(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408203
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】未加硫ゴムからの異物除去方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 47/08 20060101AFI20181004BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
B29C47/08
B29B13/10
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-155148(P2013-155148)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-24559(P2015-24559A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月13日
【審判番号】不服2017-13891(P2017-13891/J1)
【審判請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶知
【合議体】
【審判長】
須藤 康洋
【審判官】
加藤 友也
【審判官】
渕野 留香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−301560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00-47/96
B29B13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定すき間をあけて周面どうしを対向させて配置した一対の回転ローラを備えたローラヘッドを、ゴム押出機の押出し口に設置し、このゴム押出機により加硫ゴム異物が混在した未加硫ゴムを押出すとともに、前記一対の回転ローラを回転駆動させて、前記ゴム押出機により押出した未加硫ゴムを、前記加硫ゴム異物の粒径よりも小さく設定された前記所定すき間を通過させてシーティングし、次いで、このシーティングした未加硫ゴムシートの幅方向両端部をトリムすることを特徴とする未加硫ゴムからの異物除去方法。
【請求項2】
前記所定すき間を2mm以下に設定する請求項1に記載の未加硫ゴムからの異物除去方法。
【請求項3】
前記シーティングした未加硫ゴムシートの幅方向端から幅方向に5mm以上、かつ、この未加硫ゴムシートの全幅の10%以下の範囲をトリムする請求項1または2に記載の未加硫ゴムからの異物除去方法。
【請求項4】
前記未加硫ゴムを、前記所定すき間を通過させる際に、前記一対の回転ローラを加温した状態にする請求項1〜3のいずれかに記載の未加硫ゴムからの異物除去方法。
【請求項5】
ゴム押出機と、このゴム押出機の押出し口に設置されるローラヘッドと、このローラヘッドのゴム押出し方向下流側に配置されるトリム機とを備え、前記ローラヘッドは、所定すき間をあけて周面どうしを対向させて配置した一対の回転ローラを有し、前記所定すき間を前記ゴム押出機に投入される未加硫ゴムに混在する加硫ゴム異物の粒径よりも小さくなるように調整するギャップ調整機構を備えて、前記ゴム押出機により押し出されて、回転駆動された前記一対の回転ローラの所定すき間を通過してシーティングされた未加硫ゴムシートの幅方向両端部を前記トリム機によりトリムする構成にしたことを特徴とする未加硫ゴムからの異物除去装置。
【請求項6】
前記所定すき間が2mm以下に設定された請求項5に記載の未加硫ゴムからの異物除装置。
【請求項7】
前記シーティングされた未加硫ゴムシートをトリムする範囲が、この未加硫ゴムシートの幅方向端から幅方向に5mm以上、かつ、この未加硫ゴムシートの全幅の10%以下の範囲に設定された請求項5または6に記載の未加硫ゴムからの異物除去装置。
【請求項8】
前記一対の回転ローラを加温する加温手段を備えた請求項5〜7のいずれかに記載の未加硫ゴムからの異物除去装置。
【請求項9】
前記シーティングされた未加硫ゴムシートをトリムする範囲を調整するトリム幅調整機構を備えた請求項5〜8のいずれかに記載の未加硫ゴムからの異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴムからの異物除去方法および装置に関し、さらに詳しくは、新たな加硫ゴム異物を発生させることなく、効率的に未加硫ゴムから異物を除去できる方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、混練機によって未加硫ゴムを混練する混練工程、押出機によって未加硫ゴムを押出す押出し工程がある。このような混練工程や押出し工程では、未加硫ゴムには熱が加わるため、配合されている加硫系配合剤が作用して部分的に加硫反応が進むことがある。加硫反応が過度に進むと、未加硫ゴムには意図しない加硫ゴム異物(焼け粒)が発生する。加硫ゴム異物は、ゴム製品の品質に悪影響を及ぼすことがあるので、加硫ゴム異物が混在している未加硫ゴムは、廃棄などの処分対象になっていた。しかしながら、加硫ゴム異物以外の部分は正常な未加硫ゴムなので、加硫ゴム異物を除去すれば、残りの正常な未加硫ゴムは、ゴム製品の製造に利用することができる。できるだけ正常な未加硫ゴムを伴なわずに加硫ゴム異物を除去できれば、材料歩留りが向上する。また、廃棄するゴム量が減少するので、省エネルギーや環境保護の観点からも有益である。
【0003】
従来、未加硫ゴムに混在した異物を除去する方法としては、押出し機の押出し口にストレーナを配置して、ストレーナのスクリーンに押出した未加硫ゴムを通過させる方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、スクリーンの網目の大きさによって除去できる異物の大きさが決まる。そのため、異物を残さず除去しようとすると、スクリーンの網目を小さくする必要がある。この方法は元々、スクリーンに未加硫ゴムを通過させることにより、未加硫ゴムには追加的に熱が加わる方法であるが、スクリーンの網目を小さくすれば、より多くの熱が加わることになる。即ち、加硫ゴム異物を除去するためのスクリーンが、新たな加硫ゴム異物を発生させ易くするという問題があった。
【0004】
そのため、新たな加硫ゴム異物の発生を防止するには、押出し速度を遅くして、スクリーンを通過する未加硫ゴムにできるだけ熱を加えないようにする対策が必要になる。しかしながら、押出し速度を遅くすると、単位時間に除去できる加硫ゴム異物の量が減少し、効率性が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−207472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新たな加硫ゴム異物を発生させることなく、効率的に未加硫ゴムから異物を除去できる未加硫ゴムからの異物除去方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の未加硫ゴムからの異物除去方法は、所定すき間をあけて周面どうしを対向させて配置した一対の回転ローラを備えたローラヘッドを、ゴム押出機の押出し口に設置し、このゴム押出機により加硫ゴム異物が混在した未加硫ゴムを押出すとともに、前記一対の回転ローラを回転駆動させて、前記ゴム押出機により押出した未加硫ゴムを、前記加硫ゴム異物の粒径よりも小さく設定された前記所定すき間を通過させてシーティングし、次いで、このシーティングした未加硫ゴムシートの幅方向両端部をトリムすることを特徴とする。
【0008】
本発明の未加硫ゴムからの異物除去装置は、ゴム押出機と、このゴム押出機の押出し口に設置されるローラヘッドと、このローラヘッドのゴム押出し方向下流側に配置されるトリム機とを備え、前記ローラヘッドは、所定すき間をあけて周面どうしを対向させて配置した一対の回転ローラを有し、
前記所定すき間を前記ゴム押出機に投入される未加硫ゴムに混在する加硫ゴム異物の粒径よりも小さくなるように調整するギャップ調整機構を備えて、前記ゴム押出機により押し出されて、回転駆動された前記一対の回転ローラの所定すき間を通過してシーティングされた未加硫ゴムシートの幅方向両端部を前記トリム機によりトリムする構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴム押出機により加硫ゴム異物が混在した未加硫ゴムを押出し、押出し口に設置したローラヘッドの一対の回転ローラを回転駆動させて、押出した未加硫ゴムを、加硫ゴム異物の粒径よりも小さく設定された一対の回転ローラの周面どうしの所定すき間を通過させてシーティングするので、シーティングの際に加硫ゴム異物が回転ローラの幅方向端部に向かって移動する。そのため、このシーティングした未加硫ゴムシートの幅方向両端部をトリムすることにより、幅方向両端部がトリムされた未加硫ゴムシートには、加硫ゴム異物が残留せず、加硫ゴム異物を除去した状態にすることが可能になる。
【0010】
そして、シーティングの際に、ゴム押出機により押出した未加硫ゴムに過大な熱が加わることがないので、新たな加硫ゴム異物の発生を回避できる。また、未加硫ゴムの押出し速度を遅くする必要がないため、効率的に未加硫ゴムから異物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の異物除去装置を側面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の異物除去装置を平面視で例示する説明図である。
【
図3】ローラヘッドでの未加硫ゴムの動きを模式的に断面視で例示する説明図である。
【
図4】ローラヘッドでの未加硫ゴムの押出し方向圧力の分布を例示するグラフ図である。
【
図5】ローラヘッド通過前後での加硫ゴム異物の動きを平面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の未加硫ゴムからの異物除去方法および装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1、
図2に例示する本発明の異物除去装置1は、ゴム押出機2と、ゴム押出機2の押出し口に設置されるローラヘッド3と、ローラヘッド3のゴム押出し方向下流側に配置されるトリム機9とを備えている。ゴム押出機2としては周知の仕様のものを使用できる。トリム機9は、引き取りコンベヤ8の搬送面の上方に設置されている。
【0014】
ローラヘッド3は、所定すき間gをあけて周面どうしを対向させて配置した一対の回転ローラ4a、4bを有している。回転ローラ4a、4bは単純な円柱形状である。この回転ローラ4a、4bは駆動モータ5によって回転駆動され、一定回転数で、或いは、回転数を途中で変化させて回転する。所定すき間gは、ギャップ調整機構6によって任意の大きさに設定可能になっている。
【0015】
この実施形態では、一対の回転ローラ4a、4bを加温する加温手段7が備わっている。加温手段7は、ゴム押出機2により押出された未加硫ゴムRの温度を過度に低下させないようにして流動性を確保するためのものであり、必要に応じて設置する。加温手段7としては、温水を回転ローラ4a内に循環させるヒータ機構などが用いられる。加温手段7による加温温度は、例えば80℃〜100℃程度である。
【0016】
トリム機9は、一対の円形の回転刃9aを有している。それぞれの回転刃9aは、回転軸に回転可能に軸支されていて、互いの回転刃9aの間隔は、トリム幅調整機構10によって変更可能になっている。それぞれの回転刃9aは、引き取りコンベヤ8の搬送面に刃先が当接するように配置されている。
【0017】
次いで、この異物除去装置1を用いて、未加硫ゴムRに混在する加硫ゴム異物Cを除去する手順を説明する。
【0018】
まず、加硫ゴム異物Cが混在した未加硫ゴムRを、ゴム押出機2に投入する。加硫ゴム異物Cが混在した未加硫ゴムRは、ゴム製品の製造ラインで発生するので、例えば、これを収集、保管しておき、一定量が集まったならば、異物除去装置1を用いて未加硫ゴムRから加硫ゴム異物Cを除去する。
【0019】
ここで、一対の回転ローラ4a、4bの周面どうしの所定すき間gを、加硫ゴム異物Cの粒径よりも小さく設定しておく。加硫ゴム異物Cの大きさは、外径相当で2mm〜3mm程度である。したがって、所定すき間gを例えば2mm以下、或いは1.5mm以下に設定する。
【0020】
ゴム押出機2に投入された未加硫ゴムRは、ある程度柔らかくなって(可塑化されて)押出し口から押出される。押出された未加硫ゴムRの温度は、例えば、50℃〜80℃程度である。押出された未加硫ゴムRは、次いで、回転する一対の回転ローラ4a、4bの所定すき間gを通過してシーティングされる。
【0021】
図3に例示するように、ローラヘッド3の断面視で見れば、未加硫ゴムRが一対の回転ローラ4a、4bに挟まれてシーティングされる際には、回転ローラ4a、4bの周面に接触した流動し難いゴムR2と、それ以外の流動し易いゴムR1が存在する。即ち、未加硫ゴムRが回転ローラ4a、4bの周面に接触すると、その周面に密着して動けなくなるので、回転ローラ4a、4bの周面表面およびその近傍には流動し難いゴムR2の層が形成される。回転ローラ4a、4bの周面からより離れた位置には、流動し易いゴムR1が存在することになる。
【0022】
また、ローラヘッド3の平面視で見れば、
図4に例示するように、ローラヘッド3における未加硫ゴムRの押出し方向の圧力分布は、回転ローラ4a、4bのローラ幅方向中央部が相対的に高くなり、ローラ幅方向両端部が相対的に低くなる。したがって、流動し易いゴムR1は、押出し圧力が相対的に高いローラ幅方向中央部において所定すき間gを通過する。即ち、流動し易いゴムR1は、順次連続的にローラ幅方向中央部を流動して、多量の流動し易いゴムR1がローラ幅方向中央部で所定すき間gを通過する。
【0023】
一方、加硫ゴム異物Cは未加硫ゴムRに比して硬く、一定の形状を有しているので、未加硫ゴムRよりも流動性が低い。また、所定すき間gが加硫ゴム異物Cの粒径よりも小さく設定されているので、加硫ゴム異物Cはスムーズに所定すき間gを通過することができない。したがって、加硫ゴム異物Cは流動し易いゴムR1に乗らずに、流動し難いゴムR2とともに移動する傾向になる。それ故、
図5に例示するように、加硫ゴム異物Cはローラ幅方向両端部に移動して、所定すき間gを通過することになる。
【0024】
次いで、所定すき間gを通過してシーティングされた未加硫ゴムシートSの幅方向両端部を、回転刃9aによって所定のトリム幅W1でトリムする。上述したように、加硫ゴム異物Cはローラ幅方向両端部に向かって移動しているので、トリム機9によって未加硫ゴムシートSの幅方向両端部をトリムすることにより、未加硫ゴムシートSのトリムされずに残った部分(ローラ幅方向両端部以外の部分)は、加硫ゴム異物Cが除去された状態になる。
【0025】
好ましいトリム幅W1は、未加硫ゴムシートSの全幅Wによって変化するが、例えば、未加硫ゴムシートSの幅方向端から幅方向に5mm以上、かつ、全幅Wの10%以下の範囲にする。トリム幅W1をこの範囲に設定することにより、正常な未加硫ゴムRをできるだけ伴なわずに加硫ゴム異物Cを残さず除去するには有利になる。未加硫ゴムシートSの全幅Wは、例えば200mm〜400mmである。トリム幅W1の寸法は、トリム幅調整機構10を用いて回転刃9aの位置を変化せることにより調整することができる。
【0026】
上述したように、シーティングの際には未加硫ゴムRが一対の回転ローラ4a、4bの所定すき間gを通過するだけなので、ゴム押出機2により押出した未加硫ゴムRに過大な熱が加わることがない。それ故、新たな加硫ゴム異物Cを発生させることを回避できる。また、異物を除去するストレーナを使用する従来方法のように、新たな加硫ゴム異物Cの発生を防ぐために、未加硫ゴムRの押出し速度を遅くする必要がないので、未加硫ゴムRから加硫ゴム異物Cを効率的に除去するには有利になる。
【0027】
加硫ゴム異物Cを除去した未加硫ゴムRの単位時間当たりに得られる量をある程度確保するためには、一対の回転ローラ4a、4bの所定すき間gを0.5mm以上に設定するとよい。尚、本発明によれば、加硫ゴム異物Cに限らず、所定すき間gよりも粒径が大きい異物であれば未加硫ゴムシートSの幅方向端部に移動している。したがって、未加硫ゴムシートSの幅方向両端部をトリム機9でトリムすることにより、加硫ゴム異物C以外の異物も除去することができる。
【0028】
加硫ゴム異物Cが除去された未加硫ゴムシートSは、ゴム製品の製造に利用することができるので、ゴム材料歩留りが向上する。廃棄対象になるのは加硫ゴム異物Cが混在しているトリムされた部分なので、廃棄ゴム量が減少し、省エネルギーや環境保護には有益である。
【0029】
所定すき間gに未加硫ゴムRを通過させる際に、加温手段7により、一対の回転ローラ4a、4bを加温した状態にすると、未加硫ゴムRの流動性が高まる。そのため、加硫ゴム異物Cを除去した未加硫ゴムRの単位時間当たりに得られる量を増大させることができる。ただし、新たな加硫ゴム異物Cが発生しないように、加温した未加硫ゴムRの温度を例えば120℃以下にする。
【0030】
1 異物除去装置
2 ゴム押出機
3 ローラヘッド
4a、4b 回転ローラ
5 駆動モータ
6 ギャップ調整機構
7 加温手段
8 引き取りコンベヤ
9 トリム機
9a 回転刃
10 トリム幅調整機構
C 加硫ゴム異物
R 未加硫ゴム
R1 流動し易いゴム
R2 流動し難いゴム
S 未加硫ゴムシート