特許第6408146号(P6408146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408146
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】複合型半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20181004BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20181004BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20181004BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 21/8236 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H02M7/48 M
   H01L27/06 311A
   H01L27/088 311A
   H01L27/06 311C
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-519031(P2017-519031)
(86)(22)【出願日】2016年2月22日
(86)【国際出願番号】JP2016055085
(87)【国際公開番号】WO2016185745
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2017年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-100530(P2015-100530)
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】仲嶋 明生
(72)【発明者】
【氏名】一條 尚生
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−324839(JP,A)
【文献】 特開2011−166673(JP,A)
【文献】 特開2012−222360(JP,A)
【文献】 特開2014−187726(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/033631(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/192348(WO,A1)
【文献】 特開2014−220486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/8236
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにカスコード接続されたノーマリオン型の第1FET及びノーマリオフ型の第2FETを備えている複合型半導体装置において、
前記第1FETのドレインに印加されている電圧が400Vである場合、
前記複合型半導体装置に接続された負荷の短絡が開始したタイミングからの経過時間を短絡後経過時間Tとし、
前記第2FETのオン抵抗の値をRonQ2、前記第1FETの閾値電圧をVTHQ1、前記第1FETのゲート電圧が0Vのときの、前記第1FETの飽和状態における前記第1FETのドレイン電流をIdmax1とし、
短絡後経過時間T≧2μsecの間、前記第1FETの破壊を防ぐ程度に制限したドレイン電流をIdmaxとするときに以下の式の関係を満たすことを特徴とする複合型半導体装置。
【数1】
【請求項2】
以下の式の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の複合型半導体装置。
【数2】
【請求項3】
以下の式の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の複合型半導体装置。
【数3】
【請求項4】
前記閾値電圧VTHQ1は、|VTHQ1|≦20Vを満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合型半導体装置。
【請求項5】
前記閾値電圧VTHQ1は、|VTHQ1|≦10Vを満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置には主にSi(シリコン)系のノーマリオフ型のFET(いわゆる、Si−FET)が使用されている。ノーマリオフ型のFETは、ゲート−ソース間にゲート電圧を印加した場合にドレイン−ソース間が導通し、ゲート−ソース間にゲート電圧が印加されていない場合にドレイン−ソース間が非導通となるトランジスタである。
【0003】
その一方で、Si−FETは、物理的な性能に関し、限界が近づきつつある。そこで、Si−FETを超える性能を持つと期待されるワイドギャップ半導体系FETの中でも、GaN半導体系FET(GaN−FETともいう)のような二次元電子ガスを用いたHFET(hetero FET)が注目されている。GaN−FETは、高絶縁耐圧、高温動作及びヘテロ接合による低オン抵抗を比較的容易に実現でき、利用価値が高い。しかし、GaN−FETは、通常はノーマリオン型のFETであり、ノーマリオフ型として用いることが困難である。
【0004】
ノーマリオン型のFETでは、ゲート電圧が0V(ボルト)であってもオンとなる。パワーデバイスとしては、安全面からノーマリオフ型の動作が強く要望される。そこで、ノーマリオン型FETとノーマリオフ型FETとを直列接続し、カスコード構成とすることによって装置全体としてノーマリオフ型半導体スイッチを実現する複合型半導体装置が提案されている。カスコード構成では周知の如くミラー効果が抑制されるため、ノーマリオン型FETの高速動作が損なわれない。
【0005】
特許文献1には、ノーマリオン型スイッチング素子とノーマリオフ型スイッチング素子とが直列接続したカスコード構成の複合型半導体装置が開示されている。ノーマリオフ型スイッチング素子のドレイン(又はコレクタ)とゲート(又はベース)との間に、保護回路として電圧クランプ手段を設けている。
【0006】
特許文献2には、ワイドギャップ半導体により構成されたノーマリオン型の電力用半導体スイッチング素子と、ノーマリオフ型の複数の金属絶縁膜半導体電界効果トランジスタとが直列接続したカスコード構成の複合型半導体装置が開示されている。該カスコード素子と並列に接続された高速ダイオードを備え、逆回復電流に起因するスイッチング損失を減少させている。
【0007】
特許文献3には、種々の構成で製造されたノーマリオン型のGaN半導体系FETと、ノーマリオフ型のFETとが直列接続したカスコード構成の複合型半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国特許公報「特開2006−324839号公報(2006年11月30日公開)」
【特許文献2】日本国特許公報「特開2006−158185号公報(2006年6月15日公開)」
【特許文献3】日本国特許公報「特表2010−522432号公報(2010年7月1日公表)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されている複合型半導体装置においては、複合型半導体装置に接続する負荷が短絡した場合(以下、負荷短絡とも言う)に対する耐性が十分でないという問題が発生する。負荷短絡が発生すると、複合型半導体装置に過電流が流れ、この過電流によって複合型半導体装置が破壊される恐れがある。
【0010】
すなわち、上記複合型半導体装置を含む電源回路やインバータ回路では、過度の負荷や誤動作等により負荷短絡状態が発生することがある。シャント抵抗等を用いて過電流が検出されたとき、ノーマリオフ型FETを高速に遮断できれば負荷短絡による複合型半導体装置の破壊を抑制できる。しかしながら、過電流検出速度(過電流を検出する回路の応答速度)を大きくし過ぎると、スイッチングノイズ等の影響で誤検出の発生確率が高まってシステム全体の誤動作を招きやすくなるため、過電流検出速度をあまり上げることはできない。
【0011】
そのため、カスコード構成を有する複合型半導体装置であっても、実用上は或る程度の時間の負荷短絡に耐えることが求められる。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、低オン抵抗であって、かつ負荷短絡に対する耐性の高い複合型半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る複合型半導体装置は、上記の問題を解決するために、互いにカスコード接続されたノーマリオン型の第1FET及びノーマリオフ型の第2FETを備えている複合型半導体装置において、前記第1FETのドレインに印加されている電圧が400Vである場合、前記複合型半導体装置に接続された負荷の短絡が開始したタイミングからの経過時間を短絡後経過時間Tとし、前記第2FETのオン抵抗の値をRonQ2、前記第1FETの閾値電圧をVTHQ1、前記第1FETのゲート電圧が0Vのときの、前記第1FETの飽和状態における前記第1FETのドレイン電流をIdmax1とし、短絡後経過時間T≧2μsecの間、前記第1FETの破壊を防ぐ程度に制限したドレイン電流をIdmaxとするときに以下の式の関係を満たすことを特徴としている。
【0014】
【数1】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低オン抵抗であって、かつ負荷短絡時の耐性の高い複合型半導体装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態1に係る複合型半導体装置の具体的な構成及び複合型半導体装置周辺の構成を示す回路図である。
図2】上記複合型半導体装置内のGaN−FETの各Vgsにおける、Vds−Id特性を示す図である。
図3】上記複合型半導体装置の各Vgsにおける、Vds−Id特性を示すグラフである。
図4】上記複合型半導体装置のGaN−FETの各閾値電圧における、上記複合型半導体装置に流れる最大ドレイン電流とSi−FETのオン抵抗との関係を示すグラフである。
図5】上記複合型半導体装置に接続された負荷が短絡した場合における、GaN−FETの過電流時の最大ドレイン電流と、各短絡時破壊時間と、上記複合型半導体装置を流れる最大ドレイン電流と、それらから求められるSi−FETのオン抵抗及びGaN−FETの閾値電圧が満たすべき条件を示す表である。
図6】上記複合型半導体装置に流れる最大ドレイン電流と、該最大ドレイン電流を流し始めてからGaN−FETが破壊するまでの時間との関係を示すグラフである。
図7】(a)は本発明の実施形態2に係る複合型半導体装置の具体的な構成を示す上面図であり、(b)は側面図である。
図8】本発明の実施形態3に係る複合型半導体装置の、インバータ・ブリッジ回路に応用した具体的な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0018】
本実施の形態では、まず、複合型半導体装置(複合型スイッチング素子)としての、GaN−FET(第1FET)Q1、及びSi−FET(第2FET)Q2を備えるカスコードデバイスの回路構成について説明する。次に、GaN−FETQ1の典型的なVds−Id特性について説明する。そして、上記複合型半導体装置における、GaN−FETQ1を流れる電流特性について説明し、その後、上記複合型半導体装置に接続する負荷が短絡した場合における、上記複合型半導体装置を流れるドレイン電流の制限作用について説明する。
【0019】
尚、以下の説明において、任意のFETにおけるゲート電圧とは、当該FETのソース電位を基準とするゲート電位を指す。また、任意のFETにおいて、オンとは、当該FETのドレイン及びソース間が導通状態になることを意味し、オフとは、当該FETのドレイン及びソース間が遮断状態になることを意味する。
【0020】
<複合型半導体装置10の回路構成>
本実施の形態の複合型半導体装置10の構成について、図1に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る複合型半導体装置10の具体的な構成及び複合型半導体装置10周辺の構成を示す回路図である。
【0021】
本実施の形態の複合型半導体装置10は、互いに直列に接続されたGaN−FETQ1及びSi−FETQ2と、GaN−FETQ1のドレインと接続するドレイン端子Tdと、Si−FETQ2のソースと接続するソース端子Tsと、Si−FETQ2のゲートと接続するゲート端子Tgと、抵抗4とを備えている。ここで、GaN−FETQ1及びSi−FETQ2は、いずれもNチャンネル型のFETである。
【0022】
複合型半導体装置10の周辺の構成として、ドレイン端子Tdには電圧源1が接続され、ゲート端子Tgには制御回路2が接続され、ソース端子Tsには負荷3が接続され、負荷3は接地されている。
【0023】
複合型半導体装置10は、具体的には以下のように構成されている。
【0024】
ドレイン端子TdはGaN−FETQ1のドレインに接続され、GaN−FETQ1のソースはSi−FETQ2のドレインに接続されている。Si−FETQ2のゲートはゲート端子Tgに接続されている。Si−FETQ2のソースはソース端子Tsと接続されていると共に抵抗4の一端に接続されている。そして該抵抗4の他端はGaN−FETQ1のゲートに接続されている。すなわち、Si−FETQ2のソースは、GaN−FETQ1のゲートと、抵抗4を介して接続されている。但し、Si−FETQ2のソースとGaN−FETQ1のゲートとは、抵抗4を介することなく、直接接続されていてもよい。
【0025】
このように、GaN−FETQ1とSi−FETQ2とは、カスコード接続されている(カスコード構成にて接続されている)。即ち、複合型半導体装置10は、ソース接地FETとしてのSi−FETQ2に対しゲート接地FETとしてのGaN−FETQ1を積み上げた構成となっている。
【0026】
GaN−FETQ1は、GaN(Gallium Nitride)、AlGaN、及びInGaN等に代表されるIII族窒化物半導体(化合物半導体)を含んでおり、例えばGaNFET、即ちGaN半導体にて形成されたノーマリオン型のFETである。ノーマリオン型のFETでは、ゲート電圧が0V(ボルト)であってもオンとなる。従って、GaN−FETQ1は、GaN−FETQ1へのゲート電圧が、ゼロ又は負の電圧値を有する所定の閾値電圧VTHQ1以上であればオンとなり、閾値電圧VTHQ1より低ければオフとなる。
【0027】
Si−FETQ2は、SiMOSFET(Si-Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、即ちシリコン半導体にて形成された絶縁ゲート型FETであって、ノーマリオフ型のFETである。ここで、Si−FETQ2は、ショットキーゲート型FETによって構成されていてもよい。Si−FETQ2は、複合型半導体装置10として求める特性に応じて、適宜適当なFETを選択すればよく、これにより、複合型半導体装置10の設計における制限が少なくなる。ノーマリオフ型のFETでは、ゲート電圧が0V(ボルト)であるときオフとなる。つまり、Si−FETQ2は、GaN−FETQ1と同様に、Si−FETQ2へのゲート電圧が、閾値電圧VTHQ2以上であればオンとなり、閾値電圧VTHQ2より低ければオフとなる。但し、閾値電圧VTHQ2は正の電圧値である。尚、Si−FETQ2には、ソースからドレインに向かう方向を順方向とする寄生ダイオードが内蔵されている。
【0028】
電圧源1は、グランドを基準とした直流の電源電圧VDDをドレイン端子Tdに印加する(VDD>0)。
【0029】
制御回路2は、ゲート端子Tgを介してSi−FETQ2にゲート電圧VgsQ2を供給し、Si−FETQ2のゲート電圧VgsQ2を制御する。それにより、Si−FETQ2のオン、オフを制御する。
【0030】
Si−FETQ2がオンであるとき、複合型半導体装置10のドレイン端子Tdからソース端子Tsへと電流が流れる。このとき、Si−FETQ2における電圧降下は略0V(ボルト)であるため、ノーマリオン型のGaN−FETQ1に逆電圧として印加されるゲート電圧VgsQ1も略0Vになる。そのため、GaN−FETQ1はオン状態を維持する。
【0031】
対して、制御回路2からSi−FETQ2に供給されるゲート電圧VgsQ2を閾値電圧VTHQ2以下とし、Si−FETQ2がオフとなるとき、Si−FETQ2のドレイン電位が上昇する。そのため、Si−FETQ2のドレイン−ソース間電圧VdsQ2が増大する。このSi−FETQ2のドレイン−ソース間電圧VdsQ2は、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1に逆電圧として印加される。これにより、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1が閾値電圧VTHQ1より低くなるとGaN−FETQ1がオフとなる。
【0032】
従って、1つのスイッチング素子として機能する複合型半導体装置10において、ドレイン端子Td及びソース端子Ts間は、Si−FETQ2がオンならオンとなり(導通状態となり)、Si−FETQ2がオフならオフとなる(遮断状態となる)。すなわち、複合型半導体装置10は、装置全体として1つのノーマリオフ型のFETの動作を実現する。
【0033】
複合型半導体装置10において、ドレイン端子Tdからソース端子Tsに流れる電流をドレイン電流Idとする。ドレイン電流Idは、複合型半導体装置10を1つのノーマリオフ型のFETと捉えたときのドレイン電流に相当し、GaN−FETQ1のドレイン電流及びFETQ2のドレイン電流と一致する。
【0034】
ドレイン電流Idはソース端子Tsを介して負荷3に供給され、グランドに流れこむ。負荷3の種類は任意であり、複合型半導体装置10を用いてインバータ回路を形成する場合においては、インバータ回路のアームが負荷3に含まれ得る。
【0035】
制御回路2は、Si−FETQ2を交互にオン、オフするスイッチング制御を行うこともできるが、以下では、特に記述無き限り、Si−FETQ2をオンさせるためのゲート電圧がSi−FETQ2に供給されている状態を考える。
【0036】
<GaN−FETQ1のVds−Id特性>
ここでは、本実施の形態の複合型半導体装置10に含まれるノーマリオン型のGaN−FETQ1の各ゲート電圧VgsQ1における、Vds−Id特性について図2を用いて説明する。図2は、複合型半導体装置10内のGaN−FETQ1の各ゲート電圧VgsQ1における、Vds−Id特性を示す図である。ここで、Vdsは、ドレイン−ソース間電圧、Idはドレイン電流を意味している。
【0037】
GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idは、図2に示すように、GaN−FETQ1のドレイン−ソース間電圧VdsQ1が0Vから一定の値まで高くなるにつれて大きくなり、ドレイン−ソース間電圧VdsQ1がこの一定の値を超えると、GaN−FETQ1が飽和することによって電流値の増大はほとんどなくなる。以後、任意のFETが飽和した状態を、飽和状態という。
【0038】
GaN−FETQ1に流れるドレイン電流Idは、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1と、ゲート電圧VgsQ1との差が大きいほど、増大する。よって、図2に示すように、ゲート電圧VgsQ1が−7Vから0Vへと増大するにつれて、ドレイン電流Idが増大すること、及び、付随してGaN−FETQ1の飽和状態にて流れるドレイン電流Idも増大することがわかる。
【0039】
図2において、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1が0Vのときの、飽和状態におけるドレイン電流IdをIdmax1とする。尚、本明細書において、以下では、このIdmax1を過電流時の最大ドレイン電流とも称する。
【0040】
<複合型半導体装置10の電流特性>
本実施の形態の複合型半導体装置10における、GaN−FETQ1を流れる電流特性について説明する。複合型半導体装置10がオンとなっており、電源電圧VDDが固定され、ドレイン端子Tdからソース端子Tsへとドレイン電流Idが流れているときの、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idは、一般的に下記数式(1)で表される。
【0041】
Id=gm(VgsQ1−VTHQ1) ・・・(1)
ここで、gmは相互コンダクタンスを示す。また、ノーマリオン型GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1は負の値である。ここで、上述のように、GaN−FETQ1に印加されるゲート電圧VgsQ1は、Si−FETQ2のドレイン−ソース間の電位差の逆電圧であるため、下記数式(2)で表される。
【0042】
VgsQ1=−RonQ2*Id ・・・(2)
数式(2)を数式(1)に代入すると、下記数式(3)が導かれる。ここで、VTHQ1は負の値であり、絶対値をつけて表す。
【0043】
Id=gm(−RonQ2*Id+|VTHQ1|)
⇔Id(1+gm*RonQ2)=gm*|VTHQ1|
⇔Id=gm*|VTHQ1|/(1+gm*RonQ2) ・・・(3)
上記数式(3)より、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idは、RonQ2が大きいほど、又は閾値電圧VTHQ1の絶対値が小さいほど低減されることがわかる。
【0044】
<負荷3が短絡した時のドレイン電流Id制限作用>
以下に、複合型半導体装置10に接続する負荷3が短絡した場合における、複合型半導体装置10に流れるドレイン電流Idの制限作用について図2〜6を用いて説明する。図3は、複合型半導体装置10の各ゲート電圧Vgsにおける、Vds−Id特性を示すグラフである。
【0045】
複合型半導体装置10において、仮にSi−FETQ2のオン抵抗RonQ2≒0Ω(VgsQ1≒0V)の場合には、負荷3が短絡したとき、図2に示すように、GaN−FETQ1は飽和状態となり、ドレイン電流Idとして、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1がGaN−FETQ1に流れることとなる。以下では、負荷3が短絡すること(即ち、ソース端子Tsが0Vのグランドの電位となること)を負荷短絡と表現する。負荷短絡はドレイン電流Idが過電流となる要因の1つである。
【0046】
制御回路2は、ドレイン電流Idが流れる経路に直列に挿入されたシャント抵抗(不図示)又はパルストランス(不図示)を用いてドレイン電流Idの電流値を検出し、検出電流値に基づき過電流対応処理を行うことができる。
【0047】
過電流対応処理において、制御回路2は、検出電流値が所定の過電流判定閾値ILIM以上になっているとき、複合型半導体装置10に過電流が発生していると判断して、ドレイン電流Idの流れる経路を遮断する。当該遮断は、Si−FETQ2のオフ、又は、ドレイン電流Idが流れる経路に直列に挿入されたスイッチ(Si−FETQ2以外の半導体スイッチング素子又は機械式リレー)のオフにより実現される。
【0048】
過電流の発生有無の検出速度(過電流を検出する回路の応答速度)を大きくし過ぎると、スイッチングノイズ等の影響で誤検出の発生確率が高まり、システム全体の誤動作を招く。そのため、ドレイン電流Idの電流値が実際に過電流判定閾値ILIM以上になってから所定の過電流検出応答時間が経過したタイミングで過電流の発生が検出されるように制御回路2は形成されている。そのため、負荷短絡によってドレイン電流Idが過電流となってから、制御回路2がドレイン電流Idの流れる経路を遮断するまでの時間としては、一般的に数μsecの時間が必要となる。つまり、カスコード構成を有する複合型半導体装置10において、実用上或る程度の時間、負荷短絡に耐えることが求められる。
【0049】
従って、負荷短絡時に複合型半導体装置を流れるドレイン電流Idを、制御回路2がドレイン電流Idの流れる経路を遮断するまで、すなわち或る程度の時間、GaN−FETQ1が破壊せずに耐え得るような最大ドレイン電流Idmaxに制限する必要がある。
【0050】
負荷短絡によりGaN−FETQ1のドレイン電流Idが、例えば、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1となった場合には、複合型半導体装置10のGaN−FETQ1はすぐに破壊するおそれがある。そのため、複合型半導体装置10としては、負荷短絡時に或る程度の時間は破壊することなく耐える必要がある。例えば、複合型半導体装置10のようなデバイスにおける、出力側の負荷が短絡した場合の短絡耐量の一般的な要望としては、ドレイン−ソース間電圧VdsとしてVds=400Vの電圧が印加されたとしても、少なくとも2μsecの時間、好ましくは5μsecの時間、複合型半導体装置10が破壊することなく耐えることが求められる。このような負荷短絡時の短絡耐量は、高速スイッチングデバイスでは一般的にスペックとして挙げられていない。
【0051】
そこで本実施の形態の複合型半導体装置10は、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が後述の関係を満たすことにより、負荷短絡時にGaN−FETQ1に流れるドレイン電流Idを、GaN−FETQ1の破壊を或る程度の時間防ぐような最大ドレイン電流Idmaxに制限する。
【0052】
言い換えれば、Si−FETQ2のオン抵抗の値(後述するオン抵抗RonQ2)又はGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1は、GaN−FETQ1のドレイン電流Idを、複合型半導体装置10に接続された負荷3の短絡に起因するGaN−FETQ1の破壊を或る程度の時間防ぐ程度の最大ドレイン電流Idmaxに制限するようになっている。
【0053】
以下に、まず、(i)RonQ2を高くすることによる最大ドレイン電流Idmaxの制限、及び(ii)GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値を小さくすることによる最大ドレイン電流Idmaxの制限、について説明する。その後、(iii)Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が満たす関係、について説明する。
(i)RonQ2を高くすることによる最大ドレイン電流Idmaxの制限について
負荷短絡時において、従来のSi−FETQ2では、オン抵抗RonQ2≒0Ωのため、Si−FETQ2における電圧降下は略0V(ボルト)であり、GaN−FETQ1に印加されるゲート電圧VgsQ1も略0Vになる。そのため、負荷短絡時に、GaN−FETQ1には、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1が流れてしまう。
【0054】
これに対して、本実施の形態に係るSi−FETQ2においては、オン抵抗RonQ2≠0Ωのため、
VdsQ2=RonQ2×Idmax
となる。このとき、GaN−FETQ1に逆電圧として印加されるゲート電圧VgsQ1は、
VgsQ1=−VdsQ2=−RonQ2×Idmax<0
となる。これにより、例えばVgsQ1=−2Vとなる場合には、図2に示すように、負荷短絡時にGaN−FETQ1に流れる最大ドレイン電流を、Idmax1からIdmaxへ低減できる。
【0055】
このように、RonQ2が高くなるとGaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idが低減することは、上記の数式(3)においても示されている。
【0056】
また、複合型半導体装置10のゲート電圧Vgs、すなわちSi−FETQ2のゲート電圧VgsQ2が高く、複合型半導体装置10に多くのドレイン電流Idが流れ得る場合において、負荷短絡時には、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2を高くすることによって、Si−FETQ2における電圧降下に対応する逆電圧がGaN−FETQ1に印加される。それにより、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idが最大ドレイン電流Idmaxに制限される。そのため、複合型半導体装置10を流れるドレイン電流Idは、図3に示すように、最大ドレイン電流Idmaxに制限される。
【0057】
なお、複合型半導体装置10のオン抵抗Ronは、GaN−FETQ1のオン抵抗RonQ1とSi−FETQ2のオン抵抗RonQ2との和となる。
【0058】
Ron=RonQ1+RonQ2
そのため、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2を高くしすぎると、複合型半導体装置10のオン抵抗Ronが高くなりすぎてしまう。GaN−FETQ1の低オン抵抗のメリットを活かし、かつ負荷短絡時にGaN−FETQ1が破壊しないように、後述の関係式を満たす範囲で、ドレイン電流Idを最大ドレイン電流Idmaxに制限することが重要となる。
(ii)GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値を小さくすることによる最大ドレイン電流Idmaxの制限について
負荷短絡時において、GaN−FETQ1には電源電圧が印加され、例えば、ドレイン−ソース間電圧VdsとしてVds=400Vの電圧が印加される。このとき、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idは、飽和状態となる。GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1が例えば0Vであるとき、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idの飽和状態の電流値は、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値の値に依存する。すなわち、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1は負の値を有するので、閾値電圧VTHQ1が大きいほど、換言すれば閾値電圧VTHQ1の絶対値が小さいほど、GaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idの飽和状態の電流値は低減される。
【0059】
このように、閾値電圧VTHQ1の絶対値が小さくなるとドレイン電流Idが低減することは、上記の数式(3)においても示されている。
【0060】
以上のように、複合型半導体装置10では、負荷短絡により、例えばドレイン−ソース間電圧VdsとしてVds=400Vの電圧が印加されたとしても、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が後述の関係を満たすことにより、少なくとも2μsecの時間、好ましくは5μsecの時間、破壊することなく耐えることができる。そのため、負荷短絡時に、GaN−FETQ1が破壊する前に、制御回路2がドレイン電流Idの流れる経路を遮断することができる。
(iii)Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が満たす関係について
以下に、本実施の形態の複合型半導体装置10における、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が満たす関係について、詳細に説明する。
【0061】
以下では、GaN−FETQ1に印加されている電圧が400Vである場合について、説明する。
【0062】
GaN−FETQ1では、飽和状態時のVg−Idの関係が以下の数式(4)のように線形近似される。
【0063】
Idmax1=gm*|VTHQ1| ・・・(4)
数式(4)を、上述の数式(3)に代入し、式を変形すると、以下の数式(5)となる。
【0064】
Idmax=Idmax1/(1+gm/RonQ2)
⇔Idmax=Idmax1/(1+(Idmax1/|VTHQ1|)*RonQ2)
・・・(5)
上記の数式(5)を変形すると、以下の数式(6)が導かれる。
【0065】
【数2】
【0066】
上記数式(6)より、Idmaxを或る一定値Idx以下に低減する場合、RonQ2、VTHQ1、及びIdmax1は次の関係式(7)を満たす。
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、GaN−FETQ1のデバイス特性に依存して、GaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1は様々な値をとり得る。その中で、GaN−FETQ1の過電流時の最大ドレイン電流Idmax1が、GaN−FETQ1を破壊する恐れがあるような電流値である場合に、問題となる。本実施の形態の複合型半導体装置10においては、GaN−FETQ1の過電流時の最大ドレイン電流Idmax1が、GaN−FETQ1を破壊する恐れがあるような電流値となる場合に、上記数式(7)の関係を満たすことにより、複合型半導体装置10を流れるドレイン電流Idを最大ドレイン電流Idmaxに制限することができ、GaN−FETQ1の破壊を或る程度の時間防ぐことができる。
【0069】
例えば、GaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合に、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2と、GaN−FETQ1の閾値VTHQ1と、複合型半導体装置10に流れる最大ドレイン電流Idmaxとの関係は、上記の式(6)の関係を満たすようになっていればよい。結果としての、複合型半導体装置10のGaN−FETQ1の各閾値電圧VTHQ1における、複合型半導体装置10に流れる最大ドレイン電流IdmaxとSi−FETQ2のオン抵抗RonQ2との関係を図4に示す。
【0070】
図4に示すように、例えばGaN−FETQ1の許容最大電流値が200Aである場合には、最大ドレイン電流Idmax<200Aとなるように、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値VTHQ1とすればよい。換言すれば、本実施の形態の複合型半導体装置10における、最大ドレイン電流Idmaxは、GaN−FETQ1の許容最大電流値以下となっている。この許容最大電流値は、GaN−FETQ1の具体的スペック、及び後述のように負荷短絡からGaN−FETQ1が破壊するまでの耐久時間として要求する時間の長さによって変化する。つまり、許容最大電流値とは、後述のように、所望の或る時間の間、具体的には例えば2μsecの間、GaN−FETQ1が破壊もしくは特性劣化しない電流値を意味している。
【0071】
以下に更に詳細に、本実施の形態の複合型半導体装置10における、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2、及びGaN−FETQ1の閾値VTHQ1の関係について、図5及び図6を用いて具体的に説明する。
【0072】
上述のように、GaN−FETQ1のデバイス特性に依存して、負荷短絡時にGaN−FETQ1に流れる過電流時の最大ドレイン電流Idmax1は様々な値をとり得る。ここでは、例えばGaN−FETQ1に印加されている電圧が400Vと固定されている場合において、説明する。ただし、実際上GaN−FETQ1に印加されている電圧は、本実施の形態の複合型半導体装置10が組み込まれる回路の構成によって当然種々の電圧値となり得る。本実施の形態の複合型半導体装置10は、どのような回路に組み込まれていたとしても、GaN−FETQ1に400Vの電圧が印加された状態においては、以下のような関係式を満たすものとなっている。
【0073】
また、上述のように、負荷短絡時にGaN−FETQ1に流れる過電流時の最大ドレイン電流Idmax1は様々な値をとり得る。そして、負荷短絡時にGaN−FETQ1を流れるドレイン電流Idを制限した最大ドレイン電流Idmaxとして求められる許容最大電流値は、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1の値と、負荷短絡からGaN−FETQ1が破壊するまでの耐久時間として要求する時間の長さと、によって変化する。
【0074】
つまり、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1の値と、負荷短絡からGaN−FETQ1が破壊するまでの耐久時間として要求する時間の長さと、に基づいて、制限すべき最大ドレイン電流Idmaxが求められる。過電流時の最大ドレイン電流Idmax1をその最大ドレイン電流Idmaxに制限するために、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2と、GaN-FETの閾値電圧VTHQ1とが満たすべき条件が、上記の数式(6)に基づいて決定される。そのことについて、図5及び図6を用いて以下に説明する。
【0075】
図5は、複合型半導体装置10に接続された負荷が短絡した場合における、GaN−FETQ1の過電流時の最大ドレイン電流Idmax1と、各短絡時破壊時間Tpと、複合型半導体装置10を流れる制限した最大ドレイン電流Idmaxと、それらから求められるSi−FETQ2のオン抵抗RonQ2及びGaN-FETの閾値電圧VTHQ1が満たすべき条件を示す表である。
【0076】
ここで、短絡時破壊時間Tpは次に説明するような時間である。すなわち、複合型半導体装置10では、負荷短絡によりGaN−FETQ1に400Vの電圧が印加されたとしても、或る程度の時間、GaN−FETQ1が破壊されることなく耐えることが要求される。ここで、負荷が短絡したタイミングからの経過時間を短絡後経過時間Tとし、ある最大ドレイン電流Idmaxが流れたときに、GaN−FETQ1が破壊されるまでの時間を短絡時破壊時間Tpとする。短絡時破壊時間Tpは、言い換えれば、負荷短絡時にGaN−FETQ1が破壊されずに耐えた時間を意味する。
【0077】
図5において、複合型半導体装置10の各最大ドレイン電流Idmaxは、後述のように短絡時破壊時間Tpによって決定されている。この短絡時破壊時間Tpによって決定された最大ドレイン電流Idmaxを許容最大電流値とすれば、上記の式(6)に、過電流時の最大ドレイン電流Idmax1の値と、上記許容最大電流値とを代入することによって、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1が満たすべき条件が決定される。換言すれば、本実施の形態の複合型半導体装置10では、各種の条件において、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1が、式(6)の関係を満たすことによって、負荷が短絡してから所望の短絡後経過時間Tの間、GaN−FETQ1が破壊することなく耐えることができる。
【0078】
図5における、所望の短絡時破壊時間Tpに基づく複合型半導体装置10の各最大ドレイン電流Idmaxの決定について、図6を用いて以下に説明する。
【0079】
図6は、複合型半導体装置10に流れる最大ドレイン電流Idmaxと、該最大ドレイン電流Idmaxを流し始めてからGaN−FETQ1が破壊するまでの時間との関係を示すグラフである。
【0080】
図6に示すように、最大ドレイン電流Idmaxが大きくなるほど、短絡時破壊時間Tpは短くなる。短絡時破壊時間Tpを2μsecとするためには、最大ドレイン電流Idmaxが300Aであればよい。また、短絡時破壊時間Tpを3μsecとするためには、最大ドレイン電流Idmaxが230Aであればよい。また、短絡時破壊時間Tpを5μsecとするためには、最大ドレイン電流Idmaxが180Aであればよい。
【0081】
ここで、本実施の形態の複合型半導体装置10では、短絡時破壊時間Tpは少なくとも2μsec以上となっているが、複合型半導体装置10に求められる短絡時破壊時間Tpは、複合型半導体装置10に要求される特性に依存し得る。例えば、負荷短絡時にGaN−FETQ1が破壊するおそれを低減することを重視する場合(以下、耐量重視と表現する)には、短絡時破壊時間Tpは5μsec以上が好ましい。また、負荷短絡時にGaN−FETQ1が破壊を防止しつつ、複合型半導体装置10のオン抵抗Ronをなるべく低くすることを重視する場合(以下、Ron重視と表現する)には、短絡時破壊時間Tpは3μsec以上が好ましい。
【0082】
GaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1は、種々の値であり得、例えば250A、300A、350Aであってよいし、もちろんそれ以外の電流値となっていてもよい。ここでは、以下に、本実施の形態の複合型半導体装置10における、負荷短絡時に複合型半導体装置10を流れるドレイン電流Idの制限作用の一例として、GaN−FETQ1に印加されている電圧が400V、GaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合について説明する。
【0083】
図5に示すように、上記耐量重視の場合、すなわち短絡時破壊時間Tpが5μsec以上の場合には、上記数式(6)及び最大ドレイン電流Idmaxが180Aより、以下の数式(8)の関係を満たせばよい。
【0084】
【数4】
【0085】
ここで、上記の数式(8)から明らかなように、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2と、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1とはトレードオフの関係となっている。例えば、|VTHQ1|=6VのときRonQ2≧9.4mΩであればよく、|VTHQ1|=10VのときRonQ2≧15.6mΩであればよく、|VTHQ1|=20VのときRonQ2≧31,2mΩであればよい。
【0086】
一方で、上記Ron重視の場合、すなわち短絡時破壊時間Tpが3μsec以上の場合には、上記数式(6)の最大ドレイン電流Idmaxが230Aより、以下の数式(9)の関係を満たせばよい。
【0087】
【数5】
【0088】
ここで、例えば、|VTHQ1|=6VのときRonQ2≧2.1mΩであればよく、|VTHQ1|=10VのときRonQ2≧3.5mΩであればよく、|VTHQ1|=20VのときRonQ2≧7.0mΩであればよい。
【0089】
上記の関係において、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1は、|VTHQ1|≦20Vを満たすことが好ましい。これによりSi−FETQ2のオン抵抗RonQ2をあまり大きくする必要がない。
【0090】
また、GaN−FETQ1の低オン抵抗のメリットを活かすためには、複合型半導体装置10全体のオン抵抗Ronはなるべく小さくすることが求められる。そのため、複合型半導体装置10全体のオン抵抗Ronは、60mΩ以下であることが好ましい。
【0091】
それゆえ、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1は、|VTHQ1|≦10Vとなっていることが好ましい。ここで、本実施の形態では、例えばGaN−FETQ1のオン抵抗RonQ1は略31mΩとなっている。
【0092】
上記オン抵抗重視の場合において、上記関係式より、RonQ2≧3.5mΩであればよく、このときRon≧35mΩとなる。
【0093】
上記短絡重視の場合において、上記関係式より、RonQ2≧15.6mΩであればよく、このときRon≧47mΩとなる。ここで、|VTHQ1|=20Vの場合には、RonQ2≧31.2mΩ、Ron≧63mΩとなってしまう。
【0094】
なお、上述のように、ここでは、GaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合について、一例として説明した。しかし、このGaN−FETQ1における過電流時の最大ドレイン電流Idmax1の電流値としては、例えば300Aでもよく、350Aでもよく、それ以外の電流値であってもよい。それらの場合にそれぞれにおいて、図6のような関係を求めることができ、それに基づいて所望の短絡時破壊時間となる最大ドレイン電流Idmaxを求めることができる。そして、本実施の形態の複合型半導体装置10は、上記関係式(6)の関係を満たすような、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2及びGaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1となっている。
【0095】
上述のようなオン抵抗Ronの制御は、例えばドリフト抵抗を大きくする、ジャンクション抵抗を大きくする等によって行うことができ、その他の方法を用いて行ってもよい。
【0096】
また、従来のSi−FETとしては、低オン抵抗とするためにスーパージャンクション型のMOSFETが用いられ得る。これに対して、本実施の形態におけるSi−FETQ2としては、低オン抵抗を追求しないために、プレーナ型やトレンチ型のSiMOSFETを用いればよく、製造コストを低くできる。
【0097】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
前記実施の形態1では、ノーマリオン型GaN−FETQ1とノーマリオフ型Si−FETQ2とを備え、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2によってGaN−FETQ1の最大ドレイン電流を制限する複合型半導体装置10の回路構成について説明した。本実施の形態では、前記GaN−FETQ1と前記Si−FETQ2とが、一つのTO(Transistor Outline)タイプのパッケージ内に実装されている複合型半導体装置の具体的構成について説明する。
【0099】
本実施の形態の複合型半導体装置100について、図7に基づいて説明する。図7の(a)は、本実施の形態に係る複合型半導体装置の具体的な構成を示す上面図であり、(b)は、側面図である。
【0100】
本実施の形態に係る複合型半導体装置100は、図7の(a)に示すように、ノーマリオン型の電界効果トランジスタ101(以下、単にトランジスタ101と呼ぶ)、ノーマリオフ型の電界効果トランジスタ102(以下、単にトランジスタ102と呼ぶ)、第1の端子103(ドレイン端子)、第2の端子104(ゲート端子)、複合型半導体装置100のソース端子として機能するダイパッド106、および封止部材107を備えている。トランジスタ101は、例えばGaN−FETQ1からなり、トランジスタ102よりも高い耐圧を有している。トランジスタ102は、例えばSi−FETQ2である。ダイパッド106は、導電性を有する材料から形成されていればよく、その他の条件には限定されない。また、封止部材107は、例えば樹脂によって形成されている。
【0101】
複合型半導体装置100は、図7の(a)に示すように、トランジスタ101とトランジスタ102とがカスコード接続されている。トランジスタ101及びトランジスタ102は、ダイパッド106上に配置されている。また、トランジスタ101およびトランジスタ102は、封止部材107によって封止されている。
【0102】
ダイパッド106、トランジスタ101、及びトランジスタ102は、図7の(b)に示すように、それぞれ第1の主面と第2の主面とを有している。以下では、トランジスタ101の上面および下面を、それぞれ、第1の主面S1および第2の主面S4と呼ぶ。トランジスタ102の上面および下面を、それぞれ、第1の主面S2および第2の主面S5と呼ぶ。ダイパッド106の上面および下面を、それぞれ、第1の主面S3および第2の主面S6と呼ぶ。
【0103】
図7の(a)及び(b)に示すように、トランジスタ101は横型構造であり、第1の主面S1上に、ゲート電極110、ドレイン電極111、およびソース電極112が配置されている。そして、第2の主面S4には電極が形成されていない。尚、放熱を考慮して第2の主面S4に電極を形成し、この電極に対して半田を用いた実装が行われた構成であってもよい。
【0104】
トランジスタ102は横型構造であって、ソース電極を裏面電極としており、外見上は縦型構造となっている。または、トランジスタ102は、縦型構造である。そして、第1の主面S2上に、ゲート電極120およびドレイン電極121が配置されている。また、トランジスタ102の第2の主面S5上に、図示していないがソース電極122が配置されている。ソース電極122は、トランジスタ102の裏面全体がソース電極122となっていても、該裏面の一部がソース電極122となっていても、本発明の趣旨には反しない。
【0105】
ダイパッド106の第1の主面S3の一部は、複合型半導体装置100の第3の端子105を兼ねている。
【0106】
トランジスタ101の第1の主面S1上に配置されたソース電極112と、トランジスタ102の第1の主面S2上に配置されたドレイン電極121とは、導電体113によって電気的に接続されている。トランジスタ101の第1の主面S1上に配置されたドレイン電極111と、第1の端子103とは、導電体114によって電気的に接続されている。
【0107】
トランジスタ102の第1の主面S2上に配置されたゲート電極120と、第2の端子104とは、導電部材116によって電気的に接続されている。トランジスタ101の第1の主面S1上に配置されたゲート電極110と、ダイパッド106の第1の主面S3とは、導電部材115によって電気的に接続されている。また、トランジスタ102の第2の主面S5上に配置されたソース電極122と、ダイパッド106の第1の主面S3とが、電気的に接続されている。
【0108】
複合型半導体装置100では、図7の(b)に示すように、ダイパッド106の第1の主面S3と、トランジスタ102の第2の主面S5とが対向して接している。また、ダイパッド106の第1の主面S3と、トランジスタ101の第2の主面S4とが対向して接している。
【0109】
トランジスタ101の第2の主面S4は、ダイパッド106の第1の主面S3上に、熱伝導性のダイボンド材を用いてダイボンドされている。ダイボンド材が熱伝導性を有していることにより、トランジスタ101で発生した熱を、ダイパッド106へ放熱することができる。尚、トランジスタ101とダイパッド106とが電気的に接続される必要がないので、ダイボンド材は、導電性を有していなくともよい。トランジスタ102の第2の主面S5は、ダイパッド106の第1の主面S3上に、はんだ等によってダイボンドされている。はんだは、トランジスタ102をダイパッド106にダイボンドする機能と共に、トランジスタ102とダイパッド106とを電気的に接続する機能を有する。尚、はんだの代わりに、ダイボンド性能の高い導電性ペーストを用いてもよい。
【0110】
本実施の形態に係る複合型半導体装置100によれば、同一のリードフレームにGaN−FETQ1(トランジスタ101)とSi−FETQ2(トランジスタ102)とが配置される。そして、このトランジスタ101のゲート電極110は、トランジスタ102のソース電極122及び第3の端子105と接続し、同電位となっている。
【0111】
そのため、複合型半導体装置100の第3の端子105に負荷が接続され、Si−FETQ2がオンであって、ドレイン電流Idが流れている場合において、負荷短絡時には、GaN−FETQ1のゲート電圧として、Si−FETQ2のドレイン−ソース電圧の逆電圧が印加される。ここで、本実施の形態に係る複合型半導体装置100では、Si−FETQ2のオン抵抗RonQ2が高くなっていることにより、GaN−FETQ1に流れる最大ドレイン電流は、GaN−FETQ1の破壊を防ぐ程度にまで制限される。または、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が低くなっていることによって、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1と閾値電圧VTHQ1との差が小さくなり、最大ドレイン電流Idmaxが制限される。
【0112】
従って、低オン抵抗であって、かつ負荷短絡時の耐性の高い複合型半導体装置を得ることできる。
【0113】
本実施の形態の複合型半導体装置100は、ダイパッド106がソース端子として機能しており、トランジスタ101および102の両方がソースフレームであるダイパッド106に実装された構成となっている。
【0114】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態について図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0115】
前記実施の形態2では、前記GaN−FETQ1と前記Si−FETQ2とが、一つのTOタイプのパッケージ内に実装されている複合型半導体装置100の具体的構成について説明した。本実施の形態では、前記複合型半導体装置100を応用した、インバータ・ブリッジ回路200について説明する。
【0116】
本実施の形態のインバータ・ブリッジ回路200について、図8に基づいて説明する。図8は、本実施の形態に係る複合型半導体装置100の、インバータ・ブリッジ回路200に応用した具体的な構成を示す回路図である。
【0117】
本実施の形態に係るインバータ・ブリッジ回路200は、図8に示すように、正の電位を有する正電極Pと、正電極Pよりも低い電位を有する負電極Nと、正電極Pと負電極Nとの間に接続された4つのカスコードGaNトランジスタT1〜T4と、カスコードGaNトランジスタT1〜T4に接続する負荷201と、負荷201に接続する2つのコイルL1及びL2とを有している。
【0118】
上記カスコードGaNトランジスタT1〜T4には、上記複合型半導体装置100を用いている。すなわち、各カスコードGaNトランジスタT1〜T4の内部では、GaN−FETQ1とSi−FETQ2とがカスコード構成になっている。各カスコードGaNトランジスタT1〜T4のSi−FETQ2のゲート電圧は、図示しない制御装置によって制御され、それにより各カスコードGaNトランジスタT1〜T4のオン、オフが制御される。
【0119】
負荷201は、コイルL1を介してカスコードGaNトランジスタT1及びT2と接続されており、コイルL2を介してカスコードGaNトランジスタT3及びT4と接続されている。また、正電極PはカスコードGaNトランジスタT1及びT3と接続されており、負電極NはカスコードGaNトランジスタT2及びT4と接続されている。
【0120】
インバータ・ブリッジ回路200は、各カスコードGaNトランジスタT1〜T4を制御することにより、直流を交流に変換する。このようなインバータ・ブリッジ回路200においては、過度の負荷や誤動作等による負荷短絡時に、耐量が要望される。
【0121】
本実施の形態のインバータ・ブリッジ回路200は、各カスコードGaNトランジスタT1〜T4に複合型半導体装置100を用いていることによって、負荷短絡に対する耐性が高いものとなっている。
【0122】
すなわち、インバータ・ブリッジ回路200の負荷短絡時に、各カスコードGaNトランジスタT1〜T4のうちオンとなっているカスコードGaNトランジスタにおいて、高いVdsが印加され、ドレイン電流Idは飽和領域に達する。このとき、各カスコードGaNトランジスタT1〜T4を構成するSi−FETQ2のオン抵抗が高くなっていることによって、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1が低下し、それに伴って、最大ドレイン電流Idmaxが制限される。または、GaN−FETQ1の閾値電圧VTHQ1の絶対値が低くなっていることによって、GaN−FETQ1のゲート電圧VgsQ1と閾値電圧VTHQ1との差が小さくなり、最大ドレイン電流Idmaxが制限される。
【0123】
これにより、過電流が流れることによるGaN−FETQ1の破壊を防止することができる。
【0124】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る複合型半導体装置は、互いにカスコード接続されたノーマリオン型の第1FET(GaN−FETQ1)及びノーマリオフ型の第2FET(Si−FETQ2)を備えている複合型半導体装置において、前記第1FETのドレインに印加されている電圧が400Vである場合、前記複合型半導体装置に接続された負荷の短絡が開始したタイミングからの経過時間を短絡後経過時間Tとし、前記第2FETのオン抵抗の値をRonQ2、前記第1FETの閾値電圧をVTHQ1、前記第1FETのゲート電圧が0Vのときの、前記第1FETの飽和状態における前記第1FETのドレイン電流をIdmax1とし、短絡後経過時間T≧2μsecの間、前記第1FETの破壊を防ぐ程度に制限したドレイン電流をIdmaxとするときに以下の式の関係を満たす。
【0125】
【数6】
【0126】
上記の構成によれば、第2FETのオン抵抗、及び第1FETの閾値電圧が上記の関係式を満たすようになっている。このため、第2FETのオン抵抗が少し高くなっており、複合型半導体装置に接続された負荷が短絡した場合に、第2FETにおける電圧降下がより大きくなり、この電圧降下に対応する逆電圧が第1FETにゲート電圧として印加され、第1FETの最大ドレイン電流を制限することができる。または、第1FETの閾値電圧の絶対値が少し低くなっており、複合型半導体装置に接続された負荷が短絡した場合に、第1FETのゲート電圧と第1FETの閾値電圧との差が小さいために、第1FETの最大ドレイン電流を制限することができる。これにより、負荷短絡時に、短絡後経過時間Tが少なくとも2μsecの間、第1FETの破壊を防ぐことができる。また、第2FETのオン抵抗が少し高いとしても、複合型半導体装置の全体のオン抵抗は、複合型半導体装置における低オン抵抗による利点を損なうほどに高くする必要はない。従って、低オン抵抗であって、かつ負荷短絡時の耐性の高い複合型半導体装置を提供することが可能となる。
【0127】
本発明の態様2に係る複合型半導体装置は、上記態様1において、以下の式を満たす。
【0128】
【数7】
【0129】
上記の構成によれば、上記態様1において、ある最大ドレイン電流Idmaxが流れたときに、負荷の短絡後第1FETが破壊されるまでの時間を短絡時破壊時間Tpとすると、第1FETの過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合に、最大ドレイン電流Idmaxを230Aよりも小さくすることができ、短絡時破壊時間Tpを3μsec以上とすることができる。
【0130】
本発明の態様3に係る複合型半導体装置は、上記態様1において、以下の式を満たす。
【0131】
【数8】
【0132】
上記の構成によれば、上記態様1において、第1FETの過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合に、最大ドレイン電流Idmaxを180Aよりも小さくすることができ、短絡時破壊時間Tpを5μsec以上とすることができる。
【0133】
本発明の態様4に係る複合型半導体装置は、上記態様1〜3のいずれかにおいて、|VTHQ1|≦20Vを満たす。
【0134】
上記の構成によれば、上記の関係式を満たすための第2FETのオン抵抗RonQ2が大きくなりすぎる必要がない。
【0135】
本発明の態様5に係る複合型半導体装置は、上記態様4において、前記オン抵抗の値RonQ2は、7.0mΩ以上である。
【0136】
上記の構成によれば、第1FETの過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合に、短絡時破壊時間Tpを3μsec以上とすることができる。
【0137】
本発明の態様6に係る複合型半導体装置は、上記態様4において、前記オン抵抗の値RonQ2は、31.2mΩ以上である。
【0138】
上記の構成によれば、第1FETの過電流時の最大ドレイン電流Idmax1=250Aの場合に、短絡時破壊時間Tpを5μsec以上とすることができる。
【0139】
本発明の態様7に係る複合型半導体装置は、上記態様1〜3のいずれかにおいて、前記閾値電圧VTHQ1は、|VTHQ1|≦10Vを満たす。
【0140】
上記の構成によれば、第2FETのオン抵抗RonQ2が大きくなりすぎる必要がない。そのため、複合型半導体装置全体のオン抵抗を60mΩ以下とすることが容易である。
【0141】
本発明の態様8に係る複合型半導体装置は、上記態様7において、前記オン抵抗の値RonQ2は、3.5mΩ以上である。
【0142】
上記の構成によれば、GaN−FETQ1のオン抵抗RonQ1が略31mΩの場合に、Ron≧35mΩで、短絡時破壊時間Tpを3μsec以上とすることができる。
【0143】
本発明の態様9に係る複合型半導体装置は、上記態様7において、前記オン抵抗の値RonQ2は、15.6mΩ以上である。
【0144】
上記の構成によれば、GaN−FETQ1のオン抵抗RonQ1が略31mΩの場合に、Ron≧47mΩで、短絡時破壊時間Tpを5μsec以上とすることができる。
【0145】
本発明の態様10に係る複合型半導体装置は、上記態様1〜9のいずれかにおいて、前記第2FETは、絶縁ゲート型FET又はショットキーゲート型FETによって形成されていてもよい。
【0146】
上記の構成によれば、第2FETは、複合型半導体装置として求める特性に応じて、適宜適当なFETを選択すればよく、これにより、複合型半導体装置の設計における制限が少なくなる。
【0147】
本発明の態様11に係る複合型半導体装置は、上記態様1〜10のいずれかにおいて、前記第1FETは、窒化ガリウム半導体によって形成されていてもよい。
【0148】
上記の構成によれば、高絶縁耐圧、高温動作及びヘテロ接合による低オン抵抗を比較的容易に実現できる。したがって、第2FETのオン抵抗が少し高いとしても、複合型半導体装置の全体のオン抵抗はあまり大きくならない。
【0149】
本発明の態様12に係る複合型半導体装置は、上記態様1〜11のいずれかにおいて、前記第1FET及び前記第2FETが一つのパッケージ内に実装されていてもよい。
【0150】
上記の構成によれば、コンパクトな複合型半導体装置を提供することができる。
【0151】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、ノーマリオン型第1電界効果トランジスタ(FET)とノーマリオフ型第2FETとがカスコード接続されてなる複合型半導体装置に利用することができる。特に、本発明は、GaN−FETとSi−FETとがカスコード接続されてなる複合型半導体装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 電圧源
2 制御回路
3 負荷
10、100 複合型半導体装置
Id ドレイン電流
Q1 GaN−FET(第1FET)
Q2 Si−FET(第2FET)
Ron 複合型半導体装置全体のオン抵抗
RonQ1 GaN−FETのオン抵抗
RonQ2 Si−FETのオン抵抗
VTHQ1、VTHQ2 閾値電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8