(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脱硫装置は、前記原料ガスと前記脱硫剤とを0.5〜3MPaの圧力下で接触させるように構成されている、請求項1〜3の何れか1項に記載の酸素化物の製造システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(酸素化物の製造システム)
本発明の一実施形態に係る酸素化物の製造システムについて、以下に図面を参照して説明する。
図1に示す酸素化物の製造システム1は、脱硫装置10と合成装置20とを備えるものである。脱硫装置10には、原料ガス供給ライン13が接続され、原料ガス供給ライン13は、原料ガス供給源(不図示)と接続されている。脱硫装置10と合成装置20とは、脱硫ガス移送ライン14で接続され、合成装置20には、合成ガス移送ライン24が接続されている。
【0012】
原料ガス供給源は、水素及び一酸化炭素を含有する原料ガス(以下、単に原料ガスということがある)を供給できるものであればよい。原料ガス供給源としては、例えば、原料ガスを貯留する貯留槽、バイオマスやプラスチック等の有機物をガス化するガス化装置等が挙げられる。
ガス化装置としては、有機物から原料ガスを生成できるものであればよく、例えば、固定床式ガス化炉、流動床式ガス化炉、噴流床式ガス化炉等が挙げられる。
【0013】
原料ガス供給ライン13は、原料ガスを脱硫装置10に供給する部材であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
脱硫ガス移送ライン14は、脱硫装置10で処理された原料ガスを合成装置に移送する部材であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
合成ガス移送ライン24は、合成装置20で生成された合成ガスを移送する部材であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
【0014】
脱硫装置10は、原料ガスと、銅を含有する脱硫剤(以下、単に脱硫剤ということがある)とを接触できるものであればよい。脱硫装置10としては、例えば、脱硫剤が充填された反応床(以下、脱硫反応床ということがある)を備えるものが挙げられる。脱硫反応床は、固定床であってもよいし、流動床であってもよい。
【0015】
脱硫装置10の一例について、
図2を用いて説明する。
図2の脱硫装置10は、脱硫剤が充填されてその内部に脱硫反応床12が形成された脱硫反応管11と、脱硫反応管11に接続された温度制御部15と、圧力制御部16とを備えるものである。
【0016】
脱硫反応管11は、原料ガスに対して不活性な材料が好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。 脱硫反応管11としては、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材が挙げられる。
温度制御部15は、脱硫反応管11内の脱硫反応床12を任意の温度にできるものであればよく、例えば、電気炉等が挙げられる。
圧力制御部16は、脱硫反応管11内の圧力を任意の圧力にできるものであればよく、例えば、脱硫ガス移送ライン14に設けられた公知の圧力弁等が挙げられる。
【0017】
脱硫装置10は、マスフロー等、原料ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0018】
脱硫剤は、銅を含有するものである。このような脱硫剤を用いることで、原料ガス中の硫黄分(硫黄及び硫黄化合物)を可及的に除去して、後述する酸素化物の合成触媒(以下、単に合成触媒ということがある)の経時的な活性低下を抑制できる。
脱硫剤は、銅以外の金属(脱硫剤用任意金属)を含有してもよい。脱硫剤用任意金属としては、亜鉛、アルミニウム、クロム等が挙げられる。これらの脱硫剤用任意金属は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
脱硫剤用任意金属は、脱硫剤に求める機能等を勘案して決定され、例えば、亜鉛を併用することで脱硫剤の脱硫効率をより高められ、アルミニウムを併用することで、脱硫剤の耐熱性を高められる。
【0019】
脱硫剤は、銅と脱硫剤用任意金属との集合物であってもよいし、銅と脱硫剤用任意金属とが担体に担持された担持触媒であってもよく、中でも、銅と脱硫剤用任意金属との集合物であることが好ましい。銅と脱硫剤用任意金属との集合物であれば、原料ガス中の硫黄分をより良好に除去できる。
【0020】
脱硫剤が集合物である場合、脱硫剤中の銅の含有量は、5〜60モル%が好ましく、7〜52モル%がより好ましく、12〜40モル%がさらに好ましい。上記下限値未満では、脱硫効果が低下するおそれがあり、上記上限値超では、銅がシンタリングしやすくなる場合がある。
【0021】
脱硫剤用任意金属として亜鉛を用いる場合、脱硫剤が集合物であれば、脱硫剤中の亜鉛の含有量は、5〜60モル%が好ましく、10〜45モル%がより好ましく、16〜36モル%がさらに好ましい。上記下限値未満では、銅がシンタリングしやすくなる場合があり、上記上限値超では、脱硫効果が低下するおそれがある。
脱硫剤中、銅/亜鉛で表されるモル比(以下、銅/亜鉛比ということがある)は、1/10〜10/3が好ましく、1/3〜2/1がより好ましく、1/2.3〜1/1がさらに好ましい。銅/亜鉛比が上記範囲内であれば、原料ガス中の硫黄分をより良好に除去できる。
【0022】
脱硫剤用任意金属としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウム/銅で表されるモル比(以下、アルミニウム/銅比ということがある)は、1/20〜2/1が好ましく、3/10〜1/1がより好ましい。アルミニウム/銅比が上記下限値未満では、耐熱性を十分に高められないおそれがあり、上記上限値超では、脱硫効果が低下するおそれがある。
脱硫剤用任意金属としてクロムを用いる場合、例えば、脱硫剤は、酸化クロム等を上限2〜3質量%含有してもよい。
【0023】
脱硫剤は、いわゆる共沈法や担持法等、従来公知の金属触媒の製造方法により製造される。
脱硫剤の製造方法について、共沈法を例にして説明する。
共沈法による脱硫剤の製造方法は、銅化合物と、亜鉛化合物等の脱硫剤用任意金属の化合物との沈殿物を形成させ、次いでこの沈殿物を焼成するものである。得られる脱硫剤は、金属銅及び/又は酸化銅と、脱硫剤用任意金属及び/又はその酸化物との混合物である。
まず、銅化合物及び脱硫剤用任意金属の化合物を水に溶解して、金属水溶液を得る。任意の温度(例えば、60〜90℃)とした純水を攪拌しつつ、純水中に、金属水溶液と、沈殿剤水溶液とを滴下して、沈殿物を生じさせる。あるいは、任意の温度の沈殿剤水溶液を攪拌しつつ、沈殿剤水溶液中に金属水溶液を滴下して、沈殿物を生じさせる。得られた沈殿物を純水で洗浄した後、任意の温度(例えば、100〜150℃)で乾燥して乾燥物を得る。得られた乾燥物を任意の温度(例えば、250〜350℃)で焼成して、脱硫剤を得る。
銅化合物としては、水溶性のものであればよく、例えば、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。脱硫剤用任意金属の化合物としては、水溶性のものであればよく、例えば、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
沈殿剤水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等が挙げられる。
沈殿剤水溶液は、必要に応じて、グラファイト等の公知の成形助剤を1〜5質量%含有してもよい。
【0024】
得られた脱硫剤は、還元処理が施され(脱硫剤に還元処理を施す操作を脱硫剤還元操作ということがある)て、活性化される。
脱硫剤還元操作としては、150〜300℃で、水素を含有する気体(還元ガス)を脱硫剤に接触させるものが挙げられる。
還元ガスは、水素と不活性ガス(例えば、窒素等)との混合ガスである。還元ガス中の水素の含有量は、特に限定されないが、6体積%以下が好ましく、0.5〜4体積%がより好ましい。
【0025】
合成装置20は、脱硫装置10で処理された原料ガス(特に、脱硫ガスということがある)と、酸素化物の合成触媒(以下、単に合成触媒ということがある)とを接触できるものであればよい。合成装置20としては、例えば、合成触媒が充填された反応床(以下、合成反応床ということがある)を備えるものが挙げられる。合成反応床は、固定床であってもよいし、流動床であってもよい。
【0026】
合成装置20の一例について、
図3を用いて説明する。
図3の合成装置20は、合成触媒が充填されてその内部に合成反応床22が形成された合成反応管21と、合成反応管21に接続された温度制御部25と、圧力制御部26とを備えるものである。
【0027】
合成反応管21は、脱硫ガス及び合成された酸素化物に対して不活性な材料が好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。合成反応管21としては、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材が挙げられる。
温度制御部25は、合成反応管21内の合成反応床22を任意の温度にできるものであればよく、例えば、電気炉等が挙げられる。
圧力制御部26は、合成反応管21内の圧力を任意の圧力にできるものであればよく、例えば、合成ガス移送ライン24に設けられた公知の圧力弁等が挙げられる。
【0028】
合成装置20は、マスフロー等、脱硫ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0029】
合成反応床22は、合成触媒のみが充填されたものでもよいし、合成触媒と、酸化ケイ素等の希釈剤との混合物が充填されたものでもよい。酸化ケイ素を併用することで、合成反応床22が過度に発熱するのを抑制できる。
【0030】
合成触媒は、ロジウムを含有するものである。合成触媒は、ロジウムを含有することで、脱硫ガスから酸素化物を効率的に合成できる。
【0031】
合成触媒は、ロジウム以外に、アルカリ金属、遷移金属等の任意金属(以下、触媒用任意金属ということがある)を含有してもよい。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。合成触媒がアルカリ金属を含有することで、酸素化物の合成効率が高められる。アルカリ金属としては、リチウムが好ましい。リチウムを用いることで、副生成物の発生を低減し、CO転化率を高め、酸素化物をより効率的に合成することができる。
なお、「CO転化率」とは、「脱硫ガス中のCOのモル数の内、消費されたCOのモル数が占める百分率」を意味する。
【0032】
遷移金属としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン等が挙げられる。合成触媒が遷移金属を含有することで、酸素化物の合成効率が高められる。遷移金属としては、マンガン、チタンが好ましい。マンガン及び/又はチタンを用いることで、酸素化物を効率的に合成でき、さらに酸素化物中のエタノール量を高められる。
【0033】
合成触媒としては、例えば、ロジウムと、マンガン及びリチウムから選択される1種以上とを含有するもの、ロジウムと、マンガン及びリチウムから選択される1種以上と、チタンとを含有するものが好ましい。このような合成触媒を用いることで、酸素化物の合成効率が高められ、かつ酸素化物中のエタノール量が高められる。
【0034】
合成触媒は、ロジウムと触媒用任意金属との集合物であってもよいし、ロジウムと触媒用任意金属とが担体に担持された担持触媒であってもよく、中でも、担持触媒が好ましい。担持触媒とすることで、ロジウム及び触媒用任意金属と脱硫ガスとの接触効率が高まり、酸素化物をより効率的に合成できる。
【0035】
合成触媒が担持触媒であり、触媒用任意金属として、マンガンと、アルカリ金属と、チタンとを含有する場合、合成触媒は、下記(I)式で表される組成が好ましい。
aA・bB・cC・dD ・・・・(I)
(I)式中、Aはロジウムを表し、Bはマンガンを表し、Cはアルカリ金属を表し、Dはチタンを表し、a、b、c及びdはモル分率を表し、a+b+c+d=1である。
(I)式中のaは、0.053〜0.98が好ましい。上記下限値未満であるとロジウムの含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(I)式中のbは、0.0006〜0.67が好ましい。上記下限値未満であるとマンガンの含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(I)式中のcは、0.00056〜0.51が好ましい。上記下限値未満であるとアルカリ金属の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(I)式中のdは、0.0026〜0.94が好ましい。上記下限値未満であるとチタンの含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると他の金属成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
【0036】
担体としては、金属触媒の担体として周知のものを用いることができ、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、セリア等が挙げられ、中でも、触媒反応の選択率を高める観点、CO転化率を高める観点、比表面積や細孔径が異なる種々の製品が市場で調達できることから、シリカが好ましい。
なお、「選択率」とは、脱硫ガス中の消費されたCOのモル数のうち、特定の酸素化物へ変換されたCのモル数が占める百分率である。例えば、下記(α)式によれば、酸素化物であるエタノールの選択率は100モル%である。一方、下記(β)式によれば、酸素化物であるエタノールの選択率は50モル%であり、酸素化物であるアセトアルデヒドの選択率も50モル%である。
4H
2+2CO→CH
3CH
2OH+H
2O ・・・(α)
7H
2+4CO→C
2H
5OH+CH
3CHO+2H
2O ・・・(β)
【0037】
担体としては、比表面積が10〜1000m
2/gであり、かつ1nm以上の細孔径を有するものが好ましい。
加えて、担体は、粒子径の分布が狭いものが好ましい。担体の平均粒子径は、 特に限定されないが、0.5〜5000μmが好ましい。
なお、担体としては、比表面積、細孔径、細孔容量、粒子径の異なる種々のものが市販されており、担体の種類を適宜選択することで、触媒活性、生成物分布等を調整できる。
例えば、細孔径の小さい担体を選択すれば、担持されるロジウムや触媒用任意金属の粒径がより小さくなったり、脱硫ガスを通流させ反応させたときに反応ガスや生成物の拡散速度が低くなったりすることにより、触媒活性や生成物分布が変化すると考えられる。
【0038】
合成触媒を担持触媒とする場合、担体100質量部に対する金属の合計量は、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。上記下限値未満では、酸素化物の合成効率が低くなるおそれがあり、上記上限値超では、金属が均一かつ高分散な状態となりにくく、酸素化物の合成効率が低くなるおそれがある。
【0039】
合成触媒は、従来公知の金属触媒の製造方法に準じて製造される。触媒の製造方法としては、例えば、含浸法、浸漬法、イオン交換法、共沈法、混練法等が挙げられ、中でも含浸法が好ましい。含浸法を用いることで、得られる触媒は、ロジウム及び触媒用任意金属がより均一に分散されたものとなる結果、脱硫ガスとの接触効率がより高められ、酸素化物をより効率的に合成できる。
触媒調製に用いられるロジウム及び触媒用任意金属の原料化合物としては、酸化物;塩化物;硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等の、ロジウム及び触媒用任意金属の化合物として、通常、金属触媒を調製する際に用いられるものが挙げられる。
【0040】
含浸法による合成触媒の製造方法について説明する。まず、ロジウム及び触媒用任意金属の原料化合物を水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の溶媒に溶解し、得られた溶液(含浸液)に担体を浸漬する等して、含浸液を担体に付着させる。担体として多孔質体を用いる場合には、含浸液を担体の細孔内に十分浸透させた後、溶媒を蒸発させて触媒とする。
含浸液を担体に含浸させる方法としては、全ての原料化合物を溶解した溶液を担体に含浸させる方法(同時法)、各原料化合物を別個に溶解した溶液を調製し、逐次的に担体に各溶液を含浸させる方法(逐次法)等が挙げられ、中でも、逐次法が好ましい。逐次法で得られた触媒は、酸素化物をより効率的に合成できる。
【0041】
得られた合成触媒は、還元処理が施され(合成触媒に還元処理を施す操作を触媒還元操作ということがある)て、活性化される。
触媒還元操作としては、好ましくは200〜600℃で、還元ガスを合成触媒に接触させるものが挙げられる。
触媒還元操作における加熱時間は、例えば、1〜10時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
【0042】
(酸素化物の製造方法)
本発明の酸素化物の製造方法は、原料ガスを脱硫剤に接触させ(脱硫工程)、次いで、合成触媒に接触させる(合成工程)ものである。酸素化物の製造方法の一例について、
図1〜3を用いて説明する。
【0043】
原料ガス30は、水素及び一酸化炭素を含有するものであれば特に限定されず、例えば、天然ガス、石炭から調製されたものであってもよいし、バイオマスをガス化して得られるバイオマスガスであってもよいし、廃プラスチック、廃紙、廃衣料等の有機性廃棄物をガス化して得られるものであってもよい。バイオマスガスは、例えば、粉砕したバイオマスを水蒸気の存在下で加熱(例えば、800〜1000℃)する等、従来公知の方法で得られる。
【0044】
原料ガス30は、水素及び一酸化炭素を主成分とするもの、即ち原料ガス30中の水素と一酸化炭素との合計が、50体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。原料ガス30中の水素と一酸化炭素との含有量が多いほど、酸素化物の生成量をより高められ、酸素化物をより効率的に製造できる。
原料ガス30における水素/一酸化炭素で表される体積比(以下、H
2/CO比ということがある)は、0.1〜10が好ましく、0.5〜3がより好ましく、1.5〜2.5がさらに好ましい。上記範囲内であれば、後述する合成工程における酸素化物が生成される反応で、化学量論的に適正な範囲となり、酸素化物をより効率的に製造できる。
【0045】
原料ガス30としては、できるだけ不純物を含まないものが好ましい。
しかしながら、バイオマスガスや、廃プラスチック、廃紙、廃衣料等の有機性廃棄物をガス化して得られるガス(以下、総じてリサイクルガスということがある)には、メタン、エタン、エチレン、窒素、二酸化炭素、水や、硫化水素(H
2S)、硫化カルボニル(COS)、二酸化硫黄(SO
2)、チオフェン(C
4H
4S)等の硫黄分が含まれる。硫黄分は、リサイクルガス中に、通常、10〜100体積ppm含有され、合成触媒の活性を早期に低下させる原因となる。
そこで、脱硫工程で原料ガス30を脱硫剤に接触させ、原料ガス30中の硫黄分を可及的に取り除く。
【0046】
まず、脱硫装置10の脱硫反応管11内を任意の温度及び任意の圧力とし、原料ガス30を原料ガス供給ライン13から脱硫反応管11内に流入させる。脱硫反応管11内に流入した原料ガス30は、脱硫剤と接触しながら脱硫反応床12内を流通し、硫黄分が除去されて、脱硫ガス32となる(脱硫工程)。
【0047】
脱硫工程の温度条件(脱硫温度)、即ち、脱硫反応管11内の温度は、脱硫剤の組成や、後述する脱硫圧力、原料ガス30の流量、目的とする酸素化物の種類等を勘案して決定される。酸素化物としてエタノールを得ようとする場合、脱硫温度は、例えば、50〜400℃の範囲で適宜決定でき、80〜300℃が好ましく、80〜180℃がより好ましく、80〜150℃がさらに好ましく、80〜120℃が特に好ましく、90〜110℃が最も好ましい。脱硫温度が上記下限値以上であれば、原料ガス30中の硫黄分をより効率的に除去でき、脱硫温度が上記上限値以下であれば、副生物であるメタノールの生成を抑制できる。
【0048】
脱硫工程の圧力条件(脱硫圧力)、即ち、脱硫反応管11内の圧力は、脱硫剤の組成や、脱硫温度、原料ガス30の流量、目的とする酸素化物の種類、酸素化物の反応条件等を勘案して決定される。脱硫圧力は、例えば、0.1〜5MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。脱硫圧力が上記下限値以上であれば、原料ガス30中の硫黄分をより効率的に除去でき、脱硫圧力が上記上限値以下であれば、昇圧に必要なエネルギーが少なくて済む。
脱硫圧力は、後述する合成圧力と同じでもよいし、異なってもよい。なお、脱硫圧力が合成圧力と同じ、あるいは合成圧力よりも0.01〜0.6MPa高い圧力であれば、昇圧に要するエネルギーを無駄なく利用できる。
【0049】
脱硫反応床12における原料ガス30の空間速度(=SV(単位時間(h)当たりのガスの供給量(L)を脱硫剤量(体積(L)換算)で除した値))は、原料ガス30中の硫黄の含有量、脱硫温度、脱硫圧力、経済性等を勘案して決定される。脱硫反応床12における原料ガス30のSVは、標準状態換算で、100〜5000h
−1が好ましく、500〜2000h
−1がより好ましい。
【0050】
脱硫ガス32中の硫黄分の含有量は、10体積ppb以下が好ましく、1体積ppb以下がより好ましく、0.1体積ppb以下がさらに好ましく、0体積ppbであってもよい。脱硫ガス32中の硫黄分の含有量が低いほど、合成触媒の活性低下を抑制して、より長期にわたり酸素化物を効率的に製造できる。
【0051】
合成反応管21内を任意の温度及び任意の圧力とし、脱硫ガス32を脱硫ガス移送ライン14から合成反応管21内に流入させる。合成反応管21内に流入した脱硫ガス32は、合成触媒と接触しながら合成反応床22内を流通し、その一部が酸素化物となって、酸素化物を含む合成ガス34となる(合成工程)。
【0052】
脱硫ガス32は、合成反応床22を流通する間、例えば、下記(1)〜(5)式で表される触媒反応により酸素化物を生成する。
3H
2+2CO→CH
3CHO+H
2O ・・・(1)
4H
2+2CO→CH
3CH
2OH+H
2O ・・・(2)
H
2+CH
3CHO→CH
3CH
2OH ・・・(3)
2H
2+2CO→CH
3COOH・・・(4)
2H
2+CH
3COOH→CH
3CH
2OH+H
2O ・・・(5)
【0053】
合成工程の温度条件(合成温度)、即ち、合成反応管21内の温度は、後述する合成圧力、脱硫ガス32の組成、目的とする酸素化物の種類等を勘案して決定される。合成温度は、例えば、150〜450℃が好ましく、200〜400℃がより好ましく、250〜350℃がさらに好ましい。合成温度が上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物をより効率的に製造できる。合成温度が上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物をより効率的に製造できる。
【0054】
合成工程の圧力条件(合成圧力)、即ち合成反応管21内の圧力は、例えば、0.5〜10MPaが好ましく、1〜7.5MPaがより好ましく、2〜5MPaがさらに好ましい。合成圧力が上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物をより効率的に製造できる。合成圧力が上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物をより効率的に製造できる。
【0055】
合成反応床22における脱硫ガス32の空間速度(=SV(単位時間(h)当たりのガスの供給量(L)を合成触媒量(体積(L)換算)で除した値))は、標準状態換算で10〜100000h
−1となるように調節されることが好ましい。SVは、目的とする酸素化物に適した反応圧力、反応温度、及び原料である原料ガスの組成を勘案して、適宜調整される。
【0056】
合成ガス34は、酸素化物を含むものであれば特に限定されないが、酢酸、エタノール及びアセトアルデヒドから選択される1種以上を含むものが好ましく、エタノールを含むものがより好ましい。合成触媒は、C2化合物を効率的に製造できるためである。
なお、合成温度、合成圧力、合成反応床22における脱硫ガス32のSV等を調節することで、得られる酸素化物の選択率や生成量を制御できる。
【0057】
必要に応じ、合成ガス移送ライン24から排出された合成ガス34を気液分離器等で処理し、未反応の脱硫ガス32と酸素化物とを分離してもよい。
【0058】
原料ガス30として、リサイクルガスを用いる場合、原料ガス30を脱硫反応管11内に流入させる前に、タール分、窒素分、塩素分、水分等、硫黄分以外の不純物を除去する処理を施してもよい。
【0059】
必要に応じ、脱硫装置10よりも上流に、他の脱硫装置(以下、一次脱硫装置ということがある)を設けてもよい。一次脱硫装置としては、例えば、酸化亜鉛等、銅を含有しない公知の脱硫剤(非銅系脱硫剤)が充填された反応床を備えるもの、コバルト−モリブデン(Co−Mo)触媒もしくはニッケル−モリブデン(Ni−Mo)触媒とその後段に非銅系脱硫剤が充填された反応床を備えるもの、PSA装置等が挙げられる。非銅系脱硫剤、又は非銅系脱硫剤とCo−Mo触媒もしくはNi−Mo触媒とが充填された反応床は、脱硫装置10の脱硫反応管11内の上流側に形成されてもよい。このような一次脱硫装置を設けることで、原料ガス30中の硫黄分の含有量を10体積ppm以下にできる。原料ガス30中の硫黄分の含有量を予め10体積ppm以下にすることで、脱硫装置10の脱硫剤の脱硫効率をより高め、脱硫剤への負荷を低減して長期にわたり原料ガス30中の硫黄分を可及的に除去できる。
【0060】
エタノール以外の生成物(例えば、酢酸、アセトアルデヒド等、エタノールを除くC2化合物や酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等のエステル類)を水素化してエタノールに変換する工程(エタノール化工程)を合成工程の後に設けてもよい。エタノール化工程としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸等を含む酸素化物を水素化触媒に接触させてエタノールに変換する方法が挙げられる。
ここで、水素化触媒としては、当該技術分野で知られる触媒が使用でき、銅、銅−亜鉛、銅−クロム、銅−亜鉛−クロム、鉄、ロジウム−鉄、ロジウム−モリブデン、パラジウム、パラジウム−鉄、パラジウム−モリブデン、イリジウム−鉄、ロジウム−イリジウム−鉄、イリジウム−モリブデン、レニウム−亜鉛、白金、ニッケル、コバルト、ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化白金、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの水素化触媒は、本発明の触媒に用いられる担体と同様の担体に担持させた担持触媒であってもよく、担持触媒としては、銅、銅−亜鉛、銅−クロム又は銅−亜鉛−クロムをシリカ系担体に担持させた銅系触媒が好適である。担持触媒である水素化触媒の製造方法としては、合成触媒と同様に同時法又は逐次法が挙げられる。
あるいは、アセトアルデヒドを高効率に得るために、生成物を気液分離器等で処理してエタノールを取り出し、このエタノールを酸化することによりアセトアルデヒドに変換する工程を設けてもよい。
エタノールを酸化する方法としては、エタノールを液化又は気化した後、金、白金、ルテニウム、銅又はマンガンを主成分とした金属触媒や、これら金属を2種以上含む合金触媒等の酸化触媒に接触させる方法等が挙げられる。これら酸化触媒は、合成触媒に用いられる担体と同様の担体に金属を担持させた担持触媒であってもよい。
【0061】
従来、脱硫方式として知られているPSA法や、酸化亜鉛を脱硫剤として用いる方法では、原料ガス中の硫黄分の含有量を十分に低減できなかった。硫黄分を多く含有する原料ガスを合成触媒に接触させると、合成触媒の活性が早期に低くなる。加えて、天然ガスや石油の硫黄分の除去に従来用いられている脱硫剤は、水素及び一酸化炭素を含有する原料ガスからメタンを優先的に合成するため、効率的に酸素化物を製造できない。
また、脱硫方式として湿式法を採用した場合には、脱硫ガス中の水分量の制御が困難となり、目的とする酸素化物を効率的に製造しにくい。
本実施形態の酸素化物の製造システム及び製造方法は、銅を含有する脱硫剤を用いることで、メタン合成に優先して、原料ガス中の硫黄分を可及的に取り除ける。このため、合成触媒の活性低下を抑制でき、長期にわたり、効率的に酸素化物を製造できる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0063】
(調製例1)脱硫剤の調製
硝酸銅を0.5モル/L及び硝酸亜鉛を0.5モル/Lで含有する金属水溶液を調製した。60℃の炭酸ナトリウム水溶液(濃度:0.6モル/L)を攪拌しながら、ここに金属水溶液を滴下し、沈殿を生じさせた。生じた沈殿をろ別し、得られた沈殿を水で洗浄した。洗浄した沈殿を高さ1/8インチ(0.32cm)×直径1/8インチ(0.32cm)の円柱状に打錠成形し、これを300℃で焼成して脱硫剤とした。
得られた脱硫剤に、200℃の環境下で水素を2体積%含有する窒素ガスを接触させて、還元処理を施した。
【0064】
(調製例2)合成触媒の調製
チタンラクテートアンモニウム塩(Ti(OH)
2[OCH(CH
3)COO
−]
2(NH
4+)
2)0.0123gを含む水溶液0.61mLを、シリカゲル(比表面積:430m
2/g、平均細孔径:5.7nm、細孔容量:0.61cm
3/g)1.0gに滴下して含浸させた。これを110℃にて3時間乾燥し、さらに400℃にて3時間焼成して一次担持体とした。塩化ロジウム三水和物(RhCl
3・3H
2O)0.0768gと、塩化リチウム一水和物(LiCl・H
2O)0.0048gと、塩化マンガン四水和物(MnCl
2・4H
2O)0.0433gとを含む水溶液0.61mLを一次担持体に滴下して含浸させ、110℃にて3時間乾燥し、さらに400℃にて3時間焼成して合成触媒を得た。得られた合成触媒は、ロジウム担持率=3質量%/SiO
2、Rh:Mn:Li:Ti=0.461:0.346:0.127:0.066(モル比)であった。
【0065】
(実験例1)
調製例1で得られた脱硫剤7.9gを内径10.7mm、長さ40cmのステンレス製の円筒型の反応管に充填して脱硫反応床を形成した。脱硫反応床に、常圧で還元ガス(水素濃度30体積%)をSV=1000h
−1で流通させながら、320℃で2時間加熱し、還元処理を施した。
反応温度を100℃、120℃、150℃、180℃、200℃、280℃とし、反応圧力0.9MPaの条件下で、原料ガス(H
2/CO比=2、硫黄分を含まず)をSV=1500h
−1で脱硫反応床に流通させ、脱硫ガスを得た。
各々の反応温度において、原料ガスを脱硫反応床に1時間流通させた。脱硫反応床を流通したガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。得られたデータから、メタノール転化率(モル%)を算出し、その結果を
図4に示す。メタノール転化率は、原料ガス中のCOのモル数の内、メタノール合成に消費されたCOのモル数が占める百分率である。
【0066】
図4は、縦軸にメタノール転化率、横軸に反応温度を取ったグラフである。
図4に示すように、反応温度を低くするとメタノール転化率が低くなった。反応温度180℃以下では、メタノール転化率が1モル%以下となっていた。
【0067】
(実施例1)
図5に示す酸素化物の製造システム100を作製した。酸素化物の製造システム100は、ステンレス製の円筒型の反応管(内径10.7mm)101内に、鉛直方向上方から順に、脱硫反応床110、酸化ケイ素層102、合成反応床120及び目皿104が積層されたものである。
脱硫装置としての脱硫反応床110は、調製例1で得られた脱硫剤12.9gが充填された層(長さ11.5cm)であり、合成装置としての合成反応床120は、調製例2で得られた合成触媒0.5gと酸化ケイ素2.5gとの混合物が充填された層(長さ4cm)である。酸化ケイ素層102は、酸化ケイ素5gが充填された層(長さ4cm)である。目皿104は、φ0.5mmの穴が複数形成されたステンレス製のパンチングメタルである。
【0068】
反応管101内に、常圧で還元ガス(水素濃度30体積%)をSV=1800h
−1で流通させつつ、反応管101内を室温(25℃)から320℃に80分間で昇温し、次いで、320℃で2時間維持して、脱硫剤及び合成触媒に還元処理を施した。
【0069】
反応管101内を280℃とし、原料ガス(H
2:CO:N
2=6:3:1、H
2S濃度=0.1体積ppm)を脱硫反応床110に対してSV=1500h
−1、合成反応床120に対してSV=9000h
−1で酸素化物の製造システム100の上端から流入させた。反応管101内の圧力は、0.9MPaであった。原料ガスを流入させてから任意の時間が経過した後、酸素化物の製造システム100から排出された、生成物を含む合成ガスを回収し、これをガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)を算出した。その結果を
図6に示す。
ここで、脱硫反応床で生成したメタノールは転化率の計算から除外した。
なお、原料ガス中のH
2S濃度(0.1体積ppm)は、従来の脱硫方式(PSA法、非銅系脱硫剤との接触等)で原料ガスを処理した場合を想定したものである。
【0070】
(比較例1)
脱硫反応床を設けなかった以外は実施例1と同様にして、CO転化率を算出した。その結果を
図7に示す。
【0071】
(参考例1)
H
2Sを含まない原料ガス(H
2:CO:N
2=6:3:1)を用いた以外は比較例1と同様にして、CO転化率を算出した。その結果を
図8に示す。
【0072】
図6に示すように、本発明を適用した実施例1は、原料ガスの流通開始直後におけるCO転化率が10モル%、260時間後におけるCO転化率が8.7モル%であった。
図7に示すように、脱硫反応床を設けなかった比較例1は、原料ガスの流通開始直後におけるCO転化率が10モル%、140時間後におけるCO転化率が1.6モル%であった。
図8に示すように、H
2Sを含まない原料ガスを用いた参考例1は、原料ガスの流通開始直後におけるCO転化率が9.0モル%、200時間後におけるCO転化率が7.0モル%であった。
なお、実施例1、比較例1及び参考例1において、変換したCOに対する主成分の選択率は、エタノールの選択率28〜35モル%、アセトアルデヒドの選択率20〜25モル%、メタンの選択率30〜35モル%であった。なお、脱硫反応床110で生成したメタノールを選択率の計算から除外した。
比較例1と参考例1との比較から、硫黄分を含む原料ガスを用いることで、合成触媒のCO転化率が経時的に低くなることが判った。
実施例1と比較例1との比較から、本発明を適用することで、合成触媒の活性を維持でき、長期にわたり酸素化物を効率的に製造できることが判った。
なお、実施例1で用いた合成反応床の上層から取り出した合成触媒について、半導体式赤外線吸収法により硫黄含有量を測定したところ、硫黄含有量は検出限界(0.01質量ppm)未満であった。このことから、原料ガスは、脱硫反応床を流通することで、硫化水素の含有量が1体積ppb未満に低減されていたと予測される。
【0073】
(実施例2)
図9に示す酸素化物の製造システム200を作製した。酸素化物の製造システム200は、脱硫装置210と合成装置220とが、脱硫ガス移送ライン230で接続されたものである。
脱硫装置210は、ステンレス製の円筒型の反応管(内径10.7mm)212と、反応管212を覆う加熱部214とを備える。反応管212内には、目皿216が設けられ、目皿216上に脱硫反応床211が形成されている。
脱硫反応床211は、調製例1で得られた脱硫剤5.4gが充填された層(長さ5.1cm)である。
合成装置220は、ステンレス製の円筒型の反応管(内径10.7mm)222と、反応管222を覆う加熱部224とを備える。反応管222内には、目皿226が設けられ、目皿226上に合成反応床221が形成されている。
合成反応床221は、調製例2で得られた合成触媒0.5gと酸化ケイ素2.5gとの混合物が充填された層(長さ4cm)である。
目皿216、226は、φ0.5mmの穴が複数形成されたステンレス製のパンチングメタルである。
【0074】
酸素化物の製造システム200内に、矢印202の方向で、常圧で水素ガスをSV=450h
−1(脱硫反応床)、SV=1800h
−1(合成反応床)で流通させつつ、反応管212内の温度を室温(25℃)から100℃に90分間で昇温し、反応管222内の温度を室温から260℃に90分間で昇温した。
【0075】
その後、原料ガス(H
2:CO:N
2=6:3:1、H
2S濃度=0.1体積ppm、COS濃度=0.1体積ppm)を脱硫反応床211に対してSV=3000h
−1で、合成反応床221に対してSV=12000h
−1となるように、矢印202の方向で反応管212の上端から流入させた。この際、反応官212内の圧力を2.0MPaとし、反応管222内の圧力を2.0MPaとした。
原料ガスを流入させてから任意の時間が経過した後、酸素化物の製造システム200から排出された、生成物を含む合成ガスを回収し、これをガスクロマトグラフィーにより分析した。
得られたデータからCO転化率(モル%)を算出し、その結果を
図10に示す。
なお、原料ガス中のH
2S濃度及びCOS濃度は、従来の脱硫方式(PSA法、非銅系脱硫剤との接触等)で原料ガスを処理した場合を想定したものである。
【0076】
図10に示すように、本発明を適用した実施例2は、原料ガスの流通開始直後におけるCO転化率が27モル%、84時間後におけるCO転化率が22モル%、636時間後におけるCO転化率が20モル%であった。
なお、この時、変換したCOに対する主成分の選択率は、エタノールの選択率35〜40モル%、アセトアルデヒドの選択率40〜45モル%、メタンの選択率10〜15モル%であった。また、メタノールの選択率は1モル%未満であった。
試験後の脱硫剤を半導体式赤外線吸収法により硫黄含有量(S元素質量)を測定したところ、脱硫剤5.4g中に2.2mgであった。原料ガス中の硫黄成分(H
2S、COS)の濃度が0.2体積ppmで、原料ガスの流通量が[200mL/min×636時間]であることから、流通させた硫黄成分の量(S元素質量)は2.2mgとなる。このことから、原料ガス中のほぼ全ての硫黄成分が脱硫反応床層により吸着除去されたことが判った。
また、この試験(脱硫反応床を100℃とした場合)に比べ、脱硫反応床を120℃にした場合には、脱硫剤でのメタノール生成量が多かった。
このように本発明を適用することで、合成触媒の活性を維持でき、長期にわたり酸素化物を効率的に製造できることが判った。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。