(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408104
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】断続的な溶融金属の送達
(51)【国際特許分類】
B22D 11/18 20060101AFI20181004BHJP
B22D 11/00 20060101ALI20181004BHJP
B22D 11/049 20060101ALI20181004BHJP
B22D 11/16 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
B22D11/18 B
B22D11/00 E
B22D11/049
B22D11/16 104H
B22D11/18 K
【請求項の数】22
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-200856(P2017-200856)
(22)【出願日】2017年10月17日
(62)【分割の表示】特願2016-501339(P2016-501339)の分割
【原出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2018-39051(P2018-39051A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】61/777,574
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ブルース・ワグスタッフ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・シンデン
【審査官】
荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−224847(JP,A)
【文献】
特開2000−202606(JP,A)
【文献】
特開昭59−35867(JP,A)
【文献】
特開平8−224644(JP,A)
【文献】
特開平2−175057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造過程における溶融金属の送達速度を変動させるための方法であって、
鋳型装置を提供する工程であって、前記鋳型装置は、
鋳型と、
溶融金属を前記鋳型に送達するように構成され、制御ピンによって制御可能に閉鎖される導管と、
前記制御ピンとつながる位置決め装置と、
前記鋳型の中の溶融金属のレベルを感知するように構成されるレベルセンサと、
前記位置決め装置および前記レベルセンサとつながっており、少なくとも金属レベル設定点の形式で入力を受け付けるように構成されるコントローラと、を備える、鋳型装置を提供する工程と、
前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが、前記金属レベル設定点の、両端値を含む5mm上〜3mm下の溶融金属レベルの範囲に留まるように、前記導管を通した溶融金属の流れまたは流速を調整する複数のパルスを含む指令信号を、前記コントローラを介して、前記位置決め装置に提供する工程を、含む方法であって、
前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルは、各パルスの結果として、金属レベル設定点の3mm上まで上昇し、パルスの間で、次のパルスの前に、アンダーシュートの結果として、比例−積分−微分(PID)アルゴリズムの制御下で、金属レベル設定点の1mm下まで下降することを特徴とする方法
【請求項2】
前記指令信号を提供する前記工程は、前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが、前記金属レベル設定点の、両端値を含む3mm上〜1mm下の溶融金属レベルの範囲に留まるように、前記導管を通した溶融金属の流れまたは流速を調整する複数のパルスを含む指令信号を提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指令信号を提供する前記工程は、1分あたり3パルス以上4パルス以下の周波数である複数のパルス、または複数のパルスの間において最短で15秒以上20秒以下である複数のパルスを含む指令信号を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融金属は、溶融アルミニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記指令信号を提供する工程は、50mmの鋳造長さにおいて前記パルスが開始する指令信号を提供する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記指令信号を提供する工程は、前記鋳造長さが400〜500mmであるときに前記パルスが終了する指令信号を提供する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記コントローラは、アルミニウムを鋳造するためのPIDアルゴリズムを含む、比例−積分−微分(PID)コントローラであり、前記コントローラは、少なくとも1つの金属レベル設定点を受け付けるかまたは決定するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記指令信号を提供する工程は、(1)前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが所定の金属レベル設定点以下であり、かつ(2)前記コントローラが、5%開度以下という指令信号を前記位置決め装置に送っていない場合にだけ前記パルスが発生する指令信号を提供する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記指令信号を提供する工程は、(1)前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが所定の金属レベル設定点以下であり、かつ(2)前記コントローラが、前記コントローラにハングアップ警報信号を出させる指令信号を送っていない場合にだけ前記パルスが発生する指令信号を提供する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記指令信号は、パルス中に3秒間にわたって100%開度に設定され、その後に、前記指令信号は、前記PIDアルゴリズム下での制御に戻る、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記位置決め装置は、前記指令信号のパルスの少なくともいくつかに応じて、3秒で30%〜50%開度に開く、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
金属を鋳造するための鋳型装置であって、
鋳型と、
溶融金属を前記鋳型に送達するように構成され、制御ピンによって制御可能に閉塞される導管と、
前記制御ピンとつながる位置決め装置と、
前記鋳型の中の溶融金属のレベルを感知するように構成されるレベルセンサと、
前記制御ピン位置決め装置および前記レベルセンサとつながっているコントローラであって、
少なくとも金属レベル設定点の形式で入力を受け付け、
前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが、前記金属レベル設定点の、両端値を含む5mm上〜3mm下の溶融金属レベルの範囲に留まるように、前記導管を通した溶融金属の流れまたは流速を調整する複数のパルスを含む指令信号を前記位置決め装置に提供して、前記鋳型の中の前記溶融金属の前記レベルを、各パルスの結果として、金属レベル設定点の3mm上まで上昇させ、パルスの間で、次のパルスの前に、アンダーシュートの結果として、比例−積分−微分(PID)アルゴリズムの制御下で、金属レベル設定点の1mm下まで下降させるように構成される、コントローラと、
を備える、鋳型装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが、前記金属レベル設定点の、両端値を含む3mm上〜1mm下の溶融金属レベルの範囲に留まるように、前記導管を通した溶融金属の流れまたは流速を調整する複数のパルスを含む指令信号を前記位置決め装置に提供するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記コントローラは、1分あたり3パルス以上4パルス以下の周波数である複数のパルス、または複数のパルスの間において最短で15秒以上20秒以下である複数のパルスを含む指令信号を前記位置決め装置に提供するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記溶融金属は、溶融アルミニウムである、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記コントローラは、50mmの鋳造長さにおいて前記パルスが開始する指令信号を提供するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記コントローラは、前記鋳造長さが400〜500mmであるときに前記パルスが終了する指令信号を提供するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記コントローラは、アルミニウムを鋳造するためのPIDアルゴリズムを含む、比例−積分−微分(PID)コントローラであり、前記コントローラは、少なくとも1つの金属レベル設定点を受け付けるかまたは決定するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記コントローラは、(1)前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが所定の金属レベル設定点以下であり、かつ(2)前記コントローラが、5%開度以下という指令信号を前記位置決め装置に送っていない場合にだけ前記パルスが発生する指令信号を提供するように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コントローラは、(1)前記鋳型の中の前記溶融金属のレベルが所定の金属レベル設定点以下であり、かつ(2)前記コントローラが、前記コントローラにハングアップ警報信号を出させる指令信号を送っていない場合にだけ前記パルスが発生する指令信号を提供するように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記コントローラは、前記指令信号をパルス中に3秒間にわたって100%開度に設定するように構成され、その後に、前記指令信号は、前記PIDアルゴリズム下での制御に戻る、請求項18に記載の装置。
【請求項22】
前記位置決め装置は、前記指令信号のパルスの少なくともいくつかに応じて、3秒で30%〜50%開度に開くように構成される、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/777,574号、名称「INTERMITTENT MOLTEN METAL DELIVERY」の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、鋳造過程中の鋳型への溶融金属の送達速度を動的に制御する自動過程に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウムの鋳造過程等におけるインゴット鋳造の開始時に、鋳造の最初の300mmにおいて、金属メニスカスが収縮し、短面および隅部で鋳型から引き離されてしまうことがよく見られる。この現象は、種々の理由から起こり得る。
【0004】
第1には、隅部および短面への不十分な金属の流れがあり得ることであり、これは、金属を冷却し、鋳型表面から引き離すことを可能にする。一般的に、この不十分な流れは、そうした領域の中へ金属を選好的に再分配する金属分配システムを設計することによって、またはバットカールを最小にすることによって修正されるが、それは、間接的に、隅部および短面への金属の流れを制限する傾向を有する。
【0005】
第2には、溶融液体と鋳型界面との過剰な表面張力があり得ることであり、これは、一般的に、鋳造される合金の態様である。この問題を経験する可能性がある合金としては、マグネシウムおよび/またはリチウムのアルミニウム合金が挙げられる。いくつかの事例において、これらの合金は、例えばストロンチウム、カルシウム、およびベリリウム等の、表面活性元素によって改質することができる。
【0006】
第3には、極端に小さい隅部半径があり得ることである。この問題は、より十分な半径を使用することによって解決することができることもあるが、インゴットのスカルピングおよびホットラインエッジ回収といった妥協を伴う。全般的に、鋳造の力学および回収の開始に対してなされる妥協は、ホットラインにおける全体のインゴット回収に悪影響を及ぼし、毎年、何百万ポンドも無駄になっている。
【0007】
そのような妥協がなされなかった場合、全体的なインゴット回収は、鋳型に流れ落ちる金属の固有のEHSの態様とともに、潜在的にバットハングアップを生じさせる可能性があり、よって、激しいインゴットの破裂を引き起こす可能性がある、メニスカス空隙に影響を受ける。
【0008】
いくつかの従来の過程において、鋳型の中への150〜250mmのカール中に、鋳型のメニスカス空隙を継続的に充填することを確実にするために、操作者が継続的に鋳造台上に存在する。時折、操作者が介入し、金属制御ピンを機械的に引っ張るか、またはピンバッグ(pin−bag)を振盪させて、金属レベルシステムの突然の乱れが、表面張力の影響に静的に打ち勝って、隅部または短面の空隙を「充填する」ことを可能にする。
【発明の概要】
【0009】
以下、本発明の基本的な理解を提供するために、本発明のいくつかの実施形態の簡略化された概要を提示する。この概要は、本発明の広範囲にわたる概観ではない。この概要は、本発明の鍵となる/重要な要素を識別すること、または本発明の範囲を描写することを意図しない。その唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの実施形態を簡略形態で提示することである。
【0010】
本発明のある特定の実施形態は、鋳型充填中および鋳造の過渡部分中に、(例えば、ピンをパルシングすること、または金属レベルの制御設定点の変動等による)動的な金属レベルの変動または振動を使用することによって、こうした問題点のいくつかまたは全てを解決する。数ある中でも、金属レベルを振動させることによって生じる結果が、金属の流動を保ち、したがって、上で説明した「低温隅部」の影響を克服することが分かっている。ある特定の実施形態の数ある利点の中でも、操作者は、そのような影響を克服するためにもはや台上に存在しなくてもよく、隅部の半径の妥協があまり必要でなくなるか、取り除かれる。
【0011】
本発明の性質および利点のより完全な理解のために、以下の詳細な説明および添付図面に対して参照を行わなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、本開示に従う種々の実施態様を、図面を参照して説明する。
【0013】
【
図1】本発明の実施形態による、鋳造作業の最後に向けて現れるダイレクトチル鋳造装置の概略的な表現を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による、デジタル的かつプログラム可能に実現されたコントローラの概略的な表現を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に従って行われる過程に関するピンパルスの傾向のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、種々の実施形態が説明される。説明の目的で、実施形態の完全な理解を提供するために、特定の構成および詳細が記載される。しかしながら、当業者には、実施形態が具体的な詳細を伴わずに実践され得ることも明らかになるであろう。さらに、よく知られている特徴は、説明されている実施形態を不明瞭にしないために、省略または簡略化され得る。
【0015】
以下の説明は、同時に、しかしながら、いかなるその限定も構成することなく、本発明のある特定の実施形態をさらに例示する役割を果たす。それとは逆に、本明細書の説明を読み取った後に、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者におのずから暗示し得る、種々の実施形態、修正物、およびそれらの均等物を用いればよいことを明確に理解するべきである。
【0016】
図1は、鋳造作業の最後における、本発明のある特定の実施形態に関して適切であるような、直立型ダイレクトチル鋳造装置10の簡略化された概略縦断面である。そのような鋳型およびその一部分は、Andersonらに対して2013年1月8日に発行された米国特許第8,347,949号(以下、「Anderson」)、およびTakedaらに対して1985年2月12日に発行された米国特許第4,498,521号(「Takeda」)で開示されており、それらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。Takedaはまた、本発明のある特定の実施形態に適切であり得る鋳造を行うための過程も開示している。
図1を参照すると、装置は、上面図において長方形で環状の形態が好ましいが、随意に、円形または他の形状のダイレクトチル鋳型11と、最初は鋳型11の下端部14を閉じて封止する上位位置から、完全に形成された鋳造インゴット15を支持する(図示される)下位位置まで、鋳造作業中に、適切な支持手段(図示せず)によって段階的に垂直下方に移動される、底部ブロック12とを含む。インゴットは、垂直中空スパウト18または同等の金属供給機構を通して溶融金属を鋳型の上端部16の中へ導入する一方で、底部ブロック12をゆっくりと下降させることによって、鋳造作業において製造される。溶融金属19は、鋳型の上側に水平チャネルを形成するローンダー20を介して、金属溶融炉(図示せず)からスパウト18に供給される。
【0017】
スパウト18は、スパウトを通した溶融金属の流れを調節し、停止させることができる、制御ピン21の下端部を取り囲む。一実施形態では、ピン21の遠位端部を形成するセラミックプラグ等のプラグをスパウト18のテーパー付き内部チャネル内で受け取り、よって、ピン21が上昇すると、プラグとスパウト18の開端部との間の面積が増加し、したがって、溶融金属がプラグの周りを流れ、スパウト18の下位先端部17から流れ出ることを可能にする。したがって、溶融金属の流れおよび流速は、制御ピン21を適切に上昇または下降させることによって正確に制御され得る。Andersonにおいて示される構造に加えて、そのような目的を達成するスパウト18およびピン21の組み合わせはまた、Jamesに対して2010年2月11日に公開された米国特許出願公開第2010/0032455号でも開示されており、その公開公報は、参照により本明細書に組み込まれる。鋳型の中への溶融金属の流れの制御のために、任意の所望の構造または機構が使用され得る。便宜上、「導管」、「制御ピン」、および導管に対する制御ピンの位置を制御する「指令信号」という用語は、本文書において、コントローラからの指令信号によって鋳型の中への溶融金属の流れまたは流速を調節することができる任意の機構または構造を指すために利用され、故に、鋳型の中への溶融金属の流れまたは流速を調節するために制御ピンの位置決め装置に指令信号を提供することに対する、(特許請求の範囲を含む)本文書における参照は、あらゆる様式で、あらゆる構造または機構を使用して、鋳型の中への溶融金属の流れまたは流速を制御するために、あらゆるタイプのアクチュエータに指令信号を提供することを意味することが理解されるであろう。
【0018】
図1で示される構造において、制御ピン21は、スパウト18から上方に延在する上位端部22を有する。上位端部22は、スパウト18を通した溶融金属の流れを調節する、または停止させるために、必要に応じて、制御ピン21を上昇または下降させる制御アーム23に枢動可能に取り付けられる。鋳造作業中に、制御ピン21は、あるときには、ピン21に取り付けられるピンホルダー22を手動で掴んで上昇させることによって、上昇位置で暫く保持され、よって、溶融金属は、自由に、スパウト18を迅速に通って、鋳型11の中へ流れ得る。鋳造について、ローンダー20およびスパウト18は、溶融金属の跳ね返りおよび内部の乱流を回避するために、スパウトの下位先端部17を、初期のインゴットの中にプール24を形成している溶融金属の中へ浸漬することを可能にするのに十分なだけ下降される。これは、酸化物の形成を最小にし、新鮮な溶融金属を鋳型の中へ導入する。先端部にはまた、鋳型に進入するときに溶融金属を分配および濾過するのを補助する金属メッシュ生地の形態で分配バッグ(図示せず)も提供され得る。鋳造が完了すると、制御ピン21が下位位置まで移動し、そこでは、該制御ピンがスパウトをブロックし、溶融金属がスパウトを通過することを完全に防止し、それによって、鋳型の中への溶融金属の流れを停止させる。このときに、底部ブロック12は、それ以上下降しないか、またはさらに少量だけ下降し、新しく鋳造されたインゴット15は、その上位端部がまだ鋳型11の中にある状態で、底部ブロック12によって支持される所定の位置に留まる。
【0019】
装置10は、その構造および作業が従来的である金属レベルセンサ50を含むことができる(Andersonにおいて説明されるセンサ50と異なり、該センサは、Andersonにおいて開示および特許請求される特定の過程を行うために、Andersonのセンサが特定の方法で動作するのを可能にするように、アクチュエータ51に接続される)。例えば、センサ50は、例えばTakedaにおける数ある他の場所の中でも特に、Takedaにおける
図1および第6カラムの21〜52行で開示されるようにフロートおよびトランスデューサが構造化され、動作する様式で構造化し、動作することができる。あるいは、センサ50は、溶融金属を収容するための所望の特性を有する、レーザセンサまたは別のタイプの固定もしくは可動流体レベルセンサとすることができる。空洞充填作業中には、センサ50からの情報をコントローラ52に送ることができる。コントローラ52は、数あるデータの中でもそのデータを使用して、金属が鋳型11の中へ流れて部分的な空洞を充填し得るように、いつ制御ピン21をアクチュエータ54によって上昇および/または下降させるのか、すなわち、いつ所定の空洞の深さが所定の限度に到達したのかを決定することができる。したがって、センサ50およびアクチュエータ54は、
図1で示されるように、コントローラ52と連結されて、センサ50からの情報を、アクチュエータ54の制御下で制御ピン21を位置付けることに関して使用し、それによって、鋳型11の中への金属の流れおよび/または流速を制御することを可能にする。好ましい実施形態において、コントローラ52は、比例積分微分(PID)コントローラであるが、それは、従来のPIDコントローラであり得、または所望に応じてデジタル的かつプログラム可能に実現されるPIDコントローラであり得る。
【0020】
図2は、コントローラ210の実施例であり、該コントローラは、従来のコンピュータ構成要素を使用してデジタル的かつプログラム可能に実現され、また、本発明のある特定の実施形態の過程を行うために、
図1で示されるような装置を含む、そのような実施形態に関して使用され得る。コントローラ210は、プロセッサ212を含み、該プロセッサは、コントローラ210に、データを受け取らせ、処理させ、そして、
図1で示されるような装置の構成要素のアクションを行わせ、および/または制御させるように、メモリ218の中の有形のコンピュータ読み出し可能な媒体(または数ある媒体の中でも特にサーバ上またはクラウドの中のポータブル媒体等の他の場所)に記憶されたコードを実行することができる。コントローラ210は、工業装置を制御する等のアクションを行うために、データを処理し、1組の命令であるコードを実行することができる、任意のデバイスであり得る。コントローラ210は、デジタル的かつプログラム可能に実現されるPIDコントローラ、プログラム可能な論理コントローラ、マイクロプロセッサ、サーバ、デスクトップもしくはラップトップ型パーソナルコンピュータ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、ハンドヘルドコンピューティングデバイス、およびモバイルデバイスの形態をとることができる。
【0021】
プロセッサ212の例としては、任意の所望の処理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理、状態機械、または他の適切な回路が挙げられる。プロセッサ212は、1つのプロセッサまたは任意の数のプロセッサを含み得る。プロセッサ212は、バス214を介して、メモリ218に記憶されたコードにアクセスすることができる。メモリ218は、コードを実体的に具現化するように構成された任意の非一時的なコンピュータ読み出し可能な媒体であり得、電子、磁気、または光デバイスが挙げられる。メモリ218の例としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、フロッピーディスク、コンパクトディスク、デジタルビデオデバイス、磁気ディスク、ASIC、構成されたプロセッサ、または他の記憶デバイスが挙げられる。
【0022】
命令は、実行可能コードとして、メモリ218またはプロセッサ212に記憶することができる。命令としては、任意の適切なコンピュータプログラミング言語で書かれたコードから、コンパイラおよび/またはインタプリタによって生成されるプロセッサ固有の命令が挙げられる。命令は、一連の設定点、鋳造過程のためのパラメータ、およびプログラムされたステップを含むアプリケーションの形態をとることができ、該アプリケーションは、プロセッサ212によって実行されたときに、鋳型11の中への溶融金属の流れおよび/または流速を制御するための、
図1で示される装置の中のアクチュエータ54に入力され、それによって、スパウト18の中のピン21の位置を制御するためにコントローラ210に入力され得る金属レベル設定点および他の鋳造関連のパラメータと組み合わせて、センサ50からの溶融金属レベルのフィードバック情報等を使用することによって、コントローラ210が鋳型の中への金属の流れを制御することを可能にする。
【0023】
コントローラ210は、入力/出力(I/O)インターフェース216を含み、該インターフェースを通して、コントローラ210は、センサ50、アクチュエータ54、および/または他の鋳型装置の構成要素を含む、コントローラ210の外部のデバイスおよびシステムと通信することができる。インターフェース216はまた、所望であれば、他の外部ソースから入力データを受け取ることができる。そのようなソースとしては、コントロールパネル、他のヒューマン/マシンインターフェース、コンピュータ、サーバ、または例えば、その性能および動作を制御するために命令およびパラメータをコントローラ210に送ることができ、本発明のある特定の実施形態の過程等に関して鋳型の中への金属の流れを制御するためにアプリケーションにおいてコントローラ210が命令を実行することを可能にする、そのようなアプリケーションのプログラミングを記憶し、促進することができる他の装置、および
図1の鋳型11等の鋳型の動作を制御するためにその機能を実行する際にコントローラ210に必要なまたは有用なデータの他のソースが挙げられる。そのようなデータは、ネットワークを介して、ハードワイヤを介して、無線で、バスを介して、または所望に応じて他の方法で、I/Oインターフェース216に通信することができる。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に従って行われる1つのダイレクトチルアルミニウム鋳造過程のピンパルシング傾向のグラフを示す。グラフは、実際の金属レベル(数字310)、金属レベル設定点(312)、(コントローラのPIDアルゴリズムからの)ピン位置決め装置に対する指令(314)、および実際のピン位置決め装置の位置のフィードバック(316)を示す。(このグラフの縦軸目盛は、金属レベル設定点312に対応する。)パルシングは、50mmの鋳造長さから開始し、500mmで鋳造が終了するまでの期間中、能動的な状態を維持した。
【0025】
図3で示される実施形態において、パルシング中に、ピンに対する実際のアナログ信号は、100%に設定された方形パルスの形態で、PIDアルゴリズムからの指令信号をバイパスする。この方形波は、
図3では明らかではないが、全般的に、時間および期間において、ピン位置決め装置のパルス316の時間および期間に対応する。パルシング開始後の時間の最初の約50%にわたって金属レベルが一貫して設定点の上側にあることによって示される通り、アナログ信号がPIDアルゴリズムからの指令信号をバイパスするという事実は、明らかである。そうした状況下で、PIDコントローラは、通常、金属が鋳型の中へ流れるのを止めるために、0%開度のピン位置指令を出力する。いくつかの実施形態による実際の応用において、0%開度のピン位置または5秒間にわたる1%開度未満のピン位置等の、所定の期間にわたって所定の値未満である、ある開度のピン位置指令は、インゴットのハングアップ状態を構成し、インゴットハングアップ警報を起動させるので、これは許容されない。インゴットのハングアップは、インゴットが鋳型に固着した場合であり、それは、約50〜400mmの鋳造長さの鋳造の初期段階中の過剰なバットカールに起因して起こる可能性がある。インゴットのハングアップを構成し、インゴットハングアップ警報を起動させる条件は、工場間でいくらか変動する可能性があり、通常、鋳造の自動中断をもたらす。しかしながら、
図3で示される過程中に、この警報は、一時的に無効にした。
【0026】
図3で示される特定の実施形態において、パルシング周波数は、経時的に変動する。この変動は、実際の金属レベルが設定点の上1mmより高くならない場合にだけ起こるようにパルシングを制限するパルシングアルゴリズムに起因する。また、この特定の実施例で、パルシング周波数は、3パルス/分に(または金属レベル条件が満たされない場合は、より少なく)設定される。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態による1つの過程に関するが、必ずしも以下のように行われ得るある特定の実施形態を表すとは限らない。
【0028】
1.いくつかの実施形態において、制御ピンのパルシングは、鋳型の中の溶融金属のレベルが、金属レベル設定点の、両端値を含む5mm上〜3mm下の溶融金属レベルの範囲に、好ましくは、金属レベル設定点の、両端値を含む3mm上〜1mm下の溶融金属レベルの範囲に留まるように、導管を通した溶融金属の流れまたは流速を調節する様式で起こる。好ましくは、好ましい溶融金属レベルの範囲において、金属レベルは、各パルスの結果として設定点の約3mm上まで上昇し、パルスの間で(次のパルスの前に)、一般的に、アンダーシュート(undershoot)の結果として、PIDアルゴリズムの制御下で、設定点の約1mm下まで下降する。
【0029】
2.いくつかの実施形態において、パルシングは、両端値を含む3〜4パルス/分、またはパルスの間で両端値を含む最小15〜20秒で起こる。
【0030】
3.いくつかの実施形態において、パルシングは、実際の金属レベルが金属レベル設定点以下であり、かつピン位置決め装置に対する指令信号が、所定の値を超えている(例えば、ハングアップ警報論理が悪影響を受けないように、5%開度のピン位置を超える)場合にだけ起こることが可能になる。
【0031】
4.いくつかの実施形態において、パルシング中に、ピン位置決め装置に対する実際の指令信号は、好ましくは約3秒にわたって、好ましくは100%開度のピン位置に設定され、該期間は、長くまたは短くなり得、その後に、PIDアルゴリズム下での制御に戻る。ピン位置決め装置は、開く/閉じるために時間がかかり、したがって、3秒で30%〜50%開度に開くことだけしかできない。いくつかの実施形態において、対象になる特定の制御ピン位置決め装置の特性に応じて、ピン位置決め装置に対するコマンド信号が、より長いまたはより短い期間にわたって、ピン位置を開くように設定され、該期間は、少なくとも部分的に、どのくらい迅速にピン位置決め装置を開くおよび/または閉じることができるのかという関数である。
【0032】
5.いくつかの実施形態において、パルシングは、50mmの鋳造長さから始まる。
【0033】
6.いくつかの実施形態において、パルシングは、鋳造長さが、好ましくは400〜500mmに到達したときに終了する。
【0034】
ピンパルシングは、本発明の種々の実施形態に従う任意の数の代替の方法で達成することができる。例えば、パルシングは、金属レベル設定点を時間的に変動させることによって、またはPID制御値に関するピン位置決め装置の指令信号を正弦波的に時間的に変動させることによって(正弦波信号をPID出力制御値に加えることによって)達成することができる。
【0035】
他の変形物は、本発明の趣旨の範囲内である。したがって、本発明は、種々の修正物および代替の構造を受け入れる余地があり、その特定の例示の実施形態を図面で示し、上で詳細に説明した。しかしながら、本発明を、開示される特定の形態に限定するいかなる意図もなく、逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の趣旨および範囲内に入る全ての修正物、代替物、および均等物を包含することを意図するものであることを理解されたい。
【0036】
本発明を説明する文脈での(特に、特許請求の範囲の文脈での)「a」および「an」および「the」という用語、ならびに類似の指示対象は、本明細書で別途指示されていない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の双方を包含するものと解釈されたい。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、別途注記のない限り、開放型の用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」ことを意味する)として解釈されたい。「接続される」という用語は、何かが介在している場合であっても、部分的または全体的に含有され、取り付けられ、または互いに接合されているものとして解釈されたい。本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示されない限り、単に、その範囲内に入るそれぞれの値を個々に参照する簡単な方法としての役割を果たすように意図されたものであり、それぞれの値は、本明細書で個々に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書で説明される全ての方法は、本明細書で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言葉(例えば「等(such as)」は、単に、本発明の実施形態をより明確にすることを意図しているに過ぎず、別途特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書の中のいかなる言葉も、特許請求されていない何らかの要素が本発明の実践に必須であることを示すものではないと解釈されたい。
【0037】
本発明を行うための、発明者等に知られている最良の方法を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書で説明される。当業者には、上の説明を読むことにより、こうした好ましい実施形態の変形物が明らかになるであろう。本発明者等は、そのような変形物を必要に応じて採用することを予期し、本発明者等は、本明細書で具体的に説明されるもの以外で本発明が実践されることを意図する。故に、本発明は、準拠法によって許可される、本明細書に添付された特許請求の範囲で述べられる主題の全ての修正物および均等物を含む。さらに、本明細書で別途指示されない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明の全ての可能な変形物における上で説明した要素の任意の組み合わせが本発明によって包含される。
【0038】
本明細書で引用される刊行物、特許出願、および特許を含む、全ての参考文献は、あたかも各文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれるように示され、かつ本明細書で全体として説明されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。