特許第6408186号(P6408186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6408186ポリオレフィン系合成繊維処理剤及びポリオレフィン系合成繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6408186
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系合成繊維処理剤及びポリオレフィン系合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/17 20060101AFI20181004BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20181004BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20181004BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20181004BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20181004BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20181004BHJP
   D06M 101/20 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   D06M13/17
   D06M13/02
   D06M13/292
   D06M13/256
   D06M13/262
   D06M13/184
   D06M101:20
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-87606(P2018-87606)
(22)【出願日】2018年4月27日
【審査請求日】2018年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 昌武
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−003271(JP,A)
【文献】 特開2011−074500(JP,A)
【文献】 特開2017−110312(JP,A)
【文献】 特開昭59−199871(JP,A)
【文献】 特開昭51−032897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の直鎖状炭化水素化合物を含有して成ることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維処理剤。
ポリオキシアルキレン誘導体:炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物。
直鎖状炭化水素化合物:炭素数10〜100の直鎖状炭化水素化合物。
【請求項2】
前記直鎖状炭化水素化合物が、ポリエチレンである請求項1に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項3】
前記直鎖状炭化水素化合物が、炭素数20〜60のものである請求項1又は2に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン誘導体及び前記直鎖状炭化水素化合物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体を50〜99質量%及び前記直鎖状炭化水素化合物を1〜50質量%の割合で含有して成る請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項5】
更にアニオン界面活性剤を含有して成る請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項6】
前記アニオン界面活性剤が、リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤、硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤、及び脂肪酸塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項7】
前記ポリオキシアルキレン誘導体、前記直鎖状炭化水素化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体を20.0〜80.0質量%、前記直鎖状炭化水素化合物を0.1〜20.0質量%、及び前記アニオン界面活性剤を5.0〜50.0質量%の割合で含有して成る請求項5又は6に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系合成繊維処理剤が、不織布用のポリオレフィン系合成繊維に付与するものである請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリオレフィン系合成繊維処理剤が付着していることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたカード通過性を付与し、得られるカードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与するポリオレフィン系合成繊維処理剤及びかかる処理剤が付着したポリオレフィン系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつ等の衛生製品として、体液を吸収するために高吸収性高分子の表面にポリオレフィン系の合成繊維で被覆した製品が知られている。高吸収性高分子の表面を被覆する合成繊維は、特に体液をすばやく吸収する初期親水性、繰り返し体液をすばやく吸収する耐久親水性、及び高吸収性高分子に保持された水分の漏れを防止する濡れ戻り防止性が要求される。ポリオレフィン系合成繊維において、上記特性を付与する観点から、ポリオレフィン系合成繊維の表面に界面活性剤等を含有するポリオレフィン系合成繊維処理剤を付与する処理が行われることがある。しかしながら、ポリオレフィン系の合成繊維として、カードローラー(カード機)を使用する乾式法により製造される不織布等が用いられる場合、カード通過性も必要とされる。
【0003】
従来、特許文献1に開示されるポリオレフィン系合成繊維処理剤が知られている。特許文献1は、所定のポリオキシアルキレン変性シリコーン及び炭素数28以上の炭化水素基を疎水基とする界面活性剤を含むポリオレフィン系合成繊維処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−80672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら従来のポリオレフィン系合成繊維処理剤では、優れたカード通過性、カードウェブの初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性という各機能の両立を十分に図ることができなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れたカード通過性を付与し、カードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与することができるポリオレフィン系合成繊維処理剤及びポリオレフィン系合成繊維を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定のポリオキシアルキレン誘導体及び特定の直鎖状炭化水素化合物を含有して成るポリオレフィン系合成繊維処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の直鎖状炭化水素化合物を含有して成ることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維処理剤が提供される。
【0009】
ポリオキシアルキレン誘導体は、炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物である。直鎖状炭化水素化合物は、炭素数10〜100の直鎖状炭化水素化合物である。
【0010】
前記直鎖状炭化水素化合物が、ポリエチレンであることが好ましい。
前記直鎖状炭化水素化合物が、炭素数20〜60のものであることが好ましい。
前記ポリオキシアルキレン誘導体及び前記直鎖状炭化水素化合物の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体を50〜99質量%及び前記直鎖状炭化水素化合物を1〜50質量%の割合で含有して成ることが好ましい。
【0011】
更にアニオン界面活性剤を含有して成ることが好ましい。
前記アニオン界面活性剤が、リン酸エステル塩型アニオン界面活性剤、スルホン酸塩型アニオン界面活性剤、硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤、及び脂肪酸塩型アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0012】
前記ポリオキシアルキレン誘導体、前記直鎖状炭化水素化合物、及び前記アニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記ポリオキシアルキレン誘導体を20.0〜80.0質量%、前記直鎖状炭化水素化合物を0.1〜20.0質量%、及び前記アニオン界面活性剤を5.0〜50.0質量%の割合で含有して成ることが好ましい。
【0013】
前記ポリオレフィン系合成繊維処理剤が、不織布用のポリオレフィン系合成繊維に付与するものであることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、前記ポリオレフィン系合成繊維処理剤が付着していることを特徴とするポリオレフィン系合成繊維が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、優れたカード通過性を付与し、カードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るポリオレフィン系合成繊維処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の処理剤は、下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の直鎖状炭化水素化合物を含有して成るものである。
【0016】
ポリオキシアルキレン誘導体は、炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物である。
【0017】
直鎖状炭化水素化合物は、炭素数10〜100の直鎖状炭化水素化合物である。
本実施形態の処理剤に供するポリオキシアルキレン誘導体は、炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物である。炭素数24〜60の1価脂肪族アルコールとしては、特に制限はなく、例えばテトラコシルアルコール、ヘキサコシルアルコール、オクタコシルアルコール、トリアコンチルアルコール、ドトリアコンチルアルコール、テトラコンチルアルコール、ペンタコンチルアルコール、ヘキサコンチルアルコール、2−メチル−1−オクタコンシルアルコール、8−メチル−1−テトラコンチルアルコール、20−メチル−ペンタコンチルアルコール等が挙げられる。1価脂肪族アルコールの炭素数を24以上に規定することにより、本発明の効果、特にカード通過性、耐久親水性を向上できる。一方、1価脂肪族アルコールの炭素数を60以下に規定することにより、本発明の効果、特に耐久親水性を向上できる。
【0018】
また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種の付加モル数を5モル以上に規定することにより、本発明の効果、特に初期親水性を向上できる。一方、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種の付加モル数を100モル以下に規定することにより、本発明の効果、特に耐久親水性を向上できる。
【0019】
ポリオキシアルキレン誘導体としては、特に制限はなく、例えばポリオキシエチレン(10モル:エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加モル数を示す。以下同じ。)トリアコンチルエーテル、ポリオキシエチレン(80モル)トリアコンチルエーテル、ポリオキシエチレン(80モル)ペンタコンチルエーテル、ポリオキシエチレン(40モル)ポリオキシプロピレン(40モル)ペンタコンチルエーテル、ポリオキシエチレン(40モル)テトラコンチルエーテル等が挙げられる。なお、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加形態として制限は特になく、ブロック付加、ランダム付加のいずれでもよい。ポリオキシアルキレン誘導体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本実施形態の処理剤に供する直鎖状炭化水素化合物は、炭素数10〜100のものであり、炭素数20〜60のものが好ましい。炭素数を10以上に規定することにより、本発明の効果、特にカード通過性を向上できる。一方、炭素数を100以下に規定することにより、本発明の効果、特に濡れ戻り防止性を向上できる。
【0021】
直鎖状炭化水素化合物としては、特に制限はなく、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でもポリエチレンが好ましい。直鎖状炭化水素化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本実施形態の処理剤は、処理剤中における上述したポリオキシアルキレン誘導体及び直鎖状炭化水素化合物の含有比率に制限はない。上記のポリオキシアルキレン誘導体及び直鎖状炭化水素化合物の含有割合の合計を100質量%とすると、ポリオキシアルキレン誘導体を50〜99質量%及び直鎖状炭化水素化合物を1.0〜50.0質量%の割合で含有して成ることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0023】
本実施形態の処理剤は、更にアニオン界面活性剤を含有して成ることが好ましい。アニオン界面活性剤を配合することにより、本発明の効果、特に初期親水性をより向上できる。アニオン界面活性剤の種類に限定はなく、例えばオクチルリン酸エステル塩、イソオクチルリン酸エステル塩、デシルリン酸エステル塩、ドデシルリン酸エステル塩、トリデシルリン酸エステル塩、テトラデシルリン酸エステル塩、イソオクチルリン酸エステル塩、2−エチルヘキシルリン酸エステル塩、イソトリデシルリン酸エステル塩、イソヘキサデシルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンイソオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩型アニオン界面活性剤や、オクチルスルホン酸塩、デシルスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、テトラデシルスルホン酸塩、ヘキサデシルスルホン酸塩、オクチルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸塩型アニオン界面活性剤や、硫酸オクチル塩、硫酸デシル塩、硫酸ドデシル塩、硫酸テトラデシル塩、硫酸ヘキサデシル塩等の硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤や、オクタン酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩等の脂肪酸塩型アニオン界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩から構成されるアニオン界面活性剤であることが好ましい。アニオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本実施形態の処理剤は、処理剤中における上述したポリオキシアルキレン誘導体、直鎖状炭化水素化合物、及びアニオン界面活性剤の含有比率に制限はない。上記のポリオキシアルキレン誘導体、直鎖状炭化水素化合物、及びアニオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、ポリオキシアルキレン誘導体を20.0〜80.0質量%、直鎖状炭化水素化合物を0.1〜20.0質量%、及びアニオン界面活性剤を5.0〜50.0質量%の割合で含有して成ることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0025】
本実施形態の処理剤は、ポリオレフィン系合成繊維に付与される。特に不織布に用いられるポリオレフィン系合成繊維に付与すると、得られる不織布の耐久親水性、濡れ戻り防止性、及び初期親水性の各効果の発現がより大きくなるため好ましい。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るポリオレフィン系合成繊維(以下、合成繊維という)を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着しているポリオレフィン系合成繊維である。ポリオレフィン系合成繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、芯鞘構造の複合繊維であって、芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等であってもよい。
【0027】
第1実施形態の処理剤(溶媒を含まない)を上記合成繊維に付着させる割合は、特に制限はないが、第1実施形態の処理剤を上記合成繊維に対して0.05〜5.0質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上させることができる。また、第1実施形態の処理剤を付着させる工程は、特に限定されず、例えば紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれであってもよい。紡糸工程又は捲縮工程の前、或いは後に付着させることが、本発明の効果を良好に発現させる観点から好ましい。付着方法は、公知の方法を適宜採用することができ、例えば浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等が挙げられる。これらの中で本発明の効果を良好に発現させる観点から浸漬給油法、スプレー給油法、又はローラー給油法が好ましい。第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。
【0028】
上記実施形態のポリオレフィン系合成繊維処理剤及びポリオレフィン系合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ポリオレフィン系合成繊維処理剤において、ポリオキシアルキレン誘導体として、炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物を使用した。また、直鎖状炭化水素化合物として、炭素数10〜100の直鎖状炭化水素化合物を使用した。したがって、優れたカード通過性を付与できる。また、カードローラー(カード機)により得られたカードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与できる。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0031】
試験区分1(ポリオレフィン系合成繊維処理剤の調製)
・ポリオレフィン系合成繊維処理剤(実施例1)の調製
ポリオキシエチレン(10モル)トリアコンチルエーテル(A−1)の35.0g、炭素数30のポリエチレン(B−1)5.0g、及びオクチルリン酸エステルカリウム塩(C−1)10.0gを混合し、950.0gの水を加え、撹拌して水性分散液とし、実施例1のポリオレフィン系合成繊維用処理剤の5.0%水性液を得た。
【0032】
・ポリオレフィン系合成繊維処理剤(実施例2〜14及び比較例1〜13)の調製
実施例1のポリオレフィン系合成繊維処理剤の調製と同様に、実施例2〜14及び比較例1〜13の処理剤を調製した。表1において、ポリオキシアルキレン誘導体の種類、脂肪族アルコールの炭素数、エチレンオキサイド(以下、EOという)又はプロピレンオキサイド(以下、POという)の付加モル数を示す。表2において、各例の処理剤で使用したポリオキシアルキレン誘導体、ポリエチレン、アニオン界面活性剤、及びその他成分の種類、並びに処理剤中における各成分の含有比率(%)を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
表1及び2において、
A−1:ポリオキシエチレン(10モル)トリアコンチルエーテル、
A−2:ポリオキシエチレン(80モル)トリアコンチルエーテル、
A−3:ポリオキシエチレン(80モル)ペンタコンチルエーテル、
A−4:ポリオキシエチレン(40モル)ポリオキシプロピレン(40モル)ペンタコンチルエーテル、
A−5:ポリオキシエチレン(40モル)テトラコンチルエーテル、
ra−1:ポリオキシエチレン(10モル)ドコシルエーテル、
ra−2:ポリオキシエチレン(10モル)ペンタヘキサコンチルエーテル、
ra−3:ポリオキシエチレン(3モル)トリアコンチルエーテル、
ra−4:ポリオキシエチレン(120モル)トリアコンチルエーテル、
ra−5:ポリオキシエチレン(60モル)ポリオキシプロピレン(60モル)トリアコンチルエーテル、
ra−6:ポリオキシエチレン(10モル)オクチルエーテル、
B−1:炭素数30のポリエチレン、
B−2:炭素数50のポリエチレン、
rb−1:炭素数6のポリエチレン、
rb−2:炭素数150のポリエチレン、
C−1:オクチルリン酸エステルカリウム塩、
C−2:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、
C−3:ドデシル硫酸ナトリウム塩、
C−4:オクタン酸カリウム塩、
D−1:ポリオキシアルキレン変性シリコーン(POEO含量50%、PO/EO=50/50、分子量5,000)、
を示す。
【0035】
試験区分2(ポリオレフィン系合成繊維処理剤の付着と評価)
ポリオレフィン系合成繊維として、鞘部がポリエチレンであり、芯部がポリエステルであり、繊度2.2デシテックス、繊維長51mmのポリオレフィン系複合繊維を使用した。試験区分1で調製した各例のポリオレフィン系合成繊維用処理剤の水性液を、ポリオレフィン系複合繊維に、付着量(溶媒を除く)が0.35質量%となるようスプレー給油法で付着させ、80℃の熱風乾燥機で1時間乾燥して、処理済みポリオレフィン系合成繊維処理綿を得た。
【0036】
・原綿評価項目としてカード通過性の評価
前記の処理済みポリオレフィン系合成繊維処理綿20gを、20℃で65%RHの恒温室内で24時間調湿した後、ローラーカード(カード機)に供した。投入量に対して排出された量の割合を算出し、下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
【0037】
・カード通過性の評価基準
◎:排出量が85%以上。
○:排出量が60%以上且つ85%未満。
×:排出量が60%未満。
【0038】
試験区分3(ポリオレフィン系合成繊維不織布の作成と評価)
・耐久親水性の評価
試験区分2で得た処理済みポリオレフィン系合成繊維処理綿100gを、20℃で65%RHの恒温室内にて24時間調湿した後、ローラーカード(カード機)に供して、目付け20g/mのカードウェブを作製した。得られたカードウェブを140℃で10秒の熱風処理を行い、耐久親水性評価の試料とした。この試料を10cm×10cmの小片に裁断し、20℃で60%RHの恒温室内にて24時間調湿した。重ねた5枚の濾紙の上に調湿された不織布を置き、さらにその上の中央に両端が開放された内径1cmの円筒を垂直に立て、この円筒に0.9%生理食塩水10mlを注入し、不織布に食塩水が完全に吸収されるまでの時間を測定した。その後、不織布を取り出し、40℃で90分間送風乾燥した。同様の操作を合計3回繰り返し、3回目の時間から下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
【0039】
・耐久親水性の評価基準
◎:生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が5秒未満。
○:生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が5秒以上且つ8秒未満。
×:生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が8秒以上。
【0040】
・濡れ戻り防止性の評価
前記の耐久親水性評価の試料を10cm×10cmの小片に裁断し、20℃で65%RHの恒温室内にて24時間調湿した。市販されている紙おむつの最外部の不織布素材から10cm×10cmの不織布片を切除し、その切除部に前記の調湿された10cm×10cmの小片を取り付けて、濡れ戻り防止性評価試料とした。取り付けた小片が上向きになるように濡れ戻り防止性評価試料を水平に置き、該小片の中央に両端が開放された内径6cmの円筒を垂直に立て、この円筒に水80mlを注入し、5分間静置して、紙おむつ内部に水を吸収させた。次に取り付けた小片上に10cm×10cmの濾紙を15枚重ねて載せ、更にその上に10cm×10cmで5.0kgの錘板を載せて、2分間荷重した後、15枚重ねた濾紙の総質量を測量し、その質量の増加率を算出して、下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
【0041】
・濡れ戻り防止性の評価基準
◎:質量増加率が1%未満。
○:質量増加率が1%以上且つ2%未満。
×:質量増加率が2%以上。
【0042】
・初期親水性の評価
前記の耐久親水性評価の試料を、20℃で65%RHの恒温室内にて24時間調湿した後、水平板上に置き、ビューレットを用いて10mmの高さから0.5mlの水滴を滴下させ、その水滴が完全に試料中に吸収されてしまうまでに要する時間(透水までに要する時間)を測定し、下記の評価基準で評価した。結果を表2に示す。
【0043】
・初期親水性の評価基準
◎:透水までに要する時間が0.5秒未満。
○:透水までに要する時間が0.5秒以上且つ2.0秒未満。
×:透水までに要する時間が2.0秒以上。
【0044】
表2に示されるように、直鎖状炭化水素化合物を含有しない比較例1,2,12,13は、各実施例に対して、特に濡れ戻り防止性の評価が劣ることが確認される。また、ポリオキシアルキレン誘導体を含有しない比較例3は、各実施例に対して、特に、カード通過性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性の評価が劣ることが確認される。また、ポリオキシアルキレン誘導体を構成する脂肪族アルコールの炭素数が24未満である比較例4,9は、各実施例に対して、特にカード通過性及び耐久親水性の評価が劣ることが確認される。また、ポリオキシアルキレン誘導体を構成する脂肪族アルコールの炭素数が65である比較例5は、各実施例に対して、特に耐久親水性、濡れ戻り防止性、及び初期親水性の評価が劣ることが確認される。また、ポリオキシアルキレン誘導体を構成するアルキレンオキサイドの付加モル数が3である比較例6は、各実施例に対して、特に耐久親水性、濡れ戻り防止性、及び初期親水性の評価が劣ることが確認される。また、ポリオキシアルキレン誘導体を構成するアルキレンオキサイドの付加モル数の合計が120である比較例7,8は、各実施例に対して、特に耐久親水性の評価が劣ることが確認される。ポリエチレンの炭素数が6である比較例10は、各実施例に対して、特にカード通過性の評価が劣ることが確認される。ポリエチレンの炭素数が150である比較例11は、各実施例に対して、特に耐久親水性、濡れ戻り防止性、及び初期親水性の評価が劣ることが確認される。
【0045】
以上の表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、優れたカード通過性を付与し、同時に得られるカードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与することができるという効果がある。
【要約】
【課題】優れたカード通過性を付与し、カードウェブに優れた初期親水性、耐久親水性、及び濡れ戻り防止性を付与することができるポリオレフィン系合成繊維処理剤及びポリオレフィン系合成繊維を提供する。
【解決手段】本発明のポリオレフィン系合成繊維処理剤は、下記のポリオキシアルキレン誘導体及び下記の直鎖状炭化水素化合物を含有して成ることを特徴とする。ポリオキシアルキレン誘導体は、炭素数24〜60の1価脂肪族アルコール1モルに対し、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種を5〜100モルの割合で付加させた化合物である。直鎖状炭化水素化合物は、炭素数10〜100の直鎖状炭化水素化合物である。本発明のポリオレフィン系合成繊維は、前記ポリオレフィン系合成繊維処理剤が付着していることを特徴とする。
【選択図】なし