(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、
図1〜
図5に基づいて、詳細に説明する。
【0017】
(回路構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る高周波装置100の概略回路構成を示すブロック図である。なお、
図1においては、図の簡略化のために接地および電源等の図示が省略されている。
【0018】
高周波装置100は、回路部(高周波回路)7とアンテナ部(アンテナ)8と送信接続部12と受信接続部22とを含み、回路部7とアンテナ部8とは、送信接続部12と受信接続部22により、接続されている。
【0019】
回路部7は、発振器13、送信増幅器14、第1分配器15、第2分配器16、受信増幅器23、第3分配器24、位相器25、周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q、出力ポート28i、28qおよび電源回路(図示せず)等を含む。回路部7は、アンテナ部8から送信される信号を処理する送信回路であり、アンテナ部8が受信する信号を処理する受信回路であり、高周波で動作する高周波回路である。
【0020】
アンテナ部8は、送信アンテナ11と受信アンテナ21とを含む。
【0021】
発振器13は、送信波を発振する発振器であり、24GHzのマイクロ波を発振する。なお、発振器13は、別の周波数のマイクロ波およびミリ波などの高周波を発振してもよい。
【0022】
送信増幅器14は、発振器13が発振した送信波を増幅する低雑音増幅器であり、1段のソース接地のマイクロ波電界効果トランジスタである。ソース接地の電界効果トランジスタは、接地インダクタンスが十分に低い場合、広い周波数帯において良好な利得特性を示す。
【0023】
第1分配器15は、送信増幅器14が増幅した送信波を二等分配する分配器であり、ウィルキンソン型分配器である。そして、第1分配器15で分配された送信波の一方は、送信接続部12を介して送信アンテナ11に到り、他方は、第2分配器16に到る。
【0024】
第2分配器16は、第1分配器15が二等分配した送信波の他方を二等分配する分配器であり、ウィルキンソン型分配器である。そして、第2分配器16で分配された搬送波の一方は、周波数ミキサ26iに到り、他方は、周波数ミキサ26qに到る。
【0025】
送信アンテナ11は、送信接続部12と送信増幅器14と第1分配器15とを介して、発振器13に接続されており、発振器13が発振した送信波を放射する。
【0026】
送信波31は、送信アンテナ11から放射され、対象物32により反射される。
【0027】
対象物32は、被験者であるが、これに限らない。生体および送信波31を反射するような物体であればよい。
【0028】
反射波33は、対象物32により反射された送信波31であり、対象物32の運動に応じてドップラー効果により、送信波31から変調されている。
【0029】
受信アンテナ21は、反射波33を受信する。
【0030】
受信増幅器23は、受信接続部22を介して受信アンテナ21に接続されており、受信アンテナ21が受信した受信波を増幅する低雑音増幅器であり、1段のソース接地のマイクロ波電界効果トランジスタである。
【0031】
第3分配器24は、受信増幅器23が増幅した受信波を二等分配する分配器であり、ウィルキンソン型分配器である。そして、第3分配器24で分配された受信波の一方は、位相器25を介して周波数ミキサ26iに到り、他方は、周波数ミキサ26qに到る。
【0032】
位相器25は、入力された受信波の位相を90度遅らせる。このため、周波数ミキサ26i、26qの出力が同時に0になることがない。位相器25をこのように加えることにより、ヌル点(出力が0になる点)を避けることと、対象物32の移動が接近か離反かを区別することとができる。なお、公知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0033】
周波数ミキサ26iは、送信増幅器14と第1分配器15と第2分配器16とを介して発振器13に接続されており、さらに、受信接続部22と受信増幅器23と第3分配器24と位相器25とを介して受信アンテナ21に接続されている。このため、周波数ミキサ26iの出力波は、送信波と90度遅れた受信波とを重ね合わせた波であり、ドップラー効果による唸り成分を含む。
【0034】
ローパスフィルタ27iは、低周波を通し、高周波を通さない周波数フィルタである。したがって、周波数ミキサ26iの出力波のうち、低周波である唸り成分のみがローパスフィルタ27iを通って、出力ポート28iから出力される。ローパスフィルタ27iは、RC(抵抗・キャパシタ)フィルタ回路およびLC(インダクタ・キャパシタ)フィルタ回路等の公知のフィルタ回路であり、通常のチップ部品により構成されているため、詳細な説明を省略する。
【0035】
同様に、周波数ミキサ26qは、送信増幅器14と第1分配器15と第2分配器16とを介して発振器13に接続されており、さらに、受信接続部22と受信増幅器23と第3分配器24とを介して受信アンテナ21に接続されている。このため、周波数ミキサ26iの出力波は、送信波と受信波とを重ね合わせた波であり、ドップラー効果による唸り成分を含む。
【0036】
ローパスフィルタ27qは、低周波を通し、高周波を通さない周波数フィルタである。したがって、周波数ミキサ26qの出力波のうち、低周波である唸り成分のみがローパスフィルタ27qを通って、出力ポート28qから出力される。ローパスフィルタ27qは、ローパスフィルタ27iと同様に公知のフィルタ回路であり、通常のチップ部品により構成されているため、詳細な説明を省略する。
【0037】
なお、高周波装置100においては、インピーダンス整合が取られており、2等分配でよいため、第1分配器15と第2分配器16と第2分配器24とを用いており、方向性結合器が不要である。しかしながらこれに限らず、回路構成に応じて適宜、方向性結合器を用いてよい。方向性結合器は、インピーダンス整合をとるだけでなく、等分配でない分配を行うことができる。
【0038】
送信接続部12および受信接続部22は、例えば、同軸線路である。送信接続部12は送信アンテナ11と第1分配器15とを接続し、送信波を伝達する。受信接続部22は受信アンテナ21と受信増幅器23とを接続し、受信波を伝達する。
【0039】
上述のような回路構成により、高周波装置100は、
図9に示した高周波回路基板202と同等の機能を有する。
【0040】
(回路部)
図2は、
図1に示した高周波装置100の回路部7の概略構成を示す平面図であり、第1単層基板1(以下、単に第1基板と称する)の第1面1aを示す。なお、
図1に示したローパスフィルタ27i、27qおよび出力ポート28i、28qは、約10kHz以下で動作する低周波回路であるため、
図2においては図示を省略する。
【0041】
回路部7は、第1基板1の第1面1aに形成されている。第1基板1に、回路部7は形成されるが、アンテナ部8は形成されない。このため、第1基板1は、厚さおよび素材の誘電率を選択し、回路部7を形成するために好適な単層基板を選択することができる。また、回路部7の接地インダクタンスを低くするために、回路部7の動作周波数である電磁波の第1基板1の上での波長(動作波長)に応じて、第1基板1は薄いことが好ましい。具体的には、第1基板1の厚さは回路部7の動作波長の8分の1以下が好ましい。
【0042】
第1基板1は、マイクロストリップラインが形成されている単層基板であり、第1面1aの反対側の面(
図4を参照して、第2面1b)には、銅箔により接地導体(第1接地導体)が全面に形成されている。
【0043】
第1面1aには、送信接続部12の回路側端部、発振素子13aと誘電体共振器13bとを有する発振器13、送信増幅器14、チップ抵抗15aを有する第1分配器15、チップ抵抗16aを有する第2分配器16、受信接続部22の回路側端部、受信増幅器23、チップ抵抗24aを有する第3分配器24、位相器25、周波数ミキサ26i、26q、電源回路41、チップキャパシタ42、43、複数のビアホール44、線路4(伝送線路)、導体パターン6が設けられている。また、5本のネジ34が第1基板1の四隅と中央付近とを貫いている。また、発振器13は、
図4に示すように、接地導体である仕切り導体45により囲まれている。
【0044】
線路4は、第2面1bに形成されている接地導体と共に、マイクロストリップラインを構成している。このため、24GHzのマイクロ波のような高周波を良好に伝達する。
【0045】
導体パターン6は、複数のビアホール44を介して、第2面1bに形成されている接地導体に電気的物理的に接続されており、接地導体である。導体パターン6は、回路部7の各回路素子(発振素子13a、送信増幅器14、受信増幅器23、周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q等)を接地するために形成されている。また、導体パターン6は、発振器13を囲む仕切り導体45を接地するためにも形成されている。
【0046】
発振素子13aは、例えば、マイクロ波バイポーラトランジスタである。
【0047】
発振器13と送信増幅器14とは線路4により接続されている。また、直流成分が流れないように、発振器13と送信増幅器14との間の線路4には、隙間(ギャップ)が設けられている。同様に、送信増幅器14と第1分配器15との間、受信接続部22と受信増幅器23との間、および受信増幅器23と第3分配器との間も、隙間が設けられた線路4が接続している。
【0048】
このような隙間が設けられた線路4においては、隙間の両側の線路4が高周波的に十分に接続されるように、十分な容量のギャップキャパシタが形成されている。具体的には、L字を互い違いに差し込むように、隙間の両側の線路4は形成されている。あるいは、高周波的に十分に接続されるように、十分な容量のチップキャパシタ42、43が隙間に設けられている。また、インピーダンス整合をとるために、適宜スタブが設けられている。
【0049】
第1分配器15と送信接続部12との間、第1分配器15と第2分配器16との間、第2分配器16と周波数ミキサ26iとの間、第2分配器16と周波数ミキサ26qとの間、第3分配器24と周波数ミキサ26iとの間、第3分配器24と位相器25との間、および位相器25と周波数ミキサ26qとの間は、隙間が設けられていない線路4が接続している。
【0050】
ビアホール44は、内壁にビアホール導体が形成されており、第1基板1を貫通する開口である。また、複数のビアホールは0.8mm間隔で配置されており、導体パターン6を第2面1bに形成された接地導体に接続している。
【0051】
電源回路41は、約10kHz以下で動作する低周波回路であり、公知技術であるため、図示を簡略にし、説明を省略する。
【0052】
(アンテナ部)
図3は、
図1に示した高周波装置100のアンテナ部8の概略構成を示す平面図であり、第2単層基板2(以下、単に第2基板と称する)の第3面2aを示す。
【0053】
アンテナ部8は、第2基板2の第3面2aに形成されている。第2基板2に、回路部7は形成されないが、アンテナ部8は形成される。このため、第2基板2は、厚さと素材の誘電率とを選択し、アンテナ部8を形成するために好適な単層基板を選択することができ、第1基板1とは異なる種類の単層基板を選択することができる。
【0054】
第2基板2は、マイクロストリップアンテナが形成される単層基板であり、第3面2aの反対側の面(
図4を参照して、第4面2b)には、銅箔により接地導体(第2接地導体)が全面に形成されている。
【0055】
第3面2aには、線路4、送信接続部12のアンテナ側端部、8枚の送信パッチ11aを有する送信アンテナ11、受信接続部22のアンテナ側端部、8枚の受信パッチ21aを有する受信アンテナ21が設けられている。また、5個のネジ受け36が第3面2aの四隅と中央付近とに固定されている。
【0056】
線路4は、第4面2bに形成されている接地導体と共に、マイクロストリップラインを構成している。このため、24GHzのマイクロ波等の高周波を良好に伝達する。
【0057】
送信アンテナ11は、送信パッチ11aと第4面2bに形成された接地導体とが構成するアレイ構造のマイクロストリップアンテナであるが、これに限らない。また、受信アンテナ21は、受信パッチ21aと第4面2bに形成された接地導体とが構成するアレイ構造のマイクロストリップアンテナであるが、これに限らない。また、送信アンテナ11と受信アンテナ21とは、指向特性が同一であるように、同一構成であることが好ましい。例えば、送信アンテナ11と受信アンテナ21とは、同一構成の線状アンテナおよびスロットアンテナ等であってもよい。
【0058】
送信パッチ11aは8個でなくてもよく、正方形に限られない。また、受信パッチ21aも8個でなくてもよく、正方形に限られない。例えば、送信パッチ11aと受信パッチ21aとはそれぞれ、少しずつ直径が異なる9個の円形パッチであってもよい。
【0059】
(断面構造)
以下に、高周波装置100の断面構造を説明する。
【0060】
図4は、
図1に示した高周波装置100の概略構成を示す断面図であり、
図2のA−B−C−D−E−F−J−H−I−J矢視断面を示す。
【0061】
高周波装置100は、回路部7が形成された第1基板1、アンテナ部8が形成された第2基板2、導体プレート3(導体板)、回路部7とアンテナ部8とを接続するスルーホール12cと導体ピン12dとスルーホール22cと導体ピン22dと、周波数調整ネジ38と仕切り導体45とを有する外装37、および5組のネジ34とネジ用スルーホール35とネジ受け36を含む。
【0062】
導体プレート3は、アルミおよび銅等の良導体であり、平坦に形成されたプレートである。また、導体プレート3は、直流から高周波の交流に渡る広い周波数帯において良好な接地導体として機能する。
【0063】
第1基板1と第2基板2とは、導体プレート3を挟み込むサンドイッチ構造を形成している。より詳しく述べると、第1基板1の第2面1bと第2基板2の第4面2bが互いに向かい合うように、第1基板1と第2基板2とは配置されている。また、第2面1bと第4面2bとの間に導体プレート3は挟まれている。また、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とは、
図2から
図4に示すように四隅と中央付近との5点で、ネジ34とネジ受け36とにより、緊密に固定されている。なお、ネジ34とネジ受け36とは外装37も固定している。
【0064】
このように第1基板1と第2基板2とは、導体プレート3を緊密に挟む。このため、第1基板1の第2面1bおよび第2基板2の第4面2bに形成された接地導体は、導体プレート3に全面的に重なるように接触し、導体プレート3と一体である。
【0065】
また、実質的に回路部7とアンテナ部8とが一枚の複層基板の表裏両面(第1面1aと第3面2a)に形成されている。アンテナ部8は、アンテナ部8の動作波長に応じた面積を必要とするため、アンテナ部8の反対側の面に回路部7およびその他の回路を形成することにより、高周波装置100を小面積化および小型化することができる。
【0066】
スルーホール12cと導体ピン12dとは、送信接続部12である同軸線路を形成している。そして、導体ピン12dは、線路4を介して第1分配器15と送信アンテナ11とを接続している。同様に、スルーホール22cと導体ピン22dとは、受信接続部22である同軸線路を形成している。そして、導体ピン22dは、線路4を介して受信増幅器23と受信アンテナ21とを接続している。
【0067】
外装37は仕切り導体45と一体に、アルミダイキャストにより鋳造されている。外装37は四隅と中央付近とのネジ34とネジ受け36とにより、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とに固定されている。また、外装37は、第1基板1の外縁部に形成されている導体パターン6(
図2参照)の上に直接載置されており、仕切り導体45は、発振器13を囲むように形成されている導体パターン6に直接に接触している。
【0068】
なお、仕切り導体45は、発振器13が発振するための部屋を形成すればよい。例えば、外装37とは別に、仕切り導体45を形成してもよい。
【0069】
(接地)
導体プレート3(
図4)、第1基板1の第2面1bに形成された接地導体、第2基板2の第4面2bに形成された接地導体、導体パターン6(
図2)、ビアホール44の内壁の導体(
図2、
図4)、ネジ34(
図2、
図4)、ネジ受け36(
図3、
図4)、外装37(
図4)、仕切り導体45(
図4)、スルーホール12cおよびスルーホール22cの内壁の導体は、高周波装置100の動作時に、接地される。
【0071】
第2面1bおよび第4面2bに形成された接地導体は、導体プレート3と電気的に一体である。このため、第2面1bおよび第4面2bに形成された接地導体は接地される。また、ビアホール44の内壁の導体と、スルーホール12cおよびスルーホール22cの内壁の導体とは、導体プレート3に接続され、接地される。
【0072】
導体パターン6は、複数のビアホール44を介して、第2面1bに形成されている接地導体に電気的物理的に接続されている。このため、導体パターン6は接地される。さらに、ビアホール44が0.8mm以下の間隔で配置されており、第1基板1が十分に薄い。このため、24GHz以下の周波数の電磁波から見て、導体パターン6は導体プレート3と一体であり、理想的な接地導体として機能する。
【0073】
外装37と仕切り導体45とは、導体パターン6に直接に接触しているため、接地される。
【0074】
ネジ34は、外装37に直接に接触するため、ネジ34は接地される。また、ネジ受け36はネジ34に直接に接触するため、ネジ受け36は接地される。
【0075】
図2に示すように、発振素子13a、送信増幅器14、受信増幅器23、周波数ミキサ26i、26qおよびその他の回路素子は、導体パターン6を介して接地している。
【0076】
以上のように、高周波装置100においては、導体パターン6等が低いインダクタンスで導体プレート3に接続しているため、接地が極めて浮きにくい。このため、回路部7の内部において、インピーダンス整合を取ることが容易であり、信号(送信波および受信波)が効率的に伝達される。
【0077】
また、導体パターン6が0Hzから24GHzまで理想的な接地導体として機能する。このため、送信増幅器14および受信増幅器23は、理想的な利得特性で機能することができる。同様に、発振器13、および周波数ミキサ26i、26qなども理想的に機能することができる。
【0078】
導体プレート3が、第2面1bおよび第4面2bに形成された接地導体と一体化している。このため、導体プレート3が、回路部7の線路4の裏側にある接地導体としても、アンテナ部8の線路4と送信パッチ11aと受信パッチ21aとの裏側にある接地導体としても、機能する。言い換えると、回路部7とアンテナ部8とは、接地導体を共用している。共用であるため、回路部7とアンテナ部8との間のインピーダンス整合をとることが容易であり、信号(送信波および受信波)が効率的に伝達される。
【0079】
さらに、共用であるため、インピーダンス設計が容易であり、例えば、回路部7とアンテナ部8とのインピーダンスおよび送信接続部12と受信接続部22との特性インピーダンスを50Ωに設計し、互いに接続することも容易にできる。したがって、高周波装置100の設計も容易である。
【0080】
(放熱)
さらに、導体プレート3、ビアホール44、導体パターン6、および外装37は、熱を逃がす放熱経路を兼ねている。回路部7で発生した熱は導体パターン6とビアホール44とを通じて、導体プレート3から速やかに放熱される。あるいは、回路部7で発生した熱は導体パターン6を通じて外装37から速やかに放熱される。このため、回路部7が高温になり難く、良好に機能することができる。
【0081】
(接続部)
以下に、送信接続部12を構成するスルーホール12cと導体ピン12dと、受信接続部22を構成するスルーホール22cと導体ピン22dと、について詳細に説明する。
【0082】
図5は、
図4に示したスルーホール12c、22cを説明するための図である。
図5の(a)は第1基板1の第2面1bを示し、
図5の(b)は導体プレート3を示し、
図5の(c)は第2基板2の第4面2bを示す。なお、
図4に示したように、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とには、ネジ用スルーホール35を構成する開口が形成されているが、
図5では図示を省略する。また、
図4に示したように、第1基板1にはビアホール44が形成されているが、
図5では図示を省略する。
【0083】
貫通口51、53、54およびスルーホール導体52、55は、
図4に示したスルーホール12c、22cを構成する。言い換えると、貫通口51およびスルーホール導体52は、スルーホール12c、22cの第1基板1に形成された部分である。また、貫通口53は、スルーホール12c、22cの導体プレート3に形成された部分である。また、貫通口54とスルーホール導体55とは、スルーホール12c、22cの第2基板2に形成された部分である。
【0084】
このため、
図5に示すように、第1基板1と第2基板2とが導体プレート3を挟み込んだ時に、中心軸が一直線になるように貫通口51、53、54およびスルーホール導体52、55は形成されている。また、送信接続部12および受信接続部22は同軸線路であるため、スルーホール12c、22cは内径が一定の円筒であることが好ましい。このため、
図5に示すように、スルーホール導体52、55および貫通口53は内径が同等に形成されている。
【0085】
このような構成により、スルーホール12c、22cの内壁は、内径が一定であり、導体の円筒である。なお、円筒に限らず、断面形状が一定であればよい。
【0086】
インピーダンス整合をとるために、回路部7とアンテナ部8とのインピーダンスと同等になるように、送信接続部12と受信接続部22とは形成されている。例えば、回路部7とアンテナ部8とが50Ωのインピーダンスの場合、送信接続部12と受信接続部22とは50Ωの特性インピーダンスになるように形成されている。なお、公知技術であるが、送信接続部12の特性インピーダンスは、スルーホール12cの内径と導体ピン12dの外径とから算出され、受信接続部22の特性インピーダンスは、スルーホール22cの内径と導体ピン22dの外径とから算出される。
【0087】
インピーダンス整合により、送信接続部12と受信接続部22とは、低い損失で回路部7とアンテナ部8を接続することができる。また、アンテナ部8の効率を向上させ、高周波装置100の感度を高めることができる。
【0088】
(製造方法)
以下に高周波装置100の製造方法を説明する。
【0089】
最初に、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とを用意する。
【0090】
用意された第1基板1は、
図2と
図4とを参照して、回路部7が形成されている第1面1aおよび接地導体が全面に形成されている第2面1bを有し、導体パターン6およびビアホール44が形成されており、第1面1aと第2面1bとの間を貫く貫通口51が形成されている。また、貫通口51の内壁を覆うように、スルーホール導体52が形成されている。
【0091】
用意された第2基板2は、
図3と
図4とを参照して、アンテナ部8が形成されている第3面2aおよび接地導体が全面に形成されている第4面2bを有し、第3面2aと第4面2bとの間を貫く貫通口54が形成されている。また、貫通口54の内壁を覆うように、スルーホール導体55が形成されている。
【0092】
用意された導体プレート3は、表裏両面の間を貫く貫通口53が形成されている。なお、貫通口51、53、54は、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とが重ね合わされた場合に、平面視において重なり合うような位置に形成されている。また、位置を合わせるために、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とは、平面視において同一形状であるが、これに限らない。例えば、第1基板1と第2基板2とより、導体プレート3が大きく、導体プレート3上のアライアメントマーカにより位置を合わせてもよい。
【0093】
次に、貫通口53に導体ピン12d、22dを挿入し、第1基板1と第2基板2とで、導体プレート3を、位置を合わせて挟み込む。そして、線路4に半田等により導体ピン12d、22dを接続する。これにより、送信接続部12と受信接続部22とが形成され、第1基板1に形成されている回路部7と第2基板2に形成されているアンテナ部8とが接続される。
【0094】
最後に、外装37を、位置を合わせて第1基板1に重ね合わせ、四隅と中央付近とにあるネジ用スルーホール35にネジ34を通す。そして、四隅と中央付近とのネジ34とネジ受け36と緊締する。これにより、外装37と第1基板1と第2基板2と導体プレート3とは互いに固定される。
【0095】
なお、製造方法はこれに限られない。例えば、第1基板1と第2基板2とで、導体プレート3を挟み込んだ後に、スルーホール12c、22cに導体ピン12d、22dを挿入してもよい。
【0096】
(効果)
高周波装置100の特有の効果について、以下に説明する。
【0097】
図2〜
図4に示すように、回路部7は第1基板1に形成され、アンテナ部は第2基板2に形成される。このため、第1基板1に回路部7を形成するために最適な単層基板を選択し、第2基板2にアンテナ部8を形成するために最適な単層基板を選択することができる。したがって、異種の単層基板を組み合わせることも可能であるため、回路部7とアンテナ部8との効率をそれぞれ高めることができる。
【0098】
図4に示すように、第1基板1と第2基板2とが導体プレート3を挟み、サンドイッチ構造を形成している。このため、第1基板1と第2基板2と導体プレート3とを一枚の複層基板として一体に扱うことができる。一枚の複層基板として扱う場合、第1面1aと第3面2aとが実質的に一枚の複層基板の表裏両面になり、回路部7とアンテナ部8とが実質的に一枚の複層基板の表裏両面に形成されている。
【0099】
したがって、大きな面積を必要とするアンテナ部8の裏面(反対側の面)に、回路部7を設け、回路部7とアンテナ部8とを面積的に効率的に、平面視において重なるように配置することができる。さらに、第1面1aに、別の回路を更に設けてもよい。例えば、
図1に示した出力ポート28i、28qから出力される低周波信号を処理する処理回路を、設けてもよい。このため、高周波装置100を効率的に小面積化および小型化できる。また、回路部7とアンテナ部8との効率的な配置により、高周波装置100は小型モジュールとして扱うことができる。
【0100】
アンテナは、該アンテナの動作周波数の電磁波の基板上での波長(動作波長)の2分の1以上の大きさが必要である。
【0101】
例えば、
図9を参照して、動作周波数が10GHzであり、高周波回路基板202の実行誘電率が4である場合、1つのアンテナの大きさは約7.5mm以上必要である。このため、4つのアンテナをアレイ状に配置する送信アンテナ203aと受信アンテナ203bとの大きさは、配置間隔を考慮して、5cmから7cm程度になる。さらに、高周波回路部211を含む高周波回路基板202の長辺の長さは、15cm程度になり、低周波回路基板210を含むマイクロ波移動物体検知装置201の長辺の長さは、20cm程度になる。
【0102】
一方、
図2から
図4を参照して、高周波装置100においては、アンテナ部8の裏面に回路部7が設けられている。このため、高周波装置100の動作周波数が10GHzの場合に、高周波装置100の長辺の長さが、10cm程度あるいは10cmより小さいように、高周波装置100を構成することができる。
【0103】
さらに、第2面1bおよび第4面2bに形成された接地導体と導体プレート3とが電気的に一体となり、第1基板1と第2基板2との接地導体になる。また、導体プレート3が直流および低周波から高周波にわたる広い周波数帯で良好な接地導体である。このため、高周波装置100においては、接地が浮きにくく、動作が安定する。
【0104】
これに対し、サンドイッチ構造でない従来の高周波装置においては、接地が浮きやすいという問題があった。回路基板の裏面に形成される接地導体は、一般的に、銅箔または金属メッキ等により、薄膜状に形成される。このため、接地導体が島のように分断されたり、接地導体の面積が狭かったりしやすい。そして、接地インピーダンスが高くなるため、裏面に形成された接地導体が、高周波に対し、接地導体として機能しないという問題があった。
【0105】
図4〜
図5に示すように、導体プレート3は、第2面1bおよび第4面2bに形成されている接地導体と一体化し、第1基板1および第2基板2の良好な接地導体として機能する。このため、線路4が形成するマイクロストリップラインおよび、送信パッチ11aと受信パッチ21aとが形成するマイクロストリップアンテナは、実質的に導体プレート3を接地導体として共有している。言い換えると、第2面1bおよび第4面2bに形成されている接地導体と一体化した導体プレート3と共に、線路4はマイクロストリップラインを構成し、送信パッチ11aと受信パッチ21aとはマイクロストリップアンテナを構成する。
【0106】
導体プレート3が広い周波数帯で良好な接地導体であるため、回路部7とアンテナ部8と送信接続部12と受信接続部22とは、接地が極めて浮きにくく、共通である。このため、回路部7およびアンテナ部8のインピーダンスが変動せずに、安定する。インピーダンスが安定しているため、回路部7とアンテナ部8と送信接続部12と受信接続部22とのインピーダンス整合をとることが容易である。インピーダンス整合により、回路部7とアンテナ部8と送信接続部12と受信接続部22とにおいて、効率的に信号電力を伝達することができる。このため、高周波装置100の電力効率を向上し、高周波装置100の消費電力および発熱を低減し、高周波装置100を小型化することができる。
【0107】
さらに、回路部7およびアンテナ部8は、導体プレート3を接地導体として共有しており、インピーダンスが安定しているため、インピーダンスの設計が容易である。
【0108】
例えば、経験的に3GHz以上であるマイクロ波周波数帯においては、インピーダンスを50Ω程度に回路を設計すると、低周波から高周波までに渡り回路の動作が安定し、余分な回路が不要になるために小型化できることが知られている。したがって、線路4の形成するマイクロストリップラインと送信接続部12と受信接続部22との特性インピーダンスを50Ω程度に設計し、回路部7内部の各回路と送信アンテナ11と受信アンテナ21とのインピーダンスを50Ω程度に設計することにより、高周波装置100の動作の安定化および小型化が可能になる。
【0109】
図2と
図4とに示すように、第1面1bに形成されている導体パターン6はビアホール44を介して導体プレート3に、電気的に接続されている。また、ビアホール44は0.8mm以下の間隔で配置されており、回路部7の動作周波数が24GHzであり、第1基板1の実行誘電率が約4である。したがって、ビアホール44が回路部7の動作波長の8分の1以下の間隔で配置されている。さらに、第1基板1は十分に薄く、動作波長の8分の1以下の厚さである。このため、直流から回路部7の動作周波数までの広い周波数帯において、極めて低いインダクタンスで、導体パターン6は導体プレート3に接続されている。言い換えると、導体パターン6は、直流から回路部7の動作周波数までの広い周波数帯において、理想的な接地導体として機能する。
【0110】
なお、ビアホール44の配置間隔は0.8mmに限らない。ビアホール44の配置間隔が回路部7の動作波長の8分の1以下であればよい。配置間隔が8分の1以下の場合、直流から回路部7の動作周波数までの広い周波数帯において、導体パターン6は、導体プレート3に極めて低いインダクタンスで接続され、導体プレート3と電気的に一体であり、接地インダクタンスが十分に低減される。例えば、動作周波数が10GHzの場合、ビアホール44の配置間隔と第1基板1の厚さとが2mm以下であれば、導体パターン6は理想的な接地導体として機能する。
【0111】
導体パターン6が理想的な接地導体であるため、送信増幅器14および受信増幅器23は、接地インダクタンスが極めて低く、理想的な利得特性で機能する。また、仕切り導体45も、導体パターン6に直接に接触しているため、理想的な接地導体である。このため、発振器13は、仕切り導体45に囲まれているため、理想的な利得特性で機能する。さらに、その他の回路素子(周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q、等)も、接地インダクタンスが極めて低く、理想的な利得特性で機能する。
【0112】
また、導体パターン6はビアホール44を介して導体プレート3に、熱的にも接続している。このため、導体パターン6とビアホール44と導体プレート3とは、回路部7から発生する熱を逃がし、良好な放熱経路としても機能する。
【0113】
送信接続部12と受信接続部22とは、同軸線路であるため、回路部7とアンテナ部8とを直流的および高周波的に接続しており、送信波および受信波を伝達することができる。また、導体ピン12dの外径とスルーホール12cの内径とから、送信接続部12の特性インピーダンスを容易に設計できる。また、導体ピン12d、22dの外径と、スルーホール12c、22cの内径とから、受信接続部22の特性インピーダンスを容易に設計できる。
【0114】
従って、回路部7と送信接続部12との間、送信接続部12とアンテナ部8との間、アンテナ部8と受信接続部22との間、および受信接続部22と回路部7との間のインピーダンス整合を容易にとることができる。このため、インピーダンス不整合を低減し、回路部7とアンテナ部8との間の信号電力の損失を低減することができる。すなわち、高周波装置100の感度を高めることができる。
【0115】
図1から
図4が示すように、高周波装置100は、送信アンテナ11および受信アンテナ21を有するアンテナ部8と、送信アンテナ11が送信する送信波および受信アンテナ21が受信する受信波を処理する回路部7とを含む。このため、高周波装置100は、送信波の送信と受信波の受信とに加え、受信波を送信波と比較して処理することができる。具体的には、周波数ミキサ26i、26qが送信波と受信波とを重ね合わせるため、送信波31から変調された反射波33の唸り成分のみを抽出することができる。
【0116】
したがって、高周波装置100は、レーダ用および通信用などの用途に好適である。
【0117】
なお、高周波装置100は、送信アンテナ11と受信アンテナ21とを有するが、本発明の範囲はこれに限らない。例えば、送信アンテナを有し、受信アンテナを有さない高周波装置、および受信アンテナを有し、送信アンテナを有さない高周波装置も本発明の範囲に含まれる。
【0118】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0119】
図6は、本発明の実施形態2に係る高周波装置に用いられる誘電体付きピン19、29の概略構成を示す透視図である。
【0120】
誘電体付きピン19は、導体ピン12dの周囲に誘電体12eを、円柱形状に付着させたピンである。また、誘電体付きピン29も、導体ピン22dの周囲に誘電体22eを、円柱形状に付着させたピンである。
【0121】
実施形態2においては、
図4に示した高周波装置100において、導体ピン12dの代わりに誘電体付きピン19を用い、導体ピン22dの代わりに誘電体付きピン29を用いる。
【0122】
実施形態1においては、スルーホール12cと導体ピン12dとの間およびスルーホール22cと導体ピン22dとの間は中空である。これに対し、実施形態2においては、スルーホール12cと導体ピン12dとの間には、誘電体12eがあり、スルーホール22cと導体ピン22dとの間には、誘電体22eがある。
【0123】
実施形態2においては、誘電体12e、22eにより、スルーホール12cと導体ピン12dとの間およびスルーホール22cと導体ピン22dとの間の間隔が安定し、送信接続部12および受信接続部22の特性インピーダンスが安定し、入力インピーダンスおよび出力インピーダンス(以下、入出力インピーダンス)も安定する。このため、高周波装置100の製造時に、送信接続部12および受信接続部22の入出力インピーダンスを安定させ、バラツキを低減することができる。
【0124】
さらに、誘電体付きピン19、29は、サンドイッチ構造を形成している第1基板1と第2基板2と導体プレート3との固定を補助し、第1基板1と第2基板2と導体プレート3との一体化を容易にする。
【0125】
なお、誘電体付きピン19、29を用いる実施形態2の高周波装置100は、実施形態1の高周波装置100の特有の効果も有する。
【0126】
実施形態1と同様に、第1基板1及び第2基板2とを、回路部7とアンテナ部8とに最適な単層基板をそれぞれ選択することができる。また、回路部7とアンテナ部8とが実質的に一枚の複層基板の表裏両面に形成されている。したがって、回路部7とアンテナ部8とを面積的に効率的に配置することができる。さらに、高周波装置100においては、接地が浮きにくい。
【0127】
導体プレート3は、第1基板1および第2基板2の良好な接地導体として機能する。このため、回路部7とアンテナ部8と送信接続部12と受信接続部22との接地は、極めて浮きにくく、インピーダンス整合をとることが容易である。さらに、インピーダンスの設計が容易であり、回路部7内部の各回路と送信アンテナ11と受信アンテナ21とのインピーダンスを50Ω程度に設計することにより、高周波装置100の動作の安定化および小型化が可能になる。
【0128】
ビアホール44が回路部7の動作波長の8分の1以下の間隔で配置されている。さらに、第1基板1の厚さは動作波長の8分の1以下である。このため、導体パターン6は、直流から回路部7の動作周波数までの広い周波数帯において、理想的な接地導体として機能する。導体パターン6が理想的な接地導体であるため、回路部7の各回路素子(発振素子13a、送信増幅器14、受信増幅器23、周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q等)は、理想的な利得特性で機能する。
【0129】
また、導体パターン6とビアホール44と導体プレート3とは、良好な放熱経路としても機能する。
【0130】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図7〜
図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0131】
(回路構成)
図7は、本発明の実施形態3に係る高周波装置200の概略回路構成を示すブロック図である。なお、
図7においては、図の簡略化のために接地および電源の図示が省略されている。
【0132】
高周波装置200は、回路部107とアンテナ部8とを含み、回路部107とアンテナ部8とは、送信接続部12と受信接続部22により、接続されている。
【0133】
回路部107は、発振器113、送信増幅器14、第1分配器15、第2分配器16、逓倍器117、受信増幅器23、第3分配器24、位相器25、周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q、出力ポート28i、28qおよび電源回路(図示せず)等を含む。回路部107は、アンテナ部8から送信される信号を処理する送信回路であり、アンテナ部8が受信する信号を処理する受信回路であり、高周波で動作する高周波回路である。
【0134】
アンテナ部8は、送信アンテナ11と受信アンテナ21とを含む。
【0135】
発振器113は、12.05GHzのマイクロ波を発振する。実施形態1の発振器13に比べて、発振器113の発振周波数が低いため、実施形態2の高周波装置200の製造費用の低減を図ることができる。
【0136】
逓倍器117は周波数逓倍器であり、入力信号の周波数を二逓倍する。逓倍器117は、発振器113が発振した12.05GHzのマイクロ波を、24.1GHzにして出力する。このため、回路部107およびアンテナ部8の動作周波数は約24GHzになる。なお、逓倍器117は、これに限らず、例えば入力信号の周波数を三逓倍してもよい。
【0137】
したがって、高周波装置200は、
図1に示した高周波装置100から、発振器13の代わりに、発振器113および逓倍器117を含む点において相違する。また、発振器113と逓倍器117を一体に扱うと、約24GHzのマイクロ波を発信する発振器と見なせる。このため、実施形態3の高周波装置200の動作および機能は、実施形態1の高周波装置100と同等である。
【0138】
(回路部)
図8は、
図7に示した高周波装置200の回路部107の概略構成を示す平面図であり、第1基板1の第1面1aを示す。なお、
図7に示したローパスフィルタ27i、27qおよび出力ポート28i、28qは、約10kHz以下で動作する低周波回路であるため、
図8においては図示を省略する。
【0139】
回路部107は、第1基板1の第1面1aに形成されている。第1基板1に、回路部107は形成されるが、アンテナ部8は形成されない。このため、第1基板1は、回路部107を形成するために好適な基板を選択することができる。
【0140】
発振器113は、発振素子113aおよび誘電体共振器113bを含み、発振器13と同様に仕切り導体45(
図4)に囲まれている。
【0141】
誘電体共振器113bは、実施形態1の誘電体共振器13bに比べて、共振周波数が低いため、大きい。
【0142】
発振素子113aは、12.05GHzで発振すればよい。このため、12GHz帯で発振可能なシリコンバイポーラトランジスタが、発振素子113aとして用いられることができる。発振素子113aがシリコンバイポーラトランジスタである場合、発振素子113aの1/f雑音および無負荷Q値が高いため、発振器113は優れた位相雑音特性を有する。
【0143】
さらに、近年、位相同期ループ(PPL:Phase Locked Loop)を用いる位相同期発振器が、12GHz帯まで用いられるようになってきている。位相同期発振器を発振器113として用いることにより、発振器113の安定性を高め、低背化することができる。このため、発振器113が位相同期発振器である場合、高周波装置200は安定性がより良好であり、より小型化される。
【0144】
逓倍器117は、非線形デバイスであり、12.05GHzと24.1GHzの両方の周波数で機能する必要がある。導体パターン6が0Hzから24GHzまで良好な接地導体として機能しているため、逓倍器117は良好に動作できる。
【0145】
なお、高周波装置200は、実施形態1の高周波装置100の特有の効果を有する。
【0146】
実施形態1と同様に、第1基板1及び第2基板2とを、回路部7とアンテナ部8とに最適な単層基板をそれぞれ選択することができる。また、回路部7とアンテナ部8とが実質的に一枚の複層基板の表裏両面に形成されている。したがって、回路部7とアンテナ部8とを面積的に効率的に配置することができる。さらに、高周波装置100においては、接地が浮きにくい。
【0147】
導体プレート3は、第1基板1および第2基板2の良好な接地導体として機能する。このため、回路部7とアンテナ部8と送信接続部12と受信接続部22との接地は、極めて浮きにくく、インピーダンス整合をとることが容易である。さらに、インピーダンスの設計が容易であり、回路部7内部の各回路と送信アンテナ11と受信アンテナ21とのインピーダンスを50Ω程度に設計することにより、高周波装置100の動作の安定化および小型化が可能になる。
【0148】
ビアホール44が回路部7の動作波長の8分の1以下の間隔で配置されている。さらに、第1基板1の厚さは動作波長の8分の1以下である。このため、導体パターン6は、直流から回路部7の動作周波数までの広い周波数帯において、理想的な接地導体として機能する。導体パターン6が理想的な接地導体であるため、回路部7の各回路素子(発振素子113a、送信増幅器14、受信増幅器23、周波数ミキサ26i、26q、ローパスフィルタ27i、27q等)は、理想的な利得特性で機能する。
【0149】
また、導体パターン6とビアホール44と導体プレート3とは、良好な放熱経路としても機能する。
【0150】
また、高周波装置200は、受信波を送信波と比較して処理することができる。したがって、高周波装置200は、レーダ用および通信用などの用途に好適である。
【0151】
なお、実施形態2と同様に、高周波装置200において、導体ピン12d、22dの代わりに、
図6に示した誘電体付きピン19、29を用いてもよい。
【0152】
この場合、実施形態2と同様に、送信接続部12および受信接続部22の特性インピーダンスが安定する。このため、高周波装置100の製造時に、送信接続部12および受信接続部22の入出力インピーダンスを安定させ、バラツキを低減することができる。さらに、第1基板1と第2基板2と導体プレート3との一体化を容易にすることができる。
【0153】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る高周波装置(100、200)は、高周波回路(回路部7、107)が形成されている第1面(1a)および第1接地導体が形成されている第2面(1b)を有する第1単層基板(第1基板1)と、アンテナ(アンテナ部8)が形成されている第3面(2a)および第2接地導体が形成されている第4面(2b)を有する第2単層基板(第2基板2)と、導体板(導体プレート3)と、を含み、前記導体板が、前記第2面と前記第4面との間に挟まれていることを特徴とする。
【0154】
上記構成によれば、高周波回路は第1単層基板に形成され、アンテナは第2単層基板に形成される。このため、第1単層基板に高周波回路を形成するために最適な基板を選択し、第2単層基板にアンテナを形成するために最適な基板を選択することができる。したがって、厚さおよび誘電率が異なる異種の単層基板を組み合わせることも可能であるため、高周波回路とアンテナとの効率をそれぞれ高めることができる。
【0155】
また上記構成によれば、第1単層基板と第2単層基板とが導体板を挟み、サンドイッチ構造を形成している。このため、第1単層基板と第2単層基板と導体板とを一枚の複層基板として一体に扱うことができる。一枚の複層基板として扱う場合、第1面と第3面とが実質的に一枚の複層基板の表裏両面になり、高周波回路とアンテナとが実質的に一枚の複層基板の表裏両面に形成されている。
【0156】
したがって、大きな面積を必要とするアンテナの裏面(反対側の面)に、高周波回路を設け、高周波回路とアンテナとを面積的に効率的に配置することができる。このため、高周波装置を効率的に小面積化および小型化できる。
【0157】
また上記構成によれば、第1接地導体および第2接地導体と導体板とが電気的に一体となり、第1単層基板と第2単層基板とに対する接地導体になる。また、導体板が直流および低周波から高周波にわたる広い周波数帯で良好な接地導体である。このため、高周波装置においては、広い周波数帯で接地が浮きにくく、動作が安定する。
【0158】
導体板が良好な接地導体であるため、高周波回路およびアンテナのインピーダンスが変動せずに、安定する。安定しているため、高周波回路の内部、アンテナの内部、および高周波回路とアンテナとの間でインピーダンス整合をとることが容易である。また、インピーダンス整合により、効率的に信号電力を伝達することができる。このため、高周波装置の電力効率を向上し、高周波装置の消費電力および発熱を低減し、高周波装置を小型化することができる。
【0159】
上記構成によれば、高周波回路およびアンテナは、導体板を接地導体として共有しており、インピーダンスが安定しているため、インピーダンスの設計が容易である。
【0160】
例えば、経験的に3GHz以上であるマイクロ波周波数帯においては、インピーダンスを50Ω程度に設計すると、低周波から高周波までに渡り動作が安定し、余分な高周波回路が不要になるために小型化できることが知られている。したがって、インピーダンスを50Ω程度に設計することにより、高周波装置の動作の安定化および小型化が可能になる。
【0161】
本発明の態様2に係る高周波装置(100、200)は、態様1に係る高周波装置であり、前記高周波回路(回路部7、107)は、複数のビアホール(44)により前記導体板(導体プレート)に接続されている導体パターン(6)を含むことを特徴とする。
【0162】
上記構成によれば、ビアホールと導体パターンとを介して、高周波回路内部の回路素子を接地することができる。また、導体板と第1接地導体とビアホールと導体パターンとが良好な熱伝導体であるため、良好な放熱経路が形成される。このため、高周波装置の冷却を効率的にすることが可能になる。
【0163】
本発明の態様3に係る高周波装置(100、200)は、態様2に係る高周波装置であり、前記複数のビアホール(44)の配置間隔が、前記高周波回路(回路部7、107)の動作波長の8分の1以下であり、前記第1単層基板(第1基板1)の厚さは、前記高周波回路の動作波長の8分の1以下であることを特徴とする。
【0164】
上記構成によれば、直流から高周波回路の動作周波数までの広い周波数帯において、極めて低いインダクタンスで、ビアホールおよび第1接地導体を介して、導体パターンは導体板に接続されている。言い換えると、導体パターンは、直流から動作周波数までの広い周波数帯において、理想的な接地導体として機能する。
【0165】
導体パターンが理想的な接地導体であるため、高周波回路を構成する回路素子は、理想的な利得特性で機能する。また、導体パターンと導体板との熱的な接続も、緊密になるため、放熱経路がより良好になる。このため、高い周波装置の動作を良好にし、冷却をより効率的にすることが可能になる。
【0166】
なお、動作波長とは、高周波回路の動作波長である電磁波の第1単層基板上での波長である。
【0167】
本発明の態様4に係る高周波装置(100、200)は、態様1から3の何れか1態様に係る高周波装置であり、前記高周波回路(回路部7、107)の伝送線路(線路4)と前記第1接地導体(第2面1bに形成された接地導体)とは、マイクロストリップラインを形成し、前記アンテナ(アンテナ部8)と前記第2接地導体(第4面2bに形成された接地導体)とは、マイクロストリップアンテナを形成することを特徴とする。
【0168】
上記構成によれば、マイクロストリップラインとマイクロストリップアンテナとを備える高周波装置を実現できる。
【0169】
本発明の態様5に係る高周波装置(100、200)は、態様1から4の何れか1態様に係る高周波装置であり、前記高周波回路(回路部7、107)と前記アンテナ(アンテナ部8)は同軸線路(送信接続部12、受信接続部22)により接続されていることを特徴とする。
【0170】
上記構成によれば、同軸線路により接続されるため、高周波回路とアンテナとが直流的および高周波的に良好に接続され、信号を伝達することができる。
【0171】
本発明の態様6に係る高周波装置(100、200)は、態様5に係る高周波装置であり、スルーホール(12c、22c)と前記スルーホールの内部の導体ピン(12d、22d)とが、前記同軸線路(送信接続部12、受信接続部22)を形成していることを特徴とする請求項6に記載の高周波装置。
【0172】
上記構成によれば、導体ピンの外径とスルーホールの内径とから、同軸線路の特性インピーダンスを容易に設計できる。従って、高周波回路と同軸線路との間、およびアンテナと同軸線路との間のインピーダンス整合を容易にとることができる。このため、インピーダンス不整合を低減し、高周波回路とアンテナとの間の信号電力の損失を低減することができる。すなわち、高周波装置の感度を高めることができる。
【0173】
本発明の態様7に係る高周波装置(100、200)は、態様6に係る高周波装置であり、前記スルーホール(12c、22c)は、前記第1単層基板と前記第2単層基板と前記導体板とに形成された部分(スルーホール導体52、55と貫通口53)において、断面形状が同等であることを特徴とする。
【0174】
上記構成によれば、同軸の接地導体断面形状が一定であるため、同軸線路のインピーダンスが変化しない。したがって、高周波回路とアンテナとが良好に接続される。
【0175】
本発明の態様8に係る高周波装置(100、200)は、態様6または7に係る高周波装置であり、前記導体ピン(12d、22d)の周囲には、誘電体(12e、22e)が設けられていることを特徴とする。
【0176】
上記構成によれば、誘電体により、スルーホールと導体ピンとの間の間隔が安定し、同軸線路の特性インピーダンスが安定し、入出力インピーダンスも安定する。このため、高周波装置の製造時に、同軸線路の入出力インピーダンスのバラツキを低減することができる。
【0177】
また上記構成によれば、誘電体が設けられた導体ピン(誘電体付きピン19、29)は、サンドイッチ構造を形成している第1単層基板と第2単層基板と導体板との固定を補助し、第1単層基板と第2単層基板と導体板との一体化を容易にする。
【0178】
なお、誘電体の断面形状は、スルーホールの断面形状と同等であることが好ましい。
【0179】
本発明の態様9に係る高周波装置(100、200)は、態様1から8の何れか1態様に係る高周波装置であり、前記アンテナ(アンテナ部8)は、送信アンテナ(11)と受信アンテナ(21)とを含み、前記高周波回路は、前記送信アンテナが送信する信号を処理する送信回路(発振器13と送信増幅器14とが構成する回路)と、前記受信アンテナが受信する信号を処理する受信回路(受信増幅器23、第3分配器24、位相器25、周波数ミキサ26i、26q、およびローパスフィルタ27i、27qが構成する回路)とを含むことを特徴とする。
【0180】
上記構成によれば、高周波装置、送信波の送信と受信波の受信とに加え、受信波を送信波と比較して処理することができる。
【0181】
本発明の態様10に係る高周波装置(100、200)は、態様1から9の何れか1態様に係る高周波装置であり、レーダ用または通信用であることを特徴とする請求項10に記載の高周波装置。
【0182】
上記構成によれば、レーダ用または通信用の高周波装置を実現できる。
【0183】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。