(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被測温体と接触する接触体が異種金属からなる熱電対素線を接合して形成された測温部を有する熱電対と被測温体側に突出して被測温体に接触したときに弾性変形する導電性の接触板とを備え、該接触板が被測温体に接触する接触部と被測温体に接触しない非接触部とを有し、前記熱電対の前記測温部が前記接触部の被測温体に接触しない面に固定された接触式温度計において、
前記接触体が前記熱電対の外表面を覆う電気絶縁性の絶縁膜と前記熱電対の配設方向に交差する方向に延設される複数の固定用板とを備え、
前記絶縁膜に被覆された前記熱電対が前記接触板の前記接触部の被測温体に接触しない面に沿って配置されると共に、前記熱電対の前記測温部が前記接触板の前記接触部の中央部に配置されて、
複数の前記固定用板が前記熱電対に対して前記接触板の反対側に配置されると共に、前記固定用板の延設方向の両端部のそれぞれが前記接触板の幅端部に接合されて、
前記測温部から導出される前記絶縁膜で被覆された前記熱電対素線のそれぞれが、前記接触板と複数の前記固定用板とに挟持されて固定され、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対素線のそれぞれが前記接触部の長さ方向の中央部から前記接触部の長さ方向の端部に渡って前記接触部の被測温体に接触しない面に接触する構成であることを特徴とする接触式温度計。
被測温体と接触する接触体が異種金属からなる熱電対素線を接合して形成された測温部を有する熱電対と被測温体側に突出して被測温体に接触したときに弾性変形する導電性の接触板とを備え、該接触板が被測温体に接触する接触部と被測温体に接触しない非接触部とを有し、前記熱電対の前記測温部が前記接触部の被測温体に接触しない面に固定された接触式温度計において、
前記接触体が前記熱電対の外表面を覆う電気絶縁性の絶縁膜と前記熱電対の配設方向に交差する方向に延設される複数の固定用板と前記接触板の幅方向の両側に前記接触板との間に間隙を空けて配置された複数の側沿板とを備え、該側沿板が前記接触部に沿う接触部側沿部とそれぞれの前記非接触部に沿う非接触部側沿部とを有し、
前記絶縁膜に被覆された前記熱電対が前記接触板の前記接触部の被測温体に接触しない面に沿って配置されると共に、前記熱電対の前記測温部が前記接触板の前記接触部の中央部に配置されて、
複数の前記固定用板が前記熱電対に対して前記接触板の反対側に配置されると共に、複数の前記固定用板のうちの少なくとも一つが前記接触部に配置され、前記接触部に配置された前記固定用板の延設方向の両端部のそれぞれが各前記側沿板の前記接触部側沿部に接合されて、
前記測温部から導出される前記絶縁膜で被覆された前記熱電対素線のそれぞれが、前記接触板と複数の前記固定用板とに挟持されて固定され、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対素線のそれぞれが前記接触部の長さ方向の中央部から前記接触部の長さ方向の端部に渡って前記接触部の被測温体に接触しない面に接触する構成であることを特徴とする接触式温度計。
複数の前記固定用板のうちの一つが前記接触部の長さ方向の中央部に配置されて、その中央部に配置された前記固定用板が前記絶縁膜に被覆された前記熱電対を介して前記接触板の前記接触部を両側の前記側沿板の前記接触部側沿部よりも被測温体側に押し出す構成である請求項2に記載の接触式温度計。
複数の前記固定用板のうちの一つが前記接触部の長さ方向の中央部に配置されると共に、それ以外が前記非接触部に配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の接触式温度計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その課題は、熱電対を接触板に非接地で固定し、熱電対に余分なノイズが入ることを回避して測定精度と共に耐久性を向上できる接触式温度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を解決するための本発明の接触式温度計は、被測温体と接触する接触体が異種金属からなる熱電対素線を接合して形成された測温部を有する熱電対と被測温体側に突出して被測温体に接触したときに弾性変形する導電性の接触板とを備え、該接触板が被測温体に接触する接触部と被測温体に接触しない非接触部とを有し、前記熱電対の前記測温部が前記接触部の被測温体に接触しない面に固定された接触式温度計において、前記接触体が前記熱電対の外表面を覆う電気絶縁性の絶縁膜と前記熱電対の配設方向に交差する方向に延設される複数の固定用板とを備え、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対が前記接触板の前記接触部の被測温体に接触しない面に沿って配置されると共に、前記熱電対の前記測温部が前記接触板の前記接触部の中央部に配置されて、複数の前記固定用板が前記熱電対に対して前記接触板の反対側に配置されると共に、前記固定用板の延設方向の両端部のそれぞれが前記接触板の幅端部に接合されて、前記測温部から導出される前記絶縁膜で被覆された前記熱電対素線のそれぞれが、前記接触板と複数の前記固定用板とに挟持されて固定され、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対素線のそれぞれが前記接触部の長さ方向の中央部から前記接触部の長さ方向の端部に渡って前記接触部の被測温体に接触しない面に接触する構成である。
また、被測温体と接触する接触体が異種金属からなる熱電対素線を接合して形成された測温部を有する熱電対と被測温体側に突出して被測温体に接触したときに弾性変形する導電性の接触板とを備え、該接触板が被測温体に接触する接触部と被測温体に接触しない非接触部とを有し、前記熱電対の前記測温部が前記接触部の被測温体に接触しない面に固定された接触式温度計において、前記接触体が前記熱電対の外表面を覆う電気絶縁性の絶縁膜と前記熱電対の配設方向に交差する方向に延設される複数の固定用板と前記接触板の幅方向の両側に前記接触板との間に間隙を空けて配置された複数の側沿板とを備え、該側沿板が前記接触部に沿う接触部側沿部とそれぞれの前記非接触部に沿う非接触部側沿部とを有し、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対が前記接触板の前記接触部の被測温体に接触しない面に沿って配置されると共に、前記熱電対の前記測温部が前記接触板の前記接触部の中央部に配置されて、複数の前記固定用板が前記熱電対に対して前記接触板の反対側に配置されると共に、
複数の前記固定用板のうちの少なくとも一つが前記接触部に配置され、前記接触部に配置された前記固定用板の延設方向の両端部のそれぞれが各前記側沿板の前記接触部側沿部に接合されて、前記測温部から導出される前記絶縁膜で被覆された前記熱電対素線のそれぞれが、前記接触板と複数の前記固定用板とに挟持されて固定され、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対素線のそれぞれが前記接触部の長さ方向の中央部から前記接触部の長さ方向の端部に渡って前記接触部の被測温体に接触しない面に接触する構成である。
【0009】
この構成によれば、第一に、熱電対が固定用板によって接触板に非接地で、つまり電気が導通しない状態で固定されるので、被測温体の温度を測定するときに接触板を被測温体に押圧しても、熱電対が被測温体と導通しない。これにより、熱電対の信号に余分なノイズが入ることを回避して被測温体の温度を精度良く測定することができる。
【0010】
第二に、接着剤や溶接などを使用せずに接触板に熱電対を固定するので、接触板が弾性変形しても接着剤や溶接などのように剥がれることはなく、熱電対の固定が解除されることはない。また、接触板の弾性変形を阻害したり、接触板からの熱伝導が低下したりすることを回避することができる。加えて、熱電対が接触板の被測温体に接触しない面に設けられることによって、直接被測温体に接触しない構成のため、測定中に熱電対を覆う絶縁膜が被測温体により損傷して絶縁膜が測温部から剥がれることを回避することができる。従って、接触式温度計の耐久性を向上することができる。
【0011】
特に本発明は、電気式ヒータなどの被測温体の表面に電気が流れるものを測定する場合に好適である。
【0012】
また、上記の接触式温度計
において、
複数の前記固定用板のうちの一つが前記接触部の中央部に配置されて、前記接触部の中央部に配置された前記固定用板が前記絶縁膜に被覆された前記熱電対を介して前記接触板の前記接触部を両側の前記側沿板の前記接触部側沿部よりも被測温体側に押し出す構成である。
【0013】
この構成によれば、接触板の幅方向の両側に側沿板を配置した構成においても前述した効果と同様の効果を得ることができる。また、接触板と側沿板を被測温体に押圧したときに、接触板の接触部が固定用板により間接的に被測温体側に押されるので、常に側沿板よりも被測温体側に位置する。これにより、接触板の接触部が被測温体から離れることを抑制し、常に被測温体に密着するので、被測温体の温度を精度良く測定することができる。
【0014】
また、上記の接触式温度計において、前記固定用板を複数備え、前記熱電対の前記測温部が前記接触板の前記接触部の中央部に配置され、前記絶縁膜で被覆され、前記測温部から導出される前記熱電対素線のそれぞれが、前記接触板と前記固定用板とに挟持されて固定され、前記絶縁膜に被覆された前記熱電対素線のそれぞれが前記接触部の中央部から前記接触部の長さ方向の端部に渡って前記接触部の被測温体に接触しない面に接触する構成であることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、測温部から導出された絶縁膜に被覆された熱電対素線のそれぞれが接触部の被測温体に接触しない面に接触することで、熱電対素線が接触板から十分に伝熱されるので、温度を精度良く測定することができる。
【0016】
加えて、上記の接触式温度計において、前記絶縁膜が芳香族ポリイミドとフッ素樹脂とを重ねて形成された厚さ0.01mm以上、0.05mm以下のフィルムで構成され、前記熱電対を介して複数の前記フィルムの前記フッ素樹脂の面を対向させて合わせ、前記フィルムの前記フッ素樹脂を熱溶着して前記熱電対が前記フィルムに被覆される構成であることが望ましい。この構成によれば、絶縁性のフィルムを利用することで、容易に熱電対を覆うことができるので、製造コストを削減し、製造に掛かる時間を短縮することができる。
【0017】
更に、上記の接触式温度計において、前記接触板の被測温体と接触する面が保護膜で覆われる構成であることが望ましい。この構成によれば、接触板と被測温体との間に保護膜が介在することによって、接触板により被測温体を損傷することを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接触式温度計によれば、熱電対が固定用板によって接触板に非導通状態で固定されるので、被測温体の温度を測定するときに接触板を被測温体に押圧しても、熱電対が被測温体と導通しない。そのため、熱電対の信号に余分なノイズが入ることを回避して被測温体の温度を精度良く測定することができる。従って、測定精度を向上することができる。
【0019】
また、接着剤や溶接などを使用せずに接触板の被測温体に接触しない面に熱電対を固定するので、接触板の弾性変形の阻害、接触板からの熱伝導の低下、及び熱電対を覆う絶縁膜の損傷を回避することができる。従って、接触式温度計の耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の接触式温度計の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では
、熱電対として+極にクロメル、−極にアルメルを用いたタイプKを例に説明するが、本発明は、+極にクロメル、−極にコンスタンタンを用いたタイプEや、+極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量30%)、−極に白金ロジウム合金(ロジウム含有量6%)を用いたタイプBなどの様々な種類の熱電対に適用することができる。また、図面に関しては、構成が分かり易いように寸法を変化させており、各部材、各部品の板厚や幅や長さなどの比率も必ずしも実際に製造するものの比率とは一致させていない。加えて、図面において、接触板の被測温体に接触する部分の長さ方向をx方向、幅方向をy方向、厚さ方向をz方向とする。
【0022】
図1に示すように、第一実施形態の接触式温度計1Aは接触体10を備え、接触体10は接触板11と熱電対12と絶縁膜13と第一固定用板14と第二固定用板15とを有する。また、この接触体10は被測温体側に向いた面を含む外側面10aとその外側面10aの反対側の内側面10b、10cとを有し、内側面10cはx方向に互いに対向する面である。
【0023】
接触板11はy方向から見て被測温体に接触する部分を含む一部分がコの字状のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、被測温体側に突出している。この接触板11はx方向に延設された接触部16と、接触部16のx方向の両端部に配置された屈曲部F1と、接触部16に隣接して屈曲部F1から延設される非接触部17とを有する。接触部16は被測温体の温度を測定する際に被測温体に接触する部分であり、非接触部17は被測温体に接触しない部分である。
【0024】
また、接触体10が被測温体に押圧された際に、接触板11の接触部16が弾性変形して被測温体と接触したときの接触する部分のx方向の長さL1は、熱電対12の厚さの20倍以上とすることが好ましい。なお、この実施形態では熱電対12の厚さが0.1mmであるので、長さL1は2.0mm以上とする。
【0025】
熱電対12は薄い帯状に形成された熱電対であり、接触板11の被測温体に接しない面に沿って配置される。この熱電対12は、異種金属からなる熱電対素線18A、18Bとその熱電対素線18A、18Bを接合して形成された測温部19とを有する。
【0026】
また、この熱電対12は測温部19が接触板11の接触部16の中央部に配置され、測温部19からx方向に導出している熱電対素線18A、18Bのそれぞれが接触体10の内側面10b、10cに沿って配置される。
【0027】
詳しくは、測温部19から導出している熱電対素線18A、18Bのそれぞれが絶縁膜13に被覆され、その絶縁膜13に被覆された熱電対素線18A、18Bのそれぞれが第一固定用板14と複数の第二固定用板15によって接触板11に固定されることにより接触板11の接触部16の中央部から接触部16のx方向の端部に渡って内側面10bに接触する。このように絶縁膜13に被覆された熱電対素線18A、18Bを内側面10bに接触させることで、接触部16の被測温体に接触する長さL1が熱電対12の厚さの20倍以上であることも合わせて、被測温体の温度を測定する際に被測温体から接触板11を介して熱が十分に伝わって熱電対12が十分に均熱される。
【0028】
図2に示すように、絶縁膜13は電気絶縁性の芳香族ポリイミドと電気絶縁性のフッ素樹脂とが重ねて形成されたフィルム13A、13Bで構成される。また、この絶縁膜13は少なくとも熱電対12の接触板11と接触する部分を被覆するようにされている。従って、この実施形態では、熱電対12が接触板11の非接触部17にも沿って配置されるので、絶縁膜13は接触体10の内側面10b、10cに接する部分の熱電対12の外表面を被覆する。
【0029】
接触板11の厚さd2は0.1mm以上、0.5mm以下の厚さが望ましい。この厚さd2が0.5mmより大きいと、被測温体の温度を測定するときの応答速度が遅くなり、厚さd2が0.1mmより小さいと、接触板11の弾性力が低下し被測温体に押圧された際に破損し易くなる。
【0030】
フィルム13A、13Bの厚さd3はそれぞれ0.01mm以上、0.05mm以下が好ましい。この厚さd3が0.05mmより大きいと、被測温体の温度を測定するときの応答速度が遅くなり、厚さd3が0.01mmより小さいと、接触板11と第一固定用板14で挟持したときに損傷し易くなる。
【0031】
接触板11の幅B1は、少なくとも熱電対12を覆う絶縁膜13の幅B2よりも広くする。接触板11の幅B1を絶縁膜13の幅B2よりも広くすることで、熱電対12が被測温体に直接接触しないように保護して耐久性を向上する。
【0032】
図3に示すように、第一固定用板14と第二固定用板15とは接触板11と同様のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、熱電対12の配設方向であるx方向に交差するy方向に延設される。また、この第一固定用板14と第二固定用板15とは熱電対12に対して接触板11の反対側に重ねられる。このとき、第一固定用板14の位置は熱電対12の測温部19が配置された位置、つまり接触板11の接触部16の中央部となり、第二固定用板15の位置は接触板11に対して非接触部17の接触部16側となる。
【0033】
そして、この第一固定用板14はその延設方向であるy方向の両端部が接触板11の接触部16の幅端部に、第二固定用板15はその延設方向であるy方向の両端部が接触板11の非接触部17の幅端部にそれぞれスポット溶接により接合される。
【0034】
この接触式温度計1Aは上記の接触体10と接触体10を支持する支持体20と図示しないグリップと接続線とを備える。支持体20は、被測温体側の端部に配置され接触体10が突出する頭部21とその反対側の端部に接合される導出管22とを有する。
【0035】
頭部21は熱可塑性樹脂の射出成形体で形成され、円筒状の円筒体23と円筒体23の円筒面から半径方向に板状に突出した二組の衝突部材24とを有する。
【0036】
円筒体23は、被測温体側の端部に開口した開口部25と開口部25に繋がる切込部26とを有する。切込部26は一組の衝突部材24の間と他組の衝突部材24の間、つまり円筒面の互いに対向する位置のそれぞれに配置される。この円筒体23の開口部25から接触板11の接触部16が被測温体側に突出するように配置され、切込部26に非接触部17の一部が配置され、切込部26に配置された接触体10の内側面10cが互いにx方向に対向している。
【0037】
組となる衝突部材24のそれぞれは、円筒体23の切込部26を介して対向し、その組となる衝突部材24の間に接触板11の非接触部17の一部が接触可能に配置される。
【0038】
また、この頭部21は円筒体23の内壁面から円筒体23の中心部に向って突出する第一支持部27と円筒体23の内壁面に接合された第二支持部28とを有する。この第一支持部27と第二支持部28は、接触板11の非接触部17の一部を非固定の状態で支持する。
【0039】
加えて、この頭部21は一組の突出片29Aと他組の突出片29Bを備える。この突出片29A、29Bは、頭部21の内壁面、詳しくは衝突部材24の対向面から接触板11
の非接触部17の幅方向であるy方向に向って突出する。また、組となる突出片29Aのそれぞれは互いにy方向に対向する方向に突出し、組となる突出片29Bも同様に突出する。
【0040】
この突出片29Aは接触体10の互いに対向する内側面10cのうちの一方と接触可能な位置に配置され、突出片29Bは他方と接触可能な位置に配置される。また、この突出片29A、29Bはx方向に対して接触部16を介して対向配置された非接触部17のy方向の端部と接触可能な位置に配置される。加えて、この突出片29A、29Bは、非接触部17の接触部16側、つまり非接触部17の屈曲部F1の近傍と接触可能な位置に配置される。
【0041】
次に、この接触式温度計1Aの製造方法について説明する。まず、熱電対12を、熱電対素線18A、18Bの先端部分を接合して測温部19を形成して、作成する。次いで、フィルム13A、13Bのフッ素樹脂の面を対向させ、その間に熱電対12を挟持して合わせる。次いで、フィルム13A、13Bを加熱してフッ素樹脂により熱溶着して熱電対12を絶縁膜13で被覆する。
【0042】
次いで、
図4に示すパーツ21Aと対になるパーツとを、熱可塑性樹脂を金型に充填し射出成形する。
【0043】
次いで、接触板11をジグなどの機械工作機器で固定して、
図5に示すように屈曲する。このとき接触板11の接触部16の両端部の屈曲部F1を山折り、非接触部17の接触部16側の屈曲部F2を山折り、非接触部17の端部側の屈曲部F3を谷折りにする。このようにして接触板11に、接触部16と非接触部17を形成すると共に、非接触部17に接触部16の両端より略L字状に折り曲げられた第一変形部17aと、この第一変形部17aの端部より中央方向に折り曲げられた第二変形部17bと、第二変形部17bの端部より被測温体の反対方向側に折り曲げられた第三変形部17cとを形成する。
【0044】
次いで、屈曲した接触板11の内側面10b、10cに絶縁膜13で被覆した熱電対12を配置し、接触板11の接触部16の中央部に第一固定用板14を重ね、非接触部17の接触部16側に第二固定用板15をそれぞれ重ねる。そして、第一固定用板14と第二固定用板15のそれぞれの両端部を接触部16の幅端部、非接触部17の幅端部にスポット溶接で接合する。このようにして、絶縁膜13で被覆された熱電対12を接触板11と第一固定用板14及び第二固定用板15とで挟持し、固定して接触体10を作成する。
【0045】
次いで、接触体10をパーツ21Aに取り付ける。このとき、接触板11の接触部16を開口部25から被測温体側に突出するように配置し、非接触部17の第一変形部17aを衝突部材24の間の切込部26に配置し、第二変形部17bを第二支持部28に当接可能に配置し、第二変形部17bと第三変形部17cとの間の屈曲部F3を第一支持部27に当接可能に配置する。また、接触体10の対向する内側面10cを、突出片29A、29Bのそれぞれに接触可能に配置する。
【0046】
次いで、パーツ21Aと対になるパーツとを嵌め合わせて頭部21を作成する。次いで、頭部21に導出管22を接合する。そして導出管22の一端部から熱電対12を導出して接続線に接合して接触式温度計1Aの製造が完了する。
【0047】
次に、この接触式温度計1Aの動作について説明する。
図5に示すように、接触体10を被測温体に押圧していない状態では、接触体10は第一支持部27と第二支持部28により支持されている。このとき接触体10の接触部16は開口部25から被測温体側に突出している。
【0048】
また、
図6の実線で示すように、接触体10を被測温体に対して垂直に押圧した状態では、接触体10の接触板11の接触部16の大部分は平らな状態に弾性変形する。一方、非接触部17は屈曲部F2及び屈曲部F3が屈曲し、第二変形部17bの屈曲部F2側が上方に移動した状態に変形する。また、このとき、熱電対12は絶縁膜13に被覆されているため、接触体10が被測温体に押圧されても被測温体と導通しない。
【0049】
図6の点線で示すように、接触体10を、傾斜面を有した被測温体に対して押圧した状態では、接触体10の接触板11の接触部16は被測温体の傾斜面に沿うように弾性変形する。合わせて、一方の非接触部17は屈曲部F2及び屈曲部F3が屈曲し、一方の第二変形部17bの屈曲部F2側が、他方の第二変形部17bよりも上方に移動した状態に変形する。また、このとき、熱電対12は絶縁膜13に被覆されているため、接触体10が被測温体に押圧されても被測温体と導通しない。
【0050】
このように、接触体10を支持体20に第一支持部27と第二支持部28により非固定で支持することにより、接触体10を被測温体に押圧した際に接触体10にストレスが掛からない構造となる。従って、接触体10の耐久性を向上すると共に、応答速度の高速化や測定温度の高精度化を図る。
【0051】
図7に示すように、接触体10を被測温体に押圧した状態で支持体20をy方向に動かした場合には、接触体10の各非接触部17の幅方向であるy方向の一方の端部が、組となる衝突部材24の一方側とそれぞれ接触する。これにより、接触体10を支持体20に対してy方向に動かそうとしても、接触体10の各非接触部17と衝突部材24とが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体10のy方向の変形を抑制する。
【0052】
図8に示すように、接触体10を被測温体に押圧した状態で支持体20をx方向に動かした場合には、接触体10の対向している内側面10cのうちの一方が、組となる突出片29Bと接触する。より詳しくは、接触板11の非接触部17の内側面の接触部16側で、且つ非接触部17の幅方向であるy方向の両端部と各突出片29Bが接触する。これにより、接触体10を支持体20に対してx方向に動かそうとしても、接触体10の対向している内側面10cと突出片29Bとが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体10のx方向の変形を抑制する。
【0053】
このように、被測温体の温度の測定中に予期せぬ事態が発生し、支持体20を動かした場合に、支持体20に設けた衝突部材24、あるいは突出片29A、29Bと接触体10が接触することで、接触体10の変形を抑制する。
【0054】
特に、支持体20を接触板11の接触部16の長さ方向であるx方向に動かした場合に、x方向に接触体10の弾性力よりも強い力が掛かっても、突出片29A、29Bが接触体10のx方向の変形を抑制するので、接触体10の変形や破損を回避する。
【0055】
また、支持体20が接触体10に対してx方向に動かされたときにのみに、突出片29A、29Bのどちらか一方が接触体10の対向する内側面10cのうちの一方と接触するので、被測温体の温度を測定する際の接触体10の弾性変形を阻害しないため、測定の精度の悪化を回避する。
【0056】
加えて、突出片29A、29Bが非接触部17の屈曲部F1側と接触することで、接触体10の変形量を最小にして、接触体10の変形や破損を確実に回避する。
【0057】
更に、突出片29A、29Bは熱電対12と接触しないので、突出片29A、29Bと熱電対12とが接触することで発生する熱電対12の損傷を回避する。
【0058】
図9に示すように、第二実施形態の接触式温度計1Bは接触体30を備え、その接触体30は第一実施形態と同様の接触板11と熱電対12と絶縁膜13とを有すると共に、側沿板31と第一固定用板32と第二固定用板33とを有する。また、この接触体30は被測温体側に向いた面を含む外側面30aとその外側面30aの反対側の内側面30b、30cとを有し、内側面30cは互いに対向する。
【0059】
側沿板31は、接触板11の幅方向であるy方向の両側に接触板11との間に間隙を空けて配置され、接触板11と同様にy方向から見て一部分がコの字状のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、被測温体側に突出している。この側沿板31は、x方向に延設され接触部16に沿う接触部側沿部34と、接触部側沿部34のx方向の両端部に配置された屈曲部F1と、接触部側沿部34に隣接し屈曲部F1から延設され非接触部17に沿う非接触部側沿部35とを有する。
【0060】
第一固定用板32は接触板11と同様のニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、熱電対12の配設方向であるx方向に交差するy方向に延設される。また、この第一固定用板32は熱電対12に対して接触板11側の反対側に重ねられる。このとき、第一固定用板32の位置は熱電対12に対して測温部19が配置された位置、つまり接触板11の接触部16の中央部となる。そして、この第一固定用板32はy方向の両端部が各側沿板31にスポット溶接により接合される。
【0061】
加えて、この第一固定用板32は、
図10に示すように、絶縁膜13に覆われた熱電対12を介して、接触板11の接触部16を両側の側沿板31の接触部側沿部34よりも被測温体側に押し出している。接触板11と側沿板31のそれぞれの厚さは同じである。従って、接触板11は熱電対12とその熱電対12を覆う絶縁膜13の厚さd4分だけ側沿板31よりも被測温体側に押し出される。
【0062】
接触板11の幅B1は、少なくとも熱電対12を覆う絶縁膜13、つまりフィルム13A、13Bの幅B2よりも広くし、且つ、接触体30の幅B3の半分以上よりも広くする。接触板11の幅B1を絶縁膜13の幅B2よりも広くすることで、熱電対12が被測温体に直接接触しないように保護して耐久性を向上する。また、接触板11の幅B1を接触体30の幅B3の半分以上の幅とすると、接触体30がy方向にずらされた場合でも、接触板11の変形を抑制して、接触体30の耐久性を向上する。
【0063】
また、接触板11と側沿板31との間の幅B4は0.2mm以上、0.3mm以下が望ましい。幅B4が0.2mmより小さいと、接触板11と側沿板31との間が狭く、被測温体と接触する接触板11から側沿板31に伝熱し、精度の高い測定が難しくなる。一方、幅B4が0.3mmよりも大きいと、接触板11、あるいは側沿板31がy方向に大きく変形可能になり、接触体30の耐久性が落ちる。
【0064】
従って、接触体30の耐久性と測定結果の精度を考慮すると、接触体30の幅B3を基準として、接触板11の幅B1はその半分以上の幅とし、側沿板31の幅B5はその五分の一から四分の一程度の幅に設定することが望ましい。
【0065】
図11に示すように、第二固定用板33は接触板11と同様にニッケル基の超合金の導電性の板材で形成され、一方の側沿板31から他方の側沿板31に渡ってy方向に延設される。また、この第二固定用板33は熱電対12に対して接触板11の反対側に重ねられる。このとき、この第二固定用板33は接触板11の非接触部17の屈曲部F1側と側沿
板31の非接触部側沿部35の屈曲部F1とを繋ぐ位置に配置される。そして、この第二固定用板33は接触板11と側沿板31の両方に接合される。第二固定用板33のy方向の両端部が各側沿板31にスポット溶接により接合されると共に、第二固定用板33の中途の位置が接触板11の両幅端部にスポット溶接により接合される。なお、接触板11とのスポット溶接は絶縁膜13に被覆された熱電対12を避ける位置とする。
【0066】
図12に示すように、この接触式温度計1Bは上記の接触体30を支持する支持体40と図示しないグリップと接続線とを備える。支持体40は、被測温体側の端部に配置され接触体30が突出する頭部41とその反対側の端部に接合される導出管42とを有する。
【0067】
また、この頭部41は金属加工体で形成され、円筒状の円筒体43を有する。円筒体43は、被測温体側の端部に開口した開口部44と、円筒面の互いに対向する位置のそれぞれに開口部44に繋がる切込部45とを有する。この円筒体43の開口部44から接触板11の接触部16と側沿板31の接触部側沿部34とが被測温体側に突出するように配置され、切込部45に接触板11の非接触部17と側沿板31の非接触部側沿部35とが配置される。
【0068】
また、この頭部41は円筒体43の切込部45により形成された二つの半円筒形状の両端部に衝突部46を有する。加えて、この頭部41は円筒体43の内部に抜け留部材47と、その抜け留部材47に固定された突出片48A、48Bとを有する。
【0069】
抜け留部材47は、円筒状の金属加工体で形成され、一方の端部が円筒体43の内底面との間に接触体30の端部を挟持して、円筒体43の内底面に接合される。
【0070】
突出片48A、48Bは、抜け留部材47と同様に金属加工体で形成され、抜け留部材47の他方の端部に配置され、その端部から接触体30の内側面30cに向かってx方向に突出している。また、一組の突出片48Aと他組の突出片48Bとはそれぞれx方向の反対方向に突出する。
【0071】
この突出片48Aは接触体30の互いに対向する内側面30cのうちの一方と接触可能な位置に配置され、突出片48Bは他方と接触可能な位置に配置される。また、この突出片48Aは一方の内側面30cの幅方向であるy方向の両端部、つまりx方向に対して接触部16を介して対向配置された一組の非接触部側沿部35の内側面と接触可能な位置に配置され、突出片48Bは他組の非接触部側沿部35の内側面と接触可能な位置に配置される。加えて、この突出片48A、48Bは非接触部側沿部35の接触部側沿部34側、つまり非接触部側沿部35の屈曲部F1の近傍と接触可能な位置に配置される。
【0072】
次に、この接触式温度計1Bの製造方法について説明する。まず、第一実施形態と同様に熱電対12を絶縁膜13で被覆する。次いで、金属を加工して円筒体43と抜け留部材47を作成する。
【0073】
次いで、屈曲していない接触板11の内側面30b、30cに絶縁膜13で被覆した熱電対12を配置し、接触板11の幅方向の両側に屈曲していない側沿板31を配置する。次いで、接触部16の中央部に第一固定用板32を重ね、非接触部17の接触部16側に第二固定用板33をそれぞれ重ねる。次いで、第一固定用板32の両端部を各側沿板31にスポット溶接で接合する。次いで、第二固定用板33を接触板11の両幅端部と各側沿板31のそれぞれにスポット溶接で接合する。このようにして、絶縁膜13で被覆された熱電対12を接触板11と第一固定用板32と第二固定用板33とで挟持し、固定する。
【0074】
次いで、第一固定用板32と第二固定用板33とにより一体的になった接触板11と側
沿板31とをジグなどの機械工作機器で固定して、
図13に示すように屈曲する。なお、
図13では非接触部17は側沿板31に重なっている状態であるため、非接触部17を示す符号については側沿板31を示す符号に括弧書きで追加した。このとき、接触板11の接触部16の両端部の屈曲部F1を山折り、非接触部17の屈曲部F2と屈曲部F3を山折りにする。このようにして接触板11に、接触部16と非接触部17とを形成すると共に、非接触部17に接触部16の両端より略L字状に折り曲げられた第一変形部17aと、この第一変形部17aの端部より中央方向に折り曲げられた第二変形部17bとを形成する。同様に側沿板31を、屈曲部F1を山折り、屈曲部F2と屈曲部F3を山折りに屈曲して、接触部側沿部34と非接触部側沿部35とを形成すると共に、接触部側沿部34の両端より略L字状に折り曲げられた第一変形部35aと、この第一変形部35aの端部より中央方向に折り曲げられた第二変形部35bとを形成する。
【0075】
次いで、側沿板31の端部同士、つまり第二変形部35bの端部同士を接合して、接触体30を側面から見て矩形の輪状に形成する。このとき接触板11の端部同士は接合せず、その端部の間から熱電対12を導出する。このようにして、接触体30を作成する。
【0076】
次いで、
図13に示すように、接触体30の輪の中に抜け留部材47を挿入し、この接触体30と抜け留部材47を頭部41の円筒体43の開口部44から挿入する。このとき、接触板11の接触部16と側沿板31の接触部側沿部34を開口部44から被測温体側に突出するように、また非接触部17の第一変形部17aと非接触部側沿部35の第一変形部35aを切込部45から突出するように、また屈曲部F1の近傍のy方向の両端部を衝突部46のそれぞれに当接可能に、それぞれ配置する。また、接触体30の対向する内側面30cを、突出片48A、48Bのそれぞれに接触可能に配置する。
【0077】
次いで、接触板11及び側沿板31のそれぞれの端部を抜け留部材47と円筒体43の内底面との間で挟持して固定する。次いで、頭部41に導出管42を接合する。そして導出管42の一端部から熱電対12を導出して接続線に接合して接触式温度計1Bの製造が完了する。
【0078】
次に、この接触式温度計1Bの動作について説明する。
図13に示すように、接触体30を被測温体に押圧していない状態では、接触体30は抜け留部材47により支持されている。このとき接触体30の一部は開口部44と切込部45から被測温体側に突出している。また、接触板11の接触部16が第一固定用板32により絶縁膜13で被覆された熱電対12を介して間接的に押し出され、側沿板31よりも被測温体側に位置している。加えて、接触板11の非接触部17と側沿板31の非接触部側沿部35は第二固定用板33により非接触部17と非接触部側沿部35とのどちらが外側や内側に突出することなく一体化している。
【0079】
図14の実線で示すように、接触体30を被測温体に対して垂直に押圧した状態では、接触体30の接触板11の接触部16と側沿板31の接触部側沿部34とはそれぞれ平らな状態に弾性変形する。一方、接触板11の非接触部17の第一変形部17aと側沿板31の非接触部側沿部35の第一変形部35aとはそれぞれ一体的に外側に広がった状態に弾性変形する。このとき、接触板11の接触部16は、自身の弾性力に加えて、第一固定用板32により間接的に押し出され、その部分は、常に両側の側沿板31の接触部側沿部34よりも被測温体側に位置することになる。また、このとき、熱電対12は絶縁膜13に被覆されているため、接触体30が被測温体に押圧されても被測温体と導通しない。
【0080】
ここで、
図15の(a)に示す第一固定用板32の無い接触式温度計の接触体30Xと、
図15の(b)に示す第一固定用板32と第二固定用板33との間の長さが短い接触体30Yと、この実施形態の接触式温度計1Bの接触体30との違いについて説明する。なお、接触体30X、30Yはどちらも接触体30と同様に支持体にその端部が固定されているものとする。第一固定用板32の無い接触体30Xを被測温体に押圧すると、
図15の(a)に示すように、接触板11Xが浮き上がって被測温体から離れてしまう。また、第一固定用板32と第二固定用板33との間の長さが短い接触体30Yを被測温体に押圧すると、
図15の(b)に示すように、側沿板31と第二固定用板33との接合部の付近に大きな歪みが発生する。
【0081】
一方、上記の接触式温度計1Bは第一固定用板32で間接的に接触板11を押し出すことで、接触板11の接触部16を両側の側沿板31の接触部側沿部34よりも被測温体側に押し出して、接触部16の浮き上がりを回避する。また、第二固定用板33を接触板11の非接触部17と側沿板31の非接触部側沿部35とを繋ぐ位置に配置して、第一固定用板32と第二固定用板33との間を長くすることで、接触板11及び側沿板31の変形量を小さくし、且つ第二固定用板33との接合部の付近の歪みの発生を回避する。
【0082】
図16に示すように、接触体30を被測温体に押圧した状態で支持体40をy方向に動かした場合には、接触体30の幅方向であるy方向の一方の端部が、つまり一方の側沿板31が、一方の半円筒形状の両端部に配置された一組の衝突部46と接触する。従って、接触体30の一方の側沿板31と衝突部46とが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体30のy方向の変形を抑制する。
【0083】
また、このとき衝突部46と接触した側沿板31が接触板11側に変形しようとするが、接触板11の非接触部17と側沿板31の非接触部側沿部35とを繋ぐ第二固定用板33が接触板11と側沿板31との間の間隙を保持して、その変形を抑制する。
【0084】
図17に示すように、接触体30を被測温体に押圧した状態で支持体40をx方向に動かした場合には、接触体30の切込部45に配置され互いに対向している内側面30cのうちの一方が、組となる突出片48Bと接触する。より詳しくは、接触部16のx方向の端部側に配置された一組の側沿板31の非接触部側沿部35の内側面の屈曲部F1の近傍と各突出片48Bとが接触する。従って、接触体30の対向している内側面30cのうちの一方と突出片48Bとが接触していることにより、これ以上は変形しない。これにより、接触体30のx方向の変形を抑制する。
【0085】
このように、被測温体の温度の測定中に予期せぬ事態が発生し、支持体40を動かした場合に、第一実施形態と同様に、支持体40に設けた衝突部46、あるいは突出片48A、48Bと接触体30が接触することで、接触体30の変形を抑制する。
【0086】
上記の接触式温度計1A、1Bによれば、熱電対12が第一固定用板14及び第二固定用板15によって接触板11に非接地で固定される、又は熱電対12が第一固定用板32及び第二固定用板33によって接触板11に非接地で固定される。つまり、熱電対12が接触板11に電気が導通しない状態で固定されるので、被測温体の温度を測定するときに接触板11を被測温体に押圧しても、熱電対12が被測温体と導通しない。これにより、熱電対12に余分なノイズが入ることを回避して被測温体の温度を精度良く測定することができる。
【0087】
また、接着剤や溶接などを使用せずに接触板11に熱電対12を固定するので、接触板11が弾性変形しても接着剤や溶接などのように剥がれることはなく、熱電対12の固定が解除されることはない。また、接触板11の弾性変形を阻害したり、接触板11からの熱伝導が低下したりすることを回避することができる。加えて、熱電対12が接触体10、30の内側面10b、30bに設けられることによって、直接被測温体に接触しない構成のため、測定中に熱電対12を覆う絶縁膜13が被測温体により損傷して絶縁膜13が測温部19から剥がれることを回避することができる。従って、接触式温度計1A、1Bの耐久性を向上することができる。
【0088】
加えて、第一固定用板14、32及び第二固定用板15、33の複数の固定用板により絶縁膜13に被覆された熱電対素線18A、18Bを接触板11の接触部16の中央部からx方向の端部に渡って被測温体に接触しない面に接触させることで、熱電対素線18A、18Bのそれぞれが接触板11から十分に均熱されるので、測定精度を向上することができる。
【0089】
更に、芳香族ポリイミドとフッ素樹脂とを重ねて形成されたフィルム13A、13Bを熱溶着させて容易に熱電対12の外表面を覆うことができるので、製造コストを削減し、製造に掛かる時間を短縮することができる。
【0090】
図18に示すように、第三実施形態の接触式温度計1Cは第一実施形態の構成に加えて、接触体10の外側面10aに電気絶縁性の芳香族ポリイミドと電気絶縁性のフッ素樹脂とが重ねて形成されたフィルム(保護膜)50を熱溶着して構成される。この構成によれば、接触板11と被測温体との間にフィルム50が介在することによって、接触板11により被測温体を損傷することを防止することができる。同様に、第二実施形態の接触体30の外側面30aにフィルムを熱溶着してもよい。
【0091】
図19に示すように、第四実施形態の接触式温度計1Dは、第一実施形態の第一固定用板14と第二固定用板15とに代えて複数の固定用板60A、60Bを備える。従って、熱電対12の測温部19が固定用板60A、60Bで挟持されず、固定用板60A、60Bが測温部19からx方向に離間して配置される。この構成でも絶縁膜13に被覆された測温部19と測温部19から導出される熱電対素線18A、18Bとが接触板11の被測温体に接触しない面に接触している。
【0092】
この構成によれば、熱電対12の測温部19が固定用板60A、60Bに挟持されていないため、測定時の応答速度を速くすることができる。また、部品点数が少なく加工工数を減少することができる。
【0093】
なお、上記の実施形態では、接触体10及び30の一部をy方向から見てコの字状に形成した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、接触体の一部をy方向から見て円弧状に形成すると共に支持体の頭部を球面状に形成することもできる。このように接触体を円弧状に形成した場合でも、接触体を被測温体に押圧したときに、接触する接触部と接触しない非接触部が形成される。
【0094】
また、上記の実施形態では、頭部21を熱可塑性樹脂で形成し、頭部41を金属加工体で形成した例を説明したが、頭部21を金属加工体で形成し、頭部41を熱可塑性樹脂で形成することもできる。
【0095】
また、上記の実施形態では、熱電対12が帯状の熱電対のため、接触板11の接触部16に沿う長さL1を熱電対12の厚さd1を基準に設定したが、断面が円形の線状の熱電対の場合にはその外径を基準とする。
【0096】
また、第二実施形態では、接触板11と側沿板31とを別体とし、第一固定用板32及び第二固定用板33で繋げた接触体30を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。一枚の板材に間隙を形成して接触板となる部分と側沿板となる部分を形成し、固定用板で絶縁膜に被覆された熱電対を固定する構成としてもよい。
【0097】
また、第三実施形態では、保護膜としてフィルム50を用いた例を説明したが、接触体10を被測温体に押圧した際に被測温体を保護することができればよく、絶縁性の材料に限定されない。