(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
敷設される1又は2以上の配管を被敷設体に支持するためのバンド状の配管用支持具に関する先行技術文献としては、特許文献1乃至特許文献3に示すものが挙げられる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2の長尺体支持具は、それぞれ
図17及び
図18に示すバンドであり、いずれも、帯状部(B2)とその両端部に取付部(B1)を備えるものである。この時、帯状部(B2)は、金属製(板金製)のもので、折曲変形操作して塑性変形させることができるように構成している。
【0004】
特許文献3の配管用支持具は、
図19に示すバンドである。詳しくは、変形自在なバンドの一端に躯体側への固定手段を設けると共に、他端側に、両側部より内方への一対の切込9、9aで構成された複数の嵌合固定部を有する、上記長孔に対し挿通可能な微調節部を設け、該微調節部を長孔に差し込んだ後90度回転させて、アングルにおける長孔の両側部位を切込9、9a内に嵌まり込ませることにより固定することで、少なくとも一端側の固定作業を容易化するものである。この時、バンド2は屈曲変形自在な金属製又は樹脂製のもので構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示されている長尺体支持具(バンド)には、次のような課題がある。
(1)金属製の帯状部(B2)で配管を直接支持すると、配管の被覆の潰れや板端部で被覆を傷つけて破れてしまう可能性がある。
(2)これ(被覆の潰れや破れ)を回避するためには、帯状部(B2)にカバー部材を取り付ける等の必要がある。
(3)ボルトの長さが一定のために、配管の適合サイズが限定されてしまう。
【0007】
また、特許文献3に開示されている配管用支持具(バンド)には、次のような課題がある。
(1)配管用支持具1は、微調整部4を長孔Hに先に差し込んだ後90度回転させて設置部材Aに固定し、それからもう一端のねじ杆5を長孔Hに貫通させて取り付ける必要があるが、限られた可動範囲でねじ杆5を操作しなければならないため、ねじ杆5を長孔Hに挿入しにくく、作業性に難がある。
(2)配管用支持具1を設置部材Aに取り付けた後に調整が必要になった場合、片側(ねじ杆5側)だけでしか調整作業が行えない(微調整部4側は90度回転させる必要があるために、微調整部4側を調整することは極めて困難である)。バンド2の両側部に微調整部4を設けている場合は(特許文献3の
図9)、設置部材Aに取り付けた後に調整することはほとんど不可能に近い。
【0008】
これに対して、本願発明者は、配管の本数やサイズ等に柔軟に対応できる新たな配管用支持具を提供すべく鋭意試験・研究を行い、本願発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願発明の第1の発明は、敷設される1又は2以上の配管を被敷設体に支持するために、配管を保持する保持部と、保持部の両端に被敷設体へ取り付け可能な取付部とを備え、保持部及び取付部が樹脂によって一体的に成型されていることを特徴とする配管用支持具である。
第2の発明は、取付部が、被敷設体との取り付けに必要なナット又はボルトの内蔵されたものであることを特徴とする同配管用支持具である。
ここで、取付部にナット又はボルトを内蔵するとは、インサート成型のような樹脂との一体成形だけでなく、取付部を成型した後にナット又はボルトを内蔵させる後付けであってもよい。
第3の発明は、取付部が、保持部の両端に被敷設体との取り付けに必要な取付部材を埋め込み又は外付けしたものであることを特徴とする同配管用支持具である。
第4の発明は、取付部に形成された被敷設体との取り付けに必要なネジ孔又は穿孔或いは雄ネジも樹脂によって一体的に成型されていることを特徴とする同配管用支持具である。
第5の発明は、配管用支持具が、2又は3以上に分割可能に構成されていることを特徴とする同配管用支持具である。
【発明の効果】
【0010】
上記した本願発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本願発明は、配管を保持する保持部(バンド部分)が樹脂製であるために、金属製のものに比べて配管の被覆を傷つける可能性が極めて低い。
(2)また、配管を保持する保持部(バンド部分)が樹脂製であるために、バンド部分で低下しがちな被覆配管の断熱性能を当該樹脂によって補うことができる。なお、従来の金属製のものは熱伝導性がよいため、バンド部分での断熱性能低下を防止するために、バンドの内側や配管の被覆に断熱粘着テープを巻く必要があった。
(3)さらに、配管を保持する保持部(バンド部分)が樹脂製であるために、バンドの変形が容易になり、配管本数が1本でも複数本でも被敷設体に対して取付部を取り付けるだけで管の輪郭に沿わせることが可能になった。なお、金属製バンドは硬いので、実際綺麗に管に沿うように手で曲げることは困難であった。
(4)本願発明は、保持部及び取付部が樹脂によって一体的に成型されていることで、生産性の向上(加工の際の工程数=溶接・表面処理などを少なくできる等)や施工性の向上(配管に沿わせる、1つのバンドで様々な配管に対応できる等)等が図られる。
(5)本願発明の配管用支持具は、仕上がりが均一で綺麗に施工でき、従来の樹脂製帯バンド工法と比べて、施工する作業者による仕上がりの個人差が少ない。同様に、特許文献1〜3のようなバンドであると、個人差が出やすく、また、バンドの仕上がり曲面が同一形状にならない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明に係る「配管用支持具」の実施形態(一例)を図面に基づいて説明する。
なお、配管用支持具が被敷設体に支持する1又は2以上の配管は、被覆銅管又はVP管を想定しているが、これらに限定されるものではない。
【0013】
図1〜
図7は、本願発明の第1実施形態を示す説明図である。
図1は、本願発明に係る配管用支持具10の全体構造を示す説明図(1)であり、
図2〜
図7は、この配管用支持具10の使用状態を示す説明図(2)〜(7)である。
図1に示すように、配管用支持具10は、配管を保持する保持部11と、保持部11の両端にナット17を内蔵した取付部12とを備えている。そして、保持部11及びナット17以外の取付部12が樹脂によって一体的に成型されている。
【0014】
なお、配管用支持具の保持部は、配管用支持具10aのように、保持部11aの幅方向に延びる凸部を設けてもよいし(保持部に設けられた凸部は、図示された幅方向のものに限られず、長手方向や格子状等に形成されたものであってもよい)、配管用支持具10bのように、保持部11bに凸部がなくてもよい。
【0015】
図2は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(2)である。
図2に示すように、配管用支持具10は、敷設される1又は2以上の配管90を被敷設体91に支持するために、幅広(例:幅50mm)で樹脂製(例:ポリエチレン製)の保持部11で配管90を保持するようにして、ナット17を内蔵する取付部12に全ネジ18を螺合させて被敷設体91に取り付ける。これにより、配管90がその被覆を傷つけられることなく、確実に被敷設体91に支持される。また、保持部11とナット17とが一体的に成型されているので、バンドによる配管90の支持作業を極めて簡易に行えるとともに、その仕上がり具合に個人差が無く均一に綺麗に仕上げられる。
なお、取付部12のナット17に螺合する全ネジ18の端部には、配管の被覆保全や安全のためにキャップ19を被せてもよい。
【0016】
図3は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(3)である。
図3に示すように、配管用支持具10は、横走りの配管90にあって、2本のペア管(
図3(a))、3本のマルチ管(
図3(b))、1本のシングル管(
図3(c))のいずれにも対応できるものである。
【0017】
図4は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(4)である。
図4に示すように、配管用支持具10は、縦に配置された配管(立管)93にあっても、横走りの配管90と同様に被敷設体94に確実に支持できる(図示では、3本配管になっているが、1本配管・2本配管等でも可)。
【0018】
図5は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(5)である。
図5に示すように、配管用支持具10は、被敷設体96の下側に下吊りされた配管95にあっても、横走りの配管90や縦に配置された配管93と同様に被敷設体96に確実に支持できる。
【0019】
図6は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(6)である。
図6に示すように、配管用支持具10は、1個のバンドで異なるサイズの配管90に兼用が可能である。
図6(a)に図示した配管90は、配管用支持具10とサイズがぴったり一致するものであり、配管用支持具10の取付部12が被敷設体91と当接している。しかし、
図6(b)に図示する配管90のようにサイズが異なるものであっても、配管用支持具10の取付部12を浮かしながら(被敷設体91と非接触状態にしながら)全ネジ18の長さを利用して被敷設体91に取り付けることで、異なるサイズの配管90を被敷設体91に確実に支持できる。すなわち、配管の小さいサイズから大きいサイズまで(或いは、保温厚の薄いものから厚いものまで)、広範囲のものに対応できるのである。
【0020】
図7は、配管用支持具の使用状態を示す説明図(7)である。
図7に示すように、配管用支持具10は、対になっている取付部12どうしを組み合わせて保持部11を輪状に形成し、ここに配管90を挿通させることで、配管90を被敷設体91に支持させたものである。取付部12,12と被敷設体97の取り付けには、ボルト16を使用する。
【0021】
図8は、本願発明の第2実施形態を示す説明図である。
図8に示す配管用支持具20が、
図1〜7に示す配管用支持具10と異なるのは、取付部22にナットではなく内蔵したボルト27を備えている点である。取付部22にボルト27を内蔵することで(ボルト27は後から取付部22に内蔵させてもよい)、被敷設体91への取り付けにナット28のみを用いればよいので、極めて効率的である。その他の点については、本願発明の第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。なお、図示省略するが、
図6(b)に図示するように、配管用支持具20の取付部22を浮かしながら(被敷設体91と非接触状態にしながら)ボルト27のネジ部の長さを利用して被敷設体91に取り付けることで、異なるサイズの配管90を被敷設体91に確実に支持できる。
【0022】
図9は、本願発明の第3実施形態を示す説明図である。
図9に示す配管用支持具30が、
図1〜8に示す配管用支持具10,20と異なるのは、保持部32の端部にナットやボルトの内蔵ではなく、金属製のプレート部材を埋め込み、露出するプレート部材の先端側に被敷設体との取り付けに必要な取付機能を備えたり、取付機能を備えた部材(丸環など)を埋め込み取付部とする点である。具体的には、
図9(a)では、保持部32の端部に埋め込まれたプレート部材36の先端側を切り欠いてフック状に形成されている。切り欠きを上下方向に複数設けて調整可能になるようにしてもよい。なお、この場合、保持部32が樹脂製であるためにこの取付部を被敷設体に取り付けた後であっても調整が可能になり、配管用支持具30の施工性を損なうものではない。また、
図9(b)では、保持部32の端部に埋め込まれたプレート部材38の先端側にナット39が溶接されている。同じく、
図9(c)では、保持部32の端部に埋め込まれたプレート部材331の先端側にボルト332が溶接されている。さらに、
図9(d)では、保持部32の端部に埋め込まれたプレート部材341の先端側がL字形に折曲されており、そこに穿孔342を備えている。また、
図9(e)では、保持部32の端部に埋め込まれたプレート部材351の先端側にスリーブ状の部材352が溶接されている。なお、
図9(f)では、保持部32の端部に内ネジ(雌ネジ)372を備えた丸環371が埋め込まれているが、外ネジ(雄ネジ)を備えた丸環であってもよい。
そして、このプレート部材36,38,331,341,351及び丸環371を用いて被敷設体に取り付けられるのである。その他の点については、本願発明の第1実施形態及び第2実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0023】
図10は、本願発明の第4実施形態を示す説明図である。
図10に示す配管用支持具40が、
図1〜9に示す配管用支持具10,20,30と異なるのは、保持部42の端部にナットやボルトの内蔵又はプレート部材の埋め込みではなく、被敷設体との取り付けに必要な取付部材を外付けし取付部とした点である。具体的には、
図10(a)に図示するように、略L字形の取付部材47aを保持部42にリベット48等で外付けされている。取付部材47aには、ネジ溝49を設けているので、ボルトや全ネジを使用してこのネジ溝49を介して被敷設体(図示省略)に取り付けられるのである。また、
図10(b)は、保持部42を両側から挟むようにして取付部材47bを外付けしたもの、
図10(c)は、保持部42を全周で包むようにして取付部材47cを外付けしたものである。なお、図示省略するが、ネジ溝49に代えて、取付部材47に雄ネジや穿孔を設けてもよいし、
図9に図示するようなプレート部材(丸環を含む)を保持部42に外付けしてもよい。
図10に示す第4実施形態のその他の点については、本願発明の第1実施形態乃至第3実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0024】
図11及び
図12は、本願発明の第5実施形態を示す説明図である。
図11及び
図12に示す配管用支持具50が、
図1〜10に示す配管用支持具10,20,30,40と異なるのは、配管用支持具50が、2又は3以上に分割可能に構成されている点である。
図11に図示するように、配管用支持具50aは、保持部52の先端を雌機構53に形成し、この雌機構53に嵌合する雄機構58を備えた略L字形の取付部材57を嵌合させることで分割可能に構成されている(図示と異なり、雌機構と雄機構が逆であってもよい)。取付部材57には、ナット59を設けているので、ボルトや全ネジを使用してこのナット59を介して被敷設体(図示省略)に取り付けられるのである。これによって、取付部57を先に被敷設体(図示省略)に取り付けてから配管を敷設して、サイズの適合する保持部を選んで最後に嵌合させること(取り付けること)ができる。
【0025】
図12に図示するように、配管用支持具50bは、保持部51bを2分割し、保持部に形成した切込片と切込孔の係止や面ファスナー54等の公知技術によって着脱自在になっている。これによって、敷設される配管90のサイズや本数に柔軟に対応できる。また、取付部55を被敷設体91に取り付けた後に配管90を敷設することや、配管90の取り外し・増設など配管敷設後の補修・改修作業等に柔軟に対応できる。
なお、配管用支持具50の2又は3以上に分割可能な構成は、
図11及び
図12に図示したものに限られるものではない。
また、
図11及び
図12に示す第5実施形態のその他の点については、本願発明の第1実施形態乃至第4実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0026】
図13は、本願発明の第6実施形態を示す説明図である。
図13に示す配管用支持具60が、
図1〜12に示す配管用支持具10,20,30,40,50と異なるのは、
図13(a)に図示するように保持部61の端部にナット又はボルトの内蔵等に代えてネジ溝の設けられたネジ孔63を有する取付部62を備えた点と、
図13(b)に図示するように保持部61の端部にナット又はボルトの内蔵等に代えて雄ネジ65を有する取付部64を備えた点、
図13(c)に図示するように保持部61の端部にナット又はボルトの内蔵等に代えて穿孔67を有する取付部66を備えた点である。すなわち、配管用支持具60を構成する要素(保持部61及び取付部62,64,66)の全てが、全部樹脂で一体的に成型されている。これにより、配管用支持具60の製造が容易となり、製造コストも下がる。その他の点については、本願発明の第1実施形態乃至第5実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0027】
図14は、本願発明の第7実施形態を示す説明図である。
図14に示す配管用支持具70が
図1〜6に示す配管用支持具10と異なるのは、ナットを内蔵する取付部72が保持部71の内側に設けられている点である(配管用支持具10の場合は、保持部11の外側に設けられている)。取付部72を保持部71の内側に設けることで、配管用支持具70を被敷設体91に取り付けた場合、取付部72が内側に隠れるので、外観的にスッキリしたものとなる。また、配管用支持具70の周囲に対しての干渉が少なくなり、限られたスペースを有効活用できる(配管を近くに敷設できるなど)。その他の点については、本願発明の第1実施形態乃至第6実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0028】
図15及び
図16は、本願発明の第8実施形態を示す説明図である。
図15及び
図16に示す配管用支持具80が
図1〜6に示す配管用支持具10と異なるのは、ボルト87やナット84を内蔵又は一体成型した取付部82が保持部81の真ん中に設けられている点である(配管用支持具10の場合は、保持部11の外側に設けられている)。ここで、
図16に図示する配管用支持具80bは、取付部82にナット84を内蔵しているが、保持部81に凹状の溝部又は貫通部85を形成し、保持部81を湾曲させることで全ネジ88を挿入することができる(
図16(b)→
図16(c)の状態になる)。
その他の点については、本願発明の第1実施形態乃至第6実施形態と同じであるので、その説明を省略する。