(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1,2は、本実施形態におけるコントロールバルブ1の概略構成を示す図である。
図1は、コントロールバルブ1の平面図である。
図2は、
図1のA−A断面図である。
【0010】
図1,2に示すように、コントロールバルブ1は、シールリング14を有するバルブボディ11、バルブプレート12、揺動駆動機構13、シールリング駆動機構15およびコントローラ(シールリング位置設定部)16を備えている。ケーシングとしてのバルブボディ11にはフランジ110a,110bが設けられ、フランジ110a,110bの部分にバルブ開口111が形成されている。なお、
図1に示す平面図は、
図2の真空ポンプ側から観た図である。フランジ110bに真空装置側の真空チャンバが接続され、図示下側のフランジ110aに真空ポンプが接続される。
【0011】
バルブボディ11内には、バルブ開口111を開閉するためのバルブプレート12が揺動可能に設けられている。バルブプレート12は揺動駆動機構13(
図1)によって揺動駆動される。なお、図示は省略したが、揺動駆動機構13には、駆動源としてのモータおよび揺動の角度を検出するための検出器(例えば、ロータリーエンコーダ)等が設けられている。揺動駆動機構13はコントローラ16によって制御される。
【0012】
図1において、破線(B1)はバルブ開口111の全体が開放された状態(以下では、全開放状態と呼ぶ)を示し、破線(B2)は開度=0%の場合、すなわちバルブ開口111の全体がバルブプレート12によって覆われた状態(以下では、全遮蔽状態と呼ぶ)を示す。ここでの開度とは、比=(バルブプレートの揺動角):(全遮蔽状態からバルブ開口111が全て解放されるまでの揺動角)をパーセントで表したものである。
【0013】
コントロールバルブ1をバルブ全開にする場合にはバルブプレート12は全開放状態とされ、バルブ全閉にする場合にはバルブプレート12は全遮蔽状態とされる。また、バルブプレート12を破線(B2)の位置に配置した状態において、要求最低コンダクタンス状態(真空装置の一連の工程中で最も圧力が高い状態)とされる。
【0014】
シールリング14は、
図2に示すように、全遮蔽状態のバルブプレート12の図示上面のプレート面周辺部分に対向するように配置されたリング部材140と、リング部材140の内周面および外周面とバルブボディ11とをシールするシール材141と、リング部材140の下端面とバルブプレート12とをシールするためのシール材142とを備えている。シールリング14はシールリング駆動機構15により上下動される。シールリング駆動機構15としては、モータ駆動により上下動させる機構や、流体の圧力(空圧や油圧等)により上下動させるなど、種々の駆動機構を適用することができる。
【0015】
図2に示すシールリング駆動機構15は空圧を利用する構成のもので、ピストン151、ストッパ152およびバネ(圧縮バネ)153を備えている。ピストン151は、バルブボディ11に形成されたシリンダ室112内を図示上下方向に移動可能に設けられている。シールリング14はピストン151の軸下端に固定されており、ピストン151と一体に上下動する。ピストン151の上面にはバネ153の下端が当接しており、ピストン151はバネ153によって下方に付勢されている。ピストン151はシリンダ室112に納められており、ピストン151の下側のシリンダ室112内には、流路113を介して圧空供給排出部200から圧空が供給される。圧空供給排出部200による圧空の供給・排出の制御は、コントローラ16によって行われる。
【0016】
シリンダ室112のピストン151よりも下側の空間に流路113を介して圧空を供給すると、バネ153の付勢力に逆らってピストン151は図示上方に移動し、
図2に示すようにピストン151の上面がストッパ152の軸下端に当接するまで移動する。この状態においては、全遮蔽状態のバルブプレート12とシールリング14との間、および、バルブプレート12とバルブボディ11との間には、ガス流路として機能する隙間が形成される。その結果、破線矢印で示すようにフランジ110b側(真空チャンバ側)からフランジ110a側(真空ポンプ側)へとガスが流れる。
【0017】
一方、シリンダ室112から圧空が排出されると、バネ153の付勢力によりピストン151およびシールリング14は図示下方に移動する。シールリング14はバルブプレート12に当接した後もさらに下降し、
図3に示すようにバルブプレート12がシールリング14とバルブボディ11の間に挟持された状態となる(全閉状態)。その結果、シールリング14とバルブプレート上面との間がシール材142によりシールされ、バルブプレート下面とバルブボディ11との間が、バルブプレート12の下面に設けられたシール材120によりシールされる。
【0018】
本実施形態におけるコントロールバルブ1の開閉動作は次のように行われる。先ず、バルブ全閉からバルブ全開とする場合について説明する。バルブ全閉では、
図3に示すように、バルブプレート12は全遮蔽状態とされ、さらに、バルブプレート12がシールリング14とバルブボディ11とで挟持される状態とされる。次に、シリンダ室112に圧空を供給して、
図2に示すようにピストン151の上面がストッパ152に当接するまで、ピストン151およびシールリング14を上方に移動させる。その結果、
図2に示すように、バルブプレート12とバルブボディ11およびシールリング14との間にガス流路としての隙間が形成される。コントロールバルブ1において、
図2に示す状態が最もコンダクタンスが小さい状態(バルブ全閉を除く)となる。その後、揺動駆動機構13によりバルブプレート12を揺動駆動して開度=100%とするとバルブ全開となる。
【0019】
本実施の形態のコントロールバルブ1では、ストッパ152の上下方向位置を調整することによって最小コンダクタンスの値を変更することができる。ストッパ152はバルブボディ11に螺合しており、ストッパ152のつまみ部152aを回転することで、シリンダ室112内におけるストッパ152の下端の突出量を調整することができる。突出量が大きいほど最小コンダクタンスの値が小さくなる。
【0020】
図4(a)は、コントロールバルブ1の開度(横軸)とコンダクタンス(縦軸)との関係を示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)の符号Bで示す開度小の領域を拡大して示したものである。破線で示すラインL1はストッパ152の突出量が最も小さい場合を示し、実線で示すラインL2はストッパ152を最も突出させた場合を示す。ラインL2は、バルブプレート12とストッパ152との間に揺動駆動可能な最低限のギャップが形成されている場合を示す。揺動駆動機構13によりバルブプレート12を揺動駆動して、バルブプレート12をバルブ開口111から退避移動させて開度を増加させると、ラインL1やラインL2のようにコンダクタンスが増加する。
【0021】
ラインL1,L2のいずれの場合も、開度=0〜4%ではコンダンスの変化が非常に少なく、ほぼ一定となっている。開度が4%を超えるとコンダクタンスが徐々に増加し、7%を超えるとほぼ一定の割合で上昇している。開度=0%におけるコンダクタンスは、ラインL1ではC10、ラインL2ではC20(<C10)となっている。そして、上述したように、ストッパ152の位置を調整することによって、開度=0%におけるコンダクタンス(すなわち、最小コンダクタンス)をC10からC20の範囲で所望の値に変更することができる。
【0022】
図5は、コントロールバルブ1が設けられた真空装置の一例を示す模式図である。
図5はプラズマCVD装置を例に示したものであり、チャンバ20内に設けられた電極21には、RF電源22から高周波電圧が印加される。チャンバ20内は、コントロールバルブ1を介して接続された真空ポンプ30によって真空排気される。チャンバ内圧力は真空計VGによって計測される。真空ポンプ30はポンプ制御部31により駆動制御される。チャンバ20には、マスフローコントローラ23を介してガス源24からのプロセスガスが導入される。装置制御部3はCVD装置全体の制御を行うものであり、コントロールバルブ1のコントローラ16、ポンプ制御部31、RF電源22、マスフローコントローラ23に制御指令を出力する。装置制御部3には真空計VGからの圧力情報が入力される。
図5に示す例では、コントロールバルブ1は装置制御部3によって制御されている。
【0023】
チャンバ20内にプロセスガスを導入しつつ電極21に高周波電圧を印加すると、チャンバ内にプラズマが生成される。成膜を行う際には、チャンバ内にプロセスガスを導入すると共に真空ポンプ30による排気を行うことで、チャンバ内圧力は所定のプロセス圧力に維持される。このときの圧力調整は、コントロールバルブ1の開度を調整することにより行われる。例えば、被処理基板をチャンバ内に搬送したならば、コントロールバルブ1の開度を大きくして(例えば、最大コンダクタンスを与える開度=100%)チャンバ内圧力をバックグラウンド圧力まで真空排気する。そして、プロセス時には、チャンバ内にプロセスガスを導入するとともにコントロールバルブ1の開度を小さくし、チャンバ内圧力が所望のプロセス圧力となるように開度調整(コンダクタンスの調整)を行う。
【0024】
ここで、コントロールバルブ1のコンダクタンスをCv、チャンバ内圧力をPc、真空ポンプ側の圧力をPp、マスフローコントローラ23を介したガス導入量をQとすると、近似的に次式(1)が成り立つ。これを式(2)のように変形すると、コントロールバルブ1のコンダクタンスCvを変化させることで、チャンバ内圧力Pcの調整が可能であることがわかる。
Q=Cv(Pc−Pp) ・・・(1)
Pc=(Q/Cv)Pp ・・・(2)
【0025】
ところで、上述したように、半導体処理プロセスにおけるチャンバ内圧力はプロセスに応じて異なっており、一般的にコントロールバルブの開度を調整することにより異なるプロセス圧力に対処している。しかしながら、要求される圧力が高く、対応するコンダクタンスが開度=0%におけるコンダクタンスよりも小さい場合には、バルブプレートの揺動駆動では対応することができない。すなわち、従来のコントロールバルブでは、全遮蔽状態(
図2の状態)におけるコンダクタンスは所定値に固定されており、例えば、ラインL1のような関係しか取ることができない。
【0026】
特許文献1には、そのような場合にバルブプレートとケーシングとのギャップを調整する部材を駆動して、所望の圧力となるようにギャップ調整を行うことが記載されている。しかしながら、ポンプ排気中(すなわちチャンバ内圧力変更時に)に、計測される圧力が所望圧力となるようにギャップ調整を行うのは非常に難しく、調整に非常に長い時間が掛かってしまうという問題がある。
【0027】
一方、本実施の形態では、ストッパ152の位置(突出量)を要求圧力(要求最大圧力)に対応するコンダクタンスを与える位置に予め設定しておくことで対応することができる。チャンバ内圧力変更時には、バルブプレート12を揺動駆動して全遮蔽状態(開度=0%)とするだけで良く、チャンバ内圧力を素早く要求圧力にすることが可能となる。
【0028】
例えば、(バックグラウンド圧力)→(プロセス1=中間コンダクタンス)→(バックグラウンド圧力)→(プロセス2=最低要求コンダクタンス)のような使い方をする場合には、揺動駆動により中間コンダクタンスにした後、一旦、全開放状態とし、揺動駆動により開度=0と制御するだけで良い。なお、要求圧力に対する設定値は、例えば実機を用いて実測する等して予め求めておけば良い。
【0029】
図2に示すコントロールバルブ1では、空圧により駆動されるピストン151によりシールリング14を図示上下方向に移動させたが、
図6に示すようなシールリング駆動機構25を用いても良い。シールリング駆動機構25は、モータ250、モータ250の回転軸に固定されたギヤ251、ギヤ251と噛み合うギヤ253が設けられたネジ棒252、およびネジ棒252と螺合しているボールスクリュー254を備えている。ボールスクリュー254はバルブボディ11に固定されている。また、ネジ棒252はシールリング14のリング部材140に対して回転自在に取り付けられている。
【0030】
モータ250はコントローラ16によって制御される。コントローラ16は上位コントローラである装置制御部3からの指令に基づいて、バルブ開閉およびバルブプレート12の開度を制御する。装置制御部3からコントロールバルブ1をバルブ全閉とする指令がコントローラ16に入力されると、コントローラ16はモータ250を駆動してシールリング14を
図3に示すバルブ全閉の位置まで移動させる。モータ250の回転はギヤ251,253を介してネジ棒252に伝達され、ネジ棒252が図示下方に移動する。そして、シールリング14が
図3に示す位置まで移動してバルブ全閉になったならば、モータ駆動を停止する。
【0031】
一方、装置制御部3から所定開度までバルブを開く指示がコントローラ16に入力されると、まず、モータ250を駆動してシールリング14を図示上端位置(
図2に示したシールリング14の位置と同一位置)をまで移動させる。次いで、コントローラ16は、揺動駆動機構13によりバルブプレート12を所定開度まで揺動駆動する。
【0032】
図2,3に示したシールリング駆動機構15おいては、シールリング14の上端位置はストッパ152の位置により設定した。一方、
図6に示すシールリング駆動機構25では、コントローラ16の操作部に設けられた操作ボタン160,161を操作することにより、シールリング14の上端位置を設定する。ここでは、操作ボタン160を操作するとシールリング14の上端位置は第1の位置に設定され、操作ボタン161を操作すると上端位置は第2の位置に設定される。すなわち、2種類のプロセス圧力に対応するバルブコンダクタンス(第1及び第2の位置)が設定されている。オペレータは、コントロールバルブ1が装着される真空装置の要求するプロセス圧力に応じて、操作ボタン160,161のいずれかを操作するだけで良い。ここでは、操作ボタン160,161を操作してシールリング14の上端位置を設定したが、装置制御部3からの指令で上端位置を設定しても良い。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態のコントロールバルブ1は、バルブ開口111を有するバルブボディ11と、バルブ開口111が全開放状態となる位置(B1)とバルブ開口111が全遮蔽状態となる位置(B2)との間でスライド移動するバルブプレート12と、全遮蔽状態のバルブプレート12のプレート面(
図2の上面側)に対向配置されるシールリング14と、シールリング14が全遮蔽状態のバルブプレート12に当接してバルブ閉状態となる第1の位置と、シールリング14と全遮蔽状態のバルブプレート12との間に所定隙間が形成される第2の位置とにシールリング14を移動させるシールリング駆動機構15と、第2の位置を所望の位置に予め設定するためのストッパ152と、を備える。
【0034】
このように、ストッパ152を用いて第2の位置(例えば、要求最大圧力を可能にするコンダクタンスを与える位置)を予め設定しておくことにより、バルブプレート12のスライド移動のみで、要求最大圧力を与えるバルブコンダクタンスに素早く設定することができる。
【0035】
図2に示すシールリング駆動機構15のように、圧空によりピストン151を駆動して、シールリング14をバルブプレート12に対して離反する方向および当接する方向に移動させる構成の場合には、ピストン151がストッパ152に当接することで、シールリング14が前記第2の位置に位置決めされる。ストッパ152のピストン方向への突出量を調整することが可能であり、そのような構成とすることで第2の位置を所望の位置に設定することができる。
【0036】
他方、
図6に示すようにモータ250によりシールリング14を移動させる構成においては、操作ボタン160,161を操作して、コントローラ16によりモータ250を駆動することで、前記第2の位置を所望の位置に設定することができる。
【0037】
また、上述したコントロールバルブ1の制御方法としては、
図2,3に示す構成では、予め要求される圧力に対応する最小コンダクタンスに応じてストッパ152の突出量を設定する。そのように設定した後に、コントロールバルブ1を介した気体の流通を禁止する場合には、バルブプレート12を全遮蔽状態にしてシールリング14を
図3に示す位置に移動する。一方、コントロールバルブ1を介して気体を流通させる場合には、ピストン151がストッパ152に当接するまで移動させてシールリング14を
図2に示す位置に移動し、バルブプレート12を全開放状態における位置と全遮蔽状態における位置との間で移動させる。前記全遮蔽状態においては、シールリング14とバルブプレート12との隙間を介して気体が流通することで、要求される圧力を得ることができる。
【0038】
なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。例えば、上述した実施の形態では、バルブプレート12を揺動駆動して、バルブプレート12を全開放位置と全遮蔽位置との間でスライド移動させたが、リニア駆動機構によりバルブプレートを直線的にスライド移動させるようにしても良い。また、ストッパ152の突出量を手動で調整する代わりに、モータを用いて駆動しても良い。