着中の温度上昇を気化冷却効果で抑えることで、実質的な吸着容量を2倍にすることは可能である。以上のように原料ガスを冷却することで二酸化炭素回収濃縮装置が大幅に高性能化、小型化でき、結果的に全システムの小型化、省エネ化が図れる。
【0074】
発電所やごみ焼却場では、出来るだけ廃熱を回収再利用して省エネを図っているが、温水等の低温排熱は用途が限られる。この低温排熱を利用してシステム全体の能力を倍増させる方法は、総合的な省エネ面でも優位性がある。処理空気の冷却減湿には、吸収式冷凍機、吸着式冷凍機を使って、余剰の低温排熱を利用すればよい。これらの冷凍機は、アミン式及び特許文献3〜5、非特許文献1に示すようなTSA方式の脱着に利用できないような低温排熱を利用できることでも、二酸化炭素回収濃縮コストの低減が図れる。
【0075】
また排熱の熱源が不足する場合、CO2ヒートポンプ等、冷却しながら高温の熱回収が出来るヒートポンプと組み合わせると、処理ガスを冷却しながら、回収した熱を蒸気発生の熱源に利用することで、ランニングコストを大幅に削減することも可能になる。
【実施例1】
【0076】
図4に実施例1を示す。ハニカムロータ12は、ガラス繊維等無機繊維主体のPET繊維などプラスチック繊維を含む30g/m
2の多孔質ペーパに、粒度分布0.02〜0.1mmの固体アミンの微粒子と、耐熱耐水性のバインダーとを混合したコート液をコーティングし、乾燥したシート(写真2)をピッチ3.0mm、高さ2.0mmにコルゲート加工し、それを巻きつけてロータ化して、固体アミン微粒子を50重量%含む嵩比重150kg/m
3のハニカムロータ12を得る。本発明では、収着した二酸化炭素の脱着に蒸気を使用するため、ハニカムロータ12の不燃化は不要だが、温水中での保形成、強度確保のためガラス繊維等の無機繊維やPET等の合成繊維を混抄した紙を支持体にすることが望ましいが、耐蒸気性、保形性、強度を有する合成繊維の不織布等であれば無機繊維の介在は必須ではない。
【0077】
前記ロータ12を搭載した二酸化炭素回収濃縮装置は収着ゾーン13、脱着ゾーン14が設けられ、ハニカムロータ12は、収着ゾーン13から、脱着ゾーン14を経て収着ゾーン13に戻るように構成されている。
【0078】
収着ゾーン13に、発電所等から排出される排ガスを脱硝、脱硫、脱塵処理した原料ガスを導入すると、ハニカムに担持した粒状固体アミンに二酸化炭素が収着される。
【0079】
二酸化炭素が収着する際に収着熱が発生し、ガス温度の上昇によって二酸化炭素収着能力が阻害されるが、本発明のロータ12の収着工程のハニカムは、脱着工程での凝縮水で湿っているため、相対湿度100%以下の原料ガスの通過により凝縮水が蒸発して気化冷却現象を生じて温度上昇は抑えられ、従って収着性能が飛躍的に向上する。
【0080】
水の蒸発潜熱は2500kJ/kg・Kで二酸化炭素の気化潜熱369.9kJ/kg・Kに対し、6倍以上の潜熱で収着熱を水の蒸発潜熱に変えて効果的に除去することができるので、非特許文献1の
図1の技術では、処理ゾーン4及び冷却ゾーン7にて原料ガスを冷却しながら何度も循環させないと二酸化炭素の回収率を向上させることが出来ないが、本発明では1回の通過で十分な回収率を達成することが出来、従って装置の小型化と、ブロアの動力削減、つまり省エネ性を同時に達成できる。
【0081】
二酸化炭素を収着したハニカムはロータの回転によって脱着ゾーン14に移動し、脱着ゾーン14では蒸気ボイラからハニカム内に大気圧近傍の低圧蒸気が導入される。大気圧近傍の低圧蒸気とは、大気圧より100〜2000Pa程度の陽圧蒸気で、脱着ゾーンに設置した圧力ゲージ(PG)の値で蒸気ボイラを制御することによって低圧蒸気の圧力を調整する。ハニカムは蒸気によって加熱され、同時に蒸気はハニカム内表面に凝縮する。ハニカムの固体アミンに収着された二酸化炭素ガスが脱着されて回収され、脱着が終わったハニカムは再び収着ゾーン13に戻ることで、連続的に二酸化炭素ガスの回収濃縮をすることが出来る。
【実施例2】
【0082】
図5に実施例2を示す。アルミ箔25μのシートの表裏に、耐熱、耐水性のエポキシ接着剤を塗布し、0.3〜1.2mmの粒状の、アミン系弱塩基イオン交換樹脂粒子を分布接着させたシート(
図14)を用いてピッチ9mm、高さ5.6mmにコルゲート加工し、さらに巻き付け又は積層して、240g/m
3のアミン系弱塩基イオン交換樹脂の担持された、二酸化炭素濃縮ハニカムロータ12を得る。
【0083】
イオン交換樹脂粒子を分布接着したシートは、例えば特公平7-16576のような方法で製作することができるが、この方法に限定されるものではない。
【0084】
二酸化炭素回収濃縮装置は、ハニカムロータ12の回転方向に収着ゾーン13、脱着ゾーン14を経て収着ゾーン13に戻る。収着ゾーン13に、発電所等から排出される排ガスを前処理冷却減湿した二酸化炭素ガスを含む原料ガスを導入すると、ハニカムに分布接着したイオン交換樹脂粒子層に二酸化炭素が収着される。
【0085】
二酸化炭素が収着する際に収着熱が発生するが、本発明のロータ12の二酸化炭素収着ハニカムは、実施例1と同じ理由で、凝縮水で湿っているため、原料ガスの通過により凝縮水が蒸発して気化冷却効果によって温度上昇は抑えられ、従って収着性能は向上する。
【0086】
水の蒸発潜熱は2500kJ/kg・Kで二酸化炭素の気化潜熱369.9kJ/kg・Kに対し、6倍以上の潜熱で、収着熱を水の蒸発潜熱に変換して効果的に除去することができるので、非特許文献1では処理ゾーンにて原料ガスを冷却しながら何度も循環させないと二酸化炭素の回収率を向上させることが出来ないが、本発明では1〜2回の循環で十分な回収率を達成することが出来、従って装置の小型化と、ブロアの動力削減つまり省エネ性を同時に達成できる。
【0087】
脱着ゾーンの下部は水蒸気発生水槽になっており、水槽に内装されたヒータにて水を加熱して水蒸気を発生、脱着ゾーンに導入する。外部に蒸気ボイラを設けなくてよいので、構造が簡単で小型化、低コスト化が可能である。
【0088】
脱着ゾーン14ではハニカムに水蒸気が導入加熱され、ハニカムのイオン交換樹脂に収着された二酸化炭素ガスが脱着回収され、水蒸気はハニカム内に凝縮することは実施例1と同様である。脱着が終わったハニカムは再び収着ゾーン13に移動することで連続的に二酸化炭素ガスの回収濃縮をすることが出来る。
【実施例3】
【0089】
図6−a、b、c に水スクリーンパージゾーンを設けた場合の実施例3を示す。なお、
図6−bは、
図6−aのA−A断面での矢視図で、
図6−cは、
図6−aのB−B断面での矢視図である。収着ゾーンと脱着ゾーンの前後の境目に、
図6−a、b、cに示すような注水スクリーン原料ガスパージゾーン15、注水スクリーン二酸化炭素パージゾーン16を設けた場合のメリットについて解説する。ロータハニカムが収着ゾーンから脱着ゾーンに移動する箇所ではハニカムの空隙の原料ガスが脱着ゾーンに持ち込まれて二酸化炭素の回収濃度を減じる。またロータハニカムが脱着ゾーンから収着ゾーンに移動する箇所では、ハニカム空隙中の高濃度二酸化炭素ガスが収着ゾーン側に持ち出され回収率を減じる。
【0090】
そこで
図6のように注水スクリーン原料ガスパージゾーン15、注水スクリーン二酸化炭素パージゾーン16を設けると、ロータハニカムが収着ゾーンから脱着ゾーンに移動する箇所では、ハニカムの空隙の原料ガスはパージ水により押し出されて収着ゾーン側に排気され、原料ガスが脱着ゾーンに持ち込まれて回収ガスの濃度を減じることを防止できる。さらにロータハニカムが脱着ゾーンから収着ゾーンに移動する箇所では、ハニカム空隙中の二酸化炭素ガスはパージ水により脱着ゾーン側に推し出され、回収ガスの逸失を防止できると共に、脱着ゾーンから収着ゾーンに移動するハニカムの予冷効果と、パージ水を蒸気発生槽に給水することで、給水を予熱する熱回収効果もある。
【実施例4】
【0091】
図7に実施例4を示す。実施例1〜3ではハニカムロータが水平に回転する構成の例を示したが、実施例5はハニカムロータが縦方向に回転する構成の例を示す。この例では水スクリーンの重力による排水は望めないが、ハニカムロータなので水スクリーンパージは可能で、ハニカム内に導入された水は原料ガスの全圧(風圧)により下流側に押し出されることで機能する。押し出された水は回収して再度水スクリーンの給水として利用するか、水蒸気発生槽への給水として再利用する。
【0092】
縦方向回転型は、ハニカムのフルート方向が水平方向になり、通過ガスの全圧により排水された後も、ハニカムフルート上面の水は重力により排水され、逆に下面の水は上面より多く残りやすいが、ハニカムシートは薄いので熱伝導が良く、上下面の熱伝導でこのデメリットが解消される。つまり水膜の薄い上面では早く収着が始まって収着熱が発生し、収着工程の後半にて水量が不足しても上面シートの裏面(上のフルートの下面で、水膜は厚い)にある水の気化冷却と熱伝導により収着熱は除去される。逆にまた水膜の厚いフルート下面では収着が遅れても、下面シートの裏側(下のフルートの上面で水膜は薄い)の収着熱の伝熱により下面の水の蒸発が促進され、結果的に重力による水の分布差の悪影響は緩和される効果がある。二酸化炭素ガスの収着時において、水蒸気による脱着時に凝縮した水の気化冷却効果で、収着熱を除去する原理の二酸化炭素回収濃縮装置では、ハニカム形状であるメリットは以上説明したように、粒子を充填した固定層(床)式、流動層(床)式と比較して特異的である。つまり本発明は、二酸化炭素ガスの脱着時に、脱着用水蒸気の凝縮を生じ、収着時に気化冷却効果により収着効果を高める原理の二酸化炭素収(吸)着濃縮装置の開発を目指し、粒子を充填した固定層(床)式、流動層(床)式を単にハニカム形状に変えたという以上の効果を見出し考案したものである。
【実施例5】
【0093】
図8に実施例5を示す。二酸化炭素回収濃縮装置は、ハニカムロータ12の回転方向に収着ゾーン13、注水スクリーン原料ガスパージゾーン15、脱着ゾーン14、注水スクリーン二酸化炭素パージゾーン16を経て収着ゾーン13に戻るところは同じであるが、注水スクリーン二酸化炭素パージゾーン16と収着ゾーン13の間にプレ乾燥ゾーン17を設けている。注水スクリーン二酸化炭素パージゾーン16を出たハニカムは水に濡れており、原料ガスの通過により気化冷却現象により水が蒸発するが、初期状態では固体アミンの表面や細孔に水膜が存在して二酸化炭素の収着が阻害される。この初期状態にプレ乾燥ゾーン17で水膜が少なくなるまで加圧したプレ乾燥ガスによりブローしてから収着ゾーン13にハニカムが移動するように構成している。プレ乾燥ガスとして原料ガスを用いる場合はプレ乾燥ゾーン17出口ガスを前工程に戻すことで二酸化炭素回収率を高めることが出来る。またプレ乾燥ゾーン17のみ外気を用いることも可能で、その場合プレ乾燥出口空気はそのまま外気に排出可能である。
【課題】煙道ガス等から二酸化炭素ガスを回収するハニカムロータ回収濃縮装置において、出来るだけ高い回収率で回収し、出来るだけ高い濃度に濃縮し、小型化でき、100℃以下の低温廃熱を利用でき、かつ回収濃縮のためのエネルギー量を少なくすることができ、耐久性の高いサーマルスイング二酸化炭素回収濃縮装置に関するものである。
【解決手段】二酸化炭素ガスの吸着能力を有する収着材(固体アミン等)粒子を担持したハニカムロータを、少なくとも収着ゾーンと脱着ゾーンに区分シールしたケーシング内で回転させ、収着ゾーンのハニカムが湿った状態で、二酸化炭素を含む原料と接触させて、水を蒸発冷却しながら二酸化炭素ガスを収着させ、二酸化炭素ガスを収着したハニカムを回転により脱着ゾーンに移動させ、低圧蒸気と接触させて高濃度の二酸化炭素ガスを脱着させることで連続的に二酸化炭素ガスを高い回収率及び高い濃度で回収することができる。