(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に1つまたは複数の点が配置された複数のセルを含み、前記複数のセルのうちの少なくとも1つのセルは内部に複数の点が配置されたセルである点字を記録媒体上に形成する方法であって、
前記記録媒体に向かって光硬化性インクを吐出し、前記吐出された光硬化性インクに光を照射して硬化させることによって印刷層を形成する工程と、
前記印刷層の上に光硬化性インクを吐出し、前記吐出された光硬化性インクに光を照射して硬化させることによって少なくとも1層の他の印刷層を形成する工程と、
を含み、
第1方向に所定の長さを有する領域に対して前記光硬化性インクの吐出および硬化を行うステップと、前記第1方向へ前記記録媒体を移動するステップとを、前記第1方向の所定の長さ当たり所定の回数反復することによって前記印刷層を形成し、
前記第1方向に所定の長さを有する領域に対して前記光硬化性インクの吐出および硬化を行うステップと、前記第1方向へ前記記録媒体を移動するステップとを、それぞれ前記第1方向の所定の長さ当たり所定の回数反復することによって前記他の印刷層の各印刷層を形成し、
前記印刷層および前記他の印刷層を形成する際に前記記録媒体が前記第1方向に1回につき移動する距離は、それぞれ前記所定の長さを各所定の回数で除した距離であり、
前記印刷層および前記他の印刷層のうちの1つの印刷層の形成と、前記1つの印刷層の上に形成される1つの印刷層の形成との間に、前記記録媒体を前記第1方向の逆方向である第2方向に移動させる工程
をさらに含み、
前記印刷層および前記他の印刷層は、前記複数のセルのうちの1つのセルにおける前記複数の点のうち隣接する2つの点の間の距離が0.38mm以上1.32mm以下の点字を形成する、
点字の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部分には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。主走査方向Yのうち、インクジェットプリンタの左方と一致する方向を第1主走査方向Y1、右方に一致する方向を第2主走査方向Y2とも称する。副走査方向Xのうち、インクジェットプリンタの後方と一致する方向を上流X1、前方に一致する方向を下流X2とも称する。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るインクジェットプリンタ10の斜視図である。インクジェットプリンタ10は、ケーシング2と、記録媒体5を支持するプラテン4とを備えている。
【0021】
図2は、インクジェットプリンタ10の主要部を表す正面図である。この主要部は、ケーシング2の内部に配置されている。インクジェットプリンタ10は、ケーシング2内に配置されたガイドレール3を備えている。ガイドレール3は主走査方向Yに延び、ケーシング2の左右の壁に固定されている。ガイドレール3には、キャリッジ1が係合している。キャリッジ1には、インク吐出ヘッド21が搭載されている。
【0022】
図3は、キャリッジ1の下面の構成を示す図である。
図3に示されるように、インク吐出ヘッド21は、キャリッジ1の下面に搭載されている。インク吐出ヘッド21は6つのインクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、21Clを有している。インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、および21Clは、主走査方向Yに並んでいる。インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、および21Clには、副走査方向Xに並ぶ複数のノズル24が形成されている。インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、および21Clにおいて、ノズル24のピッチはすべて同じである。また、インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、および21Clにおいて、ノズル24の数はすべて同じである。インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、および21Clのノズル24の副走査方向Xに関する位置は揃っている。
【0023】
図3に示されるように、各インクヘッド21C〜21Clにおいて、複数のノズル24は、ピッチP1で副走査方向Xに並んでいる。ピッチP1は、例えば、0.14mm、またはその近傍である。しかしながら、各インクヘッド21C〜21Clにおけるノズル24のピッチP1は、上記に限定されるわけではない。
【0024】
図2のように、インクジェットプリンタ10は、インクを貯留したインクタンク11を備えている。貯留されているインクは、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化インクである。インクタンク11は、それぞれシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインク、ホワイトインク、透明インクを貯留したインクタンク11C、11M、11Y、11K、11W、11Clを有している。ただし、インクの具体的な色は特に限定される訳ではない。本実施形態では、カラーインクとして4色のインクを用いるが、インクジェットプリンタ10に用いられるカラーインクの数は4つに限定されない。また、カラーインク以外のいわゆる特色インクとしてはホワイトインクと透明インクの2種類のインクを用いるが、インクジェットプリンタ10に用いられる特色インクはこれに限定されない。インクタンク11の個数は何ら限定されない。
【0025】
インクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、21Clは、インク流路14を介して、それぞれインクタンク11C、11M、11Y、11K、11W、11Clと接続されている。インクジェットプリンタ10は、インクヘッド21Cとインクタンク11Cとに接続されたインク流路14と、インクヘッド21Mとインクタンク11Mとに接続されたインク流路14と、インクヘッド21Yとインクタンク11Yとに接続されたインク流路14と、インクヘッド21Kとインクタンク11Kとに接続されたインク流路14と、インクヘッド21Wとインクタンク11Wとに接続されたインク流路14と、インクヘッド21Clとインクタンク11Clとに接続されたインク流路14とを備えている。インク流路14の構造および材料は特に限定されないが、本実施形態では樹脂製のチューブによって構成されている。インク流路14は、それぞれのインクをインクタンク11C、11M、11Y、11K、11W、11Clからインクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、21Clに供給する役割を果たす。インク流路14には、それぞれインクタンク11C、11M、11Y、11K、11W、11Clからインクヘッド21C、21M、21Y、21K、21W、21Clに向けてインクを搬送するポンプ15が設けられている。ただし、ポンプ15は必ずしも必要ではなく、省略することが可能である。なお、インク流路14の一部は左右方向に延びた状態で配置され、ケーブル類保護案内装置7により覆われている。
【0026】
キャリッジ1には、第1紫外線ランプ25aおよび第2紫外線ランプ25bが設けられている。第1紫外線ランプ25aは、インク吐出ヘッド21の左方に配置されている。第2紫外線ランプ25bは、インク吐出ヘッド21の右方に配置されている。
【0027】
キャリッジ1は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール3に沿って主走査方向Yに摺動自在に構成されている。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール3の右端側および左端側に配置されたプーリ8b、8cを有している。プーリ8bにはキャリッジモータ8aが連結されている。プーリ8bは、キャリッジモータ8aによって駆動され、回転する。両プーリ8b、8cには、無端状のベルト6が巻き掛けられている。キャリッジ1はベルト6に固定されている。プーリ8b、8cが回転してベルト6が走行すると、キャリッジ1が主走査方向Yに移動する。
【0028】
記録媒体5は、送り機構9によって副走査方向Xの下流X2側に送られる。プラテン4は、キャリッジ1の下方に設けられている。プラテン4の上方には、記録媒体5を上方から押さえつけるピンチローラ9bが設けられている。ピンチローラ9bの下方には、グリットローラ9cが設けられている。グリットローラ9cは、フィードモータ9aに連結されている。グリットローラ9cはフィードモータ9aによって駆動され、回転する。グリットローラ9cとピンチローラ9bとの間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ9cが回転すると、記録媒体5は副走査方向Xの下流X2側に送られる。
【0029】
記録媒体5は、吐出されたインクが着弾し、それらインクにより表面に印刷物が形成される媒体である。記録媒体5の材料および形態は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、紙または樹脂製のシートやフィルムであってもよいし、木材、金属、または樹脂製の板であってもよい。
【0030】
インクジェットプリンタ10は、制御装置30を備えている。制御装置30のハードウェア構成は何ら限定されないが、ここでは、CPU、ROM、およびRAMなどを備えたコンピュータによって構成されている。制御装置30は、キャリッジモータ8a、フィードモータ9a、インク吐出ヘッド21、および第1、第2紫外線ランプ25a、25bと通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置30は、キャリッジモータ8a、フィードモータ9a、インク吐出ヘッド21、および第1、第2紫外線ランプ25a、25bを制御することにより、記録媒体5への印刷を実行する。
【0031】
図10は、インクジェットプリンタ10のブロック図である。
図10に示されるように、制御装置30は、キャリッジモータ8a、フィードモータ9a、インク吐出ヘッド21、および第1、第2紫外線ランプ25a、25bと接続され、それらの動作を制御している。制御装置30は、印刷制御部31と、サイズ設定部32とを備えている。印刷制御部31は、インクヘッド21C〜21Clと、キャリッジ移動機構8と、光照射機構としての第1紫外線ランプ25aおよび第2紫外線ランプ25bと、送り機構9とを制御して、光硬化性インクによって点字を記録媒体5上に形成するように設定されている。印刷制御部31は、上記各部を制御して、記録媒体5上に、光硬化性インクによって、立体的な印刷物を形成するように設定されていてもよい。なお、印刷制御部31は、インクヘッド21C〜21Clと、キャリッジ移動機構8と、第1紫外線ランプ25aおよび第2紫外線ランプ25bと、送り機構9とを制御する単一の処理部ではなく、上記各部をそれぞれ制御する複数の処理部から構成されていてもよい。サイズ設定部32は、複数のノズル24から吐出される光硬化性インクのサイズが設定される処理部である。
図10に示されるように、印刷制御部31は、送り量設定部31Aと、送り制御部31Bと、吐出制御部31Cと、移動制御部31Dと、照射制御部31Eとを備えている。
【0032】
送り量設定部31Aは、記録媒体5の1回の送り量が設定される処理部である。
【0033】
送り制御部31Bは、送り機構9を制御して、1回につき、送り量設定部31Aで設定された送り量だけ記録媒体5を副走査方向Xに送るように設定されている。
【0034】
吐出制御部31Cは、送り機構9による記録媒体5の1回の送りと他の送りとの間に、インクヘッド21C〜21Clを制御して、光硬化性インクを記録媒体5に向けて吐出させるように設定されている。
【0035】
移動制御部31Dは、送り機構9による記録媒体5の1回の送りと他の送りとの間に、キャリッジ移動機構8を制御して、インクヘッド21C〜21Clを主走査方向Yに移動させるように設定されている。
【0036】
照射制御部31Eは、送り機構9による記録媒体5の1回の送りと他の送りとの間に、第1紫外線ランプ25aおよび第2紫外線ランプ25bを制御して、記録媒体5に吐出された光硬化性インクに向けて光を照射させるように設定されている。
【0037】
制御装置30は、印刷制御部31とサイズ設定部32以外の処理部を備えていてもよいが、それらについての説明は省略する。
【0038】
第1実施形態では、インクジェットプリンタ10は、記録媒体5上に点字を形成する。
図4は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10が形成する点字の構成を示す図である。
図4に示す点字(ブライユ式点字)の1つの文字100は、最大6個の点101から構成されている。点101は、記録媒体5上に立体的に形成されている。点字は、所定の6か所のうちいずれの位置に点101が形成されているかによってアルファベットを表現する。
図4において実線で描画されハッチングが施されている点101は、実際に記録媒体5上に形成されている点を示している。
図4において2点鎖線で描画されている円形は、実際には記録媒体5上に形成されていない架空の点を示している。1つの文字における点101同士は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに関して一定の距離(点間距離L1)離間している。また、本実施形態の説明においては、6個の点101が内接する1つの四角形をセル102と称する。セル102同士、即ち文字100同士は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに関して一定の距離(セル間距離L2)離間している。
【0039】
図4に示される点字は、インクジェットプリンタ10のインク吐出ヘッド21から吐出されるインクによって形成される。点字は、インクジェットプリンタ10による印刷物の1つである。点字を形成するインクの種類は限定されないが、ここではホワイトインクと透明インクとによって形成される場合を説明する。
【0040】
図5は、点字の点101の縦断面図である。ただし、
図5は模式図であって、必ずしも実際の各部のプロポーションを反映していない。
図5の点字は、3層の印刷層から形成されている。3層の印刷層のうち第1印刷層Ly1は、記録媒体5上に直接形成されている。第1印刷層Ly1は、3層の印刷層のうち最も下の層である。第1印刷層Ly1は、透明インクによって形成されている。第2印刷層Ly2は、上記3層の印刷層のうち、第1印刷層Ly1の直上に形成された印刷層である。第2印刷層Ly2も、透明インクによって形成されている。第3印刷層Ly3は、上記3層の印刷層のうち、第2印刷層Ly2の直上に形成された印刷層である。第3印刷層Ly3は、3層の印刷層のうち最も上の層である。第3印刷層Ly3は、ホワイトインクによって形成されている。
【0041】
本実施形態に係る第1印刷層Ly1は、透明インクがいわゆる「マット調」に形成された印刷層である。マット調の印刷層の表面には比較的大きな凹凸があり、そのためにマット調の印刷層の表面は光沢のない仕上がりとなっている。第1印刷層Ly1の形成において、制御装置30は、キャリッジ1を主走査方向Yに移動させながら、インクヘッド21Clから透明インクを吐出させる。本実施形態に係る制御装置30は、キャリッジ1を第1主走査方向Y1(左方)に移動させているときに、インクヘッド21Clから透明インクを吐出させる。本実施形態に係るインクジェットプリンタ10の印刷方向は、第1主走査方向Y1である。透明インクの吐出の際、第2紫外線ランプ25bは、記録媒体5に向かって紫外線を照射している。第2紫外線ランプ25bは、インク吐出ヘッド21よりも第2主走査方向Y2(右方)側に配置されている。即ち、印刷方向の後方に配置されている。第1印刷層Ly1の形成の際には、透明インクは吐出後すぐに第2紫外線ランプ25bの照射する紫外線によって硬化される。そこで、透明インクは、粒状感が残ったまま硬化される。そのため、マット調の印刷層の表面には比較的大きな凹凸が残る。このとき第1紫外線ランプ25aは、点灯させてもさせなくてもよい。制御装置30は、印刷領域の上方でキャリッジ1を第1主走査方向Y1に走査させることによって、1走査ライン分の印刷層を形成させる。この後、キャリッジ1は、第2主走査方向Y2に向かって戻される。本実施形態に係るインクジェットプリンタ10においては、このときインクは吐出されない。第2主走査方向は、戻り方向である。
【0042】
上記インクヘッド21Clの吐出動作において、制御装置30の吐出制御部31Cは、主走査方向Yに関して所望の解像度でインクドットが形成されるように、インクヘッド21Clを制御している。上記インクドットの解像度は、例えば、点字の印刷データに含まれている。解像度は、言い換えれば、インクドットの形成密度である。上記インクドットの形成密度は、主走査方向Yに関する光硬化性インクの最小着弾距離(光硬化性インク同士の着弾間隔のうち最も短い距離)で表されうる。例えば、2つのインクドットを第1のインクドットおよび第2のインクドットとすると、吐出制御部31Cは、光硬化性インクを吐出して第1のインクドットを形成するとともに、主走査方向Yに関して第1のインクドットから少なくとも最小着弾距離をおいて光硬化性インクを吐出して第2のインクドットを形成するように設定されている。上記最小着弾距離は、キャリッジ1の移動速度と、光硬化性インクを吐出する時間間隔とによって定まる。吐出制御部31Cは、インクヘッド21C〜21Clがインクを吐出する時間間隔を制御することで、最小着弾距離を所望の距離に制御している。最小着弾距離は、例えば、0.07mm、またはその近傍である。
【0043】
制御装置30は、1走査ライン分の印刷層を形成させた後、フィードモータ9aを駆動して、記録媒体5を副走査方向Xの下流X2側に所定長さ分だけ送り出す。上記所定長さは、
図3に示された長さLhである。長さLhは、ノズル24のピッチにノズル24の数を乗じた長さである。制御装置30は、記録媒体5を、1回の移動につき長さLhだけ副走査方向Xの下流X2側に送り出す。そこで、インク吐出ヘッド21の下方には、記録媒体5の未印刷領域が移動される。制御装置30は、記録媒体5を送り出した先でも同じようにインクの吐出および硬化を行う。インクジェットプリンタ10は、全印刷領域上をキャリッジ1が走査し終わるまで上記を繰り返すことで、第1印刷層Ly1を形成する。そこで、第1印刷層Ly1は、厚さ方向に関して、1回の吐出分の透明インクで形成されている。
【0044】
長さLhは、例えば、25.4mm、またはその近傍である。しかしながら、長さLhは、上記に限定されるわけではない。長さLhは、ここでは、記録媒体5が副走査方向Xの下流X2側に送り出されうる長さのうちの最大値である。1回の搬送につき記録媒体5が副走査方向Xの下流X2側に1回の搬送につき送り出される送り量は、Lh/N(Nは自然数)である。第1印刷層Ly1を形成する印刷条件では、Nは1である。他の印刷層の印刷条件では、Nは他の値に設定されてもよい。なお、以下ではNを「積層数」とも称する。
【0045】
第1印刷層Ly1の上には、第2印刷層Ly2が形成される。本実施形態に係る第2印刷層Ly2は、透明インクがいわゆる「グロス調」に形成された印刷層である。グロス調の印刷層の表面の凹凸は比較的小さく、そのためにグロス調の印刷層の表面は光沢を有する。第1印刷層Ly1の形成と第2印刷層Ly2の形成の間に、記録媒体5はいったん副走査方向Xの上流X1側に戻される。そこから、第2印刷層Ly2の形成が開始される。第2印刷層Ly2の形成時には、第1紫外線ランプ25aが点灯されている。第2紫外線ランプ25bは、消灯されている。第1紫外線ランプ25aは、インク吐出ヘッド21よりも第1主走査方向Y1(左方)側に配置されている。第1紫外線ランプ25aは、印刷方向の前方に配置されている。言い換えれば、第1紫外線ランプ25aは、戻り方向の後方に配置されている。第2印刷層Ly2の形成において、制御装置30は、キャリッジ1を第1主走査方向Y1に移動させながら、インクヘッド21Clに透明インクを吐出させる。吐出されたインクは、キャリッジ1が第2主走査方向Y2に向かって戻されているときに、第1紫外線ランプ25aから照射された紫外線を受けて硬化される。第2印刷層Ly2の形成においては、インクの吐出から硬化まで1走査分以上の時間が経過している。第1印刷層Ly1の形成の際にインクが吐出されてから紫外線が照射されるまでの時間を、例えば第1時間とすると、第2印刷層Ly2の形成の際にインクが吐出されてから紫外線が照射されるまでの第2時間は、上記第1時間よりも長い。そこで、その間、透明インクは重力の作用によって扁平になり、比較的滑らかな表面が形成される。
【0046】
上記のように、同じ透明インクによって印刷層を形成しても、特にインクの吐出から硬化までの時間によって、異なる質感の印刷層が形成される。より滑らかな表面状態を得るために、グロス調印刷においては、マット調印刷よりも1回の透明インクの吐出量を少なくしてもよい。吐出される透明インクの粒径を小さくすることによって、硬化されたインクの表面はより滑らかになる。しかしながら、インクの吐出量を少なくし、さらにインクが扁平になるまで硬化を待つことにより、1回のインクの吐出で形成される印刷層の厚さは薄くなる。
【0047】
制御装置30は、第2印刷層Ly2の形成において、第1印刷層Ly1形成の際よりも短い所定の距離だけ記録媒体5を副走査方向Xの下流X2側に移動させる。例えば、その送り長さは、第1印刷層Ly1形成時の送り長さLhの10分の1である。
【0048】
図6Aは、形成開始後の最初のステップにおける第2印刷層Ly2の縦断面図である。
図6Aの第1領域A1は、第2印刷層Ly2のうち最も副走査方向Xの下流X2側に位置する領域である。最初のステップにおいて、制御装置30は、インクヘッド21Clのノズル24のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた複数のノズル24から透明インクを吐出させ、吐出された透明インクを硬化させることによって、第1領域A1を形成させる。第1領域A1の副走査方向Xに関する長さは、Lh/10である。第1領域A1の第1印刷層Ly1上面からの高さは、
図6Aに示されるように、Tuである。高さTuは、1回のインクの吐出で形成される層の高さである。制御装置30は、続く2番目のステップにおいて、記録媒体5を副走査方向Xの下流X2側に送り長さLh/10だけ移動させる。
【0049】
図6Bは、
図6Aの次のパス時点における第2印刷層Ly2の縦断面図である。第2領域A2は、第2印刷層Ly2のうち第1領域A1の副走査方向Xの上流X1側に位置する領域である。第2領域A2は、2番目のステップに続く3番目のステップにおいて、インクヘッド21Clのノズル24のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた複数のノズル24から吐出される透明インクにより形成される。上記ノズル24は、
図6Aにおいて第1領域A1にインクを吐出したノズル24である。第2領域A2の副走査方向Xに関する長さは、Lh/10である。第2領域A2の第1印刷層Ly1上面からの高さはTuである。この第2領域A2の形成と同時に、3番目のステップでは、第1領域A1にもさらに透明インクが吐出され、硬化される。第1領域A1にインクを吐出するノズル24は、第2領域A2を形成するインクを吐出しているノズル24よりも副走査方向Xの下流X2側に設けられた複数のノズル24である。従って、最初のステップにおいて第1領域A1にインクを吐出したノズルと、3番目のステップにおいて第1領域A1にインクを吐出したノズルとは異なるノズルである。逆に、最初のステップにおいて第1領域A1にインクを吐出したノズルと、3番目のステップにおいて第2領域A2にインクを吐出したノズルとは同じノズルである。3番目のステップの結果、第1領域A1には、高さTuの層がさらに積層される。
図6Bの時点において、第1領域A1の高さは、2Tuである。
図6Bの時点における第1領域A1の高さは、第2領域A2の高さよりも高さTuだけ高い。
【0050】
第2印刷層Ly2は、上記3ステップを10回反復することによって形成される。
図6Cは、第1領域A1の積層が完成した時点における第2印刷層Ly2の縦断面図である。
図6Cの時点において、第1領域A1には10層の層が積層されている。第1領域A1の高さは、10Tuである。第2領域A2の高さは9Tuである。第1領域A1において10層の積層が完了するまでの間、第1領域A1には常に、第2領域A2よりも1層多く層が形成されている。従って、第1領域A1の高さは、常に高さTuだけ第2領域A2の高さよりも高くなっている。第2領域A2の高さと、第2領域A2よりも副走査方向Xの上流X1側に位置する第3領域A3の高さの差も同様である。以下、第4領域A4〜第10領域A10まで同様である。第2印刷層Ly2は、副走査方向Xの上流X1側に向かって下がる階段状の形状をなしている。ただし、実際には、段差部分は下方にだれ、なだらかな傾斜面を形成する。
図6Cに示された時点の後、第1領域A1は、インクヘッド21Clよりも副走査方向Xの下流X2側に移動する。その後の第2印刷層Ly2の形成においては、第1領域A1にインクは吐出されない。このように、第2印刷層Ly2は、厚さ方向に関して、10回の吐出分の透明インクで形成される。制御装置30は、インクヘッドの長さLhにつき10回、記録媒体5を副走査方向Xの下流X2方向に移動させる。
【0051】
第2印刷層Ly2の形成では、グロス調に印刷層を形成して点字の表面を滑らかに仕上げている。グロス調に仕上げることで1回の吐出によって形成される印刷層の厚さが薄くなるが、層を10回積層することによりそれを補っている。
【0052】
第2印刷層Ly2形成時の送り量は、制御装置30の送り量設定部31Aによって設定される。ここでは、送り量設定部31Aは、積層数Nに基づいて、第2印刷層Ly2形成時の送り量を設定する。第2印刷層Ly2形成時の送り量は、長さLh/Nに設定される。積層数Nは、例えば、点字の印刷データに含まれている。上記した例では、Nは10である。
【0053】
第3印刷層Ly3は、第2印刷層Ly2の上にホワイトインクによって形成される。第2印刷層Ly2と同様に、第3印刷層Ly3はグロス調に形成される。ただし、第2印刷層Ly2の場合と異なって、第3印刷層Ly3は、1地点につき1回の走査によって形成される。第3印刷層Ly3は、厚さ方向に関して、1回の吐出分のホワイトインクで形成される。制御装置30は、1回につき長さLhだけ記録媒体5を副走査方向Xの下流X2方向に移動させる。制御装置30は、上記動作を間欠的に繰り返して第3印刷層Ly3を形成させる。
【0054】
上記のようなプロセスによって、3層の印刷層からなる点字が、記録媒体5上に形成される。形成された点字において、1つのセル102内の点101は、点間距離L1(
図4参照)が0.5mm以上1.2mm以下になるように形成される。上記寸法は、0.12mmの公差を含む。従って、点間距離L1は、寸法と公差を合わせて、0.38mm以上
1.32mm以下に形成される。
【0055】
また、点101の高さT(
図5参照)は、0.55mm以上0.95mm以下の寸法に形成される。上記高さ寸法は、0.095mmの公差を含む。従って、点101の高さTは、寸法と公差を合わせて、0.455mm以上1.045mm以下に形成される。
【0056】
さらに、点101の直径D1(
図4、
図5参照)は、1.4mm以上1.7mm以下の寸法に形成される。上記直径の寸法は、0.2mmの公差を含む。従って、点101の直径D1は、寸法と公差を合わせて、1.2mm以上1.9mm以下に形成される。
【0057】
点101の直径D1は、インクヘッド21C〜21Clにおける複数のノズル24のピッチP1よりも大きく形成されてもよい。点101の直径D1は、点字100の印刷データに基づいて、印刷制御部31が設定する。例えば、ピッチP1が0.14mm、点101の直径D1が1.2mm以上1.9mm以下のとき、点101の直径D1はピッチP1よりも大きい。
【0058】
文字100は、その間の距離が、2.5mm以上5.0mm以下になるように形成される。即ち、セル間距離L2(
図4参照)が上記寸法になるように形成される。セル間距離L2は、0.2mmの公差を含む。従って、セル間距離L2は、寸法と公差を合わせて、2.3mm以上5.2mm以下に形成される。
【0059】
点字の点101は、その直径D1よりも小さいインクドットから形成されている。点101を構成するインクドットの着弾時の直径は、点字の点101の直径D1よりも小さい。インクドットは必ずしも円形ではないため、ここでのインクドットの着弾時の直径は、インクドットの着弾面積を同一面積の円に換算した場合の等価直径である。インクドットの着弾時の直径は、点101の直径D1の2分の1以下である。あるいは、インクドットの着弾時の直径は、点101の直径D1の3分の1以下である。設定により、インクドットの着弾時の直径を、点101の直径D1の10分の1以下にすることもできる。逆に言えば、インク吐出ヘッド21から吐出されたインクが硬化されてできるインクドットは、複数個集まって、点字の1つの点101を形成する。
【0060】
インクドットの着弾時の直径は、制御装置30のサイズ設定部32によって設定される。インクドットの着弾時の直径とは、インクヘッド21C〜21Clから吐出された光硬化性インクが、記録媒体5もしくは記録媒体5上の光硬化性インクに着弾する際の直径である。インクドットの着弾時の直径は、例えば、0.08mm、またはその近傍である。ここでは、サイズ設定部32は、光硬化性インクの着弾時の直径を点101の直径D1よりも小さく設定する。しかしながら、インクドットの着弾時の直径は、上記に限定されるわけではない。また、インクドットの着弾時の直径は、印刷条件によって異なってもよい。例えば、予め定められた複数のインクドットのサイズから、印刷条件ごとに1つまたは複数のサイズが選択されてもよい。
【0061】
本実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、第2印刷層Ly2の形成において、記録媒体5を1回につき長さLh/10だけ送るが、その送り長さLh/10は、点101の直径D1よりも大きくなるように設定される。言い換えれば、インク吐出ヘッド21の長さLhを所与の長さとして、Lh/Nが点101の直径D1よりも大きくなるような自然数N(Nは2以上の自然数)が設定される。Nは、第2印刷層Ly2を形成する際の積層数である。本実施形態では、Nは「10」である。勿論、Nには上記条件を満たす他の自然数が好適に設定されてもよい。例えば、Nは15等に設定されてもよい。
図7は、記録媒体5の送り長さLh/N(ここでは、N=10)と、点101の配置との関係を示す図である。
図7に示されるように、送り長さLh/10は、点101の直径D1よりも大きい。なお、
図7の点101においてハッチングが施された部分は、
図7に示された時点において形成されている点101の部分を示している。
【0062】
また、
図7に示されるように、第2印刷層Ly2の形成における送り長さLh/Nは、副走査方向Xに関する点間距離L1よりも短くなるように設定される。さらに、送り長さLh/Nは、副走査方向Xに関するセル間距離L2よりも短い。あるいは、送り長さLh/Nは、副走査方向Xに関して、隣り合うセル102において対応する位置に配置されている点101同士の間の距離、即ち、セル102のピッチL3(
図4も参照)よりも短い。このように、長さLh/Nは、点101の直径D1よりも大きくなるとともに、点間距離L1、セル間距離L2、およびセルのピッチL3よりも小さくなるように設定される。ただし、上記は1つの設定例であって、必ずしも上記を満たさなくともよい。また、点101の直径D1、点間距離L1、セル間距離L2、およびセル間ピッチL3のうちの一部についてのみ上記を満たしてもよい。
【0063】
例えば、1つの印刷層を形成する際の記録媒体5の1回の送り量Lh/Nは、副走査方向Xに関する点間距離L1よりも長くなるように設定されてもよい。例えば、長さLhが25.4mmであり、積層数Nが16の場合には、1回の送り量Lh/Nは、1.59mmとなる。この長さは、点間距離L1(0.38mm以上
1.32mm以下)よりも長い。ただし、1つの印刷層を形成する際の記録媒体5の1回の送り量Lh/Nは、副走査方向Xに関する点間距離L1よりも短くなるように設定されてもよい。例えば、長さLhが25.4mmであり、積層数Nが96の場合には、1回の送り量Lh/Nは、0.26mmとなる。この長さは、点間距離L1(0.38mm以上
1.32mm以下)よりも短い。また、記録媒体5の1回の送り量Lh/Nは、副走査方向Xに関するセル間距離L2よりも長くてもよい。例えば、長さLhが25.4mmであり、積層数Nが4の場合には、1回の送り量Lh/Nは、6.35mmとなる。この長さは、セル間距離L2(2.3mm以上5.2mm以下)よりも長い。また、記録媒体5の1回の送り量Lh/Nは、点101の直径D1より大きくてもよい。例えば、長さLhが25.4mmであり、積層数Nが8の場合には、1回の送り量Lh/Nは、3.18mmとなる。この長さは、点101の直径D1(1.2mm以上1.9mm以下)よりも大きい。ただし、記録媒体5の1回の送り量Lh/Nは、点101の直径D1より小さくてもよい。例えば、長さLhが25.4mmであり、積層数Nが16の場合には、1回の送り量Lh/Nは、1.59mmとなる。この長さは、点101の直径D1(1.2mm以上1.9mm以下)よりも小さくなりうる。
【0064】
また、主走査方向Yに関する光硬化性インクの最小着弾距離は、点101の直径D1よりも小さくなるように設定されてもよい。例えば、上記光硬化性インクの最小着弾距離が0.07mmの場合、最小着弾距離は、点101の直径D1(1.2mm以上1.9mm以下)よりも小さい。さらに、主走査方向Yに関する光硬化性インクの最小着弾距離は、点間距離L1よりも小さくなるように設定されてもよい。例えば、上記光硬化性インクの最小着弾距離が0.07mmの場合、最小着弾距離は、点間距離L1(0.38mm以上0.62mm以下)よりも小さい。
【0065】
なお、上記に説明した点字の形成方法では、印刷層の数は「3」であったが、それに限られない。第1印刷層に重ねて形成される追加の印刷層の数は、例えば1層であってもよい。その場合、合計の印刷層の数は2層である。
【0066】
また、上記に説明した点字の形成方法では、第2印刷層Ly2の形成において、N回の積層印刷が実施されていたが、それに限られない。また、積層印刷が実施される印刷層は、第2印刷層に限られない。積層印刷が実施される印刷層は、第2印刷層以外の印刷層でもよく、また、複数の印刷層であってもよい。積層印刷による印刷層は形成されず、すべての印刷層が1回の走査で形成されていてもよい。いずれの場合であっても、印刷層の数は8層あれば足りると考えられている。即ち、印刷層の層数は8層以下であり、追加印刷層の層数は7層以下であってもよい。さらには、点字を形成するインクの種類は、透明インクとホワイトインクに限られず、例えば、カラーインクを含んでいてもよい。例えば、上記説明とは別の好適な実施形態では、第1印刷層にマット調の透明インク層(単層)、第2印刷層にグロス調の透明インク層(多層)、第3印刷層にカラーインク層(単層)が形成される。また、さらに別の好適な実施形態では、第1印刷層にマット調の透明インク層(単層)、第2印刷層にグロス調の透明インク層(多層)、第3印刷層にグロス調の透明インク層(多層)、第4印刷層にホワイトインク層(単層)が形成される。さらに別の好適な実施形態では、第1印刷層にマット調の透明インク層(単層)、第2印刷層にグロス調の透明インク層(多層)、第3印刷層にグロス調の透明インク層(多層)、第4印刷層にカラーインク層(単層)が形成される。その他、印刷層の数、種類、順番は、あらゆる組み合わせが可能である。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態では、インクジェットプリンタ10は、記録媒体5上に立体的な印刷物を形成する。
図8は、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10が形成する立体的な印刷物の一例を示す図である。
図8に示された立体的な印刷物は、立体サイン110である。
図8に示される立体サイン110は、全体が記録媒体5から突起している。さらに、ハッチングされていない部分が、ハッチング部分に比べて相対的に陥没している。立体サイン110では、ハッチング部分とハッチングされていない部分との境界の平面形状が、所定のサインを表している。上記境界は丸みを帯びて形成されている。本実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、例えば、
図8の立体サイン110のような立体印刷物を形成する。立体印刷物を形成するインクの種類は限定されないが、ここではカラーインクと透明インクとによって形成される場合を説明する。
【0068】
図9は、
図8の立体サイン110のIX−IX断面図である。ただし、
図9は模式図であって、必ずしも実際の各部のプロポーションを反映していない。
図9に図示されるように、立体サイン110は、4層の印刷層から形成されている。上記4層の印刷層のうち第1印刷層Ly11は、記録媒体5上に直接形成されている。第1印刷層Ly11は、4層の印刷層のうち最も下の層である。第1印刷層Ly11は、透明インクによって形成されている。第2印刷層Ly12は、上記4層の印刷層のうち、第1印刷層Ly11の直上に形成された印刷層である。第2印刷層Ly12も、透明インクによって形成されている。第3印刷層Ly13は、上記4層の印刷層のうち、第2印刷層Ly12の直上に形成された印刷層である。第3印刷層Ly13も、透明インクによって形成されている。第4印刷層Ly14は、上記4層の印刷層のうち、第3印刷層Ly13の直上に形成された印刷層である。第4印刷層Ly14は、4層の印刷層のうち最も上の層である。第4印刷層Ly14は、カラーインクによって形成されている。
【0069】
本実施形態に係る第1印刷層Ly11は、透明インクがマット調に形成された印刷層である。第1印刷層Ly11の形成において、本実施形態に係る制御装置30は、第1実施形態と同様、キャリッジ1を第1主走査方向Y1に移動させながら、インクヘッド21Clから透明インクを吐出させる。また、制御装置30は、第2紫外線ランプ25bから紫外線を照射させ、吐出された透明インクをすぐに硬化させる。本実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、第1実施形態と同様、上記動作を繰り返して第1印刷層Ly11を形成する。第1実施形態と同様に、記録媒体5は、1走査ラインの印刷の後、副走査方向Xの下流X2方向に長さLhだけ移動される。第1印刷層Ly11は、厚さ方向に関して、1回の吐出分の透明インクで形成されている。
【0070】
第1印刷層Ly11の上には、第2印刷層Ly12が形成される。本実施形態に係る第2印刷層Ly12は、透明インクがグロス調に形成された印刷層である。第1印刷層Ly11の形成と第2印刷層Ly12の形成との間に、記録媒体5はいったん副走査方向Xの上流X1側に戻される。そこから、第1印刷層Ly11上に第2印刷層Ly12が形成される。第1実施形態の場合と同様に、制御装置30は、キャリッジ1を第1主走査方向Y1に移動させながら、インクヘッド21Clに透明インクを吐出させる。吐出されたインクは、キャリッジ1が第2主走査方向Y2に向かって戻されているときに、第1紫外線ランプ25aから照射された紫外線を受けて硬化される。
【0071】
第1実施形態と同様に、制御装置30は、例えば、1回につきLh/10だけ記録媒体5を副走査方向Xの下流X2側に移動させながら、順次、第2印刷層Ly12を形成させる。第2印刷層Ly12は、第1実施形態において第2印刷層Ly2が形成されたのと同様のプロセスで形成される。第2印刷層Ly12は、厚さ方向に関して、複数回の吐出分の透明インクで形成されている。第2印刷層Ly12は、立体サイン110の上面のうち相対的に陥没した部分を形成する。そこで、第2印刷層Ly12は、表面が滑らかなグロス調に形成されている。
【0072】
第3印刷層Ly13は、立体サイン110の上面のうち相対的に突起した部分を形成する。第3印刷層Ly13も、グロス調の印刷層である。第3印刷層Ly13も、第2印刷層Ly12と同様に複数回の走査で形成される。第3印刷層Ly13の側面と上面の境界は、
図9に示されるように丸みを帯びて形成されている。この丸みは、階段状の段差によって構成されている。
図9では、第3印刷層Ly13を構成する複数の層のうち上の2段が階段状の段差を作っている。
図9のエッジ部Eは、上記2層の形成において、インクが吐出されなかった部分である。上記2層に係る印刷データは、その下側の層に係る印刷データと異なっている。実際の立体サインの形成においては、段差はだれ、滑らかな曲面を形成する。第3印刷層Ly13の形成においては、このように角に丸みを帯びさせることが可能である。なお、上記した「2層」は、勿論例示であって、2層でなくてもよい。
【0073】
第4印刷層Ly14は、立体サイン110表層のカラー層を形成する。第4印刷層Ly14は、カラーインクによって形成され、第1印刷層Ly11、第2印刷層Ly12、および第3印刷層Ly13によって形成された立体サイン110の表層に所定の色を付ける。第4印刷層は、1回の走査で印刷される。
【0074】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ10によれば、立体的な印刷物を好適に製作することができる。ただし、上記に説明した4層の印刷層による立体サインの製作方法は1つの例示であって、ここでも印刷層の数、種類、順番はあらゆる組み合わせが可能である。例えば、立体サインの上面を光沢仕上げにするために、カラー層の上にさらに透明インク(グロス調)がオーバーコートされてもよい。立体サインの形状も
図8に示したものに限定されない。
【0075】
以上、本発明の実施の一形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限らず、他に種々の形態にて実施することができる。
【0076】
例えば、上記した実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、キャリッジ1が第1主走査方向Y1に移動されるときに印刷を行ったが、第2主走査方向Y2に移動されるときにも印刷を行ってもよい。即ち、双方向印刷を行ってもよい。キャリッジ1が第2主走査方向Y1に移動されながら印刷が行われるときには、マット印刷において第1紫外線ランプ25aから紫外線が照射され、グロス印刷において第2紫外線ランプ25bから紫外線が照射される。
【0077】
上記した実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、主走査方向Yに移動可能なキャリッジ1を備え、キャリッジ1にインク吐出ヘッド21が搭載されていた。しかし、キャリッジ1は必ずしも必要ではない。インクジェットプリンタは、インク吐出ヘッド21が主走査方向Yに移動しないラインヘッド式のインクジェットプリンタであってもよい。インクジェットプリンタは、主走査方向Yに延びるインク吐出ヘッドが副走査方向Xに並んで配置され、記録媒体が副走査方向Xに搬送可能に構成されたものであってもよい。また、主走査方向Yに延びるインク吐出ヘッドが副走査方向Xに並んで配置され、インク吐出ヘッドが副走査方向Xに移動可能に構成されたものであってもよい。
【0078】
また、上記した実施形態に係るインクジェットプリンタ10は、記録媒体5を連続的に供給する方式であったが、いわゆるフラットベッドタイプのインクジェットプリンタでもよい。
本発明に係る点字の形成方法は、記録媒体5に向かって光硬化性インクを吐出し、吐出された光硬化性インクに光を照射して硬化させることによって印刷層を形成する工程と、前記印刷層の上に光硬化性インクを吐出し、吐出された光硬化性インクに光を照射して硬化させることによって少なくとも1層の他の印刷層を形成する工程とを含む。前記印刷層および前記他の印刷層は、1つのセル102における1つの点101と隣接する点101との間の距離が0.38mm以上1.32mm以下の点字を形成する。