(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ビジュアライズ工程、前記第2ビジュアライズ工程、又は、前記第3ビジュアライズ工程のいずれかにおいて、地図上にデータを表示することを特徴とする請求項2記載のデータアナライズ方法。
前記アノニマス・ベクトルに基づいた表示は、光点を、前記アノニマス・ベクトルの方向に、前記アノニマス・ベクトルの大きさに対応する距離で移動させることを特徴とする請求項1記載のデータアナライズ方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(データビジュアライズを使用したデータアナライズ)
ビックデータのビジュアライズにより、専門家(例えば、都市計画、行政、警備、マーケティング等の諸分野の専門家)がビックデータの全体を見ることができる。
【0013】
しかし、膨大なビックデータを読み解き、注目すべき事象や変化を把握することは極めて困難である。専門家は、ビックデータを解析して社会的な課題を見出し、解決することが求められる。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るデータアナライズの全体像を示す説明図である。
図1に示すように、ビックデータAをビジュアライズし、その結果からおおまかな傾向を把握し(S1)、異常や変化を検知する(S2)。すなわち、ビックデータAの全体のどのポイントに注目して解析を行うべきであるかを把握するため、ビジュアライズの結果から「何か起こっていそうな部分」をおおまかに捉え、ビックデータAの中から特徴的な事象を見出す。ビジュアライズにおいては、ビックデータAに対して他のデータBを組み合わせてビジュアライズすることも有効である。
【0015】
次いで、ビジュアライズによって特徴的な事象が見出されたならば、それについて、解析・検証を行う(S3)。この際に、ビックデータAを、時系列で見たり、別のデータCを加えたり、抽出条件を変えたりして、特徴的な事象について検証を行う。このようなさらに掘り下げた解析を進めて、特徴的な事象及びその原因を特定し、課題の解決につながるキーファクターを抜き出す。そして、キーファクターに着目し、専門家が必要な情報(以下、アナライズ結果)を生成する(S4)。専門家はアナライズ結果を用いて、社会的な課題を見出し、解決するための具体的なソリューションを提案し、社会的な活用を図ることができる(S5)。
【0016】
以上のようなデータビジュアライズを使用したデータアナライズにおいて、ビジュアライズとアナライズとを何度も繰り返しながら、アナライズに有効なビジュアライズを行う条件を見つけ出すことが有効である。
【0017】
このようなデータビジュアライズを使用したデータアナライズについて、具体例を挙げて説明する。
【0018】
(東京マラソン)
例えば、ビックデータとして携帯電話の位置情報がある。これを用いて東京マラソン当日の人の流れから社会的な活用を図る場合について説明する。まず、携帯電話の位置情報から、東京マラソン当日の、東京23区内の携帯電話の位置情報を抽出する。次に、東京23区の地図の上に、携帯電話の位置、すなわち携帯電話を保有する人の位置を光点として時系列で表示し、人の流れをビジュアライズする。この段階で、専門家がビジュアライズの結果を解析・検証しても、単に膨大な光点の流れを視ることができるだけで、何らかの特徴的な動きを見出すことが困難である。
【0019】
そこで、特定の時速(例えば、時速6〜20km)で移動する人の流れだけを抽出し、再度ビジュアライズすると、その速度で移動する人の流れを把握することができるようになる。さらに、スタート時刻にスタート地点にいた人を抽出することで、東京マラソンに参加したランナーの流れをビジュアライズすることが可能になる。
【0020】
このような抽出条件の変更だけでなく、例えば、地図上にマラソンコースを表示したり、「マラソン」というキーワードが含まれたSNSの投稿データを重畳表示したり、他のデータを追加して、ビジュアライズを行うことも有効である。
【0021】
このように、データビジュアライズの条件を変更しながら、ビジュアライズとアナライズを繰り返し、専門家が東京マラソン当日の特徴的な人の動きを見出すことができるビジュアライズ結果を得ることができる。アナライズ結果として、最終的なビジュアライズ結果をそのまま、又は、ビックデータを改めて加工したグラフ等を生成し、東京マラソン当日の警備体制の検討、臨時店舗や自動販売機の設置計画、商品の仕入れ量の決定などの活用を図ることができる。
【0022】
(交通機関の利用状況)
次に、ある駅周辺で交通機関を利用した人の流れを社会的に活用する場合について説明する。
図2は、本実施の形態に係るデータアナライズを説明するための説明図である。
図2Aは、ある駅周辺での人の流れをビジュアライズした結果を示している。
図2A中の複数の白丸21は、地上駅22周辺のある時点での人の位置を示している。このような人の位置は、例えば、GPS機能を搭載した携帯電話から取得した位置情報に基づいて取得することができる。時間経過にしたがって人の位置を示す白丸21を動かすことで人の位置をアニメーションで表現することが可能である。
図2Aでは、すべての人の位置を表示しているので、白丸21を動かしても何らかの価値を見出すことは難しく、また、処理に要する時間も膨大である。
【0023】
図2Bは、ゲート分析を行った後のデータをビジュアライズした結果を示している。ゲート分析の詳細については後で説明する。ゲート分析では、地上駅22と、他の交通機関の昇降地点である地下駅24、バス停25及びタクシー乗り場26にゲートを設置する。そして、所定の時間内に、これらのゲートのうち少なくとも2点のゲートを通過した人の位置だけを黒丸23で表示するようにしている。いずれのゲートも通過しない人、及び、いずれか一つのゲートを通過したのみの人は表示されない。さらに、電車27、バス28及びタクシー29の動きを追加して表示している。例えば、電車27、バス28及びタクシー29の動きは、それぞれを運行する企業から得ることができる。
【0024】
このようにゲート分析を施したり、他の交通機関の昇降地点24〜26を加えたり、電車27、バス28及びタクシー29の動きを加えたりすることで、特徴的な人の動きを見出すことが可能となる。このビジュアライズ結果から、例えば、自動販売機の設置場所を決定したり、バス停25やタクシー乗り場26を増設又は撤去したり、という社会的な活用を図ることができる。
【0025】
(データアナライズシステム)
以下、本実施の形態に係るデータアナライズシステムについて図面を参照して説明する。
【0026】
(ハードウエア構成)
図3は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムのハードウエア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施の形態に係るデータアナライズシステム30は、演算部31、電源供給部32、メモリ33、ストレージ34、ユーザインターフェイス35及び外部インターフェイス36を具備している。各部の詳細については、当業者であれば名称から容易に理解できるであろう。
【0027】
(機能)
図4は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムの機能を示すブロック図である。
図4に示すように、ストレージ34に格納されたデータセット41が、演算部31に入力される。演算部31は、コンピュータプログラムを実行することにより、データセット41の一部を抽出する抽出部42と、データセット41の一部又はデータセット41の全体をビジュアライズするビジュアライズ部43と、ユーザインターフェイス35を介してビジュアライズ部43でのビジュアライズ条件を設定する条件設定部44と、さらに、ビジュアライズ結果に基づいて、データセット41についてアナライズを行い、社会的な活用に必要なアナライズ結果を生成するアナライズ部46と、を実現している。また、条件設定部44で設定したビジュアライズ条件45をメモリ33に記憶可能になっている。さらに、ビジュアライズ部43での処理結果は、外部インターフェイス36を介して、例えば、ディスプレイ47で表示できるようになっている。
【0028】
ここでは、一つの装置で処理を行う場合について説明したが、クラウド上で複数の装置がデータセット41を並列処理してもよいことは言うまでもない。
【0029】
(概要)
以下、本実施の形態に係るデータアナライズ方法の概要について説明する。
図5は、本実施の形態に係るデータアナライズ方法を示すフローチャート図である。
図5に示すように、まず、抽出部42がデータセット41の全体から一部を、例えばランダムに抽出する(S11)。この抽出は、後述するビジュアライズの所要時間を短縮するために、処理対象を減らし、処理の負荷を軽減するために行われる。次に、条件設定部44は、ビジュアライズ条件45を設定する(S12)。設定されたビジュアライズ条件45はメモリ33に記憶される。
【0030】
次に、ビジュアライズ部43は、S2で設定したビジュアライズ条件45を用いて、ビジュアライズ処理を実行する(S13)。処理結果は、例えば、ビジュアライズ部43によりディスプレイ47に表示される。
【0031】
ビジュアライズの結果に基づいて、上述の解析・検証を行う(S14)。解析・検証では、ビジュアライズ結果からデータセット41の一部のおおまかな傾向を把握し、異常や変化が検知できるか、すなわち特徴的な事象を見出せるか否か検証する。その結果、特徴的な事象を見出せない、又は、明確ではないと判定したならば、条件設定部44は、ユーザインターフェイス35を介して行われる操作者によるビジュアライズ条件の変更を受け付け、ビジュアライズ条件45を変更する(S15)。変更されたビジュアライズ条件45はメモリ33に記憶される。
【0032】
次に、ビジュアライズ部43は、変更されたビジュアライズ条件45を用いてデータセット41の一部を再度ビジュアライズ処理する(S13)。
【0033】
一方、S14で特徴的な事象が見出せたならば、データセット41の全体を取得する(S16)。ビジュアライズ部43は、メモリ33に記憶された最終のビジュアライズ条件45を用いて、データセット41の全体をビジュアライズ処理する(S17)。処理結果は、例えば、ビジュアライズ部43によりディスプレイ47に表示される。
【0034】
次いで、データセット41の全体をビジュアライズした結果の、解析・検証を行う(S18)。ここまでのプロセスにおいて、データセット41の一部に対して、ビジュアライズと解析・検証を繰り返し行い、データセット41のおおまかな傾向を把握し、特徴的な事象を見出すことができているので、データセット41の全体についてのビジュアライズ結果から、さらに解析・検証を行うことは容易である。
【0035】
S18でのデータセット41の全体に対する解析・検証を経て、データセット41の全体に対してアナライズ処理を実行し、社会的な活用に必要なアナライズ結果を生成する(S19)。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係るデータアナライズ方法によれば、データセット41の一部について、ビジュアライズを行い(S13)、その結果を解析・検証し(S14)、特徴的な事象を見出せない場合にはビジュアライズ条件を変更(S15)して再びビジュアライズする(S13)。その結果から特徴的な事象を見出せたならば(S14)、データセット41の全体を、データセット41の一部をビジュアライズしたのと同じ条件でビジュアライズする(S16、S17)。データセット41の全体を処理するよりもその一部を処理する方が短時間でビジュアライズ処理を行うことができるので、データセット41から特徴的な事象を見出せるビジュアライズ条件45を短期間で決定することができる。その後、データセット41の解析・検証(S18)を行い、アナライズ処理(S19)によって、アナライズ結果を生成することができる。
【0037】
(詳細)
以下、本実施の形態に係るデータアナライズシステムの詳細について説明する。
【0038】
(データセット)
データセット41は、いわゆるビックデータである。ビックデータとは、通常、収集、取捨選択、管理、及び許容される時間内にデータを処理するために一般的に使用されるソフトウェアツールの能力を超えたサイズのデータ集合を呼ぶが、これに限定されるものではない。
【0039】
また、本実施の形態においては、データセット41は、少なくとも位置情報と時間情報を含む。ここで、「位置」とは、例えば地球上の位置であり、緯度、経度が含まれる。「位置」には、人体内の位置も含まれる。人体内の例えば、全身血流中の赤血球やウイルスの位置や、脳での脳波データの計測位置である。
【0040】
データセット41の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
<環境>
天候:例えば、降雨量
CO
2濃度
【0041】
<経済活動>
購買情報:
POS端末から購買データを集め、個人がどのお店からどのお店に移動して商品を購入したかを把握することができる。この場合、店舗の住所から位置を把握できる。同様に、クレジットカードの利用履歴も利用できる。さらに、レシートを撮影し、購買情報を記録し、クラウドに蓄積するクラウド型家計簿サービスが提供されている。このサービスでは、購買情報から店舗を特定し、店舗の住所からユーザの行動履歴を把握することが可能である。
【0042】
自動販売機:自動販売機の設置地点と、そこでの商品の販売数量
株価:株価の変動を本社の位置に対応付ける。
<健康>
感染症の発生位置:
<エネルギー>
太陽電池の設置位置:
【0043】
<社会>
ネットワーク・ソーシャルメディア:Twitter(登録商標)のツィートの発信位置やFoursquare(登録商標)のチェックイン位置
検索クエリ:検索クエリに含まれる場所の位置
ブログ記事:ブログ記事に含まれる場所や写真撮影の位置
交通:自動車の移動記録、飛行機のフライト記録
【0044】
<人の動き>
例えば、次のような位置情報から人の動きを把握できる。
携帯電話、ウエラブル端末等の移動通信端末の位置情報(GPSや基地局データの利用)
接続したWi−Fiホットスポットの位置
Wi−Fiや超音波等の通信を活用して捕捉したジオフェンスの位置
自動改札を通過した位置
【0045】
(データセットの抽出)
データセット41の一部を抽出するとは、処理対象を減らし、処理時間を短縮することである。抽出には、例えば、位置情報及び時間情報をセットにしたデータの一部をランダムに抽出する方法、特定のエリア又は時間帯のデータを抽出する方法、参照データとの差分が所定値よりも大きいデータを抽出する方法等が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0046】
(ビジュアライズ)
データのビジュアライズとは、データを可視化することである。データを可視化することにより、専門家がデータのおおまかな傾向を捉え、特徴的な事象を見出すことが可能となる。
【0047】
(ビジュアライズ条件)
ビジュアライズ条件は、例えば、分析や表現の「手法」と、手法毎に必要な「パラメータ」と、が含まれる。
【0048】
ビジュアライズは、データを分析することと、分析結果を表現することに大別することができる。
【0049】
分析手法には、以下のものが例示することができるが特に限定されない。
ゲートを用いた分析手法:対象地域の地図上に任意に設定したゲート(関門)を分析対象が通過したか否かによって、分析対象を選別する。例えば、ゲートを通過した分析対象を表示対象とする。
メッシュを用いた分析手法:対象地域の地図を複数の領域に分割し、一つの領域に存在する分析対象の数を把握する。
【0050】
表現手法には、以下のものが例示することができるが、特に限定されない。
地図:地図の上に、人の動きに対応して、光点の動きや軌跡を表示する。あるいは、人の数の変動を、光点の密度、色の濃淡又は明暗で表示する。人の数の変動を標高線のように地点の高さで表すことも可能である。
グラフ:棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ(πチャートともいう。)
【0051】
パラメータは、分析や表現の手法によって異なってくる。以下のものが例示することができるが、特に限定されない。
【0052】
<分析手法のパラメータ>
ゲートを用いた分析手法におけるゲートの設置位置又は大きさ
ヒートマップを用いた分析手法における分割された領域(ヒートマップ)のサイズ
<表現手法のパラメータ>
光点:色の明暗や濃淡(例えば、移動速度が速いものは光点を濃い色で表示する)、形状、大きさ
ヒートマップを用いた分析手法における分割された領域の色、明暗又は濃淡(例えば、人が多い地点ではメッシュを輝度が高く濃い赤色で表示する)
【0053】
(ビジュアライズ結果の描画)
ビジュアライズ結果は、ディスプレイ47に表示される。ディスプレイ47へデータの描画方法は、一般的なアプリケーションプログラムと同様である。
【0054】
(ビジュアライズ結果の解析・検証)
ビジュアライズ結果の解析・検証は、例えば、ディスプレイ47に表示された処理結果に特徴的な事象が見出すことができるか否か判断する。特徴的な事象とは、例えば、東京マラソンの例を挙げれば、東京マラソンの当日のゴール付近の最寄りの駅では、ランナーのゴールが始まる時間から当該駅に向かう人の流れが多くなる、というような事象である。特徴的な事象を見出すことができるという判断は、専門家又は分析者が行ってもよいし、しきい値などを用いてビジュアライズ部43が行ってもよい。
【0055】
(ビジュアライズ条件変更)
ビジュアライズ条件45の変更とは、分析手法の変更、及び、分析手法に用いるパラメータの変更の少なくともいずれか一方を含む。変更されたビジュアライズ条件を用いてビジュアライズを再び行い、その結果を評価する。
【0056】
ビジュアライズ条件45の変更は、例えば、複数用意された手法のうち少なくともいずれか一つの選択、あるいは、パラメータの数値の変更が、条件設定部44に入力されることにより実施される。
【0057】
(全データセット処理)
ビジュアライズ結果から特徴的な事象が見出されたならば、データセット41の全体を取得して、データセット41の一部と同じ手法及び同じパラメータを利用し、データセット41の全体をビジュアライズする。
【0058】
(分析手法)
次に、分析手法について詳細に説明する。以下の説明では、分析対象として多数の人の移動を示すデータを分析する場合を例に挙げる。この人の移動データは、例えば、各人が所有するGPS付の携帯電話端末の移動履歴を、携帯電話会社を介して収集することができる。
【0059】
(ゲート)
図6は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムにおけるゲートを用いた分析手法の一例を説明するための説明図である。
図6に示すように、2つのゲートG1、G2を地図上に設置する。
図6中の複数の白丸印(61)、黒丸印(62)及び白三角印(63)は、人位置を示し、矢印はその動きを示している。人が所定の時間内に二つのゲートG1、G2の双方を通過した場合は白丸印(61)で示す。このように二つのゲートG1、G2の双方を通過した者だけを表示対象とすることとし、黒丸印(62)と、白三角印(63)は、一方のゲートG1又はG2のいずれかを通過し、もう一方のゲートG2又はG1を通過していない場合を示すが、このような者の動きは表示しない。
【0060】
ゲートG1、G2の通過は、例えば、地図上の所定の場所に、所定の距離をおいて想定した2つの地点の位置(緯度、経度)の間をある人が通過したか否かを、この人の移動データから判断することができる。また、例えば、この人が、ある駅に設置された自動改札を通過したことをFeliCa(登録商標)カードの利用履歴から把握して、利用履歴があれば当該駅に設置したゲートを通過したと判断することもできる。
【0061】
このようなゲートG1、G2の両方を通過した者を示す移動データだけを地図上に表示するという表現を行うことが可能になる。
【0062】
(ヒートマップ)
図7及び
図8は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムにおけるヒートマップ分析を説明するための説明図である。
図7に示すように、地図上に一定間隔で複数の格子71を東西(図の左右)方向及び南北(図の上下)方向に描き、地図を複数の領域72に分割する。
【0063】
図7に、ある人の動きを矢印で示し、白丸印73で現在の位置を示す。その人がある領域Aに地点Xを通過して入ったとき、領域Aの重み付けを「1」インクリメントする。また、その人が地点Yを通過して領域Aから出たとき、領域Aの重み付けを「1」デクリメントする。これのようにして、人の移動に伴って領域72の重み付けが変動する。
【0064】
図8は、領域Aに重み付けに応じた色を付与して表示した場合を例示している。
図8に示すように、人がいるときは領域Aの色の濃淡及び色味などを他の領域72と異ならせることにより、領域Aに存在する人の数と、他の領域72に存在する人の数とを比較して、視覚的に把握できるようになる。
図8中の領域Bは、領域Aよりも重み付けが大きい場合、領域Aとは異なる色が付与されている。このように、重み付けの違いを色の違いで表現することできる。さらに、継時的な重み付けの変化は、各領域72に付与される色の変化として現れるので、人の動きを色の変化で把握することができる。
【0065】
(アノニマス・フロー・ビジュアライズ手法)
地図上に人の動きを点の移動で表現する場合、その点はある個人の行動履歴を表す。このとき、個人を直ちに特定できないとしても個人情報を含んでいる。そこで、ビジュアライズ結果を利用するときに、個人情報を含まないようにビジュアライズすることが望ましい。
【0066】
以下、個人情報を含まないビジュアライズを行うために、個人情報を破棄した人の移動のビジュアライズ手法(アノニマス・フロー・ビジュアライズ手法)について説明する。アノニマス・フロー・ビジュアライズ手法では、複数の人それぞれの時刻T1における第1の位置から他の時刻T2における第2の位置への動きの方向及び移動量に対応して、複数の主体移動ベクトルを作成し、ビジュアライズの結果を表示する平面の所定のポイントにおいて、主体移動ベクトルからアノニマス・ベクトルを算出する。そして、アノニマス・ベクトルに基づいて表示を行う。これにより、個人の動きに対応する主体移動ベクトルそのものを表示することなく、人の動きを表示することができる。
【0067】
図9は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムにおけるアノニマス・フロー・ビジュアライズ手法を示すフローチャート図である。また、
図10は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムにおけるアノニマス・フロー・ビジュアライズ手法を説明するための説明図である。
【0068】
まず、データセット41に含まれる人の動きのデータから、移動の主体である個人の移動を示す主体移動ベクトルを算出する(S21)。
図10Aに示すように、地図上において、少なくとも二人の「個人」について、時刻T1における位置A,Bから、時刻T2における位置A’、B’へ移動する個人A,Bの移動方向及び移動距離を示す主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)があると仮定する。一例として、
図10Aでは、主体移動ベクトルが、A−A’、B−B’線分に、移動方向を示す矢印を付したベクトルで表されている。
【0069】
これらの主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)は、時刻T1にどこにいたという個人情報を含んでいる。そこで、次のような抽象化を行う。まず、
図10Bに示すように、地図上に所定間隔で配置した複数のポイント(
図10B中、小白丸91で示す)を設ける(S22)。
【0070】
次に、
図10Cに示すように、それぞれのポイント91において、ポイント91からの距離dが所定の値R以下である主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)がある場合には、そのような主体移動ベクトルに対応して、主体移動ベクトルと同じ方向を有し、かつ、距離dに応じた大きさを有するポイントベクトル94を算出する(S23)。ポイント91と主体移動ベクトルとの距離dは、ポイント91から主体移動ベクトルに引いた垂線の長さに対応する。ポイントベクトル94の大きさは、例えば、距離dがゼロのときに最大で、距離dが大きくなるにしたがって小さくなり、距離dがR以上でゼロである。すなわち、これらのポイント91のうち、主体移動ベクトル上の点Oを中心とし、かつ、半径Rの円92の範囲内にあるポイントP(
図10C中、小黒丸93で示す)について、主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)を表す、A−A’線分及びB−B’線分からポイントP93までの距離に応じたポイントベクトルをそれぞれ計算する(S23)。
図10Dに、ポイントP93におけるポイントベクトルを矢印94で示す。一つのポイントP93に二つの矢印94があるのは、二つの個人移動ベクトル(A→A’、B→B’)の両方の影響を受けていることを示している。
【0071】
図11は、本実施の形態に係るデータアナライズシステムにおけるアノニマス・フロー・ビジュアライズ手法における主体移動ベクトル場の算出方法を説明するための説明図である。
図11に示すように、ポイントP93における、主体移動ベクトル(a、つまりA→A’)に対応するポイントベクトル(p)を算出する場合、以下の式(1)を用いることができる。なお、式(1)中、dは、ポイントP93からA−A’線分に下した垂線の距離を示す。
【0073】
次に、ポイントP93において、主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)のそれぞれに基づいて計算されたポイントベクトルに基づいてアノニマス・ベクトルを算出する(S24)。例えば、ポイント91について、ポイント91からの距離がR以内である主体移動ベクトルが存在しない場合には、ポイントベクトル及びアノニマス・ベクトルはいずれも大きさがゼロであって、ポイントベクトル及びアノニマス・ベクトルが存在しない。また、ポイントP93について、ポイント91からの距離がR以内である主体移動ベクトルが一つである場合には、ポイントベクトルが一つであり、ポイントベクトルとアノニマス・ベクトルが一致してよい。ポイントP93について、ポイント91からの距離がR以内である主体移動ベクトルが複数である場合には、ポイントベクトルが複数であり、アノニマス・ベクトルは複数のポイントベクトルの和であってよい。
図10E中に、ポイントP93におけるアノニマス・ベクトルを矢印95で示す。アノニマス・ベクトル95は、主体移動ベクトル(A→A’、B→B’)を抽象化したものとなっている。すなわち、アノニマス・ベクトル95で形成されるアノニマス・ベクトル場には、主体移動ベクトルが有していた個人情報が含まれていない。つまり、アノニマス・ベクトル場では個人情報が破棄されている。
【0074】
最後に、全ての主体移動ベクトルに基づいて算出されたアノニマス・ベクトルが存在する地図上に光点を配置し、配置された光点をアノニマス・ベクトルに応じて動かす(S25)。例えば、光点を、アノニマス・ベクトルの方向に、前記アノニマス・ベクトルの大きさに対応する距離で移動させる。つまり、光点はアノニマス・ベクトルに応じた速度で移動する。必要な期間にわたって、S21からS25までを繰り返して、上述のような光点の動きを求め、例えば地図上に描画することで、複数の個人の移動から個人情報を「破棄」し、抽象化した「人の動き」を「光点の動き」で可視化することができる。
【0075】
ここで、アノニマス・ベクトルに応じた表示を、散布した複数の光点の動きで表したが、これは一例にすぎず、限定されない。例えば、アノニマス・ベクトルの方向を示す矢印をアノニマス・ベクトルの大きさに応じた太さで表示してもよいし、三次元の高さで表現すること等も可能である。
【0076】
(アナライズ)
データセット41のアナライズは、ビジュアライズ結果を解析・検証した結果に基づいて、データセット41から社会的な活用に必要な情報としてアナライズ結果を生成することをいう。
【0077】
アナライズ結果は、上述のデータセット41の全体のビジュアライズの結果そのものであってもよい。また、アナライズ結果は、データセット41の全体を加工して得たグラフ(情報を2次元幾何学モデルで視覚化した抽象的表現、ダイアグラムともいう)等であってよい。
【0078】
アナライズの手法は、従来から知られた手法を用いることができ、特に限定されない。
【0079】
(アナライズ結果の社会的な活用)
上述のデータアナライズシステムによって生成されたアナライズ結果は、以下のような社会的な活用が可能である。
【0080】
例えば、事業計画やビジネス計画の観点では、アナライズ結果としての人の動きから、投入すべきリソースの増加又は減少を判断することができる。
【0081】
また、マーケティングの観点では、アナライズ結果としての購買者の移動経路から、商品の投入、出退店の診断などを行ったり、効率的な自動販売機の設置箇所を判断したり、することができる。
【0082】
また、都市計画の観点では、アナライズ結果としての人の動きから今後開発すべき道路、鉄道、住宅を推測することが可能となる。
【0083】
また、災害対策の観点では、アナライズ結果としての大地震の発生時の避難者の動きを、避難経路や防災施設の計画を立案するのに役立てることができる。
【0084】
また、シティマラソンや花火大会などのイベント時のアナライズ結果としての観客の動きから警備体制を検討することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態に係るデータアナライズシステム30によれば、データセット41の一部についてビジュアライズを行い、その結果を解析・検証し、特徴的な事象を見出せない場合にはビジュアライズ条件45を変更し、再びビジュアライズする。データセット41の一部から特徴的な事象が見出されたならば、データセット41の全体に対してデータセット41の一部をビジュアライズしたのと同じビジュアライズ条件45でビジュアライズすることにより、データセット41から特徴的な事象を見出せるビジュアライズ条件45を短期間で決定することが可能になる。結果的に、データセット41から社会的な活用に必要なアナライズ結果を短時間で求めることが可能になる。
【0086】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。