(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408154
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】7000−シリーズアルミニウム合金シート材料を連続的に加熱処理する方法
(51)【国際特許分類】
C22F 1/053 20060101AFI20181004BHJP
F27B 9/10 20060101ALI20181004BHJP
F27B 9/12 20060101ALI20181004BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20181004BHJP
C22C 21/10 20060101ALN20181004BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
C22F1/053
F27B9/10
F27B9/12
F27D11/06 Z
!C22C21/10
!C22F1/00 604
!C22F1/00 623
!C22F1/00 630K
!C22F1/00 640A
!C22F1/00 631Z
!C22F1/00 651B
!C22F1/00 682
!C22F1/00 691A
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 692A
!C22F1/00 692B
!C22F1/00 691C
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-527767(P2017-527767)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2018-501401(P2018-501401A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015077050
(87)【国際公開番号】WO2016091550
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】14197428.7
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508319532
【氏名又は名称】アレリス、アルミナム、デュッフェル、ベスローテン、フェンノートシャップ、メット、ベペルクテ、アーンスプラケレイクヘイト
【氏名又は名称原語表記】ALERIS ALMINUM DUFFEL BVBA
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】スニル、コースラ
【審査官】
河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−099421(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/053657(WO,A1)
【文献】
特開平09−241811(JP,A)
【文献】
特開2014−062285(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0217813(US,A1)
【文献】
特開平07−197215(JP,A)
【文献】
特開2009−129695(JP,A)
【文献】
特開2000−212673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22F 1/00 − 3/02
C22C 21/10
F27B 9/10
F27B 9/12
F27D 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非コイル状の熱処理可能な7000−シリーズアルミニウム合金シートをその長さの方向に、370℃〜560℃の温度範囲の設定溶体化熱処理温度(TSET)に移動中のアルミニウムシートを加熱するように配置された連続熱処理炉を通して連続的に移動させることによって、アルミニウム合金シートを連続的に焼なましする方法であって、
前記連続熱処理炉は、入口部および出口部を有し、
前記移動中のアルミニウムシートは、前記連続熱処理炉を通して実質的に水平に移動し、
前記連続熱処理炉は、対流加熱手段によって加熱され、
前記移動中のアルミニウムシートは、前記出口部を出る際にTSETから100℃未満に急速に冷却され、
前記連続熱処理炉の入口部の前またはその近くで、前記移動中のアルミニウムシートが、少なくともY=−31.ln(X)+50(式中、Yは℃/秒の昇温速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての平均昇温速度を用いて、前記TSETより5℃〜100℃低い温度に予熱され、かつ
最終ゲージでの前記アルミニウム合金シートが、0.3〜4.5mmの範囲の厚さを有する、方法。
【請求項2】
前記連続熱処理炉の入口部の、前またはその地点で、前記移動中のアルミニウムシートが、少なくともY=−50.ln(X)+80(式中、Yは℃/秒の昇温速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての平均昇温速度を用いて、前記TSETより5℃〜100℃低い温度に予熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連続熱処理炉の入口部の、前またはその地点で、前記移動中のアルミニウムシートが、少なくともY=−62.ln(X)+100(式中、Yは℃/秒の昇温速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての平均昇温速度を用いて、前記TSETより5℃〜100℃低い温度に予熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記予熱が、誘導加熱によって誘導的に行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予熱が、トランスバース方式の誘導加熱装置によって誘導的に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記移動中のアルミニウムシートが、前記連続熱処理炉を通して、少なくとも20メートルの長さにわたって、実質的に水平に移動する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移動中のアルミニウムシートが、前記連続熱処理炉を通して、少なくとも40メートルの長さにわたって、実質的に水平に移動する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TSETでの前記移動中のアルミニウムシートの均熱時間が、少なくとも1秒である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
TSETでの前記移動中のアルミニウムシートの均熱時間が、少なくとも5秒である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記移動中のアルミニウムシートが、前記TSETより5℃〜75℃低い温度に予熱される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Znを、2.0重量%〜10.0重量%の範囲で有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Znを、3.0重量%〜9.0重量%の範囲で有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Mgを、1.0重量%〜3.0重量%の範囲で有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Cuを、<0.25重量%の範囲で有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Cuを、0.25重量%〜3.5重量%の範囲で有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、さらに以下
Fe<0.5重量%、
Si<0.5重量%、および
以下からなる群から選択される1以上の元素
Zr 最大0.5重量%、
Ti 最大0.3重量%、
Cr 最大0.4重量%、
Sc 最大0.5重量%、
Hf 最大0.3重量%、
Mn 最大0.4重量%、
V 最大0.4重量%、
Ge 最大0.4重量%、
Ag 最大0.5重量%、
を含んでなり、残余はアルミニウムと不純物である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Fe<0.35重量%をさらに含んでなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、Si<0.4重量%をさらに含んでなる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記7000−シリーズアルミニウムシートが、溶体化熱処理および冷却後に、等軸再結晶化微細構造を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
非コイル状のアルミニウム合金シートを、その長さの方向に、370℃〜560℃の温度範囲の設定溶体化熱処理温度または溶体化温度に、移動中のアルミニウムシートを加熱するように配置された連続熱処理炉を通して連続的に移動させることによって、アルミニウムAA7000−シリーズ合金シートを連続的に溶体化熱処理する方法。
【背景技術】
【0002】
以下に本明細書で理解されるように、特に断りのない限り、アルミニウム合金記号および質別記号は、2014年にアルミニウム協会によって発行され、たびたび更新され、当業者には周知である、アルミニウム規格およびデータならびにティールシート登録記録シリーズにおけるアルミニウム協会の記号を意味する。特に断りのない限り、任意の合金組成物または好ましい合金において、全ては重量パーセントによるパーセントを意味する。
【0003】
7000−シリーズアルミニウム合金は、アルミニウム以外の優勢を占める合金成分として亜鉛を含むアルミニウム合金である。本出願の目的において、7000−シリーズアルミニウム合金は、少なくとも2.0%Zn、最大で10%Znを有するアルミニウム合金であり、亜鉛がアルミニウム以外の優勢を占める合金の元素である。
【0004】
自動車の製造において、特に、アルミニウム合金AA5000−およびAA6000−シリーズの合金(例えば5051、5182、5454、5754、6009、6016、6022、および6111並びにその他のもの)が自動車の構造部分およびホワイトボディ(「BIW」)部分を製造するのに使用されてきた。
【0005】
特に塗装焼付サイクルに付された後の増加した強度において、形成可能である合金の使用の要求がある。さらに、そのような部分に通常要求される特性には、成形操作(典型的にはスタンピング、深絞り、またはロール成形)のための高成形性、部分の重量を最小化するダウンゲージを可能にする塗装焼付後の高機械的強度、スポット溶接、レーザー溶接、レーザーろう付け、クリンチングまたはリベット打ちなどの自動車製造において使用されるさまざまな組立方法における良好な挙動、および大量生産で容認できるコストが挙げられる。
【0006】
高い強度と相まってアルミニウム合金の比較的軽量なことを利点として7000−シリーズアルミニウム合金製品の自動車向けまたはその他の用途(例えば、鉄道車両や船)への使用の関心が高まっている。例えば、国際特許出願WO2010/049445−A1(Aleris)は、重量%で、Zn5.0〜7.0%、Mg1.5〜2.3%、Cu最大0.20%、Zr0.05〜0.25%、所望によりMnおよび/またはCr、Ti最大0.15%、Fe最大0.4%、Si最大0.3%からなる組成を有し、残余は不純物とアルミニウムで構成されている、アルミニウム合金シートから作られた自動車構造部品について開示している。そのシート製品は、溶体化熱処理(「SHT」)され、冷却され、人工的に時効処理され、時効後あらかじめ決められた形状の自動車構造部品を得るために成形操作で成形され、そして、引き続き、1以上の他の金属部分と組み立てられ自動車部品を組み立て形成し、そして塗装焼付サイクルに付される。
【0007】
圧延形状の7000−シリーズアルミニウム合金製品を製造するための従来の方法は、7000−シリーズアルミニウム合金体はキャストであり、その後均質化され、そして中間ゲージに圧延される処理ステップを含む。次に、7000−シリーズアルミニウム合金体は、冷間圧延され、その後溶体化熱処理され、水焼入れまたは水スプレー焼入れのような水によって焼入れられる。「溶体化熱処理および焼入れ」等(一般に「溶体化」と呼ばれる)は、アルミニウム合金体を適切な温度(一般にソルバス温度より上)に加熱し、可溶な元素が固溶体になるのに十分長い間、その温度で保持し、固溶体に元素を保つために十分急速に冷却することを意味する。適切な温度は、合金に依存するが、通常、約430℃〜560℃の範囲である。高温で形成された固溶体は、粗く、非整合な粒子としての溶体化原子の析出を制限するために十分急速に冷却することによって過飽和状態に保たれていてよい。溶体化後、7000−シリーズアルミニウム合金体は、所望により、平坦化のために少しの程度(例えば、約1〜5%)延伸され、熱的に処理され(例えば、自然時効または人工的な時効)、そして所望により最終処理(例えば、成形操作、自動車用途の場合に、塗装焼付サイクル)に付されてもよい。
【0008】
溶体化熱処理は、バッチプロセスまたは連続プロセスとして行われうる。経済的に魅力的な方法で工業規模で7000−シリーズアルミニウム合金シート材料を製造するために、シート材料が連続熱処理炉を通過する間、十分早いライン速度が保たれることが求められる。しかしながら、早すぎるライン速度は、必要な溶体化熱処理温度でのストリップ材料の均熱時間の影響を及ぼすかもしれず、それによってアルミニウムストリップの機械的特性に影響する。一方、遅すぎるライン速度は、HTOD(高温酸化劣化)のような劣化の特徴を引き起こすかもしれない。
【0009】
従って、微細等軸結晶粒を示し、実質的に二次相粒子を含まない7000−シリーズ合金製品を製造するニーズがある。
【0010】
本発明の目的は、良好な機械的性質と組み合わせて微細等軸結晶粒を有する7000−シリーズアルミニウム合金シートを連続的に熱処理するための方法を提供することである。
【0011】
非コイル状の熱処理可能な7000−シリーズアルミニウム合金シートをその長さの方向に、約370℃〜560℃の温度範囲の設定溶体化熱処理温度(T
SET)に移動中のアルミニウムシートを加熱するように配置された連続熱処理炉を通して連続的に移動させる方法を提供する本発明によって、この目的および他の目的およびさらなる利点を満たしまたはそれを超え、前記連続熱処理炉は入口部および出口部を有し、前記移動中のアルミニウムシートは前記連続熱処理炉を通して実質的に水平に移動し、前記連続熱処理炉は、対流加熱手段によって加熱され、かつ前記移動中のアルミニウムシートは、前記出口部を出た後に、T
SETから約100℃未満に、急速に冷却され、かつ前記連続熱処理炉の入口部の直前またはその近くで、前記移動中のアルミニウムシートは、少なくともY=−31.ln(X)+50(式中、Yは℃/秒の平均昇温速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての平均昇温速度を用いて、前記T
SETより約5℃〜100℃
低い温度に予熱される。
【0012】
本発明による方法は、連続熱処理炉における潜在的により高いライン速度のおかげで、より経済的な処理経路を提供するものである。その他の利点は、得られたシート製品がその他成形性、曲げ性および延性を強化する、より好ましい微細構造を備えている。ある合金は、また衝突性能を向上させていることがわかってきた。得られたシート製品は、また、SCCに対する耐性を改善させてきた。高い昇温速度は、溶体化熱処理温度に緩やかに加熱する際に時折見られうる効果を避ける。つまり緩やかな加熱が粒子を粗大化させ、それゆえシート製品における好ましい特性を達成するために再度溶解させるためのより多くの均熱時間を必要とする。
【0013】
実施形態において、本発明による溶体化熱処理ステップおよび急速冷却後の7000−シリーズアルミニウム合金シート製品は、優れた等軸再結晶化微細化構造を有する。再結晶化微細構造に関して、70%以上、より好ましくは約85%以上の結晶粒がこの状況において再結晶化されていることを意味する。1つの形態において、微細等軸結晶粒は、35ミクロン以下の平均結晶粒サイズを有する。好ましい形態において、微細等軸結晶粒は、平均30ミクロン以下、より好ましくは25ミクロン以下を有する。結晶粒サイズは、当業者に知られているリニアインターセプト法(linear intercept method)によって決定され、L−ST方向の中心(位置T/2)でシート製品から採取されるサンプルで測定される。結晶粒サイズが小さい方が好ましいが、実用的には、平均結晶粒サイズが2ミクロンより大きい、典型的には5ミクロンより大きいことを意味する。
【0014】
好ましい実施形態において、移動中のアルミニウムシートは、周囲温度から、T
SETより最大75℃
低い範囲の温度に、より好ましくは、T
SETより最大60℃
低い範囲の温度に、非常に急速に予熱される。ある実施形態では、移動中のアルミニウムシートは、周囲温度からT
SETより最大約10℃
低い温度に、より好ましくはT
SETより最大約5℃
低い温度に、非常に急速に予熱される。
【0015】
様々な対流加熱手段、例えば抵抗加熱、を適用することができるが、連続焼鈍炉は、好ましくは、複数の空気循環装置を備えたガス燃焼装置を使用する対流加熱によって加熱され、最新式の炉は、+/−3℃以上の制御精度で設定溶体化熱処理温度を制御するための温度制御手段を有する。
【0016】
実施形態において、アルミニウム合金シートは、誘導加熱によって、さらにはトランスバース方式の誘導加熱装置によって誘導的に予熱されている。これは、移動中のアルミニウムシートが連続熱処理炉内で対流加熱によってT
SOAKにさらに加熱される前に、常に急速な予熱を可能にする。
【0017】
実施形態において、予熱は、少なくともY=−50.ln(X)+80(式中、Yは℃/秒の平均冷却速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての平均昇温速度を用いるものである。好ましくは、少なくともY=−62.ln(X)+100のシート厚の関数としての平均昇温速度である。より好ましくは、少なくともY=−93.ln(X)+150のシート厚の関数である。より高い昇温速度は、得られるアルミニウムシートの様々な特性に有益であり、また、シート特性と許容可能なライン速度増加のバランスのためにも有利である。
【0018】
実施形態において、最終ゲージのアルミニウム合金シートは、0.3〜4.5mmの範囲、より好ましくは、0.7〜4.5mmの範囲の厚さを有する。そのシート幅は、典型的には、約700〜2700mmの範囲である。
【0019】
実施形態において、移動中のアルミニウムシートは、連続熱処理炉を通して、少なくとも約20メートル、好ましくは、少なくとも40メートル、より好ましくは、少なくとも約55メートルの長さにわたって、実質的に水平に移動する。実用的な最大長さは約125メートルであるが、本発明はこの最大長さに限定されるものではない。
【0020】
実施形態において、T
SETでの移動中のアルミニウムシートの均熱時間は、少なくとも1秒、好ましくは、少なくとも5秒である。さらなる実施形態において、T
SETでの移動中のアルミニウムシートの均熱時間は、少なくとも20秒、より好ましくは少なくとも25秒である。均熱時間(t
SOAK)は、設定溶体化熱処理温度または設定均熱温度(T
SOAK)±5℃で費やされた時間で定義される。例えば、T
SOAKが510℃である場合、それは移動中のアルミニウムシートが510±5℃の温度にある時間に関するものである。
【0021】
前記方法のさらなる実施形態において、焼入れされた移動中のアルミニウムシートは、テンションレベリングによって、最大約2%、典型的には、約0.1%〜0.5%の範囲で延伸される。
【0022】
SHTや焼入れに続き、アルミニウムシート製品は、従来知られているようにあらかじめ決められた形状を有する部品(例えば、自動車の成形されたBIW部分)に成形されうる。成形操作の前に、シートは、成形操作、組み立て、および製造される構造部分の表面処理に適した、潤滑剤、油または乾式潤滑剤で被覆されてもよい。アルミニウムシートは、また、表面パッシベーション層に適用し、接着結合特性を向上させるために処理されていてもよい。
【0023】
本発明による方法は、アルミニウム以外の優勢を占める合金元素として約2.0%〜10%の範囲のZnを有する幅広い範囲の7000−シリーズに適用されうる。
【0024】
実施形態において、7000アルミニウム合金は、例えば少なくとも3.0%Znを含む。他の実施形態において、7000アルミニウム合金は、少なくとも4.0%Znを含む。さらに他の実施形態において、7000アルミニウム合金体は、少なくとも5.0%Znを含む。実施形態において、7000アルミニウム合金は、Znを9.0%より多くは含まない。
【0025】
7000アルミニウム合金は、副次的な元素を含んでよい。副次的な元素は、マグネシウム、銅、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態において、7000アルミニウム合金はマグネシウムを含む。その他の実施形態において、7000アルミニウム合金は銅を含む。さらに他の実施形態において、7000アルミニウム合金は、マグネシウムと銅の両方を含む。
【0026】
マグネシウムが使用される場合に、7000アルミニウム合金は、少なくとも0.5%Mgを含む。実施形態において、7000アルミニウム合金は、少なくとも1.0%Mgを含む。7000アルミニウム合金は、一般に、5.0%Mgより多くは含まない。実施形態において、7000アルミニウム合金は、4.0%Mgより多くは含まない。その他の実施形態において、7000アルミニウム合金は、3.0%Mgより多くは含まない。その他の実施形態において、マグネシウムは不純物として存在していてよく、これらの実施形態において、0.25%以下の濃度で存在する。
【0027】
銅が使用される場合に、7000アルミニウム合金は、一般に、少なくとも0.25%Cuを含む。実施形態において、7000アルミニウム合金は、0.5%Cuを含む。さらに他の実施形態において、7000アルミニウム合金は、少なくとも1.0%Cuを含む。7xxxアルミニウム合金は、一般に、5.0%Cuより多くは含まない。実施形態において、7000アルミニウム合金は、4.0%Cuより多くは含まない、または3.5%Cuより多くは含まない。実施形態において、7000アルミニウム合金は、3.0%Cuより多くは含まない。7000−シリーズ合金は意図的にCuが添加されるため、溶体化熱処理温度は少なくとも400℃であるべきである。好ましい最低温度は450℃であり、より好ましくは460℃であり、さらに好ましくは470℃である。溶体化熱処理温度は560℃を超えるべきではない。好ましい最大温度は530℃であり、より好ましくは520℃を超えないことである。
【0028】
他の実施形態において、銅は不純物として存在し、これらの実施形態において、0.25%より低い濃度で存在する。実施形態において、7000アルミニウム合金は、0.10%Cuより多くは含まない。7000−シリーズ合金はCuを意図的に添加しないため、溶体化熱処理温度は、少なくとも370℃である。好ましい最低温度は400℃であり、より好ましくは430℃、さらに好ましくは470℃である。溶体化熱処理温度は、560℃を超えるべきではない。好ましい最大温度は、545℃であり、より好ましくは530℃を超えないことである。
【0029】
7000−シリーズアルミニウム合金は、さらに重量%で以下を含んでいてもよい。
Fe<0.5%、好ましくは<0.35%、より好ましくは<0.3%、
Si<0.5%、好ましくは<0.4%、より好ましくは<0.3%、かつ
以下からなる群から選択される1以上の元素
Zr最大0.5%、好ましくは0.03〜0.40%、
Ti最大0.3%、
Cr最大0.4%、
Sc最大0.5%、
Hf最大0.3%、
Mn最大0.4%、好ましくは<0.3%、
V最大0.4%、
Ge最大0.4%、
Ag最大0.5%、
そして、合金は所望により最大で
約0.05%Ca、
約0.05%Sr、
約0.004%Be、
を含み、
残余がアルミニウムと不純物である。典型的には、そのような不純物は、それぞれ<0.05%、合計<0.15%である。
【0030】
合金におけるFeの含有は、0.5%より少なく、好ましくは0.35%より少なく、さらに好ましくは0.25%より少なくあるべきである。合金製品が航空用途に使用される場合に、特に十分に高いレベルでの硬度を維持するために、この範囲の下端は、少なくとも約0.08%であり、より好ましくは約0.05%である。合金製品が自動車用途に使用される場合に、いくぶん高いFeの含有に耐えうる。合金のSiの含有は、0.5%より低く、好ましくは0.4%より少なく、さらに好ましくは0.3%より少なくあるべきである。合金製品が航空用途に使用される場合に、特に十分高いレベルで硬度を維持するために、好ましくはこの範囲の下端は、例えば約0.10%より少なく、より好ましくは0.05%より少なくあるべきである。合金製品が自動車用途に使用される場合に、いくぶん高いSiの含有に耐えうる。
【0031】
最大約0.5%の範囲の銀は、時効をさらに良くするめに添加されうる。Agの添加の好ましい下限は、約0.03%であり、より好ましくは約0.08%である。好ましい上限は、約0.4%であろう。
【0032】
分散質形成元素Zr、Sc、Hf、V、CrおよびMnのそれぞれは、粒状構造および焼付感度を制御するために添加されうる。分散質系製剤の最適な濃度はプロセスによるが、主要元素(Zn、Cu、およびMg)の単一の化学物質は、好ましいウィンドウ内で選択され、化学物質は全ての関連製品を形成するために使用され、そしてZrの濃度は約0.5%未満である。
【0033】
好ましいZr濃度の最大は、0.40%である。Zr濃度の適切な範囲は、約0.03〜0.40%である。Zr添加のより好ましい上限は、約0.18%である。しかしながら、シート製品のある程度高い成形用途(例えば、ナセル、ジェット機のノーズコーン)の場合、Zr含有は、0.40%に及んでよい。本発明による処理がされた合金製品において、Zrは好ましい合金元素である。ZrはMnとの組み合わせで添加されうるが、本発明による方法を使用するゲージが厚い製品では、Zrが添加される場合、Mnの添加は避けられることが好ましく、好ましくはMnを0.04%未満の濃度で保つことである。ゲージが厚い製品において、Mn相はZr相よりも急速に粗大化し、それによって合金製品の焼付感度に不利に影響する。
【0034】
Scの添加は、好ましくは0.5%を超えないことであり、より好ましくは0.3%を超えないことであり、さらに好ましくは0.18%を超えないことである。Scと組み合わされるとき、Sc+Zrの合計は、0.3%より低く、好ましくは0.2%より低くあるべきであり、特にZrとScの比率は、0.7〜1.4%である。
【0035】
添加されうる他の分散質形成剤は、Crである。Crの濃度は、好ましくは約0.4%より低く、より好ましくは最大約0.3%であり、さらに好ましくは約0.2%である。Crの好ましい下限は、約0.04%であろう。Cr単独では、Zr単独のように効果的ではないかもしれないが、少なくとも合金鍛錬製品のツーリングプレート(tooling plate)の使用の際に、類似の硬度が得られるかもしれない。Zrと組み合わせる場合に、Zr+Crの合計は、約0.23%を超えるべきではない。
【0036】
好ましいSc+Zr+Crの合計は、約0.4%を超えるべきではなく、より好ましくは0.27%を超えるべきではない。
【0037】
本発明によるアルミニウム合金鍛錬製品のその他の実施形態において、合金製品はCrを含まない。実質的な意味において、これはCrの含有は、<0.05%の通常の不純物濃度であり、好ましくは<0.02%であり、さらに好ましくは合金はCrを基本的に含まない、または実質的に含まない。「基本的に含まない」および「実質的に含まない」は、この合金の元素が組成物に意図的に添加されていないが、不純物および/または製造装置との接触により浸出することによって、この元素の微量が最終合金製品に検出されることを意味する。
【0038】
Mnは、単一の分散質形成剤として、または他の分散質形成剤との組み合わせで添加されうる。Mn添加の最大は、約0.4%である。Mn添加の適切な範囲は、約0.05%〜0.4%であり、好ましくは約0.05%〜0.3%であり。Mn添加の好ましい下限は、約0.12%である。Zrとの組み合わせる場合に、Mn+Zrの合計は約0.4%より低く、好ましくは約0.32%より低くあるべきである。
【0039】
本発明によるアルミニウム合金鍛錬製品のその他の実施形態において、合金はMnを含まない。実質的な意味において、これは、Mn含有量が<0.03%、好ましくは<0.02%であることを意味し、より好ましくは合金はMnを基本的に含まない、または実質的に含まない。「基本的に含まない」および「実質的に含まない」は、この合金の元素が組成物に意図的に添加されていないが、不純物および/または製造装置との接触により浸出することによって、この元素の微量が最終合金製品に検出されることを意味する。
【0040】
本発明によるアルミニウム合金鍛錬製品の他の実施形態において、合金に、Vは意図的に添加されず、存在しているとしても0.05%より低い、より好ましくは0.02%より低い通常の不純物濃度で存在しているだけである。
【0041】
合金シート製品の焼付感度を低減させる他の元素は、最大0.4%のGeを添加することであろう。好ましい添加は、0.03%〜0.4%の範囲である。
【0042】
Tiは、合金ストック(例えばインゴットまたはビレット)のキャスティングの間に、結晶粒微細化のために合金製品に添加されうる。Tiの添加は0.3%を超えるべきでない。Ti添加の好ましい下限は、約0.01%である。Tiは、単一の元素として、またはキャスティングを促進するためにホウ素または炭素と共に、結晶粒サイズ制御のために添加されうる。
【0043】
従来から知られるように、7000−シリーズ合金製品は、所望により、さらに、最大約0.05%Ca、最大約0.05%Sr、および/または最大約0.004%Beを含んでいてもよい。従来、ベリリウムの添加は、脱酸素剤/インゴットクラック抑制として役立ち、本発明による合金製品に使用されていてもよい。しかし、環境、健康および安全上、本発明の好ましい実施形態において、実質的にBeを含まない。わずかな量のCaおよびSr単独、または組み合わせが、合金製品に、Beと同じ目的で添加されうる。Caの好ましい添加は、約10〜100ppmの範囲である。
【0044】
実施形態において、7000−シリーズアルミニウム合金は、0.25%未満のCuを含有し、アルミニウム協会によって定義される、以下の7000−シリーズアルミニウム合金の一つである。7003、7004、7204、7005、7108、7108A、7015、7017、7018、7019、7019A、7020、7021、7024、7025、7028、7030、7031、7033、7035、7035A、7039、7046、および7046A。7000−シリーズ合金は、Cuを意図的に添加せず、溶体化熱処理温度は少なくとも370℃である。好ましい最低温度は400℃であり、より好ましくは430℃であり、さらに好ましくは450℃であり、最も好ましくは470℃である。溶体化熱処理温度は560℃を超えない。好ましい最大温度は545℃であり、好ましくは530℃を超えない。
【0045】
実施形態において、7000−シリーズアルミニウム合金は、0.25%以上のCuの含有を含み、アルミニウム協会によって定義される以下の7000−シリーズアルミニウム合金の一つである。7009、7010、7012、7014、7016、7116、7022、7122、7023、7026、7029、7129、7229、7032、7033、7034、7036、7136、7037、7040、7140、7041、7049、7049A、7149、7249、7349、7449、7050、7050A、7150、7250、7055、7155、7255、7056、7060、7064、7065、7068、7168、7075、7175、7475、7076、7178、7278、7278A、7081、7181、7085、7185、7090、7093、7095および7099。7000−シリーズ合金は、Cuを意図的に添加せず、溶体化熱処理温度は少なくとも400℃である。好ましい最低温度は450℃であり、より好ましくは460℃、最も好ましくは470℃である。溶体化熱処理温度は560℃を超えるべきではない。好ましい最大温度は530℃であり、より好ましくは520℃を超えない。
【0046】
本発明により製造されたシート製品が自動車用途で使用されうる例として、密閉パネル(例えば、ボンネット、フェンダー、ドア、屋根およびトランクリッド等)、ハンドル、トンネル(tunnel)、隔壁、フットウェル、および限界強度用途、ホワイトボディ(例えば、A−、B−、およびC−ピラー、強化材)用途、自動車耐破損性または他のエネルギー吸収用途等である。これらの用途のいくつかにおいて、製品は部品のダウンゲージや軽量化がされていてもよい。
【0047】
鉄道車両の製造において、アルミニウムシートは運転室の内装、ドア系統、エンターエンド(enter end)の外装およびインターエンドキャノピー(inter end canopies)等を製造するために使用される。
【0048】
シート製品は、成形された3次元建築パネルを製造することにも使用されうる。
【0049】
シート製品は、例えば、ジェット機のノーズコーン、風力タービンのナセル、エンジンナセルの外装、リップの外装、翼端、ウィングレット、および吸音パネルの製造に使用されうる。
【0050】
以下、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は使用される方法および装置の模式図である。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、最新技術によるそして本発明による連続熱処理炉中を通して進行するアルミニウムシートの時間の関数としての温度プロフィールの模式図である。
【
図3】
図3は、シート厚の関数としての必要な最低限の昇温速度と、好ましい実施形態の模式図である。
【0052】
図1は、本発明による方法および装置の模式図を提供する。連続熱処理炉(1)は、その長さの方向に移動中の非コイル状の熱処理アルミニウムシート(2)を輸送および熱処理するように配置される。このアルミニウムシートはコイル(8)から巻き出されている。これは、入口部分(4)および出口部分(5)を有する連続熱処理炉(3)を通して移動する。出口部分(5)を出る際に、移動中のアルミニウムシートは、冷却部(6)内で約100℃未満に、例えば、およそ室温に急速に冷却される。工業用連続熱処理炉は実質的な設備投資になる。一度依頼すると、長さをより長くするなどの操作上の重要な変更は、工場の作業現場のレイアウト制約のために実現できないことが多い。
【0053】
移動中または進行中のアルミニウムシートは、連続熱処理炉を通して、少なくとも約20メートルの長さにわたって、好ましくは、少なくとも55メートルにわたって、実質的に水平に移動する。炉の長さ全体にわたる熱風ノズル(図示せず)は、ストリップを加熱し、それをエアークッション上で浮いたままにする。従って、ストリップは浮動状態で進行している。このような炉は、対流浮動炉と呼ばれることもある。熱処理炉内での昇温での機械的接触を排除することにより、欠点のないストリップ表面に変わる。連続熱処理炉は設計をモジュール式にし得る。そういうものとして、炉は、上部および下部の空気流からなる空気チャネルを生成するためにタービン(図示せず)を使用するいくつかの加熱ゾーンを含んでなる。空気は、好ましくは、燃焼予熱空気で動作するバーナーによって加熱される。設定均熱温度の温度制御は+/−3℃以上の制御精度で行われる。
【0054】
移動中のシート(2)は、周囲温度で高いストリップ速度またはライン速度で入口部(4)に入り、連続熱処理炉を通して進行しながら、アルミニウム合金に応じて事前設定した溶体化熱処理温度(例えば、約510℃)に徐々に昇温される。従来の連続熱処理炉では、アルミニウムシートの平均昇温速度は、典型的には、約1mmシート材料の場合、約10〜15℃/秒の範囲である。ストリップ速度に応じて、ストリップ温度は、炉長の後半まででのみまたは連続熱処理炉の終わり近くでさえ実際の事前設定溶体化熱処理温度に到達してもよく、実際には、その溶体化熱処理温度で非常に短時間、例えば、数秒間、均熱を受け、その後、移動中のシートは出口部(5)で熱処理炉から離れ、冷却部(6)内で直ちに焼入れされる。これはまた
図2Aに概略的に示されており、この図では、移動中のアルミニウムシートは、室温(RT)から溶体化熱処理温度(T
SET)に徐々に昇温され、設定溶体化熱処理温度または設定均熱温度で数秒間(t
SOAK)均熱される。均熱時間(t
SOAK)は、設定溶体化熱処理温度または設定均熱温度(T
SOAK)±5℃で費やされた時間で定義される。
【0055】
アルミニウム合金組成またはシート厚に応じて、機械的性質の所望のバランスを達成するためには、事前設定した溶体化熱処理温度でのより長い均熱時間が非常に望ましい場合があるが、多くの7000−シリーズの合金では、熱処理炉の規定寸法から、より低いストリップ速度でしかこれを達成することができず、これにより、ストリップ速度またはライン速度を、例えば、約40m/分から約20または25m/分に減速しなければならない場合、経済的魅力があるものには遠く及ばなくなる。
【0056】
本発明によれば、特性とプロセスの経済性とのこのバランスは、熱処理炉の入口部(4)の直前または入口部(4)の地点で予熱装置を実施することによって改善されている。
予熱装置(7)は、少なくともY=−31.ln(X)+50(式中、Yは℃/秒の冷却速度であり、Xはmmによるシート厚である)のシート厚の関数としての昇温速度の式によって定義される非常に速い昇温速度を可能にするように配置され、好ましいより高い昇温速度を有し、これは、例えば、米国特許第5,739,506号(Ajax Magnethermic)に開示されているように、例えば、トランスバース方式の誘導加熱装置によって達成することができる。予熱装置(7)でのアルミニウムシートの予熱は、移動中のストリップの温度のオーバーシュート、それによる、アルミニウム合金中の微細構造成分の局所融解のために関連工学的特性に悪影響を与えることを避けるために安全域を守ることが望ましい。好ましくは、予熱は、アルミニウム合金シート材料の熱処理を行うべき事前設定した溶体化熱処理温度または均熱温度より約5℃〜100℃、より好ましくは約5℃〜75℃
低い温度
で行われる。従って、例えば、事前設定した溶体化熱処理温度が510℃である場合、移動中のアルミニウムシートは約480℃に予熱する。移動中のシートのさらなる昇温は連続熱処理炉において対流加熱によって行われる。これはまた
図2Bに概略的に示されており、この図では、移動中のアルミニウムシートは、室温(RT)から予熱温度(T
PRE)に急速に予熱され、その後、設定溶体化熱処理温度(T
SET)にさらに加熱される。RTからT
PREへの昇温速度は、実際には、必ずしも線形ではなく、そのため、T
PREからRTを引いた温度差をT
PREに達するのに要する時間で割った平均昇温速度を使用している。従って、例えば、1mmシート材料の場合、25℃の室温から約5秒で約480℃のT
PREに到達するとき、平均昇温速度は約91℃/秒である。これは、急速な予熱が適用されない状況と比較して、ほぼ同じストリップ速度を維持しながら、設定溶体化熱処理温度で著しく長い均熱時間を可能にする。また、これは、最先端状況と比較して、ほぼ同じ均熱時間(t
SOAK)を有しながら、著しく増加したライン速度を可能にする。従って、所与の連続焼鈍炉では、特定の7000−シリーズの合金に応じて、プロセスの経済性とシート特性との改善されたバランスに到達するようにライン速度と組み合わせて均熱時間を最適化する上で、著しく高い適応性がある。
【0057】
本発明による方法および対応する装置の使用によって、より厚いゲージのシート材料も相対的に高いストリップ速度で処理することができる。例えば、1mmシート材料を最大約70m/分のライン速度で処理することができる場合、同じ合金の2mmシート材料は、対流炉で加熱した場合には昇温時間が著しく長いため、最大約35m/分のライン速度でしか処理することができない。シート材料が非常に急速に約480℃に予熱され、溶体化熱処理温度が約510℃である本発明による方法および装置の場合、2mmシート材料は、1mmシート材料とほぼ同じt
SOAKを有しながら、範囲約55〜65m/分の著しく高いライン速度で連続的に熱処理することができる。
【0058】
図3は、シート厚の関数としての必要な最低限の平均昇温速度(ライン1)と、本発明による方法ならびに装置およびキットオブパーツについての好ましい実施形態(ライン2〜4)の模式図である。0.3〜4.5mmの好ましいゲージ範囲のシートゲージについての関係を示している。ライン1〜4については、次の自然対数式が適用される。
ライン1:Y=−31.ln(X)+50
ライン2:Y=−50.ln(X)+80
ライン3:Y=−62.ln(X)+100
ライン4:Y=−93.ln(X)+150
式中、Yは℃/秒の平均昇温速度を表し、Xはmmによるシート厚を表す。