特許第6408243号(P6408243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408243
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】耳近接スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   H04R1/10 104A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-88759(P2014-88759)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-207956(P2015-207956A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】514102869
【氏名又は名称】丸山 誠二
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 誠二
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−080381(JP,A)
【文献】 特開2013−172371(JP,A)
【文献】 実開昭57−185290(JP,U)
【文献】 特開2009−060348(JP,A)
【文献】 特開昭60−010999(JP,A)
【文献】 特開2009−055251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着対象者の耳介における根元部分に掛けられる側面視半環状の耳掛け部、および当該耳掛け部に取り付けられたケーシング内にスピーカ本体が収容されたスピーカ部を備えた耳掛け式の耳近接スピーカ装置であって、
前記耳掛け部は、前記装着対象者に当該耳近接スピーカ装置を装着したときに当該装着対象者の側頭部に当接させられて前記スピーカ部が前記耳介から離間した状態を維持する当接部が設けられると共に、当該スピーカ部が取り付けられた第1端部および当該第1端部とは逆側の第2端部の両端部間の距離が変化するように当該耳掛け部を変形可能とする節部が設けられ
前記スピーカ部の前記スピーカ本体に音声信号を供給する信号ケーブルにおける当該スピーカ部の側の端部が前記耳掛け部に埋設されると共に、当該耳掛け部における前記第1端部に最も近い前記節部よりも当該第1端部寄りの部位から当該信号ケーブルが当該耳掛け部の外部に引き出されている耳近接スピーカ装置。
【請求項2】
前記耳掛け部は、前記節部が前記両端部間に1つだけ設けられている請求項1記載の耳近接スピーカ装置。
【請求項3】
前記節部には、当該節部を介して連結されている前記第1端部の側の第1部材および前記第2端部の側の第2部材の両部材を、当該両端部間の距離が短くなるように当該耳掛け部を変形させる向きに付勢する付勢部材が配設されている請求項1または2記載の耳近接スピーカ装置。
【請求項4】
前記耳掛け部には、眼鏡を装着した前記装着対象者に当該耳近接スピーカ装置を装着したときに側面視において当該眼鏡のツル部と重なる部位に、当該装着対象者の前記側頭部との間に隙間を形成して当該ツル部を避けるツル部避けが設けられている請求項1からのいずれかに記載の耳近接スピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ部から音声を出力可能に構成されて装着対象者の頭部に装着される耳近接スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、下記の特許文献に完全開放形ヘッドホン(以下、単に「ヘッドホン」ともいう)が開示されている。このヘッドホンは、装着対象者の上頭部に即した円弧状に形成されると共に両端部にスライダ保持部が設けられたヘッドバンドと、ヘッドバンドに対するスライドが可能にスライダ保持部によって保持された一対のスライダと、両スライダの下端部にそれぞれ取り付けられた一対のジャック・ジョイントユニットと、支持パイプを介してジャック・ジョイントユニットに取り付けられた一対のドライバ部とを備えている。また、両ドライバ部は、ジャック・ジョイントユニットのジャックに接続されたスピーカと、スピーカを収容可能なケースとをそれぞれ備えている。
【0003】
さらに、このヘッドホンでは、ヘッドバンドおよび両スライダの弾性力によって装着対象者の側頭部に押し付けられるサイドパッドが両スライダの内側部位にそれぞれ取り付けられている。この場合、両サイドパッドは、装着対象者の耳介における根元部分の上に掛かるように前後方向に長く形成され、その後端部には、装着対象者の耳介における根元部分の後ろ側に掛かるようにイヤーフックが設けられている。また、このヘッドホンでは、両サイドパッドが装着対象者の側頭部に押し付けられた状態において、両ドライバ部が装着対象者の耳介から離間した状態となるように構成されている。これにより、このヘッドホンでは、両耳介が圧迫される不快感を覚えることなく装着することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−189691号公報(第3−7頁、第1−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記のヘッドホンには、以下のような解決すべき課題が存在する。すなわち、このヘッドホンでは、両スライダの一方、両ジャック・ジョイントユニットの一方、および両ドライバ部の一方などからなる左側のユニットと、両スライダの他方、両ジャック・ジョイントユニットの他方、および両ドライバ部の他方などからなる右側のユニットとがヘッドバンドを介して連結されている。したがって、このヘッドホンでは、装着時にヘッドバンドが上頭部に沿って存在している状態となる。このため、このヘッドホンでは、装着時にヘッドバンドに接した頭髪に乱れが生じたり、上頭部に沿って存在しているヘッドバンドが邪魔をして帽子やヘルメット等の装着の妨げとなったりするという課題がある。
【0006】
この場合、スライダ保持部に対してスライダをスライドさせることでヘッドバンドの内側部位が上頭部から離間するようにヘッドホンを装着することにより、頭髪の乱れが生じるのを回避することができる。しかしながら、そのような装着状態は、サイドパッドおよびイヤーフックだけが装着対象者に接している不安定な状態のため、ヘッドホンが頭部から外れてしまうおそれがある。また、ヘッドバンドが後頭部に沿って配置されるようにヘッドホンの構造を変更することで、ヘッドバンドが帽子やヘルメット等の装着の妨げとなる事態を回避することができる。しかしながら、そのように構造を変更したヘッドホンでは、仰向けで寝た状態での使用や、ヘッドレストに後頭部が接するように椅子に腰掛けた状態での使用時にヘッドバンドが邪魔となるという新たな課題が生じる。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、意図しない外れ、頭髪の乱れ、および帽子等の装着の妨げが生じるのを回避しつつ、仰向けで寝た状態や、ヘッドレストに後頭部が接するように椅子に腰掛けた状態においても快適に使用することが可能な耳近接スピーカ装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の耳近接スピーカ装置は、装着対象者の耳介における根元部分に掛けられる側面視半環状の耳掛け部、および当該耳掛け部に取り付けられたケーシング内にスピーカ本体が収容されたスピーカ部を備えた耳掛け式の耳近接スピーカ装置であって、前記耳掛け部は、前記装着対象者に当該耳近接スピーカ装置を装着したときに当該装着対象者の側頭部に当接させられて前記スピーカ部が前記耳介から離間した状態を維持する当接部が設けられると共に、当該スピーカ部が取り付けられた第1端部および当該第1端部とは逆側の第2端部の両端部間の距離が変化するように当該耳掛け部を変形可能とする節部が設けられ、前記スピーカ部の前記スピーカ本体に音声信号を供給する信号ケーブルにおける当該スピーカ部の側の端部が前記耳掛け部に埋設されると共に、当該耳掛け部における前記第1端部に最も近い前記節部よりも当該第1端部寄りの部位から当該信号ケーブルが当該耳掛け部の外部に引き出されている。
【0009】
請求項2記載の耳近接スピーカ装置は、請求項1記載の耳近接スピーカ装置において、前記耳掛け部は、前記節部が前記両端部間に1つだけ設けられている。
【0010】
請求項3記載の耳近接スピーカ装置は、請求項1または2記載の耳近接スピーカ装置において、前記節部には、当該節部を介して連結されている前記第1端部の側の第1部材および前記第2端部の側の第2部材の両部材を、当該両端部間の距離が短くなるように当該耳掛け部を変形させる向きに付勢する付勢部材が配設されている。
【0012】
請求項記載の耳近接スピーカ装置は、請求項1からのいずれかに記載の耳近接スピーカ装置において、前記耳掛け部には、眼鏡を装着した前記装着対象者に当該耳近接スピーカ装置を装着したときに側面視において当該眼鏡のツル部と重なる部位に、当該装着対象者の前記側頭部との間に隙間を形成して当該ツル部を避けるツル部避けが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の耳近接スピーカ装置によれば、装着対象者の側頭部に当接させられてスピーカ部が耳介から離間した状態を維持する当接部と、スピーカ部が取り付けられた第1端部およびその逆側の第2端部の両端部間の距離が変化するように耳掛け部を変形可能とする節部とを設けた耳掛け部にスピーカ部を取り付けて構成したことにより、左側のユニットと右側のユニットとがヘッドバンドを介して連結されている従来のヘッドホンとは異なり、上頭部や後頭部に沿って位置させられる部材が存在しないため、頭髪の乱れ、および帽子等の装着の妨げが生じるのを回避することができると共に、仰向けで寝た状態や、ヘッドレストに後頭部が接するように椅子に腰掛けた状態においても快適に使用することができる。また、耳掛け部を変形させることで、耳介における根元部分の外径が大きい者から、根元部分の外径が小さい者までの様々な装着対象者に装着することができるだけでなく、根元部分の外径が大きい者に装着するときには、第1端部および第2端部を離間させるように耳掛け部を変形させ、根元部分の外径が小さい者に装着するときには、第1端部および第2端部を接近させるように耳掛け部を変形させることで、耳掛け部の内側部位を根元部分の外周部に好適に接触させた状態で装着することができ、これにより、装着対象者からの意図しない外れを好適に回避することができる。さらに、当接部によってスピーカ部を耳介から離間させた状態が維持されるため、長時間に亘って装着しても、圧迫感の少ない状態で心地よく使用することができる。
また、この耳近接スピーカ装置によれば、信号ケーブルにおけるスピーカ部の側の端部を耳掛け部に埋設すると共に、耳掛け部における第1端部に最も近い節部よりも第1端部寄りの部位から耳掛け部の外部に信号ケーブルを引き出したことにより、信号ケーブルが耳掛け部における節部や第2端部側の部材(第2部材)とは別体となっているため、節部における耳掛け部の変形時に信号ケーブルが耳掛け部と共に変形させられる事態を回避することができる。これにより、耳掛け部を複数回に亘って変形させたときに信号ケーブルに断線が生じる事態を好適に回避することができる。
【0014】
請求項2記載の耳近接スピーカ装置によれば、耳掛け部の両端部間に節部を1つだけ設けたことにより、耳掛け部に節部を2つ以上設けた構成と比較して、耳掛け部を構成する部材の数が少ない分だけ耳近接スピーカ装置の製造コストを低減できる。また、例えば節部を2つ設けた場合には、利用者の意図に反して耳掛け部が側面視Z字状に変形してしまうことがあり、耳介の根元部分に耳掛け部を好適に接触させた状態で装着するには、側面視コ字状となるように耳掛け部の形状(変形状態)を調整する必要があるのに対し、耳掛け部に節部を1つだけ設けた耳近接スピーカ装置では、耳掛け部が意図しない形状に変形する事態を招くことなく、節部を介して連結されている第1端部側の部材および第2端部側の部材の双方を耳介の根元部分に対して好適に接触させた状態で装着することができるため、装着が容易であるだけでなく、装着対象者からの意図しない外れを一層好適に回避することができる。
【0015】
請求項3記載の耳近接スピーカ装置によれば、耳掛け部における両端部間の距離が短くなるように耳掛け部を変形させる向きに第1部材および第2部材の両部材を付勢する付勢部材を節部に配設したことにより、第1部材および第2部材の双方が耳介の根元部分に確実に接して、第1部材および第2部材によって根元部分を挟持するようにして装着対象者に耳近接スピーカ装置を装着することができるため、装着対象者からの意図しない外れを一層好適に回避することができる。
【0017】
請求項記載の耳近接スピーカ装置によれば、眼鏡を装着した装着対象者に耳近接スピーカ装置を装着したときに側面視において眼鏡のツル部と重なる部位に、装着対象者の側頭部との間に隙間を形成してツル部を避けるツル部避けを設けたことにより、ツル部の存在に邪魔されることなく、眼鏡を装着している装着対象者に耳近接スピーカ装置を適合した状態で装着することができる。これにより、装着対象者か眼鏡を装着していたとしても、耳近接スピーカ装置の意図しない外れを好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】耳近接スピーカ装置1の外観斜視図である。
図2】耳近接スピーカ装置1の他の外観斜視図である。
図3】耳近接スピーカ装置1の平面図である。
図4】耳近接スピーカ装置1の側面図である。
図5】眼鏡15を装着した装着対象者の頭部における耳介10に耳近接スピーカ装置1を掛けた状態の側面図である。
図6図5に示す耳近接スピーカ装置1と眼鏡15のツル部16との位置関係について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、耳近接スピーカ装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
最初に、耳近接スピーカ装置1の構成について、図面を参照して説明する。
【0021】
耳近接スピーカ装置1は、「耳掛け式の耳近接スピーカ装置」の一例であって、図1,2に示すように、スピーカ部2および耳掛け部3を備え、装着対象者の側頭部(耳元)に装着可能に構成されると共に、図示しない音声信号出力装置から出力された音声信号に従って音声を出力することができるように構成されている。なお、本例の耳近接スピーカ装置1は、一例として、装着対象者の左耳に近接した状態で装着可能に構成されているが、ステレオ音声信号に従って音声を出力させるときには、本例の耳近接スピーカ装置1と同様にして「スピーカ部」および「耳掛け部」を備えて右耳に近接した状態で装着可能に構成された図示しない「耳近接スピーカ装置」と共に耳近接スピーカ装置1を使用する。
【0022】
スピーカ部2は、耳掛け部3の一端部3aに取り付けられたケーシング21内にスピーカ本体22(図4参照)が収容されて構成されている。この場合、本例の耳近接スピーカ装置1では、図1,2に示す矢印Aの向きでの耳掛け部3に対するスピーカ部2の回動が可能となるようにスピーカ部2が耳掛け部3に取り付けられており、後述するように、本例の耳近接スピーカ装置1を装着対象者の側頭部に装着したときに、スピーカ部2を装着対象者の耳穴に向けることで、音声を聴き取り易くすることができるようになっている。なお、ケーシング21内には、スピーカ本体22の他に、エンクロージャや吸音材等の各種の部材が収容されているが、本例の耳近接スピーカ装置1の構成に関する理解を容易とするために、スピーカ本体22以外の構成要素に関する図示および説明を省略する。
【0023】
耳掛け部3は、側面視弧状の第1部材(「第1端部」側の部材)31、側面視弧状の第2部材(「第2端部」側の部材)32および回動軸33を備え、図5に示すように、本例の耳近接スピーカ装置1を装着対象者の側頭部に装着する際に、装着対象者の耳介10における根元部分10aに掛けることができるように側面視半環状(側面視C字状)に形成されている。この耳掛け部3は、図1,2に示すように、第1部材31および第2部材32の両部材(非変形部材)における端部同士が回動軸33によって連結されている(第2部材32が回動軸33によって第1部材31に軸支されている)。これにより、本例の耳近接スピーカ装置1では、スピーカ部2が取り付けられた一端部3a(第1部材31における第2部材32側とは逆側の端部:「第1端部」の一例)およびその逆側の他端部3b(第2部材32における第1部材31側とは逆側の端部:「第2端部」の一例)の間の距離(直線距離:最短距離)が変化するように耳掛け部3を変形させる(屈曲変形させる)ことができるように構成されている。
【0024】
この場合、本例の耳近接スピーカ装置1における耳掛け部3では、回動軸33、第1部材31における回動軸33の軸受け部(第2部材32側の端部)、および第2部材32における回動軸33の軸受け部(第1部材31側の端部)によって構成された節部3c(可動性結合部:「節部」の一例)が一端部3aおよび他端部3bの両端部間に1つだけ設けられ、これにより、図4に示すように、スピーカ部2および第1部材31に対して回動軸33を回動中心として矢印B1,B2の向きに第2部材32を回動させることができるように構成されている。また、本例の耳掛け部3では、回動軸33を介して連結されている第1部材31および第2部材32の両部材を付勢して、一端部3aおよび他端部3bの両端部間の距離が短くなるように耳掛け部3を変形させるコイルスプリング34(「付勢部材」の一例)が、節部3cにおける回動軸33の周囲に配設されている。
【0025】
また、図1に示すように、第1部材31には、後述するように耳近接スピーカ装置1を装着対象者に装着したときに装着対象者の側頭部(こめかみ)に当接させられてスピーカ部2が装着対象者の耳介10から離間した状態(一例として、スピーカ部2が耳穴11の口縁部から0.3cm以上2cm以下の範囲内で離間し、かつ近接した状態)を維持するための当接部41が設けられている。さらに、図3,6に示すように、第1部材31には、眼鏡15を装着した装着対象者に耳近接スピーカ装置1を装着したときに、側面視において眼鏡15のツル部16と重なる部位にツル部避け42が設けられ、これにより、耳掛け部3(第1部材31)と装着対象者の側頭部との間に隙間を生じさせてツル部16を避けられる構成が採用されている。
【0026】
また、図4に示すように、本例の耳近接スピーカ装置1では、スピーカ本体22に音声信号を供給する信号ケーブル4におけるスピーカ部2の側の端部が耳掛け部3(第1部材31)に埋設されると共に、節部3c(「第1端部に最も近い節部」の一例)よりも一端部3a寄りの部位から信号ケーブル4が耳掛け部3(第1部材31)の外部に引き出されている。
【0027】
次に、耳近接スピーカ装置1の使用方法について、添付図面を参照して説明する。
【0028】
前述したように耳掛け部3の第1部材31および第2部材32がコイルスプリング34によって付勢されている本例の耳近接スピーカ装置1では、非装着状態において、スピーカ部2および第1部材31に対して第2部材32が図4に一点鎖線で示す位置に位置させられ、耳掛け部3の一端部3aおよび他端部3bが接近させられている。したがって、耳近接スピーカ装置1を装着する際には、まず、コイルスプリング34の付勢力に抗して第1部材31に対して回動軸33を回動中心として矢印B2の向きで第2部材32を回動させることにより、同図に二点鎖線で示すように、一端部3aおよび他端部3bを離間させるように耳掛け部3を変形させる。
【0029】
次いで、装着対象者の耳介10における根元部分10aに対して斜め後方から耳近接スピーカ装置1を差し入れ、図5に示すように、スピーカ部2が耳穴11の側方に位置し、かつ耳掛け部3における第1部材31の内側部位が根元部分10aに接触した状態において耳近接スピーカ装置1から手を離す。この際には、コイルスプリング34の付勢力によってスピーカ部2および第1部材31に対して回動軸33を回動中心として図4に示す矢印B1の向きで第2部材32が回動させられ、図5に示すように、一端部3aおよび他端部3bが接近するようにして耳掛け部3が変形させられる。これにより、第1部材31における内側部位の少なくとも1点、および第2部材32における内側部位の少なくとも1点が装着対象者の耳介10における根元部分10aに接して耳介10の根元部分10aが第1部材31および第2部材32によって挟持された状態となる。
【0030】
また、第1部材31および第2部材32によって耳介10の根元部分10aが挟持された状態では、第1部材31の当接部41が装着対象者の側頭部(こめかみ)に当接させられてスピーカ部2が耳介10(耳穴11の口縁部)から離間させられた状態となる。これにより、第1部材31における内側部位の少なくとも1点、第2部材32における内側部位の少なくとも1点、および第1部材31における当接部41の少なくとも3点が装着対象者に接した状態で耳近接スピーカ装置1が装着対象者の頭部に位置決めされる。
【0031】
この場合、前述したように、本例の耳近接スピーカ装置1では、耳掛け部3の第1部材31にツル部避け42が設けられている。したがって、図5,6に示すように、眼鏡15を装着した装着対象者に耳近接スピーカ装置1を装着したときには、ツル部避け42の部位において装着対象者の側頭部と第1部材31との間に隙間が形成され、この隙間に眼鏡15のツル部16が位置した状態となって、ツル部16に邪魔をされることなく、耳近接スピーカ装置1を装着することが可能となっている。この後、耳掛け部3に対してスピーカ部2を回動させてスピーカ本体22を耳穴11に向けて回動させることにより、耳近接スピーカ装置1の装着が完了する。つまり、スピーカ部2が耳介10(耳穴11の口縁部)から離間し、かつ近接した状態となる。この後、耳近接スピーカ装置1を接続した音声信号出力装置から音声信号を出力させることにより、スピーカ部2(スピーカ本体22)から音声が出力される。
【0032】
この場合、耳掛け式の「耳近接スピーカ装置」としては、「スピーカ部」を耳穴11に挿入するタイプの装置が知られている。しかしながら、「スピーカ部」を耳穴11に挿入するタイプの「耳近接スピーカ装置」では、挿入されている「スピーカ部」の存在に起因して耳穴11の口縁部が拡径させられる向きに押圧されるため、長時間に亘る装着時に不快感を覚えることとなる。これに対して、スピーカ部2が耳介10から離間させられた状態で装着される本例の耳近接スピーカ装置1では、長時間に亘って装着していたとしても、圧迫感の少ない状態で心地よく使用することが可能となっている。
【0033】
このように、この耳近接スピーカ装置1によれば、装着対象者の側頭部に当接させられてスピーカ部2が耳介10から離間した状態を維持する当接部41と、スピーカ部2が取り付けられた一端部3aおよびその逆側の他端部3bの両端部間の距離が変化するように耳掛け部3を変形可能とする節部3cとを設けた耳掛け部3にスピーカ部2を取り付けて構成したことにより、左側のユニットと右側のユニットとがヘッドバンドを介して連結されている従来のヘッドホンとは異なり、上頭部や後頭部に沿って位置させられる部材が存在しないため、頭髪の乱れ、および帽子等の装着の妨げが生じるのを回避することができると共に、仰向けで寝た状態や、ヘッドレストに後頭部が接するように椅子に腰掛けた状態においても快適に使用することができる。また、耳掛け部3を変形させることで、耳介10における根元部分10aの外径が大きい者から、根元部分10aの外径が小さい者までの様々な装着対象者に装着することができるだけでなく、根元部分10aの外径が大きい者に装着するときには、一端部3aおよび他端部3bを離間させるように耳掛け部3を変形させ、根元部分10aの外径が小さい者に装着するときには、一端部3aおよび他端部3bを接近させるように耳掛け部3を変形させることで、耳掛け部3の内側部位を根元部分10aの外周部に好適に接触させた状態で装着することができ、これにより、装着対象者からの意図しない外れを好適に回避することができる。さらに、当接部41によってスピーカ部2を耳介10から離間させた状態が維持されるため、長時間に亘って装着しても、圧迫感の少ない状態で心地よく使用することができる。
【0034】
またこの耳近接スピーカ装置1によれば、耳掛け部3の両端部3a,3b間に節部3cを1つだけ設けたことにより、「耳掛け部」に「節部」を2つ以上設けた構成と比較して、耳掛け部3を構成する部材の数が少ない分だけ耳近接スピーカ装置1の製造コストを低減できる。また、例えば「節部」を2つ設けた場合には、利用者の意図に反して「耳掛け部」が側面視Z字状に変形してしまうことがあり、耳介10の根元部分10aに「耳掛け部」を好適に接触させた状態で装着するには、側面視コ字状となるように「耳掛け部」の形状(変形状態)を調整する必要があるのに対し、耳掛け部3に節部3cを1つだけ設けた耳近接スピーカ装置1では、耳掛け部3が意図しない形状に変形する事態を招くことなく、節部3cを介して連結されている第1部材31および第2部材32の双方を耳介10の根元部分10aに対して好適に接触させた状態で装着することができるため、装着が容易であるだけでなく、装着対象者からの意図しない外れを一層好適に回避することができる。
【0035】
さらに、この耳近接スピーカ装置1によれば、耳掛け部3における両端部3a,3b間の距離が短くなるように耳掛け部3を変形させる向きに第1部材31および第2部材32の両部材を付勢するコイルスプリング34を節部3cに配設したことにより、第1部材31および第2部材32の双方が耳介10の根元部分10aに確実に接して、両部材31,32によって根元部分10aを挟持するようにして装着対象者に耳近接スピーカ装置1を装着することができるため、装着対象者からの意図しない外れを一層好適に回避することができる。
【0036】
また、この耳近接スピーカ装置1によれば、信号ケーブル4におけるスピーカ部2の側の端部を耳掛け部3に埋設すると共に、節部3cよりも一端部3a寄りの部位から耳掛け部3の外部に信号ケーブル4を引き出したことにより、信号ケーブル4が耳掛け部3における節部3cや第2部材32とは別体となっているため、節部3cにおける耳掛け部3の変形時に信号ケーブル4が耳掛け部3と共に変形させられる事態を回避することができる。これにより、耳掛け部3を複数回に亘って変形させたときに信号ケーブル4に断線が生じる事態を好適に回避することができる。
【0037】
さらに、この耳近接スピーカ装置1によれば、眼鏡15を装着した装着対象者に耳近接スピーカ装置1を装着したときに側面視において眼鏡15のツル部16と重なる部位に、装着対象者の側頭部との間に隙間を形成してツル部16を避けるツル部避け42を設けたことにより、ツル部16の存在に邪魔されることなく、眼鏡15を装着している装着対象者に耳近接スピーカ装置1を適合した状態で装着することができる。これにより、装着対象者か眼鏡15を装着していたとしても、耳近接スピーカ装置1の意図しない外れを好適に回避することができる。
【0038】
なお、「耳近接スピーカ装置」の構成は上記の耳近接スピーカ装置1の構成に限定されない。例えば、回動軸33、第1部材31における回動軸33の軸受け部、および第2部材32における回動軸33の軸受け部によって構成された節部3cに「付勢部材」としてのコイルスプリング34を配設した構成を例に挙げて説明したが、コイルスプリング34以外の「付勢部材」(例えば、板ばね)を「節部」に配設した構成や、「節部」に「付勢部材」を配設しない構成を採用することもできる。この場合、「付勢部材」を配設しない構成を採用するときには、一例として、「第1部材」と「第2部材」とを「回動軸」を介して連結することで「節部」を構成すると共に、「第1部材」と「第2部材」との間に生じる摺動抵抗によって耳掛け部3の意図しない変形(屈曲変形)を回避するように構成するのが好ましい。
【0039】
また、回動軸33等で構成した「節部」に代えて、例えば、「第1部材」および「第2部材」の両部材(非変形部)が「薄肉部(変形部)」を介して連結された状態となるように「耳掛け部」を一体成形し、「薄肉部」を「節部」として機能させて「第1端部」および「第2端部」の両端部間の距離が変化するように「耳掛け部」を変形(屈曲変形)可能とする構成を採用することもできる(図示せず)。さらに、一端部3aおよび他端部3bの間に節部3cを1つだけ設けた耳掛け部3を備えた構成を例に挙げて説明したが、「第1端部」および「第2端部」の間に「節部」を2つ以上設けて「耳掛け部」を構成することもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0040】
1 耳近接スピーカ装置
2 スピーカ部
3 耳掛け部
3a 一端部
3b 他端部
3c 節部
4 信号ケーブル
10 耳介
10a 根元部分
11 耳穴
15 眼鏡
16 ツル部
21 ケーシング
22 スピーカ本体
31 第1部材
32 第2部材
33 回動軸
34 コイルスプリング
41 当接部
42 ツル部避け
図1
図2
図3
図4
図5
図6